(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
制御ステム(4)用受台として機能するように配設するフレーム(2)を含む携帯品であって、前記制御ステム(4)を回転作動することで、前記携帯品の少なくとも1つの電子的又は機械的機能を制御可能となり、着磁リング(18)を、前記制御ステム(4)によって回転駆動し、前記着磁リング(18)の回転を、前記フレーム(2)の表面(168)に当接保持する少なくとも1個の誘導センサ(150)によって検出し、
前記誘導センサ(150)を、前記フレーム(2)のハウジング(156)内に配置し、前記ハウジング(156)内に、前記誘導センサ(150)を、弾性手段によって、又は接着結合によって保持し、
前記携帯品は、少なくとも1本の弾性指部(160)を備える押さえ板(158)を含み、前記弾性指部(160)は、前記誘導センサ(150)に対する圧力によって、前記誘導センサ(150)を、該センサを配置した前記ハウジング(156)内に保持することを特徴とする、携帯品。
前記誘導センサ(150)を、プリント回路シート(128)に固定し、前記弾性指部(160)は、前記プリント回路シート(128)を、前記誘導センサ(150)を固定した場所で、押圧することを特徴とする、請求項1に記載の携帯品。
前記プリント回路シート(128)は、フレキシブルであること、及び前記フレキシブルプリント回路シート(128)を、前記誘導センサ(150)を前記ハウジング(156)内に配置するように、前記フレーム(2)上に向けて下方に折曲げることを特徴とする、請求項2に記載の携帯品。
前記誘導センサ(150)を、該センサを配置した前記ハウジング(156)の底部に対して付勢するように、前記弾性指部(160)を配設することを特徴とする、請求項4に記載の携帯品。
前記誘導センサ(150)は、磁気誘導に関する変動を検知する素子を含み、該検知素子が、前記垂直軸(z)に沿ってのみ磁気誘導に関する変動を検出するように、前記検知素子を指向させることを特徴とする、請求項4に記載の携帯品。
前記誘導センサ(150)は、磁気誘導に関する変動を検知する素子を含み、該検知素子が、前記垂直軸(z)に沿ってのみ磁気誘導に関する変動を検出するように、前記検知素子を指向させることを特徴とする、請求項5に記載の携帯品。
前記携帯品は、2個の誘導センサ(150)を含み、該誘導センサ(150)を、前記フレーム(2)の2つのハウジング(156)内に収容し、前記制御ステム(4)の長手方向垂直対称面(P)の両側で等距離に配設することを特徴とする、請求項1に記載の携帯品。
前記2個の誘導センサ(150)を、前記制御ステム(4)に対して、前記着磁リング(18)が、前記制御ステム(4)を作動した結果回転すると、前記2個の誘導センサ(150)が、互いに対して60°〜120°の角度δだけ位相がずれる信号を生成するように、配設することを特徴とする、請求項7に記載の携帯品。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、時計等、小寸の携帯品に取付ける制御ステムの回転を、特に大量生産の場合に、携帯品毎で信頼性良く、再現可能に検出するという一般的な創意から生じたものである。この課題を克服するために、好適には二極だが、多極でもよい着磁リングを使用する。この着磁リングを、制御ステムによって回転駆動し、リングの回転によって発生した磁気誘導の変化を、誘導センサを用いて検出する。確実に携帯品毎の測定を再現可能にするために、本発明は、制御ステムの受台として機能し、誘導センサをその一面に当接保持するフレームを使用することを教示する。従って、着磁リングと誘導センサの位置決め精度を、フレームの加工精度によって判定する。フレームを、例えば、プラスチック材料を射出成形して作製する、又は真鍮等の非磁性金属材料で作製する場合、この精度は優れており、従って、大規模な工業製造条件でも、確実に携帯品毎の測定を再現できる。更に、本発明の好適な別の実施形態では、誘導センサを、弾性手段によってハウジング内に保持するため、遊びを補償できる。
【0014】
これ以降全てで、後前方向は、制御ステムの長手方向対称軸X−Xに沿って、制御装置を装着した携帯品の外部作動竜頭から内部へ、携帯品の裏側が広がる平面と平行に、水平方向に延伸する直線方向である。従って、制御ステムを、後から前へ押圧し、前から後へ引く。更に、垂直方向は、制御ステムが延伸する平面に垂直に延伸する方向である。
【0015】
図1は、腕時計等小さな寸法の携帯品の少なくとも1つの電子的機能を制御する装置に関する、分解した状態における、斜視図である。全体の参照番号1で、全体を指す、この制御装置は、例えば、射出成形したプラスチック材料製の、又は真鍮等の非磁性金属材料製の下側フレーム2を含み、下側フレーム2は、好適には、長手方向対称軸X−Xを備えた細長い略円筒形の制御ステム4用の受台として機能する。この制御ステム4を、長手方向対称軸X−Xに沿って前から後及び後から前に摺動するように、及び/又は時計回り及び反時計回り方向に、上記同じ長手方向対称軸X−X周りに回転するように配設する。
【0016】
携帯品に制御装置1を装着した際に携帯品の外側に位置する後端部6で、制御ステム4は、作動竜頭8を受容する(
図20を参照)。
【0017】
制御装置1を組付けた際に制御装置1の内側に位置する前端部10で、制御ステム4は、例えば、四角形部12を有し、連続して磁性組立体14及び滑り軸受16を受容する。
【0018】
磁性組立体14は、着磁リング18、及び該リング18を、通常接着結合によって固定する支持リング20を含む(
図4を参照)。支持リング20は、全体的に円筒形をした部品である。
図5から分かるように、支持リング20は、後から前に、着磁リング18と係合する第1外径D1を有する第1部分22a、及び第1外径D1より大きく、着磁リング18が当接する肩部24を画定する第2外径D2を有する第2部分22bを有する。支持リング20の第1部分22aを、制御ステム4の四角形部12に形状や大きさが適合する角穴26で穿孔し、制御ステム4でつづみ車式(sliding pinion type)システムを形成する。つまり、支持リング20と着磁リング18は、制御ステム4を軸方向に摺動させる際に不動状態のままにする。しかしながら、制御ステム4を回転させると、制御ステム4は、支持リング20と着磁リング18を回転駆動する。上記から、支持リング20によって保持する着磁リング18は、制御ステム4とは接触しておらず、そのため制御装置1を装着した携帯品に衝撃が加えられた場合でも、制御ステム4を保護できることは、明らかである。
【0019】
滑り軸受16は、その第1内径D3が、制御ステム4の四角形部12に内接する円の直径より若干大きい円筒形ハウジング28を画定して(
図5参照)、制御ステム4を、該円筒形ハウジング28内で軸方向に摺動可能にする及び/又は回転可能にする。従って、滑り軸受16は、確実に、制御ステム4を完璧に軸方向に案内できる。
【0020】
ここで、支持リング20の第1部分22aに設けた角穴26を、環状穴30によって制御装置1の前方へ延伸させ、環状穴30の第2内径D4を、滑り軸受16の第3外径D5に嵌合することに、注目されたい。従って、支持リング20は、滑り軸受16に回転自在に嵌合され、滑り軸受16に軸方向に当接状態になるよう移動し、それにより確実にこれら2部品が完璧に軸方向で整列して、つづみ車式結合によって生じる可能性がある同心性に関する問題を解決できる。
【0021】
軸方向に不動にするために、滑り軸受16は、その外面に、円形のカラー32を備え、該カラー32が、下側フレーム2(
図2参照)にと、該下側フレーム2を被覆するように配設した上側フレーム36(
図6参照)に其々配設した第1溝34a及び第2溝34b内に突出していることが見て取れ、滑り軸受16は、例えば、射出成形したプラスチック材料又は非磁性金属材料製である。これら2つの下側フレーム2及び上側フレーム36については、以下で詳述する。
【0022】
上述した磁性組立体14と滑り軸受16は、単に説明目的で示した点に留意されたい。実際、例えば鋼鉄又は真鍮製の滑り軸受16を、例えば鋼鉄製の制御ステム4が、下側フレーム2及び上側フレーム36と擦れて、これら2つの下側フレーム2及び上側フレーム36を通常作製するプラスチック材料の摩耗を引き起こさないように、配設する。しかしながら、単純化した実施形態では、かかる滑り軸受16を使用せず、制御ステム4を下側フレーム2によって直接保持するよう配設することが想定できる。
【0023】
同様に、着磁リング18及び着磁リング18に固定する支持リング20を、制御ステム4の回転を、着磁リング18の旋回によって誘起される磁界における位置変化によって検出する場合を対象としたものとする。しかしながら、磁性組立体14を、例えば、つづみ車と置換し、つづみ車の位置に応じて、例えば、ゼンマイの巻上げ又は制御装置1を装着した腕時計の時間設定を制御することも十分想定できる。
【0024】
また、その長さの一部に四角形部を備える制御ステム4の例は、単に説明目的で提示していることに留意されたい。実際、磁性組立体14を回転駆動するために、制御ステム4は、円形断面以外の、例えば、三角形又は楕円形といったあらゆる種類の断面を有してもよい。
【0025】
下側フレーム2と上側フレーム36は、両フレームを組合せた組立体で、制御装置1の外形を画成するが、例えば、全体的に平行六面体形とする。下側フレーム2は、制御ステム4を受容する受台を形成する。このために(
図2参照)、下側フレーム2は、前方に、半円形輪郭の第1受面38を含み、該受面38は、滑り軸受16の座として機能し、円形のカラー32を受容する第1溝34aが設けられる。従って、滑り軸受16は、軸方向と回転方向両方で確実に不動になる。
【0026】
下側フレーム2は、後方に、第2受面40を更に含み、該第2受面40の半円形輪郭の中心に、制御ステム4の長手方向対称軸X−Xが来るが、該半円形輪郭の直径を制御ステム4の直径より大きくする。制御ステム4は、組付けた制御装置1を、携帯品と一体化する前に試験する段階で、第2受面40上に載置するだけであることを理解するのは、重要である。この組立段階で、制御ステム4を、試験目的で制御装置1に挿入し、制御ステム4の前端部10で、第2受面40を介して、後端部6で支持し、滑り軸受16によって軸方向に案内して、水平方向に延伸させる。しかしながら、制御装置1を携帯品に一体化すると、制御ステム4は、携帯品のケース中間部48に設けた穴42を通過するが、ケース中間部48内で、制御ステム4を案内及び支持し(
図21参照)、ケース中間部48は、底ケース49によって下方に画定される。
【0027】
また、半円形輪郭の第3逃げ面44a及び第4逃げ面46aも、下側フレーム2に設け、補完的逃げ面44b及び46b(
図6参照)を、着磁リング18とその支持リング20から成る磁性組立体14を受容するために上側フレーム36に設ける。ここで、制御装置1を携帯品に組付け、取付けた際に、着磁リング18とその支持リング20は、第3逃げ面44a、第4逃げ面46a及び補完的逃げ面44b及び46bに接触しない点に注目されたい。また、第3逃げ面44aとそれに対応する補完的逃げ面44bを、磁性組立体14を軸方向に係止するための環状カラー50によって、画定する点にも注目されたい。
【0028】
図3で視認できるように、四角形部12の後ろに、制御ステム4は、円筒部52を有し、該円筒部52の直径を、制御ステム4の四角形部12に内接する円の直径と、作動竜頭8をその端部で固定する上記制御ステム4の後部54の基本的な直径との間とする。この縮径した円筒部52は、溝56を形成し、該溝56の内側に制御ステム4用位置指標板58(
図7A参照)を配置する。このために、位置指標板58は、縮径した円筒部52の輪郭に従う湾曲部60を有する。位置指標板58を、例えば、薄い導電性金属板を打ち抜き加工によって得てもよい。しかしながら、位置指標板58を、例えば、導電粒子を加えた(loaded)硬質プラスチック材料を成形して、作製することも想定できる。位置指標板58を溝56に係合することで、確実に、制御ステム4と位置指標板58との間を、前から後に及び後から前に並進可能な状態で結合できる。しかしながら、以下で一層明らかになるように、位置指標板58は、制御ステム4の長手方向対称軸X−Xに直交する垂直方向zにおいて、制御ステム4に対して自由である。
【0029】
図7Aで視認できるように、位置指標板58は、略偏平で、全体的にU字形をした部品である。この位置指標板58は、2本の略直線的な案内アーム62を含み、両案内アームは、互いに平行に延伸しており、湾曲部60によって互いに接続される。これら2本の案内アーム62を、軸方向に、例えば、下側フレーム2に配設した2つのスタッド64(特に、
図2参照)に対して軸方向に案内する。位置指標板58の2本の案内アーム62によって案内すると、位置指標板58は、上側フレーム36に配設し、周縁部が、位置指標板58の周縁部に対応するリム68(
図6参照)に沿って摺動する。また、位置指標板58は、2本の指部66a、66bを含み、該指部は、2本の案内アーム62の両側で垂直方向下方に延伸する。リム68に沿って摺動する際、位置指標板58は、確実に、制御ステム4を前から後に、及び後から前に並進的に案内するという機能を持つ。指部66a、66bは、特に、位置指標板58が並進移動する際に、位置指標板58が行き過ぎ(bracing)ないようにするためのものである。
【0030】
略矩形の輪郭をした2つの開口部70を、位置指標板58の案内アーム62に設ける(特に、
図7B参照)。これら2つの開口部70は、制御ステム4の長手方向対称軸X−Xの両側で対称的に延在する。制御ステム4の長手方向対称軸X−Xに最も近い、2つの開口部70の側面は、頂点76で分離する第1凹部74aと第2凹部74bから成る略正弦波状の輪郭72を有する。
【0031】
案内アーム62に設けた2つの開口部70は、位置決めバネ80の2端部78(
図8参照)を受容するためのものである。この位置決めバネ80は、2本のアーム82が水平面に延伸し、基部84によって互いに接続している、全体的にU字形をしている。アーム82の自由端で、2本のアーム82は、直立する2本の略直線的な軸(arbor)によって、延伸している。位置決めバネ80は、軸86の端部78が、位置指標板58の開口部70内に突出するように、下側フレーム2の底部を通して制御装置1に取付けるためのものである。以下では、位置指標板58と位置決めバネ80とを協働させることで、不安定な押込み位置T0と2つの安定位置T1及びT2との間で、制御ステム4の位置を指標できるのが、分かるであろう。
【0032】
位置指標板58を制御ステム4に並進可能に結合するが、位置指標板58は、垂直方向zにおいて制御ステム4に対して自由であることは、上述した。従って、位置指標板58が、通常の使用条件において、例えば重力の影響下で制御ステム4から外れなくするための対策を講じる必要がある。そのために(
図9及び
図11参照)、位置指標板58が垂直方向zに変位するのを制限するバネ88を、位置指標板58の上方で近接して配置する。変位制限バネ88を、制御装置1の下側フレーム2と上側フレーム36との間で係留するが、通常の使用条件では、変位制限バネ88は、位置指標板58と接触しておらず、それにより、制御ステム4を動作しにくくし、摩耗の問題を引き起こす寄生的な摩擦力が、制御ステム4にかかるのを防止する。しかしながら、変位制限バネ88を、位置指標板58に十分近接させて、位置指標板58が不用意に制御ステム4から離れるのを防止する。
【0033】
変位制限バネ88は、略直線的な中心部90を含み、該中心部の端部から2対の弾性アーム92及び94が延伸する。これらの弾性アーム92及び94は、変位制限バネ88の中心部90の両側で、中心部90が延伸する水平面から上方に離れて延伸する。上側フレーム36を下側フレーム2に接合すると、これらの弾性アーム92及び94が圧縮されるため、弾性アーム92及び94は、垂直方向zに沿って変位制限バネ88に弾力性を付与する。また、弾性アーム92及び94の対間に、変位制限バネ88の中心部90の両側で垂直下方に延伸する一対、好適には2対の硬質突起96も設けてある。これら硬質突起96が、上側フレーム36を下側フレーム2上に置いた際に、下側フレーム2に当接した状態へと移動することで、制御装置1の通常の動作条件において、確実に位置指標板58と変位制限バネ88との間に、最小限の空間を設けられる。
【0034】
変位制限バネ88は、制御装置1の解体性を保証する。実際、変位制限バネ88が無い場合には、位置指標板58を、制御ステム4と一体化させる必要があり、その結果、解体できなくなる。制御ステム4を解体できないなら、制御装置1を備える時計のムーブメントも解体できず、これは、特に高価な時計の場合には、考えられない。従って、下側フレーム2と上側フレーム36を接合して形成した制御装置1を、携帯品内部に取付け、制御ステム4を携帯品の外側から制御装置1に挿入すると、制御ステム4は、変位制限バネ88の弾性力に抗して僅かに位置指標板58を持ち上げる。制御ステム4を前方に押し続けるなら、位置指標板58が、重力の影響下で溝56に落下する瞬間が来る。その後、制御ステム4と位置指標板58は、並進可能に結合する。
【0035】
分解板98を、制御ステム4を分解可能にするために設ける(
図10参照)。この分解板98は、全体的にH字形状をしており、制御ステム4の長手方向対称軸X−Xに平行に延伸し、第1横桟102及び第2横桟104を取着する直線部100を含む。また、第1横桟102は、2自由端に、略直角に上方に折曲げた2つの突起106も備える。分解板98を、下側フレーム2に設け、制御ステム4の下に位置するハウジング108内に受容する。このハウジング108は、制御装置1の下面112内に開口する穴110を介して制御装置1の外側と連通する(
図11参照)。先の尖った工具を穴110に挿入することによって、推力を、分解板98に加えられ、分解板98が、2つの突起106を介して、今度は位置指標板58を、変位制限バネ88の弾性力に抗して押圧する。その結果、位置指標板58は、制御ステム4に設けた溝56を離れ、制御ステム4を僅に後方への引張れば、十分に制御ステム4を制御装置1から取外せる。
【0036】
安定した休止位置T1から、制御ステム4を、前方に押して、不安定な位置T0にする、又は引出して安定位置T2にする。制御ステム4のこれら3位置T0、T1及びT2を、位置指標板58と位置決めバネ80との協働によって指標する。より詳細には(
図12A参照)、安定した休止位置T1は、位置決めバネ80の軸86の端部78が、位置指標板58の案内アーム62に設けた2つの開口部70の第1凹部74a内に突出する位置に対応する。この安定した休止位置T1から、制御ステム4を、前方に押して、不安定な位置T0にする(
図12B参照)。この変位中、位置決めバネ80の軸86の端部78は、第1凹部74aを出て、第1急勾配α(
図7B参照)に沿って制御ステム4の長手方向対称軸X−Xから徐々に離隔する第1斜面輪郭114に追従する。強制的に位置決めバネ80の軸86の端部78を第1凹部74aから出して、互いに離隔させて第1斜面輪郭114に係合するのに、ユーザは、かなりの抵抗力に打ち勝たなねばならない。
【0037】
遷移点116に達すると、軸86の端部78は、第1斜面輪郭114の第1勾配αより緩い第2勾配βを有する、第1斜面輪郭114の延長上にある第2斜面輪郭118と係合する。位置決めバネ80の軸86の端部78が、遷移点116を横断し、第2斜面輪郭118と係合した時点で、制御ステム4を移動し続けるのにユーザから必要とする力は、急激に低下し、ユーザは、位置T1と位置T0との間で制御ステム4の遷移を示すカチッという音を感じる。位置決めバネ80の軸86が第2斜面輪郭118に追従すると、位置決めバネ80の軸86は、休止位置から僅かに離隔し続けて、ユーザによって制御ステム4に加えた推力に対抗する弾性復帰力の影響下で、再び互いに接近し合うようになる。ユーザが、制御ステム4に加えた圧力を解放すると、位置決めバネ80の軸86は、即座に第1斜面輪郭114へと戻り、端部78は、再び、位置指標板58の案内アーム62に設けた2つの開口部70の第1凹部74a内に入る。このように、制御ステム4を、不安定位置T0から第1安定位置T1に自動的に復帰させる。
【0038】
第1接触バネ120a及び第2接触バネ120bを、下側フレーム2に設けた第1空洞部122a及び第2空洞部122b内に圧縮して配設する。これら第1接触バネ120a及び第2接触バネ120bを、螺旋状の接触バネ、帯状バネ又は他のバネとしてもよい。2つの第1空洞部122a、122bは、必ずではないが、好適には、水平方向に延伸する。2本の第1接触バネ120a、120bを、圧縮状態で設置するため、該バネの位置決め精度は、下側フレーム2の製造公差によって決まる。下側フレーム2の製造精度は、これら第1接触バネ120a、120bの製造精度より高い。その結果、制御ステム4の位置T0を検出する精度は、高くなる。
【0039】
図13及び
図15で視認できるように、第1接触バネ120a及び第2接触バネ120bの端部の一方を、2つの接触突起124を形成するように曲折し、該接触突起124は、フレキシブルプリント回路シート128の表面に設けた2つの対応する第1接触パッド126に当接するように移動する。位置決めバネ80の軸86の端部78が、位置指標板58に設けた2つの開口部70の第2斜面輪郭118に係合する時点は、位置指標板58の指部66a、66bが、第1接触バネ120a及び第2接触バネ120bと接触する時点と一致する。この位置指標板58は、導電性であるため、指部66a、66bが第1接触バネ120a及び第2接触バネ120bと接触すると、電流が、位置指標板58を通過し、第1接触バネ120aと第2接触バネ120b間の電気接点の閉成が検出される。
【0040】
第1接触バネ120aと第2接触バネ120bは、同じ長さである。しかしながら、好適には、特に公差の問題を考慮すると、第1空洞部122aを、例えば、第2空洞部122bより長くする(2空洞部122aと122bの間の長さ差を、コンマ数mmとする)。従って、制御ステム4を前方に押して位置T0にすると、第1最長空洞部122a内に収容した第1接触バネ120aと整列する位置指標板58の指部66aは、第1接触バネ120aと接触し、圧縮し始める。制御ステム4は、前進し続け、位置指標板58の第2指部66bは、第2最短空洞部122b内に収容した第2接触バネ120bと接触する。その時点で、位置指標板58は、第1接触バネ120a及び第2接触バネ120bと接触状態になり、電流が、位置指標板58を通り流れ、それにより第1接触バネ120aと第2接触バネ120b間の電気接点の閉成を、検出できる。ここで、位置指標板58の指部66a、66bが、第1接触バネ120a及び第2接触バネ120bと当接状態に移動することに注目されたい。従って、制御ステム4を、前方に押して位置T0にし、第1接触バネ120aと第2接触バネ120bとの間の回路を閉じる際に、摩擦や摩耗は全くない。また、第1空洞部122aと第2空洞部122bの長さが異なることで、確実に、電気接点の閉成、及び制御装置1を装着した携帯品に対応する命令の入力が、カチッとした音を感じた後にのみ、発生することにも、注目されたい。
【0041】
位置指標板58の指部66a、66bが、第1接触バネ120a及び第2接触バネ120bと接触状態になると、第1の最長空洞部122a内に収容した第1接触バネ120aは、圧縮状態になる。その結果、ユーザが、制御ステム4への圧力を解放すると、この第1接触バネ120aが緩み、強制的に制御ステム4を不安定な押込み位置T0から第1安定位置T1に戻す。従って、第1接触バネ120a及び第2接触バネ120bは、第1安定位置T1で、制御ステム4に対する電気接触部品としてと同時に弾性復帰手段としても機能する。
【0042】
第1安定位置T1から、制御ステム4を、後方に引いて、第2安定位置T2にすることができる(
図12C参照)。この移動中、位置決めバネ80の軸86の端部78は、弾性変形して、位置指標板58の案内アーム62に設けた2つの開口部70の頂点76を横断しながら、第1凹部74aから第2凹部74bまで送られる。制御ステム4が第2安定位置T2に達すると、位置指標板58の2本の指部66a、66bは、下側フレーム2に設けた第3空洞部132a及び第4空洞部132b内に収容した第3接触バネ130a及び第4接触バネ130b(
図13参照)に当接状態に移動する。これら第3接触バネ130a及び第4接触バネ130bは、螺旋状の接触バネ、帯状バネ又は他のバネとしてもよい。第3空洞部132a及び第4空洞部132bは、好適には、制御装置1における空間的な理由で、垂直方向に延伸する。位置指標板58は、導電性であるため、指部66a、66bが第3接触バネ130a及び第4接触バネ130bと接触すると、電流が、位置指標板58を通り流れ、これらの接触バネ130aと130b間の電気接点の閉成が、検出される。
【0043】
ここで、安定位置T2の場合、位置指標板58の指部66a、66bもまた、第3接触バネ130a及び第4接触バネ130bと当接状態になり、それにより摩擦による摩耗の危険性を回避できる点に注目されたい。更に、第3接触バネ130a及び第4接触バネ130bは、位置指標板58の指部66a、66bが衝突すると、曲折できるため、位置指標板58の位置決めに関する精度不足を吸収できる。
【0044】
必ずではないが、好適には第3接触バネ130a及び第4接触バネ130bを、屈曲状態で働くように配設する(
図14A及び
図14B参照)。実際、直径が一定である接触バネ130a、130bでは、位置指標板58の指部66a、66bは、下側フレーム2及び上側フレーム36における該バネの取着点に近い大表面に亘り、接触バネ130a、130bと接触する。接触面が、接触バネ130a、130bの取着点に近接することで、接触バネ130a、130bにおいて剪断応力を誘起し、これが、接触バネの早期摩耗や破損に繋がることがある。この課題を克服するために、接触バネ130a、130bは、略中間の高さで、制御ステム4を引いて安定位置T2にする際に位置指標板58の指部66a、66bと接触する直径134を、拡径とするのが好ましい。第3接触バネ130a及び第4接触バネ130bは、該バネの上端部で、上側フレーム36に設けた2つの穴136内に案内され、フレキシブルプリント回路シート128の表面に設けた第2接触パッド138と接触する。明らかに、制御ステム4を、後方に引いて安定位置T2にすると、位置指標板58の指部66a、66bは、最大直径134のところで、第3接触バネ130a及び第4接触バネ130bと、小表面で接触し、それにより接触バネ130a及び130bが、下側フレーム2と上側フレーム36における2取着点間で曲折できる。
【0045】
図15では、下側フレーム2及び上側フレーム36を、図面を分かりやすくするために、意図的に省略してある。
図15で表したように、フレキシブルプリント回路シート128を、携帯品の文字盤側に位置するプレート140に固定している。プレート140は、特に、上側フレーム36を受容するように形状及び寸法を適合させた切欠き部142を含む。フレキシブルプリント回路シート128の一部144は、自由なままにしてある(
図16参照)。フレキシブルプリント回路シート128の自由部分144は、第3接触パッド148の他に、複数の電子部品146を保持し、第3接触パッド148の上には、少なくとも1個の、図示した実施例では、2個の誘導センサ150を固定する。誘導センサ150を第3接触パッド148に固定することで、これら誘導センサ150を、フレキシブルプリント回路シート128を介して、電源及び携帯品内に収容したマイクロプロセッサ(図示せず)に接続できる。電源は、誘導センサ150に、動作に必要なエネルギを供給し、マイクロプロセッサは、誘導センサ150が供給する信号を受信し、処理する。
【0046】
フレキシブルプリント回路シート128の自由部分144を、該自由部分が上側フレーム36と下側フレーム2の組立体周りに折曲げ可能になる2本の細片152によって、フレキシブルプリント回路シート128の他の部分に接続し、その後、誘導センサ150が、下側フレーム2の下面112に設けた2つのハウジング156に入り込むように、下側フレーム2の下面112に向けて下方に折曲げる。このようにしてハウジング156内に配置する誘導センサ150を、着磁リング18の下に精確に位置させ、確実に、制御ステム4の回転方向を信頼性良く検出する。
【0047】
フレキシブルプリント回路シート128の自由部分144を、下側フレーム2に向けて下方に折曲げると(
図17A参照)、組立体を、押さえ板158によって被覆し、該押さえ板158には、少なくとも1本の弾性指部160(図示した実施例では、2本)を備え、該指部は、誘導センサ150をハウジング156の底部に向けて押圧するように、誘導センサ150に対して、垂直方向上方に指向する弾性圧力を加える(
図17B参照)。弾性指部160は、フレキシブルプリント回路シート128に対して、好適には、誘導センサ150を固定する場所で押圧する。押さえ板158を、下側フレーム2に、例えば、2本のネジ162を用いて固定する。
【0048】
簡素化するために、誘導センサ150(複数可)を、例えば2本の細片152を有する種類の誘導要素によって、フレキシブルプリント回路シート128に接続する硬質のプリント基板164に固定することによって、押さえ板158及びその弾性指部160無しで済ますこともできる(
図22参照)。薄い接着性フィルム166を、ハウジング156の底部に被着し、その後硬質のプリント基板164を、下側フレーム2に対して押圧し、それにより誘導センサ150を、ハウジング156の底部に接着結合する。ハウジング156無しで済ませて、単に誘導センサ150を、薄い接着性フィルム166を用いて結合する、又は弾性指部160を用いて、誘導センサ150を、下側フレーム2の支持面168に対して弾性的に保持することもできる(
図23参照)。
【0049】
制御ステム4を、受台として機能する下側フレーム2によって保持する。同様に、2個の誘導センサ150を、上記下側フレーム2に設けた2つのハウジング156内に配置し、これらのハウジング156の底部に向けて、1本又は2本の弾性指部160によって押圧する(
図18参照)。その結果、誘導センサ150と、制御ステム4に対して固着する着磁リング18との相対的な位置決め精度を、下側フレーム2の作製精度だけで判定できる。例えば、射出成形のプラスチック製又は真鍮等の非磁性金属材料製の下側フレーム2の製造精度は、誘導センサ150や、大量生産の場合でも着磁リング18の正確な位置決めを十分に保証できる。更に、誘導センサ150を、弾性指部160(複数可)によってハウジング156の底部に向けて弾性付勢するため、これで、製造公差から生じる遊びを補償可能になる。これらの製造公差は、特に、フレキシブルプリント回路シート128に誘導センサ150を半田付けする工程から生じることがある。この半田付け処理を、例えば、炉で、フレキシブルプリント回路シート128の第3接触パッド148に被着した半田ペーストを使用して、実行する。
【0050】
誘導センサ150(複数可)を、好適には、該センサの検知素子が、垂直方向zに沿ってのみ磁気誘導における変動を検出するように、指向させる。つまり、誘導センサを、磁気誘導の直交するxとy軸に沿った水平方向の成分に対して完全に不検知にする。
【0051】
単一の誘導センサ150を設ける場合(
図19参照)では、制御ステム4の回転振幅及び位置を、平均精度だけで判定してもよい。実際、着磁リング18は、制御ステム4を作動した結果、回転すると、誘導センサ150は、変化の振幅が、該当する角度値に従い変動する正弦波信号を生成する。例えば、値π/2に近い領域内では、正弦波信号は、制御ステム4の移動量及び位置を、平均精度だけで判定できるような、若干の変化をするだけである。しかしながら、値πに近い領域内では、正弦波信号は、制御ステム4の移動量及び位置を、高精度で判定できるような、急激な変動をする。
【0052】
制御ステム4の位置及び回転量を検出する際に平均精度で満足できる場合、上記のシステムが、完全に適している。しかしながら、極めて高い測定精度が必要な場合、本発明による携帯品に2個の誘導センサ150を装着するのが、好ましい。実際、2個の誘導センサ150を使用するように備えることで、制御ステム4の振幅と回転方向の両方を、精度を高めて判定できる。これを達成するために、2個の誘導センサ150を、制御ステム4の長手方向垂直対称面Pの両側で等距離に配設する。好適には、2個の誘導センサ150を、着磁リング18が、制御ステム4を作動した結果回転すると、2個の誘導センサ150が正弦波信号sin(x)と sin(x+δ)、即ち、互いに60°〜120°の角度δだけ、好適には90°に相当する角度だけ、位相がずれる正弦波信号を生成するように、制御ステム4に対して配設する。2個の誘導センサと着磁リング18の相対的な配設について計算するために、例えば、有限要素計算ソフトウェアを用いて、逐次反復法(successive iteration)を実行できる。
【0053】
2個の誘導センサ150によって生成した正弦波測定信号sin(x)とsin(x+δ)間の位相シフトにより、これら2測定信号間の比率の逆正接関数を計算すると、直線が求められる。その結果、制御ステム4の回転運動から、制御ステム4、着磁リング18及び2個の誘導センサ150によって形成したシステムから線形応答を得ることができる。この制御ステム4の回転に関する線形化により、有利には、制御ステム4の位置に関してアブソリュート検出が可能になる。つまり、何時でも、制御ステム4の回転方向及び位置を知ることができる。更に、位相シフトδにより、2個の誘導センサ150によって生成した一方の正弦波測定信号sin(x)が、若干変化すると、他方の正弦波信号sin(x+δ)がより急激に変化する、又は一方の正弦波測定信号sin(x)が、急激に変化すると、他方の正弦波信号sin(x+δ)が若干変化し、これら2信号間の比率は、常に、制御ステム4の回転に関する精確な情報を提供する。
【0054】
誘導センサ150を、好適には、該センサの検知素子が、垂直軸zに沿った磁気誘導に関する変動だけを検出するように、指向させる点について、前述した。この磁気誘導の成分は、着磁リング18によって発生する軸zに沿った誘導と、携帯品外の磁界によって発生する誘導の合計である。しかしながら、誘導センサ150が互いに極めて接近していると考えると、外部の磁界が誘導センサ150に及ぼす影響は、両誘導センサ150に対して略同じである。その結果、2つの正弦波信号sin(x)とsin(x+δ)との間の比率を計算することで、携帯品の外部の磁界による磁気誘導に関する成分を、排除できる。従って、制御ステム4、着磁リング18及び誘導センサ150によって形成するシステムの応答は、外部の磁界とは完全に無関係であり、携帯品を磁気的に遮蔽するための対策を講じる必要はない。同様に、温度が両誘導センサに対して同じ作用を有する限り、システムの応答は、温度にも無関係である。
【0055】
言うまでもなく、本発明は、記載した実施形態に限定されるものではなく、様々な単純な変形例及び変更例を、当業者は、付記したクレームによって規定した本発明の範囲を逸脱することなく、想定できる。特に、着磁リングの寸法は、中空筒体に対応するように、延伸してもよい。