特許第6557283号(P6557283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557283
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】静脈内医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61L 29/12 20060101AFI20190729BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20190729BHJP
   A01N 47/44 20060101ALI20190729BHJP
   A01N 31/08 20060101ALI20190729BHJP
   A01N 31/16 20060101ALI20190729BHJP
   A01N 43/54 20060101ALI20190729BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20190729BHJP
   A61L 29/16 20060101ALI20190729BHJP
   A61L 29/08 20060101ALI20190729BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20190729BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20190729BHJP
   A61L 101/32 20060101ALN20190729BHJP
   A61L 101/34 20060101ALN20190729BHJP
   A61L 101/36 20060101ALN20190729BHJP
【FI】
   A61L29/12
   A01N25/00 102
   A01N47/44
   A01N31/08
   A01N31/16
   A01N43/54 E
   A01P1/00
   A61L29/16
   A61L29/08 100
   A61L2/18
   A61M25/00 612
   A61L101:32
   A61L101:34
   A61L101:36
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-101698(P2017-101698)
(22)【出願日】2017年5月23日
(62)【分割の表示】特願2015-504632(P2015-504632)の分割
【原出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-153995(P2017-153995A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2017年6月15日
(31)【優先権主張番号】13/438,559
(32)【優先日】2012年4月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン カール バークホルツ
(72)【発明者】
【氏名】ミン クアン ホアン
【審査官】 横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/034675(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/036916(WO,A1)
【文献】 特表2009−528360(JP,A)
【文献】 特表2009−527356(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/005951(WO,A1)
【文献】 特表2015−519303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 29/00
A01N 25/00
A61M 25/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器であって、
近位端、遠位端、および、それらの間に延在する内腔であって、複数の表面を含んでいる内腔と、
前記複数の表面に塗布される抗菌組成物と
を備え
前記抗菌組成物が、前記複数の表面に、
過剰な前記抗菌組成物を持つ、前記医療機器の成分を、前記医療機器の該成分が前記内腔内に挿入されるより前にコーティングするステップ、
該コーティングされた成分を、前記医療機器の前記内腔内に挿入するステップ、
前記コーティングされた成分を前記内腔内で前進させ及び据え付けることによって、過剰な前記抗菌組成物の部分を前記複数の表面の部分に撒布するステップ、
過剰な前記抗菌組成物を残りの複数の表面にさらに撒布するように、前記内腔及び据え付けられコーティングされた成分を通して空気を吹くステップ、及び、
前記複数の表面の上方でさらなる空気を吹くことによって、前記抗菌組成物の担体溶媒を蒸発させるステップ
を含む方法に従って塗布される、医療機器。
【請求項2】
隔壁、カテーテル、隔壁アクチュエータ、針アダプタ、ウェッジ、および、カテーテルアダプタからなる群から、前記複数の表面が選択される、請求項1の医療機器。
【請求項3】
前記抗菌組成物が、
ノンアルコール殺生剤、
潤滑剤、及び、
アルコールを含有する担体溶媒であって、前記ノンアルコール殺生剤及び前記潤滑剤を溶解することのできる担体溶媒
を含む、請求項1の医療機器。
【請求項4】
前記溶媒は、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、および、それらの組合せから成る群から選択されるアルコールを含む、請求項の医療機器。
【請求項5】
約1個から約6個までの炭素原子の低級アルコールから成る群から、前記溶媒が選択される、請求項の医療機器。
【請求項6】
前記低級アルコールは、約1:10から約1:1の比率のイソプロパノールおよびエタノールの混合物を含む、請求項の医療機器。
【請求項7】
前記溶媒は、前記抗菌組成物の約70重量%から約99.8重量%までを占める、請求項の医療機器。
【請求項8】
フェノール、第4級アンモニウム、グアニジン、ピリジニウム、ベンザルコニウム、セトリミド、ヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、酢酸デカリニウム、塩化デカリニウム、クロロキシレノール、クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、トリクロサン、クロルヘキシジン二塩酸塩、二酢酸クロルヘキシジン、および、それらの組合せからなる群から、前記ノンアルコール殺生剤が選択される、請求項の医療機器。
【請求項9】
前記ノンアルコール殺生剤は、前記抗菌組成物の約0.01重量%から約1.0重量%までを占める、請求項の医療機器。
【請求項10】
前記ノンアルコール殺生剤は、前記抗菌組成物の約0.01重量%から約0.5%重量までを占める、請求項の医療機器。
【請求項11】
前記潤滑剤は約20mN/mの表面張力を有する、請求項の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、抗菌性材料および医療機器の様々な表面に材料を塗布する方法に関する。詳細には、本開示は、1または複数のアルコールベースの担体溶媒と、潤滑剤と、殺生剤とを含む抗菌コーティング材について述べ、当該1または複数の担体溶媒は、医療機器の様々な表面に殺生剤を送ることおよび送達することを補助し、潤滑剤は、組立て中に医療機器の種々の構成要素間の摩擦を低減する。さらに、本開示は、医療機器を組み立てる方法について述べ、抗菌性材料の物理的特性は組立て工程を補助する。
【背景技術】
【0002】
医学および医療の分野では、患者の皮膚は、様々な方法でかつ様々な理由で、穿刺される可能性がある。例えば、カニューレまたは静脈内(「IV:intravenous」)カテーテルが、患者の皮膚を通して、患者の脈管構造などの内部空間内に押し進められる。この例では、カニューレまたはIVカテーテルは、流体(例えば、食塩水、薬剤、および/または完全非経口栄養)を患者に注入し、患者から流体(例えば、血液)を採取し、かつ/または患者の血管系の様々なパラメータをモニタするために使用され得る。
【0003】
医療機器を介して患者の脈管構造にアクセスすることの結果として、細菌および他の有害な病原菌が、一般的に患者体内に導入される。いくつかの例では、患者の皮膚が穿刺された部位において、有害な病原菌が導入される。他の例では、汚染された医療機器で患者の脈管構造にアクセスする前に、医療機器の流体経路の内部に病原菌が存在する。さらに、いくつかの例では、注射器、針またはIV流体バッグによるなど、挿入された医療機器を介して流体および薬剤を患者に導入することにより、有害な病原菌が患者の脈管構造内に導入される。したがって、注入療法の手法および処置が、患者の感染の可能性を高める。実際、毎年、アメリカ合衆国だけで何百、何千もの患者が、IVカテーテル、もしくは皮下注射針などの別のIVアクセス機器を介してまたはそれが理由で、患者に伝染した病原体に起因する何らかの形の血流感染を発症させることが推定される。
【0004】
これらのカテーテル関連の血流感染は、患者の疾患、いくつかの場合には死を引き起こすことが多い。さらに、いくつかの感染は、抗生物質に耐性のある細菌の菌株(例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(「MRSA:Methicillin-resistant Staphylococcus aureus」)およびバンコマイシン耐性腸球菌(「VRE:Vancomycin-resistant Enterococci」))に起因するため、そのような感染は治療が難しく、より蔓延する可能性がある。さらに、血流感染を有する患者はさらなる医学治療を要する可能性があるため、カテーテル関連の血流感染は医療費の増大にも関係する可能性がある。
【0005】
病院、外来患者、在宅ケア、および他の医療状況における血流感染(すなわち、カテーテル関連の感染)を制限する試みにおいて、多くは衛生手法を実施してきた。例えば、多くの医療提供者が、カテーテルまたは他の鋭利な医療機器が皮膚を穿刺する前に、手袋を着用すること、手を洗浄すること、患者の皮膚上の挿入部位を清浄化すること、穿刺後にカテーテル部位を清浄化すること、および滅菌された医療器具を使用することを非常に重視してきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
手、皮膚、医療器具、および医療状況における他の表面が様々な方法で清浄化される一方で、1または複数の抗菌剤を有する洗浄剤がそのような表面を清浄化するのに使用されることが多い。しかし、そのような洗浄剤は欠点がない訳ではない。例えば、多くの洗浄剤は、いくつかの共通する種類の病原菌に対して効果がない。例えば、前述の通り、MRSAおよびVREなどのいくつかの病原体はある抗菌剤に対する耐性を発達させている。さらに、医療機器の内部にいる病原菌は介護提供者にはアクセスし難く、したがって、注入療法または注入手法中にそれらを滅菌することができない。
【0007】
このように、患者の血流感染(Bloodstream Infection:BSI)を最小限にするまたは無くす手法は現在存在するが、依然として課題がある。したがって、現在の手法を補強する、またはさらには現在の手法を新しい手法および材料と置き換えることが、当該技術分野における改善である。そのような手法、材料、および方法が本明細書において提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、医療機器に新規の抗菌組成物または抗菌コーティング材を塗布するシステムおよび方法に関する。詳細には、本発明は、医療機器を組み立てる方法を提供し、新規の抗菌組成物の種々の成分が医療機器の組立てを補助し、医療機器の内部幾何学的形態の大部分に抗菌コーティングを施す。いくつかの例では、新規の抗菌組成物の物理的特性がさらに接着剤としての役割を果たして、医療機器の種々の構成要素の組立て関係を維持する。
【0009】
本発明のいくつかの実施が、ノンアルコール殺生剤と、潤滑剤と、殺生剤および潤滑剤が中で溶解できるアルコールを含む担体溶媒とを含む抗菌組成物を提供する。殺生剤は、病原体に対して有効な任意のノンアルコール殺生剤または化合物を含んでいてもよい。いくつかの例では、ノンアルコール殺生剤は、フェノール、第4級アンモニウム、グアニジン、ピリジニウム、ベンザルコニウム、セトリミド、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、酢酸デカリニウム、塩化デカリニウム、クロロキシレノール、クロルヘキシジン、酢酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、トリクロサン、クロルヘキシジン二塩酸塩、およびそれらの組合せから成る群から選択される。
【0010】
抗菌組成物の潤滑剤は、本発明の教示に適合する任意の潤滑性材料(lubricious material)を含んでいてもよい。いくつかの例では、抗菌組成物は、低粘度シロキサンなどの、低い粘度を有する潤滑剤を含む。他の例では、抗菌組成物は、約20mN/mの表面張力を有する潤滑剤を含む。
【0011】
抗菌組成物の担体溶媒は、本発明の教示による、抗菌組成物の潤滑剤および殺生剤を溶解することができる任意のアルコールベースの溶媒材料を含んでいてもよい。いくつかの例では、抗菌組成物は、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、およびそれらの組合せから成る群から選択されるアルコールを含む担体溶媒を含む。他の例では、抗菌組成物は、約1個の炭素原子から約6個の炭素原子までを有する低級アルコールから成る担体溶媒を含む。さらに、いくつかの実施形態では、抗菌組成物は、殺生剤および潤滑剤が中で溶解されかつ周囲条件で容易に蒸発するノンアルコールベースの溶媒を含む担体溶媒を含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施が、医療機器を組み立てる方法をさらに提供し、抗菌組成物は医療機器の組立てを補助し、抗菌組成物の個々の成分が、組立て工程における、および最終的に組立てられた医療機器製品に所望の利益をもたらす。
【0013】
例えば、いくつかの例では、抗菌組成物の潤滑剤が、組立て中に医療機器の種々の構成要素間の摩擦を低減する。さらに、担体溶媒は殺生剤を溶解し、医療機器の組立て中に医療機器の様々な内部幾何学的形態への殺生剤の撒布を補助する。コーティングされると、担体溶媒は蒸発し、それにより医療機器の内部幾何学的形態上で殺生剤を固定する。固定された殺生剤は、医療機器のコーティングされた内部幾何学的形態上での細菌の増殖または集落形成を防止する。いくつかの実施では、殺生剤の薄層が、医療機器の種々の構成要素間に間置されたままになっており、殺生剤の粘着性質は、種々の構成要素間で接着剤として作用する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の前述のかつ他の特徴および利点が得られる方法が容易に理解されるために、簡潔に前述されている本発明のより詳細な説明が、添付の図に示されているその特定の実施形態を参照することにより与えられる。これらの図は単に本発明の典型的実施形態を示しているに過ぎず、したがってその範囲を限定していると見なされるべきではないという理解の下で、本発明は、添付の図の使用により、付加的な特異性および詳細と共に記載され、説明される。
図1】本発明の代表的実施形態による、医療機器の内部構造および内部幾何学的形態に抗菌組成物を塗布する方法を示す流れ図である。
図2】本発明の代表的実施形態による、医療機器の組立ての前に医療機器の内部構成要素をコーティングすることにより、医療機器の内部構造および内部幾何学的形態に抗菌組成物を塗布する方法を示す流れ図である。
図3】本発明の代表的実施形態による、医療機器の組立て前の、内部構成要素を有する医療機器の図である。
図4】本発明の代表的実施形態による、医療機器の組立て前の、抗菌組成物でコーティングされている内部構成要素を有する医療機器の図である。
図5】本発明の代表的実施形態による、組立て中の医療機器の図である。
図6】本発明の代表的実施形態による、組立ておよび医療機器の種々の内部構造および内部幾何学的形態に塗布された抗菌コーティングの蒸発の後の、医療機器の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の完全な理解をもたらすために、以下の記載は特定の詳細を検討している。しかし、当業者は、これらの特定の詳細を用いることなく本発明が実践され得ることを理解するであろう。実際、本発明は、任意の適切な方法で修正されることが可能であり、当該産業において従来使用されている任意の適切な化学薬品、装置、および手法と併用されることが可能である。このように、本発明の実施形態の以下のより詳細な説明は、範囲を限定することを意図しておらず、いくつかの現在好適な実施形態の代表的なものに過ぎない。さらに、以下の検討は医療状況において本発明を用いることに焦点を合わせているが、抗菌組成物は任意の適切な状況において使用されてもよい。
【0016】
一般に、本願は、多種多様な病原体を殺し、それらの増殖を防止する、有効な抗菌組成物を検討している。本明細書において用いられている用語「病原体(pathogen)」、「病原体(pathogens)」および「細菌」は、感染性の可能性がある微生物、細菌(例えば、波状細菌、グラム陰性菌、グラム陽性菌、好気性細菌、嫌気性細菌、抗酸菌、スピロヘータ、皮膚常在菌(Staphylococcus epidermis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escerchia coli)、変形菌(Proteus vulgaris)、腸球菌(Streptococcus faecalis)、肺炎桿菌属(Klebsiella)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、霊菌(Proteus mirabilis)等)、菌類(例えば、真菌胞子、黒麹菌(Aspergillus niger)、黄色麹菌(Aspergillus flavus)、クロネ(Rhizopus nigricans)、クラドスポリウム・ヘルバリウム(Cladosporium herbarium)、有毛表皮糸状菌 (Epidermophyton Floccosum)、毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)、ヒストプラズマ・カプスラーズム(Histoplasma capsulatum)等)、酵母(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)等)、ウイルス、および/または他の有害な可能性のある病原菌を含んでいてもよい。さらに、いくつかの現在好適な実施形態では、記載される抗菌組成物は乾燥して粘着性残留物を残すことが好ましい。本明細書に用いられている粘着性残留物という用語は、ベトベトする(ゴム性の(gummy)、べとつく(sticky)、くっついて離れない(adhesive)、および/またはニカワ状(gluey))堆積物を含意し得る。
【0017】
抗菌組成物は、それが多種多様な病原体を殺し、粘着性残留物を残して乾燥し、ヒトの皮膚での使用および/または医療機器での使用に適していることを可能にする任意の適切な原料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、抗菌組成物は、殺生剤と、潤滑剤と、殺生剤および潤滑剤を溶解することができる1または複数の溶媒とを含む。抗菌組成物に関するより良い理解をもたらすために、当該組成物の種々の構成要素は以下により詳細に記載されている。
【0018】
殺生剤は、ヒトの皮膚上での使用に適したかつ感染の可能性がある病原体を殺しかつ/またはその繁殖を抑止する/防止するアルコール以外の任意の化学薬品を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、第1の殺生剤が、グルコン酸クロルヘキシジンなどのクロルヘキシジンの塩を含む。他の実施形態では、殺生剤は物理的特性を含み、それにより当該剤は乾燥時にベトベトする残留物を残す。
【0019】
グルコン酸クロルヘキシジンは、それが有効な殺生剤であることを可能にするいくつかの特徴を有し得る。一例では、グルコン酸クロルヘキシジンは、医療状況に共通の多種多様な病原体を殺し、その増殖を抑止するのに有効である。別の例では、抗菌組成物中のグルコン酸クロルヘキシジンが乾燥した場合、グルコン酸クロルヘキシジンは、塗布された表面上に粘着性堆積物を形成する。この粘着性残留物は、暫くの間は表面上に残留している可能性があり、それにより表面に残留殺生効果をもたらす。この粘着性残留物は、さらに、表面間の結合が望ましい2つ以上の境界面間で接着剤または結合剤としての役割を果たし得る。
【0020】
抗菌組成物は静脈内暴露に安全であると同時に、当該組成物が病原体を効果的に殺すまたはその繁殖を防止することを可能にする、殺生剤の任意の適切な濃度を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、当該組成物の総重量の約0.01%から約1.0%までを占めるグルコン酸クロルヘキシジン殺生剤を含む抗菌組成物が提供される。他の実施形態では、当該組成物の重量で当該組成物の約0.01%から約0.5%までを占めるグルコン酸クロルヘキシジン殺生剤を含む抗菌組成物が提供される。さらに他の実施形態では、当該組成物の重量で当該組成物の約0.5%から約2%まで殺生剤としてのグルコン酸クロルヘキシジンを含む抗菌組成物が提供される。
【0021】
抗菌組成物は、静脈内暴露に安全であると同時に、当該組成物が病原体を効果的に殺すまたはその繁殖を防止することを可能にする他のノンアルコール殺生剤をさらに含んでいてもよい。適切な殺生剤の非限定的例には、フェノール、第4級アンモニウム、グアニジン、ピリジニウム、ベンザルコニウム、セトリミド、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、酢酸デカリニウム、塩化デカリニウム、ヘキセチジン、クロロキシレノール、クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、トリクロサン、クロルヘキシジン二塩酸塩、二酢酸クロルヘキシジン、およびそれらの組合せが含まれる。種々の殺生剤のいくつかの適切な濃度の例示として、(以下に示されている)表1が種々の抗菌組成物の12の代表的な調合の処方を含み、各調合における殺生剤の濃度を示す。
【0022】
【表1】
【0023】
例えば、表1は、調合1〜4および12では、グルコン酸クロルヘキシジンが殺生剤として選択され、抗菌組成物の総重量の約0.05%から約0.5%までを占めることを示す。表1は、調合5、6および7では、二酢酸クロルヘキシジンが殺生剤として選択され、抗菌組成物の総重量の約0.05%から約0.2%までを占めることをさらに示す。表1は、調合8および9では、クロロキシレノールが当該組成物の約0.1重量%から約0.2重量%までを占めることをさらに示す。さらに、表1は、調合10では、トリクロサンが当該組成物の約0.1重量%を占めることを示す。最後に、表1は、調合11では、ヘキセチジンが抗菌組成物の総重量の約0.1%を占めることを示す。
【0024】
記載されている通り、抗菌組成物は潤滑剤も含む。潤滑剤は、実質的に、本発明の教示に適合する任意の化学薬品または化合物を含んでいてもよい。一般に、抗菌組成物の潤滑剤が殺生剤に適合し、医療機器に生体適合する。詳細には、本発明のいくつかの実施形態が、注入療法または注入処置において使用される医療機器で安全に使用できる潤滑剤を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明の抗菌組成物は、非常に低い表面張力(すなわち、約20mN/m)を有する変成シロキサンなどの低粘度シリコンを含む。詳細には、いくつかの実施形態が、潤滑剤として(Momentive,Inc.により製造されている)Silwet Surfactantを含む。
【0026】
抗菌組成物の潤滑剤成分は、当該組成物に2つ以上の機能をもたらす可能性がある。いくつかの実施形態では、潤滑剤が供給されて、医療機器の組立て中に医療機器の表面間の摩擦を低減する。例えば、いくつかの実施形態では、潤滑剤が供給されて、組立て中にカテーテルデバイスの内面の幾何学的形態と隔壁の外面との間の摩擦を低減する。このように、潤滑剤は、カテーテルアダプタ内への隔壁の挿入を補助する。したがって、潤滑剤の使用により、医療機器の組立て中に隔壁への損傷が低減される。
【0027】
また、潤滑剤が供給されて、組立て中に医療機器の様々な表面への抗菌剤の結合を補助してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、シロキサンベースの潤滑剤が、医療機器のシリコン構成要素の表面に塗布される抗菌組成物中に組み込まれる。潤滑剤の化学成分は殺生剤の能力を高めて、抗菌組成物中の溶媒の蒸発の後、医療機器のシリコン構成要素に結合されたままになっている。このように、潤滑剤のシロキサン化学構造は、殺生剤が医療機器のシリコン構成要素に当接して結合され、保持される母材をもたらす。また、潤滑剤は、当該組成物の溶媒の蒸発後に医療機器の他の表面または内部幾何学的形態に殺生剤を結合させることにおいて効果的である。
【0028】
記載されている通り、抗菌組成物は担体溶媒も含む。担体溶媒は、抗菌組成物の殺生剤および潤滑剤を溶解することができる実質的に任意の流体を含んでいてもよい。当該溶媒は、注入療法および注入処置に使用することを目的とする医療機器にとってさらに一般に安全である。そのような溶媒のいくつかの例が、アルコール、水、グリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオールグリコール、ポロキサマー、グリセリン、およびそれらの組合せを含んでいてもよい。それにも関わらず、いくつかの現在好適な実施形態では、溶媒は室温および1気圧で容易に蒸発する(例えば、比較的高い蒸気圧を有する)液体を含む。さらに、いくつかの現在好適な実施形態では、溶媒は、溶媒が空気で吹かれることにより殺生剤および潤滑剤を医療機器の種々の内部幾何学的形態および内面に送り得るように、比較的低い粘度を有する。そのような溶媒の例が、アルコールおよび/または水を含んでいてもよい。
【0029】
実際、いくつかの実施形態では、溶媒は1または複数のアルコールを含む。溶媒としての役割を果たすことに加えて、アルコール(単数または複数)は、いくつかの他の有利な特徴を有し得る。例えば、アルコールは、それが接触する病原体の少なくともいくつかを殺す殺生剤としての役割を果たすことより、抗菌組成物の有効性をさらに高めることができる。別の例では、アルコールは比較的急速に蒸発し、それにより殺生剤および潤滑剤を医療機器の所望の表面上に残すまたは堆積させる。
【0030】
殺生剤(好ましくはグルコン酸クロルヘキシジン)および潤滑剤を溶解することができる任意のアルコールを溶媒が含むことができる一方、いくつかの実施形態では、アルコールは、1個の炭素原子から6個の炭素原子までを有する低級アルコールを含む。そのようなアルコールのいくつかの例には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等が含まれる。しかし、いくつかの現在好適な実施形態では、アルコールはイソプロパノールおよびエタノールから選択される。
【0031】
いくつかの実施形態では、溶媒は2つ以上の種類のアルコールを含む。そのような実施形態では、抗菌組成物は、2つ、3つ、4つまたはそれ以上を含む任意の適切な数のアルコールを含み得る。さらに、溶媒は、任意の適切なアルコールの組合せを含んでいてもよい。一例では、溶媒はイソプロパノール、ブタノール、およびエタノールを含む。別の例では、溶媒はイソプロパノールおよびエタノールを含む。
【0032】
溶媒が2つ以上のアルコールを含む場合、種々のアルコールは、互いに任意の適切な比で抗菌組成物中に存在し得る。例えば、いくつかの実施形態では、抗菌組成物が2つのアルコール(例えば、イソプロパノールおよびエタノール)を含む場合、第1のアルコール(例えば、イソプロパノール)に対する第2のアルコール(例えば、エタノール)の比は約1:10から約1:1である。他の実施形態では、第1のアルコール(例えば、イソプロパノール)に対する第2のアルコール(例えば、エタノール)の比は約1:3から約1:1である。さらに他の実施形態では、第1のアルコール(例えば、イソプロパノール)に対する第2のアルコール(例えば、エタノール)の比は約1:1.4±0.2である。
【0033】
抗菌組成物中の溶媒が少なくとも1つのアルコールを含む場合、抗菌組成物は任意の適切な量のアルコールを含み得る。一例では、1または複数のアルコールが抗菌組成物の総重量の少なくとも40%を占める。別の例では、アルコールが抗菌組成物の約40重量%から約99重量%までを占める。さらに別の例では、アルコールが抗菌組成物の約9%超から約99%までを占める。さらに別の例では、アルコールが抗菌組成物の約60重量%から約80重量%までを占める。例として、表1の調合1〜12は、当該組成物の約99.0重量%から約99.8重量%までのイソプロパノールを含む。実際、いくつかの現在好適な実施形態では、1または複数のアルコール(例えば、エタノールおよびイソプロパノール)が抗菌組成物の総重量の約70%±5%の割合を占める。
【0034】
前述の通り、いくつかの実施形態では、溶媒は水を含む。そのような実施形態では、水は、希アルコールまたは他の水含有溶液を含む任意の適切な水溶液中の抗菌組成物に供給されてもよい。それにも関わらず、いくつかの実施形態では、水には、米国薬局方(「USP:United States Pharacopeia」)の水または脱イオン水などの精製水が含まれる。
【0035】
抗菌組成物が水を含む場合、当該組成物は任意の適切な水量を含んでいてもよい。実際、いくつかの実施形態では、グルコン酸クロルヘキシジン、アルコール(すなわち、担体溶媒)、および/または任意の他の適切な原料(すなわち、潤滑剤)に加えて、抗菌組成物の残部は水を含む。一例では、抗菌組成物は約1%から約99%までの水を含む。例えば、水は抗菌組成物の約90%より多くを占めていてもよい。いくつかの実施形態では、抗菌組成物の全重量の約20%から約40%までが水である。さらに別の実施形態では、抗菌組成物は約25重量%から約30重量%までの水を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、抗菌組成物は、少なくとも1つの他のノンアルコール殺生剤を随意に含む。そのような実施形態では、第2の殺生剤は、抗菌組成物が表面を消毒することを可能にすると同時に、病原体を殺し、減少させ、またはさもなければその繁殖を防ぐ任意の適切な化学薬品(chemical)または化学薬品類(chemicals)を含み得る。第2の殺生剤は、抗菌組成物からの溶媒除去時に粘着性残留物を残す殺生剤に基づいて、さらに選択されてもよい。適切な第2の殺生剤のいくつかの例には、トリクロサン(5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)フェノール)、銀イオンおよび/または銅イオンならびにナノ粒子(例えば、tinosanクエン酸二水素銀)、スルファジアジン銀、イミダゾール、トリアゾール、アリルアミン、フェノール、ヘキサクロロフェン、抗生物質、スルホンアミド等が含まれる。
【0037】
抗菌組成物が第2の殺生剤を含む場合、抗菌組成物は、第2の殺生剤の任意の適切な部分を含んでいてもよい。一例では、第2の殺生剤(例えば、トリクロサン)は、抗菌組成物の総重量の約0.01%から約10%までを占める。別の例では、第2の殺生剤は、抗菌組成物の約0.1重量%から約5重量%までを占める。さらに別の例では、第2の殺生剤は、抗菌組成物の約0.5重量%から約2重量%までを占める。
【0038】
上述の原料に加えて、抗菌組成物は、任意の適切な原料を、抗菌組成物が殺生剤(単数または複数)で表面をコーティングし、注入療法および/または注入処置での使用に適しており、粘着性残留物を残して乾燥することを可能にする任意の適切な濃度で含んでいてもよい。そのような随意の原料のいくつかの例が、1もしくは複数の既知のまたは新規の粘着付与剤、増粘剤、中和剤、pH調整剤、金属塩、染料、香料、および/または他の適切な化学薬品を含んでいてもよい。
【0039】
また、抗菌組成物は任意の適切な特徴を有するように変成されてもよい。例えば、いくつかの現在好適な実施形態では、抗菌組成物は液体を含むが、他の実施形態では、抗菌組成物はジェル、クリーム、泡状物質、または所望の稠度/粘度を有する別の流体であるように変成され得る。
【0040】
また、抗菌組成物は任意の適切な方法で作製されていてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、抗菌組成物のアルコールベースの溶媒および水成分が最初に混合され、室温で任意の順序での他の原料または成分の添加が後に続く。
【0041】
一般に、本発明の抗菌組成物は、医療機器の内面および/または内部幾何学的形態をコーティングするのに使用される。詳細には、本発明の抗菌組成物が使用されて、1)医療機器の内面に抗菌コーティングが施され、2)医療機器の組立てを補助し、抗菌組成物の特性は抗菌特性をもたらし、医療機器の組立てを最適化する。
【0042】
いくつかの実施形態では、当該組成物中の溶媒の蒸発の後にベトベトする残留物または粘着性残留物を残す様々な成分を含む抗菌組成物が提供される。したがって、医療機器の外面をコーティングするために本発明の実施形態のいくつかを使用することは望ましくない。例えば、ユーザまたは患者の皮膚または衣服と接触する可能性がある医療機器の表面に、本発明の抗菌組成物のいくつかを塗布することは望ましくない。したがって、本発明の抗菌組成物のいくつかは、医療機器の内面または内部幾何学的形態への塗布を目的としている。
【0043】
ここで図1を参照すると、医療機器に抗菌組成物を塗布する方法が示されている。本発明のいくつかの実施形態では、抗菌組成物が医療機器の開口部に塗布される第1のステップ100を有する方法が提供される。抗菌組成物の液体および粘性の性質は、医療機器の開口部への当該組成物の容易な塗布を可能にする。例えば、いくつかの実施形態では、抗菌組成物は液体ポンプにより医療機器の開口部に塗布され、それにより抗菌組成物の一定量が開口部を通って医療機器の内部に塗布される。
【0044】
次いで、ステップ102に示されている通り、抗菌組成物は、医療機器の開口部を通して空気を吹くことにより、医療機器の内部形状(内部幾何学的形態)に撒布される。例えば、いくつかの実施形態では、圧縮空気が医療機器の開口部内へ方向付けられ、それにより医療機器の形状の種々の内面を横断してかつ通って抗菌組成物を撒布する。したがって、いくつかの実施形態では、医療機器は第2の開口部または出口をさらに含み、それを通って空気が脱け出てもよい。医療機器の開口部を通して空気を吹くことにより、抗菌組成物は医療機器の内面および内部形状を通って撒布され、それにより表面を抗菌組成物でコーティングする。いくつかの実施形態では、過剰な抗菌組成物が空気により内面を通って押し進められ、第2の開口部を通って空気と共に当該機器を出る。したがって、医療機器の内面および内部形状内には、抗菌組成物の薄い全体的に均一な層を構成する。
【0045】
いくつかの実施形態では、医療機器の開口部を通して空気を吹くプロセスは、過剰な抗菌組成物を医療機器の内部の構成要素の対向する面の間に押し進める。例えば、いくつかの実施形態では、カテーテルアダプタの内面上に形成されているチャネルまたは溝部の内部に隔壁が据え付けられている。医療機器を通して抗菌組成物を吹く当該プロセスは、過剰な抗菌組成物をカテーテルアダプタの隔壁とチャネルとの間に押し進める。抗菌組成物から溶媒を除去する(蒸発によってなど)と、隔壁とカテーテルアダプタとの間に間置されている抗菌組成物の部分は、隔壁の外面をカテーテルアダプタの内面に接着するように作用するベトベトする残留物または粘着性残留物を形成する。したがって、隔壁は、抗菌組成物残留物の粘着性特性により、その所望の位置内に固定され、保持される。
【0046】
抗菌組成物の撒布後、ステップ104に示されている通り、医療機器を通った空気流は、抗菌組成物の溶媒の蒸発を促進し続ける。溶媒が蒸発するにつれて、前段で検討されている通り、抗菌組成物の殺生剤および潤滑剤は医療機器の内面および内部形状に接着する。
【0047】
ここで図2を参照すると、医療機器の内面および内部形状内に抗菌組成物を塗布する方法が示されている。図2の方法は、図2と同時に検討されるであろう図3図6に概略的にさらに示されている。本発明のいくつかの実施形態では、内部形状を有する医療機器が設けられる第1のステップ202を有する方法が提供されている。本発明の医療機器が、抗菌組成物が利益をもたらすことになる任意の機器または機器の構成要素を含んでいてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、本発明の医療機器が、注入療法および注入処置において使用される任意の機器または機器の構成要素を含んでいてもよい。本発明の教示に適合する医療機器または構成要素の非限定的例には、カテーテル、カテーテルアダプタ、針、ルアーアダプタ、静脈管類、注射器、トロカール(外套針)、ランセット、輸液ポンプ、隔壁、隔壁アクチュエータ、針アダプタ、および静脈内カテーテル組立体と共に使用するための種々の安全装置が含まれる。
【0048】
いくつかの実施形態では、ステップ204に示されている通り、医療機器が、組立て中に医療機器の内部形状内に挿入される内部構成要素をさらに含む。図3を参照すると、1または複数の内部形状および/または内面を有する医療機器300の代表的実施形態が示されている。いくつかの実施形態では、医療機器300が、カテーテル320に動作可能に連結されているカテーテルアダプタ310を有する静脈内カテーテル組立体を含み、カテーテルアダプタ310およびカテーテル320は各々、様々な内面および内部幾何学的形態を含む。詳細には、いくつかの実施形態では、カテーテルアダプタ310は、環状チャネル316を含む内面312を含む。環状チャネル316は、医療機器300に有用な機能をもたらす内部構成要素330を受容する大きさに作製されており、そのように構成されている。例えば、いくつかの実施形態では、内部構成要素330は隔壁を含む。
【0049】
医療機器300を組み立てる工程は、内部構成要素または隔壁330がカテーテルアダプタ310内に挿入され、環状チャネル316内に据え付けられることを必要とする。いくつかの実施形態では、隔壁330は弾性ポリマー材料を含む。反対に、カテーテルアダプタ310は、ポリカーボネート材料、ポリウレタン材料またはポリエチレン材料などの剛性ポリマー材料を含む。カテーテルアダプタ310および隔壁330の物理的特性は、カテーテルアダプタ310の内面312と隔壁330の外面332との間に摩擦をもたらす。さらに、いくつかの実施形態では、隔壁330の外径はカテーテルアダプタ310の開口部314より大きい。したがって、開口部314を通る隔壁330の挿入中、隔壁330は内側に圧縮するまたは形状を歪める必要がある。このことは、隔壁330とカテーテルアダプタ310の内面312との間にさらなる圧力および摩擦をもたらす。したがって、いくつかの実施形態では、図2のステップ206に示されており、かつ図4に概略的に示されている通り、組立て前に、抗菌組成物340が潤滑剤として隔壁330の外面332に塗布される。
【0050】
前段で検討されている通り、本発明のいくつかの実施形態が、潤滑剤成分を含む抗菌組成物340を提供する。抗菌組成物340は、殺生剤およびアルコールベースの溶媒をさらに含む。抗菌組成物340は、隔壁330の任意の外面または外表面に塗布されてもよい。抗菌組成物340は、潤滑剤としての少なくとも1つの機能をもたらし、外面332と内面312との間の摩擦を低減する。抗菌組成物340は、隔壁330に抗病原体特性または抗病原体機能をさらにもたらす。
【0051】
いくつかの実施形態では、隔壁330を抗菌組成物340の容器内に浸すことにより組成物340が外面332に塗布され得るように、抗菌組成物340の粘度が選択される。さらに、いくつかの実施形態では、噴霧することにより抗菌組成物340が外面332に塗布される。組成物340の粘度は、外面332上での組成物340の蓄積を可能にする。例えば、いくつかの実施形態では、浸すことにより組成物340は外面332に塗布され、それにより外面332上での組成物340の薄層から中程度の層の蓄積をもたらす。他の実施形態では、抗菌組成物340は、組成物340と外面332との間の結合を促進する界面活性剤または他の成分を含む。例えば、いくつかの実施形態では、組成物340の潤滑剤成分が、隔壁330の外面332に付けられる低粘度シロキサンを含む。
【0052】
図2のステップ208に示されている通り、かつ図5に概略的に示されている通り、コーティングされた隔壁330は、次いで、開口部314を通してカテーテルアダプタ310内に挿入される。隔壁330は、任意の適合する方法によりカテーテルアダプタ310の内部内に挿入され、その内部で遠位に前進してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、隔壁330は、プローブ(図示せず)によってなど手作業で、カテーテルアダプタ310内に挿入される。他の実施形態では、隔壁330は、空気圧によりカテーテルアダプタ310内に挿入される。隔壁330は、隔壁330がチャネル316内に据え付けられるまで、カテーテルアダプタ310の内部形態を通って遠位に前進する。図示の通り、組立て工程中に、過剰な抗菌コーティング340が外面332から内面312へ移される。さらに、抗菌コーティング340の薄層が外面332とチャネル316との間に間置される。
【0053】
図2のステップ210に示されている通り、かつ図6に概略的に示されている通り抗菌組成物340は、カテーテルアダプタ310の開口部314を通して空気350を吹くことにより、カテーテルアダプタおよびカテーテル320の残りの内部幾何学的形態および内面312に撒布される。空気350は、一般に、開口部314に直接付与される圧縮空気を含む。空気350の速度、圧力、および流量は、カテーテルアダプタ310およびカテーテル320の内面312への組成物340の流動および効果的な撒布を促進するように選択される。さらに、空気350の速度、圧力、および流量は、隔壁330のスリット表面334への組成物340の流動および効果的な撒布を促進するように選択される。したがって、空気350の速度、圧力および流量は、抗菌組成物340の粘度に基づいて調節されてもよい。
【0054】
空気350は、抗菌組成物340の溶媒成分360の蒸発をさらに促進する。前段で検討されている通り、抗菌組成物340のいくつかの実施形態が、内面312への組成物340の流動および撒布を促進するアルコールベースの担体溶媒を含む。抗菌組成物340を撒布するステップの後に、ステップ212に示されている通り、かつ図6にさらに示されている通り、空気350がさらに使用されて、抗菌組成物340からの担体溶媒360の蒸発を促進する。
【0055】
圧縮空気350が、過剰な抗菌組成物340と、流体および蒸気雲352としてカテーテル320の開口部322経由で医療機器300を出る、蒸発した溶媒360との除去を促進する。溶媒蒸気360の除去は、抗菌組成物340の残りの成分をカテーテルアダプタ310およびカテーテル320の内面および内部形態312上に凝縮させる。圧縮空気350は、組成物340の残りの成分を、隔壁330のスリット表面334上にさらに凝縮させる。いくつかの実施形態では、圧縮空気350は、外面332とチャネル316との間に間置されている組成物340から溶媒360を除去する。したがって、組成物の薄層は、2つの表面間に間置されたままになっている。
【0056】
前段で検討されている通り、いくつかの実施形態では、抗菌組成物340は、組成物の溶媒の蒸発時にベトベトする残留物または粘着性残留物を残す殺生剤を含む。他の実施形態では、抗菌組成物340は、担体溶媒の除去後に、組成物340にベトベトする特性または粘着性特性を与える接着剤、または他の材料を含むように変成される。したがって、本発明の少なくともいくつかの実施形態では、隔壁330とチャネル316との間に間置されている凝縮された抗菌組成物の部分は、チャネル316の内部で隔壁330の据え付けられた位置を結合しそれを維持する接着剤としての役割を果たす。抗菌組成物の間置された部分は、隔壁330とチャネル316との間に封止をもたらし、それにより血液および注入液が隔壁330とチャネル316との間で移動しないようにさらに作用する。
【0057】
本発明は、本明細書に広く記載されておりかつ以下に特許請求されているその構造、方法、または他の本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化されてもよい。記載されている実施形態および例は全て、あらゆる点で例示的に過ぎないと見なされるべきであり、制限的と見なされるべきではない。したがって、本発明の範囲は、上記の説明ではなく添付の特許請求範囲により指示される。特許請求範囲の同等の意味および範囲内で起こる全ての変更が、それらの範囲内に包含されものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6