(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557412
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】樹脂ガラス板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20190805BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20190805BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20190805BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20190805BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20190805BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20190805BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20190805BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20190805BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20190805BHJP
C08J 7/04 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
B32B27/00 101
B32B27/16 101
B32B27/18 Z
B05D7/02
B05D7/24 303E
B05D7/24 303G
B05D7/24 302Y
B05D5/00 B
B05D3/06 102Z
C09D7/65
C09D183/04
C08J7/04 MCER
C08J7/04CEZ
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-516311(P2018-516311)
(86)(22)【出願日】2016年5月13日
(86)【国際出願番号】JP2016064282
(87)【国際公開番号】WO2017195350
(87)【国際公開日】20171116
【審査請求日】2018年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】399034253
【氏名又は名称】株式会社レニアス
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【弁理士】
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】足立 真希
【審査官】
横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−6448(JP,A)
【文献】
特許第5778997(JP,B2)
【文献】
特許第4536824(JP,B2)
【文献】
特開平11−35713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B05D 1/00−7/26
C08J 7/04−7/06
C09D 1/00−10/00,101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂基板と、この透明樹脂基板上に形成されたハードコート層とを含む樹脂ガラス板であって、
前記ハードコート層がシリコーンポリマー100重量部に対して、0.4〜4.0重量部のセルロースナノファイバーを含有するシリコーンポリマーの熱硬化物で形成されると共に、
前記ハードコート層の表面は、Si−O−Si結合を選択的に切断して再結合させた二酸化ケイ素を主成分とする膜厚0.2μmより大きく0.6μm未満の改質層に形成されていることを特徴とする樹脂ガラス板。
【請求項3】
前記透明樹脂基板上にプライマー層が形成され、その上に前記ハードコート層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂ガラス板。
【請求項4】
透明樹脂基板上に、シリコーンポリマーハードコート液にシリコーンポリマー100重量部に対して0.4〜4.0重量部のセルロースナノファイバーを加えた塗工液を塗布し加熱乾燥させてセルロースナノファイバー含有ハードコート層を形成した後、前記ハードコート層に波長200nm以下の真空紫外線を照射してその表層部を膜厚0.2μmより大きく0.6μm未満の改質層に形成する請求項1記載の樹脂ガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透視用及び採光用として用いられる透明樹脂板において、その表面がガラス様に改質された樹脂ガラス板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車輌用の窓ガラスや建材用の窓ガラスに用いられる透明樹脂板の基板としてポリカーボネート基板が使用されている。このポリカーボネート基板には、ガラス製の基板に比べ、軽量であり、成形性に優れるものの、表面は非常に傷がつきやすく、また太陽光や風雨等による変形、変色、劣化を起こしやすいという問題が存在する。そこで、本発明者は、かかる問題を解決すべく、先の出願において、透明樹脂基板上にシリコーンポリマーからなるハードコート層を形成し、さらにその表面に特定波長の紫外線を照射することにより、ハードコート層の表層部を硬質薄膜に光改質させてなる樹脂ガラス板及びその製造方法を提案した(特許文献1)。この樹脂ガラス板では、改質層の膜厚を0.6μm未満に設定することにより、高硬度で、且つ、透明性や平坦性を維持した状態で、耐摩耗性や耐擦傷性を向上させることに成功している。
【0003】
しかしながら、前記耐擦傷性に優れた改質層を有するハードコート層においても、100℃以上の高温環境下に長時間晒した場合、クラックやひび割れが発生し、温度変化に対する耐久性については充分なものではなかった。
【0004】
一方、樹脂ガラスにおいては、ハードコート層中に各種フィラーを添加することにより所望の機能を付与することが行われているが、その場合でも、フィラーの凝集、フィラーと樹脂の表面エネルギーの差などから、逆に他の物性を低下させることが知られている。
【0005】
他方、近年では、優れた特性をもつセルロースナノファイバーが、軽量・高強度材料や包装材料、あるいはエレクトロニクス材料等の実用化に使用されている。
【0006】
例えば、特開2010−186214号公報(特許文献2)には、薄膜であってもカール発生や、クラックや割れ、表面収縮による皺の発生を防ぐことを目的として、熱硬化性樹脂に平均繊維径4〜200nmで平均繊維長100nm以上のセルロースナノファイバーを0.1から50質量%の範囲で含有させたハードコート層を支持体に積層した光学フィルムが開示されている。
特開2012−131201号公報(特許文献3)には、クラックが生じにくく可撓性に優れ、耐擦傷性、耐摩耗性に優れた硬質表面を形成することを目的として、硬化性樹脂に平均繊維径4〜50nmで平均繊維長100nm以上のキチンナノファイバーを0.001〜30重量%の範囲で含有させたハードコート層をプラスチックフィルム上に形成したハードコートフィルムが開示されている。
特許第5778997号公報(特許文献4)には、ギラツキを抑制し、黒味を向上させ、耐擦傷性を有し、低反射で低ヘイズの光学フィルムを得ることを目的として、硬化性樹脂に平均繊維径10〜500nmで平均繊維長20〜500μmのセルロースナノファイバーを0.01〜3重量部の範囲で含有させたハードコート層を透明フィルム上に形成した光学フィルムが開示されている。
【0007】
しかしながら、前記特許文献2〜4の発明には、ハードコート層における光改質による改質層とセルロースナノファイバーとの関係について言及するものはなく、ハードコート層に優れた特性のセルロースナノファイバーを含有させても、高硬度で、平坦性と高い透明度を維持し、且つ、高い耐擦傷性と高い耐候性を両立させることはできていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4536824号公報
【特許文献2】特開2010−186124号公報
【特許文献3】特開2012−131201号公報
【特許文献4】特許第5778997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、透明樹脂基板にシリコーン系ハードコート層を形成し、その表面が光改質される樹脂ガラス板において、透明性、耐擦傷性及び耐摩耗性を維持した状態で、温度変化に対する耐久性をも向上させる高硬度の樹脂ガラス板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の樹脂ガラス板は、透明樹脂基板上に、セルロースナノファイバーを含有するハードコート層を形成し、その表層部が光改質されていることを特徴とする。
【0011】
すなわち、本発明の樹脂ガラス板は、透明樹脂基板と、この透明樹脂基板上に形成され表層部に光改質された改質層を有するハードコート層とからなる樹脂ガラス板であって、前記ハードコート層がセルロースナノファイバーを含有するシリコーンポリマーの熱硬化物で形成され、前記改質層の膜厚が0.2μmより大きく0.6μm未満に形成されている。前記セルロースナノファイバーの含有量は、シリコーンポリマー100重量部に対して、0.4〜4.0重量部であるのが好ましい。
【0012】
本発明には、透明樹脂基板上に、ハードコート層を形成するシリコーンポリマーハードコート液にシリコーンポリマー100重量部に対して0.4〜4.0重量部のセルロースナノファイバーを含有させた塗工液を塗布し、加熱乾燥後、真空紫外線を照射して、ハードコート層の表面に0.2μmより大きく0.6μm未満の膜厚の改質層を形成する樹脂ガラス板の製造方法も含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の樹脂ガラス板によれば、ハードコート層を構成するシリコーンポリマー100重量部に対して0.4〜4.0重量部の割合でセルロースナノファイバーを含有しているため、改質層と非改質層またはポリカーボネート基板との間に生じる熱膨張係数の差による応力集中に起因したクラックが生じにくく温度変化に対する耐久性に優れ、透明性を維持した状態で、高硬度で耐擦傷性や耐摩耗性に優れた樹脂ガラス板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は本発明の樹脂ガラス板の製造方法の実施の形態を示す概念図である。
【
図2】
図2は本発明の樹脂ガラス板の製造方法とは別の比較例の実施の形態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る樹脂ガラス板は、透明樹脂基板上に、セルロースナノファイバーを含有するハードコート層を形成し、その表層部を光改質による改質層に形成した構成とするものである。
【0017】
本発明における光改質は、ハードコート層に波長が200nm以下の真空紫外線を照射して、ハードコート層の表層部の化学結合を切断するとともに、真空紫外線で発生したオゾンから分離した活性酸素と切断された表層部の分子とを再結合させて、ハードコート層の一部を硬質薄膜層に改質させるものである。
【0018】
本発明において使用される透明樹脂基板は、特に限定されないが、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート又はスチレン系重合体等の透明樹脂材料、あるいは各種オレフィン系樹脂材料を平板状に成形したものなどが使用できる。中でも、ポリカーボネートは、耐衝撃性や耐熱性に優れ、安価に入手できるので好ましい。厚さ0.5〜10.0mmのものは窓ガラスに好適である。
【0019】
本発明に係るハードコート層は、シリコーンポリマーを主成分とし、セルロースナノファイバーを含有するシリコーン系ハードコート液を、透明樹脂基板に塗布し硬化させて形成する。シリコーン系ハードコート液としては、アルコキシシランをベースとして、縮合反応を経由して得たシロキサンゾルを加水分解して得られるシロキサン構造体からなる溶剤が用いられる。このハードコート層の膜厚としては、特に制限されないが、平均膜厚は4.0〜30.0μmが好ましい。
【0020】
ハードコート層に配合されるセルロースナノファイバーは、繊維として平均繊維径が3〜30nm、平均繊維長が200〜1500nmの範囲内のものが用いられる。繊維径が30nmを超えたり、平均繊維長が1500nmを超えたりすると、ハードコート層の透明性が損なわれ易くなる。また、ハードコート層にセルロースナノファイバーによる所定のネットワーク構造を形成し難くなって、真空紫外線がハードコート層の深部に到達し難くなり、光改質が充分に行えなくなるので好ましくない。
【0021】
本発明で使用されるセルロースナノファイバーは、その原料や製法は問われず、β−1,4−グルカン構造を有していればよく、化学的に合成/変性されたセルロース(例えば、セルロース誘導体)であっても良い。このセルロースナノファイバーは、直接、または分散液としてシリコーン系ハードコート液に添加されるが、分散液を用いる場合は、セルロースナノファイバーの製造過程で混在するセルロース以外の成分、例えば植物由来のヘミセルロースやリグニン、化学合成で用いられた余剰の薬剤などは、ハードコート層の透明性維持のために除去しておくことが好ましい。
【0022】
本発明のハードコート層におけるセルロースナノファイバーの含有量は、主成分のシリコーンポリマーに対して0.4〜4.0重量%であることが好ましい。セルロースナノファイバーの含有量が0.4重量%未満では、ハードコート層の熱膨張を充分に緩和することができず、温度変化によるクラックの発生を抑制することができなくなる。また、4.0重量%を超えると、真空紫外線のハードコート層深部への到達が妨げられるため、優れた耐擦傷性、耐摩耗性を発揮するのに必要な厚さの改質層を形成できなくなる。更に、ハードコート液の粘性が高くなって、塗工性が低下し、膜厚が厚くなるため、結果的に高ヘイズとなり透明性が低下してしまう点でも好ましくない。
【0023】
セルロースナノファイバー含有ハードコート層は、
図1に示す如く、シリコーン系ハードコート液にセルロースナノファイバーを混入したものを基板上にディップコーティングした後、所定時間、加熱乾燥して形成することができ、また、
図2に示す如く、予め基板上にセルロースナノファイバー分散液を塗布して所定時間、乾燥した後に、シリコーン系ハードコート液によりディップコーティングし、再度、所定時間、加熱乾燥して形成することもできる。
【0024】
セルロースナノファイバーをハードコート液に混入する場合は、セルロースナノファイバーをハードコート液に添加し、マグネットスターラー等で攪拌混合することにより、セルロースナノファイバーをシリコーン系ハードコート液中に均質に分散させ、ディップコーティングの引上げ速度を調整することによりセルロースナノファイバー含有ハードコート層の厚さを調整する。
【0025】
基板上に予めセルロースナノファイバー層を形成する場合は、例えば1重量%セルロースナノファイバー分散液を基板上にのせ、所定時間乾燥させてセルロースナノファイバー層を形成し、次いで、シリコーン系ハードコート液をディップコーティングにより塗布し、上記と同様、全体のセルロースナノファイバー含有ハードコート層の厚さを調整する。
【0026】
また、本発明に係るセルロースナノファイバー含有ハードコート層は、セルロースナノファイバーを混入させたハードコート液をスピンコートやフローコートすることにより形成することもできる。
【0027】
本発明においては、基板上にセルロースナノファイバー含有ハードコート層を形成するに際し、基板とハードコート層との密着性を向上させるために、これらの間にプライマー層を設けてもよい。プライマー層は、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂等を使用することができ、各樹脂をディップコーティングにより塗布し、所定時間、加熱乾燥して形成される。
【0028】
本発明に係るセルロースナノファイバー含有ハードコート層は、表面に波長200nm以下の真空紫外線が照射され、表層部を一定厚さの改質層に光改質される。
【0029】
本発明に係る改質層は、ハードコート層のシリコーンポリマーの側鎖官能基を構成するC−H、Si−CやSi−O−Si結合を真空紫外線により順次選択的に切断し、これらの開裂した酸素原子とケイ素原子を再結合させることにより形成した二酸化ケイ素を主成分とする硬質薄膜層である。
【0030】
波長200nm以下の真空紫外線の光源としては、エキシマランプ、低圧水銀ランプ、エキシマレーザなどを用いることができる。ランプを用いたものは、広範囲に光を照射することができるため効率よく光改質を行える。照射エネルギーは、ハードコート層の厚みにより異なるが、例えば、波長172nmのエキシマランプの場合、積算照射量を凡そ2,100mJ/cm
2程度とし、基板への照射距離は凡そ3mm程度とする。
【0031】
真空紫外線の光源としてエキシマランプを用いた場合、ハードコート層を透過する光が基板まで到達してハードコート層の下にある基板を分解したり、光が高エネルギーのままハードコート層を透過するために改質層の厚さが調整し難くなったりすることもある。この場合には、例えば、ハードコート層に紫外線吸収剤を分散させて、透過する真空紫外線の光量を調整することにより、所望の厚さの改質層に調整してもよい。
【0032】
本発明に係る改質層の厚さは、ハードコート層の厚さや含有するセルロースナノファイバーの繊維径、繊維長及び含有量によっても異なるが、0.2μmより大きく0.6μm未満のものは窓ガラスとして優れた耐摩耗性及び耐擦傷性を発現した上で温度変化による耐久性(耐熱性、耐候性)をも向上させることができるので好ましい。
【0033】
本発明に係るセルロースナノファイバー含有ハードコート層は、分散されたセルロースナノファイバーによる微細なネットワーク構造により、熱による改質層の収縮力が分散し、結果として、目に見えるクラックの発生が抑制されて耐熱性を向上させていると考えられる。さらに、基板の熱膨張による引張応力が、非改質層に含まれる熱膨張率の低いセルロースナノファイバーにより緩和され、その結果、基板と改質層との熱膨張率の差が小さくなって、クラックの発生を抑制していると考えられる。
【0034】
以下、本発明に係る樹脂ガラス及びその製造方法について、実施例により詳細に説明する。但し、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で得られた樹脂ガラスを以下の項目で評価した。
【0035】
(透明性 耐擦傷性 耐摩耗性)
テーバー摩擦試験による磨耗試験を行った。日本工業標準調査会(Japanese Industrial Standards Committee、JISC)によるJISK7204に準拠して、500g×1000回転の擦傷条件でテーバー摩擦試験を行い、ヘイズ値を測定して評価した。テーバー摩擦試験前後のヘイズ増加が2.0%以下のものを丸(○)、2.0%より大きいものをバツ(×)として表に記した。
【0036】
(耐熱性)
110℃で16時間加熱し、目視にてクラックの発生を確認した。クラックを確認したものをバツ(×)、確認できなかったものを丸(○)として表に記した。
【0037】
(実施例1)
以下、本実施例を図面を参照して説明する。
図1に示す如く、シリコーン系ハードコート液(モメンティブ製AS4700F:シリコーン固形分凡そ27%)1にセルロースナノファイバー分散液(平均繊維径3〜10nm、平均繊維長200〜800nm、1重量%水分散液)2をシリコーン固形分に対し0.4重量%の割合となるように加え、マグネットスターラーで攪拌し、セルロースナノファイバー含有ハードコート液3とした。
【0038】
ポリカーボネート基板4に、プライマー液(モメンティブ製SHP470)をディップコーティングし、130℃で15分間加熱乾燥して4μmの膜厚のプライマー層5を形成した。この基板に前記セルロースナノファイバー含有ハードコート液3をディップコーティングにより塗布し、130℃で30分間乾燥し、膜厚10μmのセルロースナノファイバー含有ハードコート層6を形成した。次いで、172nmのエキシマランプを積算照射量2,100mJ/cm
2で照射し、ハードコート層の表面を改質した。改質層7の厚さは0.4μmであった。
【0039】
(実施例2)
実施例1において、シリコーン固形分に対し2.0重量%の割合でセルロースナノファイバーを含有するハードコート液を用いる以外は同様にしてハードコート層を作製し、その表面を光改質した。改質層の厚さは0.4μmであった。
【0040】
(実施例3)
実施例1において、シリコーン固形分に対し4.0重量%の割合でセルロースナノファイバーを含有するハードコート液を用いる以外は同様にしてハードコート層を作製し、その表面を光改質した。改質層の厚さは0.3μmであった。
【0041】
(実施例4)
実施例1において、平均繊維径10〜30nm、平均繊維長500〜1500nmのセルロースナノファイバーを含有する分散液を使用する以外は同様にして、ハードコート層を作製し、その表面を光改質した。改質層の厚さは0.3μmであった。
【0042】
(比較例1)
セルロースナノファイバーを含有しないハードコート層を同様にして作製し光改質を行った。改質層の厚さは0.5μmであった。
【0043】
(比較例2)
セルロースナノファイバーを6.0重量%の割合で含有するハードコート層を作製し、光改質を行った。改質層の厚さは0.2μmであった。
【0044】
(比較例3)
基板上に予めセルロースナノファイバー層を形成した例を示す。
図2に示す如く、前記実施例1と同様に、ポリカーボネート基板4にプライマー層5をディップコーティングした後、130℃で15分乾燥させた。その上に1重量%セルロースナノファイバー水分散液2を基板上にのせ、40℃で1日乾燥させ、セルロースナノファイバー層8を形成した。次いで、シリコーン系ハードコート液1を前記実施例と同様にディップコーティングにより塗布し、減圧下に一晩おいた後、130℃で30分間乾燥し、セルロースナノファイバー含有ハードコート層9を形成した。セルロースナノファイバー対固形分濃度は50%であった。次いで、セルロースナノファイバー含有ハードコート層の表面に172nmのエキシマランプを積算照射量2,100mJ/cm
2で照射したが、改質層は得ることができなかった。10はセルロースナノファイバーを含有しないハードコート層である。
【0045】
実施例1〜4及び比較例1〜3で作製した樹脂ガラス板について、耐擦傷性及び耐熱性を評価した。その結果を表1に示す。
【0047】
表1の評価結果から明らかなように、実施例の樹脂ガラス板はヘイズ値が1.0%以下の高い透明性を示すと共に、耐擦傷性及び耐熱性に優れる。一方、比較例の樹脂ガラス板では、これら特性を両立できていない。セルロースナノファイバーの含有量が0.4重量%未満では、耐擦傷性に充分な改質層が作製されるものの耐熱性が劣り、4.0重量%を超えた場合には、耐熱性は向上されるものの充分な耐擦傷性に必要な改質層が得られなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る樹脂ガラス板は、種々の樹脂窓、例えば車輌窓、船舶窓、航空機窓、建材用窓の長寿命化を図ることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 シリコーン系ハードコート液
2 セルロースナノファイバー分散液
3 セルロースナノファイバー含有ハードコート液
4 ポリカーボネート基板
5 プライマー層
6、9 セルロースナノファイバー含有ハードコート層
7 改質層
8 セルロースナノファイバー層
10 セルロースナノファイバーを含有しないハードコート層