【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<Csを吸着した吸着剤の調製>
1.Cs吸着(GTS+SNT)試料:
<吸着剤(GTS+SNT)の調製>
(1)第一工程
3号ケイ酸ソーダ90g、苛性ソーダ水溶液667.49g及び純水84.38gを混合し撹拌して混合水溶液を得た。この混合水溶液に、四塩化チタン水溶液443.90gをペリスタポンプで1時間20分にわたって連続的に添加して混合ゲルを製造した。当該混合ゲルは、四塩化チタン水溶液の添加後、1時間にわたり室温で静置熟成した。
(2)第二工程
第一工程で得られた混合ゲルをオートクレーブに入れ、1時間かけて170℃に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に24時間反応を行った。反応後のスラリーをろ過、洗浄、乾燥して塊状の結晶性シリコチタネートと9チタン酸ナトリウムの混合物を得た。得られた塊状の吸着剤を乳鉢粉砕および100μmのフルイによる分級によりフルイ下の粉末を、吸着剤(GTS+SNT)試料とした。
得られた粒状物をX線回折構造した。その結果を
図1に示す。
図1に示すように、得られた粒状物は主相Na
4Ti
4Si
3O
16・nH
2Oであり、Na
4Ti
9O
20・mH
2Oが検出され、前記結晶性シリコチタネート及び前記9チタン酸ナトリウムの混合物であることが確認された。また粒状物は2θ=10〜13°の範囲に観察されるNa
4Ti
4Si
3O
16・6H
2Oに由来するメーンピーク(M.P.)の高さに対して、2θ=8〜10°に範囲に観察されるNa
4Ti
9O
20・5〜7H
2Oに由来するM.P.の高さの比が38.5%であった。
【0041】
<Cs吸着(GTS+SNT)試料の調製>
CsNO
33.77gをイオン交換水1000mlに溶解して、ここに上記で調製した吸着剤(GTS+SNT)50gを添加して、室温(25℃)で24時間撹拌を行い、Csを飽和吸着させた。攪拌終了後、常法によりろ過、リパルプ洗浄したのち、乾燥、卓上ミルにより解砕を行いCs吸着(GTS+SNT)試料を得た。
Cs吸着(GTS+SNT)試料を蛍光X線分析を行った結果、Cs吸着(GTS+SNT)試料は下記の組成を有していた。
Na
2O;10.4wt%
SiO
2;13.8wt%
TiO
2;50.8wt%
Cs
2O;7.0wt%
【0042】
2.Cs吸着Nb−CST試料:
<吸着剤(Nb−CST)の調製>
(1)第一工程
3号ケイ酸ソーダ115g、苛性ソーダ水溶液670.9g、及びイオン交換水359.1gを混合し撹拌して混合水溶液を得た。この混合水溶液に、水酸化ニオブ25.5g(Nb
2O
5:76.5質量%)を加えて撹拌混合した後、四塩化チタン水溶液412.3gをペリスタポンプで0.5時間にわたり連続的に添加して混合ゲルを製造した。当該ゲルは、四塩化チタン水溶液の添加後、1時間にわたり室温(25℃)で静置熟成した。
(2)第二工程
第一工程で得られた混合ゲルをオートクレーブに入れ、1時間かけて160℃に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に18時間反応を行った。
反応後のスラリーをろ過、洗浄、乾燥して塊状の結晶性シリコチタネートを得た。得られた塊状の吸着剤を乳鉢粉砕および100μmのフルイによる分級によりフルイ下の粉末を、Cs吸着Nb−CST試料とした。
得られた粒状物をX線回折測定した。その結果を
図2に示す。また、ICP−AESによる組成分析を行った結果、Nbを12.2質量%含有するNa
2Ti
2O
3(SiO
4)・2H
2Oで表されるTi/Siのモル比が2/1の結晶性シリコチタネートであることを確認した。
【0043】
<Cs吸着Nb−CSTの調製>
CsNO
33.77gをイオン交換水1000mlに溶解して、ここに上記で調製した吸着(Nb−CST)50gを添加して、室温(25℃)で24時間撹拌を行い、Csを飽和吸着させた。攪拌終了後、常法によりろ過、リパルプ洗浄したのち、乾燥、卓上ミルにより解砕を行いCs吸着Nb−CST試料を得た。
Cs吸着Nb−CST試料を蛍光X線分析を行った結果、Cs吸着Nb−CST試料は下記の組成を有していた。
Na
2O;11.3wt%
SiO
2;16.4wt%
TiO
2;34.9wt%
Nb
2O
5;9.2wt%
Cs
2O;5.7wt%
【0044】
{実施例1}
<Na
2O・SiO
2成分の調製>
25%苛性ソーダ160gに非晶質シリカ(ホワイトカーボン)31.5gを添加して、90℃で2時間加熱反応を行い、更に乾燥機で濃縮したのち電気炉で300℃に加熱して蒸発乾固させた。冷却後、乳鉢にて粉砕してNa
2O・SiO
2(Na
2O;50.8質量%、SiO
2;49.2質量%、Na
2O/SiO
2モル比=1.0)を得た。
<ガラス固化体の調製>
上記で調製したCs吸着(GTS+SNT)試料10gと、上記で調製したNa
2O・SiO
2 3.84gを混合して、少なくとも下記の組成の原料混合物を得た。
Na
2O;23.5wt%
SiO
2;27.2wt%
TiO
2;42.2wt%
Cs
2O;5.8wt%
Na
2O/SiO
2モル比;0.88
次いで、該混合物を白金ルツボに入れ、1100℃で2時間加熱溶融した。
次いで、水を張ったSUS槽にルツボを傾斜させて、加熱溶融物を流出して水砕(急冷)した。
水砕品は乾燥後、粉砕して、0.5〜1mmに粒度調製した後、XRD分析を行った。得られた水砕品試料のX線回折図を
図3に示す。また、
図3に原料混合物のX線回折図も併記した。
図3の結果より、明確な回折ピークが確認できず、完全にガラス化されていることが確認できた。
【0045】
{比較例1}
ZnO60部、B
2O
320部にCs吸着(GTS+SNT)試料20部を混合して、原料混合物を白金ルツボに入れ、1100℃で2時間加熱溶融した。
次いで、水を張ったSUS槽にルツボを傾斜させて、加熱溶融物を流出して水砕(急冷)した。
水砕品は乾燥後、粉砕して、0.5〜1mmに粒度調製した後、XRD分析を行った。得られた水砕品試料のX線回折図を
図4に示す。また、
図4に原料混合物のX線回折図も併記した。
図4の結果より、明確な回折ピークが確認でき、完全にガラス化を行うことは出来なかった。
【0046】
{比較例2}
Cs吸着(GTS+SNT)試料の添加量を26.7部とした以外は比較例1と同様な条件で水砕品を得た。水砕品は乾燥後、粉砕して、0.5〜1mmに粒度調製した後、XRD分析を行った。得られた水砕品試料のX線回折図を
図4に示す。
図4の結果より、明確な回折ピークが確認でき、完全にガラス化を行うことは出来なかった。
【0047】
【表1】
【0048】
図3、
図4及び表1から明らかなように、比較例1及び比較例2のホウケイ酸ガラスを用いる方法では、1100℃の加熱温度では、完全にガラス化したものが得られなかったのに対して、本発明の方法によれば、比較例1及び比較例2に比べ原料混合物中の吸着剤の含有量(72wt%)が多いにも拘わらず完全にガラス化したガラス固化体が得られていることが分かる。
【0049】
{実施例2}
<Na
2O・SiO
2成分の調製>
Na
2O・SiO
2成分として下記組成の市販の無水メタ珪酸ソーダ(日本化学工業社製)を使用した。
Na
2O;50.93wt%
SiO
2;45.93wt%
Na
2O/SiO
2モル比;1.072
<ガラス固化体の調製>
上記で調製したCs吸着(GTS+SNT)試料10gと、上記で調製した無水メタ珪酸ソーダ
3.84gを混合して、少なくとも下記の組成の混合物を得た。
Na
2O;21.7wt%
SiO
2;22.7wt%
TiO
2;36.7wt%
Cs
2O;5.0wt%
Na
2O/SiO
2モル比;0.93
次いで、該混合物を白金ルツボに入れ、1100℃で2時間加熱溶融した。
次いで、融液を板状のSUSに流し入れ、そのまま空冷してガラス固化体を得た。
空冷品は冷却後、粉砕して、0.5〜1mmに粒度調製した後、XRD分析を行った。得られた空冷品試料のXRD分析したところ、明確な回折ピークが確認できず、完全にガラス化されていることが確認できた。
【0050】
{実施例3}
<Na
2O・SiO
2成分の調製>
Na
2O・SiO
2成分として下記組成の市販の無水メタ珪酸ソーダ(日本化学工業社製)を使用した。
Na
2O;50.93wt%
SiO
2;45.93wt%
Na
2O/SiO
2モル比;1.072
<ガラス固化体の調製>
上記で調製したCs吸着Nb−CST試料10gと、上記で調製した無水メタ珪酸ソーダ
3.84gを混合して、少なくとも下記の組成の混合物を得た。
Na
2O;22.3wt%
SiO
2;24.6wt%
TiO
2;25.2wt%
Nb
2O
5;6.6wt%
Cs
2O;4.1wt%
Na
2O/SiO
2モル比;0.88
次いで、該混合物を白金ルツボに入れ、1100℃で2時間加熱溶融した。
次いで、加熱溶融物を板状のSUSに流し入れ、そのまま空冷してガラス固化体を得た。
空冷品は冷却後、粉砕して、0.5〜1mmに粒度調製した後、XRD分析を行った。その結果、明確な回折ピークが観察されず、完全にガラス化していることを確認した。
【0051】
{実施例4}
<Na
2O・SiO
2成分の調製>
Na
2O・SiO
2成分として下記組成の市販の無水メタ珪酸ソーダ(日本化学工業社製)を使用した。
Na
2O;50.93wt%
SiO
2;45.93wt%
Na
2O/SiO
2モル比;1.072
<ガラス固化体の調製>
上記で調製したCs吸着(GTS+SNT)試料15gと、上記で調製した無水メタ珪酸ソーダ5.76g、水酸化アルミニウム2.22gを混合して、少なくとも下記の組成の混合物を得た。
Na
2O;19.5wt%
SiO
2;20.5wt%
TiO
2;33.2wt%
Cs
2O;4.6wt%
Al
2O
3;6.3wt%
Na
2O/SiO
2モル比;0.92
次いで、該混合物を白金ルツボに入れ、1140℃で2.5時間加熱溶融した。
次いで、加熱溶融物を板状のSUSに流し入れ、そのまま空冷してガラス固化体を得た。
空冷品は冷却後、粉砕して、0.5〜1mmに粒度調製した後、XRD分析を行った。得られた空冷品試料のXRDを
図5に示す。
図5の結果、明確な回折ピークが観察されず、完全にガラス化していることを確認した。
【0052】
{実施例5}
<Na
2O・SiO
2成分の調製>
Na
2O・SiO
2成分として下記組成の市販の無水メタ珪酸ソーダ(日本化学工業社製)を使用した。
Na
2O;50.93wt%
SiO
2;45.93wt%
Na
2O/SiO
2モル比;1.072
<ガラス固化体の調製>
上記で調製したCs吸着(GTS+SNT)試料15gと、上記で調製した無水メタ珪酸ソーダ5.76g、水酸化アルミニウム3.17gを混合して、少なくとも下記の組成の混合物を得た。
Na
2O;18.8wt%
SiO
2;19.7wt%
TiO
2;31.8wt%
Cs
2O;4.4wt%
Al
2O
3;8.7wt%
Na
2O/SiO
2モル比;0.92
次いで、該混合物を白金ルツボに入れ、1140℃で3時間加熱溶融した。
次いで、加熱溶融物を板状のSUSに流し入れ、そのまま空冷してガラス固化体を得た。
空冷品は冷却後、粉砕して、0.5〜1mmに粒度調製した後、XRD分析を行った。
得られた空冷品試料のXRDを
図5に示す。
図5の結果、明確な回折ピークが観察されず、完全にガラス化していることを確認した。
【0053】
{実施例6}
<Na
2O・SiO
2成分の調製>
Na
2O・SiO
2成分として下記組成の市販の無水メタ珪酸ソーダ(日本化学工業社製)を使用した。
Na
2O;50.93wt%
SiO
2;45.93wt%
Na
2O/SiO
2モル比;1.072
<ガラス固化体の調製>
上記で調製したCs吸着(GTS+SNT)試料15gと、上記で調製した無水メタ珪酸ソーダ5.76g、水酸化ジルコニウム3.48gを混合して、少なくとも下記の組成の混合物を得た。
Na
2O;18.5wt%
SiO
2;19.4wt%
TiO
2;31.4wt%
Cs
2O;4.3wt%
ZrO
2;4.3wt%
Na
2O/SiO
2モル比;0.92
次いで、該混合物を白金ルツボに入れ、1140℃で2時間加熱溶融した。
次いで、加熱溶融物を板状のSUSに流し入れ、そのまま空冷してガラス固化体を得た。
空冷品は冷却後、粉砕して、0.5〜1mに粒度調製した後、XRD分析を行った。得られた空冷品試料のXRDを
図5に示す。
図5の結果、明確な回折ピークが観察されず、完全にガラス化していることを確認した。
【0054】
{実施例7}
<Na
2O・SiO
2成分の調製>
Na
2O・SiO
2成分として下記組成の市販の無水メタ珪酸ソーダ(日本化学工業社製)を使用した。
Na
2O;50.93wt%
SiO
2;45.93wt%
Na
2O/SiO
2モル比;1.072
<ガラス固化体の調製>
上記で調製したCs吸着(GTS+SNT)試料15gと、上記で調製した無水メタ珪酸ソーダ5.76g、水酸化ジルコニウム4.87gを混合して、少なくとも下記の組成の混合物を得た。
Na
2O;17.5wt%
SiO
2;18.4wt%
TiO
2;29.7wt%
Cs
2O;4.1wt%
ZrO
2;5.7wt%
Na
2O/SiO
2モル比;0.92
次いで、該混合物を白金ルツボに入れ、1140℃で3時間加熱溶融した。
次いで、加熱溶融物を板状のSUSに流し入れ、そのまま空冷してガラス固化体を得た。
空冷品は冷却後、粉砕して、0.5〜1mmに粒度調製した後、XRD分析を行った。
得られた空冷品試料のXRDを
図5に示す。
図5の結果、明確な回折ピークが観察されず完全にガラス化していることを確認した。
【表2】
【0055】
<Cs溶出試験>
実施例で得られた水砕品試料又は空冷品試料2.5gをそれぞれ50mlのイオン交換水とともにテフロン(登録商標)性圧力容器に入れ、2気圧(121℃)、48時間でPCT試験(プレッシャークッカーテスト)を行った。PCT試験後、濾過し、ろ液中のCsイオン濃度をICP−AESで分析した。また、水砕品試料からのCsイオン溶出率を下記計算式により求めた。その結果を表3に示した。
【0056】
【数1】
【0057】
【表3】