【文献】
Mark Nischik, et al.,Analysis of Skin Erythema Using True-Color Images,IEEE TRANSACTIONS ON MEDICAL IMAGING,IEEE,1997年12月,VOL. 16, NO. 6,711-716
【文献】
Hirotsugu Takiwaki,Measurement of skin color:practical and theoretical considerations,THE JOURMAL OF MEDICAL INVESTIGATION,The University of Tokushima School of Medicine,1998年 2月,Vol. 44,121-126
【文献】
A. CHARDON, et al.,Skin colour typology and suntanning pathways,INTERNATIONAL JOURNAL OF COSMETIC SCIENCE,1991年,Vol. 13, No. 4,191-208
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
紅斑を引き起こす医薬品又は化粧品又はアレルゲンの能力について、その医薬品又は美容品又はアレルゲンを分析するための、又は紅斑の外観を緩和する医薬品又は化粧品の能力について、医薬品又は化粧品を分析に使用するための、請求項1に記載の方法。
対象の皮膚又は粘膜又は結膜の血腫等級区分及び血腫の発達を経時的に文書化及び分析する際に使用するための;又は対象の皮膚又は粘膜又は結膜の黄疸等級区分及び黄疸発症を経時的に文書化及び分析する際に使用するための、又は対象の皮膚又は粘膜のチアノーゼの程度及びチアノーゼ発症を経時的に文書化及び分析する際に使用するための、請求項1又は3に記載の方法。
全てのステップが、携帯機器を用いて行われ、好ましくは当該携帯機器が、光学ヘッドマウントディスプレイを備えたウェアラブルコンピューターであるか、又はタブレット若しくはスマートホンであり;及び/又は好ましくは前記携帯機器が、臨床サービスシステム及び/又は癌放射線照射機器にリンクされている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
対象と取得された前記対象の色値との間の割り振り過程を自動化するために前記対象のバーコード又はクイックレスポンスコード又は近距離タグを検出するステップをさらに含む請求項1又は3に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は皮膚領域又は粘膜領域の光反射率の測定と紅斑値を算出するための新規の式を用いることによる前記測定の分析に基づく皮膚色を分析するための方法と紅斑を評価するための方法を提供する。その皮膚赤色値又は紅斑値は皮膚の発赤又は紅斑についての全強度範囲にわたる客観的で連続的な測定値を提供する。したがって、皮膚赤色紅斑値が大きいほど紅斑の強度が高くなる。
【0024】
「紅斑」という用語は、本明細書において使用される場合、あらゆる皮膚又は粘膜の発赤、又は皮膚若しくは粘膜の炎症、又は皮膚損傷を含み得る。例えば、紅斑は皮膚炎(例えば、放射線皮膚炎)、湿疹、上皮融解、落屑、潮紅、発赤、及び/又は発疹を含み得る。紅斑はあらゆる種類の紅斑、例えば、日焼け紅斑、慢性遊走性紅斑、硬結性紅斑、伝染性紅斑、輪状紅斑、遊走性紅斑、多型性紅斑、結節性紅斑、中毒性紅斑、角質溶解性冬期紅斑、手掌紅斑、スティーブンス・ジョンソン症候群、及び中毒性表皮壊死症(TEN、「ライエル症候群」としても知られる)及び頂部火炎状母斑も含み得る。「紅斑」という用語は皮膚損傷又は創傷をさらに指す。「紅斑」という用語はあらゆるステージの創傷、すなわち、新しい創傷、並びに様々な創傷治癒ステージの創傷も含み得る。
【0025】
紅斑は1層以上の皮膚又は粘膜、例えば、1層以上の表皮及び/又は1層以上の真皮、又は1層以上の粘膜、例えば粘膜上皮(粘膜上皮板)及び/又は基底膜又は結合組織(例えば、強膜、眼の結膜)を冒し得る。
【0026】
「ソフトウェアアプリケーションを使用して」という用語は、我々の発明の方法において使用される場合、あらゆる文脈においてソフトウェアアプリケーションを使用して、又はアプリケーションプログラムを使用して、又はアプリケーションを使用して、又はアプリケーション若しくはソフトウェアツール若しくはウェッブソフトウェアを使用して、又は、より一般的な言葉では、コンピューターの運用自体以上の有用な作業を実施することが可能なあらゆるソフトウェアであって我々の発明の計算方法の統合を可能にするあらゆるソフトウェアの使用と互換的であると認識及び理解され得る。
【0027】
第1の態様では本発明は、対象の紅斑を評価するための方法であって、
−前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従って紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*
を含む前記方法に関する。
【0028】
第2の態様では本発明は、対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症する危険性を評価するための方法であって、
−放射線照射の前に前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、
次の式に従ってベースライン紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*、及び
−前記対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症する危険性に前記ベースライン紅斑値を相関させるステップ
を含む前記方法に関する。
【0029】
第3の態様では本発明は、放射線照射のために対象が発症する紅斑の強度を予測するための方法であって、
−放射線照射の前に前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従ってベースライン紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*、及び
−放射線照射のために前記対象が発症する紅斑の強度に前記ベースライン紅斑値を相関させるステップ
を含む前記方法に関する。
【0030】
第4の態様では本発明は、対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症するまでの時間を予測するための方法であって、
−放射線照射の前に前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、
次の式に従ってベースライン紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*、及び
−前記対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症するまでの時間に前記ベースライン紅斑値を逆相関させるステップ
を含む前記方法に関する。
【0031】
第2、第3及び第4の態様の実施形態では対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率は放射線照射の前に測定される。前記実施形態に関して「放射線照射の前に」という用語は放射線被曝の開始前又は放射線照射の開始時の時点、すなわち、最初の放射線照射の前の時点を指し、その最初の放射線照射は数回の後続の放射線照射からなる過程のうちの最初の放射線照射であり得る。対応的紅斑値が前記ベースライン測定に基づいて算出される。その値がベースライン紅斑値である。対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率は放射線照射の前の2つ以上の時点で測定されてよく、対応的平均ベースライン紅斑値が算出され得る。第2、第3及び第4の態様の実施形態では対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率は放射線照射後の1つ以上の時点で測定される。放射線照射後という用語は前記態様に関して最初の放射線照射期間内の1つ以上の時点、とりわけ、最初の数回の放射線被曝期の間、又は放射線療法の最初の数日の間の1つ以上の時点を指す。例えば、前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率は放射線療法の第1週の間の1日以上の時点で測定される。1つ以上の紅斑値が前記初期測定値に基づいて算出され、且つ、初期紅斑値として定義され得る。
【0032】
「相関させる」という用語は、本明細書において使用される場合、紅斑値の他の各パラメーターに対する直接的関係を指す。例えば、対象のベースライン紅斑値が大きいほど対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症する危険性、及び/又は放射線照射のために対象が発症する紅斑の強度が高い。
【0033】
「逆相関させる」という用語は、本明細書において使用される場合、紅斑値の他の各パラメーターに対する逆関係を指す。例えば、対象のベースライン紅斑値が大きいほどその対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症するまでの時間が短く、又は対象のベースライン紅斑値が小さいほどその対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症するまでの時間が長い。
【0034】
前記ベースライン紅斑値及び/又は前記初期紅斑値の間の傾きは例えばそのベースライン紅斑値と前記初期紅斑値のうちの1つ以上との間、又は2つ以上の初期紅斑値の間で算出され得る。ベースライン紅斑値、並びに前記傾きは放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症する危険性と相関してよく、放射線照射によって引き起こされる紅斑の強度と相関してよく、又は対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症するまでの時間と逆相関してよい。したがって、これらのパラメーターを評価又は予測するためにベースライン紅斑値、又は2つ以上の紅斑値の間の傾き、又は両方の組合せのいずれかが用いられ得る。1つの実施形態では放射線照射前、及び放射線照射後の1つ以上の時点で光反射率を測定し、2つ以上の紅斑値の間の傾きを算出し、対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症する危険性又は放射線照射のために前記対象が発症する紅斑の強度に前記傾きを相関させる、又は前記対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症するまでの時間に前記傾きを逆相関させる。別の実施形態では対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症する危険性、放射線照射のために前記対象が発症する紅斑の強度、又は前記対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症するまでの時間はベースライン紅斑値及び2つ以上の紅斑値の間の傾きに基づいて評価又は予測される。
【0035】
1つの実施形態では1つ以上のベースライン紅斑値及び/又は初期紅斑値に基づいて対象の予後予測が3種類全てのパラメーターについて提供される。したがって、対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症する危険性は本発明に従ってベースライン紅斑値及び/又は初期紅斑値を算出すること、及び前記危険性にその紅斑値を相関させることに基づいて評価され、放射線照射のためにその対象が発症する紅斑の強度は本発明に従ってベースライン紅斑値及び/又は初期紅斑値を算出すること、及び前記強度にその紅斑値を相関させることに基づいて予測され、その対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症するまでの時間は本発明に従ってベースライン紅斑値及び/又は初期紅斑値を算出すること、及び前記時間にその紅斑値を逆相関させることに基づいて予測される。
【0036】
第5の態様では本発明は、対象において紅斑を引き起こす、又は治療する医薬調製物又は美容調製物の能力についてその医薬調製物又は美容調製物を検査するための方法であって、
−前記医薬調製物又は美容調製物の投与前及び投与後に前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従ってそれぞれの測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従ってそれぞれの測定の紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*
を含む前記方法に関する。
【0037】
第6の態様では本発明は、対象において紅斑の外観を改善する医薬調製物又は美容調製物の能力についてその医薬調製物又は美容調製物を検査するための方法であって、
−前記医薬調製物又は美容調製物の投与前及び投与後に前記対象の皮膚領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従ってそれぞれの測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従ってそれぞれの測定の紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*
を含む前記方法に関する。
【0038】
第5の態様又は第6の態様の実施形態では前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率は医薬調製物又は美容調製物の投与前に少なくとも一回測定され、医薬品又は化粧品の投与後の1つ以上の時点で測定され、各測定について紅斑値が算出される。「前記医薬調製物又は美容調製物の投与後」という用語は、前記態様に関して、前記医薬調製物又は美容調製物の投与期間内及び/又は投与期間後の1つ以上の時点を指す。例えば、対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率は医薬調製物又は美容調製物の単回投与又は反復投与の後の1つ以上の時点で測定される。対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率は医薬調製物又は美容調製物の投与期間後の1つ以上の時点、すなわち、その医薬調製物又は美容調製物がもはや投与されなくなった1つ以上の時点で測定されてもよい。前記紅斑値のうちの2つ以上の間の傾き、例えば、2つ以上の後続の測定値又は紅斑値の間の傾き、又は治療期間若しくは観察期間中の2つ以上の測定値又は紅斑値の間の傾きを決定することができる。投与期間中の2つ以上の紅斑値の間での紅斑値の増加は紅斑の進行、すなわち、その医薬調製物又は美容調製物が紅斑を引き起こすこと、又は紅斑の予防に有効ではないことを示している。投与期間中の2つ以上の紅斑値の間で紅斑値に重大な変化が無いことは安定な皮膚状態又は粘膜状態、すなわち、その医薬調製物又は美容調製物が紅斑を引き起こさないこと、紅斑の予防に有効であること、紅斑の治療に有効ではないこと、又は紅斑の外観の改善に有効ではないことを示している。投与期間中の2つ以上の紅斑値の間での紅斑値の減少は紅斑の退行、すなわち、その医薬調製物又は美容調製物が紅斑の治療又は紅斑の外観の改善に有効であることを示している。
【0039】
第6の態様の実施形態では美容製品の混濁度が検査される。その美容製品はメイクアップ、ファウンデーション、フェイスパウダー、カモフラージュ、カバースティック、又はコンシーラーであり得る。その製品の適用後の紅斑値の減少はその美容製品が紅斑の被覆に有効であることを示している。
【0040】
第7の態様では本発明は、対象の皮膚色を分析するための方法であって、
−前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従って皮膚赤色値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*
を含む前記方法を提供する。
【0041】
上で示された発明の主要な態様では「皮膚色」という用語はあらゆる色合いの赤色を含む皮膚又は粘膜又は結膜の色を指し、特に皮膚赤色又は粘膜赤色を指す。そのような皮膚赤色は健康な皮膚又は粘膜又は結膜、及び皮膚又は粘膜又は結膜の炎症部分、例えば、紅斑などを含む。したがって、「皮膚赤色値」という用語は皮膚色又は粘膜色の測定に基づいて算出された値を指す。例えば、皮膚赤色値を紅斑値と定義してよく、そのような態様を参照するとき、紅斑値の場所依存的な差異又は時間依存的な差異を用いて対象の日光黒子又は単純黒子又は悪性黒子又は雀卵斑に関係する変化を客観的に分析及び解釈することができる。
【0042】
別の態様では、「皮膚色」という定義は皮膚又は粘膜又は結膜の、特に皮膚又は強膜(眼の白色部)における紅斑の色合いを含み、黄色い色素形成の色合いをさらに含む色を指す。そのような黄色がかった皮膚色素は皮膚血腫の通常の治癒過程に含まれ、又は命に係わる疾患、例えば、黄疸(黄疽)に関連して観察され得る。ヘム代謝の黄色い分解産物であるビリルビンのレベルのわずかな上昇が約2〜3mg/dL(34〜51μmol/L)のビリルビンレベルで強膜において視覚的に認識され得るが、正常な皮膚色素形成のマスキング効果のため、信頼できる皮膚の黄疸評価にはさらに高いビリルビンレベルが必要とされる。しかしながら、我々の方法ではL
*値とb
*値を取得し、式(L
*max−L
*)×b
*に従って皮膚又は粘膜の黄色値を算出することによって正常な皮膚色素形成が考慮されており、経時的な対象の黄疸等級区分及び黄疸発生の客観的な文書化及び評価のための新規の感度が高く、非侵襲的な方法が提供される。
【0043】
別の態様では対象の皮膚を日焼けの色にする美容調製物を評価するため、すなわち、皮膚タンニング調製物を試験するために本発明の方法を用いることができる。したがって、皮膚タンニング調製物の投与又は利用の前後の治療領域の1つ以上の測定値に基づいて皮膚赤色値(輝度についての情報を含む、すなわち、皮膚タンニングも考慮する)が算出される。前記実施形態では基準領域は治療領域ではない領域、すなわち、美容調製物によって被覆されていない領域であり得る。
【0044】
比較的に離れた態様では本発明の方法は食肉を分析するために用いられ得る。
【0045】
本発明の1つの実施形態では対象はヒトである。1つの実施形態ではそのヒトは白人である。別の実施形態では対象は非ヒト動物である。その非ヒト動物は非ヒト霊長類、ブタ、げっ歯類、又はウサギからなる群より選択される非ヒト哺乳類動物であり得る。一つの実施形態では対象はミニブタなどのブタである。別の実施形態では対象はヌードマウスである。1つの実施形態では対象は放射線療法を受けているヒト女性の乳癌患者である。その乳癌患者は手術、例えば、乳房温存手術を受けていてもよい。1つの実施形態では対象は放射線療法を受けているヒト頭頚部癌(HNC)患者である。そのHNC患者は手術を受けていてもよい。一つの実施形態では対象は化学療法で処置される。
【0046】
一つの実施形態では対象は紅斑を引き起こし得る治療法で処置されているか、又は処置され、又は紅斑になり易い。別の実施形態では対象は紅斑を引き起こし得る治療法で処置されているか、又は処置され、又は紅斑になり易く、且つ、紅斑を予防する治療法で処置されているか、又は処置される。さらに別の実施形態では対象は紅斑を患っており、紅斑を治療し得る、且つ/又は紅斑の外観を改善し得る治療法で処置されているか、又は処置される。
【0047】
一つの実施形態では対象は被曝しているか、又は被曝し、又は放射線誘導性皮膚炎若しくは日焼けを患っているか、放射線誘導性皮膚炎又は日焼けになり易い。
【0048】
1つの実施形態では対象は細胞毒性薬品、例えば、フルオロウラシル、カペシタビン、シタラビン、ソラフェニブ、又はペグ化リポソーム性ドキソルビシン(Doxil)、又はチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、ソラフェニブ及びスニチニブ)などで処置されている、又は処置される。例えば、対象は手掌足底感覚異常症又は手足症候群を患っていてよく、又は手掌足底感覚異常症若しくは手足症候群になり易い。
【0049】
一つの実施形態では対象は紅斑を引き起こし得る薬品、例えば、抗生物質(スルホンアミド類、ペニシリン類、セフィキシム)、バルビツエート類、ラモトリジン、フェニトイン(例えば、ディランチン)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、又はEGFR阻害剤などで治療されている、又は治療される。例えば、対象は抗EGFR抗体療法で、特にセツキシマブ(エルビタックス(登録商標))で治療されている、又は治療される。
【0050】
一つの実施形態では対象は1種類以上のアレルゲン、例えば、アレルギー試験用の様々なアレルゲン、ウルシオール(ツタウルシ又はウルシによって産生される樹脂)、ペニシリン、ラテックス、又はスズメバチ、アカヒアリ及びミツバチの毒針などに曝露されている、又は曝露される。
【0051】
一つの実施形態では対象は例えば白癬(たむし)、又はカンジダなどの真菌感染症を患っている。
【0052】
一つの実施形態では対象は例えばスタフィロコッカス、ストレプトコッカス、又は例えば梅毒、ベジェル、ピンタ及びイチゴ腫などのトレポネーマ病による細菌感染症を患っている。
【0053】
一つの実施形態では対象はウイルス感染症を患っており、そのウイルス感染症は帯状疱疹、風疹、疱疹、手足口病、エンテロウイルス感染症、水痘、又はエリスロウイルス感染症(伝染性紅斑又は第5病)からなる群より選択され得る。
【0054】
一つの実施形態では対象は皮膚疾患を患っており、その皮膚疾患は乾癬、アトピー性湿疹又はアトピー性皮膚炎(神経皮膚炎)、湿疹、又はニキビからなる群より選択され得る。
【0055】
一つの実施形態では対象は内部粘膜又は外部粘膜、例えば、口腔粘膜、鼻粘膜、又は小腸粘膜を冒す疾患を患っている。例えば、対象は炎症性腸疾患、クローン病(Morbus Crohn又はCrohn’s disease)、アフタ性口内炎、結膜炎、慢性閉塞性肺疾患、消化性潰瘍、過度の飲酒、又は胃炎を患っている。
【0056】
一つの実施形態では対象は赤面などの身体表現性障害を患っている。
【0057】
一つの実施形態では対象は1つ以上の創傷を有する、又は有している。前記創傷はあらゆる起源(例えば、手術又は傷害)の創傷、並びにあらゆるステージの創傷、すなわち、新しい創傷、並びにあらゆる創傷治癒ステージの創傷であり得る。創傷は皮膚が裂かれている、切られている、又は皮膚に穴があけられている一種の損傷(開放性創傷)、又は鈍力損傷によって挫傷が引き起こされる一種の損傷(閉鎖性創傷)である。特に、創傷は皮膚の表皮及び/又は真皮に損傷を与える傷害である。しかしながら、創傷は粘膜病変又は粘膜障害であってもよい。概して、創傷は1層以上の皮膚又は粘膜、例えば、1層以上の表皮及び/又は1層以上の真皮、又は1層以上の粘膜、例えば粘膜上皮(粘膜上皮板)及び/又は基底膜を冒し得る。
【0058】
したがって、一つの態様では本発明は対象の創傷又は創傷治癒の文書化又は分析に、又は経時的な対象の皮膚又は粘膜又は結膜の血腫強度又は血腫発症の文書化に適用され得る。これは
−前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従って紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*
を含む本発明の方法によって行われ得る。
【0059】
1つの実施形態では前記皮膚領域又は粘膜領域は皮膚領域である。別の実施形態では前記皮膚領域又は粘膜領域は粘膜領域である。その粘膜領域は外部粘膜又は内部粘膜、例えば鼻粘膜、口腔粘膜、小腸粘膜であり得る。一つの実施形態では前記皮膚領域又は粘膜領域は1つ以上の断片領域を含む大領域である。前記実施形態では本発明の方法の各ステップが各断片領域について別々に行われる。以上より、本発明に従って各断片領域について紅斑値が算出される。
【0060】
1つの実施形態では紅斑値又は他のあらゆる皮膚色値が各副区域について別々に算出され得る。副区域は下に記載されるような副区域であり得、又は画像取得により皮膚領域又は粘膜領域の光反射率が測定される場合、副区域は前記画像の単画素であってもよく、すなわち、1つ以上の単画素について紅斑値が算出される。以上より、平均紅斑値又は他のあらゆる皮膚色値の平均値が画像、大領域、及び/又は断片領域の1つ以上の単画素から算出され得る。
【0061】
前記断片領域は紅斑領域(又は紅斑領域の代表部分)であり得る。1つの実施形態では紅斑領域は紅斑になり易い領域であり、その紅斑は、例えば、下でさらに説明される疾患及び/又は治療法によって引き起こされ得る。別の実施形態では紅斑領域は紅斑を特徴とする領域である。前記紅斑は下でさらに説明される疾患及び/又は治療法によって引き起こされたものであり得る。「治療法」という用語はこの文脈では対象の局所的治療法(例えば、対象の皮膚領域又は粘膜領域の治療法)又は全身的治療法(例えば、抗EGFR抗体を用いる治療法)であり得る対象が必要とする治療法と理解されねばならない。したがって、一つの実施形態では紅斑になり易い、又は紅斑を特徴とする断片領域は局所的治療法の分析治療領域、又は全身的治療を受けて紅斑が生じている分析領域であり得る。
【0062】
前記分析断片領域は治療領域(又は治療領域の代表部分)、すなわち、例えば放射線照射(X線照射、紫外線照射、及び/又は日光照射を含むがこれらに限定されない)によって、並びに/又は医薬調製物及び/若しくは美容調製物によって物理的及び/又は化学的に治療されている、又は治療される分析領域であってもよい。1つの実施形態では前記分析紅斑領域は治療領域でもある。一つの実施形態ではその放射線照射は放射線療法、特に分割放射線療法である。
【0063】
分析断片領域は基準領域(又は基準領域の代表部分)でもあり得る。前記基準領域は同じ対象の領域であり得る。一つの実施形態では基準領域は評価予定の対象以外の1人以上の対象の領域であり得る。前記の異なる対象は同じ人種(例えば、白人)の対象、同一又は類似の皮膚色の対象、及び/又は同じ(例えばフィッツパトリック皮膚スケールに従う)皮膚タイプの対象であり得る。一つの実施形態では前記の異なる対象は同種の皮膚状態、例えば紅斑を有する。さらに別の実施形態では前記の異なる対象は同一又は類似の疾患を患っており、且つ/又は同一若しくは類似の治療を受けている。したがって、2つ以上の基準紅斑値からなる基準曲線が対象の測定値との比較のために作成され得る。概して、(例えば基準値との)紅斑値のあらゆる比較について、2つ以上の紅斑値の間の曲線下面積が決定され、例えば2つ以上の基準紅斑値の曲線下面積と比較され得る。
【0064】
さらに、基準領域は紅斑領域及び/又は治療領域に類似する領域、すなわち、体の同一又は類似の場所の、及び/又は同一若しくは類似の性質(例えば、類似の色及び/又は形状)の領域であり得る。1つの実施形態では基準領域は例えば紅斑領域及び/又は治療領域と比較予定の断片領域に隣接する。1つの実施形態では基準領域は例えば紅斑領域及び/又は治療領域と比較予定の断片領域と同じサイズの領域である。基準領域について算出された紅斑値は基準紅斑値とも呼ばれ得る。一つの実施形態では、例えば、紅斑を引き起こし得る治療法を評価するために本発明の方法が使用される場合では基準領域は紅斑領域ではない。前記実施形態では基準領域は紅斑を特徴とせず、すなわち、基準領域に紅斑が無い。例えば、基準領域は紅斑を引き起こし得る調製物又は治療法による治療の前の治療領域であり得、したがって、紅斑を発症する前の治療領域であり得る。1つの実施形態では基準領域は治療領域ではない。一例では、基準領域は完全に未処置のままである。その他の実施形態では基準領域はプラセボ又は基準治療法によって、例えば、代表的治療法又は競合的製品又は比較用製品などによって治療される。別の実施形態では、例えば、紅斑を改善し得る治療法を評価するために本発明の方法が使用される場合では基準領域は紅斑を特徴とする。別の実施形態では基準領域は紅斑の発症前及び/又は治療前の紅斑領域及び/又は治療領域である。紅斑領域及び/又は治療領域である基準領域について算出されたが、紅斑の発症前及び/又は治療前の測定値に基づいて算出された基準紅斑値はベースライン紅斑値又は初期紅斑値とも呼ばれ得る。
【0065】
一つの実施形態では紅斑値は基準紅斑値と比較される。例えば、断片領域(例えば、治療領域及び/又は紅斑領域)の紅斑値が1つ以上の基準紅斑値と比較される。1つの実施形態では1つ以上の基準領域に基づいて基準紅斑値が算出される。別の実施形態では基準紅斑値は、フォローアップ紅斑値が算出される同一の断片領域、例えば、紅斑領域及び/又は治療領域の紅斑値であって、治療前及び/又は紅斑の発症前に評価された紅斑値である。
【0066】
別の実施形態では紅斑値は1つより多くの基準紅斑値及び/又は基準領域の2つ以上の紅斑値の間の1つ以上の基準勾配値と比較され得る。前記基準紅斑値及び/又は基準勾配値は同じ対象の基準紅斑値又は1人以上の異なる対象の基準紅斑値を含み得る。例えば、同一又は類似の種類の紅斑及び/又は同一若しくは類似の等級の紅斑を有する対象、例えば、同じ疾患を有する、又は同じ治療を受けている対象から基準紅斑勾配値又は評価曲線又は基準曲線が決定され得る。したがって、本発明に従って1つ以上の紅斑値を算出し、且つ、前記1つ以上の紅斑値を1つ以上の基準紅斑値、2つ以上の基準紅斑値の間の基準紅斑勾配値、及び/又は評価曲線若しくは基準曲線に対して比較することにより対象の紅斑を評価することができる。
【0067】
皮膚領域又は粘膜領域の光反射率はデジタル写真撮影術などの画像撮影方法を用いることによって測定され得る。したがって、一つの実施形態では皮膚又は粘膜の光反射率は前記皮膚領域又は粘膜領域の画像を取得することにより測定される。その画像はラスターグラフィクス画像(又はビットマップ)であり得る。したがって、1つの実施形態ではL
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び本発明の式に従って紅斑値を算出するステップは画素毎に、すなわち、皮膚領域又は粘膜領域の1つ以上の画素について別々に行われる。例えば、その画像は1つ以上の断片領域を含む大領域を含んでよく、前記領域の1つ以上の画素について紅斑値が算出される。前記皮膚領域又は粘膜領域、又は前記皮膚領域又は粘膜領域の各画素の代表である全ての画素について紅斑値が算出され得る。画像の各画素について紅斑値が算出され得る。所望により、下でさらに説明されるように1つ以上の画素を除外してよく、例えば、代表的ではない副区域のあらゆる画素を除外してよい。単画素紅斑値に基づいて皮膚領域又は粘膜領域について平均紅斑値が算出され得る。一つの実施形態では平均紅斑値は皮膚領域又は粘膜領域の単画素紅斑値の算術平均である。
【0068】
1つの実施形態ではL
*a
*b
*色空間において光反射率が測定され、前記測定から直接的にL
*値及びa
*値が取得される。
【0069】
別の実施形態ではL
*a
*b
*色空間以外の色空間において前記光反射率が測定され、前記測定の光反射率値をL
*a
*b
*色空間の対応する値に変換することによってL
*a
*b
*色空間に従うL
*値及びa
*値が取得される。
【0070】
1つの実施形態では前記測定の色空間に従う画像の1つ以上の画素の光反射率値が画像ファイルから直接的に取得される。一つの実施形態では画像の各単画素の光反射率値が取得される。別の実施形態ではグラフィクスソフトウェア、例えば、Adobe Photoshop、Corel Paint Shop、Corel Photo Paint、Irfan View、GIMP、Paint. NET、又はそのようなものを使用することにより前記1つ以上の単画素値が取得される。
【0071】
1つの実施形態では各断片領域について単画素紅斑値に基づく平均紅斑値が算出される。1つの実施形態では各基準領域について単画素紅斑値に基づく平均紅斑値が算出される。別の実施形態では各大領域について単画素紅斑値に基づく平均紅斑値が算出される。さらに、1つより多くの断片領域、基準領域、及び/又は大領域について平均紅斑値が算出され得る。その平均紅斑値は皮膚領域又は粘膜領域、例えば、断片領域の全ての単画素紅斑値を含み得る。しかしながら、一つの実施形態では1つ以上の単画素紅斑値が平均紅斑値の計算から除外され得る。
【0072】
概して、皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するための上記の方法のうちのいずれかをレーザースキャニング、例えば、3Dレーザースキャニングと組み合わせて皮膚領域又は粘膜領域のその他の情報、例えば、3D構造を取得することができる。
【0073】
1つの実施形態では紅斑領域は紅斑を引き起こし得る物理的及び/又は化学的治療法によって(局所的に)処置されている、又は処置される治療領域である。例えば、その物理的及び/又は化学的治療法は放射線照射、医薬調製物及び/又は美容調製物による全身的治療(例えば、皮下注射、粘膜注射、筋肉内注射)、又は医薬調製物及び/又は美容調製物による局所治療(粘膜投与を含む)、アレルギー検査、例えば、プリックテスト及び/又はパッチテストなどからなる群より選択され得る。前記実施形態では紅斑領域は紅斑になり易い領域である。さらに、前記例では紅斑領域は治療領域でもある。前記例ではそれぞれの基準領域は紅斑を特徴としない。したがって、基準領域は紅斑領域と同じ領域であり得るが、治療前の領域であり得る。基準領域が紅斑領域以外の領域である場合、その基準領域は治療領域ではない。
【0074】
一つの実施形態では治療領域は、紅斑を改善し得る医薬品又は化粧品、例えば、1つ以上の抗生剤、抗炎症剤、創傷治癒剤、及び/又は抗酸化剤を含む調製物で治療されている、又は治療される紅斑を特徴とする紅斑領域である。前記実施形態では基準領域は治療領域ではない、すなわち、前記医薬品又は化粧品で治療されていない紅斑を特徴とする紅斑領域である。1つの実施形態ではその抗酸化剤はリポソーム製剤になっていてもよいスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、特に組換えヒトCu/Zn SODである。
【0075】
別の実施形態では治療領域は、紅斑を被覆するための美容調製物、例えば、1種類以上の色素を含むメイクアップ、ファウンデーション、フェイスパウダー、カモフラージュ、カバースティック、コンシーラーなどの調製物で局所的に処置されている、又は処置される紅斑を特徴とする紅斑領域である。前記実施形態ではその美容調製物の混濁度を評価するために本発明による方法が用いられ得る。前記実施形態では基準領域は治療領域ではない、すなわち、その美容調製物によって被覆されていない紅斑を特徴とする紅斑領域である。
【0076】
別の実施形態では治療領域は紅斑を予防するための美容調製物、例えば、サンケア調製物で局所的に処置されている、又は処置される紅斑になり易い領域(例えば、太陽に曝露されている、又は曝露される領域)である。前記実施形態ではその美容調製物の日焼けを防止する能力を評価するために本発明による方法を用いることができる。前記実施形態では基準領域は治療領域ではない、すなわち、その美容調製物によって被覆されていない太陽に曝露されている、又は曝露される領域であり得る。コンピューターベースの手動選択又は脱選択ツール(例えば、グラフィック選択又は脱選択ツール、例えば、直線、円形、楕円形、長方形、又は多角形の選択又は脱選択ツール)、並びに/又は自動若しくは半自動パターン認識及び/若しくは分析ソフトウェア(又は画像認識及び/若しくは分析ソフトウェア)などのソフトウェアに基づいて断片領域を決定及び/又は分析してよい。例えば、ある特定の代表的な領域を選択してよく、且つ/又はある特定の非代表的な領域を脱選択してよい。半自動画像分析の例は上で言及された創傷治癒分析ツール(W.H.A.T)ソフトウェアである。
【0077】
概して、ある特定の副区域を断片領域及び/又は大領域から除外してよい。したがって、そのような副区域を各EVの計算から除外してよい。
【0078】
一つの実施形態では1つ以上の副区域が断片領域及び/又は大領域から手動又は自動で除外される。そのような副区域はあらゆる非代表的な領域(例えば、境界領域)、又は分析予定の残りの領域と異なる色素形成、色合い、及び/又は形状を有する領域であり得る。その副区域は例えば傷跡、母斑、そばかす、年齢による染み、皮膚のしわ(例えば、乳房下の皺(IMF)、乳房下の襞又は乳房下線とも呼ばれる)、アクロマスティウム(acromastium)、影、プラスター、及び/又はマーク(パッチ、入れ墨、インク染み、例えば、放射線あざなど)、又はそれらの部分を特徴とし得る。そのような副区域はコンピューターベースの手動選択又は脱選択ツール(例えば、グラフィック選択又は脱選択ツール、例えば、直線、円形、楕円形、長方形、又は多角形の選択又は脱選択ツール)によって、及び/又はパターン認識ソフトウェア(又は画像認識ソフトウェア)などの自動又は半自動画像認識技術を用いることによって除外され得る。
【0079】
断片領域の代表的な部分はその断片領域の主要な特徴を示す前記断片領域の副区域であり得る。断片領域の代表的な部分は前記断片領域の中央副区域であり得る。断片領域のそのような代表的な部分はあらゆる境界領域、例えば、境界領域から周辺領域、例えば、他の断片領域を含まなくてよい。断片領域の代表的な部分は断片領域であって、1つ以上の非代表的な副区域が除外された断片領域であってもよい。概して、2つ以上の断片領域が重なっていても重ならなくてもよい。例えば、2つ以上の断片領域が部分的に重なっていてよい。また、あらゆる非代表的な領域が2つ以上の断片領域と重なっていてよく、したがって、前記2つ以上の断片領域を含む大領域から除外されてよい。
【0080】
光反射率が皮膚領域又は粘膜領域の画像を取得することにより測定される場合、副区域の上記の選択又は脱選択をその画像の画素に対して適用することができ、すなわち、非代表的な副区域の1つ以上の画素又は全ての画素を脱選択してよく、又は代表的な副区域の1つ以上の画素又は全ての画素を選択してよい。したがって、紅斑値の計算から、例えば、断片領域の単画素紅斑値及び/又は平均紅斑値の計算から非代表的な副区域の前記1つ以上の画素を除外してよい。さらに、紅斑値又は他のあらゆる色値、例えば、断片領域の単画素紅斑値及び/又は平均紅斑値の計算に代表的な副区域の前記1つ以上の画素を含めてよい。
【0081】
1つの実施形態では前記大領域は少なくとも1つの紅斑領域及び/又は治療領域を含む。1つの実施形態では前記大領域は少なくとも1つの基準領域を含む。1つの実施形態では前記大領域は少なくとも1つの紅斑領域及び/又は治療領域と少なくとも1つの基準領域を含む。
【0082】
前記大領域及び/又は断片領域は所定の領域であり得る。前記大領域及び/又は断片領域は、例えば1つ以上のパッチ、入れ墨、及び/又はインク染みによって印を付けられていてよい。
【0083】
皮膚領域又は粘膜領域の光反射率はあらゆる色空間において測定又は描写され得る。すなわち、その測定方法又は画像撮影方法(及び、したがって、その測定値又は画像の表現)はあらゆる色空間(又は色モデル)、例えば、CIE−Lab(又はL
*a
*b
*)色空間、XYZ色空間、Yxy色空間、Luv色空間(例えば、CIE−Luv色空間、L
*u
*v
*とも呼ばれる)、RGB色空間、RYB色空間、CMYK色空間、HSL、HSV及び/又はCIECAM02色空間などに基づき得る。L
*a
*b
*色空間、XYZ色空間、及びLuv色空間は光反射率を測定する機器を選ばない。1つの実施形態では皮膚領域又は粘膜領域の光反射率はL
*a
*b
*色空間において測定される。その測定値又は画像はL
*a
*b
*色空間で表され、パラメーター又は値はL
*(輝度)、a
*(赤/緑)及びb
*(青/黄色)である。前記実施形態では輝度(L
*値)及び赤色度(a
*値)について実際に測定された値に基づいて紅斑値が直接的に算出され得る。皮膚領域又は粘膜領域の光反射率がL
*a
*b
*色空間以外の色空間において測定され、その測定値又は画像がL
*a
*b
*色空間以外の色空間で表される場合、実際に測定された値(又はパラメーター)がL
*a
*b
*色空間のそれぞれの値に変換される。例えば、RGB色空間又はCMYK色空間における測定値又は画像がL
*a
*b
*色空間に変換され得る。RGB値又はCMYK値が最初にsRGB又はAdobe RGBなどの特定の絶対色空間に変換されることが必要である。この調節は機器依存的であり得るが、その変換の結果であるデータは機器非依存的であり得、データがCIE1931色空間に変換され、次にL
*a
*b
*に変換されることを可能にする。異なる色空間の間での値の変換のための方法とツールが例えばAppleのColorSyncサービスプログラム、Adobe Photoshop(http://www.photoshop.com/)の「コンバート・トゥ・プロファイル・ダイアログ」、及びeasy RGBカラーカルキュレーター(http://www.easyrgb.com/)によって提供されている。
【0084】
その色空間はフランスの国際照明委員会(CIE)により承認されたL
*a
*b
*色空間(CIE 1976 L
*a
*b
*又はCIELABとも呼ばれる;例えばONORM EN ISO11664−4:2008年、2012−05−15版を参照のこと)であり得る。その色空間はヒトの眼に見える全ての色を説明しており、且つ、基準として使用される予定の機器独立モデルとして機能するように創られた。その色空間の3つの座標は色の明るさ(L
*=0は黒色をもたらし、L
*=100は散乱した白色を表す)、赤色と緑色の間の色の値(a
*、負の値は緑色を表し、正の値は赤色を表す)、及び黄色と青色の間の色の値(b
*、負の値は青色を表し、正の値は黄色を表す)を表す。中央からの距離の増加と共に色の飽和度が増加する。したがって、前記三次元色システムにおいてたった1つの点によって各色を表すことができ、すなわち、それらの3つのパラメーター(又は座標)によって各色を表すことができる。
図1はL
*a
*b
*色空間の2つのグラフ表示を示している。
【0085】
CIELAB色空間に関して、a
*スケールは最大緑色飽和(a
min)から最大赤色飽和(a
max)までの範囲であり、一方でb
*スケールは最大青色飽和(b
min)から最大黄色飽和(b
max)までの範囲である。本発明では最大値(すなわち、L
max、a
max、及びb
max)と最小値(a
min及びb
min)は一方で測定方法又は画像撮影方法によって決定され、他方でそれぞれの色空間とその色空間の色深度によって決定される。色深度(又はビット深度)はビットマップ、ビデオフレームバッファー、又は画像の単画素の色を表すために使用されるビット数のことである。この概念は通常は画素当たりのビット数(bpp)として定量化され、画素当たりのビット数は使用されるビット数を特定する。色深度は色のレベルをどんなに細かく表現することができるかを表すカラー表示法の唯一の態様であり(色精度としても知られる)、他の態様は色範囲がどんなに広いかを表すものである(色域)。色精度と色域の両方の定義は色空間におけるある場所にデジタルコード値を指定するカラー符号化規格によって達成される。
【0086】
1つの実施形態ではシングルスポット測定において光反射率が測定される。そのようなシングルスポット測定からたった1つのL
*値及びたった1つのa
*値が取得され、前記シングルスポット値に基づいて紅斑値が算出される。別の実施形態では光反射率は皮膚領域又は粘膜領域の画像を取得することにより測定される。前記画像は複数の画素を含み、各画素はその測定値が採られた色空間の色パラメーターによって規定される。したがって、各シングルスポット測定、又は測定の各画素、又は画像の各画素はそれぞれの色空間、例えば、L
*a
*b
*色空間のパラメーター又は値によって規定され得る。シングルスポット測定又は単画素がL
*a
*b
*色空間以外の色空間のパラメーター又は値によって規定される場合、それらのパラメーター又は値は上で記載されたようにL
*a
*b
*色空間に変換される。
【0087】
例えば、前記測定方法は分光測光である。分光測光はシングルスポット測定であり、すなわち、皮膚領域又は粘膜領域が1つのスポットで測定される。前記スポットにおいて測定される領域は分光光度計の標的マスクによって予め規定される。一つの実施形態ではその分光光度計は10nmステップで約400〜700nmのスペクトルを測定する32個のダイオードを有する。その分光測光はL
*a
*b
*色空間に基づき得る。したがって、このシングルスポット分光測光測定はL
*a
*b
*色空間に従ってたった1つのL
*値、a
*値、及びb
*値を生じる。一例では、分光光度計から取得されたデータは直接的にL
*a
*b色空間で提供される。一例では、分光光度計は100の輝度の最大値、すなわち、L
maxを有する。前記例では、赤色度の最大値、すなわち、a
maxは127である(
図1Bを参照のこと)。
【0088】
別の例では、前記測定方法又は画像撮影方法はデジタル写真撮影術である。色深度は例えばチャンネル当たり(又は色パラメーター当たり)8ビット、12ビット、15ビット、又は16ビットであり得る。一つの実施形態では色深度はチャンネル当たり8ビット、すなわち、総計で24ビットである。色深度がチャンネル当たり8ビットである場合、各パラメーター(L
*、a
*、及びb
*)について256個の可能な値が存在する。したがって、前記例では最大L
*値は(最小値が0であるので)255である。赤色と緑色の2色を表すa
*値も256個の可能な値(すなわち、0〜255)を含む。したがって、赤色の最小値は128であり、赤色の最大値は255である。したがって、あらゆる所与の色深度及び/又は色空間について輝度と赤色度の最大値が算出され得る。算出された紅斑値を前記最大L
*値及びa
*値に基づいて正規化することができる。
【0089】
あらゆる適切な測定方法又は画像撮影方法、例えば、分光測光、ビデオ、ビデオフレームバッファー、及び/又は写真撮影術などによって測定値又は画像を取得することができる。例えば、大領域及び/又は断片領域とのどのような直接的接触も必要としない方法、例えば、写真撮影術によって測定値又は画像を取得することができる。一つの実施形態では分光測光及び/又は写真撮影術によって測定値又は画像が取得される。一つの実施形態ではデジタル写真撮影術によって測定値又は画像が取得される。
【0090】
1つの実施形態ではコニカミノルタのCM−700d分光光度計を使用することによって画像が取得される。1つの実施形態ではキャノンのデジタルカメラCanonパワーショットG12を使用することによって画像が取得される。1つの実施形態ではキャノンのデジタルカメラとSOLIGORリングフラッシュを使用することによって画像が取得される。
【0091】
例えば、前記分光測光はシングルスポット分光測光であり得る。その分光測光測定は標準化条件下で実行され得る。例えば、測定を実施する係員が割り当てられ、且つ、適宜訓練を受け、測定予定の大領域を標準化してよく(例えば、予め規定してよく)、照射領域(すなわち、測定領域)を(例えば8mmの標的マスクによって)予め規定し、各測定の前に分光光度計を校正する(例えば、各測定の前に自動ホワイトバランスが実行される)。
【0092】
別の実施形態では前記写真撮影術はデジタル写真撮影術である。デジタルカメラ、フラッシュ(例えば、リングフラッシュ)、及び分光光度計からなる群より選択される1つ以上の機器を使用することによって測定値又は画像を取得することができる。
【0093】
内視鏡装置を使用することによって測定値又は画像を取得することもできる。1つの実施形態では前記皮膚領域又は粘膜領域は内部粘膜領域であり、光反射率は内視鏡による方法によって測定される。例えば、本発明による方法を用いて内部粘膜を冒す疾患、例えば、クローン病などとそれらの疾患の治療を診断及びモニターすることができる。
【0094】
画像撮影方法及び画像撮影装置、画像撮影機器の設定、被写体と画像撮影機器の配置(すなわち、画像の奥行)、及び露光量などの標準化条件下で画像を取得することができる。例えば、色の対比を改善し、且つ、日陰効果を低減させる標準化のためにフラッシュを使用してよい。幾つかの画像(例えば、異なる時点における同じ領域の幾つかの画像、及び/又は同じ時点又は異なる時点のどちらかにおける異なる領域の幾つかの画像)を比較する例では、同じ部屋でそれらの画像を取得してよく、その部屋では照明(利用可能な全ての照明又はある特定の予め規定された照明のどちらか)が点いており、且つ、ウィンドウカーテン及び/又は暗幕(利用可能な全てのウィンドウカーテン及び/又は暗幕、又はある特定の予め規定されたウィンドウカーテン及び/又は暗幕のどちらか)が閉められている。1つの実施形態ではカメラ内蔵フラッシュのスイッチを切り、標準化外部フラッシュのスイッチを入れる。幾つかの画像について異なるカメラを使用する場合にこのことが特に重要である。例えば画像サイズ、画像形式、画像色彩設計、フラッシュ、オートモード及び/又はシーンモード、ホワイトバランス、ズーム、画像焦点、ISO感度、シャッタースピード、画像色パラメーター等のような画像撮影機器の設定を標準化することができる。さらに、画像区間、並びにカメラと被写体又は領域との間の距離及び方向を標準化することができる。例えば、画像サイズは4:3の比率で3648×2736画素であってよく、画像形式はrawであってよく、画像色彩設計はニュートラルであってよく、内蔵フラッシュのスイッチを切ってよく、外部フラッシュのスイッチを入れてよく、モードをオートに設定してよく、ホワイトバランスをオートに設定してよく、ズームのスイッチを切ってよく、画像焦点をオートフォーカスTTLに設定してよく、ISO感度を規定値(例えば、200と400の間の値)に設定してよく、シャッタースピードをオートに設定してよく、且つ/又は画像色パラメーターをニュートラルに設定する。1つの実施形態ではISO感度は200である。概して、ISO感度はできるだけ低くてよい。1つの実施形態ではカメラと被写体又は領域との間の距離は少なくとも2mである。概して、カメラと被写体又は領域との間の距離はフラッシュの出力に基づいて選択されるべきであり、すなわち、フラッシュ(例えば、カメラ内蔵フラッシュ又は外部フラッシュ)が適切に被写体又は領域を照明することができることを確実にするように選択されるべきである。
【0095】
また、測定機器又は画像撮影機器の準備、例えば、分光光度計の測定絞りの消毒方法を標準化することができる。また、画像取得前の大領域及び/又は1つ以上の断片領域の前処理、例えば、大領域及び/又は1つ以上の断片領域の被覆、除覆、洗浄、乾燥、及び/又は消毒を標準化することができる。測定値又は画像を取得するために同じ係員を選択すること、及び、全ての標準化条件において前記係員を適切に訓練することによって測定条件又は画像撮影条件をさらに標準化することができる。
【0096】
一つの実施形態では前記画像は大領域を表す。
【0097】
前記画像は患者識別カード、病院バーコード、QRコード又はそのようなものなどの識別対象物も含み得る。
【0098】
1つの実施形態では前記画像は圧縮されていない、又は無損失型若しくはほぼ無損失型で圧縮されている形式、すなわち、画像撮影機器(例えば、カメラ、スキャナー等)の画像センサーに由来する最小限に加工されたデータを含む形式で保存される。一つの実施形態では前記画像はRaw形式で保存される。別の実施形態では前記画像はTif形式で保存される。前記画像を例えばさらなる分析又は視覚化のためにRaw形式以外の形式でエクスポートすることができる。例えば、前記画像をTif、Png、又は他の無損失圧縮画像形式からなる群より選択される形式に変換することができる。1つの実施形態では前記画像をRaw形式で保存し、まずTif形式に変換し、次にTif形式をPng形式に変換する。1つの実施形態ではRaw形式からエクスポート用の形式への変換は無損失圧縮又はほぼ無損失圧縮である。例えば適切なRawコンバーター又はグラフィクスソフトウェア、例えば、Adobe Photoshop、Corel Paint Shop、Corel Photo Paint、Irfan View、GIMP、Paint. NET、又はそのようなものを選択することによってこれを達成することができる。純粋に視覚化するためには前記画像を他のあらゆる適切な形式、例えば、Jpegなどに変換してもよい。
【0099】
画像撮影機器、露光量、又は他の可変的な画像撮影条件におけるあらゆる潜在的な差異を調節するため、前記画像は色校正ツール(例えば、グレイカード及び/又はカラーカード)などの標準対照被写体を含み得る。1つの実施形態ではその色校正ツールは例えば欧州特許第1240549号明細書、国際公開第2004/028144号パンフレット、及び/又は国際出願第PCT/SE2011/050367号明細書に記載されるQP校正カードである。
【0100】
したがって、紅斑値の基礎となるデータ、例えば、L
*値及びa
*値は色校正ツールなどの基準に対して正規化され得る。
【0101】
1つの実施形態では紅斑値はa
*及びL
*の最大値に基づいて正規化される。
【0102】
例えば、異なる測定方法又は画像撮影方法に基づく、及び/又は異なる色深度に基づく幾つかの紅斑値を比較するため、紅斑値は100%に設定されているそれぞれの最大値に対して比較した相対値に変換され得る。
【0103】
所望により、皮膚発赤又は紅斑又は付随する評価色値を視覚化及び/又は分析するために画像を擬似カラー画像に変換してよい。例えば、前記画像を(赤外線カメラによって提供されるカラー画像に類似する)擬似カラー画像、例えば、擬似グレイスケール画像又は擬似レッドスケール画像に変換することができ、その画像の中で紅斑値はグレイスケール又はレッドスケールで表される(
図2を参照のこと)。前記擬似カラー画像ではあらゆる「非赤色」a
*値(又は負のa
*値;例えばL
*a
*b
*色空間において緑色を表す)を予め規定された値に設定してよい。一つの実施形態ではあらゆる負のa
*値が最小赤色値に設定される。例えば、色空間がL
*a
*b
*色空間であり、且つ、色深度がチャンネル当たり8ビットである場合、127以下のあらゆるa
*値を128に設定してよい。過剰露光を検出するためにそのような擬似カラー画像を使用してもよい。その後にそのような過剰露光画像を分析から除外してよい。
【0104】
1つの実施形態では紅斑強度が上昇するにつれてL
*値が減少する。その他の実施形態では紅斑強度が上昇するにつれてa
*値が増加する。別の実施形態では紅斑強度が上昇するにつれてL
*値が減少し、且つ、a
*値が増加する。
【0105】
一つの実施形態ではL
*値とa
*値だけが考慮される。前記実施形態ではL
*値とa
*値を使用するだけで紅斑又は皮膚色が評価され、したがって、L
*値とa
*値に基づくだけで紅斑値又は皮膚赤色値又は赤色値が算出される。しかしながら、L
*a
*b
*色空間のa
*値は緑色を表す負のa
*値を含むことがあり得るので、緑色も本発明の方法において考慮してよい。皮膚又は粘膜においては通常は正のa
*値(又は赤色値)が負のa
*値(又は緑色値)に対して優勢であるのでそれらの負のa
*値は皮膚領域又は粘膜領域の平均紅斑値に大して影響せず、それ故にどのような負のa
*値も除外する必要がない。1つの実施形態では全てのa
*値、すなわち、負のa
*値並びに正のa
*値が考慮される。したがって、1つの実施形態では負のa
*値を有する画像のあらゆる画素が平均紅斑値の計算に含まれる。しかしながら、別の実施形態では正のa
*値だけが考慮される。前記実施形態によれば、負のa
*値を有する画像のあらゆる画素が平均紅斑値の計算から除外される。他のあらゆるパラメーター、例えば、黄色、青色又は他のあらゆる色の値などが無視される。前記実施形態によれば、専ら(黒色から白色までの)輝度の値と赤色の値(緑色の値を含み得る)、例えば、L
*値とa
*値に基づいて紅斑値が算出される。
【0106】
一つの実施形態では紅斑値は、どのような等級区分又は階級も有しない、すなわち、どのような予め規定された等級にも依存していない連続的な紅斑強度測定値を提供する。
【0107】
1つの実施形態では本発明の方法は幾つかの時点で、例えば、治療前、治療中、及び/又は治療後、紅斑の発症前、発症中、及び/又は発症後、紅斑の改善前、改善中、及び/又は改善後の1つ以上の時点で繰り返される。
【0108】
とりわけ、対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率は紅斑の発症又は進行の前、その間、及び/又はその後の1つ以上の時点、又は紅斑の改善又は退行の前、その間、及び/又はその後の1つ以上の時点、又は医薬調製物又は美容調製物の投与期間の前、その間、及び/又はその後の1つ以上の時点、又は治療(例えば、皮膚領域又は粘膜領域の局所的治療、又はその対象の全身的治療)期間の前、その間、及び/又はその後の1つ以上の時点において測定される。前記紅斑値のうちの2つ以上の間の傾き、例えば、2つ以上の後続の測定値又は紅斑値の間の傾き、又は治療期間若しくは観察期間中の2つ以上の測定値又は紅斑値の間の傾きを決定することができる。したがって、あらゆる治療法(例えば、放射線)及び/又は紅斑の出現の前に採られた測定値に基づいて算出された紅斑値はベースライン紅斑値であり得る。あらゆる治療法(例えば、放射線)及び/又は紅斑の出現の間又はその後に採られた測定値に基づいて算出されたあらゆる紅斑値はフォローアップ紅斑値であり得る。
【0109】
2つ以上の紅斑値の間の傾き、例えば、2つ以上の後続の測定値又は紅斑値の間の傾き、又は治療期間若しくは観察期間中の2つ以上の測定値又は紅斑値の間の傾きを決定することができる。2つ以上の紅斑値の間での紅斑値の増加は紅斑の進行を示している。紅斑値の重大な変化が無いこと(又は2つ以上の紅斑値の間に傾きが無いこと)は安定な皮膚状態又は粘膜状態を示している。2つ以上の紅斑値の間での紅斑値の減少は紅斑の退行を示している。
【0110】
一つの実施形態では紅斑が放射線照射によって引き起こされ、且つ、放射線誘導性皮膚炎(放射線皮膚炎、又は放射線皮膚炎とも呼ばれる)及び日焼けからなる群より選択され得る。
【0111】
1つの実施形態では紅斑が細胞毒性薬品、例えば、フルオロウラシル、カペシタビン、シタラビン、ソラフェニブ、又はペグ化リポソーム性ドキソルビシン(Doxil)、又はチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、ソラフェニブ及びスニチニブ)などを用いる化学療法によって引き起こされる。そのような紅斑は手掌足底感覚異常症又は手足症候群とも呼ばれ得る。
【0112】
一つの実施形態では紅斑は薬物摂取、例えば、抗生物質(スルホンアミド類、ペニシリン類、セフィキシム)、バルビツエート類、ラモトリジン、フェニトイン(例えば、ディランチン)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、又はEGFR阻害剤などの摂取、例えば、抗EGFR抗体療法、特にセツキシマブ(エルビタックス(登録商標))の投与によって引き起こされる。
【0113】
一つの実施形態では紅斑はアレルゲン、例えば、アレルギー試験用の様々なアレルゲン、ウルシオール(ツタウルシ又はウルシによって産生される樹脂)、ペニシリン、ラテックス、又はスズメバチ、アカヒアリ及びミツバチの毒針などへの曝露によって引き起こされる。
【0114】
一つの実施形態では紅斑は例えば白癬(たむし)、又はカンジダなどの真菌感染症によって引き起こされる。
【0115】
一つの実施形態では紅斑は例えばスタフィロコッカス、ストレプトコッカス、又は例えば梅毒、ベジェル、ピンタ及びイチゴ腫などのトレポネーマ病による細菌感染症によって引き起こされる。
【0116】
一つの実施形態では紅斑はウイルス感染症によって引き起こされ、帯状疱疹、風疹、疱疹、手足口病、エンテロウイルス感染症、水痘、又はエリスロウイルス感染症(伝染性紅斑又は第5病)からなる群より選択され得る。
【0117】
一つの実施形態では紅斑は皮膚疾患によって引き起こされ、その皮膚疾患は乾癬、アトピー性湿疹又はアトピー性皮膚炎(神経皮膚炎)、湿疹、又はニキビからなる群より選択され得る。
【0118】
一つの実施形態では紅斑は内部粘膜又は外部粘膜、例えば、口腔粘膜、鼻粘膜、又は小腸粘膜を冒す疾患によって引き起こされ、炎症性腸疾患、クローン病(Morbus Crohn又はCrohn’s disease)、アフタ性口内炎、結膜炎、慢性閉塞性肺疾患、消化性潰瘍、過度の飲酒、及び胃炎からなる群より選択され得る。
【0119】
一つの実施形態では紅斑は赤面などの身体表現性障害によって引き起こされる。
【0120】
上に明記された紅斑を評価するための方法の全ての実施形態、実施例、定義及び説明は本発明のこの態様にも当てはまる。
【0121】
上に記載されたように、紅斑、例えば、放射線皮膚炎の主観的評価には米国腫瘍放射線治療グループ(RTOG)と米国国立癌研究所(NCI)によって開発された分類システムである「有害事象共通用語基準」(CTCAE、例えばCTCAE第4.03版)のような有効な評価ツールが利用可能である。
【0122】
前記CTCAE等級区分によると、第1級放射線皮膚炎にはわずかな紅斑又は乾燥性落屑が含まれ、それらには掻痒、皮膚膨満、脱毛、及び色素変調が伴い得る。これらの皮膚炎症は通常は放射線治療の開始から二〜三日又は最大で二〜三週間の後に生じる。第2級放射線皮膚炎の皮膚炎症にはほとんどが皮膚の皺及び襞に限局されている中程度から高度の紅斑又は斑状の湿性落屑、及び中程度の浮腫が含まれる。これらの皮膚炎症は多くの場合に痛みを伴い、感染症のリスクの上昇を有する(Hymes、Strom、 & Fife、2006年)。前記CTCAE等級区分による第3級放射線皮膚炎では湿性落屑の領域が皮膚の皺以外の領域にまで広がる。多くの場合に軽度の外傷と摩擦に由来する出血が存在する。第4級放射線皮膚炎は皮膚の壊死と表皮の全層の潰瘍を特徴とする生命を脅かす状態である。特に高い自発的出血の危険性が存在する。これらの変化は非常な痛みを伴い、治癒不良を特徴とする。皮膚移植が必要とされる場合があり得る。前記CTCAE等級区分による第5級放射線皮膚炎は患者の死亡をもたらす。
【0123】
1つの実施形態では前記紅斑は第0級、第1級、第2級、第3級、又は第4級の放射線皮膚炎である。1つの実施形態では前記紅斑は第0級以上、第1級以上、第2級以上、第3級以上、又は第4級以上の放射線皮膚炎である。1つの実施形態では前記紅斑は第0級から第1級に応じた放射線皮膚炎である。1つの実施形態では前記紅斑は第0級から第2級に応じた放射線皮膚炎である。1つの実施形態では前記紅斑は第0級から第3級に応じた放射線皮膚炎である。1つの実施形態では前記紅斑は第0級から第4級に応じた放射線皮膚炎である。
【0124】
1つの実施形態では前記対象はヒトである。1つの実施形態では前記対象は非ヒト動物である。その非ヒト動物は霊長類(非ヒト霊長類)、ブタ、げっ歯類、又はウサギからなる群より選択される哺乳類動物であり得る。一つの実施形態について、前記対象は放射線で治療されている、又は治療される癌患者である。1つの実施形態では前記対象は放射線で治療されている、又は治療される乳癌患者である。その乳癌患者は手術、例えば、乳房温存手術を受けていてもよい。1つの実施形態では前記対象は放射線で治療されている、又は治療される頭頚部癌(HNC)患者である。そのHNC患者は手術を受けていてもよい。それらの対象は化学療法で処置されてもよい。
【0125】
1つの実施形態では放射線照射の開始前及び/又は開始時に得られた測定値又は画像に基づいて紅斑値が算出される。前記実施形態ではその紅斑値はベースライン紅斑値(すなわち、初期紅斑値又は基準紅斑値)である。放射線照射はX線照射、紫外線照射、及び/又は日光照射を用いる治療、又はそれらへの曝露であり得る。1つの実施形態では放射線照射によって引き起こされる紅斑は上で説明されたCTCAEによる第2級以上の放射線皮膚炎である。1つの実施形態では放射線照射によって引き起こされる紅斑は上皮融解、落屑、及び/又は発疹を特徴とする。1つの実施形態では放射線照射によって引き起こされる紅斑は初期又は軽度の上皮融解、落屑、及び/又は発疹を特徴とする。
【0126】
放射線照射の開始前又は開始時の紅斑値(ベースライン紅斑値、又は初期紅斑値)並びに本発明による放射線照射の初期段階の間に測定された紅斑値の間の傾きの計算によって紅斑を発症する危険性、紅斑の強度、及び/又は紅斑の発症時期の予測が可能になる。したがって、紅斑値は放射線療法における予後診断因子を提供し、且つ、放射線の線量及び/又は放射線照射期間を評価する、且つ/又は適合させるために使用され得る。さらに、ある治療法及び/又は予防法、例えば、放射線の1つ以上の有害事象又はある治療法の1つ以上の有害薬物反応の治療法及び/又は予防法の用量及び/又は期間を評価する、且つ/又は適合させるためにベースライン紅斑値及び/又はあらゆるフォローアップ紅斑値を使用することができる。前記方法に関して、放射線皮膚炎の予期される重症度、並びに予防法及び/又は治療法を処置する必要に迫られるまでの時間についての予後診断を提供することが可能である。
【0127】
本発明の実施例において理解することができるように、ベースライン紅斑値は等級並びにある特定の等級の(例えば、第2級の)放射線皮膚炎が発症するまでの時間と強く相関している。
【0128】
したがって、本発明の方法は紅斑の等級、ある特定の等級の紅斑が生じるまでの時間、並びに対象がある特定の等級の紅斑を発症する個々の危険性を客観的に予測及び評価するために用いられ得る。
【0129】
その紅斑値と対照的に、フィッツパトリックスケール(表2)は本発明の基礎となる研究においてその開発された放射線皮膚炎の等級と相関しなかった。フィッツパトリックスケール(フィッツパトリック皮膚タイピングテスト又はフィッツパトリックフォトタイピングスケールとも呼ばれる)は皮膚色についての数値分類スキーマである。フィッツパトリックスケールはUV光に対する様々な種類の皮膚の反応を分類するための方法としてハーバードの皮膚科医であるトーマス B. フィッツパトリックによって1975年に開発された。フィッツパトリックスケールは依然として皮膚色についての皮膚科学研究用の広く認められているツールである。フィッツパトリックスケールは幾つかの要素、すなわち、遺伝的素質、日光曝露への反応、及び日焼けの習慣を測定する。
【0131】
一つの実施形態では皮膚タイプと無関係に本発明の方法を用いてよく、且つ、本発明の方法は基本皮膚色を選ぶことすらない。例えば、紅斑又は皮膚色は類似の、及び/又は異なる基本皮膚色を有する対象において評価され得る。(例えば異なる人種の)異なる皮膚色を有する対象の比較のため、基準紅斑値又は基準領域若しくは基準対象の2つ以上の紅斑値の間の基準勾配値を作成してよく、測定された紅斑値を前記基準と比較してよい。
【0132】
また、本発明の方法に関して、赤以外の色又は赤に加えた色、特に白色又は黒色を特徴とする紅斑又は皮膚炎症を評価することが可能である。例えば、乾癬は多くの場合に基底となる紅斑と共に白色又は銀色の鱗屑を特徴とする。別の例では紅斑は、特に例えばスティーブンス・ジョンソン症候群又は中毒性表皮壊死症(TEN、「ライエル症候群」としても知られる)のときのように角化細胞の壊死が起きる場合、非常に暗い色の皮膚炎症を特徴とすることもあり得る。さらに、本発明の方法は創傷及び創傷治癒を文書化及び/又は評価するために用いられ得る。概して、本発明の方法は皮膚又は粘膜の色(又は紅斑)の変化を2つ以上の測定値の間で評価することを可能にする。
【0133】
乳癌における放射線療法、放射線療法によって引き起こされる皮膚反応、上で言及されたCTCAE等級区分による紅斑の視覚的評価、分光測光法及び分光測光分析についての説明は例えばHaigis、2005年(Kristine Haigis、アルベルト・ルードヴィヒ大学フライブルク・イム・ブライスガウ医学部の医学博士の学位を獲得するための博士論文)の中に見出され得る。
【0134】
別の態様では本発明は本発明による方法を用いることによる紅斑のモニタリングと分析のためのソフトウェアツールを提供する。ソフトウェアツールはコンピューターベースで使用される。したがって、本発明の方法は概してコンピューターに実装されている。したがって、本発明による上記の方法はコンピューター又はコンピューター様の機器の上で動くソフトウェアプラットフォームに統合され得る。前記ソフトウェアプラットフォームはウェッブベース(又はクラウドベース)でもよく、且つ、画像作成及びデータ入力(例えば、可動性の画像撮影及び/又はコンピューター画像撮影、患者識別及び/又は患者情報)のためのツール、データ管理及びデータ出力(例えば、データベース及び/又は統計)のためのツール、並びにデータセキュリティー(例えば、暗号化)のためのツールを含み得る。例えば、スマートフォン、タブレット、iPhone、iPad等のような携帯機器を本発明の方法のために使用してよい。
【0135】
本発明によるソフトウェアツールは可動性アプリケーションであり得、又は別の実施形態では固定式装置(例えば、放射線照射機)のソフトウェアプラットフォームに統合し得る。本発明の方法のあらゆる時点において、方法に関連するデータをインターネット又はローカルエリアネットワーク又はワイヤレスネットワークなどのコンピューターベースのネットワークに伝送することができ、ウェッブベース又はクラウドベースのサーバー又はコンピューターのような別の物理的な位置又は複数の位置においてその方法を継続することができる。
【0136】
臨床データの文書化及び分析のための医療用ソフトウェアツールの例は、例えば、RISE(リサーチ・インダストリアル・システムエンジニアリングGmbH)社とウィーン工科大学により開発され、RISE社により供給されるインテグレーティング・クリニカル・サービス(SPICS)システム用セキュアプラットフォーム、例えば、SPICS SOUL(http://soul−doc.com/)及びSPICS VASC(http://vasc−world.com/)、並びに(上で言及された)SPICSベースのW.H.A.Tシステムである。先行技術のソフトウェアツール、特にW.H.A.Tシステム、並びに先行技術において説明される紅斑を評価するための方法は、本発明の方法を用いることで、とりわけ、紅斑値又は系統的に得られる黄色値の計算を用いることで改善され得る。
【0137】
本発明の方法に加えて紅斑の主観的評価を行ってもよい。よって、紅斑の等級は例えばCTCAEに従って医師により臨床的に評価され得る。本発明の方法によって計算された紅斑値を主観的に評価された紅斑等級と比較してよい。
【0138】
本発明による方法、特に紅斑値の計算を用いてある治療法又は疾患によって引き起こされた紅斑を評価することができ、紅斑を改善し得る治療法の有効性を評価することができ、及び/又は美容調製物の混濁度を評価することができる。例えば、医薬品及び/又は美容製品の有効性を示すために本発明の方法を用いることができる。前記医薬品は紅斑の予防及び/又は改善を目的としてよい。前記美容製品は例えば紅斑の外観の防止又は改善のため、及び/又は紅斑の被覆のための非治療用製品であってよい。さらに、ある対象を放射線照射が原因の紅斑になり易いものと特定するために本発明の方法を用いることができる。本発明の方法によって日々の手入れにおける紅斑管理の改善が可能になる。また、例えばある治療法についての、ある予防法についての、又はある臨床試験の参加についての対象の選択及び/又は脱選択のために紅斑値、特にベースライン紅斑値(すなわち、あらゆる治療の前の初期紅斑値、又は基準紅斑値)の計算を用いることができる。例えば、ベースライン紅斑値、並びにあらゆるフォローアップ紅斑値、又はそのような紅斑値のうちの2つ以上の間の傾きを、例えば放射線皮膚炎を発症する危険性が低い患者による試験データの薄弱化を妨げるための有望なスクリーニングパラメーターとして臨床試験の計画及び実施において使用してよい。また、例えばISO 17166 CIE S 007/Eに従って標準紅斑曲線、標準紅斑線量、及び/又は紅斑基準作用スペクトルを作成するために紅斑値を使用してよい。
【0139】
加えて、例えば医薬製剤の研究及び臨床前開発において、又は美容調製物の開発において動物モデルでの紅斑、例えば、皮膚毒性を評価するために本発明の方法を用いることができる。例えば、急性投与毒性試験及び/又は反復投与毒性試験において本発明による方法を用いることができる。医薬調製物又は美容調製物が皮膚に炎症を起こす可能性を判定するために本発明の方法を用いることもできる。
【0140】
さらに、ベースライン紅斑値又は放射線照射治療の初期段階の間(例えば、一日に1回の分割放射線照射による放射線療法の第1週の間)の測定値に基づいて算出された1つ以上の紅斑値、又はそのような2つ以上の紅斑値の間の傾きを使用して放射線皮膚炎を発症する危険性、放射線皮膚炎を発症するまでの時間、及び/又は放射線皮膚炎の予期される重症度、並びに予防的介入をとる必要に迫られるまでの時間を予め評価することができる。
【0141】
本発明の方法に関して、測定値又は画像を数回、幾つかの方法により、及び/又はあらゆる時点において分析してよいので複数の測定から取得されたあらゆるデータを再分析することが可能である。
【0142】
本発明の方法のさらに別の用途は食肉の分析である。食肉は様々な色合いの赤色、並びに白色及び暗色を特徴とするため、本発明の方法、特に本発明の式による赤色値の計算を使用して食肉が由来する動物種、食肉が由来する動物の部位、食肉の新鮮さの程度、並びに食肉の脂肪含有量を特定することができる。
【0143】
本発明は、対象のある領域の測定値とそのような対象に対して得られた紅斑値との間の割り振りの自動化をさらに可能にする携帯機器のソフトウェアプラットフォームに統合されている可動性アプリケーションソフトウェアを使用することによる紅斑の客観的な評価と遠隔モニタリングのための計算方法にも関する。本発明の方法はあらゆる電子的臨床モニタリング・サービスシステムとリンク可能である新規の時間節約型であり、高費用効率型である技術も提供する。
【0144】
とりわけ、本発明は、対象の紅斑を評価するための方法であって、前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するために携帯機器のソフトウェアプラットフォームに統合されているソフトウェアアプリケーションを使用するステップ、L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び式(L
*max−L
*)×a
*に従って紅斑値を算出するステップを含む前記方法にも関する。さらに、本発明は、本発明に従って紅斑値を算出することにより対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症する危険性を評価するための方法、放射線照射のために対象が発症する紅斑の強度を予測するための対応的方法、対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症するまでの時間を予測するための対応的方法、対象において紅斑を引き起こす医薬調製物又は美容調製物又はアレルゲンの能力についてその医薬調製物又は美容調製物又はアレルゲンを分析するための対応的方法、及び対象において紅斑の外観を改善する医薬調製物又は美容調製物の能力についてその医薬調製物又は美容調製物を分析するための対応的方法に関する。本発明はさらに式(L
*max−L
*)×a
*に基づいて対象の皮膚色を分析するための方法、対象の創傷又は創傷治癒を文書化又は分析するための方法、対象の血腫等級区分及び血腫発症を文書化するための方法、及び対象の痣又は黒子又はそばかすを文書化及び客観的に評価するための方法に関する。別の態様では本発明は、式(L
*max−L
*)×a
*に基づいて食肉を分析する方法に関する。別の実施形態では本発明は、携帯機器のソフトウェアプラットフォームに統合されているソフトウェアアプリケーションを使用するステップ、前記対象の皮膚領域又は粘膜領域又は結合組織領域の光反射率を測定するためのステップ、L
*a
*b色空間に従って前記測定のL
*値及びb
*値を取得するステップ、及び式(L
*max−L
*)×b
*に従って黄色値を算出するステップを含む対象の黄色度を計算するための等しく派生した方法を指し、紅斑値と組み合わされている対応的方法を対象の黄疸又はチアノーゼの文書化及び分析のために使用することができる。
【0145】
本発明は、紅斑及び他のあらゆる皮膚色を分析及びモニターするための計算方法であって、携帯機器のソフトウェアプラットフォームに統合されている可動性アプリケーションソフトウェアを利用すること、皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定すること、前記測定を分析し、且つ、紅斑値を算出するための新規の式を適用することを含む前記計算方法も提供する。皮膚赤色値又は紅斑値は皮膚の発赤又は紅斑についての全強度範囲にわたる客観的で連続的な測定値を提供する。したがって、皮膚赤色紅斑値が大きいほど紅斑の強度が高くなる。クイックレスポンスコード又はバーコードの追加的検出により、対象とそのような対象の取得された色値との間の割り振り処理の自動化が可能になる。その結果、本発明の計算方法によって、あらゆる電子的臨床モニタリング・サービスシステムとリンク可能である新規の時間節約型であり、高費用効率型である技術がもたらされる。
【0146】
別の態様では本発明は、紅斑を引き起こす医薬調製物又は美容調製物又はアレルゲンの能力についてその医薬調製物又は美容調製物又はアレルゲンを分析するために携帯機器のソフトウェアプラットフォームに統合されている前記ソフトウェアアプリケーションが使用される方法に関する。別の態様では本発明は、紅斑の外観を改善する医薬調製物又は美容調製物の能力についてその医薬調製物又は美容調製物を分析するために携帯機器のソフトウェアプラットフォームに統合されている前記ソフトウェアアプリケーションが使用される方法に関する。
【0147】
別の実施形態では前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率は医薬品の治療的使用又は美容調製物の局所的使用の前に少なくとも1回測定され、且つ、その医薬品の治療的使用又は化粧品の局所的使用の間に1つ以上の時点で測定され、紅斑値が各測定について算出される。「前記医薬品の治療的使用又は美容調製物の局所的使用」という用語は、前記態様に関して、その医薬品の治療的使用又は美容調製物の局所的使用の期間内及び/又は期間後の1つ以上の時点を指す。例えば、対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率は医薬品の治療的単回使用若しくは反復使用又は美容調製物の局所的単回使用若しくは反復使用の後の1つ以上の時点で測定される。対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率は医薬品の治療的使用期間又は美容調製物の局所的使用期間の後の1つ以上の時点、すなわち、その医薬調製物又は美容調製物がもはや適用されなくなった1つ以上の時点で測定されてもよい。前記紅斑値のうちの2つ以上の間の傾き、例えば、2つ以上の後続の測定値又は紅斑値の間の傾き、又は治療期間若しくは観察期間中の2つ以上の測定値又は紅斑値の間の傾きを決定することができる。適用期間中の2つ以上の紅斑値の間での紅斑値の増加は紅斑の進行、すなわち、その医薬調製物又は美容調製物が紅斑を引き起こすこと、又は紅斑の予防に有効ではないことを示している。適用期間中の2つ以上の紅斑値の間で紅斑値に重大な変化が無いことは安定な皮膚状態又は粘膜状態、すなわち、その医薬調製物又は美容調製物が紅斑を引き起こさないこと、紅斑の予防に有効であること、紅斑の治療に有効ではないこと、又は紅斑の外観の改善に有効ではないことを示している。適用期間中の2つ以上の紅斑値の間での紅斑値の減少は紅斑の退行、すなわち、その医薬調製物又は美容調製物が紅斑の治療又は紅斑の外観の改善に有効であることを示している。
【0148】
第6の態様の別の実施形態では美容製品の混濁度が分析される。その美容製品はメイクアップ、ファウンデーション、フェイスパウダー、カモフラージュ、カバースティック、又はコンシーラーであり得る。その製品の局所的使用後の紅斑値の減少はその美容製品が紅斑の被覆に有効であることを示している。
【0149】
本発明は携帯機器のソフトウェアプラットフォームに統合するソフトウェアアプリケーションの使用を含む計算方法にも関し、測定値又は画像があらゆる適切な可動性測定方法又は画像撮影方法、例えば、分光測光、ビデオ、ビデオフレームバッファー、及び/又はデジタル写真撮影術などによって取得され得ることを意味している。
【0150】
本発明の好ましい実施形態では測定値は、スマートフォン(例えば、iPhone4、iPhone4S、iPhone5又は上位機種)のソフトウェアプラットフォーム又はタブレットコンピューター(例えば、iPad、iPad Air、iPad Retina又は上位機種)に統合するソフトウェアアプリケーションを使用することによって取得される。
【0151】
有利な実施形態ではKinect様3D画像撮影センサーを有するスマートフォン又は光学式ヘッドマウントディスプレイ(例えば、グーグルグラス)を有するウェアラブルコンピューターのソフトウェアプラットフォームに統合するソフトウェアアプリケーションを使用することによってその測定値が取得され得る。
【0152】
使用されているソフトウェアアプリケーションを内視鏡画像撮影機器のソフトウェアプラットフォームに統合することによって測定値又は画像を取得することもできる。したがって、1つの実施形態では測定される皮膚領域又は粘膜領域は内部粘膜領域であり、光反射率は内視鏡的方法によって測定される。例えば、本発明による方法を用いて内部粘膜を冒す疾患、例えば、クローン病などとそれらの疾患の治療を診断及びモニターすることができる。
【0153】
本発明の好ましい実施形態では前記方法は、可動性ソフトウェアプラットフォームに統合されている前記ソフトウェアアプリケーションが対象IDとこの対象の分析領域の取得された色値の自動割り振りを可能にするバーコード又はクイックレスポンスコード又は近距離タグを自動的に検出する計算ステップをさらに含む。
【0154】
別の実施形態では異なる測定方法又は画像撮影方法に基づく、及び/又は異なる色深度に基づく幾つかの紅斑値を比較するため、紅斑値は100%に設定されているそれぞれの最大値に対して比較した相対値に変換され得る。本発明の好ましい実施形態では、算出された発赤値(正のa
*)が式(L
*max−L
*)×a
*/(a
*max×L
*max)に従ってL
*とa
*の最大値に基づいて正規化される。
【0155】
別の実施形態ではさらに算出された黄色値(正のb
*)が式(L
*max−L
*)×b
*/(b
*max×L
*max)に従ってL
*とb
*の最大値に基づいて正規化され、より有利な実施形態ではさらに算出された青色値(負のb
*)が式(L
*max−L
*)×b
*/(b
*min×L
*max)に従ってL
*の最大値とb
*の最小値に基づいて正規化される。
【0156】
測定された負のa
*(緑色)値の事例では、式(L
*max−L
*)×b
*/(b
*min×L
*max)に従って類似の技法が引き出され得る。提供された正規化方法のセットは、対象の黄疸又は血腫又はチアノーゼの発症及び治療の間に見られる他のあらゆる観察皮膚色についての時間依存的紅斑分析に使用され得る。
【0157】
先に記載されたように、本発明は、紅斑評価とモニタリングのための携帯機器のソフトウェアプラットフォームに統合されている可動性ソフトウェアアプリケーションであって本発明による派生的方法を適用する前記可動性ソフトウェアアプリケーションを使用する計算方法にも特に関する。したがって、この文脈では本発明による上記の方法のいずれもオンラインベース又はクラウドベースのソフトウェアプラットフォームに、例えば、ソフトウェアスイートに統合してよいことがさらに考慮されねばならない。本発明の好ましい実施形態では前記ソフトウェアアプリケーションは、対象の測定領域の遠隔紅斑評価とモニタリングをさらに可能にするウェッブベース(又はクラウドベース)の画像分析・モニタリングプラットフォームに直接的にリンクする携帯機器のソフトウェアプラットフォームに統合しており、1つの実施形態ではそのようなソフトウェアアプリケーションは画像作成及びデータ入力(例えば、可動性の画像撮影及び/又はコンピューター画像撮影、自動患者識別及び/又は患者情報の割り振り)のためのツール、データ管理及びデータ出力(例えば、データベース及び/又は統計)のためのツール、並びにデータセキュリティー(例えば、暗号化)のためのツールへのアクセスをさらに有し、又はそれらのツールを含み得る。例えば、スマートフォン、コンピュータータブレット、iPhone類(例えば、iPhone4、iPhone4S、iPhone5又は上位機種)、iPad類(例えば、(例えば、iPad、iPad Air、iPad Retina又は上位機種)等のような携帯機器を本発明の方法のために使用することができる。
【0158】
有利な実施形態ではKinect様3D画像撮影センサーを有するスマートフォン又は光学式ヘッドマウントディスプレイ(例えば、グーグルグラス)を有するウェアラブルコンピューターのソフトウェアプラットフォームに統合するソフトウェアアプリケーションを使用することによってその測定値が取得され得る。
【0159】
現在発明者が考えている最良の実施形態として上記の実施形態が開示されてきたが、紅斑値の分析に関連する上記の方法のいずれも対象の皮膚又は粘膜又は結膜の黄色値の分析、例えば、皮膚の黄疸等級区分及び黄疸発生の客観的で時間分解的な定量分析に適用可能なそれらの実施形態から直接的に派生した計算方法と組み合わせることができることが留意されるべきである。この理由のため、提供された例は限定的なものと解釈されるべきではなく、等しく派生した方法を青色値又は緑色値の分析に、例えば、対象の皮膚領域又は粘膜領域又は結合組織領域のチアノーゼ又は血腫の時間分解的分析に用いることができる。
【0160】
本発明は後続の実施形態によってさらに例示される。
【0161】
1.
対象の紅斑を評価するための方法であって、
−前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従って紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*
を含む前記方法。
【0162】
2.
対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症する危険性を評価するための方法であって、
−放射線照射の前に前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、
−次の式に従ってベースライン紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*、及び
−前記対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症する危険性に前記ベースライン紅斑値を相関させるステップ
を含む前記方法。
【0163】
3.
放射線照射のために対象が発症する紅斑の強度を予測するための方法であって、
−放射線照射の前に前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従ってベースライン紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*、及び
−放射線照射のために前記対象が発症する紅斑の強度に前記ベースライン紅斑値を相関させるステップ
を含む前記方法。
【0164】
4.
対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症するまでの時間を予測するための方法であって、
−放射線照射の前に前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、
−次の式に従ってベースライン紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*、及び
−前記対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症するまでの時間に前記ベースライン紅斑値を逆相関させるステップ
を含む前記方法。
【0165】
5.
対象において紅斑を引き起こす、又は治療する医薬調製物又は美容調製物の能力についてその医薬調製物又は美容調製物を検査するための方法であって、
−前記医薬調製物又は美容調製物の投与前及び投与後に前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従ってそれぞれの測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従ってそれぞれの測定の紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*
を含む前記方法。
【0166】
6.
対象の紅斑の外観を改善する医薬調製物又は美容調製物の能力についてその医薬調製物又は美容調製物を検査するための方法であって、
−前記医薬調製物又は美容調製物の投与前及び投与後に前記対象の皮膚領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従ってそれぞれの測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従ってそれぞれの測定の紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*
を含む前記方法。
【0167】
7.
対象の皮膚色を分析するための方法であって、
−前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従って皮膚赤色値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*
を含む前記方法。
【0168】
8.
対象の創傷又は創傷治癒を文書化又は分析するための方法であって、
−前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従って紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*
を含む前記方法。
【0169】
9.
対象の紅斑を評価するためのコンピューターベースの方法であって、
−前記対象の皮膚領域又は粘膜領域又は結合組織領域の測定光反射率を取得するステップ、及び
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従って紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*
を含む前記方法。
【0170】
10.
対象の皮膚色を分析するためのコンピューターベースの方法であって、
−前記対象の皮膚領域又は粘膜領域又は結合組織領域の測定光反射率を取得すること、及び
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得すること、及び
−次の式に従って赤色値を算出すること
(L
*max−L
*)×a
*、及び
−L
*a
*b色空間に従って前記測定のL
*値及びb
*値を取得すること、及び
−次の式に従って黄色値を算出すること
(L
*max−L
*)×b
*
を含む前記方法。
【0171】
11.
対象の紅斑を評価するためのコンピューターベースの方法であって、
−前記対象の皮膚領域又は粘膜領域又は結合組織領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従って紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*
を含む前記方法。
【0172】
12.
対象の皮膚色を分析するためのコンピューターベースの方法であって、
−前記対象の皮膚領域又は粘膜領域又は結合組織領域の測定光反射率を取得すること、及び
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得すること、及び
−次の式に従って赤色値を算出すること
(L
*max−L
*)×a
*、及び
−L
*a
*b色空間に従って前記測定のL
*値及びb
*値を取得すること、及び
−次の式に従って黄色値を算出すること
(L
*max−L
*)×b
*
を含む前記方法。
【0173】
13.
前記紅斑値が紅斑の強度に相関する、実施形態1から12の何れか一項に記載の方法。
【0174】
14.
前記光反射率が2つ以上の時点で測定され、前記紅斑値が各測定について算出される、実施形態1から13の何れか一項に記載の方法。
【0175】
15.
2つ以上の紅斑値の間の傾きが紅斑の発症に相関する、実施形態14に記載の方法。
【0176】
16.
2つ以上の紅斑値の間での増加が紅斑の進行を表す、実施形態15に記載の方法。
【0177】
17.
2つ以上の紅斑値の間での減少が紅斑の退行を表す、実施形態14に記載の方法。
【0178】
18.
2つ以上の紅斑値の間で傾きが無いことが安定な皮膚状態又は粘膜状態を表す、実施形態14に記載の方法。
【0179】
19.
L
*a
*b
*色空間において前記光反射率が測定され、前記測定から直接的にL
*値及びa
*値が取得される、実施形態1から18の何れか一項に記載の方法。
【0180】
20.
L
*a
*b
*色空間以外の色空間において前記光反射率を測定し、前記測定の光反射率値をL
*a
*b
*色空間の対応する値に変換することによってL
*a
*b
*色空間に従うL
*値及びa
*値を取得する、実施形態1から19の何れか一項に記載の方法。
【0181】
21.
前記皮膚領域又は粘膜領域が1つ以上の断片領域を含む大領域であり、前記紅斑値が各断片領域について算出される、実施形態1から20の何れか一項に記載の方法。
【0182】
22.
前記断片領域が紅斑領域、治療領域、及び/又は基準領域である、実施形態21に記載の方法。
【0183】
23.
前記紅斑値を基準紅斑値と比較する、実施形態1から22の何れか一項に記載の方法。
【0184】
24.
前記領域の光反射率がたった1つのL
*値及びたった1つのa
*値を取得するシングルスポット測定によって測定され、前記紅斑値が前記シングルスポット値に基づいて算出される、実施形態1から23の何れか一項に記載の方法。
【0185】
25.
対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率が分光測光によって測定される、実施形態1から24の何れか一項に記載の方法。
【0186】
26.
対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率が前記皮膚領域又は粘膜領域の画像を取得することにより測定される、実施形態1から25の何れか一項に記載の方法。
【0187】
27.
前記画像の単画素のL
*値及びa
*値が取得され、前記単画素について前記紅斑値が算出される、実施形態26に記載の方法。
【0188】
28.
前記皮膚領域又は粘膜領域の各画素のL
*値及びa
*値が取得され、前記皮膚領域又は粘膜領域の各画素について前記紅斑値が算出される、実施形態26又は27に記載の方法。
【0189】
29.
前記画像がデジタル写真撮影術によって取得される、実施形態26から28の何れか一項に記載の方法。
【0190】
30.
平均紅斑値が単画素紅斑値に基づいて算出される、実施形態26から29の何れか一項に記載の方法。
【0191】
31.
平均紅斑値が各断片領域について算出される、実施形態26から30の何れか一項に記載の方法。
【0192】
32.
前記皮膚領域又は粘膜領域の光反射率がチャンネル当たり8ビット、12ビット、15ビット又は16ビットの色深度を用いて測定される、実施形態26から31の何れか一項に記載の方法。
【0193】
33.
前記皮膚領域又は粘膜領域が内部粘膜領域であり、前記光反射率が内視鏡方法によって測定される、実施形態1から32の何れか一項に記載の方法。
【0194】
34.
前記対象がヒト、非ヒト霊長類、ブタ、げっ歯類、又はウサギである、実施形態1から33の何れか一項に記載の方法。
【0195】
35.
前記対象が
−紅斑になり易い、
−紅斑を引き起こし得る治療法で処置されているか、又は処置される、
−紅斑を予防する治療法で処置されているか、又は処置される、
−紅斑を患っている、
−紅斑を治療し得る治療法で処置されているか、又は処置される、又は
−紅斑の外観を改善する治療法で処置されているか、又は処置される、
実施形態1から34の何れか一項に記載の方法。
【0196】
36.
前記対象が放射線で治療されている、又は治療される癌患者である、実施形態34又は35に記載の方法。
【0197】
37.
前記対象が乳癌又は頭頚部癌の患者である、実施形態36に記載の方法。
【0198】
38.
放射線照射前、及び放射線照射後の1つ以上の時点で前記光反射率を測定し、2つ以上の紅斑値の間の傾きを算出し、対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症する危険性、又は放射線照射のために前記対象が発症する紅斑の強度に前記傾きを相関させ、又は前記対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症するまでの時間に前記傾きを逆相関させる、実施形態1から12の何れか一項に記載の方法。
【0199】
39.
対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症する危険性、放射線照射のために前記対象が発症する紅斑の強度、又は前記対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症するまでの時間がベースライン紅斑値及び2つ以上の紅斑値の間の傾きに基づいて評価又は予測される、実施形態38に記載の方法。
【0200】
40.
美容製品の混濁度が検査される、実施形態1から12に記載の方法。
【0201】
41.
食肉を分析するための方法であって、
−前記食肉の一領域又は前記食肉の切り身全体の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従って赤色値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*
を含む前記方法。
【0202】
42.
携帯機器を使用することによって前記方法が実施される、実施形態1から41の何れか一項に記載の方法。
【0203】
43.
対象の紅斑を評価するためのコンピューターベースの方法であって、
−前記対象の皮膚領域又は粘膜領域又は結合組織領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従って紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*
を含む前記方法。
【0204】
44.
対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症する危険性を評価するための方法であって、
−放射線照射の前に前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、
−次の式に従ってベースライン紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*、及び
−前記対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症する危険性に前記ベースライン紅斑値を相関させるステップ
を含む実施形態1から43の何れか一項に記載の方法。
【0205】
45.
放射線照射のために対象が発症する紅斑の強度を予測するための方法であって、
−放射線照射の前に前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従ってベースライン紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*、及び
−放射線照射のために前記対象が発症する紅斑の強度に前記ベースライン紅斑値を相関させるステップ
を含む実施形態1から44の何れか一項に記載の方法。
【0206】
46.
対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症するまでの時間を予測するための方法であって、
−放射線照射の前に前記対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、
−次の式に従ってベースライン紅斑値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*、及び
−前記対象が放射線照射によって引き起こされる紅斑を発症するまでの時間に前記ベースライン紅斑値を逆相関させるステップ
を含む実施形態1から45の何れか一項に記載の方法。
【0207】
47.
紅斑を引き起こす医薬調製物又は美容調製物又はアレルゲンの能力についてその医薬調製物又は美容調製物又はアレルゲンを分析するときに使用される実施形態1から46の何れか一項に記載の方法。
【0208】
48.
紅斑の外観を改善する医薬調製物又は美容調製物の能力についてその医薬調製物又は美容調製物を分析するときに使用される実施形態1から47の何れか一項に記載の方法。
【0209】
49.
対象の皮膚色を分析するためのコンピューターベースの方法であって、
−前記対象の皮膚領域又は粘膜領域又は結合組織領域の光反射率を測定すること、及び
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得すること、及び
−次の式に従って赤色値を算出すること
(L
*max−L
*)×a
*、及び
−L
*a
*b色空間に従って前記測定のL
*値及びb
*値を取得すること、及び
−次の式に従って黄色値を算出すること
(L
*max−L
*)×b
*
を含む前記方法。
【0210】
50.
対象の創傷又は創傷治癒を文書化又は分析するときに使用される実施形態1から49の何れか一項に記載の方法。
【0211】
51.
前記紅斑値が紅斑の強度に相関し、且つ/又は2つ以上の紅斑値の間の傾きが紅斑の発症に相関する、実施形態1から50の何れか一項に記載の方法。
【0212】
52.
2つ以上の紅斑値の間での増加が紅斑の進行を表し、2つ以上の紅斑値の間での減少が紅斑の退行を表し、且つ/又は2つ以上の紅斑値の間で傾きが無いことが安定な皮膚状態又は粘膜状態を表す、実施形態1から51の何れか一項に記載の方法。
【0213】
53.
L
*a
*b
*色空間以外の色空間において前記光反射率を測定し、前記測定の光反射率値をL
*a
*b
*色空間の対応する値に変換することによってL
*a
*b
*色空間に従うL
*値及びa
*値及びb
*値を取得する、実施形態1から52の何れか一項に記載の方法。
【0214】
54.
前記紅斑値を基準紅斑値と比較する、実施形態1から53の何れか一項に記載の方法。
【0215】
55.
対象の皮膚領域又は粘膜領域の光反射率が前記領域の画像を取得することにより測定される、実施形態1から54の何れか一項に記載の方法。
【0216】
56.
食肉を分析するための方法であって、
−前記食肉の一領域又は前記食肉の切り身全体の光反射率を測定するステップ、
−L
*a
*b
*色空間に従って前記測定のL
*値及びa
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従って赤色値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×a
*
を含む実施形態1から55の何れか一項に記載の方法。
【0217】
57.
対象の日光黒子又は単純黒子又は悪性黒子又は雀卵斑を分析するときに使用される実施形態1から56の何れか一項に記載の方法。
【0218】
58.
前記黄色値及び他のあらゆる基準黄色値の算出のために同等の技法が適用される方法であって、
−携帯機器を使用して前記対象の皮膚領域又は粘膜領域又は結合組織領域の光反射率を測定するステップ、及び
−L
*a
*b色空間に従って前記測定のL
*値及びb
*値を取得するステップ、及び
−次の式に従って黄色値を算出するステップ
(L
*max−L
*)×b
*
を含む実施形態1から57の何れか一項に記載の方法。
【0219】
59.
対象の皮膚又は粘膜又は結膜の血腫等級区分及び血腫発症を経時的に文書化及び分析するときに使用される実施形態1から58の何れか一項に記載の方法。
【0220】
60.
対象の皮膚又は粘膜又は結膜の黄疸等級区分及び黄疸発症を経時的に文書化及び分析するときに使用される実施形態1から59の何れか一項に記載の方法。
【0221】
61.
対象の皮膚又は粘膜のチアノーゼの程度及びチアノーゼ発症を経時的に文書化及び分析するときに使用される実施形態1から60の何れか一項に記載の方法。
【0222】
62.
前記携帯機器が臨床サービスシステムにリンクしている、実施形態1から61の何れか一項に記載の方法。
【0223】
63.
前記携帯機器がタブレット又はスマートフォンである、実施形態1から62の何れか一項に記載の方法。
【0224】
64.
前記携帯機器が光学式ヘッドマウントディスプレイ付きウェアラブルコンピューターである、実施形態1から63の何れか一項に記載の方法。
【0225】
65.
前記携帯機器が癌治療用放射線照射機にリンクしている、実施形態1から64の何れか一項に記載の方法。
【0226】
66.
前記画像の画素毎のL
*値とa
*値が取得され、前記画像の画素毎の赤色値が算出される、実施形態1から65の何れか一項に記載の方法。
【0227】
67.
前記画像の画素毎のL
*値とb
*値が取得され、前記画像の画素毎の黄色値が算出される、実施形態1から66の何れか一項に記載の方法。
【0228】
68.
単画素の値に基づく平均色値が算出される、実施形態1から67の何れか一項に記載の方法。
【0229】
69.
各測定断片領域の平均色値が算出される、実施形態1から68の何れか一項に記載の方法。
【0230】
70.
前記測定領域が1つ以上の断片領域を含む大領域であり、前記算出値のうちのいずれかが各断片領域について算出される、実施形態1から69の何れか一項に記載の方法。
【0231】
71.
自動マーカー認識と算出された色値の電光補正のためのカラーコード要素を含む正規化マーカーの同時測定をさらに含む、実施形態1から70の何れか一項に記載の方法。
【0232】
72.
前記正規化マーカーがステッカー又は絆創膏又はポスターとしてデザインされている、実施形態1から71の何れか一項に記載の方法。
【0233】
73.
測定された紅斑値の正規化が次の式
(L
*max−L
*)×a
*/(a
*max×L
*max)
に従って実行される、実施形態1から72の何れか一項に記載の方法。
【0234】
74.
測定された緑色値の正規化が次の式
(L
*max−L
*)×a
*/(a
*min×L
*max)
に従って実行される、実施形態1から73の何れか一項に記載の方法。
【0235】
75.
測定された黄色値の正規化が次の式
(L
*max−L
*)×b
*/(b
*max×L
*max)
に従って実行される、実施形態1から74の何れか一項に記載の方法。
【0236】
76.
測定された青色値の正規化が次の式
(L
*max−L
*)×b
*/(b
*min×L
*max)
に従って実行される、実施形態1から75の何れか一項に記載の方法。
【0237】
77.
対象と取得された前記対象の色値との間の割り振り過程を自動化するために前記対象のバーコード又はクイックレスポンスコード又は近距離タグを検出するステップをさらに含む実施形態1から76の何れか一項に記載の方法。
【0238】
78.
臨床モニタリング及び医療サービスシステムにおいて使用される実施形態1から77の何れか一項に記載の方法。
【0239】
79.
携帯電話又はスマートフォン又はタブレットなどの携帯機器を使用して前記測定ステップ及び/又は前記取得ステップ及び/又は前記算出ステップ又はそれらのあらゆる組合せ、特に全てのステップを実施する、実施形態1から78の何れか一項に記載の方法。
【0240】
80.
前記測定光反射率を好ましくはネットワーク上での伝送により取得することをさらに含む実施形態1から79の何れか一項に記載の方法。
【0241】
81.
前記光反射率が測定されずに他の方法で取得される、実施形態38に記載の方法。
【0242】
82.
ウェッブベース又はクラウドベースの処理を用いて前記取得ステップ及び/又は前記算出ステップ、特に前記ステップの全てを実施する、実施形態1から81の何れか一項に記載の方法。
【実施例】
【0243】
実施例1:本発明の方法を用いる臨床第Ib相治験
リポソーム製剤組換えヒトスーパーオキシドディスムターゼ(APN201)を用いる臨床第Ib相治験は分析された全てのエンドポイントで良好な結果をもたらした。そのパイロット試験は二重プラセボ対照盲検で実施され、乳房温存手術の後に放射線療法(25〜28回Rx分割照射、50.0Gy〜50.4Gyの総線量)を受けた20名の女性の乳癌患者を含んだ。この試験においてAPN201(rhSOD、1.6mg/mL)の毎日の局所投与は安全であり、よく忍容されることを証明することができ、重大な有害事象又は薬物関連有害事象は報告されなかった。さらに、APN201は疼痛、紅斑の強度及び第2級の皮膚炎(上皮融解)が起きるまでの時間に関して有効性の初期兆候を示した。
【0244】
患者集団
先に乳房温存手術を受けた組織学的に確認された初期ステージの乳癌を有する20名の患者が含まれた。その他の参加適格要件は、18歳以上の年齢、80%以上のカルノフスキーのパフォーマンスステータス、及びDカップ以下のブラカップサイズであった。患者が両側乳癌又は炎症性乳癌、癌性リンパ管症、照射領域を冒す医学的に有意な皮膚科学的状態を有している場合、放射線皮膚炎の予防及び/又は治療を目的とする他の薬剤の使用が計画されている場合、患者が放射線皮膚炎を悪化させるかもしれない併用薬を摂取している場合、及び患者が以前の乳房放射線療法歴を有している場合はそれらの患者は除外された。全ての患者が25〜28回の放射線(Rx)分割照射で50.0〜50.4Gyの総線量まで標準対向内外側接線野を用いる全乳房照射を受けた。19名の患者がその試験を完了し、有効性の兆候について分析された。
【0245】
治療計画及び臨床評価
APN201/プラセボの毎日の局所的薬品投与のために照射領域を縦に2つの対称的な領域に分けることによってスプリットボディーデザインを適用した。これを二重盲検的に1回目の分割照射から始めて全乳房照射の最後(第25〜28Rx分割照射)まで実施した。放射線療法の10分以上前にジェル(100cm
2の放射線照射野サイズ当たり1mL)を薄膜として乳房に塗布した。さらに、放射線療法の後に毎日、放射線照射領域の両方の部分を連続的にベパンテン(登録商標)保湿フォームスプレーで被覆した。放射線療法の開始前のベースラインから始めてCTCAE分類システム第4.03版に基づいて放射線皮膚炎を評価した。客観的な測定が放射線皮膚炎の臨床評価を反映するか検討するため、治療領域の分光測光測定値とデジタル画像の両方を最初にスクリーニング時に取得し、第6分割照射から第25又は第28分割照射まで毎日取得した。それらの分光測光測定値とデジタル画像は前記の日に試験薬品の塗布の前に取得された。安定した光条件及び標準化機器設定でキャノンデジタルカメラCanonパワーショットG12を用いてデジタル写真を撮影した。黒色、白色、3つの異なるモノクロ階調、赤色、緑色、青色、及び黄色を含む色校正カードが異なる画像の比較可能性を改善するための画像校正に使用されている。しかしながら、その色校正カードは全ての画像に存在しなかった。使用されているソフトウェアによって画像の最も高い赤色値が最大赤色値として選択され、前記最大赤色値に対してそれぞれ他の値が正規化される。したがって、画像の中にそのカードが存在する場合にはそのカードの赤色が選択されており、画像の中にそのカードが存在しない場合には画像の最も強い赤が最大赤色値(例えば、患者の皮膚、服等)として使用されている。分光測光測定値について、測定絞り(径8mm(MAV))を適用し、自動校正のスイッチを入れて分光光度計CM−700d(コニカミノルタ)を使用した。スプリットボディーデザインに従う内外側領域内の3か所の標準化領域においてシングルスポット測定を実施した。それによって得られたデータセットは2862個のシングルポイント測定値を含んだ。各測定はフランスの国際照明委員会(CIE)により承認された完全L
*a
*b
*色空間を含む。有効性の客観的な分析のため、我々はそれぞれ個々の患者(01〜20)のパラメーターL
*、a
*及びb
*を分割し、各分割照射(01〜28)と測定領域(プラセボ/実薬)について平均値を算出した。
【0246】
製剤及び組成物
APN201はcGMPに従って製造及び調合されている。原薬(rhSOD)は特許権が設定されているリポソーム製剤でカプセル化されており、1%のカルボポール981NFマトリックス(pH7.4)からなる親水性ゲル中に混合される(mL当たり1.6mgのrhSOD)。複数回投与用容器の使用に即してメチルパラベンナトリウムが保存剤として添加される。プラセボはAPN201と同じ濃度のゲル形成性マトリックス(カルボポール981NF)からなるが、空のリポソームを含む。
【0247】
生物統計と結果
評価される全ての変数について、実施される統計検査は記述的である。提示されるデータを人口学的特性及びベースライン特性、安全性観察値/測定値及び有効性観察値/測定値に関してまとめた。シングルスポット分光測光により分割照射(01〜25)に応じた各患者(n=19)の連続的L
*a
*b
*値がもたらされた。パラメーターL
*、a
*及びb
*を別々に分析し、プラセボで処置された皮膚領域と実薬で処置された皮膚領域との間で比較した(
図3)。L
*とa
*の平均値は試験期間中の放射線皮膚炎の主観的評価とよく相関したが、b
*値に関しては相関が見いだされなかった(
図3)。我々は新規の客観的パラメーターである「紅斑値」(EV)を得るアルゴリズム(100−L
*)×a
*によってL
*とa
*を組み合わせた(
図4)。APN201/プラセボ処置皮膚領域における第2級以上の等級が発症するまでの時間の最終的な分析によってAPN201の有効性の初期兆候がもたらされた(
図5)。
【0248】
結果
20名の患者が登録され、分割放射線療法の間にAPN201とプラセボを受領するように無作為に割り当てられた。25〜28回の分割照射で50.0〜50.4Gy(5回×1.8〜2Gy/週)。
【0249】
全ての患者が、年齢の中央値が58歳(40〜72歳の範囲)である白人女性であった。10名の患者では癌腫が右の乳房に位置し、10名の患者では左の乳房に位置していた。フィッツパトリックスケールによる最も共通した皮膚のタイプはその集団の65%における皮膚タイプ3番であり、続いてその集団の20%における皮膚タイプ2番であった。1名の患者は2型真性糖尿病を有しており、別の患者はバンドエイドに対する接触皮膚炎を有していた。1名の患者はその人の希望により治療を中止し、したがって、治療企図(ITT)集団は19名の患者を含んだ。
【0250】
ITTデータセットを基に全ての有効性変数を評価した。このデータセットは少なくとも1回の試験薬品の塗布を受けた全ての患者を含み、有効性データを提供した。1名の患者だけが第5回分割照射のための来院の後に不承諾のために有効性分析から除外された。したがって、ITT集団は19名の患者を含んだ。
【0251】
ITT(n=19)の最初の分光測光分析によって調査パラメーター、L
*、a
*、及びb
*に関して両方のスプリットボディ領域について同等の平均値がもたらされた。我々は治療期間中に平均L
*値の減少傾向と平均a
*値の上昇傾向を観察し、両方の客観的パラメーターの間の負の相関を明らかにした。このことはa
*値が大きいほど皮膚発赤の強度が高く、L
*値が小さいほど放射線照射治療を受けて皮膚がより暗い色になることを意味する。両方の因子は皮膚炎等級0〜2というCTC分類の主観的評価と相関する。対照的に、b
*値については経時的な重大な変化も観察された皮膚反応との相関も確認できなかった(
図3)。
【0252】
この結果に基づいて我々はさらにより明確に適合することになるアルゴリズム(100−L
*)×a
*を開発することによって関連のパラメーターL
*とa
*を組み合わせることを決心した。放射線皮膚炎の臨床評価等級(第0〜第2級)との相関におけるこの新規のパラメーターの対応するボックスブロット分析によって等級区分の上昇に付随する紅斑値(EV)平均の有意な増加が示されている。本ITT集団について、435.9というEV平均は、観察された第2級の低い発生率(19名の患者のうちの5名;26.3%)のために集団全体に対する調査のための治療が終了するまでに達することができなかった第2級の皮膚炎が最初に診断された時点で算出された。この背景ではプラセボ治療領域と実薬治療領域との間の傾向の差異を治療期間中に観察することができなかった。したがって、我々の適用した方法は新規の客観的パラメーターである紅斑値を提供し、それによって紅斑と、したがって、関連した皮膚毒性の客観的な評価が可能になる(
図4)。
【0253】
さらに、APN201/プラセボ治療皮膚領域において第2級以上の等級が発症するまでの時間の分析によってAPN201の有効性の初期兆候がもたらされた。第2級の炎症になるまでの平均時間(放射線分割照射の回数)はプラセボでは20.5分割照射(18〜24回の範囲)でありAPN201では23.0分割照射(22〜24回の範囲)であった。
【0254】
驚くべきことに、第0〜第1級の患者と第2級の患者の間での階層化によって平均EVと観察された曲線傾向の明確な差がこれらのサブグループ間で明らかになった(
図5)。第0〜第1級を有する患者(EV150)と比較すると第2級を発症した患者についてほぼ2倍高いEVの開始値(EV290)を観察することができた。
図5では紅斑値が理論的に可能な最大値に対して正規化されている。前記最大値は、この例では最大L
*値が100であり、最大a
*値が127であることを前提として決定されており、したがって、両方の積が理論的に可能な最大値とされている。測定された全ての紅斑値が前記値に対して正規化されている。
【0255】
第3級の紅斑の閾値紅斑値は本試験に含まれない別の患者の主観的に決定された1つの例となる値である。その値は医師によってその患者が第3級であると主観的に初めて診断された日に測定されており、その日は第26分割照射の日であった。その患者は治験患者と同じ疾患を有し、同じ治療を受けた。
【0256】
我々の試験では放射線照射野のサイズ(cm
2)又はフィッツパトリックスケール(1〜2対3〜4)とCTC第2級との間に相関が観察されなかった。ベースラインでのEV値はCTC第2級の発症に関連している唯一の統計学的に有意なパラメーター(p=0.015)であることが明らかになった。さらに、放射線照射前のEV値とCTC第2級の発症の推定される危険性(300以上のEVで75%以上)の直接的相関を観察することができた。
【0257】
考察
我々の観察に基づいて我々はCTC第2級以上の放射線誘導性皮膚毒性を発症する高い危険性を有する患者を特定することを予め可能にする新規の紅斑値(EV)パラメーターの導入を考えている。放射線照射の開始時に患者個人のEVを測定することは、抗酸化剤を用いる有望な予防的治療、例えば、我々の試験で実施されたAPN201の局所投与を検討するために非常に臨床的に適切である可能性がある。第二に、EVは放射線皮膚炎を発症する危険性が低い患者による試験データの薄弱化を妨げるための有望なスクリーニングパラメーターとして検討されるべきである。
【0258】
実施例2:黒色から白色及び赤色までの重複性色勾配
対象の取得された画像の遠隔分析への我々の主唱する紅斑値の適用可能性を証明するため、我々はカラーチャンネル当たり8ビットの色深度(R/G/B)を使用するインシリコ方法によって最も暗い赤色から始まって最も明るい赤色までの赤色勾配を作成した。これはRGB色空間内の原色Rの値を0から255まで(8ビット)増加させることによって達成され、その後に一定に保持された。Rの増加側では原色Gと原色Bは両方とも常に0の値を有し、Rの一定側ではGとBは両方とも0から255まで1ステップサイズによって上昇する値を有する。
図6Bを参照されたい。結果生じる値をL
*a
*b
*色空間に変換し、
図6Aに表示した。
図6の第4シリーズは式((255−L
*)×a
*)によって算出され、0から255までの範囲の比較可能な値を得るために255によって除算された対応する紅斑値を示している。
図7はRGBとL
*a
*b
*色空間の全ての値を含む上記の赤色勾配を示している。
【0259】
さらに、系統的な等しく派生した技法を用いて対象の皮膚領域又は粘膜領域又は結合組織領域の黄色値の評価、例えば、黄疸疾患の客観的で時間分解的な評価への我々の発明の適用可能性を検査した。我々は黄色カラーチャンネル当たり8ビットの色深度(R/G/B)を使用するインシリコ方法によって暗い黄色(重症の等級の黄疸に観察される黄色がかったビリルビン色素の色を反映している)から始まって明るい黄色までの黄色勾配を作成した。これはRGB色空間内の原色Rの値を0から255まで(8ビット)増加させることによって達成され、その後に一定に保持された。Rの増加側では原色Bは常に0の値を有する。Rの一定側ではBは0から255まで1ステップサイズによって上昇する値を有する。原色GはRの増加側で0から始まって0から255まで均一に上昇する。
図8Bを参照されたい。結果生じる値をL
*a
*b
*色空間に変換し、
図8Aに表示した。
図8の第4シリーズは式((255−L
*)×b
*)によって算出され、0から255までの範囲の比較可能な値を得るために255によって除算された対応する紅斑値を示している。
図9はRGBとL
*a
*b
*色空間の全ての値を含む上記の黄色値勾配を示している。
【0260】
考察
我々の方法はヒトの眼による皮膚発赤の視覚的認知と一致して広いほぼ線形範囲の算出紅斑値を提供し、我々の開発した方法の技術的実用可能性を証明している。その結果、L
*a
*b
*色空間に従う測定値のL
*値及びa
*値を取得し、式(L
*max−L
*)×a
*に従って皮膚赤色値を算出することを含む対応する系統的ステップが、クラウドベースの紅斑評価・文書化プラットフォームに統合するソフトウェアツールの作成によって技術的に切り替えられた。そのソフトウェアツールはさらに対象の皮膚領域又は粘膜領域又は結合組織領域の光反射率を測定するためのあらゆる可動性ソフトウェアアプリケーションにリンクすることが可能である。
【0261】
さらに、結果として、派生的計算方法がL
*値及びb
*値の取得、及び本発明を対象の他のあらゆる観察色値に対して、例えば、黄疸の場合は黄色がかった色素形成、又は対象の皮膚領域又は粘膜領域又は結合組織領域のチアノーゼ又は血腫の場合は青味がかった色素形成に対してさらに拡張することを可能にし得る式(L
*max−L
*)×a
*に従う対象の黄色値の算出について主唱された。
【0262】
実施例3:第I相治験においてレンズ状母斑(Naevus lenticularis)領域の紅斑値を分析するための本発明の方法を組み込んでいるソフトウェアアプリケーションの使用(A)と分析された紅斑値の時間依存的変化(B)
提供された我々の発明の方法を統合する我々のソフトウェアアプリケーションの能力を検査するため、我々は臨床第I相治験に付随するこれまでに記載された標準化画像撮影方法によって作成された14名の異なる対象(男性/女性)の皮膚領域の画像を取得した。その治験は、医薬物質がレンズ状母斑(Naevus lenticularis)領域を漂白することによって日光黒子の強度を減ずる想定される能力についてその医薬物質の有効性を客観的に評価することを目標とした。したがって、1セット20個の母斑を12名の個々の対象において総計で4週間の治療期間にわたって評価した。紅斑分析は局所的皮膚治療の開始前(第1回来院)に撮影された画像から始まり、局所的治療の開始から4週間後の最終日(第4回来院)に終了した。使用されたソフトウェアアプリケーションは標準化画像作成と対象又は対象の分析領域(母斑)に割り振られ得る特定のQRコードの認識による対象への作成された画像撮影データの自動割り振りを可能にする幾つかのツールを備える。携帯機器(iPhone)のソフトウェアプラットフォーム上で我々のアプリケーションを使用することにより、得られた画像を暗号化し、クラウドベースのオンラインプラットフォームにアップロードした。前記ソフトウェアアプリケーションは、対象の測定領域の遠隔紅斑評価とモニタリングをさらに可能にするウェッブベース(クラウドベース)の画像分析・モニタリングプラットフォームに直接的にリンクすることができる。我々の画像文書化・評価プラットフォームに統合されている選択ツールを使用して目的の領域(母斑領域又は基準皮膚領域)をマークした。その後に式(L
*max−L
*)×a
*に従う本発明の計算方法によって様々な目的の領域の単一紅斑値を算出し、相対的紅斑値を得る式(L
*max−L
*)×a
*/(a
*max×L
*max)に従って算出値を自動的に正規化した。そのような相対的紅斑値は最小で0から最大で1までの範囲であり得る。
【0263】
考察
図10Aの例示的結果によってわかるように、可動性ソフトウェアアプリケーションに統合されている我々の開発した方法を適用することによって正常な外見の皮膚領域(基準)と日光黒子を特徴とする皮膚領域における紅斑値の客観的な遠隔評価が可能になる。撮影された画像を解釈する相談を受けた皮膚科学の専門家の主観的な視覚的認知と一致して、我々の対象における日光黒子の平均強度の減少が日光黒子母斑の局所的薬品治療によって引き起こされないことを驚くべきことに我々の発明の方法によって確認することができた。本明細書において、皮膚発赤(紅斑)値の時間依存的分析によってそのことを証明することができた。
図10Bを参照されたい。
【0264】
現在発明者が考えている最良の実施形態として上記の実施形態及び例示的分析結果が開示されてきたが、一旦本方法が提供されると本技術分野の当業者は上記の特定の実施形態において例として挙げられた潜在的な用途の範囲を実質的に拡大することができるため、これらの提供された実施例及び提供された例となる分析結果は限定的なものと解釈されるべきではないことが留意されるべきである。