(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源からの光を測定光と参照光に分割して対象物体と参照物体に入射させ、対象物体で反射された測定光と参照物体で反射された参照光を重畳させて生成される干渉光に基づき対象物体の断層像を撮影する断層像撮影装置であって、
測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第1撮影モードと、
測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第2撮影モードと、を備え、
前記第2撮影モードにおける二次元走査に要する時間が、前記第1撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短く、
前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて、前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行った後、前記第1撮影モードで断層像の撮影が行われ、
前記第1撮影モードにおける二次元走査がラスタ走査であり、
前記第2撮影モードにおける二次元走査が、前記第1撮影モードにおけるラスタ走査を間引きした走査であることを特徴とする断層像撮影装置。
【背景技術】
【0002】
眼科診断機の一つで、眼底の断層像を撮影するOCT(Optical Coherence Tomography)という光干渉を利用した断層像撮影装置がある。このような断層像撮影装置は広帯域な低コヒーレント光を、眼底に照射し、眼底からの反射光を参照光と干渉させて眼底の断層像を高感度に撮影することができる。このような断層像撮影装置により、眼底の左右方向をx方向、縦方向をy方向、奥行きをz方向として、xz方向の断層画像(Bスキャン画像)を取得することができる。一般的なOCTの撮影を行えば、例えば40枚/秒の速度で断層像が撮影され、一度の検査(網膜中のある一部分での撮影)で100枚以上の網膜の断層画像群が取得できる。
【0003】
一般に、断層像の撮影を行う際には、最適な眼底の断層画像が得られるように、撮影前に撮影部位の位置調整や参照ミラーの位置調整、フォーカス調整、分散補償ガラスの決定といった撮影条件の調整を行う。
図7に示すように、三次元断層構造を撮影するためにラスタ走査を行う場合、撮影前の撮影条件の調整時には二次元で設定された走査画角の中心の高速軸方向(x方向)のみを連続的に走査して得られた断層画像を見ながら撮影条件の調整を行い、その後実際に断層像を撮影する際には本来の走査画角エリア全体をラスタ走査する方法がある。このような方法においては、撮影条件の調整時に得られる断層画像がほぼ一定であり、当該断層画像において撮影部位の形態変化も発生しにくいため、断層画像における撮影部位の出現位置やフォーカス調整等の撮影条件の調整が行い易いという利点がある。
【0004】
一方、ラスタ走査エリアが広い場合や、撮影対象が強度近視眼である場合、網膜周辺部位を撮影する場合、視神経乳頭部を撮影する場合等においては、撮影される断層画像の湾曲が大きくなり、走査する位置によって断層画像における撮影部位の出現位置が大きく異なるため、ラスタ走査の中心位置だけを走査して得られた断層画像を基に撮影条件の調整を行って撮影条件を最適化しても、ラスタ走査の中心位置以外における測定対象の形態を把握できていない以上、適切なフォーカス位置や参照ミラーの位置を決定することができない。その結果、ラスタ走査の中心位置以外の走査によって得られた断層画像においては、フォーカスずれや撮影部位の断層構造の折り返しが発生してしまうおそれがある。また、折り返しをおそれるあまり不必要に撮影部位の出現位置を下に設定してしまうことにより、画像コントラストの低下を招くことになるおそれもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
撮影条件の調整時においても断層像の撮影時と同様にラスタ走査エリア全体の走査を行えば、全ての撮影部位の断層画像を撮影条件の調整中に観察することができ、最適な撮影条件を決定することができるため、理想的ともいえる。しかしながら、走査エリア全体のラスタ走査には時間がかかり、撮影条件の調整にかかる時間も長くなる。実際の断層像の撮影は撮影条件の調整を行って撮影条件の最適化を行った後になるので、一連の撮影動作に時間がかかってしまい、撮影完了までに被検者に長時間の我慢を強いることによって固視微動等の外乱影響も受け易くなってしまう。大きな固視微動が発生した場合には再び撮影条件の調整が必要となってしまうため、撮影時間がより長くかかってしまう悪循環へとつながる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、短時間で撮影条件の調整を完了させて最適な撮影条件を決定することができる断層像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、光源からの光を測定光と参照光に分割して対象物体と参照物体に入射させ、対象物体で反射された測定光と参照物体で反射された参照光を重畳させて生成される干渉光に基づき対象物体の断層像を撮影する断層像撮影装置であって、測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第1撮影モードと、測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第2撮影モードと、を備え、前記第2撮影モードにおける二次元走査に要する時間が、前記第1撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短く、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて、前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行った後、前記第1撮影モードで断層像の撮影が行われることを特徴とする断層像撮影装置を提供する(発明1)。
【0008】
なお、本願において、第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整には、断層像撮影装置と対象物体である被検眼との位置合わせ、被検眼の視度に応じてフォーカスレンズの位置を移動させてピントを合わせるフォーカス調整、測定光と参照光とを重畳させて干渉光を生成すべく参照ミラーの位置を移動させて測定光学系と参照光学系の光路長を合わせる参照ミラー位置調整、断層像のぼけの原因となる屈折率分散を補償するための適切な分散補償ガラスを選択する分散補償ガラス決定等、最適な眼底の断層画像が得られるように断層像の撮影前に行われる様々な調整操作が含まれる。
【0009】
上記発明(発明1)によれば、第1撮影モードより走査に要する時間が短い二次元走査によって断層像を撮影する第2撮影モードが設けられているため、当該第2撮影モードにおいて第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行うことにより、短時間で撮影条件の調整を完了させることができる。また、第2撮影モードにおける断層像の撮影を、従来のように一次元的にラスタ走査の中心位置等を走査するものではなく、二次元走査によって行うことにより、撮影部位のほぼ全体をカバーする断層画像を撮影条件の調整中に観察することができるため、最適な撮影条件を決定することができる。
【0010】
上記発明(発明1)においては、前記第2撮影モードにおける走査領域が、前記第1撮影モードにおける走査領域中の注目領域を含む領域であることが好ましい(発明2)。ここで、注目領域とは、第1撮影モードの走査領域における撮影対象物体の形態の変化を代表する領域のことである。
【0011】
上記発明(発明2)によれば、第1撮影モードで断層像の撮影をするときに走査の対象とする領域内の注目領域が、第2撮影モードにおいて走査をする対象に含まれることになるため、第1撮影モードで断層像の撮影をするときに必要な撮影条件の調整をするのに十分な情報を、第2撮影モードで撮影された断層像から得ることができる。ここで、第2撮影モードにおける走査領域は、第1撮影モードにおける走査領域中の注目領域を含んでいれば、第1撮影モードにおける走査領域よりも広くても狭くてもよい。
【0012】
上記発明(発明1,2)においては、前記第1撮影モードにおける二次元走査がラスタ走査であることが好ましい(発明3)。また、上記発明(発明2)においては、前記第2撮影モードにおける二次元走査が、前記第1撮影モードにおけるラスタ走査を間引きした走査であることが好ましい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明1〜3)においては、前記第1撮影モードにおける走査領域中の注目領域を含む矩形領域の4辺を走査する走査であってもよく(発明5)、前記第1撮影モードにおける走査領域中の注目領域を含む矩形領域の1本あるいは2本の対角線を走査する走査であってもよい(発明6)。
【0014】
また、上記発明(発明4)においては、測定光を一次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第3撮影モードを更に備え、前記第3撮影モードで撮影された断層像に基づいて第1調整操作を行った後、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて第2調整操作が行われてもよいし(発明7)、撮影された断層像に基づいて生成された対象物体の断層画像を表示する表示手段を更に備え、前記表示手段が、前記第2撮影モードにおいて、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみを表示する第1表示モードと、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像を順に表示する第2表示モードとを切り替え可能に構成されており、前記第1表示モードで表示された断層画像に基づいて第1調整操作を行った後、前記第2表示モードで表示された断層画像に基づいて第2調整操作が行われてもよい(発明8)。
【0015】
なお、本願において、第1調整操作とは、断層像のぼけの原因となる屈折率分散を補償するために適切な分散補償ガラスを選択する分散補償ガラス決定、及び被検眼の視度に応じてフォーカスレンズの位置を移動させてピントを合わせるフォーカス調整を行うことを意味する。また、本願において、第2調整操作とは、被検眼の視度に応じてフォーカスレンズの位置を移動させてピントを合わせるフォーカス調整、及び測定光と参照光とを重畳させて干渉光を生成すべく参照ミラーの位置を移動させて測定光学系と参照光学系の光路長を合わせる参照ミラー位置調整を行うことを意味する。
【0016】
上記発明(発明7,8)によれば、特定の一の断層画像のみに基づいて適切に調整可能な第1調整操作と、二次元走査によって得られた複数の断層画像に基づいて調整した方がより適切に調整できる第2調整操作とを、それぞれ別々に行うことができるため、短時間により最適な撮影条件を決定することができる。
【0017】
上記発明(発明1〜8)においては、前記第2撮影モードで撮影された断層像を記憶する記憶手段を更に備えることが好ましい(発明9)。従来、撮影条件の調整用に取得された断層像は調整用途以外に用いられることがなかったが、上記発明(発明9)によれば、第2撮影モードで撮影した断層像データを保存しておくことができるため、当該データを第1撮影モードで撮影した断層像から生成される断層画像の位置合わせ補正に使用したり、サムネイル画像として使用したりすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の断層像撮影装置によれば、短時間で撮影条件の調整を完了させて最適な撮影条件を決定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態に係る断層像撮影装置の全体構成を示す光学図である。本実施形態に係る断層像撮影装置は被検眼Eの眼底を撮影対象物体とし、当該眼底の所望の領域の断層像をラスタ走査によって撮影するものである。符号10で示す部分は分波/合波光学系で、この光学系には、波長が700nm〜1100nmで数μm〜数十μm程度の時間的コヒーレンス長の光を発光する例えばスーパールミネッセントダイオード(SLD)からなる広帯域な低コヒーレンス光源11が設けられる。
【0022】
低コヒーレンス光源11で発生した低コヒーレンス光は、光量調整機構12を介して光量が調整され、光ファイバ13aにより光カプラ13に入射し、続いて光ファイバ13b、コリメートレンズ14を介して分割光学素子としてのビームスプリッタ20に導かれる。なお、光カプラ13の代わりに光サーキュレータを用いて分波、合波するようにしてもよい。
【0023】
ビームスプリッタ20に入射した光は参照光と測定光に分割される。測定光はフォーカスレンズ31に入射し、測定光が被検眼Eの眼底に合焦される。眼底にピントの合った測定光はミラー32で反射されてレンズ33を通過し、x軸走査ミラー(ガルバノミラー)34、y軸走査ミラー(ガルバノミラー)35で任意の方向に走査される。x軸、y軸走査ミラー34、35で走査された測定光は、スキャンレンズ36を通過し、ダイクロイックミラー37で反射された後、対物レンズ38を通過して眼底に入射し、眼底が測定光でx、y方向に走査される。眼底で反射された測定光は上記の経路を逆にたどってビームスプリッタ20に戻ってくる。
【0024】
このような光学系で、ビームスプリッタ20から後のフォーカスレンズ31、ミラー32、レンズ33、x軸走査ミラー34、y軸走査ミラー35、スキャンレンズ36、ダイクロイックミラー37及び対物レンズ38は、断層像撮影装置の測定光学系30を構成している。
【0025】
一方、ビームスプリッタ20で分割された参照光は、ミラー41で反射された後、対物レンズ用分散補償ガラス42、レンズ43、44を通過する。その後、ミラー45で反射されて、対象物体である被検眼Eの屈折率分散を補償する被検眼分散補償ガラス50を通過した後、ダイクロイックミラー46で反射され、集光レンズ47、光量を調整する可変アパーチャ48を通過し、参照ミラー49に到達する。光路長を合わせるために集光レンズ47、可変アパーチャ48と参照ミラー49は、
図1において2重矢印で図示したように、一体で光軸方向に移動する。参照ミラー49で反射された参照光は上記の光路を逆にたどってビームスプリッタ20に戻ってくる。
【0026】
本実施形態では、測定光学系30のフォーカスレンズ31、レンズ33、スキャンレンズ36、及び対物レンズ38は、参照光学系40のレンズ43、44、集光レンズ47、及び対物レンズ用分散補償ガラス42にそれぞれ対応していてそれぞれの分散特性が同じないし等価となっている。また、測定光学系30のミラー32、x軸走査ミラー34、y軸走査ミラー35、ダイクロイックミラー37は、参照光学系40のミラー41、ミラー45、参照ミラー49、ダイクロイックミラー46にそれぞれ対応していてその分散特性が同じないし等価となっている。また、被検眼Eの分散特性と被検眼分散補償ガラス50の分散特性が同じないし等価になっている。
【0027】
このような光学系で、ミラー41、対物レンズ用分散補償ガラス42、レンズ43、44、ミラー45、被検眼分散補償ガラス50、ダイクロイックミラー46、集光レンズ47、参照物体としての参照ミラー49は断層像撮影装置の参照光学系40を構成している。
【0028】
ビームスプリッタ20に戻ってきた測定光と参照光は重畳されて干渉光となり、コリメートレンズ14、光カプラ13を通り、光ファイバ13cを介して分光器16に入射する。分光器16は回折格子16a、結像レンズ16b、ラインセンサ16cなどを有しており、干渉光は、回折格子16aで低コヒーレンス光の波長に応じたスペクトルに分光されて結像レンズ16bによりラインセンサ16cに結像される。
【0029】
ラインセンサ16cからの信号は、コンピュータ17のCPUなどで実現される断層画像形成手段でフーリエ変換を含む信号処理が行われ、眼底の深度方向(z方向)の情報を示す深さ信号が生成される。眼底の走査の各サンプリング時点での干渉光によりそのサンプリング時点での深さ信号(Aスキャン画像)が得られるので、1走査が終了すると、その走査方向に沿ったz方向画像(Aスキャン画像)からなる二次元の断層画像(Bスキャン画像)を形成することができる。形成された断層画像(Bスキャン画像)はディスプレイ18に表示することができる。また、形成された断層画像はコンピュータ17内の記憶部(不図示)に記憶させておくことができる。
【0030】
本実施形態に係る断層像撮影装置は、実際に断層像を撮影する際の撮影条件を最適化するために、いくつかの撮影条件の調整を行う。撮影条件の調整としては、例えば、断層像撮影装置と対象物体である被検眼Eとの位置合わせ、被検眼Eの視度に応じてフォーカスレンズ31の位置を移動させてピントを合わせるフォーカス調整、測定光と参照光とを重畳させて干渉光を生成すべく参照ミラー49の位置を移動させて測定光学系と参照光学系の光路長を合わせる参照ミラー位置調整、断層像のぼけの原因となる屈折率分散を補償するために適切な被検眼分散補償ガラス50を選択する分散補償ガラス決定が挙げられる。
【0031】
本実施形態に係る断層像撮影装置は、撮影条件の調整を行うための断層像を撮影する予備撮影モード(第2撮影モード)と、撮影条件の調整によって最適な撮影条件を決定した後に実際に眼底の所望の領域(走査領域)の断層画像を得るための断層像を撮影する本撮影モード(第1撮影モード)とを切り替え可能に構成されている。具体的には、断層像撮影装置は予備撮影モード及び本撮影モードでそれぞれ異なる走査パターンを用いて断層像を撮影し、撮影モード切替操作によって予備撮影モードと本撮影モードとを切り替えることができる。
【0032】
本撮影モードにおいては、
図2に示すように、走査領域全体をラスタ走査する。本実施形態においては、本撮影モードでは高速軸方向(x方向)に全部で256本の走査を行うが、これに限られるものではなく、撮影対象や撮影目的、走査領域のサイズに応じて適宜変更されてよい。
【0033】
一方、予備撮影モードにおいては、
図3に示すように、低速軸方向(y方向)の走査間隔を広げることにより、本撮影モードの走査密度より粗い走査密度の走査、つまり、本撮影モードにおけるラスタ走査の高速軸方向(x方向)の走査を間引きした走査を行う。本実施形態においては、予備撮影モードでは高速軸方向(x方向)に全部で11本の走査を行うが、これに限られるものではなく、撮影対象や撮影目的、走査領域のサイズに応じて適宜変更されてよい。少なくとも走査領域内における対象物体の形状変化を把握するのに十分な走査数とすれば、撮影条件の最適化は適切に実施可能である。ただし、予備撮影モードが、本撮影モードよりも走査密度を粗くすることによって撮影条件の調整用の断層像の撮影に要する時間を短くし、短時間で撮影条件の調整を完了させる効果を狙っているものであることから、予備撮影モードの走査数は本撮影モードの走査数の1/2〜1/20の範囲に設定することが望ましい。
【0034】
本実施形態において、予備撮影モードにおける走査領域は本撮影モードにおける走査領域と同じ領域になっており、そのため、当然に本撮影モードにおける走査領域中の注目領域は予備撮影モードにおける走査領域に含まれている。ここで、注目領域とは、本撮影モードの走査領域における撮影対象物体(被検眼Eの眼底)の形態の変化を代表する領域のことである。
【0035】
本実施形態においては、予備撮影モードにおいて撮影された断層像から生成された被検眼Eの眼底の断層画像をディスプレイ18に表示するに際して、選択表示モード及び連続表示モードの二つの表示モードが用意されており、表示モード切替ボタン(不図示)によって選択表示モードと連続表示モードとを切り替えることができる。選択表示モードは、予備撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみをディスプレイ18に表示する表示方式であり、本実施形態においては走査領域のy方向の中心位置の走査(
図3における番号6の走査)により撮影された断層像に基づいて生成された1枚の断層画像のみを繰り返し表示する。連続表示モードは、予備撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像を順に連続してディスプレイ18に表示する表示方式であり、本実施形態においては全ての走査(
図3における番号1〜11の走査)により撮影された断層像に基づいて生成された11枚の断層画像を順に繰り返し表示する。
【0036】
本実施形態においては、撮影条件の調整を第1調整操作及び第2調整操作の二段階に分け、前述の選択表示モードを使って第1調整操作を、連続表示モードを使って第2調整操作を行う。第1調整操作では、断層像のぼけの原因となる屈折率分散を補償するために適切な被検眼分散補償ガラス50を選択する分散補償ガラス決定、及び被検眼Eの視度に応じてフォーカスレンズ31の位置を移動させてピントを合わせるフォーカス調整を行う。また、第2調整操作では、被検眼Eの視度に応じてフォーカスレンズ31の位置を移動させてピントを合わせるフォーカス調整、及び測定光と参照光とを重畳させて干渉光を生成すべく参照ミラー49の位置を移動させて測定光学系と参照光学系の光路長を合わせる参照ミラー位置調整を行う。このように、特定の一の断層画像のみに基づいて適切に調整可能な第1調整操作と、二次元走査によって得られた複数の断層画像に基づいて調整した方がより適切に調整できる第2調整操作とをそれぞれ別々に行うことにより、短時間により最適な撮影条件を決定することができる。
【0037】
本実施形態における予備撮影モードと本撮影モードの切替、選択表示モードと連続表示モードの切替を用いた撮影条件の調整の流れを説明する。
図4(a)に示すように、まず第1調整操作を予備撮影モードにて行うが、第1調整操作は特定の一の断層画像のみに基づいて適切に調整可能なものである。そのため、このときディスプレイ18は選択表示モードに設定し、番号6の走査により撮影された断層像に基づいて生成された断層画像T
6のみを繰り返し表示する。
【0038】
選択表示モードにて第1調整操作を完了したら、続いて、
図4(b)に示すように、撮影方式は予備撮影モードのまま、表示モード切替ボタンを押してディスプレイ18を連続表示モードに切り替え、二次元走査によって得られた複数の断層画像に基づいて調整した方がより適切に調整できる第2調整操作を行う。連続表示モードでは、断層画像T
1〜T
11が順番に繰り返し表示される。
【0039】
連続表示モードにて第2調整操作を完了したら、
図4(c)に示すように、撮影モード切替ボタンを押して予備撮影モードから本撮影モードに切り替え、最適化された撮影条件のもと、走査領域全体を高速軸方向(x方向)に全部で256本のラスタ走査を行い、被検眼Eの眼底の断層像の撮影を行う。
【0040】
なお、選択表示モード及び連続表示モードは断層画像の表示方式の違いであるにすぎず、いずれの表示モードを選択した場合においても、被検眼Eの断層像の撮影自体は予備撮影モードのもとで番号1〜11の全部で11本の走査により行われている。つまり、選択表示モードに設定した場合であっても、番号6の走査のみを行って断層画像T
6を生成するための断層像のみを撮影しているわけではなく、番号1〜11の走査を行って断層画像T
1〜T
11を生成するために必要な断層像の撮影は行われている。
【0041】
また、予備撮影モードで撮影した断層像データ及びそれを基にして生成された断層画像はコンピュータ17内の記憶部(不図示)に保存される。予備撮影モードで撮影して取得した断層画像は、本撮影モードで撮影して得られる断層画像よりも数倍〜数十倍高速にラスター走査して得られるものであるため、低速軸方向の固視微動による位置ずれを抑えた撮影が可能となる。この予備撮影モードで取得した各断層画像を基準として、第1撮影モードで取得した断層画像を位置ずれ補正を行い再配置すれば、固視微動の影響を排除した高密度画像を得ることが可能となる。
【0042】
以上述べたように、本実施形態の断層像撮影装置によれば、本撮影モードより走査密度の粗い二次元走査によって断層像を撮影する予備撮影モードが設けられており、予備撮影モードにおける二次元走査に要する時間が、本撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短くなるため、当該予備撮影モードにおいて本撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行うことにより、短時間で撮影条件の調整を完了させることができる。また、予備撮影モードにおける断層像の撮影を、従来のように一次元的にラスタ走査の中心位置等を走査するものではなく、走査密度は粗いものの二次元走査によって行うことにより、撮影部位のほぼ全体をカバーする断層画像を撮影条件の調整中に観察することができるため、最適な撮影条件を決定することができる。
【0043】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。第2実施形態に係る断層像撮影装置の全体構成は第1実施形態に係る断層像撮影装置と同一であるため、光学系その他の説明は省略する。また、第1実施形態と同じ素子、部品、装置については同じ符号を使用し、同じ用語は同じ意味を持つものとして使用する。以下、第1実施形態に係る断層像撮影装置と異なる点について説明する。
【0044】
本実施形態に係る断層像撮影装置は、撮影条件の調整を第1調整操作と第2調整操作とに分け、第1調整操作を行うための断層像を撮影する調整撮影モードと、第2調整操作を行うための断層像を撮影する予備撮影モードと、第1及び第2調整操作によって最適な撮影条件を決定した後に実際に走査領域の断層画像を得るための断層像を撮影する本撮影モードとを切り替え可能に構成されている。具体的には、断層像撮影装置はそれぞれのモードでそれぞれ異なる走査パターンを用いて断層像を撮影し、撮影モード切替操作によって調整撮影モード、予備撮影モード及び本撮影モードを切り替えることができる。
【0045】
予備撮影モード及び本撮影モードにおける走査パターンは第1実施形態と同じである。調整撮影モードは、測定光を一次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の注目位置の断層像を撮影する撮影モードであり、例えば、走査領域のy方向の中心位置を注目位置としてx方向に一次元走査する。なお、注目位置は撮影対象や撮影目的、走査領域のサイズに応じて適宜変更されてよい。
【0046】
第1調整操作は特定の一の断層画像のみに基づいて適切に調整可能であるから、走査領域を二次元走査して複数の断層画像を得る必要はない。また、走査領域を二次元走査するよりも、走査領域内の注目位置を一次元走査する方が断層像の撮影に要する時間を短くすることができる。そのため、予備撮影モードとは別に、走査領域内を一次元走査する調整撮影モードを設け、特定の一の断層画像のみに基づいて適切に調整可能な第1調整操作は調整撮影モードで、二次元走査によって得られた複数の断層画像に基づいて調整した方がより適切に調整できる第2調整操作は予備撮影モードでそれぞれ別々に行うことにより、短時間により最適な撮影条件を決定することができる。
【0047】
なお、第1実施形態では、第1調整操作と第2調整操作とを分けて行うために、予備撮影モードにおいて、断層画像のディスプレイ18への表示方式として選択表示モード及び連続表示モードの二つが用意されていたが、本実施形態では調整撮影モードが設けられているため、選択表示モードに切替可能な表示方式は不要である。したがって、以下においては、予備撮影モードにおける表示方式は連続表示モードであるものとして説明を進める。
【0048】
本実施形態における調整撮影モード、予備撮影モード及び本撮影モードの切替を用いた撮影条件の調整の流れを説明する。
図5(a)に示すように、まず第1調整操作を調整撮影モードにて行う。調整撮影モードでは、走査領域のy方向の中心位置Cをx方向に走査して撮影された断層像に基づいて生成された断層画像T
cがディスプレイ18に繰り返し表示される。
【0049】
調整撮影モードにて第1調整操作を完了したら、続いて、
図5(b)に示すように、撮影モード切替ボタンを押して調整撮影モードから予備撮影モードに切り替え、ディスプレイ18に順番に繰り返し表示される断層画像T
1〜T
11を確認しながら第2調整操作を行う。
【0050】
予備撮影モードにて第2調整操作を完了したら、
図5(c)に示すように、再び撮影モード切替ボタンを押して予備撮影モードから本撮影モードに切り替え、最適化された撮影条件のもと、走査領域全体を高速軸方向(x方向)に全部で256本のラスタ走査を行い、被検眼Eの眼底の断層像の撮影を行う。
【0051】
以上述べたように、本実施形態の断層像撮影装置によれば、特定の一の断層画像のみに基づいて適切に調整可能な第1調整操作を調整撮影モードで行い、二次元走査によって得られた複数の断層画像に基づいて調整した方がより適切に調整できる第2調整操作を予備調整モードで行うことにより、短時間により最適な撮影条件を決定することができる。
【0052】
以上、本発明に係る断層像撮影装置について図面に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、種々の変更実施が可能である。例えば、上記実施形態においては、断層像撮影装置がラスタ走査によって眼底の断層像を撮影しているが、これに限られるものではなく、スパイラル走査その他の走査方式を採用するものであってもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、予備撮影モードで本撮影モードにおけるラスタ走査の高速軸方向(x方向)の走査を間引きした走査を行っているが、これに限られるものではなく、予備撮影モードにおける二次元走査に要する時間が本撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短くなるのであればよく、例えば、走査密度は本撮影モードと同じとしたまま、走査領域を本撮影モードよりも狭くすることによって予備撮影モードの二次元走査に要する時間を短くしてもよい。また、予備撮影モードの走査領域を本撮影モードよりも広いものとしても、走査密度を粗くすることによって予備撮影モードの二次元走査に要する時間が短くなるのであれば、それも許容される。このように予備撮影モードにおける走査領域を本撮影モードとは異なる領域とするとき、本撮影モードにおける走査領域中の注目領域が予備撮影モードにおける走査領域に含まれるようにすることで、本撮影モードで断層像の撮影をするときに必要な撮影条件の調整をするのに十分な情報を、予備撮影モードで撮影された断層像から得ることができるようになる。
【0054】
さらに、予備撮影モードにおける二次元走査に要する時間が本撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短くなるのであれば、他の走査パターンを予備撮影モードに採用してもよい。例えば、
図6(a)に示すように、本撮影モードにおけるラスタ走査の対象となる走査領域中の注目領域を含む矩形領域の4辺を走査する走査パターンであってもよいし、
図6(b)に示すように、本撮影モードにおけるラスタ走査の対象となる走査領域中の注目領域を含む矩形領域の1本あるいは2本の対角線を走査する走査パターンであってもよいし、これらを組み合わせた走査パターンであってもよい。あるいは本撮影モードにおける走査方向と予備撮影モードにおける走査方向が直交していることも許容される。このような走査パターンであっても走査領域内の対象物体の形状変化を代表する断層像の撮影は可能であるため、予備撮影モードの走査パターンとして採用可能である。