(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
100回以上の摩耗サイクル後、部分的に改変したASTM D5946−04法を用いて評価したときに、80度以上の水接触角を有する、請求項9に記載の疎水性物品。
疎水性物品の形成方法であって、前記疎水性物品は、(A)基材と、(B)前記基材上に配置されており、かつナノ粒子凝集塊を含む、ナノ粒子層であって、前記ナノ粒子凝集塊が、ISO13320による動的光散乱法を用い測定したときに、500〜2,000ナノメートルの平均体積径を有する、ナノ粒子層と、(C)前記ナノ粒子層に直接接触させて前記ナノ粒子層上に配置されており、ケイ素系樹脂の酸化硬化生成物を含む、結合層と、D.前記基材の反対側に配置されており、前記結合層に直接接触させて、前記結合層上に配置されている、最表面層と、を含み、前記方法が、
I.ISO13320による動的光散乱法を用い測定したときに、500〜2,000ナノメートルの平均体積径を有する前記ナノ粒子凝集塊を形成する工程と、
II.前記基材上に前記ナノ粒子凝集塊を配置して、前記基材上に配置された前記ナノ粒子層を形成する工程と、
III.前記ナノ粒子凝集塊上に前記ケイ素系樹脂を塗布する工程と、
IV.前記ナノ粒子凝集塊上で前記ケイ素系樹脂を酸化硬化させて、前記ナノ粒子層と直接接触させて前記ナノ粒子層上に配置された前記結合層を形成する工程と、
V.前記基材とは反対側の前記結合層の面に直接接触させて、前記結合層上に前記最表面層を配置して、前記疎水性物品を形成する工程と、を含み、
前記ナノ粒子凝集塊が、アミン、アルコール、ジオール、シラン、界面活性剤、ヒドロキシ末端化ポリマー、ジチオール、メルカプタン、及びこれらの組み合わせから選択された凝集剤により官能化されたシリカナノ粒子から形成される、
前記疎水性物品が、前記疎水性物品の前記最表面層に対し測定し、部分的に改変したASTM D5946−04法を用いて評価したときに、120度以上の水接触角を有する、方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示は、基材と、基材上に配置されたナノ粒子層とを含み、ナノ粒子凝集塊を含む、疎水性物品を提供し、ナノ粒子凝集塊は、ISO13320による光散乱を用い測定したときに、少なくとも100ナノメートルの平均体積径(average volume based size)を有する。疎水性物品は、ナノ粒子層に直接接触させて、ナノ粒子層上に配置された、ケイ素系樹脂の酸化硬化生成物を含む、結合層と、基材とは反対側の結合層に直接接触させて結合層上に配置された最表面層と、も含む。疎水性物品は、疎水性物品の最表面層に対し測定し、部分的に改変したASTM D5946−04法を用いて評価したときに、90度以上の水接触角を有する。
【0007】
本開示は、疎水性物品10(本明細書では、以下、「物品」と表記する)を提供する。用語「疎水性」は、部分的に改変したASTM D5946−04を用いて評価したときに、物品10が90度以上の水接触角を有することを記載する。様々な実施形態において、物品10は、部分的に改変したASTM D5946−04法を用いて評価したときに、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175度以上、又は(最大で、又は約)180度の水接触角を有する。更に他の実施形態では、物品10は、部分的に改変したASTM D5946−04法を用いて評価したときに、150〜175、155〜170、160〜165、150〜165、150〜160、又は150〜155度の水接触角を有する。追加の実施形態では、上記のいずれかの1つ以上の値内又は値間の、整数及び分数のいずれものうち任意の値又は値範囲が想到される。物品10は、「超」疎水性であり、120、125、130、135、140、145、150度超などの(例えば、前述のこれらの値を超え、最大約180度まで)水接触角を有すると記載することもできる。本明細書で使用するとき、部分的に改変したASTM D5946−04は、以下の例において詳述するものである。誤解のないようにいうと、水接触角は、性質であり、作用ではない。例えば、水接触角は、物品10上で水をビード化させるのには必要とされないものの、測定可能な性質である。
【0008】
物品10は、形成時に前述の水接触角を示すものの、経時的な擦り減り、摩耗、及び分解に耐性にすることもできる。例えば、物品10は、部分的に改変したASTM D5946−04法を用いて評価したときに、例えば、物品10が接着剤層(以下に詳述する)を含むとき、20mm×20mmの表面領域に対し、5Nの荷重でマイクロファイバークロスを用いる、10,000、9500、9000、8500、8000、7500、7000、6500、6000、5500、5000、4500、4000、3500、3000、2500、2000、1500、又は1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100回後、又は100〜5000回の摩擦サイクル後に、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、又は175、140〜175、145〜170、150〜165、155〜160、140〜155、140〜150、又は140〜145度以上の水接触角を示すことができる。一実施形態では、物品10は、100回以上の摩耗サイクル後、部分的に改変したASTM D5946−04法を用いて評価したときに、80度以上の水接触角を示す。上記のとおり、追加の実施形態では、上記のいずれかの1つ以上の値内又は値間の、整数及び分数のいずれものうち任意の値又は値範囲が想到される。マイクロファイバークロスを用いる試験方法については、以下、例において更に詳述する。
【0009】
典型的には、約100回の摩耗サイクル後に高い水接触角が要求される用途としては、限定するものではないが、人間とは接触しない表面又は人間とはほとんど接触しない表面のいずれか、例えば、電子デバイスの内側表面が挙げられる。約1,000回の摩耗サイクル後に高い水接触角が必要とされる用途としては、限定するものではないが、典型的には窓が挙げられる。約5,000回、又は更には10,000回の摩耗サイクル後に高い水接触角が必要とされる用途としては、限定するものではないが、典型的にはタッチスクリーンが挙げられる。本項では、用語「高」は、上記のとおりの水接触角又はそれらの範囲のいずれかを記載し得る。
【0010】
物品10は、代わりに多層物品10、(多層)フィルム、複合物品10、又は合わせフィルムと記載することもできる。物品10は、いかなる特定の寸法又は用途にも限定されない。他の実施形態では、物品10は、自浄性窓、電子デバイス、又は太陽電池パネル用途に使用される。
基材:
【0011】
物品10は基材12を含む。基材12は、典型的には、物品10に対し機械的な支持を提供する。例えば、基材12は、物品10の前表面に保護を提供し得る。同様にして、基材12は、物品10の向きに応じ、物品10の背面に保護を提供し得る。基材12は、軟質かつ可撓性でもよく、又は剛性かつ硬質でもよい。あるいは、基材12は、剛性かつ硬質の部分を含みつつ、軟質かつ可撓性の部分を含んでもよい。基材12は、耐荷重性又は非耐荷重性でもよく、物品10の任意の部分に含まれてもよい。基材12は、上側積層としても知られる「表面層」であってもよい。基材12は、雨、雪、熱等の環境条件から物品10を保護するために使用され得る。
【0012】
基材12の組成は特には制限されず、ガラス、金属、木、樹脂、セラミック、及び/又はシリコーン、例えば、線状及び/又は分岐状ポリオルガノシロキサンであってよく、これを含んでよく、本質的にこれからなってよく、又はこれからなってよい。一実施形態では、基材12は、ガラス(例えば、非結晶質ソーダ・石灰ガラス)であり、ガラスを含み、本質的にガラスからなり(及び例えば、有機モノマー又はポリマー又はシリコーンは含まない)、あるいはガラスからなる。基材12は、前述の材料の1つ以上の組み合わせであってよい。例えば、本明細書で記載するとおりに利用される前に、基材12は、基材12上に被覆を有し得る。
【0013】
ナノ粒子層:
物品10は、ナノ粒子層16も含む。ナノ粒子層16は、基材12上に配置される。各種非限定的な実施形態において、用語「配置される」は、用語「堆積される」と置き換え可能であることも想到される。ナノ粒子層16は、基材12と直接接触させて基材12上に配置してもよい。あるいは、ナノ粒子層16は、基材12とは離間させて(すなわち、直接接触させずに)、基材12上に配置してもよい。ナノ粒子層16が基材12と直接接触していない場合であってさえ、ナノ粒子は基材12「上に配置される」として記載することができる。しかしながら、本開示は、直接的な接触のないものとして限定されない。
【0014】
ナノ粒子層16は、ナノ粒子凝集塊14を含んでよく、ナノ粒子凝集塊14であってよく、ナノ粒子凝集塊14から本質的になってよく、あるいはナノ粒子凝集塊14からなってよい。ナノ粒子凝集塊は、典型的には、ナノ粒子のクラスターであり、又はナノ粒子の集合体である。ナノ粒子凝集塊14は、単に重力のみにより互いに堆積されている個々のナノ粒子ではなく、あるいは互いに(均一に)堆積された二層又は個々のナノ粒子ではない。ナノ粒子凝集塊14は、限定するものではないが、立方体、立方八面体、十二面体、四面体、六面体、八面体、十面体、ドデカヘルタ多面体(dodecaheltahedrons)、三面体、三角柱、正反六角柱などの任意の幾何的形状であり得る。
【0015】
ナノ粒子凝集塊14は、(高度に)不規則なものであってもよく、ISO13320による動的光散乱法を用い測定したときに、少なくとも100ナノメートルの平均体積径を有する。より詳細には、ISO13320に準拠して、0.1重量%の粒子をエタノール中に配置し、Nanotrac 150を用い測定する。様々な実施形態において、ナノ粒子凝集塊14は、ISO13320による動的光散乱法を用い測定するとき、少なくとも200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1,500、2,000、2,500、3,000、3,500、4,000、4,500、又は5,000nmの平均体積径を有する。他の実施形態では、ナノ粒子凝集塊14は、ISO13320による動的光散乱法を用い測定するとき、500〜2,000、500〜1,500、500〜1,000、1,000〜2,000、1,000〜1,500、又は1,500〜2,000ナノメートルの平均体積径を有する。TEMなどの代替的な測定法を使用することもできる。当業者には既知であるとおり、平均体積径は、典型的には、釣鐘曲線などの曲線で記録される。追加の実施形態では、上記のいずれかの1つ以上の値内又は値間の、整数及び分数のいずれものうち任意の値又は値範囲が想到される。
【0016】
以下に詳述するとおり、凝集前のナノ粒子(すなわち、非凝集化ナノ粒子)は、ナノ粒子凝集塊14よりも小さい。凝集前のナノ粒子は、ISO13320による動的光散乱法を用い測定するとき、典型的には、10〜2,500、10〜2,000、10〜1,000、10〜200、20〜150、又は50〜100nmの平均粒径を有する。前述の用語「から本質的になる」は、ナノ粒子層16がポリマーを含まない実施形態を記載する。追加の実施形態では、上記のいずれかの1つ以上の値内又は値間の、整数及び分数のいずれものうち任意の値又は値範囲が想到される。
【0017】
ナノ粒子層16は、非凝集化ナノ粒子を含んでもよい。様々な実施形態において、非凝集化ナノ粒子は、ナノ粒子凝集塊14と共に固有のトポグラフィーをナノ粒子層16に提供し、このトポグラフィーは、非凝集化ナノ粒子単独、あるいは単に重力により堆積された非凝集化ナノ粒子では再現されない。固有のトポグラフィーは、物品10及び下記の最表面層20の疎水性及び耐久性に関係するものと考えられる。
【0018】
ナノ粒子そのものは特に制限されない。様々な実施形態において、ナノ粒子は、シリカ、アルミナ、又はこれらの組み合わせである。一実施形態では、ナノ粒子は、物品10に必要とされる階層的な粗さを提供し、シリカの一次粒子がナノスケールの粗さに作用する一方で、ナノ粒子凝集体はより大きなスケールでの粗さを導入する。ナノ粒子凝集塊14及び凝集化させていないナノ粒子を
図2A及び2Bに示す。
【0019】
ナノ粒子層16の寸法は特に限定されない。例えば、ナノ粒子層16は、最高で10マイクロメートル、例えば、5〜10、6〜9、又は7〜8マイクロメートルの厚みを有し得る。他の実施形態では、ナノ粒子層16は、±10、50、又は100%の厚みを有する。追加の実施形態では、上記のいずれかの1つ以上の値内又は値間の、整数及び分数のいずれものうち任意の値又は値範囲が想到される。
結合層:
【0020】
物品10は、結合層18も含む。結合層18は、例えば、
図5A及び5Bに示すとおり、ナノ粒子層16に直接接触させて、ナノ粒子層16上に配置される。結合層18は、ケイ素系樹脂の酸化硬化生成物を含む。言い換えれば、結合層18は、ケイ素系樹脂を酸化硬化させた後に存在する化学生成物を含んでよく、かかる化学生成物であってよく、かかる化学生成物から本質的になってよく、あるいはかかる化学生成物からなってよい。例えば、用語「から本質的になる」は、未硬化のケイ素系樹脂及び/又は有機ポリマーを含まない、実施形態を記載することができる。
【0021】
ケイ素系樹脂は、あるいは、ケイ素樹脂、又はケイ素含有樹脂として記載することもできる。しかしながら、ケイ素系樹脂は、独立したケイ素粒子が分散している複合材料(有機樹脂など)とは混同されない。その代わりに、ケイ素系樹脂は、シルセスキオキサン、ポリシルセスキオキサン、シラザン若しくはポリシラザン、又はこれらの組み合わせであってよく、あるいはこれらから選択されてよい。あるいは、ケイ素系樹脂は、次式:
(R
3SiO
1/2)
a(R
2SiO
2/2)
b(RSiO
3/2)
c(SiO
4)
dを有するシルセスキオキサンであってよく、
式中、各Rは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、及びアリール基、あるいはハロゲン、窒素、酸素、硫黄、又はケイ素原子により置換されたアルキル、アルケニル、及びアリール基から選択され、ただし、少なくとも2個のR基は水素であり、a、b、c、及びdはモル分率であり、a+b+c+dは1であり、並びにc及びdの合計はゼロ超である。アルキル基の非限定例は、例えば、炭素原子を1〜6個有するメチル、エチル、プロピル、ブチルである。アルケニル基の非限定例としては、ビニル、アリル、及びヘキセニルが挙げられる。アリールの非限定例としては、フェニルが挙げられる。置換基の非限定例としては、CF
3(CF
2)
nCH
2CH
2が挙げられ、式中、nは0〜6である。
【0022】
水素シルセスキオキサンはランダムネットワーク結合を含み、一般化学組成(HSiO
3/2)
nを有し、式中、nは正の整数である。例えば、酸素含有雰囲気下で硬化させたとき、水素シルセスキオキサンは、SiO
2に近づく。基材12がガラスである場合、Si−H結合は基材12上のシラノール基と反応し、同様に、シリカナノ粒子上のシラノール基とも反応することから、本明細書では、水素シルセスキオキサンが用いられる。この理由から、水素シルセスキオキサンは、ナノ粒子同士の接着に加え、基材12に対する結合層18の接着も改良し得る。更に、硬化水素シルセスキオキサンは相対的に硬質であり、ナノ粒子被覆の耐久性を向上させる。更に、水素シルセスキオキサンは、多くの用途で有用である透明フィルムを形成する。
【0023】
様々な実施形態において、結合層18は、水素シルセスキオキサンの酸化硬化生成物であってよく、かかる生成物から本質的になってよく、あるいはかかる生成物からなる。用語「から本質的になる」は、結合層18が、水素シルセスキオキサンの酸化硬化生成物ではない樹脂及び/又はポリマーを含まない、実施形態を記載する。しかしながら、この実施形態において、及び概して、結合層18は、未硬化の水素シルセスキオキサンを含み得る。
【0024】
各種非限定的な実施形態において、結合層18は、未硬化の又は部分硬化した水素シルセスキオキサンを0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50モルパーセント含む。同様にして、結合層18は、酸化硬化させた水素シルセスキオキサンを99.99、99.95、99.9、99.5、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、85、80、75、70、65、60、55、又は50モルパーセント含み得る。典型的には、硬化シルセスキオキサンは、酸化硬化により、どの程度のSi−H官能基がSi−O結合に転換されたかに基づき評価される。例えば、この度合いは、FT−IR法を用いて評価することができる。FT−IR法では、初回測定を行いSi−Hピーク下の面積を求めた後、酸化硬化後測定を行い、残留しているSi−Hピーク下の小さくなった面積を求めることができる。次に、硬化前及び後の両方の厚みあたりのSi−H収縮振動の吸着領域を比較し、減算し、残留Si−H%(すなわち、酸化硬化していない)を求めることができる。追加の実施形態では、上記のいずれかの1つ以上の値内又は値間の、整数及び分数のいずれものうち任意の値又は値範囲が想到される。
【0025】
一実施形態では、結合層18は、水素シルセスキオキサンの酸化硬化生成物「であってよく」、未硬化の又は部分硬化した水素シルセスキオキサンを(約)ゼロ、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、又は5重量%含み得ることが想到される。量又はレベル又は硬化は、上記の値とは異なっていてもよい。追加の実施形態では、上記のいずれかの1つ以上の値内又は値間の、整数及び分数のいずれものうち任意の値又は値範囲が想到される。
【0026】
硬化時に、水素シルセスキオキサンは、典型的には、当該技術分野で認識されているとおり、ネットワーク構造でSi−O結合を形成する。例えば、水素シルセスキオキサンは、以下に示すとおり、ケージ構造(a)から出発してネットワーク構造(b)へと合成が進む。
【化1】
【化2】
【0027】
一実施形態では、ケイ素系樹脂は、式:HSi(OH)
x(OR)
yO
z/2の単位を含むヒドリドシロキサン樹脂である。この式中、各Rは上記のとおりのものである。これらのR基が、酸素原子を介してケイ素に結合するとき、それらは加水分解可能な置換基を形成する。上記式において、xは0〜2であり、yは0〜2であり、zは1〜3であり、x+y+zの合計は3である。これらの樹脂は完全に縮合した(HSiO
3/2)
nであってもよく、式中、nは8以上である。あるいは、これらのケイ素系樹脂は、ごく部分的に加水分解されていてもよく(すなわち、Si−OR基をある程度含む)及び/又は部分的に縮合していてもよい(すなわち、Si−OH基をある程度含む)。
【0028】
ケイ素系樹脂の構造は特に限定されない。樹脂の構造は、概して、はしご型、かご型、又はこれらの混合型として知られるものであってよい。ケイ素系樹脂は、ヒドロキシル基、トリオルガノシロキシ基、ジオルガノ水素シロキシ基、トリアルコキシ基、及びジアルコキシ基などの末端基を含有してよい。構造により表されはしないものの、ケイ素系樹脂が含有する、自身に結合している水素原子を0又は2個有するケイ素原子は少なくてよく(例えば、約10%未満)、及び/又はケイ素系樹脂が含有するCH
3SiO
3/2又はHCH
3SiO
2/2基などのSiC基は少なくてよい。
【0029】
ケイ素系樹脂は、米国特許第3,615,272号、同第5,010,159号、同第4,999,397号、同第5,210,160号、同第5,063,267号、同第5,416,190号、及び/又は特開昭59−178749号、特開昭60−86017号、及び特開昭63−107122号のうちの1つ以上に記載されているとおりのものであってよく、これらの各特許文献は、様々な非限定例において参照により明示的に援用される。
【0030】
様々な実施形態では、ケイ素系樹脂は、600〜150,000、1,000〜150,000、10,000〜150,000、20,000〜140,000、30,000〜130,000、40,000〜120,000、50,000〜110,000、60,000〜100,000、70,000〜90,000、又は80,000〜90,000g/molの分子量を有している。ケイ素含有樹脂は、分子当たり2個未満(例えば、1個又はゼロ)、2個、又は2個以上のケイ素結合水素基を有し得る。追加の実施形態では、上記のいずれかの1つ以上の値内又は値間の、整数及び分数のいずれものうち任意の値又は値範囲が想到される。
【0031】
様々な実施形態において、特定分子量画分のケイ素系樹脂を使用できる。例えば、ポリマー分子種のうち少なくとも75%は、約1200超の分子量を有し得る。一実施形態では、ポリマー分子種の少なくとも75%は、約1200〜約100,000,g/molの数平均分子量を有する。
【0032】
用語「酸化硬化」は、部分的、又は完全な酸化硬化を記載するものであり、あるいは何らかの形態の酸素原子、例えばO
2又は酸化化合物の一部としての酸素原子の存在下で、Si−H結合のSi−O結合への転換を引き起こし得る任意の条件を指す。「部分的な酸化硬化」、又は用語「少なくとも部分的に硬化されている」は、典型的には、Si−Oに転換されるSi−H基が、利用可能な全Si−H基よりも少ないことを記載する。反対に、「完全な酸化硬化」は、典型的には、当該技術分野で理解されるとおり、Si−H基のすべてが、又は事実上利用可能なSi−H基のすべてがSi−O基に転換されることを記載する。
【0033】
ある種の実施形態では、用語「部分的な酸化硬化」、又は「少なくとも部分的な硬化」は、利用可能なSi−H基のうち、少なくとも30モル%かつ約90モル%未満、例えば、少なくとも50モル%かつ約90モル%未満、少なくとも70モル%かつ約90モル%未満が、Si−O基に転換されることを意味する。他の実施形態では、用語「完全な酸化硬化」は、利用可能なSi−H基のすべて又は事実上すべてがSi−O基に転換されること、例えば、利用可能なSi−H基のうち少なくとも90モル%、少なくとも95モル%かつ最大100モル%がSi−O基に転換されることを意味する。
【0034】
セラミック酸化物前駆体は、水素シルセスキオキサン樹脂及び/又はケイ素系樹脂と組み合わせて使用することもできる。セラミック酸化物前駆体としては、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、タンタラム、ニオビウム、及び/又はバナジウムなどの多様な金属化合物、並びに溶液に溶解させ、加水分解した後、比較的低温で熱分解するとセラミック酸化物を形成し得る、ホウ素又はリンの多様な非金属化合物が挙げられるがこれらに限定されない。セラミック酸化物前駆体の追加の非限定例は、米国特許第4,808,653号、同第5,008,320号、及び同第5,290,394号に記載されており、これらの特許文献は、様々な非限定的な実施形態における参照により本明細書に援用される。一実施形態では、(550℃硬化)フェノール−T樹脂/メチル−T樹脂を使用することができ、これらは酸化硬化させた水素−シルセスキオキサンと同様の構造を示し得る。
最表面層:
【0035】
最表面層20も含む10は、基材12とは反対側の結合層18と直接接触させて、結合層18上に配置される。例えば、最表面層20は、結合層18と共有結合又は反応させることができ、あるいは結合層18との共有結合は含まなくてもよい。言い換えれば、最表面層20は結合層18とは反応しなくてもよい。用語「結合層18とは反応しない」は、最表面層20が結合層18と共有結合的に又はイオン的に反応せず、すなわち結合層18に結合しないことを記述する。最表面層20は、結合層18と水素結合していてもしていなくてもよく、あるいは結合層18に静電吸着されていてもいなくてもよい。
あるいは、塗布後、最表面層20は、結合層18と1つ以上の共有結合を形成し、ひいては結合層18の部分であると、又は結合層18と一体であるとみなすことができる。一実施形態では、最表面層20は、結合層18の全体(例えば、すべての角から、すべての角の間に)にわたって均一に延在する。あるいは、最表面層20は、結合層18のある程度の部分にわたって延在し、かつ、他の部分には延在していなくてもよく、例えば、不均一な様式で、又は延在していない部分のある状態で延在してもよい。
【0036】
最表面層20は、代替的に上側積層として記載することもできる。上側積層として機能するとき、最表面層20は、物品10の前側面に保護を提供し得る。同様にして、最表面層20は、物品10の向きに応じ、物品10の背面に保護を提供し得る。最表面層20は、軟質かつ可撓性でもよく、又は剛性かつ硬質でもよい。あるいは、最表面層20は、剛性かつ硬質の部分を含みつつ、軟質かつ可撓性の部分を含んでもよい。最表面層20は、耐荷重性又は非耐荷重性でもよく、物品10の任意の部分に含まれてもよい。最表面層20は、雨、雪、及び熱等の環境条件から物品10を保護するために使用され得る。最表面層20は、典型的には、結合層18に共有結合していない。換言すれば、最表面層20は、結合層18と直接接触させて結合層18上に配置されているものの、結合層18に結合してはいない。最表面層20と結合層18との間には静電気引力、水素結合などが存在し得るものと想到される。
【0037】
前述の表面エネルギーが満たされさえすれば、最表面層20の組成は特に限定されない。最も典型的には、最表面層20は疎水性である。様々な実施形態において、最表面層20は、フッ素含有化合物、有機ポリマー、ポリオルガノシロキサン、シリコーン含有材料、又はこれらの組み合わせであり、これを含み、これらから本質的になり、又はこれらからなる。このような最表面層の具体的な非限定例は、ペルフルオロポリエーテルシラン、シロキサン置換シラン、ポリフルオロポリエーテル(すべてのC−H結合がC−F結合に転換されているわけではない)、ペルフルオロポリエーテル(すべてのC−H結合がC−F結合に転換されている)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などである。様々な実施形態において、用語「から本質的になる」は、最表面層20が、直前に記載されていないポリマーを含まないことを記載する。追加の実施形態では、上記のいずれかの1つ以上の値内又は値間の、整数及び分数のいずれものうち任意の値又は値範囲が想到される。
【0038】
最表面層20の寸法は特に限定されない。例えば、最表面層20は、わずか1分子ほどの厚み(例えば、約5ナノメートル程度)から、最大で1マイクロメートルの厚みを有し得る。他の実施形態では、最表面層20は±10、100、500、1,000、5,000、又は10,000%の厚みを有する。追加の実施形態では、上記のいずれかの1つ以上の値内又は値間の、整数及び分数のいずれものうち任意の値又は値範囲が想到される。
【0039】
他の実施形態では、最表面層20は、結合層18と直接接触させて結合層18上に配置し、結合層18と反応(例えば、共有結合)させる表面処理として更に定義される。逆もまた同様に、最表面層20は、表面処理が存在しない場合に存在させることができる。一実施形態では、それらは同時に存在しない。使用する場合、表面処理は、典型的には結合層18と反応(例えば、共有結合又はイオン結合)する。表面処理は、典型的には、独立した「層」として結合層18に結合させることができ、又は独立した「層」としてではなく結合層18に結合させることもできる。一実施形態では、表面処理は、結合層18(例えば、すべての角から、すべての角の間に)の全体にわたって均一に延在する。あるいは、表面処理は、結合層18のある程度の部分にわたって延在し、かつ、他の部分には延在していなくてもよく、例えば、不均一な様式で、又は延在していない部分のある状態で延在してもよい。
【0040】
表面処理の寸法は特に限定されない。例えば、表面処理は、わずか1分子ほどの厚み(例えば、約5ナノメートル程度)から、最大で1マイクロメートルの厚みを有し得る。他の実施形態では、表面処理は±10、100、500、1,000、5,000、又は10,000%の厚みを有する。追加の実施形態では、上記のいずれかの1つ以上の値内又は値間の、整数及び分数のいずれものうち任意の値又は値範囲が想到される。
【0041】
最表面層20及び/又は表面処理は、典型的には、20℃下で40mN/m未満として測定される表面エネルギーを有する。°様々な実施形態において、最表面層20及び/又は表面処理は、20℃下で35、30、25、24、23、22、21、20、又は19mN/m未満として測定される表面エネルギーを有する。典型的には、表面エネルギーは、当該技術分野で認識されているとおりのZisman又はOwens−Wendt法により得られる接触角をもとに算出される。追加の実施形態では、上記のいずれかの1つ以上の値内又は値間の、整数及び分数のいずれものうち任意の値又は値範囲が想到される。更に他の実施形態では、最表面層20は、本願と同時に出願され、名簿番号:DC11579 PSP1を有する、米国仮出願特許において記載される。これらの他の実施形態では、これらの出願は、参照により本明細書に明示的に援用される。
接着剤層:
【0042】
物品10は、最初に上記したとおり、接着剤層24も含み得る。接着剤層24は、接着剤を含み、基材12及びナノ粒子層14と直接接触させて、これらの上に配置される。接着剤層の厚みは特に限定されず、5nm〜1マイクロメートルの厚みを有し得る。接着剤そのものも特には限定されず、典型的には、シルセスキオキサン、ポリシルセスキオキサン、シラザン、ポリシラザン、又はこれらの組み合わせなどのケイ素系樹脂である。接着剤は、部分的に硬化していても、完全に硬化していてもよく、ここで、記述「部分的」及び「完全に」硬化しているとは、上記のとおりものである。様々な実施形態において、接着剤は、少なくとも部分的に硬化された酸化ケイ素であり、これを含み、これから本質的になり、又はこれからなる。用語「から本質的になる」は、非酸化ケイ素接着剤を含まない実施形態を記載し得る。酸化ケイ素は、例えば、シラザンの酸化物、シルセスキオキサンの酸化物、又はこれらの組み合わせなどの当該技術分野で既知のものであってよい。
物品の形成方法:
【0043】
本開示は、物品10を形成する方法も提供する。方法は、(I)ナノ粒子を凝集させてナノ粒子凝集塊14を形成する工程を含む。例えば、ナノ粒子は、最初に当該技術分野の任意の方法、例えば、ストーバー法により合成した後、凝集剤などの使用により、凝集及び/又は官能化させることができる。
【0044】
凝集剤がナノ粒子を官能化してもしなくてもよい。一実施形態では、凝集剤は、ナノ粒子が凝集してナノ粒子凝集塊14を形成するようナノ粒子を官能化させる。別の実施形態では、凝集剤はナノ粒子を官能化しないものの、ナノ粒子を凝集させてナノ粒子凝集塊14を形成させるのを促進し、あるいは凝集塊14を形成させる。あるいは、凝集剤は、ナノ粒子を、独立したそれぞれのナノ粒子として留めさせず及び/又は単に重力により堆積させずに集合させるプロセスにより生じる、ナノ粒子のクラスターとして当該技術分野において理解される、ナノ粒子の凝集塊を形成させる剤であり得る。換言すれば、ナノ粒子凝集塊14への集合は、それぞれのナノ粒子が(重力などにより)基材上に堆積されて、二層、あるいは三層などを形成するのとは異なる。ナノ粒子を凝集させてナノ粒子凝集塊14を形成するにあたり、典型的には、基材は必要とされない。同様にして、ナノ粒子を集合させてナノ粒子凝集塊14を形成させるプロセスは、重力のみによるもの以外の方法による凝集として記載することができる。本方法では、凝集工程(I)は、典型的には、ナノ粒子を基材と接触させる前に行われる。言い換えれば、凝集工程(I)は、基材を必要とせず、典型的には、明白に基材の非存在下で行われる。あるいは、凝集工程(I)は、凝集剤などの化学剤による(これを使用する)凝集として記載することもできる。典型的には、凝集剤の使用が必要とされる。尚更なる実施形態では、ナノ粒子凝集塊14は、表面又は基材上に堆積させる前の、それぞれのナノ粒子間の化学的相互作用の結果として生じる、ナノ粒子クラスターである。
【0045】
ナノ粒子を官能化させることのできる又は官能化させない好適な凝集剤の非限定例としては、アミン、アルコール、ジオール、シラン、界面活性剤、ヒドロキシ末端化ポリ(エチレンオキシド)、ヒドロキシ末端化ポリマー、ジチオール、メルカプタン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適なオルガノシロキサンの非限定例は、アミンシラン、ヒドロキシ官能性シラン、アミノシラン、双性イオン性シラン、及びこれらの組み合わせである。一実施形態では、凝集剤は、アミン、アルコール、ジオール、シラン、界面活性剤、ヒドロキシ末端化ポリマー、ジチオール、メルカプタン、及びこれらの組み合わせから選択される。一実施形態では、アミンは、アミノプロピルトリエトキシシランとして更に定義される。有機化合物及び/又はオルガノシランは、架橋済みのもの若しくは架橋可能なもの、水素結合済みのものであってよく、及び/又はイオン性相互作用を有し得る。様々な実施形態において、ナノ粒子の凝集に使用されるオルガノシランは、限定するものではないが、Si−S、Si−O、Si−N、Si−P、及びSi−Clなどの加水分解性の結合を、任意の組み合わせで少なくとも1つ、例えば、2つ有する。
【0046】
凝集化及び官能化は、例えば、
図2A/2Bに示すとおり、透過電子顕微鏡(TEM)画像を用いて評価され得る。一実施形態では、官能化前に、これらのナノ粒子の凝集傾向はごくわずかである。別の実施形態では、例えば、
図2Bに示すとおり、ナノ粒子の表面は官能化後に有機化合物及び/又はオルガノシランを含み、粒子はマイクロメートルスケールの集合体に凝集する。あるいは、前述の凝集剤のうち任意の1つ以上がナノ粒子の表面を官能化し得る。ナノ粒子は、オルガノシラン又は前述の凝集剤のうちの任意の1つ以上により共に保持され得る。
【0047】
一実施形態では、オルガノシランが凝集剤として使用され、ナノ粒子表面でシラノール基と凝集する。あるいは、凝集剤は、ナノ粒子が凝集剤に対し非官能性である場合、物理的な凝集をもたらし得る。更なる実施形態では、ナノ粒子凝集塊14は、ISO13320による光散乱法を用い測定したときに5〜1000ナノメートルの直径を有するナノ粒子から形成される。換言すれば、一実施形態では、(I)ナノ粒子を凝集させる工程、は、ナノ粒子が凝集するよう、ナノ粒子に対しオルガノシランを塗布することとして更に定義され、ISO13320による動的光散乱法を用い測定するとき、ナノ粒子は、5〜1000の直径を有する。
【0048】
方法は、(II)基材12上にナノ粒子凝集塊14を配置して、基材12上に配置されたナノ粒子層16を形成する工程、も含む。配置する工程は特に限定されず、当該技術分野で既知の工程であってよく、あるいはそのような工程を含んでよい。例えば、配置する工程は、ナノ粒子凝集塊14を基材12上に対し噴霧又は噴霧被覆する、スピンコートする、浸漬被覆する、流し塗りする、棒により塗り広げる、刷毛塗りする、蒸着させる、注ぎかける工程などとして更に定義され得る。
【0049】
噴霧法を用いれば、噴霧パラメータを変更することにより、ナノ粒子凝集塊14及びナノ粒子層16の形態を容易に調整することができる。疎水性及び光学的ヘーズの調節に利用することのできるいくつかの噴霧パラメータとしては、流体圧力、ストローク、噴霧圧力、及び間隔が挙げられる。例えば、ストローク及び間隔は、疎水性を調節するのに利用することができる。間隔及び流体圧力はヘーズの調整に利用できる。噴霧圧力を増大させる(すなわち高噴霧圧力)ことで、噴霧液滴寸法を減少させ、表面被覆の均一性を最大化させることができる。一実施形態では、噴霧媒質としてエタノールを利用する。しかしながら、任意の好適な噴霧媒質を選択できる。一実施形態では、表面エネルギーが高いため、エタノールは基材12を湿潤させず、ナノ粒子凝集塊14間に既定の間隔又は間隙をもたせてナノ粒子凝集塊14を基材12に送達するのを助ける。更に、スプレーヘッドの高さを調整して、噴霧中及び噴霧後の媒質の蒸発を最大化させることもできる。更に、ヘーズ及び表面粗さも関係し得る。
【0050】
更に、ナノ粒子層16の表面モルホロジーがいかにして物品10の疎水性に影響するのかを良好に把握するため、走査型電子顕微鏡(SEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)による評価を利用することもできる。例えば、Wenzel状態を示す25°超に水滑落角を維持しつつ、接触角を、
図3A中の120°から、
図3E中の147°に上昇させることができる。これらの画像は、ナノ粒子の表面被覆率が高くなるほど接触角が大きくなることを示す。表面被覆率が増大すると、ナノ粒子凝集塊14間の間隔が減少する傾向があり、典型的には、表面粗さが大きくなる。しかしながら、凝集ナノ粒子の被覆率があまりに高くなると、ナノ粒子凝集塊14間の間隙がすべて充填されることにより、結果として表面粗さは減少し、ひいては疎水性が低下する。
【0051】
適切な噴霧パラメータの選択により、典型的には、Wenzel状態からCassie状態への遷移が可能になる。例えば、表面モルホロジーは、低表面被覆率のWenzel状態と、滑落角が減少しているCassie状態と、高表面被覆率のWenzel状態との間で変化し得る。このような例間で異なる一次モルホロジーは、ナノ粒子凝集塊14がより大きく、かつ、むき出しのガラス表面の摩擦がより小さいというものであってもよい。
【0052】
様々な実施形態において、ナノ粒子凝集塊14の高さ、寸法、及び間隔は接触角に影響し得る。例えば、液滴がWenzel状態であり得る場合、液滴がナノ粒子層16を透過し得ることを意味する。このような透過は好ましくは回避され、ナノ粒子凝集塊14間に(大きな)間隙が存在する場合に生じ得る。寸法、間隔、及び高さを調整することで、液滴は、基材12上でナノ粒子層16により担持され得るCassie状態に遷移可能である。ナノ粒子凝集塊14を加えるほど、ナノ粒子凝集塊14間の間隙寸法は典型的には減少し、凝集塊の寸法は大きくなる。更に他の実施形態では、表面モルホロジーは超疎水性をもたらし得る。
【0053】
本方法は、(III)ケイ素系樹脂をナノ粒子凝集塊14上に塗布する工程、も含み得る。ケイ素系樹脂は、当該技術分野における任意の方法により塗布することができる。例えば、ケイ素系樹脂は、注ぎ入れること、噴霧すること、被覆すること、及び任意の上記の方法などにより塗布され得る。
【0054】
本方法は、(IV)ナノ粒子凝集塊14上でケイ素系樹脂を酸化硬化させて、ナノ粒子層と直接接触させてナノ粒子層上に配置された結合層18を形成する工程、も含む。硬化する工程には、当該技術分野で既知の任意の工程、手順、又はパラメータを用いることができる。例えば、典型的には、硬化する工程は、加熱、プラズマ処理、触媒を用いる硬化、などを含む。加熱は、100〜750℃、あるいはこれらの間の任意の値又は値範囲の温度とすることができる。
【0055】
方法は、(V)結合層18と直接接触させて結合層18上に最表面層20を配置させる工程、も含む。最表面層20は上記のとおりのものであり、当該技術分野で既知の任意の方法で配置され得る。例えば、最表面層20は、結合層18上に配置し、噴霧し、注ぎ入れ、又は被覆することができる。あるいは、配置する工程は、上記の任意の方法を用い完了させたものとして更に記載することもできる。
【0056】
方法には、最表面層20を結合層に結合(例えば、共有結合又はイオン結合)させることを、更に、又は代替的に含ませることもできる。例えば、この工程は、結合層に直接接触させて結合層上に表面処理を配置すること、として更に定義され得る。表面処理は、任意の上記の方法により配置され得る。
【0057】
方法には、接着剤層を塗布する工程を更に含ませてもよい。接着剤層を固体又は液体接着剤として塗布し、これを次に硬化させて接着剤層を形成することもできる。あるいは、硬化が必要とされず、又は存在しなくてもよい。接着剤及び/又は接着剤層は、上記の任意の方法を用い塗布することができる。
追加の実施形態:
【0058】
追加の一実施形態では、物品10は、典型的には、高水接触角、水素シルセスキオキサン結合層18、及び/又は接着剤層を得て、フィルムの耐久性を向上させ及びPFPEシラン層の表面エネルギーを低減させるために利用されるモルホロジーをもたらすよう、予め凝集させたナノ粒子層16を含む。
【0059】
別の実施形態では、ナノ粒子層16を作製するため、ストーバー法によりコロイドシリカ粒子を最初に合成した後、アミノプロピルトリエトキシシランにより官能化する。更に他の実施形態では、物品10及びナノ粒子凝集塊14及び/又は物品10の任意の層のモルホロジーは、噴霧パラメータを変更することにより容易に調整できる。更に、流体圧力、ストローク、噴霧圧力、及び間隔などの噴霧パラメータを調整して、被覆の疎水性、及び光学的ヘーズを最適化することができる。例えば、ストローク及び間隔は疎水性の調整に利用できるのに対し、間隔及び流体圧力はヘーズの調整に利用できる。更に、高噴霧圧力を選択して噴霧液滴寸法を減少させて、より均一な表面被覆を得ることができる。
【0060】
更に他の実施形態では、本発明の物品10の1つ以上の層の機械的耐久性を評価するため、摩耗材として布地を備えるTaber摩耗試験機を使用して、表面を摩耗させることができる。例えば、結合剤を使用しない物品は耐久性に乏しく、100回の摩耗サイクル後に完全な物品10が破損し得る。更に、水接触角は低くすることもでき、更には、一つ以上の層を除去した場合、摩耗後に破損させることもできる。
【0061】
更に、いくつかの実施形態では、酸化条件下、例えば、O
2又は大気中でHSQを硬化させると、硬化温度を増大させるにつれ、Si−H結合は酸化され、Si−O結合密度は増大する。Si−O部分を増加させることで、硬度の増大及び耐久性の増大がもたらされ得る。例えば、ケイ素系樹脂又はHSQを350℃で硬化させた場合、水接触角は、試料を摩耗させるにつれて急激に低下し得る。ケイ素系樹脂又はHSQを550℃で硬化させた場合、摩耗時の水接触角の変化はより緩徐なものとなり得ることから、フィルム強度は上昇していることが示される。更に、使用するケイ素系樹脂又はHSQが多くなるほど、隣接するナノ粒子クラスター間の間隙が充填され、フィルムの粗さが減少し、結果として疎水性が低下し得る。
【0062】
更に他の実施形態では、調整することでケイ素系樹脂又はHSQ:ナノ粒子比に影響を与えることのできる幾つかのパラメータがある。例えば、ストロークを変更することで、結果として、ケイ素系樹脂又はHSQ:ナノ粒子比を上昇させ、耐久性を増強させることもできる。しかしながら、ケイ素系樹脂又はHSQの使用が過剰になると、ナノ粒子凝集塊間の間隙が充填され得ることから水接触角が減少し得る。尚更なる実施形態では、高水接触角に導く場合、多孔性表面モルホロジーを保有させる必要があり得る。更に他の実施形態では、物品10は、ケイ素系樹脂又はHSQ下塗り層を含む。下塗り層は、基材12、例えば、ガラス基材12上にシラノール基を有してよく、ナノ粒子を表面に固定することができる。
【0063】
いくつかの実施形態は、以下の付番した態様のいずれか1つ以上を含む。
【0064】
態様1.疎水性物品であって、A.基材と、B.かかる基材上に配置されており、ナノ粒子凝集塊を含む、ナノ粒子層であって、ISO13320による光散乱を用い測定したときに、ナノ粒子凝集塊が、少なくとも100ナノメートルの平均体積径を有する、ナノ粒子層と、C.かかるナノ粒子層に直接接触させてかかるナノ粒子層上に配置されており、ケイ素系樹脂の酸化硬化生成物を含む、結合層と、D.かかる基材の反対側に配置されており、かかる結合層に直接接触させて、かかる結合層上に配置されている、最表面層と、を含み、かかる疎水性物品のかかる最表面層に対し測定し、部分的に改変したASTM D5946−04法を用いて評価したときに、90度以上の水接触角を有する、疎水性物品。
【0065】
態様2.かかる最表面層が、かかる結合層に対し共有結合している、態様1に記載の疎水性物品。
【0066】
態様3.かかる最表面層が、かかる結合層に対する共有結合を含まない、態様1に記載の疎水性物品。
【0067】
態様4.かかるケイ素系樹脂が、600〜150,000g/molの分子量を有し、かつ分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素基を有する、態様1〜3のいずれか一態様に記載の疎水性物品。
【0068】
態様5.かかるケイ素系樹脂が、シルセスキオキサン、ポリシルセスキオキサン、シラザン、又はポリシラザンである、態様1〜4のいずれか一態様に記載の疎水性物品。
【0069】
態様6.ケイ素系樹脂が、式:(R
3SiO
1/2)
a(R
2SiO
2/2)
b(RSiO
3/2)
c(SiO
4)
dを有するシルセスキオキサンであり、式中、各Rは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、及びアリール基、あるいはハロゲン、窒素、酸素、硫黄、又はケイ素原子により置換されたアルキル、アルケニル、及びアリール基からなる群から選択され、ただし、少なくとも2個のR基は水素であり、a、b、c、及びdはモル分率であり、a+b+c+dは1であり、並びにcとdの合計はゼロ超である、態様1〜4のいずれか一態様に記載の疎水性物品。
【0070】
態様7.かかるケイ素系樹脂が水素シルセスキオキサンである、態様1〜4のいずれか一態様に記載の疎水性物品。
【0071】
態様8.かかる最表面層が、20℃で40mN/m未満として測定される表面エネルギーを有する、態様1〜7のいずれか一態様に記載の疎水性物品。
【0072】
態様9.かかる最表面層が、20℃で30mN/m未満として測定される表面エネルギーを有する、態様1〜7のいずれか一態様に記載の疎水性物品。
【0073】
態様10.かかる最表面層が、20℃で20mN/m未満として測定される表面エネルギーを有する、態様1〜7のいずれか一態様に記載の疎水性物品。
【0074】
態様11.接着剤を含んでおり、かかる基材及びかかるナノ粒子層に直接接触させてこれらの上に配置された、接着剤層を更に含む、態様1〜10のいずれか一態様に記載の疎水性物品。
【0075】
態様12.かかる接着剤が、少なくとも部分的に硬化されており、酸化ケイ素である、態様11に記載の疎水性物品。
【0076】
態様13.かかる酸化ケイ素が、シラザンの酸化物、シルセスキオキサンの酸化物、又はこれらの組み合わせである、態様12に記載の疎水性物品。
【0077】
態様14.100回以上の摩耗サイクル後、部分的に改変したASTM D5946−04法を用いて評価したときに、80度以上の水接触角を有する、態様11〜13のいずれか一態様に記載の疎水性物品。
【0078】
態様15.かかるナノ粒子凝集塊が、アミン、アルコール、ジオール、シラン、界面活性剤、ヒドロキシ末端化ポリマー、ジチオール、メルカプタン、及びこれらの組み合わせから選択された凝集剤により官能化されたシリカナノ粒子から形成される、態様1〜14のいずれか一態様に記載の疎水性物品。
【0079】
態様16.かかる凝集剤がオルガノシランである、態様15に記載の疎水性物品。
【0080】
態様17.かかる最表面層がフッ素含有化合物を含む、態様1〜16のいずれか一態様に記載の疎水性物品。
【0081】
態様18.かかる最表面層がポリオルガノシロキサンを含む、態様1〜16のいずれか一態様に記載の疎水性物品。
【0082】
態様19.ナノ粒子凝集塊が、ISO13320による光散乱法を用い測定したときに5〜1000ナノメートルの直径を有するナノ粒子から形成される、態様1〜18のいずれか一態様に記載の疎水性物品。
【0083】
態様20.疎水性物品の形成方法であって、かかる疎水性物品は、(A)基材と、(B)基材上に配置されており、かつナノ粒子凝集塊を含む、ナノ粒子層であって、かかるナノ粒子凝集塊が、ISO13320による光散乱法を用い測定したときに、少なくとも100ナノメートルの平均体積径寸法を有する、ナノ粒子層と、(C)ナノ粒子層に直接接触させてナノ粒子層上に配置されており、ケイ素系樹脂の酸化硬化生成物を含む、結合層と、(D)かかる基材とは反対側に配置されており、結合層と直接接触させて結合層上に配置されている、最表面層と、を含み、かかる方法が、I.ナノ粒子を凝集させて、ISO13320による光散乱法を用い測定したときに、少なくとも100ナノメートルの平均体積径寸法を有する、ナノ粒子凝集塊を形成する工程と、II.基材上にナノ粒子凝集塊を配置して、基材上に配置されたナノ粒子層を形成する工程と、III.ナノ粒子凝集塊上にケイ素系樹脂を塗布する工程と、IV.ナノ粒子凝集塊上でケイ素系樹脂を酸化硬化させて、ナノ粒子層と直接接触させてナノ粒子層上に配置された結合層を形成する工程と、V.最表面層を、基材と反対側の結合層に直接接触させて、結合層上に配置して、疎水性物品を形成する工程と、を含み、疎水性物品を形成した後で、部分的に改変したASTM D5946−04法を用い最表面層を評価したときに、疎水性物品が120度以上の水接触角を有する、疎水性物品の形成方法。
【0084】
態様21.最表面層が、結合層に対し共有結合している、態様20に記載の方法。
【0085】
態様22.最表面層が、結合層に対する共有結合を含まない、態様20に記載の方法。
【0086】
態様23.かかる(I)ナノ粒子を凝集する工程が、ナノ粒子が凝集するよう、ナノ粒子に対しオルガノシランを塗布することとして更に定義され、ISO13320による動的光散乱法を用い測定するとき、ナノ粒子は、5〜1000ナノメートルの直径を有する、態様20〜22のいずれか一態様に記載の方法。
【0087】
態様24.かかる(II)配置する工程が、基材と直接接触させて、基材上にナノ粒子凝集塊を配置する工程として更に定義される、態様20〜23のいずれか一態様に記載の方法。
【0088】
態様25.かかる(II)配置する工程が、ナノ粒子層が基材とは離間して、基材上に配置されるよう、ナノ粒子凝集塊を配置する工程として更に定義され、方法が、(VI)基材及びナノ粒子層と直接接触させて、接着剤層をこれらの上に配置させるよう、接着剤を基材に塗布して、接着剤層を形成する工程を更に含む、態様20〜23のいずれか一態様に記載の方法。
【0089】
態様26.接着剤が、少なくとも部分的に硬化されており、酸化ケイ素である、態様25に記載の方法。
【0090】
態様27.酸化ケイ素が、シラザンの酸化物、シルセスキオキサンの酸化物、又はこれらの組み合わせである、態様26に記載の方法。
【0091】
態様28.疎水性物品が、100回以上の摩耗サイクル後、部分的に改変したASTM D5946−04法を用いて評価したときに、80度以上の水接触角を有する、態様25〜27のいずれか一態様に記載の方法。
【0092】
態様29.ケイ素系樹脂が、600〜150,000g/molの分子量を有し、かつ分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素基を有する、態様20〜28のいずれか一態様に記載の方法。
【0093】
態様30.ケイ素系樹脂が、シルセスキオキサン、ポリシルセスキオキサン、シラザン、又はポリシラザンである、態様20〜29のいずれか一態様に記載の方法。
【0094】
態様31.ケイ素系樹脂が、式:(R
3SiO
1/2)
a(R
2SiO
2/2)
b(RSiO
3/2)
c(SiO
4)
dを有するシルセスキオキサンであり、式中、各Rは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、及びアリール基、あるいはハロゲン、窒素、酸素、硫黄、又はケイ素原子により置換されたアルキル、アルケニル、及びアリール基からなる群から選択され、ただし、少なくとも2個のR基は水素であり、a、b、c、及びdはモル分率であり、a+b+c+dは1であり、並びにcとdの合計はゼロ超である、態様20〜29のいずれか一態様に記載の方法。
【0095】
態様32.ケイ素系樹脂が水素シルセスキオキサンである、態様20〜29のいずれか一態様に記載の方法。
【0096】
態様33.最表面層が、20℃で40mN/m未満として測定される表面エネルギーを有する、態様20〜32のいずれか一態様に記載の方法。
【0097】
態様34.最表面層が、20℃で30mN/m未満として測定される表面エネルギーを有する、態様20〜32のいずれか一態様に記載の方法。
【0098】
態様35.最表面層が、20℃で20mN/m未満として測定される表面エネルギーを有する、態様20〜32のいずれか一態様に記載の方法。
例
【0099】
各種例を作製するため、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)(99%)をAldrichから購入する。25重量%の水酸化アンモニウム溶液をFlukaから購入する。3−アミノプロピルトリエトキシシランは、Dow Corningから市販されている。一般式:F((CF
2)
3O)
C’CF
2CF
2CH
2O(CH
2)
3Si(OMe)
3を有し、式中、C’が17〜25であるポリフルオロポリエーテル(PFPE)シランもDow Corningから市販されている。オクタメチルトリシロキサンもDow Corningから市販されている。Galden HT−170は、Dupontの熱媒体である。酢酸はAldrichから購入する。スライドガラス(75mm×50mm×1.0mm)はFisher scientificから購入する。10.16(4”)シリカウエハー(厚さ380〜750μm)はPure Wafer社から購入する。エタノールはAldrichから購入する。本開示を代表する各種物品を以下に形成し、評価する。
合成:シリカナノ粒子の調製(ストーバー法):
【0100】
250mLの三口丸底フラスコで、6mLのテトラエチルオルトシリケートに90mLのエタノール溶液を加えた。溶液を完全に混合した後、6mLの25%アンモニアを一度に溶液に加えた。混合した溶液を、次に1時間50℃に加熱した。反応後、溶液を室温に冷却し、開口容器に入れ、一晩撹拌してアンモニアを揮発させた。動的光散乱法によると、ナノ粒子寸法は約50nmであった。
オルガノシランによるナノ粒子の凝集/官能化:
【0101】
0.54gの10重量% 3−アミノプロピルトリエトキシシラン/エタノールに、15gの2.5重量%シリカゾル/エタノールを滴下した。添加後、1mL酢酸を溶液に添加した。次に混合物を、1時間50℃に加熱した。室温に放冷後、混合物を氷水中で30分間超音波処理し、次に被覆のため、固形分0.2重量%に希釈した。
試験方法−摩耗試験:
【0102】
各実施例を摩耗して、優れた水接触角、例えば、超疎水性を維持しながらのひっかき耐性を評価する。摩耗は、典型的には、接触角を減少させて疎水性を破損させ、水を表面に捕集してしまう。そのため、耐摩耗性は、各実施例の寿命を評価するのに優れた試験である。耐摩耗性試験には、Taber Industries(North Tonawanda,NY)により製造された往復研磨機Model 5900を使用した。Kimberly−Clark Wypallブランドのマイクロファイバークロス(83630)により、20mm×20mmの表面積に対し試験を実施した。往復摩耗試験機は、毎分40回の速度、2.54cmのストローク長さ(1インチかつ荷重5N)で、100、500、1000、2000、及び5000回実施した。1回の前後動を1サイクルと呼ぶ。
水接触角(WCA)の測定:
【0103】
各実施例を評価して、水接触角(WCA)を求めた。前述のとおり、水接触角が大きくなるほど、疎水性が増加していることの指標となる。換言すれば、水接触角が大きくなるほど、水滴が表面をより拡散するようになる。水接触角の増加は、表面湿潤の低下、ひいては疎水性の向上の指標となる。
【0104】
部分的に改変したASTM D5946−04法を用いて、AST Products社(Billerica,MA)製のVCA Optima XE 接触角計を使用して、2μL脱イオン水の静的水接触角を測定した。複数の試料を使用し、被覆上の複数の位置において測定した6個の測定値の平均WCAをデータとして報告する。摩耗サイクル後にWCAを測定した。概して、摩耗後のWCAが大きくなるほど、被覆の耐久性は高くなる。水の滑落角を測定し、自浄性及び履歴現象を評価するのに使用した。接触角計のステージの角度をゆっくり合わせて、20μLの水滴をすべらせる滑落角を測定した。
ヘキサデカンの接触角(HCA)の測定:
【0105】
2μLヘキサデカン及びVCA Optima XE角度計を使用して、ヘキサデカンの静的接触角を測定した。被覆上の複数の位置における4個の測定値の平均HCAをデータとして報告する。
ヘーズ測定:
【0106】
BYK Haze−Gard Plus曇り度計を使用し、試料の外観を測定した。透明度、ヘーズ、及び明瞭度について、3回の測定の平均を記録した。
基材としてのスライドガラスの清浄及び活性化:
【0107】
Fisherスライドガラスを超音波浴で洗剤により5分間清浄した後、超音波浴(Fisher Scientific FS−220)で脱イオン水により各回2分3回すすぎ洗いした。清浄後、スライドガラスを125℃の炉で1時間乾燥した。4”シリコンウエハも機材として使用した。被覆の塗布前に、March Plasma PX250チャンバを使用して、スライドガラス及びシリコンウエハをアルゴン(300W、60秒)でプラズマ処理した。活性化した基材はすぐに使用した。
各種層の噴霧被覆:
【0108】
すべての層は、V318丸型スプレーキャップの吹き出し口を取り付けたPVA−1000TM選択的被覆システムを用い、7.2cmのノズル高さ及び150mm/sの速度で塗布した。
薄膜特性:
【0109】
TEM:合成シリカナノ粒子及び凝集ナノ粒子の懸濁物を超音波処理し、炭素膜被覆したCuグリッドに転写した。乾燥後、加速電圧200kVで操作したJEOL JEM−2100F TEMで試料を解析した。CCDカメラ及びデジタル顕微鏡ソフトウェアによりTEM画像を記録した。TEMのスケールバーの不確かさは10%未満である。
【0110】
SEM:2A〜2D、3A、及び3B試料はPt/Pdで被覆し、JEOL 6335F SEMにより分析した。資料間での直接比較を可能にするため、予め設定した倍率で画像を3回収集した。むき出しのガラス領域は、Gwyddionを用い、画像にコントラストマスキングを行うことにより識別した。画像加工プログラム(Gwyddion)により、20,000xSEM画像を分析した。コントラストの暗い領域は、むき出しのガラス領域を表すと仮定した。コントラスト閾値を選択し、暗領域のピクセル数と明領域のピクセル数との比較を行った。
各種物品の非限定例:
【0111】
すべての層をFisherスライスガラス上に被覆する。ノズル高さ7.2cm、速度150mm/s、並びに以下表に記載の噴霧圧力(AP)、流体圧力(FP)、ストローク、及び間隔で、0.2重量%の前述のナノ粒子/EtOHをスライドガラスに対し噴霧した(これにより、基材上に配置されたナノ粒子層を形成した)。被覆後、スライドガラスを大気中で乾燥させた後、AP6.9kPa(1psi)、FP34kPa(5psi)、ストローク2mil、ノズル高さ5.3cm、及び速度約100mm/秒、間隔9mmで、0.2重量%ポリフルオロポリエーテル(PFPE)シラン/Galden HT−170(表面処理剤として)を噴霧し、ナノ粒子層上に配置された結合層を形成した。硬化後、層は水蒸気を充填した125℃の炉で1時間硬化させた。
【0112】
以下の例は、噴霧プロセス条件により、表面モルホロジー及び疎水性を調整可能であることを示す。ノズル高さ7.2cm、速度約150mm/秒、噴霧圧力(AP)55kPa(8psi)、かつ下表1に掲載のとおりにその他の噴霧パラメータは設定した噴霧条件下で、0.2重量%の前述の凝集ナノ粒子/エタノールを噴霧被覆した。乾燥後、AP21kPa(3psi)、流体圧力(FP)34kPa(5psi)、ストローク2.0mil、及び間隔5mmで、0.2重量%の前述のポリフルオロポリエーテル(PFPE)シランを表面上に噴霧した。層は、水蒸気を充填した125℃の炉で1時間硬化させた。異なる被覆条件下での被覆の粗さ、WCA、及びヘーズを表1に示す。
【表1】
【0113】
以下の例は、HSQ結合層を不使用の場合、かつ異なる量のHSQを結合層に用いた場合の、被覆耐久性を示す。AP55kPa(8psi)、FP55kPa(8psi)、ストローク2.25mil、及び間隔2mmで0.2重量%の前述のナノ粒子を噴霧被覆した(これにより基材上に配置されたナノ粒子層を形成した)。次に、様々な厚みでHSQ層を堆積させて、結合層を形成した。より詳細には、AP41kPa(6psi)、FP34kPa(5psi)、間隔5mm、及びストローク2.25milで、オクタメチルトリシロキサン中0.2重量%、0.5重量%、及び1重量%HSQを被覆した。この薄層を大気中で乾燥した後、次にこの層を、大気中、ホットプレートにより150℃で2分、250℃で2分、次に350℃で30分、硬化した。最後に、AP21kPa(3psi)、FP34kPa(5psi)、ストローク2.0mil、及び間隔5mmで、0.2重量%ポリフルオロポリエーテル(PFPE)シラン(表面処理剤として)を表面上に噴霧した。層は、水蒸気を充填した125℃の炉で1時間硬化させた。異なる量でHSQ結合剤を用い、被覆の初期及び摩耗後の水接触角を評価し、下表2に掲載する。
【表2】
【0114】
以下の例は、物品10に接着剤層を用いた場合(例3A)及び用いなかった場合(例3B)の被覆耐久性を記載する。更なる例では、AP21kPa(3psi)、FP34kPa(5psi)、ストローク2mil、及び間隔5mmで0.2重量%HSQを噴霧したt。被覆を大気中で乾燥させた後、AP55kPa(8psi)、FP55kPa(8psi)、ストローク2mil、及び間隔1.75mmで0.2重量%の前述の凝集ナノ粒子を噴霧被覆した(これにより基材上に堆積されたナノ粒子層を形成した)。これに結合層を続けた。より詳細には、AP55kPa(8psi)、FP34kPa(5psi)、間隔5mm、及びストローク2.25milで0.2重量%HSQ層を被覆した。薄層を大気中で乾燥した後、次に窒素下、150℃、250℃、及び350℃の横型石英管炉で各回5分ずつ、次に酸素下、550℃で1時間硬化させた。最後に、AP21kPa(3psi)、FP34kPa(5psi)、ストローク2.0mil、及び間隔5mmで、0.2重量% DC−2634を表面上に被覆した。層は、水蒸気を充填した125℃の炉で1時間硬化させた。続いて、被覆の配置が耐久性に与える影響について評価し、下表3に掲載する。
【表3】
【0115】
以下の例は、HSQ結合層と、凝集ナノ粒子噴霧条件を変えた場合の、被覆の疎水性及び耐久性を記載する。更に追加の例では、AP21kPa(3psi)、FP34kPa(5psi)、ストローク2mil、及び間隔5mmで0.2重量%HSQを噴霧して接着剤層を形成した。被覆を大気中で乾燥させた後、ナノ粒子層及び接着剤層を互いに直接接触させて配置させるよう、AP55kPa(8psi)、FP55kPa(8psi)、ストローク2mil、及び間隔1.75mmで、0.2重量%の前述の凝集ナノ粒子を噴霧被覆した。これに対し、次に結合層を塗布した。より詳細には、AP55kPa(8psi)、FP34kPa(5psi)、間隔5mm、及び2mil、2.25mil、及び2.5milの各ストロークで、0.2重量%HSQ層を被覆した。薄層を大気中で乾燥した後、次に窒素下、150℃、250℃、及び350℃の横型石英管炉で各回5分ずつ、次に酸素下、550℃で1時間硬化させた。最後に、AP21kPa(3psi)、FP34kPa(5psi)、ストローク2.0mil、及び間隔5mmで、0.2重量%ポリフルオロポリエーテル(PFPE)シランを表面上に被覆した。層は、水蒸気を充填した125℃の炉で1時間硬化させた。WCA及びHCAを表4の例4A〜4Cに示す。
【0116】
追加の例において、AP55kPa(8psi)、FP55kPa(8psi)、ストローク2mil、かつ1.5mm、1.75mm、及び2mmの各間隔で、0.2重量%の前述の凝集ナノ粒子を噴霧被覆した。次に、結合層を塗布した。より詳細には、AP34kPa(5psi)、FP34kPa(5psi)、間隔5mm、及びストローク2.25milで0.2重量%HSQ層を被覆した。薄層を大気中で乾燥した後、次に窒素下、150℃、250℃、及び350℃の横型石英管炉で各回5分ずつ、次に酸素下、550℃で1時間硬化させた。最後に、AP21kPa(3psi)、FP34kPa(5psi)、ストローク2.0mil、及び間隔5mmで、0.2重量% DC−2634を表面上に被覆した。層は、水蒸気を充填した125℃の炉で1時間硬化させた。続いて、異なる条件下での被覆耐久性を評価し、表4に例4D〜4Fとして掲載する。
【表4】
【0117】
上記のデータセットは本開示の物品及び方法が優れた結果を産むことを示す。より詳細には、物品は摩耗後であってさえ高い耐久性を有する。
【0118】
分散が本開示の範囲内にとどまるものである限り、上述の値のうちの1つ以上が、±5%、±10%、±15%、±20%、±25%等で変動してもよい。マーカッシュ群の各要素からは、他の全ての要素から独立して予期せぬ結果を得られる可能性がある。各要素は、それぞれ個々に及び/又は組み合わせにおいて依存し得るものであり、特許請求の範囲内において各具体的な実施形態に適切な裏付けを与える。独立請求項及び従属請求項の全ての組み合わせの主題は、単独従属でも、複数従属でも、本発明において明白に考慮されている。本開示は、説明の文言を含めて限定なものではなく、例示的なものである。本発明は上記の記載事実に照らして多くの修正及び変更が可能であり、また本発明は本願に具体的に記載したものと異なる形で実施することが可能である。
分散が本開示の範囲内にとどまるものである限り、上述の値のうちの1つ以上が、±5%、±10%、±15%、±20%、±25%等で変動してもよい。マーカッシュ群の各要素からは、他の全ての要素から独立して予期せぬ結果を得られる可能性がある。各要素は、それぞれ個々に及び/又は組み合わせにおいて依存し得るものであり、特許請求の範囲内において各特定の実施形態に適切な裏付けを与える。独立請求項及び従属請求項の全ての組み合わせの主題は、単独従属でも、複数従属でも、本発明において明白に考慮されている。本開示は、説明の文言を含めて限定なものではなく、例示的なものである。本発明は上記の記載事実に照らして多くの修正及び変更が可能であり、また本発明は本願に具体的に記載したものと異なる形で実施することが可能である。