(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557308
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】低い寸法変化率を有する軟性銅箔積層フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20190729BHJP
B32B 15/088 20060101ALI20190729BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20190729BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20190729BHJP
C23C 14/20 20060101ALI20190729BHJP
C23C 14/14 20060101ALI20190729BHJP
C23C 14/02 20060101ALI20190729BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
B32B15/08 J
B32B15/088
H05K1/09 C
H05K3/00 R
C23C14/20 A
C23C14/14 D
C23C14/02 A
H01L23/14 R
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-192813(P2017-192813)
(22)【出願日】2017年10月2日
(65)【公開番号】特開2018-58362(P2018-58362A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2017年10月2日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0127337
(32)【優先日】2016年10月4日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518133500
【氏名又は名称】ケイシーエフ テクノロジース カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ソン ビョン キル
(72)【発明者】
【氏名】リュ ハン グォン
(72)【発明者】
【氏名】イ マン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ヨム ジュン ウン
【審査官】
飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−313738(JP,A)
【文献】
特開2016−066647(JP,A)
【文献】
特開2016−004844(JP,A)
【文献】
特開2016−087898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C23C 14/02
C23C 14/14
C23C 14/20
H01L 23/14
H05K 1/09
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面およびその反対側の第2面を有する非導電性高分子フィルム(nonconductive polymer film);
前記非導電性高分子フィルムの前記第1面上の第1タイコート層(tiecoat layer);
前記第1タイコート層上の第1銅層(copper layer);
前記非導電性高分子フィルムの前記第2面上の第2タイコート層;および
前記第2タイコート層上の第2銅層を含み、
下記の式1によって定義される「パンチング後MD収縮量(RMD)」が0〜−40μmであり、下記の式2によって定義される「パンチング後TD収縮量(RTD)」が0〜+20μmであることを特徴とする、軟性銅箔積層フィルム。
式1:RMD=(MD3+MD4)/2−(MD1+MD2)/2
式2:RTD=(TD3+TD4)/2−(TD1+TD2)/2
ここで、MD1およびMD2は前記軟性銅箔積層フィルムから得られた200mm(長さ)×156mm(幅)のサンプルの両側面縁にそれぞれ32個の1mm角のホールをMD方向に沿って3.75mm間隔で形成するパンチング工程を遂行した直後にそれぞれ測定された、第1側面縁の一番目のホールと32番目のホール間の距離および第2側面縁の一番目のホールと32番目のホール間の距離であり、
TD1およびTD2は前記パンチング工程直後にそれぞれ測定された前記第1側面縁の一番目のホールと前記第2側面縁の一番目のホール間の距離および前記第1側面縁の32番目のホールと前記第2側面縁の32番目のホール間の距離であり、
MD3およびMD4は前記パンチングされたサンプルから前記第1および第2タイコート層および前記第1および第2銅層を除去する食刻工程を遂行してから24時間が経過した後にそれぞれ測定された前記第1側面縁の一番目のホールと32番目のホール間の距離および前記第2側面縁の一番目のホールと32番目のホール間の距離であり、
TD3およびTD4は前記食刻工程を遂行してから24時間が経過した後にそれぞれ測定された前記第1側面縁の一番目のホールと前記第2側面縁の一番目のホール間の距離および前記第1側面縁の32番目のホールと前記第2側面縁の32番目のホール間の距離である。
【請求項2】
前記非導電性高分子フィルムはポリイミドを含み、10〜40μmの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の軟性銅箔積層フィルム。
【請求項3】
前記第1および第2タイコート層のそれぞれは、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、鉄(Fe)またはこれらのうち2以上の混合物を含み、150〜300Åの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の軟性銅箔積層フィルム。
【請求項4】
前記第1および第2タイコート層のそれぞれは、ニッケルおよびクロムを含み、前記クロムの含量は5〜25重量%であることを特徴とする、請求項3に記載の軟性銅箔積層フィルム。
【請求項5】
前記第1銅層は、
前記第1タイコート層上の第1銅シード層;および
前記第1銅シード層上の第1銅メッキ層を含み、
前記第2銅層は、
前記第2タイコート層上の第2銅シード層;および 前記第2銅シード層上の第2銅メッキ層を含み、
前記第1および第2銅シード層のそれぞれは、500〜1,500Åの厚さを有し、
前記第1および第2銅メッキ層のそれぞれは、1.8〜2.4μmの厚さを有する、請求項1に記載の軟性銅箔積層フィルム。
【請求項6】
非導電性高分子フィルムを準備する段階;
スパッタリング工程を通じて前記非導電性高分子フィルムの第1および第2面上に第1および第2タイコート層をそれぞれ形成する段階;
スパッタリング工程を通じて前記第1および第2タイコート層上に第1および第2銅シード層をそれぞれ形成する段階;および
連続電気メッキ工程を通じて前記第1および第2銅シード層上に第1および第2銅メッキ層をそれぞれ形成する段階を含み、
前記連続電気メッキ工程は33〜37℃に維持される硫酸銅メッキ液内で220〜300Nの張力下で遂行されることを特徴とする、請求項1に記載の軟性銅箔積層フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記硫酸銅メッキ液は20〜60g/Lの銅および100〜200g/Lの硫酸を含むことを特徴とする、請求項6に記載の軟性銅箔積層フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記連続電気メッキ工程は前記第1および第2銅メッキ層のそれぞれの厚さが1.8〜2.4μmとなるまで1〜5mpmの速度で遂行されることを特徴とする、請求項6に記載の軟性銅箔積層フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記連続電気メッキ工程中に加えられる電流密度は1〜3.5ASDであることを特徴とする、請求項6に記載の軟性銅箔積層フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記連続電気メッキ工程は垂直方式であることを特徴とする、請求項6に記載の軟性銅箔積層フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記第1および第2タイコート層を形成する前に、
真空雰囲気で50〜300℃の赤外線ヒーターを利用して前記非導電性高分子フィルムから水分および残留ガスを除去する段階;および
前記非導電性高分子フィルムの前記第1および第2面をプラズマで処理する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の軟性銅箔積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟性銅箔積層フィルムおよびその製造方法に関するもので、より具体的には、低い寸法変化率を有することによって回路パターンの不良を防止できる軟性銅箔積層フィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコン、携帯電話、PDA、ビデオカメラおよび電子手帳などの電子機器がますます小型化および軽量化されるにつれて、TAB(Tape Automated Bonding)、COF(Chip On Film)などに適用され得る軟性印刷回路基板(Flexible Printed Circuit Board:FPCB)に対する需要が増加している。これに伴い、FPCB製造に利用される軟性銅箔積層フィルム(Flexible Copper Clad Laminate:FCCL)に対する需要も増加している。
【0003】
軟性銅箔積層フィルムは、非導電性高分子膜と銅層の積層体であり、軟性銅箔積層フィルムの銅層を選択的に除去して非導電性高分子膜上に所定の回路パターンを形成することによって軟性印刷回路基板が得ることができる。
【0004】
軟性銅箔積層フィルムは、i)銅箔を製造した後、コーティングまたはラミネーティング工程を通じて前記銅箔上に非導電性高分子膜を形成するか、またはii)非導電性高分子膜上に銅を蒸着することによって形成され得る。後者の製造方法は、非常に薄い厚さの銅層を形成可能にするという点で、前者の製造方法に比べて有利である。
【0005】
軟性銅箔積層フィルムを利用して回路パターンを形成する方法としては、i)相対的に厚い厚さの初期銅層を形成した後、回路配線以外の残りの部分を除去するサブトラクティブ(subtractive)方法と、ii)相対的に薄い厚さの初期銅層を形成した後、回路配線に対応する領域上に銅メッキ(以下、「銅パターンメッキ」)をさらに実施するセミアディティブ(semi−additive)方法がある。
【0006】
より狭いピッチ(pitch)が具現できるという点で、一般にセミアディティブ方式がサブトラクティブ方式に比べて好まれている。
【0007】
微細回路パターンの形成が可能なセミアディティブ方式では、非導電性高分子膜上に形成された銅層の厚さを1〜2μm程度減少させる化学的研磨工程が遂行された後に8〜12μmの厚さで銅パターンメッキが遂行される。
【0008】
一般に、化学的研磨工程を遂行する前に、研磨工程中の軟性銅箔積層フィルムの移動(feeding)のためのパンチング(punching)作業が遂行されるが、このようなパンチング作業は軟性銅箔積層フィルムの収縮(MD方向およびTD方向)を引き起こす。このような収縮自体はもちろん、軟性銅箔積層フィルム間の収縮率の差によって、微細回路パターンを形成する過程で実施される露光工程の正確度が顕著に低下する。このような露光工程の不正確さは回路パターンの不良を引き起こす。例えば、回路パターン形成時に除去されるべき銅層の部分が完全に除去されずにその一部が残存することによって回路の短絡が発生するか、回路パターン形成時に残存すべき銅層の部分が除去されることによって回路の断線が発生する。
【0009】
このような回路の短絡または断線は、軟性印刷回路基板(FPCB)自体はもちろん、それが適用される電子機器の歩留まりおよび信頼性を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は前記のような関連技術の制限および短所に起因した問題点を防止できる軟性銅箔積層フィルムおよびその製造方法に関するものである。
【0011】
本発明の一観点は、低い寸法変化率を有することによって回路パターンの不良を防止できる軟性銅箔積層フィルムを提供することである。
【0012】
本発明の他の観点は、低い寸法変化率を有することによって回路パターンの不良を防止できる軟性銅箔積層フィルムを製造する方法を提供することである。
【0013】
前記の本発明の観点の他にも、本発明の他の特徴および利点が以下で説明されるか、そのような説明から本発明が属する技術分野で通常の知識を有した者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記のような本発明の一観点によって、第1面およびその反対側の第2面を有する非導電性高分子フィルム(nonconductive polymer film);前記非導電性高分子フィルムの前記第1面上の第1タイコート層(tiecoat layer);前記第1タイコート層上の第1銅層(copper layer);前記非導電性高分子フィルムの前記第2面上の第2タイコート層;および前記第2タイコート層上の第2銅層を含み、前記軟性銅箔積層フィルムは、下記の式1によって定義される「パンチング後MD収縮
量(post−punching MD shrinkage rate:R
MD)」が0〜−40μmであり、下記の式2によって定義される「パンチング後TD収縮
量(post−punching TD shrinkage rate:R
TD)」が0〜+20μmであることを特徴とする軟性銅箔積層フィルムが提供される。
式1:R
MD=(MD3+MD4)/2−(MD1+MD2)/2
式2:R
TD=(TD3+TD4)/2−(TD1+TD2)/2
【0015】
ここで、MD1およびMD2は、前記軟性銅箔積層フィルムから得られた200mm(長さ)×156mm(幅)のサンプルの両側面縁にそれぞれ32個の1mm角のホールをMD方向に沿って3.75mm間隔で形成するパンチング工程を遂行した直後にそれぞれ測定された、第1側面縁の一番目のホールと32番目のホール間の距離(MD1)および第2側面縁の一番目のホールと32番目のホール間の距離(MD2)であり、TD1およびTD2は前記パンチング工程直後にそれぞれ測定された前記第1側面縁の一番目のホールと前記第2側面縁の一番目のホール間の距離(TD1)および前記第1側面縁の32番目のホールと前記第2側面縁の32番目のホール間の距離(TD2)であり、MD3およびMD4は前記パンチングされたサンプルから前記第1および第2タイコート層および前記第1および第2銅層を除去する食刻工程を遂行してから24時間が経過した後にそれぞれ測定された前記第1側面縁の一番目のホールと32番目のホール間の距離(MD3)および前記第2側面縁の一番目のホールと32番目のホール間の距離(MD4)であり、TD3およびTD4は前記食刻工程を遂行してから24時間が経過した後にそれぞれ測定された前記第1側面縁の一番目のホールと前記第2側面縁の一番目のホール間の距離(TD3)および前記第1側面縁の32番目のホールと前記第2側面縁の32番目のホール間の距離(TD4)である。
【0016】
本発明の一実施例によれば、前記非導電性高分子フィルムはポリイミドを含み、10〜40μmの厚さを有する。
【0017】
前記第1および第2タイコート層のそれぞれは、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、鉄(Fe)またはこれらのうち2以上の混合物を含むことができ、150〜300Åの厚さを有することができる。
【0018】
本発明の一実施例によれば、前記第1および第2タイコート層のそれぞれは、ニッケルおよびクロムを含み、前記クロムの含量は5〜25重量%である。
【0019】
前記第1銅層は前記第1タイコート層上の第1銅シード層および前記第1銅シード層上の第1銅メッキ層を含み、前記第2銅層は前記第2タイコート層上の第2銅シード層および前記第2銅シード層上の第2銅メッキ層を含む。
【0020】
前記第1および第2銅シード層のそれぞれは、500〜1,500Åの厚さを有することができ、前記第1および第2銅メッキ層のそれぞれは、1.8〜2.4μmの厚さを有することができる。
【0021】
本発明の他の観点によって、非導電性高分子フィルムを準備する段階;スパッタリング工程を通じて前記非導電性高分子フィルムの第1および第2面上に第1および第2タイコート層をそれぞれ形成する段階;スパッタリング工程を通じて前記第1および第2タイコート層上に第1および第2銅シード層をそれぞれ形成する段階;および連続電気メッキ工程を通じて前記第1および第2銅シード層上に第1および第2銅メッキ層をそれぞれ形成する段階を含み、前記連続電気メッキ工程は33〜37℃に維持される硫酸銅メッキ液内で220〜300Nの張力下で遂行されることを特徴とする、軟性銅箔積層フィルムの製造方法が提供される。
【0022】
前記硫酸銅メッキ液は、20〜60g/Lの銅および100〜200g/Lの硫酸を含むことができる。
【0023】
前記連続電気メッキ工程は、前記第1および第2銅メッキ層のそれぞれの厚さが1.8〜2.4μmとなるまで1〜5mpmの速度で遂行され得る。
【0024】
前記連続電気メッキ工程中に加えられる電流密度は1〜3.5ASDであり得る。
【0025】
前記連続電気メッキ工程は垂直方式であり得る。
【0026】
本発明の方法は、前記第1および第2タイコート層を形成する前に、真空雰囲気で50〜300℃の赤外線ヒーターを利用して前記非導電性高分子フィルムから水分および残留ガスを除去する段階;および前記非導電性高分子フィルムの前記第1および第2面をプラズマで処理する段階をさらに含むことができる。
【0027】
前記のような本発明に対する一般的な記述は本発明を例示または説明するためのものに過ぎず、本発明の権利範囲を制限しない。
【発明の効果】
【0028】
本発明の軟性銅箔積層フィルムは低い寸法変化率を有するため、微細回路パターンを形成する過程で軟性銅箔積層フィルムの収縮による露光工程の正確度の低下を防止することができる。したがって、本発明の軟性銅箔積層フィルムが使われる場合、露光工程の不正確さによる回路パターンの不良を防止することができるため、軟性印刷回路基板(FPCB)自体はもちろん、それが適用される電子機器の歩留まりおよび信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
添付図面は、本発明の理解を助け、本明細書の一部を構成するためのものであって、本発明の実施例を例示し、発明の詳細な説明とともに本発明の原理を説明する。
【
図1】本発明の一実施例に係る軟性銅箔積層フィルムの断面図である。
【
図2】軟性銅箔積層フィルムの収縮
量の測定方法を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0031】
本発明の技術的思想および範囲を逸脱しない範囲内で本発明の多様な変更および変形が可能であることは当業者に自明である。したがって、本発明は特許請求の範囲に記載された発明およびその均等の範囲内に入る変更および変形をすべて含む。
【0032】
図1は本発明の一実施例に係る軟性銅箔積層フィルムの断面図である。
【0033】
図1に例示された通り、本発明の軟性銅箔積層フィルム100は、第1面およびその反対側の第2面を有する非導電性高分子フィルム(nonconductive polymer film)110、非導電性高分子フィルム110の第1面上の第1タイコート層120a、第1タイコート層120a上の第1銅層130a、非導電性高分子フィルム110の第2面上の第2タイコート層120b、および第2タイコート層120b上の第2銅層130bを含む。
【0034】
非導電性高分子フィルム110は、ポリイミドを含むことができ、ロールツーロール(roll−to−roll)装置の活用を可能にし、軟性銅箔積層フィルム100に軟性を付与するために10〜40μmの厚さを有することができる。非導電性高分子フィルム110の厚さが10μm未満であると熱しわおよび工程の走行問題が発生され得、厚さが40μmを超過すると低い軟性のため耐屈曲性が減少され得る。
【0035】
第1および第2タイコート層120a、120bは、相異なる物質からなる非導電性高分子フィルム110と銅層130a、130b間の接着力を向上させるためにこれらの間にそれぞれ介在されたものであって、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、鉄(Fe)またはこれらのうち2以上の混合物を含むことができる。
【0036】
本発明の一実施例によれば、第1および第2タイコート層120a、120bはニッケル合金である。例えば、第1および第2タイコート層120a、120bのそれぞれはニッケルおよびクロムを含むことができ、第1および第2タイコート層120a、120b内のクロム含量は5〜25重量%であり得る。クロム含量が前記範囲を外れると非導電性高分子フィルム110と銅層130a、130bの間に所望する程度の界面接着力を確保できない。
【0037】
本発明の一実施例によれば、第1および第2タイコート層120a、120bのそれぞれは150〜300Åの厚さを有する。第1および第2タイコート層120a、120bのそれぞれの厚さが150Å未満であると非導電性高分子フィルム110と第1および第2銅層130a、130bの間に所望する程度の界面接着力を確保できず、回路パターン形成後にタイコート層120a、120bが銅イオンの拡散を防止する機能を適切に遂行することができない。反面、その厚さが300Åを超過すると後続の回路パターン形成時に食刻されるべき部分が食刻されずに残存する危険が大きくなる。
【0038】
図1に例示された通り、第1銅層130aは、第1タイコート層120a上の第1銅シード層131aおよび第1銅シード層131a上の第1銅メッキ層132aを含むことができる。同様に、第2銅層130bは、第2タイコート層120b上の第2銅シード層131bおよび第2銅シード層131b上の第2銅メッキ層132bを含むことができる。
【0039】
第1および第2銅シード層131a、131bはスパッタリング工程を通じて500〜1,500Åの厚さを有するようにそれぞれ形成され得る。銅シード層131a、131bの厚さが500Å未満であると後続の電気メッキ工程時に電流が印加されない問題が発生し、厚さが1,500Åを超過すると熱変形が発生する危険が増加するだけでなく薄膜層の欠陥が誘発される。
【0040】
第1および第2銅メッキ層132a、132bは、ロールツーロール装置を利用した連続電気メッキ工程を通じて1.8〜2.4μmの厚さを有するようにそれぞれ形成され得る。
【0041】
本発明の軟性銅箔積層フィルム100は、第1および第2銅層130a、130b上に保護層(図示されず)をさらに含むことができる。保護層は銅層130a、130bの酸化および腐食を防止するためのものであって、有機物で形成され得る。
【0042】
本発明の軟性銅箔積層フィルム100はセミアディティブ方式による軟性印刷回路基板の製造に適用されるためのものである。セミアディティブ方式によれば、銅層130a、130bの中で回路配線に対応する領域上にのみ電解メッキを通じて銅パターン層が追加的に形成される。したがって、このような追加のメッキ工程を遂行する前に、銅パターン層が形成されてはならない領域上にはメッキ防止のためのパターン、例えば感光性パターンを形成する工程が要求される。感光性パターンとして、例えば、感光性樹脂パターン、感光性レジストパターンなどがある。
【0043】
感光性パターンと銅層130a、130b間の接着力が不充分であると、感光性パターンが全体的または部分的に銅層130a、130bから剥離される危険がある。感光性パターンと銅層130a、130bの剥離は、微細回路パターン形成のための追加のメッキ工程を遂行する時、銅パターン層が所望しないところに形成されてしまう結果を引き起こす。
【0044】
したがって、感光性パターンと前記銅層130a、130b間の接着力を向上させるために、感光性パターンを前記銅層130a、130b上に形成する前に、前記銅層130a、130bの厚さを1〜2μm程度減少させる化学的研磨工程が遂行される。化学的研磨のために使われる銅食刻液は、例えば、過酸化水素−硫酸溶液(プンウォン化学社のMFE−500)(過酸化水素10重量%、硫酸23重量%、水67重量%)を溶媒に20%の濃度で希釈することによって得ることができる。化学的研磨は常温(room temperature)で遂行され得る。
【0045】
前述した通り、一般には、化学的研磨工程を遂行する前に、研磨工程中に軟性銅箔積層フィルム100の移動(feeding)のためのパンチング(punching)作業が遂行されるが、このようなパンチング作業は軟性銅箔積層フィルム100の収縮を発生させる。収縮が深刻な程度に発生する場合、軟性銅箔積層フィルム100によって形成される回路パターンの不良が発生する。
【0046】
したがって、本発明の軟性銅箔積層フィルム100は、下記の式1によって定義される「パンチング後MD収縮
量(post−punching MD shrinkage rate)」が0〜−40μmであり、下記の式2によって定義される「パンチング後TD収縮
量(post−punching TD shrinkage rate)」が0〜+20μmである。
式1:R
MD=(MD3+MD4)/2−(MD1+MD2)/2
式2:R
TD=(TD3+TD4)/2−(TD1+TD2)/2
【0047】
ここで、MD1およびMD2は、
図2に図示された通り、軟性銅箔積層フィルム100から得られた200mm(長さ)×156mm(幅)のサンプルの両側面縁にそれぞれ32個の1mm角のホール(Hn、Hn’)をMD方向に沿って3.75mm間隔で形成するパンチング工程を遂行した直後にそれぞれ測定された、第1側面縁の一番目のホール(H1)と32番目のホール(H32)間の距離(MD1)および第2側面縁の一番目のホール(H1」)と32番目のホール(H32」)間の距離(MD2)である。
【0048】
TD1およびTD2は、パンチング工程直後にそれぞれ測定された第1側面縁の一番目のホール(H1)と第2側面縁の一番目のホール(H1」)間の距離(TD1)および第1側面縁の32番目のホール(H32)と第2側面縁の32番目のホール(H32」)間の距離(TD2)である。
【0049】
MD3およびMD4は、パンチングされたサンプルから第1および第2タイコート層120a、120bおよび第1および第2銅層130a、130bを除去する食刻工程を遂行してから24時間が経過した後にそれぞれ測定された第1側面縁の一番目のホール(H1)と32番目のホール(H32)間の距離(MD3)および第2側面縁の一番目のホール(H1」)と32番目のホール(H32」)間の距離(MD4)である。
【0050】
食刻工程は、例えば、塩化第2鉄(ferric chloride:FeCl
3)食刻液で遂行され得る。
【0051】
TD3およびTD4は、食刻工程を遂行してから24時間が経過した後にそれぞれ測定された第1側面縁の一番目のホール(H1)と第2側面縁の一番目のホール(H1)間の距離(TD3)および第1側面縁の32番目のホール(H32)と第2側面縁の32番目のホール(H32」)間の距離(TD4)である。
【0052】
MD1、MD2、MD3、MD4およびTD1、TD2、TD3、TD4は、3次元寸法測定機で測定され得る。
【0053】
また、MD(Machine Direction)は、ロールツーロール工程によって軟性銅箔積層フィルム100が移動する方向または軟性銅箔積層フィルム100に張力が印加される方向であって、長さ方向ともいう。TD(Transverse Direction)は、MDの垂直方向であって、幅方向ともいう。
【0054】
以下では、本発明の一実施例に係る軟性銅箔積層フィルム100の製造方法を具体的に説明する。
【0055】
先に、非導電性高分子フィルム110を準備する。
【0056】
非導電性高分子フィルム110は10〜40μmの厚さを有することができ、熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、フェノールアルデヒド樹脂、アリル樹脂、エポキシ樹脂など)、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂など)、ポリエステル樹脂(例えば、PET、PENなど)、またはポリイミド樹脂で形成され得る。
【0057】
具体的には、非導電性高分子フィルム110はポリイミド樹脂で形成され得る。例えば、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を圧出してフィルムを作り、ポリアミック酸のイミド化のために前記フィルムを熱処理することによって、ポリイミドを含む非導電性高分子フィルム110を製造することができる。
【0058】
非導電性高分子フィルム110から水分および残留ガスを除去するための乾燥段階が真空雰囲気で赤外線(IR)ヒーターを利用して50〜300℃で遂行され得る。赤外線(IR)ヒーターの温度が50℃未満であると水分を思う通りに除去できず、赤外線(IR)ヒーターの温度が300℃を超過すると非導電性高分子フィルム110が損傷して品質の低下が引き起こされ得る。
【0059】
選択的に、乾燥段階の後に、非導電性高分子フィルム110の表面上に存在し得る汚染物質を除去し、表面改質を通じて後続工程で形成されるタイコート層120a、120bとの接着力を向上させるために、非導電性高分子フィルム110の第1および第2面をプラズマで処理することができる。
【0060】
引き続き、非導電性高分子フィルム110の第1および第2面上に第1および第2タイコート層120a、120bをそれぞれ形成する。
【0061】
第1および第2タイコート層120a、120bは、DCスパッタリング装置を利用したスパッタリング工程を通じて150〜300Åの厚さをそれぞれ有するように形成され得る。第1および第2タイコート層120a、120bの厚さが150Å未満である場合には、非導電性高分子フィルム110と後続工程で形成される第1および第2銅層130a、130b間の接着力が不充分であり得る。反面、タイコート層120a、120bの厚さが300Åを超過する場合には、回路パターン形成のためのエッチング工程が遂行される時、除去されなければならないタイコート層120a、120bの一部が残存して回路の短絡が誘発される危険が高まる。
【0062】
前述した通り、タイコート層120a、120bは非導電性高分子フィルム110と後続工程で形成される銅層130a、130bの接着力を高めるためのものであって、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、鉄(Fe)またはこれらのうち2以上の混合物を含むことができる。
【0063】
本発明の一実施例によれば、タイコート層120a、120bはニッケル合金である。例えば、タイコート層120a、120bはニッケルおよびクロムを含むことができ、タイコート層120a、120b内のクロム含量は5〜25重量%であり得る。
【0064】
スパッタリング装置の電力調節を通じてタイコート層120a、120bの密度が調節され得、チャンバーの真空度を調節することによってタイコート層120a、120bの酸素含量が調節され得る。
【0065】
引き続き、第1および第2タイコート層120a、120b上に第1および第2銅層130a、130bを形成する。銅層130a、130b形成段階は、第1および第2タイコート層120a、120b上に第1および第2銅シード層131a、131bをそれぞれ形成する段階および第1および第2銅シード層131a、131b上に第1および第2銅メッキ層132a、132bをそれぞれ形成する段階を含む。
【0066】
第1および第2銅シード層131a、131bは、DCスパッタリング装置を利用したスパッタリング工程を通じて500〜1,500Åの厚さを有するようにそれぞれ形成され得、第1および第2銅メッキ層132a、132bはロールツーロール装置を利用した連続電気メッキ工程を通じて1.8〜2.4μmの厚さを有するようにそれぞれ形成され得る。
【0067】
以下では、前記第1および第2銅メッキ層132a、132b形成のための本発明の連続電気メッキ工程をさらに具体的に説明する。
【0068】
タイコート層120a、120bおよび銅シード層131a、131bが形成されている非導電性高分子フィルム110が硫酸銅メッキ液を通過することによって本発明の連続電気メッキが遂行される。
【0069】
本発明によれば、連続電気メッキ工程中に硫酸銅メッキ液は33〜37℃に維持される。また、連続電気メッキ工程中に、タイコート層120a、120bおよび銅シード層131a、131bが形成されている非導電性高分子フィルム110には220〜300Nの駆動張力が加えられる。
【0070】
硫酸銅メッキ液は20〜60g/Lの銅および100〜200g/Lの硫酸を含むことができる。硫酸銅メッキ液は他の添加剤(等)をさらに含むことができる。
【0071】
連続電気メッキ工程は、第1および第2銅メッキ層のそれぞれの厚さが1.8〜2.4μmとなるまで1〜5mpmの速度で遂行され得る。
【0072】
連続電気メッキ工程中に加えられる電流密度は1〜3.5ASDであり得る。
【0073】
連続電気メッキ工程は垂直方式であり得る。
【0074】
以下では、実施例および比較例を通じて本発明を具体的に説明する。ただし、下記の実施例は本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明の権利範囲はこれらの実施例に制限されない。
【0075】
実施例1
ポリイミドフィルムを赤外線(IR)ヒーターで乾燥させた後、プラズマ表面処理を遂行した。引き続き、スパッタリング工程を通じて前記ポリイミドフィルムの両面上に200Å厚さの第1および第2NiCrタイコート層をそれぞれ形成した。引き続き、スパッタリング工程を通じて第1および第2NiCrタイコート層上に600Å厚さの第1および第2銅シード層をそれぞれ形成した。引き続き、34℃の硫酸銅メッキ液温度、260Nの駆動張力、および2.0ASDの電流密度の条件下で垂直連続電気メッキを遂行することによって、第1および第2銅シード層上に2μm厚さの第1および第2銅メッキ層をそれぞれ形成した。
【0076】
実施例2
駆動張力が280Nであることを除いては実施例1と同じ方法で軟性銅箔積層フィルムを完成した。
【0077】
実施例3
メッキ液温度が35℃であり、駆動張力が280Nであることを除いては実施例1と同じ方法で軟性銅箔積層フィルムを完成した。
【0078】
実施例4
メッキ液温度が36℃であり、駆動張力が280Nであることを除いては実施例1と同じ方法で軟性銅箔積層フィルムを完成した。
【0079】
実施例5
メッキ液温度が36℃であり、駆動張力が300Nであることを除いては実施例1と同じ方法で軟性銅箔積層フィルムを完成した。
【0080】
比較例1
メッキ液温度が32℃であり、駆動張力が300Nであることを除いては実施例1と同じ方法で軟性銅箔積層フィルムを完成した。
【0081】
比較例2
メッキ液温度が32℃であり、駆動張力が350Nであることを除いては実施例1と同じ方法で軟性銅箔積層フィルムを完成した。
【0082】
比較例3
メッキ液温度が38℃であり、駆動張力が350Nであることを除いては実施例1と同じ方法で軟性銅箔積層フィルムを完成した。
【0083】
比較例4
メッキ液温度が38℃であり、駆動張力が300Nであることを除いては実施例1と同じ方法で軟性銅箔積層フィルムを完成した。
【0084】
前記の実施例および比較例によって製造された軟性銅箔積層フィルムの「パンチング後MD収縮
量(post−punching MD shrinkage rate)」、「パンチング後TD収縮
量(post−punching TD shrinkage rate)」および回路パターン正確度を下記の方法によってそれぞれ測定または観察し、その結果を下記の表1に表わした。
【0085】
*パンチング後MD収縮
量およびパンチング後TD収縮
量
軟性銅箔積層フィルムから得られた200mm(長さ)×156mm(幅)のサンプルの両側面縁にそれぞれ32個の1mm角のホール(Hn、Hn’)をMD方向に沿って3.75mm間隔で形成するパンチング工程を遂行した直後、第1側面縁の一番目のホールと32番目のホール間の距離(MD1)、第2側面縁の一番目のホールと32番目のホール間の距離(MD2)、第1側面縁の一番目のホールと第2側面縁の一番目のホール間の距離(TD1)、および第1側面縁の32番目のホールと第2側面縁の32番目のホール間の距離(TD2)を3次元寸法測定機でそれぞれ測定した。
【0086】
引き続き、パンチングされたサンプルから第1および第2タイコート層および第1および第2銅層を除去する食刻工程を遂行してから24時間が経過した後に、第1側面縁の一番目のホールと32番目のホール間の距離(MD3)、第2側面縁の一番目のホールと32番目のホール間の距離(MD4)、第1側面縁の一番目のホールと第2側面縁の一番目のホール間の距離(TD3)、および第1側面縁の32番目のホールと第2側面縁の32番目のホール間の距離(TD4)を3次元寸法測定機でそれぞれ測定した。
【0087】
引き続き、「パンチング後MD収縮
量(R
MD)」およびパンチング後TD収縮
量(R
TD)」を下記の式1および式2によってそれぞれ算出した。
式1:R
MD=(MD3+MD4)/2−(MD1+MD2)/2
式2:R
TD=(TD3+TD4)/2−(TD1+TD2)/2
【0088】
*回路パターンの正確度
前記実施例および比較例によって製造された軟性銅箔積層フィルムを利用して通常のセミアディティブ方式によって回路パターンを形成した後、回路パターンの正確度を観察した。
【符号の説明】
【0090】
100:軟性銅箔積層フィルム
110:非導電性高分子フィルム
120a、120b:タイコート層
130a、130b:銅層
131a、131b:銅シード層
132a、132b:銅メッキ層