【文献】
CAI,Y.Y. et al,Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics,2010年,Vol.35,p.521-526
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記薬学的に許容される塩が塩酸塩、臭化水素酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、コハク酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、硝酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、炭酸塩、水酸化ナトリウム塩、水酸化カルシウム塩、水酸化カリウム塩、トロメタミン(Tris)塩またはこれらの混合物、好ましくは塩酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩またはこれらの混合物である、請求項1に記載の組成物。
前記シクロデキストリンがα-シクロデキストリンまたはその誘導体、β-シクロデキストリンまたはその誘導体およびγ-シクロデキストリンまたはその誘導体からなる群から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
前記pH調整剤が炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、トロメタミン(Tris)またはこれらの混合物である、請求項7に記載の組成物。
前記腫瘍性疾患が肺がん、頭頸部がん、中枢神経系がん、前立腺がん、精巣がん、直腸結腸がん、膵臓がん、肝臓がん、胃がん、胆道がん、食道がん、消化管間質性腫瘍、乳がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮がん、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、メラノーマ、基底細胞癌、扁平上皮癌、膀胱がん、腎臓がん、肉腫、中皮腫、胸腺腫、骨髄異形性症候群または骨髄増殖性疾患から選択される、請求項14に記載の組成物、医薬製剤、または凍結乾燥調製物。
前記腫瘍性疾患が白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、肺がん、乳がん、骨髄異形性症候群、骨髄増殖性疾患、膵臓がん、肝臓がん、胃がん、食道がん、消化管間質性腫瘍、子宮頸がん、卵巣がん、子宮がんまたはメラノーマである、請求項15に記載の組成物、医薬製剤、または凍結乾燥調製物。
【発明を実施するための形態】
【0028】
第一実施形態では本発明は、(a)環状多糖ならびに(b)上に例示の式(I)の化合物またはその幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、薬学的に許容される塩、プロドラッグおよびこれらの溶媒和物を含む組成物である。
【0029】
好ましい実施形態では本発明は、(a)環状多糖ならびに(b)上に例示の式(II)の化合物またはその幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、薬学的に許容される塩、プロドラッグおよびこれらの溶媒和物を含む組成物である。
【0030】
最も好ましい実施形態では本発明は、(a)環状多糖ならびに(b)上に例示の式(III)の化合物またはその幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、薬学的に許容される塩、プロドラッグおよびこれらの溶媒和物を含む組成物である。
【0031】
本明細書に記載の例示的化合物は、これだけに限らないが下の:
【0033】
本発明の化合物は、1つまたは複数の不斉炭素原子を含有してもよい。したがって化合物は、ジアステレオマー、鏡像異性体またはこれらの混合物として存在してもよい。化合物の合成は、出発材料としてまたは中間体としてラセミ体、ジアステレオマーまたは鏡像異性体を使う場合がある。ジアステレオマー化合物はクロマトグラフィーまたは結晶法によって分離され得る。同様に鏡像異性体混合物は、同技術または当技術分野において周知の他を用いて分離され得る。各不斉炭素原子は、RまたはS立体配置にあってよく、これら両方の立体配置は本発明の範囲内である。
【0034】
本発明の化合物が、塩、溶媒和物および、in vivoで本発明の化合物に転換されるプロドラッグの形態で存在でき、場合により投与され得ることは認められるべきである。例えば本発明の化合物を当技術分野においてよく知られている手順により種々の有機および無機の酸ならびに塩基から誘導されるその薬学的に許容される塩の形態に転換し、用いることは本発明の範囲内である。
【0035】
本発明の化合物が遊離塩基形態を有する場合、化合物は、化合物の遊離塩基形態を、薬学的に許容される無機または有機の酸と反応させることによって、薬学的に許容される酸付加塩、例えば、ハロゲン化水素酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩など);他の鉱酸(硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩など);ならびにアルキルスルホン酸塩およびモノアリールスルホン酸塩(エタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩およびベンゼンスルホン酸塩など);ならびに他の有機酸およびこれらの対応する塩(酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩およびアスコルビン酸塩など)として調製され得る。本発明のさらなる酸付加塩は、これだけに限らないが:アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルギネート(arginate)、アスパラギン酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸水素塩、臭化物、酪酸塩、樟脳、樟脳スルホン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、クロロ安息香酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、リン酸二水素塩、ジニトロ安息香酸塩、ドデシル硫酸塩、フマル酸塩、ガラクテレート(galacterate)(ムチン酸由来)、ガラクツロン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミコハク酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸メチル塩、リン酸一水素塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、オレイン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩およびフタル酸塩を含む。遊離塩基形態が極性溶媒への溶解度などの物理的特性においてそれらそれぞれの塩形態と典型的には幾分異なるが、その他の点では塩はそれらそれぞれの遊離塩基形態と本発明の目的のために等価であることは認められるべきである。
【0036】
本発明の化合物が遊離酸形態を有する場合、薬学的に許容される塩基付加塩は、化合物の遊離酸形態を薬学的に許容される無機または有機塩基と反応させることによって調製され得る。そのような塩基の例は、カリウム、ナトリウムおよびリチウムの水酸化物を含むアルカリ金属水酸化物;バリウムおよびカルシウムの水酸化物などのアルカリ土類金属水酸化物;例えばカリウムエタノール付加物およびナトリウムプロパノール付加物のアルカリ金属アルコキシド;ならびに水酸化アンモニウム、ピペリジン、ジエタノールアミンおよびN-メチルグルタミンなどの種々の有機塩基である。同様に含まれるのは、本発明の化合物のアルミニウム塩である。本発明のさらなる塩基塩は、これだけに限らないが:銅、三価鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、三価マンガン、二価マンガン、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛の塩を含む。有機塩基塩は、これだけに限らないが第一級、第二級および第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、クロロプロカイン、コリン、Ν,Ν'-ジベンジルエチレンジアミン(ベンザチン)、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルフォリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン(hydrabamine)、イソ-プロピルアミン、リドカイン、リジン、メグルミン、N-メチル-D-グルカミン、モルフォリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミンレジン、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンならびにトリス-(ヒドロキシメチル)-メチルアミン(トロメタミン)の塩を含む。遊離酸形態が極性溶媒への溶解度などの物理的特性においてそれらそれぞれの塩形態と典型的には幾分異なるが、その他の点では塩はそれらそれぞれの遊離酸形態と本発明の目的のために等価であることは認められるべきである。
【0037】
塩基性窒素含有基を含む本発明の化合物は、(C
1〜4)アルキルハロゲン化物、例えばメチル、エチル、イソプロピルおよびtert-ブチル塩化物、臭化物およびヨウ化物;ジ(C
1〜4)アルキル硫酸塩、例えばジメチル、ジエチルおよびジアミル硫酸塩;アルキルハロゲン化物、例えばデシル、ドデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリル塩化物、臭化物およびヨウ化物;ならびにアリール(C
1〜4)アルキルハロゲン化物、例えば塩化ベンジルおよび臭化フェネチルなどの薬物で四級化され得る。そのような塩は、本発明の水溶性および油溶性化合物の両方の調製を可能にする。
【0038】
四級窒素原子を含む本発明の化合物は、過酸化水素(H
2O
2)、カロ酸またはメタクロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)のような過酸などの薬物によってアミンオキシドを形成するように酸化され得る。抗がん剤のアミンオキシドは、プロドラッグとして開発されており、水溶性であってもよい。
【0039】
本発明による化合物のプロドラッグ誘導体は、本発明の化合物の置換基を修飾することによって調製でき、次いでそれはin vivoで異なる置換基に転換される。多くの場合、プロドラッグそれ自体も本発明によるさまざまな化合物の範囲内に含まれることに注意する。例えばプロドラッグは、化合物をカルバミル化剤(例えば、1,1-アシルオキシアルキルカルボノクロリデート、パラニトロフェニル炭酸塩など)またはアシル化剤と反応させることによって調製され得る。プロドラッグを作製する方法のさらなる例は、Saulnier et al. (1994), Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, 4巻, 1985頁に記載されている。
【0040】
環状多糖:本発明の実施において使われ得る環状多糖は、シクロデキストリン、シクロマンニン(cyclomannin)、シクロアルトリン(cycloaltrin)、シクロフルクチン(cyclofructin)などを含む。一般に、糖単位6個から8個を含む環状多糖が好ましい。好ましい環状多糖の中で使われ得るのはシクロデキストリンである。
【0041】
シクロデキストリンは、親水性外面および疎水性内面のキャビティからなる切断型円錐構造を有するブドウ糖の環状多量体である。シクロデキストリンは、キャビティ内で疎水性ゲスト分子の全体または部分と複合体化することによってゲスト分子と封入複合体を形成できる。キャビティの大きさは、シクロデキストリン中のグルコピラノースの数によって決定される。アルファ-(α)、ベータ-(β)およびガンマ-(γ)シクロデキストリンは、最も一般的なシクロデキストリンであり、6、7および8個のグルコピラノース単位をそれぞれ有する。天然シクロデキストリンが比較的低い水溶性を有し、毒性と関連することから、化学的に修飾されたシクロデキストリン誘導体がこれらの制限を克服するために開発されている。そのようなシクロデキストリン誘導体は、2、3または6位ヒドロキシル基の1つまたは複数に化学的修飾を典型的には有する。シクロデキストリン誘導体は、例えば米国特許第5,134,127号、第5,376,645号、第5,571,534号、第5,874,418号、第6,046,177号および第6,133,248号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する。本明細書で用いる用語「シクロデキストリン」、「α-シクロデキストリン」、「β-シクロデキストリン」および「γ-シクロデキストリン」は、未修飾シクロデキストリンおよびその化学的に修飾された誘導体を包含することが意図される。本発明の組成物は、シクロデキストリンと式(I)、(II)または(III)の化合物との封入複合体を含む。
【0042】
さらに別の実施形態では組成物は、治療有効濃度の式(I)、(II)または(III)の化合物を含む。
【0043】
本発明の一実施形態では組成物は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンおよびγ-シクロデキストリンからなる群から選択されるシクロデキストリンを含む。
【0044】
さらに別の実施形態ではシクロデキストリンは、β-シクロデキストリおよびγ-シクロデキストリンである。
【0045】
追加的実施形態ではシクロデキストリンは、β-シクロデキストリンである。
【0046】
さらなる実施形態ではシクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(Pitha et al, J Pharm Sci, 84(8), 927〜32頁(1995))およびスルホブチル誘導β-シクロデキストリン(例えば米国特許第5,134,127号、第5,376,645号、第5,874,418号、第6,046,177号および第6,133,248号に記載)からなる群から選択される。
【0047】
別の実施形態ではシクロデキストリンは、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンである。
【0048】
本発明のさらに別の実施形態ではシクロデキストリンは、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンである。
【0049】
他の好ましい環状多糖は、これだけに限らないが2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルプロパンアンモニウム、カルボキシメチル化-β-シクロデキストリン、O-リン酸化-β-シクロデキストリン、スクシニル-(2-ヒドロキシ)プロピル-βシクロデキストリン、スルホプロピル化-β-シクロデキストリン、ヘプタキス(6アミノ-6-デオキシ)-β-シクロデキストリン、O-硫酸化-β-シクロデキストリン、および6-モノデオキシ-6-モノ(3-ヒドロキシ)プロピルアミノ-β-シクロデキストリン;で置換されたβ-シクロデキストリンを含む。
【0050】
シクロデキストリンは、組成物中の活性化合物の溶解度を増加させる量で含まれ得る。一実施形態では組成物中に含まれるシクロデキストリンの量は、組成物中の薬剤を可溶化するために必要な最少量である。さらなる実施形態では組成物は非経口製剤であり、製剤中に含まれるシクロデキストリンの量は薬剤を可溶化するために必要なシクロデキストリンの最少量である。
【0051】
式I〜IIIによって包含される化合物を可溶化するために必要なシクロデキストリンの最少量を決定するために、化合物の溶解度対シクロデキストリン濃度のプロットを実施することができる。プロットから内挿するステップまたは外挿することによって、活性化合物の所望の濃度を溶解するために必要なシクロデキストリンの最少量を含有する組成物が調製され得る。
【0052】
一実施形態では組成物は、少なくとも2.5%(重量/体積)のシクロデキストリンを含む。別の実施形態では組成物は、少なくとも5%のシクロデキストリンを含む。さらに別の実施形態では組成物は、少なくとも10%のシクロデキストリンを含む。さらなる実施形態では組成物は、2.5から40%のシクロデキストリンを含む。さらに別の実施形態では組成物は、5%から20%のシクロデキストリンを含む。別の実施形態では組成物は、7.5%から15%のシクロデキストリンを含む。さらに別の実施形態では組成物は、約10%のシクロデキストリンを含む。
【0053】
一実施形態では組成物は、少なくとも2.5%(重量/体積)のβ-シクロデキストリンを含む。別の実施形態では組成物は、少なくとも5%のβ-シクロデキストリンを含む。さらに別の実施形態では組成物は、少なくとも10%のβ-シクロデキストリンを含む。さらなる実施形態では組成物は、2.5から40%までのβ-シクロデキストリンを含む。さらに別の実施形態では組成物は、5%から20%までのβ-シクロデキストリンを含む。別の実施形態では組成物は、7.5%から15%のβ-シクロデキストリンを含む。さらに別の実施形態では組成物は、10%のβ-シクロデキストリンを含む。
【0054】
一実施形態では組成物は、少なくとも2.5%(重量/体積)のヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンを含む。別の実施形態では組成物は、少なくとも5%のヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンを含む。さらに別の実施形態では組成物は、少なくとも10%のヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンを含む。さらなる実施形態では組成物は、2.5から40%までのヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンを含む。さらに別の実施形態では組成物は、5%から20%までのヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンを含む。別の実施形態では組成物は、7.5%から15%のヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンを含む。さらに別の実施形態では組成物は、10%のヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンを含む。
【0055】
一実施形態では組成物は、pH調整剤をさらに含む。さらなる実施形態ではpH調整剤は、1つまたは複数の酸、塩基または塩である。組成物中に含まれ得る酸の例は、塩酸、硫酸、リン酸またはこれらの混合物などの無機酸ならびにクエン酸、L(-)-リンゴ酸およびL(+)酒石酸またはこれらの混合物などの有機酸を含む。組成物中に含まれ得る塩基の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、トロメタミンまたはこれらの混合物を含む。組成物中に含まれ得る塩の例は、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムまたはこれらの混合物を含む。さらなる実施形態では1つまたは複数のpH調整剤を含む組成物は、6.0〜9.0の、好ましくは7.0〜8.0のpH範囲を有する。
【0056】
本発明の別の実施形態は、式(I〜III)の化合物5から約500mgを含有する医薬組成物を含む医薬剤形である。より好ましい式は式(II)であり、最も好ましい式は式(III)である。
【0057】
さらなる実施形態では組成物はデキストランを含む。さらに別の実施形態では組成物は、約1%重量/体積から約5%重量/体積デキストランの範囲の量のデキストランを含む。さらなる実施形態では組成物は、約2から約4%重量/体積デキストランを含む。
【0058】
糖、ポリアルコール、可溶性ポリマー、塩および脂質などの、担体または希釈剤として通常用いられる任意の不活性賦形剤が、本発明の組成物において用いられ得る。使われ得る糖およびポリアルコールは、非限定的に乳糖、ショ糖、マンニトールおよびソルビトールを含む。使われ得る可溶性ポリマーの例は、ポリオキシエチレン、ポロクサマー、ポリビニルピロリドンおよびデキストランである。有用な塩は、非限定的に塩化ナトリウム、塩化マグネシウムおよび塩化カルシウムを含む。使われ得る脂質は、非限定的に脂肪酸、グリセロール脂肪酸エステル、糖脂質およびリン脂質を含む。
【0059】
追加的に組成物は、結合剤(例えば、アラビアゴム、コーンスターチ、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアーガム、デンプングリコール酸ナトリウム、プリモゲル(Primogel))、種々のpHおよびイオン強度の緩衝剤(例えば、tris-HCL、酢酸塩、リン酸塩)、表面への吸収を防ぐためのアルブミンまたはゼラチンなどの添加剤、洗浄剤(例えば、Tween 20、Tween 80、Pluronic F68、胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、浸透増強剤、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール、シクロデキストリン)、流動促進剤(例えば、コロイド二酸化ケイ素)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール)、安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、粘度増加剤(例えば、カルボマー、コロイド性二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアーガム)、甘味剤(例えば、ショ糖、アスパルテーム、クエン酸)、香味剤(例えば、ペパーミント、メチルサリチル酸塩もしくはオレンジ香料)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動化剤(flow-aid)(例えば、コロイド性二酸化ケイ素)、可塑剤(例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えば、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、ポリマーコーティング剤(例えば、ポロクサマーもしくはポロキサミン)、コーティングおよび被膜形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリレート、ポリメタクリレート)ならびに/またはアジュバントをさらに含む場合がある。
【0060】
一実施形態では組成物は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系を含む放出制御製剤などの、身体からの急速な排出に対して化合物を保護する担体を含んで調製される。エチレンビニルアセテート、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーも用いられ得る。そのような製剤の調製のための方法は、当業者に明らかである。材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的にも入手できる。リポソーム懸濁物(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染細胞に標的化されたリポソームを含む)は、薬学的に許容される担体としても用いられ得る。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載のとおり当業者に周知の方法により調製され得る。
【0061】
本発明の組成物は環状多糖の溶液と式(I)の化合物の保存溶液とを混合することによって調製され得る。得られたそのような混合物は、激しく混合され、場合により均一化および平衡化された水性溶液を得るために超音波処置に供される。好ましくは最終組成物は、注射用使用の前にろ過される。組成物は、使用前の注射用媒体への溶解に好適な固体材料を生成するために場合により凍結乾燥され得る。
【0062】
定義
「アシル」は、式-C(O)-R(式中Rは、H、アルキル、炭素環、複素環、炭素環置換アルキルまたは複素環置換アルキルであってアルキル、アルコキシ、炭素環および複素環は本明細書で定義される)によって表される置換基を含有しているカルボニルを意味する。アシル基は、アルカノイル(例えば、アセチル)、アロイル(例えば、ベンゾイル)およびヘテロアロイルを含む。
【0063】
「脂肪族」は、構成炭素原子の直鎖または分枝鎖配置によって特徴付けられる成分を意味し、飽和または1つもしくは複数の二重もしくは三重結合で部分的に不飽和であってよい。
【0064】
用語「アルキル」は、1〜20個の炭素原子(例えば、C
1〜C
10)を含有する直鎖または分枝炭化水素を意味する。アルキルの例は、これだけに限らないがメチル、メチレン、エチル、エチレン、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチルおよびt-ブチルを含む。用語「アルケニル」は、2〜20個の炭素原子(例えば、C
2〜C
10)および1つまたは複数の二重結合を含有する直鎖または分枝炭化水素を意味する。アルケニルの例は、これだけに限らないが、エテニル、プロペニルおよびアリルを含む。用語「アルキニル」は、2〜20個の炭素原子(例えば、C
2〜C
10)および1つまたは複数の三重結合を含有する直鎖または分枝炭化水素を意味する。アルキニルの例は、これだけに限らないがエチニル、1-プロピニル、1-および2-ブチニルならびにl-メチル-2-ブチニルを含む。用語「アルキルアミノ」は、-N(R)-アルキル(式中Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリールまたはヘテロアリールであってよい)を意味する。「アルコキシ」は、さらなるアルキル置換基を有する酸素部分を意味する。「アルコキシカルボニル」は、カルボニル基に結合したアルコキシ基を意味する。「オキソアルキル」は、カルボニル基でさらに置換されたアルキルを意味する。カルボニル基は、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、酸または酸塩化物であってよい。
【0065】
用語「シクロアルキル」は、3から30個の炭素原子(例えば、C
3〜C
12)を有する飽和炭化水素環系を意味する。シクロアルキルの例は、これだけに限らないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを含む。用語「シクロアルケニル」は、3から30個の炭素(例えば、C
3〜C
12)および1つまたは複数の二重結合を有する非芳香族炭化水素環系を意味する。例は、シクロペンテニル、シクロヘキセニルおよびシクロヘプテニルを含む。用語「ヘテロシクロアルキル」は、1つまたは複数のヘテロ原子(O、N、S、PまたはSeなど)を有する非芳香族5〜8員単環、8〜12員二環または11〜14員三環系を意味する。ヘテロシクロアルキル基の例は、これだけに限らないがピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、モルホニリルおよびテトラヒドロフラニルを含む。用語「ヘテロシクロアルケニル」は、1つまたは複数のヘテロ原子(O、N、S、PまたはSeなど)および1つまたは複数の二重結合を有する非芳香族5〜8員単環、8〜12員二環または11〜14員三環系を意味する。
【0066】
用語「アリール」は、6炭素単環、10炭素二環、14炭素三環芳香族環系を意味する。アリール基の例は、これだけに限らないがフェニル、ナフチル、およびアントラセニルを含む。用語「ヘテロアリール」は、1つまたは複数のヘテロ原子(O、N、S、PまたはSeなど)を有する芳香族5〜8員単環、8〜12員二環または11〜14員三環系を意味する。ヘテロアリール基の例は、ピリジル、フリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾイル、ピリミジニル、チエニル、キノリニル、インドリルおよびチアゾリルを含む。
【0067】
上に記載のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アルキルアミノ、アリールおよびヘテロアリールは、置換および未置換部分の両方を含む。アルキルアミノ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリールおよびヘテロアリール上に可能な置換基は、これだけに限らないがC
1〜C
10アルキル、C
2〜C
10アルケニル、C
2〜C
10アルキニル、C
3〜C
20シクロアルキル、C
3〜C
20シクロアルケニル、C
1〜C
20ヘテロシクロアルキル、C
1〜C
20ヘテロシクロアルケニル、C
1〜C
10アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、アミノ、C
1〜C
10アルキルアミノ、アリールアミノ、ヒドロキシ、ハロ、オキソ(O=)、チオキソ(S=)、チオ、シリル、C
1〜C
10アルキルチオ、アリールチオ、C
1〜C
10アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アシルアミノ、アミノアシル、アミノチオアシル、アミジノ、メルカプト、アミド、チオウレイド、チオシアネート、スルホンアミド、グアニジン、ウレイド、シアノ、ニトロ、アシル、チオアシル、アシルオキシ、カルバミド、カルバミル、カルボキシルおよびカルボキシルエステルを含む。一方、アルキル、アルケニルまたはアルキニル上に可能な置換基は、C
1〜C
10アルキルを除く上に列挙した全ての置換基を含む。シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリールおよびヘテロアリールは、相互に融合もされ得る。
【0068】
「アミノ」は、2個のさらなる置換基(各置換基は窒素にα結合している水素または炭素原子を有する)を有する窒素部分を意味する。他に示す場合を除いて、アミノ成分を含有する本発明の化合物は、保護されたその誘導体を含み得る。アミノ部分に対する好適な保護基は、アセチル、tert-ブトシキカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどを含む。
【0069】
「芳香族」は、構成成分原子が不飽和環系を構成し、環系における全ての原子がsp2ハイブリダイズされ、パイ電子の総数が4n+2に等しい成分を意味する。芳香族環は、環原子が炭素原子だけである、または炭素および非炭素原子を含んでよいものであってよい(ヘテロアリールを参照されたい)。
【0070】
「カルバモイル」は、基-OC(O)NRaRbを意味し、式中RaおよびRbはそれぞれ独立に2個のさらなる置換基(水素または炭素原子は窒素に対してアルファである)である。カルバモイル部分が保護されたその誘導体を含み得ることに注意する。カルバモイル部分に対する好適な保護基の例はアセチル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどを含む。保護されていないおよび保護された誘導体の両方が、本発明の範囲内に含まれることに注意する。
【0071】
「カルボニル」は、基-C(O)-を意味する。カルボニル基が、酸、酸ハロゲン化物、アミド、エステルおよびケトンを含むさまざまなカルボニル基を形成するように種々の置換基でさらに置換され得ることに注意する。
【0072】
「カルボキシ」は、基-C(O)O-を意味する。カルボキシ部分を含有する本発明の化合物が、保護された(すなわち酸素が保護基で置換された)その誘導体を含み得ることに注意する。カルボキシ部分に対する好適な保護基は、ベンジル、tert-ブチルなどを含む。
【0074】
「ハロ」は、フッ化、塩化、臭化またはヨウ化を意味する。
【0075】
「ハロ-置換アルキル」は、孤立基(isolated group)またはより大きな基の部分として、1つまたは複数の「ハロゲン」原子で置換された「アルキル」を意味し、用語は本出願において定義される。ハロ-置換アルキルは、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、ペルハロアルキルなどを含む。
【0076】
「ヒドロキシ」は、基-OHを意味する。
【0077】
「イミン誘導体」は、部分-C(NR)-(式中Rは、窒素に対してアルファである水素または炭素原子を含む)を含む誘導体を意味する。
【0078】
「異性体」は、同一の分子式を有するが、それらの原子の結合の性質もしくは配列または空間におけるそれらの原子の配置が異なる任意の化合物を意味する。空間における原子の配置が異なる異性体は「立体異性体」と称される。互いに鏡像ではない立体異性体は「ジアステレオマー」と称され、重ね合わせることができない鏡像である立体異性体は「鏡像異性体」または時に「光学異性体」と称される。4個の同一ではない置換基に結合している炭素原子は「キラル中心」と称される。1個のキラル中心を含む化合物は、反対のキラリティーの2個の鏡像異性体形態を有する。2個の鏡像異性体形態の混合物は「ラセミ混合物」と称される。
【0079】
「ニトロ」は、基-NO
2を意味する。
【0080】
「保護された誘導体」は1つまたは複数の反応部位が保護基で塞がれている阻害剤の誘導体を意味する。保護された誘導体は、阻害剤の調製において有用であり、またはそれ自体が阻害剤として活性である場合もある。好適な保護基の総覧は、T.W.Greene,Protecting Groups in Organic Synthesis,3rd edition,John Wiley & Sons,1999において見出すことができる。
【0081】
「置換または未置換」は、利用可能な原子価すべてについて水素置換基だけからなってよい(未置換)、または、利用可能な原子価すべてについて1つもしくは複数の非水素置換基をさらに含み(置換)、所与の部分の名称による他には特定されない、所与の部分を意味する。
【0082】
「スルフィド」は、-S-Rを意味し、式中Rは、H、アルキル、炭素環、複素環、カルボシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルである。具体的なスルフィド基は、メルカプト、アルキルスルフィド、例えばメチルスルフィド(-S-Me);アリールスルフィド、例えばフェニルスルフィド;アラルキルスルフィド、例えばベンジルスルフィドである。
【0083】
「スルフィニル」は、基-S(O)-を意味する。スルフィニル基が、スルフィン酸、スルフィンアミド、スルフィニルエステルおよびスルフォキシドを含むさまざまなスルフィニル基を形成するように種々の置換基でさらに置換され得ることに注意する。
【0084】
「スルホニル」は、基-S(O)(O)-を意味する。スルホニル基がスルホン酸、スルホンアミド、スルホン酸エステルおよびスルホンを含むさまざまなスルホニル基を形成するように種々の置換基でさらに置換され得ることに注意する。
【0085】
「チオカルボニル」は、基-C(S)-を意味する。チオカルボニル基がチオ酸、チオアミド、チオエステルおよびチオケトンを含むさまざまなチオカルボニル基を形成するように種々の置換基でさらに置換され得ることに注意する。
【0086】
「動物」は、ヒト、非ヒト哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、シカなど)および非哺乳動物(例えば、トリなど)を含む。
【0087】
本明細書で用いられる「生物学的利用率」は、薬剤または医薬組成物の投与された用量の内、未変化で体循環に達した割合または百分率である。一般に、薬物療法が静脈内に投与される場合、その生物学的利用率は100%である。しかし薬物療法が他の経路(例えば、経口)を介して投与される場合、その生物学的利用率は減少する(例えば、不完全な吸収および初回通過代謝による)。生物学的利用率を改善する方法は、プロドラッグ手法、塩合成、粒子サイズ低減、複合体化、物理的形態の変更、固体分散、噴霧乾燥および溶融押出法を含む。
【0088】
「疾患」は、具体的には動物またはその部分の任意の非健康状態を含み、動物に適用された医学的または獣医学的治療によって生じるまたは起こる場合がある非健康状態、すなわちそのような療法の「副作用」を含む。
【0089】
「薬学的に許容される」は、一般に安全、非毒性であり、生物学的にまたは他にも望ましくないことがなく、獣医学的使用およびヒト薬学的使用のために許容されるものを含む、医薬組成物の調製において有用であることを意味する。
【0090】
「薬学的に許容される塩」は、上に定義のとおり薬学的に許容され、望ましい薬学的活性を有する本発明の化合物の塩を意味する。そのような塩は、無機酸でまたは有機酸で形成された酸付加塩を含む。薬学的に許容される塩は、存在する酸性プロトンが無機または有機塩基と反応できる場合に形成され得る塩基付加塩も含む。
【0091】
「プロドラッグ」は、本発明による阻害剤にin vivo代謝で転換される化合物を意味する。例えばヒドロキシル基を含む阻害剤は、in vivo加水分解によってヒドロキシル化合物に転換されるエステルとして投与され得る。
【0092】
The International Union of Pure and Applied Chemistryによって定義された「ファルマコフォア」は、特異的生物学的標的との最適な超分子相互作用を確実にするためおよびその生物学的反応を誘発する(または遮断する)ために必要である立体的および電子的特質の集合体(ensemble)である。例えばカンプトテシンは、よく知られている薬剤トポテカンおよびイリノテカンのファルマコフォアである。別の例として、ナイトロジェンマスタードファルマコフォアは、代表式-N(CH
2CH
2X)
2またはそのN-オキシド類似物を有し、式中Xはハロゲンなどの脱離基である。ナイトロジェンマスタードファルマコフォアを含有する抗がん剤は、これだけに限らないがメルファラン、ベンダムスチン、シクロホスファミド、PX-478、TH-302、PR-104、イホスファミドなどを含む。
【0093】
「薬学的に許容される担体」は、医薬組成物の製剤(すなわち患者へ投与できる投与形態)を可能にするために本発明の化合物と混合される非毒性溶媒、分散剤、賦形剤、アジュバントまたは他の材料を意味する。薬学的に許容される担体の例は、好適なポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、界面活性剤(例えば、クレモフォア)または環状多糖(例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンもしくはスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン)、ポリマー、リポソーム、ミセル、ナノ球体などを含む。
【0094】
一般に「安定性」は、薬剤が強度を失うことなくその特性を保持する時間の長さを意味する。時にこれは有効期間とも称される。薬剤安定性に影響する要因は、特に薬剤の化学的構造、製剤中の不純物、pH、含水量ならびに、温度、酸化、光および相対湿度などの環境要因を含む。安定性は、好適な化学的修飾および/または結晶変態(例えば、水和動態を変化させ得る表面修飾;異なる特性を有しうる異なる結晶)、賦形剤(例えば、投与形態中の活性物質以外の任意の物質)、包装条件、保存条件などを提供することによって改善され得る。
【0095】
本明細書に記載の組成物の「治療有効量」は、いかなる医学的治療にも適用できる適切な利益/危険性比で治療効果を治療される対象に付与する組成物の量を意味する。治療効果は、他覚的(すなわち、なんらかの検査もしくはマーカーによって測定可能)または自覚的(すなわち、対象が効果の示唆もしくは感覚を示す)であってよい。上に記載の組成物の有効量は、約0.1mg/kgから約500mg/Kgまで、好ましくは約0.2から約50mg/kgまで変動してよい。有効量は、投与経路および他の薬物との同時使用の可能性に依存して変化もする。しかし、本発明の組成物の一日合計での使用法が、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることは理解される。任意の具体的な患者に対する特定の治療有効投与レベルは、治療される障害および障害の重症度;使われる具体的な化合物の活性;使われる具体的な組成物;患者の年齢、体重、全身状態、性別および食事;投与時期、投与経路および使われる具体的な化合物の排出速度;治療期間;使われる具体的な化合物と組み合わせてまたは同時に用いられる薬剤;ならびに医学分野においてよく知られている要因などを含む種々の要因に依存する。
【0096】
本明細書で用いられる用語「治療する」は、腫瘍性もしくは免疫性障害を有するまたはそれに対する症状もしくは素因を有する対象に、障害、障害の症状または障害に対する素因を治癒、癒す、緩和、軽減、修正、改善、向上、好転または作用する目的で化合物を投与することを意味する。用語「有効量」は、対象に目的の治療効果を付与するために必要である活性剤の量を意味する。当業者によって認められるとおり有効量は、投与経路、賦形剤使用および他の薬物との同時使用の可能性に依存して変化する場合がある。「対象」は、ヒトおよび非ヒト動物を意味する。非ヒト動物の例は、全ての脊椎動物、例えば非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、イヌ、げっ歯類(例えば、マウスまたはラット)、モルモット、ネコなどの哺乳動物およびトリ、両生類、爬虫類などの非哺乳動物などを含む。好ましい実施形態では対象はヒトである。別の実施形態では対象は、実験動物または疾患モデルとして好適な動物である。
【0097】
一般
「組合せ療法」は、他の生物学的活性成分(これだけに限らないが、第二の異なる抗腫瘍剤など)および非薬剤療法(これだけに限らないが手術または放射線治療など)とさらに組み合わせての本発明の対象組成物の投与を含む。例えば本発明の組成物は、他の薬学的活性化合物または非薬剤治療、好ましくは本発明の組成物の効果を増強できる化合物との組合せで用いられてよい。本発明の組成物は、他の療法と同時に(単一の調製物としてもしくは別々の調製物として)または逐次的に投与され得る。一般に組合せ療法は、1サイクルの療法または療法過程の際に2つ以上の薬剤/治療の投与を計画する。
【0098】
一実施形態では本発明の組成物は、1つまたは複数の伝統的化学療法剤との組合せで投与される。伝統的化学療法剤は、腫瘍学の分野における幅広い治療的処置を包含する。これらの薬物は、腫瘍を縮小させる、手術後に残ったがん細胞を破壊する、寛解を誘導する、寛解を維持するおよび/またはがんもしくはその治療に関連する症状を緩和する目的のために疾患の種々の段階で投与される。そのような薬物の例は、これだけに限らないがニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチンおよびストレプトゾシン)、エチレンイミン(例えば、チオテパ、ヘキサメチルメラニン)、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)、ヒドラジンおよびトリアジン(例えば、アルトレタミン、プロカルバジン、ダカルバジンおよびテモゾロミド)、ならびに白金ベース薬物(例えば、カルボプラチン、シスプラチンおよびオキサリプラチン)などのアルキル化剤;ポドフィロトキシン(例えば、エトポシドおよびテニソピド)、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびビノレルビン)などの植物アルカロイド;クロモマイシン(例えば、ダクチノマイシンおよびプリカマイシン)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ミトキサントロンおよびイダルビシン)ならびにマイトマイシンおよびブレオマイシンなどの種々の抗体などの抗腫瘍抗体;葉酸アンタゴニスト(例えば、メトトレキサート)、ピリミジンアンタゴニスト(例えば、5-フルオロウラシル、フォクスウリジン(Foxuridine)、シタラビン、カペシタビンおよびゲムシタビン)、プリンアンタゴニスト(例えば、6-メルカプトプリンおよび6-チオグアニン)ならびにアデノシンデアミナーゼ阻害剤(例えば、クラドリビン、フルダラビン、ネララビンおよびペントスタチン)などの代謝拮抗剤;トポイソメラーゼI阻害剤(トポテカン、イリノテカン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、アムサクリン、エトポシド、エトポシドリン酸塩、テニポシド)などのトポイソメラーゼ阻害剤ならびにリボヌクレオチド還元酵素阻害剤(ヒドロキシウレア)、副腎皮質ステロイド阻害剤(ミトタン)、抗微小管剤(エストラムスチン)およびレチノイド(ベキサロテン、イソトレチノイン、トレチノイン
(ATRA)などの種々の抗腫瘍剤を含む。
【0099】
本発明の一態様では組成物は、種々の疾患状態に関与するタンパク質キナーゼを調節する1つまたは複数の標的化抗がん剤との組合せで投与され得る。そのようなキナーゼの例は、これだけに限らないがABL1、ABL2/ARG、ACK1、AKT1、AKT2、AKT3、ALK、ALK1/ACVRL1、ALK2/ACVR1、ALK4/ACVR1B、ALK5/TGFBR1、ALK6/BMPR1B、AMPK(A1/B1/G1)、AMPK(A1/B1/G2)、AMPK(A1/B1/G3)、AMPK(A1/B2/G1)、AMPK(A2/B1/G1)、AMPK(A2/B2/G1)、AMPK(A2/B2/G2)、ARAF、ARK5/NUAK1、ASK1/MAP3K5、ATM、オーロラA、オーロラB、オーロラC、AXL、BLK、BMPR2、BMX/ETK、BRAF、BRK、BRSK1、BRSK2、BTK、CAMK1a、CAMK1b、CAMK1d、CAMK1g、CAMKIIa、CAMKIIb、CAMKIId、CAMKIIg、CAMK4、CAMKK1、CAMKK2、CDC7-DBF4、CDK1-サイクリンA、CDK1-サイクリンB、CDK1-サイクリンE、CDK2-サイクリンA、CDK2-サイクリンA1、CDK2-サイクリンE、CDK3-サイクリンE、CDK4-サイクリンD1、CDK4-サイクリンD3、CDK5-p25、CDK5-p35、CDK6-サイクリンD1、CDK6-サイクリンD3、CDK7-サイクリンH、CDK9-サイクリンK、CDK9-サイクリンT1、CHK1、CHK2、CK1a1、CK1d、CK1ε、CK1g1、CK1g2、CK1g3、CK2a、CK2a2、c-KIT、CLK1、CLK2、CLK3、CLK4、c-MER、c-MET、COT1/MAP3K8、CSK、c-SRC、CTK/MATK、DAPK1、DAPK2、DCAMKL1、DCAMKL2、DDR1、DDR2、DLK/MAP3K12、DMPK、DMPK2/CDC42BPG、DNA-PK、DRAK1/STK17A、DYRK1/DYRK1A、DYRK1B、DYRK2、DYRK3、DYRK4、EEF2K、EGFR、EIF2AK1、EIF2AK2、EIF2AK3、EIF2AK4/GCN2、EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPH
A5、EPHA6、EPHA7、EPHA8、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、ERBB2/HER2、ERBB4/HER4、ERK1/MAPK3、ERK2/MAPK1、ERK5/MAPK7、FAK/PTK2、FER、FES/FPS、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGR、FLT1/VEGFR1、FLT3、FLT4/VEGFR3、FMS、FRK/PTK5、FYN、GCK/MAP4K2、GRK1、GRK2、GRK3、GRK4、GRK5、GRK6、GRK7、GSK3a、GSK3b、Haspin、HCK、HGK/MAP4K4、HIPK1、HIPK2、HIPK3、HIPK4、HPK1/MAP4K1、IGF1R、IKKa/CHUK、IKKb/IKBKB、IKKe/IKBKE、IR、IRAK1、IRAK4、IRR/INSRR、ITK、JAK1、JAK2、JAK3、JNK1、JNK2、JNK3、KDR/VEGFR2、KHS/MAP4K5、LATS1、LATS2、LCK、LCK2/ICK、LKB1、LIMK1、LOK/STK10、LRRK2、LYN、LYNB、MAPKAPK2、MAPKAPK3、MAPKAPK5/PRAK、MARK1、MARK2/PAR-1Ba、MARK3、MARK4、MEK1、MEK2、MEKK1、MEKK2、MEKK3、MELK、MINK/MINK1、MKK4、MKK6、MLCK/MYLK、MLCK2/MYLK2、MLK1/MAP3K9、MLK2/MAP3K10、MLK3/MAP3K11、MNK1、MNK2、MRCKa/、CDC42BPA、MRCKb/、CDC42BPB、MSK1/RPS6KA5、MSK2/RPS6KA4、MSSK1/STK23、MST1/STK4、MST2/STK3、MST3/STK24、MST4、mTOR/FRAP1、MUSK、MYLK3、MYO3b、NEK1、NEK2、NEK3、NEK4、NEK6、NEK7、NEK9、NEK11、NIK/MAP3K14、NLK、OSR1/OXSR1、P38a/MAPK14、P38b/MAPK11、P38d/MAPK13、P38g/MAPK12、P70S6K/RPS6KB1、p70S6Kb/、RPS6KB2、PAK1、PAK2、PAK3、PAK4、PAK5、PAK6、PASK、PBK/TOPK、PDGFRa、PDGFRb、PDK1/PDPK1、PDK1/PDHK1、PDK2/PDHK2、PDK3/PDHK3、PDK4/PDHK4、PHKg1、PHKg2、PI3Ka、(p110a/p85a)、PI3Kb、(p110b/p85a)、PI3Kd、(p110d/p85a)、PI3Kg(p120g)、PIM1、PIM2、PIM3、PKA、PKAcb、PKAcg、PKCa、PKCb1、PKCb2、PKCd、PKCε、PKCη、PKCg、PKCι、PKCmu/PRKD1、PKCnu/PRKD3、PKCθ、PKCζ、PKD2/PRKD2、PKG1a、PKG1b、PKG2/PRKG2、PKN1/PRK1、PKN2/PRK2、PKN3/PRK3、PLK1、PLK2、PLK3、PLK4/SAK、PRKX、PYK2、RAF1、RET、RIPK2、RIPK3、RIPK5、ROCK1、ROCK2、RON/MST1R、ROS/ROS1、RSK1、RSK2、RSK3、RSK4、SGK1、SGK2、SGK3/SGKL、SIK1、SIK2、SLK/STK2、SNARK/NUAK2、SRMS、SSTK/TSSK6、STK16、STK22D/TSSK1、STK25/YSK1、STK32b/YANK2、STK32c/YANK3、STK33、STK38/NDR1、STK38L/NDR2、STK39/STLK3、SRPK1、SRPK2、SYK、TAK1、TAOK1、TAOK2/TAO1、TAOK3/JIK、TBK1、TEC、TESK1、TGFBR2、TIE2/TEK、TLK1、TLK2、TNIK、TNK1、TRKA、TRKB、TRKC、TRPM7/CHAK1、TSSK2、TSSK3/STK22C、TTBK1、TTBK2、TTK、TXK、TYK1/LTK、TYK2、TYRO3/SKY、ULK1、ULK2、ULK3、VRK1、VRK2、WEE1、WNK1、WNK2、WNK3、YES/YES1、ZAK/MLTK、ZAP70、ZIPK/DAPK3、KINASE、MUTANTS、ABL1(E255K)、ABL1(F317I)、ABL1(G250E)、ABL1(H396P)、ABL1(M351T)、ABL1(Q252H)、ABL1(T315I)、ABL1(Y253F)、ALK(C1156Y)、ALK(L1196M)、ALK(F1174L)、ALK(R1275Q)、BRAF(V599E)、BTK(E41K)、CHK2(I157T)、c-Kit(A829P)、c-KIT(D816H)、c-KIT(D816V)、c-Kit(D820E)、c-Kit(N822K)、C-Kit(T670I)、c-Kit(V559D)、c-Kit(V559D/V654A)、c-Kit(V559D/T670I)、C-Kit(V560G)、c-KIT(V654A)、C-MET(D1228H)、C-MET(D1228N)、C-MET(F1200I)、c-MET(M1250T)、C-MET(Y1230A)、C-MET(Y1230C)、C-MET(Y1230D)、C-MET(Y1230H)、c-Src(T341M)、EGFR(G719C)、EGFR(G719S)、EGFR(L858R)、EGFR(L861Q)、EGFR(T790M)、EGFR、(L858R,T790M)、EGFR(d746-750/T790M)、EGFR(d746-750)、EGFR(d747-749/A750P)、EGFR(d747-752/P753S)、EGFR(d752-759)、FGFR1(V561M)、FGFR2(N549H)、FGFR3(G697C)、FGFR3(K650E)、FGFR3(K650M)、FGFR4(N535K)、FGFR4(V550E)、FGFR4(V550L)、FLT3(D835Y)、FLT3(ITD)、JAK2(V617F)、LRRK2(G2019S)、LRRK2(I2020T)、LRRK2(R1441C)、p38a(T106M)、PDGFRa(D842V)、PDGFRa(T674I)、PDGFRa(V561D)、RET(E762Q)、RET(G691S)、RET(M918T)、RET(R749T)、RET(R813Q)、RET(V804L)、RET(V804M)、RET(Y791F)、TIF2(R849W)、TIF2(Y897S)、およびTIF2(Y1108F)を含み得る。
【0100】
本発明の別の態様では対象組成物は、非キナーゼ生物学的標的、経路またはプロセスを調節する1つまたは複数の標的化抗がん剤との組合せで投与され得る。そのような標的経路またはプロセスは、これだけに限らないが熱ショックタンパク質(例えば、HSP90)、ポリ-ADP(アデノシン二リン酸)-リボースポリメラーゼ(PARP)、低酸素誘導因子(HIF)、プロテアソーム、Wnt/ヘッジホッグ/ノッチシグナル伝達タンパク質、TNF-アルファ、マトリクスメタロプレテイナーゼ、ファルネシル転移酵素、アポトーシス経路(例えば、Bcl-xL、Bcl-2、Bcl-w)、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)、ヒストンアセチル転移酵素(HAT)およびメチル転移酵素(例えば、ヒストンリジンメチル転移酵素、ヒストンアルギニンメチル転移酵素、DNAメチル転移酵素など)を含む。
【0101】
本発明の別の態様では本発明の組成物は、これだけに限らないが、ホルモン療法(例えば、タモキシフェン、フルベストラント、クロミフェン、アナストロゾール、エキセメスタン、ホルメスタン、レトロゾールなど)、血管破壊剤(vascular disrupting agent)、遺伝子治療、RNAiがん療法、化学的予防薬(例えば、アミフォスチン、メスナおよびデクスラゾキサン)、抗体コンジュゲート(例えば、ブレンツキシマブベドチン、イブリツモマブチオキセタン)、がん免疫療法(インターロイキンン-2、がんワクチン(例えば、シプロイセル-T)またはモノクローナル抗体(例えば、ベバシズマブ、アレムツズマブ、リツキシマブ、トラスツズマブなど)など)を含む1つまたは複数の他の抗がん剤との組合せで投与される。
【0102】
本発明の別の態様では対象組成物は、放射線療法または手術との組合せで投与される。放射線は、通常内部的に(放射性物資のがん部位付近への埋め込み)あるいは、フォトン(x線もしくはガンマ線)または粒子放射線を使う装置から外部的に送達される。組合せ療法が放射線治療をさらに含む場合、治療剤と放射線治療との組合せの同時作用から有益な効果が達成される限り放射線治療は任意の好適な時期に行われ得る。例えば適切な場合には、治療剤の投与から放射線治療が一時的に(恐らく数日または数週間)除かれる場合にも有益な効果は達成される。
【0103】
特定の好ましい実施形態では本発明の組成物は、放射線療法、手術または抗がん剤(これだけに限らないが、DNA損傷剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗微小管剤、EGFR阻害剤、HER2阻害剤、VEGFR2阻害剤、BRAF阻害剤、Bcr-Abl阻害剤、PDGFR阻害剤、ALK阻害剤、PLK阻害剤、MET阻害剤、エピジェネティック剤、HSP90阻害剤、PARP阻害剤、CHK阻害剤、アロマターゼ阻害剤、エストロゲン受容体アンタゴニストおよび、抗体標的化VEGF、HER2、EGFR、CD50、CD20、CD30、CD33などを含む)の1つまたは複数との組合せで投与される。
【0104】
特定の好ましい実施形態では本発明の組成物は、アバレリックス、アビラテロン酢酸塩、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アルトレタミン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、ベバシズマブ、ベキサロテン、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾンビ(bortezombi)、ブレンツキシマブベドチン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、クロミフェン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、ダサチニブ、リポソーマルダウノルビシン、デシタビン、デガレリクス、デニロイキンジフチトクス、デニロイキンジフチトクス、デノスマブ、ドセタキセル、ドキソルビシン、リポソーマルドキソルビシン、エピルビシン、エリブリンメシル酸塩、エルロチニブ、エストラムスチン、エトポシドリン酸塩、エベロリムス、エキセメスタン、フルダラビン、フルオロウラシル、ホテムスチン、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴセレリン酢酸塩、ヒストレリン酢酸塩、ヒドロキシウレア、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブメシル酸塩、インターフェロンアルファ2a、イピリムマブ、イクサベピロン、トシル酸ラパチニブ、レナリドマイド、レトロゾール、ロイコボリン、リュープロリド酢酸塩、レバミソール、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メトトレキサート、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ネララビン、ニロチニブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル粒子、パミドロン酸、パニツムマブ、ペグアスパルガーゼ、ペグインターフェロンアルファ-2b、ペメトレキセド二ナトリウム、ペントスタチン、ラロキシフェン、リツキシマブ、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブマレイン酸塩、タモキシフェン、テムシロリムス、テニポシド、サリドマイド、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラムスチン、バンデタニブ、ベムラフェニブ、ビノレルビン、ゾレドロン酸、放射線療法または手術の1つまたは複数との組合せで投与される。
【0105】
多種多様な投与方法が、本発明の組成物に関連して用いられ得る。本発明の組成物は、経口的に、非経口的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、頬に(transbuccally)、鼻腔内に、リポソーム的に、吸引を介して、経膣的に、眼内に(intraoccularly)、局所送達を介して(例えば、カテーテルもしくはステントによって)、皮下に、脂肪内に(intraadiposally)、関節内にまたは髄空内に投与または同時投与され得る。本発明による組成物は、徐放性製剤でも投与または同時投与されてもよい。組成物は、用いられる投与経路のために好適な方法で製剤されたガス状、液体、半流動体または固体形態であってよい。経口投与のために、好適な固体経口製剤は、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、ペレット剤、サシェ剤および発泡剤、散剤などを含む。好適な液体経口製剤は、液剤、懸濁剤、分散剤、乳剤、油剤などを含む。非経口投与のために、凍結乾燥散剤の再構成が典型的には用いられる。
【0106】
本発明は、腫瘍性疾患または免疫疾患の予防または治療のための方法をさらに提供する。一実施形態では本発明は、治療を必要とする対象に治療有効量の本発明の組成物を投与するステップを含む、対象における腫瘍性疾患または免疫疾患を治療する方法に関する。一実施形態では本発明は、腫瘍性疾患または免疫疾患を停止させるまたは減少させるための医薬の製造における本発明の組成物の使用をさらに提供する。
【0107】
腫瘍性疾患は、これだけに限らないが肺がん、頭頸部がん、中枢神経系がん、前立腺がん、精巣がん、直腸結腸がん、膵臓がん、肝臓がん、胃がん、胆道がん、食道がん、消化管間質性腫瘍、乳がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮がん、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、メラノーマ、基底細胞癌、扁平上皮癌、膀胱がん、腎臓がん、肉腫、中皮腫、胸腺腫、骨髄異形性症候群および骨髄増殖性疾患を含む。
【0108】
免疫抑制が多くの従来の化学療法剤の主な副作用の1つであることは十分周知である。例えば(低用量で)シクロホスファミドは、多発性硬化症、関節リウマチなどの免疫疾患を治療するためおよび移植片拒絶の抑制のために用いることができ(Emadi A ,et al, Nat Rev Clin Oncol. 2009年11月;6(ll):638〜47頁;Perini P ,et al. Neurol Sci. 2008年9月;29 Suppl 2:S233〜4頁)、骨髄移植「前処置(conditioning)」および「動員(mobilization)」レジメンにおいてならびに全身性エリトマトーデス(SLE)、微小変化症候群、重症関節リウマチ、ウェゲナー肉芽腫(商品名Cytoxanにて)、強皮症および多発性硬化症(商品名Revimmuneにて)などの難治性重症自己免疫状態の治療のためにも広く用いられる。追加的にHDACは、免疫疾患を治療するための有望な標的として近年出現した[Szyf M.Clin Rev Allergy Immunol. 2010年8月;39(l):62〜77頁]。したがって本発明の組成物が免疫疾患の治療のために用いられ得ることを推測することは困難ではない。
【0109】
好ましい実施形態では免疫疾患は、移植された臓器および組織の拒絶、移植片対宿主病、非自己免疫性炎症性疾患および自己免疫疾患からなる群から選択され、前記自己免疫疾患は、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、水疱性類天疱瘡、セリアック病、シャーガス病、慢性閉塞性肺疾患、チャーグ・ストラウス症候群、皮膚筋炎、クローン病、1型糖尿病、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、化膿性汗腺炎、特発性血小板減少性紫斑病、間質性膀胱炎、全身性エリテマトーデス、モルフェア、多発性硬化症、重症筋無力症、ナルコレプシー、神経性筋強直症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、統合失調症、強皮症、側頭動脈炎、血管炎、白斑およびウェゲナー肉芽腫からなる群から選択される。
【0110】
本発明が、本明細書に示し、記載する具体的な実施形態に限定されず、種々の変更および改変が特許請求の範囲に定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることは理解されるべきである。
【0111】
合成方法
本発明の化合物は、本分野において周知の任意のプロセスによって調製され得る。必要な出発材料は、有機化学の標準的手順によって得られ得る。本発明の化合物およびプロセスは、例示のみを意図し本発明の範囲を限定しない次の代表的合成スキームとの関連においてより良く理解される。開示の実施形態への種々の変更および改変は当業者に明らかであり、本発明の化学構造、置換基、誘導体、製剤および/または方法に関連するものを非限定的に含むそのような変更および改変は本発明の精神および添付の特許請求の範囲から逸脱することなくなされ得る。
【0113】
【化6】
の化合物は下の一般スキーム1に従って調製され得る。一般スキーム1中のX
1、X
2、Q、Zおよびmは上記本発明の概要に記載されているものと同じである。
【0115】
出発材料(1)、ニトロ-置換5〜10員環は中間体(2)を生じるように適切なカルボシキエステルとカップリングでき、次に例えばH
2,Pd/Cでアミノ置換中間体(3)に還元され得る。得られた中間体(3)は、オキシランと反応して容易に中間体(4)をもたらすことができ、塩化チオニルまたは五塩化リンなどの塩素化試薬との反応によって高収量で中間体(5)に転換され得る。最終的にNH
2OH中での中間体(5)のヒドロキシルアミノ化は標的化合物(6)をもたらし得る。
【0117】
【化8】
の化合物は、下の一般スキーム2に従って調製され得る。一般スキーム2中のX
1、X
2、Q、Zおよびmは上記、本発明の概要に記載されているものと同じである。
【0119】
出発材料(1)、置換2,4-ジニトロアニリンはN-アシル化中間体(2)を生じるように適切なアシル塩化物とカップリングされ得る。ヨードメタン、メチルトシラート、ジメチル硫酸などのアルキル化剤でのN-アシル化中間体(2)のアルキル化は、ジニトロ芳香族中間体(3)をもたらす。例えばH
2,Pd/Cでの中間体(3)の還元に続く酸での脱水はベンゾイミダゾール中間体(4)を形成する。中間体(4)は、オキシランと反応して容易に中間体(5)をもたらすことができ、塩化チオニルまたは五塩化リンなどの塩素化試薬との反応によって高収量で中間体(6)に転換され得る。最終的にNH
2OH中での中間体(6)のヒドロキシルアミノ化は式(II)によって表される標的化合物をもたらし得る。
【0121】
【化10】
の化合物は、下の一般スキーム3に従って調製され得る。
【0123】
出発材料(1)、2,4-ジニトロアニリンはN-アシル化中間体(2)を生じるように適切なアシル塩化物とカップリングされ得る。ジメチル硫酸などのアルキル化剤でのN-アシル化中間体(2)のアルキル化は、ジニトロ芳香族中間体(3)をもたらす。例えばH
2,Pd/Cでのジニトロ芳香族中間体(3)の還元に続く酸での脱水はベンゾイミダゾール中間体(4)を形成する。中間体(4)は、オキシランと反応して容易に中間体(5)をもたらすことができ、塩化チオニルなどの塩素化試薬との反応によって高収量で中間体(6)に転換され得る。最終的にNH
2OH中での中間体(6)のヒドロキシルアミノ化は式(III)の標的化合物をもたらし得る。
【0125】
【化12】
の化合物は、下の一般スキーム4に従って調製され得る。
【0127】
出発材料(1)、2,4-ジニトロアニリンはN-アシル化中間体(2)を生じるように適切なアシル塩化物とカップリングされ得る。ジメチル硫酸などのアルキル化剤でのN-アシル化中間体(2)のアルキル化は、ジニトロ芳香族中間体(3)をもたらす。例えばH
2,Pd/Cでのジニトロ芳香族中間体(3)の還元に続く酸での脱水はベンゾイミダゾール中間体(4)を形成する。中間体(4)は、オキシランと反応して容易に中間体(5)をもたらすことができ、塩化チオニルなどの塩素化試薬との反応によって高収量で中間体(6)に転換され得る。濃HCl中での中間体(6)の加水分解はカルボン酸中間体(7)をもたらし、O-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)ヒドロキシルアミンとカップリングして中間体(8)をもたらすことができる。最終的に酸での中間体(8)の加水分解は式(III)の標的化合物を生じる。
【0129】
【化14】
の化合物は、下の一般スキーム5に従って調製され得る。
【0131】
出発材料(1)、l-クロロ-2,4-ジニトロベンゼンは中間体(2)を生じるようにアルキルアミンとカップリングでき、中間体(3)に収量を伴って還元され得る。中間体(3)は中間体(4)を形成するようにアシル化でき、ベンゾイミダゾール中間体(5)をもたらすように酸で脱水反応を受ける。中間体(5)は、次に例えばH
2 Pd/Cでアミノ-置換中間体(6)へ還元され得る。得られた中間体(6)はオキシランと反応して容易に中間体(7)をもたらし、塩化チオニルまたは五塩化リンなどの塩素化試薬との反応によって高収量で中間体(8)に転換され得る。最終的にNH
2OH中での中間体(8)のヒドロキシルアミノ化は式(III)の標的化合物をもたらし得る。
【0133】
【化16】
の化合物は、下の一般スキーム6に従って調製され得る。
【0135】
出発材料(1)、l-クロロ-2,4-ジニトロベンゼンは中間体(2)を生じるようにアルキルアミンとカップリングでき、中間体(3)に収量を伴って還元され得る。中間体(3)は、中間体(4)を形成するようにアシル化でき、ベンゾイミダゾール中間体(5)もたらすように酸で脱水反応を受ける。中間体(5)は、次に例えばH
2 Pd/Cでアミノ-置換中間体(6)へ還元され得る。得られた中間体(6)は中間体(7)を容易にもたらすようにオキシランと反応でき、塩化チオニルまたは五塩化リンなどの塩素化試薬との反応によって高収量で中間体(8)に転換され得る。濃HCl中での中間体(8)の加水分解はカルボン酸中間体(9)をもたらし、中間体(10)を提供するようにO-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)ヒドロキシルアミンとカップリングされ得る。最終的に酸での中間体(10)の加水分解は式(III)の標的化合物をもたらす。
【0136】
(実施例)
(実施例1)
式(III)の化合物の製剤の調製(NL-101第一世代製剤とも称される):
(1)溶液1:DI水中に50%(v/v)酢酸溶液を調製、室温保存;
(2)溶液2:DI水中に0.20%(w/v)NaOH溶液を調製、室温保存;
(3)溶液3:溶液1(すなわち、50%酢酸)中に式(III)の化合物を200mg/mlに調製:超音波処理10〜30秒間は化合物を溶解するために非常に役立つ;
(4)最終的に、溶液2の970uLを溶液3の30uLに添加し、式(III)の化合物の6mg/ml溶液とする。
【0137】
(実施例2)
ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンでの式(III)の化合物の組成物の調製(HPβCD-ベースNL-101製剤とも称される):
(1)溶液1:DI水中に50%(v/v)酢酸溶液を調製、室温保存;
(2)溶液2:DI水各80mLをヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン各20グラムに添加することによって20%(w/v)ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンを調製、ボルテックス5分間、室温保存;
(3)溶液3:DI水中に5%(w/v)NaHCO
3溶液を調製、室温保存;NaHCO
3をpH調整剤として用いる;
(4)溶液4:溶液1(すなわち、50%酢酸)中に式(III)の化合物を200mg/mlに調製:超音波処理10〜30秒間は化合物を溶解するために非常に役立つ;
(5)溶液5:溶液2と溶液3との1:1混合物;
(6)溶液4の30ulを溶液5の970uLに添加し、十分に撹拌し、10%ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、1.5%酢酸、2.5%NaHCO
3を含むpH6〜7の式(III)の化合物の6mg/ml溶液とする;
(7)溶液のろ過:ステップ(6)の式(III)の化合物の製剤を回収率>98%で0.2um滅菌フィルターを通してろ過した;
(8)凍結乾燥物の調製:ステップ(7)の製剤を散剤の凍結乾燥物を形成するために凍結乾燥した。得られた凍結乾燥製剤は次の温度-20℃、4℃および室温で少なくとも2週間化学的に安定であった。それは分解することなく4°Cで、2週間を超えて保存され得る;
(9)希釈試験:ステップ(7)の製剤をDI水で希釈し(10倍)、それは化学的に安定であり、溶液中で沈殿しないままであった(>12時間)。
【0138】
(実施例3)
スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンでの式(III)の化合物の組成物の調製(Captisol(商標)ベースNL-101製剤とも称される):
(1)溶液1:DI水中に50%(v/v)酢酸溶液を調製、室温保存;
(2)溶液2:DI水各80mLをスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン各20グラムに添加することによって20%(w/v)スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンを調製、ボルテックス5分間、室温保存;
(3)溶液3:DI水中に5%(w/v)NaHCO
3溶液を調製、室温保存;ここではNaHCO
3をpH調整剤として用いる;
(4)溶液4:溶液1(すなわち、50%酢酸)中に式(III)の化合物を200mg/mlに調製:超音波処理10〜30秒間は化合物を溶解するために非常に役立つ;
(5)溶液5:溶液2と溶液3との1:1混合物;
(6)溶液4の30ulを溶液5の970uLに添加し、十分に撹拌し、10%スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、1.5%酢酸、2.5%NaHCO
3を含みpH6〜7の式(III)の化合物の6mg/ml溶液とする;
(7)溶液のろ過:ステップ(6)の式(III)の化合物の製剤を回収率>98%で0.2um滅菌フィルターを通してろ過した;
(8)凍結乾燥物の調製:ステップ(7)の製剤を散剤の凍結乾燥物を形成するために凍結乾燥した。得られた凍結乾燥製剤は次の温度-20℃、4℃および室温で少なくとも2週間化学的に安定であった。それは分解することなく4°Cで、2週間を超えて保存され得る;
(9)希釈試験:ステップ(7)の製剤をDI水で希釈し(10倍)、それは化学的に安定であり溶液中で沈殿しないままであった(>12時間)。
【0139】
(実施例4)
代替的pH調整剤としてのTris:
Tris(CAS#:77-86-1)は、pH緩衝溶液の構成成分として幅広く用いられている。TrisはいくつかのFDA認可薬剤において賦形剤として用いられている。それは8.30のpKaを有する。Tris-酢酸緩衝液系は、7〜8のpH範囲を有し、したがってTrisはNL-101製剤のための理想的なpH調整剤である可能性がある。
【0140】
本発明者らは、6mg/ml NL-101、15% HPBCD、250mM酢酸、333mM Trisを含む、pH=7.4+/-0.2 Tris含有HPBCDベースNL-101製剤の開発に成功した。製剤は次の通り調製した:
溶液1:50%酢酸中に200mg/ml NL-101を調製;
溶液2:1M Trisを調製、次いで0.6666Mに希釈:(Tris Base、F.W.121.14g/mol)
溶液3:100mMナトリウム酢酸緩衝液(pH=5.4)中に30%(w/v)HPBCDを調製;
溶液4:溶液2と溶液3との1:1混合物
最終溶液:溶液4の970ulを溶液1の30uLに添加し、十分に撹拌し、6mg/ml NL-101、15%HPBCD、250mM酢酸、333mM Tris、pH=7.4+/-0.2とする
【0141】
必然的にTris-含有製剤が理論的緩衝範囲7〜8を有するTris-酢酸緩衝液系であることから、pH調整剤としてのNaHCO3と比較してpH7〜8の範囲内でTris-含有HPBCD-ベースNL-101製剤のpH値を正確に制御することは容易である。Tris含有HPBCDベースNL-101製剤の中性pH値は、将来的な臨床開発のための明らかな有利点である。
【0142】
(実施例5)
NL-101第一世代製剤でのマウスにおける単回投与IV毒性試験:
NL-101第一世代製剤の単回投与(20、40、60、80または100mg/kg)をマウスにゆっくり投与し(iv、注射時間>30秒間)、NL-101の種々の用量での毒性を評価するために体重変化を14日間にわたって測定した。本発明者らは60mg/kgまでのNL-101が顕著な体重変化を生じなかったことを見出した。
【0143】
しかし本発明者らはこの第一世代製剤が、低pH値、i.v.注射後の沈殿可能性および一連の副作用(iv注射後のマウス尾の損傷など)などの多数の不利点を有することを見出した。より深刻には本発明者らは、NL-101の急速iv注射(例えば、注射時間<5秒間)がマウスの急死を生じる場合があることを時に観察した。
【0144】
(実施例6)
HPβCD-ベースNL-101製剤でのマウスにおける単回投与IV毒性研究:
10%HPβCD中のHPβCD-ベースNL-101製剤の単回投与(20、40、60、80、100または150mg/kg)をマウスに投与(iv)し、NL-101の種々の用量での毒性を評価するために体重変化を14日間にわたって測定した。本発明者らは60mg/kgまでのNL-101が顕著な体重変化を生じなかったことを見出した。
【0145】
本発明者らはHPβCD-ベースNL-101製剤がin vivoで心毒性を顕著に低減できることを驚くべきことに見出している。マウスは、150mg/kgの高いNL-101の急速注射(t<5秒間)においてさえ生存できる。より重要なことに本発明者らは、60mg/kgの治療有効用量においてマウスに心呼吸系ストレスを観察しなかった。追加的に本製剤は、中性pH、清澄および安定な注射溶液、iv注射後に沈殿問題が無いおよびマウス尾がiv注射後に傷害を受けないなどの多数の他の有利点も有する。したがってHPβCD-ベースNL-101製剤は、NL-101 MTD、PK、in vivo有効性研究およびIND申請研究(IND enabling study)において用いられる理想的な製剤である。本発明者らは、将来的なヒト臨床試験のためにHPβCD-ベースNL-101製剤を積極的に開発している。
【0146】
(実施例7)
Captisol(商標)-ベースNL-101製剤でのマウスにおける単回投与IV毒性試験:
10%Captisol(商標)中のCaptisol(商標)-ベースNL-101製剤の単回投与(20、40、60、80、100または150mg/kg)をマウスに投与(iv)し、NL-101の種々の用量での毒性を評価するために体重変化を14日間にわたって測定した。本発明者らは60mg/kgまでのNL-101が顕著な体重変化を生じなかったことを見出した。
【0147】
本発明者らはCaptisol(商標)-ベースNL-101製剤もin vivoで心毒性を顕著に低減できることを喜ぶべきことに見出している。マウスは、150mg/kgの高いNL-101の急速注射(t<5秒間)においてさえ生存できる。より重要なことに本発明者らは、60mg/kgの治療有効用量においてマウスに心呼吸系ストレスを観察しなかった。追加的に本製剤は、中性pH、清澄および安定な注射溶液、iv注射後に沈殿問題が無いおよびマウス尾がiv注射後に傷害を受けないなどの多数の他の有利点も有する。したがってCaptisol(商標)-ベースNL-101製剤もNL-101 MTD、PK、in vivo有効性試験およびIND申請試験ならびに将来的なヒト臨床試験において用いられる理想的な製剤である。
【0148】
(実施例8)
HPβCD-ベースNL-101製剤でのマウスにおける複数回投与IV毒性試験:
10%HPβCD中のHPβCD-ベースNL-101製剤(60mg/kg)の複数回投与をマウスに投与(iv)し、NL-101の種々の用量での毒性を評価するために体重変化を測定した。本発明者らは、マウスがNL-101の60mg/kgの複数回投与を顕著な体重変化を伴わずに十分に耐えられることを見出した。例えばマウスは、1、4、8、11、18、25日目に60mg/kgを投与され得る。別の実行可能な投与計画は1、2、8、15、22、29日目に60mg/kgである。
【0149】
(実施例9)
Captisol(商標)-ベースNL-101製剤でのマウスにおける複数回投与IV毒性試験:
10%Captisol(商標)中のCaptisol(商標)-ベースNL-101製剤(60mg/kg)の複数回投与をマウスに投与(iv)し、NL-101の種々の用量での毒性を評価するために体重変化を測定した。本発明者らは、マウスがNL-101の60mg/kgの複数回投与を顕著な体重変化を伴わずに十分に耐えられることを見出した。例えばマウスは、1、4、8、11、18、25日目に60mg/kgを投与され得る。別の実行可能な投与計画は1、2、8、15、22、29日目に60mg/kgである。
【0150】
(実施例10)
ヒト非小細胞肺がんA549異種移植モデルでのHPβCD-ベースNL-101製剤の有効性
動物:balb/cマウス、5から6週齢を5匹ずつエアフィルターカバー付きケージ、照明(12明/暗周期、照明6H00)および温度(22±l℃)の管理された環境下で飼った。動物の全ての操作は滅菌ラミナーフード下で実施した。動物は、Purina mouse chow(Pro Lab PMH 4018、Agway,Syracuse,N.Y.の商標)および水を自由摂取させた。本動物研究は、「実験動物の管理および使用に関するガイドライン(Guidelines for Care and Use of Experimental Animals)」に従って実行した。
【0151】
腫瘍細胞培養:ヒトNSCLC A549細胞を適切な培養培地中で培養した。細胞を腫瘍移植の準備のために対数増殖期に回収した。
【0152】
腫瘍移植:ヒト腫瘍細胞(細胞2.5から5.0xl0
6個)を30%Matrigelを含有する培地0.2mL中で1から2cm長20ゲージ針を通してbalb/c nu/nuマウスの側腹部2箇所の皮下に移植した。
【0153】
処置:腫瘍細胞移植2から3週間後、s.c.固形腫瘍を発症した動物を選択し、腫瘍サイズ(100-200mm
3)についていくつかの均一な群(群または用量あたり動物n=6)に分割した。動物に次の製剤60mg/kgを1、4、8、11、18、25日目にi.v.投与した。
1.ビヒクル群:10% HPβCD、1.5%酢酸、2.5%NaHCO
3;
2.NL-101群:6mg/ml、10%HPβCD、1.5%酢酸、2.5% NaHCO
3;
3.ベンダムスチン群:6mg/ml、10% HPβCD、1.5%酢酸、2.5%NaHCO
3;
【0154】
有効性評価:皮下固形腫瘍測定を初回注射の日およびその後4日間隔で実施した。各腫瘍の2つの最大垂直径をキャリパーで測定し、腫瘍サイズを式:
TV=LxW/2(式中、TV:腫瘍容積;L:長さ;W:幅)を用いて推定した。動物の体重も記録した。結果を下の表1に示す。
【0156】
上記データは、HPβCD-ベースNL-101組成物が顕著な全般的細胞毒性および心毒性の徴候を伴わずに、A549異種移植モデルにおいて優れたin vivo有効性を有することを示している。
【0157】
広範囲評価後にHPβCD-ベースNL-101製剤をIND申請研究のために選択した。
【0158】
本発明の態様
[態様1]
(a)環状多糖、および(b)式(I)
【化18】
(式中
mは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16であり;
Zは欠失、C(R
aR
b)、O、S、C(O)、N(R
a)、SO
2、OC(O)、C(O)O、OSO
2、S(O
2)O、C(O)S、SC(O)、C(O)C(O)、C(O)N(R
a)、N(R
a)C(O)、S(O
2)N(R
a)、N(R
a)S(O
2)、OC(O)N(R
a)、N(R
a)C(O)O、N(R
a)C(O)SまたはN(R
a)C(O)N(R
b)であり、式中各R
aおよびR
bは独立にH、アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり;
X
1およびX
2は独立にハロまたはOSO
2R
cであり、式中R
cはアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり;
Qはシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリールまたはヘテロアリールであり、それぞれは独立にアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、ニトロ、オキソ、-C=NH、シアノ、アルキル-R
d、OR
d、OC(O)R
d、OC(O)OR
d、OC(O)SR
d、SR
d、C(O)R
d、C(O)OR
d、C(O)SR
d、C(O)NR
eR
f、SOR
d、SO
2R
d、NR
eR
fまたはN(R
e)C(O)R
fで場合により置換されており、式中各R
d、R
eおよびR
fは独立にH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、シアノ、アミン、ニトロ、ヒドロキシまたはアルコキシである)
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
[態様2]
X
1およびX
2が独立にハロであり;Zが欠失、CH
2、O、CO、NH、SO
2、OC(O)、C(O)O、C(O)S、NHC(O)、C(O)NH、OC(O)NH、NHC(O)OまたはNHC(O)Sであり;mが5、6、7または8であり;Qが9〜10員アリールまたはヘテロアリールである、態様1に記載の組成物。
[態様3]
前記化合物が式(II)
【化19】
によって表され、
式中R
1およびR
2は独立にH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロ、-C=NH、アミン、シアノ、ヒドロキシまたはアルコキシである、態様2に記載の組成物。
[態様4]
前記化合物が式(III)
【化20】
によって表される、態様3に記載の組成物。
[態様5]
前記薬学的に許容される塩が塩酸塩、臭化水素酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、コハク酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、硝酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、炭酸塩、水酸化ナトリウム塩、水酸化カルシウム塩、水酸化カリウム塩、トロメタミン(Tris)塩またはこれらの混合物である、態様1に記載の組成物。
[態様6]
前記薬学的に許容される塩が塩酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩またはこれらの混合物である、態様5に記載の組成物。
[態様7]
前記薬学的に許容される塩が酢酸塩である、態様6に記載の組成物。
[態様8]
前記環状多糖がシクロデキストリンである、態様1に記載の組成物。
[態様9]
前記シクロデキストリンがα-シクロデキストリンまたはその誘導体、β-シクロデキストリンまたはその誘導体およびγ-シクロデキストリンまたはその誘導体からなる群から選択される、態様8に記載の組成物。
[態様10]
前記シクロデキストリンがβ-シクロデキストリンまたはその誘導体である、態様9に記載の組成物。
[態様11]
前記β-シクロデキストリンがヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンである、態様10に記載の組成物。
[態様12]
pH調整剤をさらに含有する、態様1に記載の組成物。
[態様13]
前記pH調整剤が炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、トロメタミン(Tris)またはこれらの混合物である、態様12に記載の組成物。
[態様14]
前記pH調整剤が炭酸水素ナトリウム、トロメタミン(Tris)またはこれらの混合物である、態様13に記載の組成物。
[態様15]
(a)シクロデキストリン、(b)式(III)
【化21】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、および(c)pH調整剤を含む組成物。
[態様16]
前記シクロデキストリンがβ-シクロデキストリンまたはその誘導体である、態様15に記載の組成物。
[態様17]
前記β-シクロデキストリンがヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、またはスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンである、態様15に記載の組成物。
[態様18]
前記薬学的に許容される塩が塩酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩またはこれらの混合物である、態様15に記載の組成物。
[態様19]
前記薬学的に許容される塩が酢酸塩である、態様15に記載の組成物。
[態様20]
前記pH調整剤が炭酸水素塩、炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、トロメタミンまたはこれらの混合物である、態様15に記載の組成物。
[態様21]
前記pH調整剤が炭酸水素ナトリウムである、態様15に記載の組成物。
[態様22]
前記β-シクロデキストリンがヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンであり、前記薬学的に許容される塩が酢酸塩であり、前記pH調整剤が炭酸水素ナトリウムである、態様15に記載の組成物。
[態様23]
6.0から9.0のpH範囲を有する、態様15に記載の組成物。
[態様24]
pH値が7.0から8.0の範囲である、態様15に記載の組成物。
[態様25]
前記シクロデキストリンが0.5%重量/体積から40%重量/体積までの濃度で存在する、態様15に記載の組成物。
[態様26]
前記シクロデキストリンが2.5%重量/体積から20%重量/体積までの濃度で存在する、態様15に記載の組成物。
[態様27]
式(III)によって表される化合物5mgから500mgを含む、態様15に記載の医薬組成物を含む医薬剤形。
[態様28]
バイアルまたは他の薬学的に許容される容器に包装されている、態様15に記載の組成物の凍結乾燥調製物。
[態様29]
それを必要とする対象に有効量の態様15に記載の組成物を単独でまたは他の療法との組合せで投与するステップを含む、腫瘍性疾患または免疫疾患の治療方法。
[態様30]
前記腫瘍性疾患が肺がん、頭頸部がん、中枢神経系がん、前立腺がん、精巣がん、直腸結腸がん、膵臓がん、肝臓がん、胃がん、胆道がん、食道がん、消化管間質性腫瘍、乳がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮がん、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、メラノーマ、基底細胞癌、扁平上皮癌、膀胱がん、腎臓がん、肉腫、中皮腫、胸腺腫、骨髄異形性症候群または骨髄増殖性疾患である、態様29に記載の治療方法。
[態様31]
前記腫瘍性疾患が白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、肺がん、乳がん、骨髄異形性症候群、骨髄増殖性疾患、膵臓がん、肝臓がん、胃がん、食道がん、消化管間質性腫瘍、子宮頸がん、卵巣がん、子宮がんまたはメラノーマである、態様29に記載の治療方法。
[態様32]
式(II)
【化22】
(式中
各R
1およびR
2が独立にH、メチル以外のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロ、-C=NH、アミン、シアノ、ヒドロキシまたはアルコキシである)
の化合物またはその薬学的に許容される塩。