(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557390
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】角度係止耐衝撃システム
(51)【国際特許分類】
G04B 31/04 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
G04B31/04
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-179007(P2018-179007)
(22)【出願日】2018年9月25日
(65)【公開番号】特開2019-70643(P2019-70643A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2018年9月25日
(31)【優先権主張番号】17195675.8
(32)【優先日】2017年10月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・メリノ
(72)【発明者】
【氏名】ティエリ・コルニュ
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン・ヴィラール
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−167128(JP,A)
【文献】
スイス国特許出願公開第708090(CH,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小機械式デバイス、特に計時器ムーブメントの車軸(38)のための緩衝器デバイス(1)であって、前記緩衝器デバイス(1)は、支持体(2)を備え、前記支持体(2)は、基部(6)に底部がない回転軸(4)を含み、縁(8)によって前記回転軸(4)の周辺部で画定し、前記縁(8)は、前記回転軸(4)の内側に、内壁(12)によって延在し、前記回転軸(4)の外側に、外壁(14)によって延在する上面(10)を備え、前記回転軸(4)の前記縁(8)は、枢動モジュール(18)を挿入する筐体(16)を画定し、前記枢動モジュール(18)は、穴開き石(30)を挿入する中心オリフィス(22)を有する嵌込み部(20)を備え、前記穴開き石(30)は、形状及び大きさが前記中心オリフィス(22)の形状及び大きさと対応し、受け石(34)は、前記嵌込み部(20)上で前記穴開き石(30)の上部に置かれ、前記緩衝器デバイス(1)は、前記枢動モジュール(18)に対し弾性歪みを加えるように前記支持体(2)と前記枢動モジュール(18)との間に配置したばねリング(42)も備え、前記緩衝器デバイス(1)は、前記支持体(2)と前記枢動モジュール(18)との間に前記ばねリング(42)を組み付ける差込みシステム(46)を備え、前記差込みシステム(46)は、前記縁(8)の前記内壁(12)から前記支持体(2)の内側に向かって延在する周辺肩部(48)を備え、前記周辺肩部(48)の下に、保持領域を画定する円形溝(50)を形成し、前記ばねリング(42)は、外側周辺部上に、前記ばねリング(42)に、前記周辺肩部(48)の内径を超える外径を与える少なくとも1つの留め部(52)、前記周辺肩部(48)内に設けた前記円形溝(50)に通じる少なくとも1つの第1の切欠き(54)を備え、前記第1の切欠きは、前記ばねリング(42)の外径に少なくとも等しい第1の直径を画定し、これにより、前記周辺肩部(48)の下で、前記留め部(52)を前記円形溝(50)の内側で摺動可能にするために、対応する前記第1の切欠き(54)内に前記留め部(52)が係合するように前記ばねリング(42)を合わせ、次に、前記ばねリング(42)を枢動させるだけでよい、緩衝器デバイス(1)において、少なくとも1つの第2の切欠き(62)は、前記周辺肩部(48)内に機械加工し、前記第2の切欠き(62)は、前記ばねリング(42)の外径よりも小さい第2の直径を画定し、これにより、前記留め部(52)が前記第2の切欠き内に噛み合い、前記ばねリング(42)の角度枢動係止を保証することを特徴とする、緩衝器デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小機械式デバイス、特に、排他的ではないが計時器ムーブメントの車軸のための緩衝器デバイスに関し、緩衝器デバイスは、耐衝撃システムとしても公知である。緩衝器デバイスは、支持体を備え、支持体の中に、枢動システムを受けることを目的とする筐体が設けられ、所定の間隙がある状態で、軸の枢動柄部を保持するようにする。緩衝器デバイスは、枢動システムに対して少なくとも1つの軸方向弾性戻り力を加えるように構成した弾性手段を更に備える。
【0002】
本発明の技術分野は、微細機構の技術分野である。
【背景技術】
【0003】
本発明は、微小機械式機構、特に、機械式又は電気機械計時器ムーブメント内に配置する軸のための緩衝器デバイスに関する。「緩衝器軸受ブロック」又は「耐衝撃システム」としても公知であるそのような緩衝器デバイスは、機械式時計製造業者にとって長年の間公知である。こうした緩衝器デバイスは、軸が、衝撃、特に横方向の衝撃に起因するエネルギーを吸収可能にすることを目的とし、これは、静止位置から軸を瞬間的に移動させ、その後、弾性戻り力の作用下、この静止位置に戻すことによって可能である。微小機械式機構全般、及び特に計時器ムーブメントにおいて、軸の大部分は、そのような微小機械式機構又は計時器ムーブメントが延在する平面に対して垂直に延在することは理解されよう。この場合、計時器ムーブメントは、本質的に、2つの異なる種類の衝撃:時計が、実質的に表面を平らにして落下した場合の軸方向の衝撃;又は時計が、中板を側面にして落下した場合の横方向の衝撃のいずれかを受けることがある。両方の種類の衝撃のうち、横方向の衝撃が最も厄介である。実際、軸方向の衝撃の場合、この衝撃で生じる力は、実質的に時計の裏蓋に直交して加えられるため、計時器ムーブメントの軸が延在する方向にほぼ平行である。したがって、こうした軸が分離又は破断する危険性は、比較的限られている。一方で、横方向の衝撃の場合、衝撃で生じる力は、軸にほぼ直交する方向に沿って加えられ、このため、軸が筐体から外れる及び/又は破断する危険性が高い。
【0004】
したがって、この問題を解決するために、機械式時計及び他の微小機械式機構の製造業者は、耐衝撃デバイスとしても公知である緩衝器デバイスを提案している。手短に言うと、そのような緩衝器デバイスは、枢動柄部で終端する軸を通過可能にするために、基部に底部がない支持体を備える。支持体は、全体が環形状の部品である嵌込み部を受け入れ、嵌込み部は、段階的に、軸の枢動柄部が横断する状態で穴開き石を保持し、次に、受け石を保持する。嵌込み部、穴開き石及び受け石により形成した組立体は、支持体上に取り外し可能に組み付けたばね要素により、支持体内に弾性的に保持され、ばね要素は、受け石に対し弾性押圧力を加える。そのような緩衝器デバイスは、特に、Incabloc(登録商標)のブランドで市販されている。ばね要素について、ばね要素は、特に、真鍮で作製することができるか、又は実際には、Phynox(登録商標)KLのブランドで市販されているコバルトクロムオーステナイト系グレード等のばね鋼から作製することができ、従来、ブランキング技法を使用して得られる。
【0005】
軸方向の衝撃の際、穴開き石、受け石及び軸は、ばね要素の弾性戻り力に反して時計の底部に実質的に直交して移動し、ばね要素は、全てのこの機器を静止位置に戻す。
【0006】
横方向の衝撃の際、軸は、衝撃を受けて調心位置から外れ、支持体の基部に接して当接し、これにより、穴開き石を中心からずらし、その後、嵌込み部及び受け石を中心からずらす。この場合も同様に、ばね要素は全ての要素を平衡位置に戻す。
【0007】
本特許出願に添付の
図1及び
図2は、市販の計時器で現在使用されている緩衝器デバイスを概略的に示す。この緩衝器デバイスは、本出願人のために第EP16160124.0号で記録されている欧州特許出願に詳細に記載されている。
【0008】
以下、全体参照番号1で示す緩衝器デバイス又は耐衝撃システムは、特に、板又は受け等、計時器ムーブメントの要素内に組み付けることができる。この緩衝器デバイス1は、特に、回転軸4の形態を呈する支持体2を備え、支持体2は、基部6に底部がなく、第1の縁8による周辺部で画定される。回転軸4及び第1の縁8は、単一部品から作製されるか、又は実際には、個別の部品を互いに組み付けて作製されることに留意されたい。
【0009】
第1の縁8は、回転軸4の基部6の反対の側に、上面10を備え、上面10は、回転軸4の内側で内壁12によって延在し、回転軸の外側で外壁14によって延在する。
【0010】
第1の縁8は、回転軸4と共に、枢動モジュール18を挿入する筐体16を画定する。枢動モジュール18は、嵌込み部20、即ち、円形中央オリフィス22及び第2の縁24を備える部品を備え、第2の縁24は、側方外壁26及び側方内壁28によって画定される。円形中央オリフィス22には、穴開き石30が挿入され、穴開き石30の直径は、円形中央オリフィス22の直径に対応する。嵌込み部20の側方内壁28に関して、受け石34を上に置く肩部32を備える。
【0011】
これにより配置される枢動モジュール18は、支持体2の筐体16内に置かれ、次に、これにより得られる組立体は、例えば、計時器板のオリフィス、又は計時器ムーブメントの受けの1つに挿入される。枢動モジュール18は、軸38の枢動柄部36と係合するように構成する。
【0012】
緩衝器デバイス1は、弾性手段40を更に備え、弾性手段40は、枢動モジュール18との協働を想定し、衝撃を吸収し、衝撃により生じた歪みが後退する際に枢動モジュール18を静止位置に戻すようにする。これらの弾性手段40は、支持体2に取り付けられ、好ましくは枢動モジュール18とも接触する。
【0013】
単に例として示すにすぎない一実施形態では、弾性手段40は、平坦型ばねリング42の形態を呈し、即ち、条片又はブレードにブランキングしたものであり、その幅は、実質的に厚さよりも大きい。このばねリング42は、金属製であり、点Cを中心とする円形状である。
【0014】
図1及び
図2を注視するとわかるように、ばねリング42は、例えば、このばねリング42の中心Cに向けて径方向に延在する3つの均等に離間した腕部44を備える。これらの3つの腕部44は、ばねリング42が、支持体2の筐体16内の枢動モジュール18を押圧することを可能にする。
【0015】
ばねリング42を支持体2上に組み付けるために、差込みシステム46を使用する。差込みシステム46は、周辺肩部48を備え、周辺肩部48は、支持体2の第1の縁8からこの支持体2の中心まで延在する。更に、円形溝50は、周辺肩部48の下で、第1の縁8の内壁12内に形成され、保持領域を画定する。
【0016】
ばねリング42は、差込みシステム46と係合するために、ばねリング42の周辺部上に、3つの均等に離間する留め部52を備え、留め部52は、このばねリング42の中心Cから離れて径方向に延在する。図面からわかるように、3つの留め部52のそれぞれは、ばねリング42の2つの連続する腕部44の間に配置されている。意図的に、3つの留め部52は、ばねリング42に、周辺肩部48の内径を超える外径をもたらす。したがって、支持体2上へのばねリング42の組付けを可能にするために、円形溝50に開口する3つの第1の切欠き54を周辺肩部48内に設ける。以後、ばねリング42を支持体2上に組み付けるために、周辺肩部48の下で、留め部52を円形溝50内部で摺動可能にするため、対応する3つの第1の切欠き54内に3つの留め部52が係合するように3つの留め部52を合わせ、次に、3つの留め部52を枢動させるだけでよい。
【0017】
切欠き54は、典型的には、円弧形状部分55が外に出るような周辺肩部48の形成作業によって形成される。円弧形状部分55の端部のそれぞれにおいて、形成作業の間、材料を局所的に押し戻し、これにより、これら円弧形状部分55の上部に中空57a、及び円弧形状部分55の下に突起57bを形成する。これらの突起57bは、ばねリング52を円形溝50に挿入する際、周辺肩部48の円弧形状部分55の下にばねリング52を保持するのに役立つ。
【0018】
ばねリング42は、枢動モジュール18の筐体16内に枢動モジュール18を置くことを目的とするステップの後に組み付けられることに留意されたい。ばねリング42を嵌合する際、枢動モジュール18は、このばねリング42に対し、このばねリング42を押し戻す状態にする力を加える。この歪み作用下、ばねリング42は、弾性変形した状態になるが、円形溝50に挿入した留め部52の存在のために、筐体16からは駆動されず、機械的歪みを吸収し、ばねリング42の動きに対抗する。更に、留め部52が、ばねリング42の受け領域を画定する際、これらの留め部52の存在及び留め部52によって吸収される機械的歪みは、ばねリング42の挙動に影響を及ぼさない。したがって、ばねリング42の挙動は、ばねリング42を支持体2上に組み付けているときに変更されない。
【0019】
緩衝器デバイスは、その名前が示唆するように、例えば計時器ムーブメント内に収容した微小機械の軸が、破断することなく、衝撃により生じたエネルギー、特に横方向の衝撃を吸収することを可能にし、衝撃の作用下、軸が静止位置に弾性的に戻る前に前記軸を瞬間的に移動可能にすることを意図する。それにもかかわらず、加えられる衝撃の強度及び加えられる衝撃に沿った方向に従って、ばねリング42自体が枢動する可能性がある。このことは、ばねリング42に本当に起こることがあり、3つの留め部52を、対応する3つの第1の切欠き54内に合わせているシナリオで見られる。そのようなシナリオでは、ばねリング42は、支持体2から分離することがある。この場合、軸38は、緩衝器デバイス1によってもはや固着されず、必然的に、この緩衝器デバイス1を取り付けている機械式デバイス、例えば計時器の損傷をもたらす。そのような危険性は、緩衝器デバイスは、特に時計製造分野において、大部分が、市場の高級品領域に属する時計に取り付けられていることを考えると、更に許容しがたい。
【0020】
この問題を改善するために、上述の特許出願EP16160124.0において、2つの連続する切欠き54の間に位置する領域において、周辺肩部48を座ぐりすることが既に提案されている。座ぐりという用語は、回転ブレードにより材料を除去することによって周辺肩部48の底面を矯正する作用を示す。座ぐり作用により、周辺肩部48の第3の縁56の厚さを部分的に低減することが可能であり、2つの連続する切欠き54の間に、留め部52を中に収容する座ぐり穴58をもたらす。
【0021】
上記の解決策は、十分に申し分のないものではないことがわかっている。まず、留め部52を中に収容する間隙58は、深さが不十分であり、周辺肩部の周辺縁は、高さが不十分であるため、衝撃の際、特に横方向の衝撃の際、ばねリング42の申し分ない角度枢動係止を保証できないことがわかっている。更に、切削カッタ、通常はT型切削カッタを使用する間隙58の機械加工は、非常に時間がかかり、冗長で、成果物が予測不可能であることがわかっている。機械加工作業の間、特に、周辺肩部48の内径部を切断しないように注意する必要があった。T切削カッタの送り速度は遅く、切削器具内に振動が発生した。最後に、切削作業にあらゆる注意を払ったにもかかわらず、バリが座ぐり穴58内に残ることがまれではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】EP16160124.0
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、緩衝器デバイスを提案することによって、上述の問題及び他の問題を解決することであり、軸方向及び横方向の衝撃の際に様々な構成要素が分離する危険性を著しく低減させる又は更にはなくす。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この目的で、本発明は、微小機械式デバイス、特に計時器ムーブメントの車軸のための緩衝器デバイスに関し、この緩衝器デバイスは、支持体を備え、支持体は、基部に底部がない回転軸を含み、縁によって回転軸の周辺部で画定し、縁は、回転軸の内側に、内壁によって延在し、回転軸の外側に、外壁によって延在する上面を備え、回転軸の縁は、枢動モジュールを挿入する筐体を画定し、枢動モジュールは、穴開き石を挿入する中心オリフィスを有する嵌込み部を備え、穴開き石は、形状及び大きさが中心オリフィスの形状及び大きさと対応し、受け石は、嵌込み部上で穴開き石の上部に置かれ、緩衝器デバイスは、枢動モジュールに対し弾性歪みを加えるように支持体と枢動モジュールとの間に配置したばねリングも備え、緩衝器デバイスは、支持体と枢動モジュールとの間にばねリングを組み付ける差込みシステムを備え、この差込みシステムは、縁の内壁から支持体の内側に向かって延在する周辺肩部を備え、周辺肩部の下に、保持領域を画定する円形溝を形成し、ばねリングは、外側周辺部上に、ばねリングに、周辺肩部の内径を超える外径を与える少なくとも1つの留め部、周辺肩部内に設けた円形溝に通じる少なくとも1つの第1の切欠きを備え、この第1の切欠きは、ばねリングの外径に少なくとも等しい第1の直径を画定し、これにより、周辺肩部の下で、留め部を円形溝の内側で摺動可能にするために、対応する第1の切欠き内に留め部が係合するようにばねリングを合わせ、次に、ばねリングを枢動させるだけでよい、緩衝器デバイスにおいて、少なくとも1つの第2の切欠きは、周辺肩部内に機械加工し、第2の切欠きは、ばねリングの外径よりも小さい第2の直径を画定し、これにより、留め部が第2の切欠き内に噛み合い、ばねリングの角度枢動係止を保証することを特徴とする。
【0025】
こうした特徴の結果として、本発明は、周辺肩部の縁内にブランキングした第2の切欠きを有する緩衝器デバイスを提供する。したがって、周辺肩部の縁の円外形から出発し、ばねリングの留め部が、周辺縁の底面下、より低い歪み位置を採り、これら第2の切欠きの外形を画定する縁部に当接することを可能にする。これにより、ばねリングは、角度枢動状態で係止され、衝撃、特に横方向の衝撃の際に、車軸が分離する危険性を制限するか、又は更にはゼロにすることを保証するのに役立つ。本発明の更なる利点は、例えばスタンピング又はブランキングによる切欠きの機械加工が非常に容易であることである。したがって、製造時間が著しく減少し、支持体部品の不合格率は非常に低くなり、これらは全て、本発明による緩衝器デバイスの価格を大幅に低下させるのに役立つ。最後に、周辺肩部の切欠きの機械加工が非常に容易であることを考えると、第2の切欠きの外形をほぼ無限に変形させることができ、これにより、緩衝器デバイスの様々な要素の所与の形状のために、衝撃の際のばねリングの最適な係止及び反応を得ることを可能にする外形を求めることが可能である。
【0026】
本発明の更なる特徴及び利点は、本発明の緩衝器デバイスの実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。この例は、添付の図面を参照して、単に非限定的な例として示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】上記で引用した、公知の緩衝器デバイスの概略図であり、衝撃の際にばねリングを角度枢動状態で係止しようとするために、支持体の周辺肩部の底面に中空が機械加工されている。
【
図2】上記で引用した、公知の緩衝器デバイスの概略図であり、衝撃の際にばねリングを角度枢動状態で係止しようとするために、支持体の周辺肩部の底面に中空が機械加工されている。
【
図3A】本発明の第1の実施形態による緩衝器デバイスの上面図である。
【
図3B】本発明の第1の実施形態による緩衝器デバイスの斜視図である。
【
図4A】本発明の第2の実施形態による緩衝器デバイスの上面図である。
【
図4B】本発明の第2の実施形態による緩衝器デバイスの斜視図である。
【
図5A】本発明の第3の実施形態による緩衝器デバイスの上面図である。
【
図5B】本発明の第3の実施形態による緩衝器デバイスの斜視図である。
【
図6A】従来技術による支持体領域の拡大詳細図であり、周辺肩部は、ばねリングの留め部を受け入れる間隙を備える。
【
図6B】本発明による支持体領域の拡大詳細図であり、周辺肩部は、ばねリングの留め部を受け入れる切欠きを備える。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、緩衝器デバイスの支持体の周辺肩部の縁内に切欠きをブランキングすることにある一般的発明概念から進行し、切欠きは、ばねリングの係止留め部を受けることを意図し、留め部は、車軸の枢動柄部を案内する穴開き石の方に受け石を拘束することを意図する。例えばスタンピング又はブランキングにより形成されるこれらの切欠きは、機械加工が容易であり、このため、得られる支持体の価格は、従来のものよりも安価である。更に、縁の完全な厚さ部内に切欠きをブランキングすることを考えると、切欠きの外形を画定する縁部に対する留め部の係止は、最適である。最後に、これらの切欠きの製造が容易に可能であるために、切欠きに与え得る形状に関して大きな自由が享受され、各ばねリング形状に対し、このばねリングに対する最適な封止を保証する切欠き形状を求めることが可能である。
【0029】
本発明による緩衝器デバイスは、全ての点において、上記の従来技術の緩衝器デバイスと同一であり、注目すべき差は、支持体の周辺肩部の縁が、切欠きに沿って部分的にブランキングされ、これにより、ばねリングの留め部を係止し、したがって、ばねリングの角度枢動係止を可能にすることである。したがって、以下、
図1及び
図2を参照して説明した要素と同一の要素は、同じ参照番号で示すことは理解されよう。
【0030】
図3A及び
図3Bは、本発明による緩衝器デバイスの第1の実施形態を上面図及び斜視図でそれぞれ示す。全体参照番号60によって全体として示すこの緩衝器デバイスは、特に、平坦型ばねリング42を備え、平坦型ばねリング42は、このばねリング42の中心Cに向かって径方向に延在する、少なくとも1つの、図示の例では3つの、均等に離間する腕部44を備える。これらの3つの腕部44は、ばねリング42が、支持体2の筐体16内の枢動モジュール18を押圧することを可能にする。
【0031】
支持体2上へのばねリング42の組付けに関し、周辺肩部48を備える差込みシステム46を使用し、周辺肩部48は、支持体2の第1の縁8からこの支持体2の中心に向かって延在する。更に、円形溝50は、周辺肩部48の下で、第1の縁8の内壁12内に形成され、保持領域を画定する。
【0032】
ばねリング42は、差込みシステム46と係合するために、ばねリング42の外側周辺部上に少なくとも1つの、図示の例では3つの、均等に離間する留め部52を備え、留め部52は、このばねリング42の中心Cから離れて径方向に延在する。図からわかるように、これら3つの留め部52は、好ましくは2つの連続する腕部44から等しい角度距離で、ばねリング42の3つの腕部44に対して角度がずれるように配置される。
【0033】
意図的に、3つの留め部52は、ばねリング42に、周辺肩部48の内径Dを超える外径をもたらす。したがって、支持体2上へのばねリング42の組付けを可能にするために、周辺肩部48内に、円形溝50に通じる3つの数の第1の切欠き54を設ける。これら3つの第1の切欠き54は、留め部52と同じ角度で離間して配置する。以後、ばねリング42を支持体2上に組み付けるために、3つの留め部52が、対応する3つの第1の切欠き54に面して位置するように3つの留め部52を呈し、次に、周辺肩部48の下で、留め部52が円形溝50内部に摺動可能にするように3つの留め部52を枢動させるだけでよい。
【0034】
切欠き54は、典型的には、円弧形状部分55が外に出るような周辺肩部48の形成作業によって形成される。円弧形状部分55の端部のそれぞれにおいて、形成作業の間、材料を局所的に押し戻し、これにより、これら円弧形状部分55の上部に中空57a、及び円弧形状部分55の下に突起57bを形成する。これらの突起57bは、ばねリング42を円形溝50に挿入する際、周辺肩部48の円弧形状部分55の下にばねリング42を保持するのに役立つ。
【0035】
ばねリング42は、支持体2の筐体16内に枢動モジュール18を置くことを目的とするステップの後に組み付けられることに留意されたい。ばねリング42を嵌合する際、枢動モジュール18は、このばねリング42に対し、このばねリング42を押し戻す状態にする力を加える。この歪み作用下、ばねリング42は、弾性変形した状態になるが、円形溝50に挿入した留め部52の存在のために、筐体16からは駆動されず、機械的歪みを吸収し、ばねリング42の動きに対抗する。更に、留め部52が、ばねリング42の受け領域を画定する際、これらの留め部52の存在及び留め部52によって吸収される機械的歪みは、ばねリング42の挙動に影響を及ぼさない。したがって、ばねリング42の挙動は、ばねリング42を支持体2上に組み付けているときに変更されない。
【0036】
ばねリング42の角度枢動係止を保証し、これにより、衝撃の際に緩衝器デバイス60が容易に分離しないことを保証するために、3つの数の第2の切欠き62は、例えば、支持体2の周辺肩部48の第3の縁56内にブランキング又はスタンピングによって機械加工する。したがって、ばねリング42を差込みシステム46の円形溝50内に係合した後、これら第2の切欠き62の外形を画定する縁部64に当接させた状態で、留め部52が第2の切欠き62内に噛み合うまでばねリング42を枢動するだけでよい。
【0037】
図6A及び
図6Bを注視すると、従来技術の緩衝器デバイス1の場合(
図6A)、間隙58をもたらすために、周辺肩部48の第3の縁56の厚さを底部によって低減し、これら縁56の周辺は変更されていないことが観察される。しかし、そのような機械加工作業は、時間がかかり、実行が困難であることは容易に理解されよう。更に、間隙58は深さが不十分であり、周辺肩部の周辺縁は高さが不十分であることがわかっているため、衝撃の際、ばねリング42の申し分ない角度枢動係止を保証することができない。一方で、本発明による緩衝器デバイス60の場合(
図6B)、第2の切欠き62が、この第3の縁56の厚さ全体に対し、支持体2の周辺肩部48の第3の縁56内にブランキングされ、この第3の縁56の周辺部に切り込まれている。したがって、これら第2の切欠き62は深さが十分であり、切欠き62の縁部64は高さが十分であるため、留め部52を申し分なく係止し、衝撃の際、ばねリング42の角度枢動係止を保証する。
【0038】
更に、これら第2の切欠き62は、機械加工が非常に容易であり、したがって、最適な係止を保証するように第2の切欠き62の外形を最適に適合させることが可能である。したがって、
図3A及び
図3Bにおいて、周辺肩部48の周辺部56は、切り込まれ、ばねリング42の中心Cと同心の円弧に沿って延在する切欠き62を形成している。
図4A及び
図4Bにおいて、第2の切欠き62は、2つの連続する第1の切欠き54の間に延在する角度αの二等分線上に中心C1が位置する小径の円に沿って周辺肩部48をブランキングすることによって得られた。同様に、
図5A及び
図5Bにおいて、第2の切欠き62は、2つの連続する第1の切欠き54の間に延在する角度の二等分線上に中心C2が位置するより大きな径の円に沿って周辺肩部をブランキングすることによって得られた。
【0039】
本発明は、上記の実施形態に制限されないこと、及び当業者は、添付の特許請求の範囲により定義する本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更及び単純な代替形態を想定できることは明らかである。
【符号の説明】
【0040】
1 緩衝器デバイス又は耐衝撃システム
2 支持体
4 回転軸
6 基部
8 第1の縁
10 上面
12 内壁
14 外壁
16 筐体
18 枢動モジュール
20 嵌込み部
22 円形中央オリフィス
24 第2の縁
26 側方外壁
28 側方内壁
30 穴開き石
32 肩部
34 受け石
36 枢動柄部
38 軸
40 弾性手段
42 ばねリング
C ばねリングの中心
44 腕部
46 差込みシステム
48 周辺肩部
50 円形溝
52 留め部
54 第1の切欠き
55 円弧部分
56 第3の縁
57a 中空
57b 突起
58 間隙
60 緩衝器デバイス
62 第2の切欠き
64 縁部