特許第6557428号(P6557428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557428
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】樹脂封止装置及び樹脂封止方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   H01L21/56 R
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-567453(P2018-567453)
(86)(22)【出願日】2018年2月7日
(86)【国際出願番号】JP2018004121
(87)【国際公開番号】WO2018147305
(87)【国際公開日】20180816
【審査請求日】2019年5月16日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/004622
(32)【優先日】2017年2月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190105
【氏名又は名称】信越エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 義和
(72)【発明者】
【氏名】森 寛治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 光
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−22672(JP,A)
【文献】 特開2001−24014(JP,A)
【文献】 特開2005−277243(JP,A)
【文献】 特開2016−111323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
B29C 45/14
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が搭載されたワークの保持部を有する第一成形型と、
前記第一成形型の前記保持部に保持した前記ワークの前記半導体素子が搭載される載置面と対向状に設けられて未硬化樹脂が供給されるキャビティを有する第二成形型と、
前記第一成形型及び前記第二成形型の間に形成される開閉自在な密閉室と、
前記第一成形型又は前記第二成形型のいずれか一方か若しくは両方を前記第一成形型及び前記第二成形型の対向方向へ相対的に接近移動させる駆動部と、
前記密閉室及び外部空間に亘り排気又は給気して大気雰囲気から所定真空度の減圧雰囲気まで内圧調整する調圧部と、
前記駆動部及び前記調圧部を作動制御する制御部と、を備え、
前記第一成形型の前記保持部は、前記ワークの前記載置面と逆側の非載置面と対向する平滑面と、前記ワークの前記非載置面を前記平滑面に向け移動して押し付ける押圧部と、を有し、
前記平滑面は、弾性変形可能な材料からなり、前記平滑面にて前記ワークの前記非載置面が保持された状態で、前記平滑面が前記非載置面に沿って凹状に弾性変形し、
前記押圧部による前記ワークの押し付け力は、前記保持部の前記平滑面において前記ワークの前記非載置面と圧接する部位が部分的に圧縮変形するように設定され、
前記制御部は、前記調圧部により前記密閉室が減圧された状態で、前記駆動部により前記ワークの前記載置面及び前記半導体素子が前記キャビティ内の前記未硬化樹脂に浸漬され、前記未硬化樹脂の硬化により成形品が形成されるように制御することを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
前記第一成形型の前記保持部は、前記ワークを着脱自在に保持する保持チャックを有し、前記押圧部として真空吸引する吸着孔が用いられることを特徴とする請求項1記載の樹脂封止装置。
【請求項3】
前記第一成形型のベース面に対して、前記保持部となる成形板が着脱自在に取り付けられ、前記成形板の表面側に前記平滑面が設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂封止装置。
【請求項4】
大気雰囲気で第一成形型及び第二成形型の対向方向へ相対的に離隔移動した前記第一成形型の保持部に対して、半導体素子が搭載されたワークを着脱自在に保持するとともに、前記第二成形型のキャビティ内に未硬化樹脂を供給する搬入工程と、
前記第一成形型又は前記第二成形型のいずれか一方か若しくは両方が駆動部で前記第一成形型及び前記第二成形型の対向方向へ相対的に接近移動して、前記第一成形型と前記第二成形型の間に密閉室を形成するとともに、調圧部で前記密閉室から外部空間へ排気して大気雰囲気から減圧させる減圧工程と、
前記密閉室が所定真空度に減圧された状態で、前記駆動部により前記ワークの前記半導体素子が搭載される載置面及び前記半導体素子を前記キャビティ内の前記未硬化樹脂に浸漬させる浸漬工程と、
前記未硬化樹脂の硬化により前記ワークの前記載置面及び前記半導体素子が樹脂封止された成形品を形成する硬化工程と、
前記第一成形型の前記保持部から前記ワークの前記載置面と逆側の非載置面を剥離して、前記第一成形型と前記第二成形型を前記駆動部により離隔移動させる搬出工程と、を含み、
前記第一成形型の前記保持部は、前記ワークの前記非載置面と対向して弾性変形可能な材料からなる平滑面と、前記ワークの前記非載置面を前記平滑面に向け移動して押し付ける押圧部と、を有し、
前記搬入工程では、前記平滑面にて前記ワークの前記非載置面が保持された状態で、前記平滑面を前記非載置面に沿って凹状に弾性変形させ、前記押圧部により前記保持部の前記平滑面において前記ワークの前記非載置面と圧接する部位を部分的に圧縮変形させることを特徴とする樹脂封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージなどのパッケージを作成するため、半導体素子が搭載されるワークを樹脂封止した成形品を製造する際に用いられる樹脂封止装置、及び、パッケージを製造するための樹脂封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の樹脂封止装置として、上型に封止前基板を吸着する吸着固定部(通気性部材,吸引排出孔)と、封止前基板の基板外周部を上型面との間で狭持する狭持固定部(チャック部材)が設けられ、上型に封止前基板を装着固定し、且つ、フィルムを下型のキャビティ面に装着固定したキャビティ空間部に溶融樹脂が供給された状態で、上型に対し中間型及び下型を上動させることにより、封止前基板のチップ部分から基板貫通孔部分までが溶融樹脂に浸漬されて樹脂封止成形する半導体チップの樹脂封止成形方法がある(例えば、特許文献1参照)。
樹脂封止時には、封止前基板の金型貫通孔にも溶融樹脂が浸漬する。金型貫通孔に浸漬した溶融樹脂が、金型貫通孔を貫通して封止前基板の非装着面側へ廻り込まないように、第二の離型フィルム(第二フィルム)を隙間なく確実に密着させている。
第二フィルムにおいて封止前基板の非装着面と対向する側は、微粘着層を有し、第二フィルムが封止前基板の非装着面と上型面との間に供給されて、封止前基板の非装着面を第二フィルムで被覆している。
好ましくは、金型(上型・中間型・下型)が完全に型締め状態となる直前に、吸着固定部の吸引排出作用から圧送作用に切換えて、第二フィルムを介して圧送することにより、封止前基板の非装着面と第二フィルムとの密着強度をより一層高めて、非装着面側に溶融樹脂が廻り込まないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−225133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に樹脂封止成形に用いられる樹脂材料(エポキシ系などの熱硬化性樹脂)は、減圧雰囲気において加熱溶融されると、樹脂の中に内在する揮発成分が気化して発泡するため、この発泡により発生した気体の圧力で部分的に圧力を上昇させる現象が発生する。
しかし乍ら、特許文献1では、上型面の吸着固定部(通気性部材,吸引排出孔)と第二フィルムを挟んで封止前基板の非装着面が吸着固定されるため、溶融樹脂が減圧に伴い発泡してガスと微細な樹脂成分が発生する材料であると、発泡ガスに混じった微細な樹脂成分が、上型面の吸着固定部(通気性部材)と第二フィルムの隙間に侵入するおそれがある。
特に、通気性部材は、封止前基板の非装着面を吸着する金属・セラミック等の通気性を有する材料が用いられるため、通気性部材と第二フィルムの間には、隙間が発生し易い。
これにより、上型面の吸着固定部(通気性部材)と第二フィルムの隙間から通気性部材及び吸引排出孔を通って真空引き機構まで到達し、固化して故障などのダメージを受けるだけでなく、装置の配管なども経時的に変化させて、故障の原因となるという問題もあった。
そこで、このような問題点を解決するため、上型面の吸着固定部(通気性部材,吸引排出孔)の分解洗浄で侵入固化した樹脂を除去することが考えられる。しかし、侵入固化した樹脂による悪影響を防ぐには上型の分解洗浄を頻繁に行う必要がある。このため、分解洗浄の度に装置全体を運転停止させなければならず、稼働率が低下するという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を達成するために本発明に係る樹脂封止装置は、半導体素子が搭載されたワークの保持部を有する第一成形型と、前記第一成形型の前記保持部に保持した前記ワークの前記半導体素子が搭載される載置面と対向状に設けられて未硬化樹脂が供給されるキャビティを有する第二成形型と、前記第一成形型及び前記第二成形型の間に形成される開閉自在な密閉室と、前記第一成形型又は前記第二成形型のいずれか一方か若しくは両方を前記第一成形型及び前記第二成形型の対向方向へ相対的に接近移動させる駆動部と、前記密閉室及び外部空間に亘り排気又は給気して大気雰囲気から所定真空度の減圧雰囲気まで内圧調整する調圧部と、前記駆動部及び前記調圧部を作動制御する制御部と、を備え、前記第一成形型の前記保持部は、前記ワークの前記載置面と逆側の非載置面と対向する平滑面と、前記ワークの前記非載置面を前記平滑面に向け移動して押し付ける押圧部と、を有し、前記平滑面は、弾性変形可能な材料からなり、前記平滑面にて前記ワークの前記非載置面が保持された状態で、前記平滑面が前記非載置面に沿って凹状に弾性変形し、前記押圧部による前記ワークの押し付け力は、前記保持部の前記平滑面において前記ワークの前記非載置面と圧接する部位が部分的に圧縮変形するように設定され、前記制御部は、前記調圧部により前記密閉室が減圧された状態で、前記駆動部により前記ワークの前記載置面及び前記半導体素子が前記キャビティ内の前記未硬化樹脂に浸漬され、前記未硬化樹脂の硬化により成形品が形成されるように制御することを特徴とする。
また本発明に係る樹脂封止装方法は、大気雰囲気で第一成形型及び第二成形型の対向方向へ相対的に離隔移動した前記第一成形型の保持部に対して、半導体素子が搭載されたワークを着脱自在に保持するとともに、前記第二成形型のキャビティ内に未硬化樹脂を供給する搬入工程と、前記第一成形型又は前記第二成形型のいずれか一方か若しくは両方が駆動部で前記第一成形型及び前記第二成形型の対向方向へ相対的に接近移動して、前記第一成形型と前記第二成形型の間に密閉室を形成するとともに、調圧部で前記密閉室から外部空間へ排気して大気雰囲気から減圧させる減圧工程と、前記密閉室が所定真空度に減圧された状態で、前記駆動部により前記ワークの前記半導体素子が搭載される載置面及び前記半導体素子を前記キャビティ内の前記未硬化樹脂に浸漬させる浸漬工程と、前記未硬化樹脂の硬化により前記ワークの前記載置面及び前記半導体素子が樹脂封止された成形品を形成する硬化工程と、前記第一成形型の前記保持部から前記ワークの前記載置面と逆側の非載置面を剥離して、前記第一成形型と前記第二成形型を前記駆動部により離隔移動させる搬出工程と、を含み、前記第一成形型の前記保持部は、前記ワークの前記非載置面と対向して弾性変形可能な材料からなる平滑面と、前記ワークの前記非載置面を前記平滑面に向け移動して押し付ける押圧部と、を有し、前記搬入工程では、前記平滑面にて前記ワークの前記非載置面が保持された状態で、前記平滑面を前記非載置面に沿って凹状に弾性変形させ、前記押圧部により前記保持部の前記平滑面において前記ワークの前記非載置面と圧接する部位を部分的に圧縮変形させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態(第一実施形態)に係る樹脂封止装置の全体構成を示す説明図で、初期状態(搬入工程)の縦断正面図である。
図2】同平面図及び断面図で、(a)がワークや未硬化樹脂や離型シートを省略した縮小横断平面図、(b)が図2(a)の(2B)−(2B)線に沿える縦断面図である。なお、図1は、図2(a)の(1)−(1)線に沿える縦断側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る樹脂封止方法の作動過程を示す説明図で、(a)が減圧開始時の縦断正面図、(b)が型接近移動中の縦断正面図である。
図4】その後の作動過程を示し、(a)が浸漬工程の縦断正面図、(b)が圧縮工程及び硬化工程の縦断正面図である。
図5】その後の作動過程を示し、(a)が大気開放工程の縦断正面図、(b)が搬出工程の縦断正面図である。
図6】本発明の実施形態に係る樹脂封止装置の変形例を示す説明図で、初期状態(搬入工程)の縦断正面図である。
図7】本発明の実施形態に係る樹脂封止装置の変形例を示す説明図で、初期状態(搬入工程)の縦断正面図である。
図8】本発明の第二実施形態に係る樹脂封止装置を示す説明図で、初期状態搬入工程)の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る樹脂封止装置Aは、図1図8に示すように、半導体組立プロセスでワークWに複数又は単数の半導体素子Cが搭載され、且つワークWの基板端子と半導体素子Cがワイヤーなどの接続部材C1で接続した製品を、接続部材C1の周囲が未硬化樹脂Rで加圧封止されて硬化させる成形品Mの製造装置である。これにより、成形品Mは、製品の半導体素子C及び接続部材C1を衝撃、温度、湿度などの要因から守ることが可能になる。このような樹脂による成形を半導体業界では、「モールド成形(樹脂封止、樹脂成形)」などと呼んでいる。
ワークWとしては、シリコンウエハ、ガラス、金属シート、ガラスクロス、BTレジンなどからなる基板やそれに類似するものが挙げられる。
半導体素子Cとしては、半導体チップなどのチップ状の電子部品が挙げられ、ワークWとしてシリコンウエハの載置面W1に搭載される場合には、複数の半導体素子Cが列状又は格子状に搭載される。接続部材C1としては、バンプやワイヤなどが挙げられる。
未硬化樹脂Rとしては、シート状、粉末状、顆粒状、ゲル状などのものが用いられる。未硬化樹脂Rの材料としては、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。エポキシ系樹脂の場合は、加熱を開始して所定時間で熱分解し、溶融状態から時間経過に伴って粘度が高まり、比較的に短時間で熱硬化して固化するため、モールド成形に適している。
このように樹脂封止装置Aで製造された成形品Mは、一般的にダイシングなどの分割工程を経て、最終製品である半導体パッケージなどのパッケージを完成させる。
【0008】
詳しく説明すると、本発明の実施形態に係る樹脂封止装置Aは、ワークWの保持部11を有する第一成形型1と、第一成形型1の保持部11に保持されたワークWの載置面W1と対向状に設けられてキャビティ21を有する第二成形型2と、第一成形型1及び第二成形型2の間に形成される開閉自在な密閉室31と、第一成形型1又は第二成形型2のいずれか一方か若しくは両方を第一成形型1及び第二成形型2の対向方向へ相対的に接近移動して型締めする昇降用の駆動部4と、密閉室31の内圧を調整する調圧部5と、を主要な構成要素として備えている。
さらに必要に応じて、未硬化樹脂R及びキャビティ21の間には、キャビティ21に沿って変形可能な離型シートSを設けることが好ましい。離型シートSは、例えばアフレックス(登録商標)やETFEなどのフッ素樹脂又はシリコーンなどの伸縮性に優れた耐熱材料からなるフィルムであり、そのサイズをワークWやキャビティ21よりも大きく形成している。
また、キャビティ21内の未硬化樹脂Rを加圧して圧縮変形させることにより、樹脂封止された成形品Mの内部に気泡(ボイド)が発生しないモールド成形を作製可能にしている。
このため、本発明の実施形態に係る樹脂封止装置Aは、キャビティ21に対する離型シートSの位置決め部6と、未硬化樹脂Rを圧縮する加圧部7と、を備えることが好ましい。
昇降用の駆動部4及び調圧部5に加えて、位置決め部6や加圧部7などは、制御部8と電気的に連通し、制御部8でそれぞれ作動制御される。
なお、第一成形型1及び第二成形型2は、図1図8に示されるように通常、上下方向へ対向するように配置され、上側の第一成形型1と下側の第二成形型2が接近又は隔離する方向を以下「Z方向」という。Z方向と交差するワークWに沿った方向を以下「XY方向」という。
【0009】
第一成形型1は、金属などの剛体で歪み(撓み)変形しない厚さの平板状に形成され、その表面には、ワークWの載置面W1と逆側の非載置面W2とZ方向へ対向する保持部11を有している。
第一成形型1の保持部11は、所定のタイミングでワークWの非載置面W2と接触してワークWを着脱自在で且つ脱落不能に保持し、ワークWの載置面W1及び半導体素子Cを後述する第二成形型2のキャビティ21に向けて押し付けるものである。これにより、キャビティ21内の未硬化樹脂Rに対してワークWの載置面W1及び半導体素子Cが浸漬されるとともに、ワークW及び未硬化樹脂Rをプレスする型締めが行われる。
第一成形型1の保持部11は、ワークWの非載置面W2と対向する平滑面11aを有している。
平滑面11aは、弾性変形可能な材料からなり、平滑面11aにてワークWの非載置面W2が押圧された状態で、平滑面11aが非載置面W2に沿って凹状に弾性変形するように構成されている。
第一成形型1の具体例として図1図8に示される例の場合には、第一成形型1がモールド成形の基板側に配置される上型である。この上型の下側面には、ワークWの保持部11が設けられる。保持部11の平滑面11aは、第一成形型1に対するワークWの押し込み(押圧)でワークWの非載置面W2と圧接する部位が部分的に圧縮されて凹状に弾性変形するように形成されている。これにより、保持部11の平滑面11aとワークWの非載置面W2と面接触して略完全な密着状態となる。
図示例の場合には、第一成形型1のベース面11oに対して、保持部11となる成形板11pが着脱自在に取り付けられ、成形板11pの表面側に平滑面11aとなる板状部材を設けている。
平滑面11aとなる板状部材は、未硬化樹脂Rと離形性が高い材料で構成することが好ましい。未硬化樹脂Rと離形性が高い材料としては、硬度が低いフッ素樹脂などが挙げられ、板状部材の表面に対する平滑面11aの構成方法としては、ライニングを含むコーティング処理や、粘着シート(テープ)による貼着なども可能である。
【0010】
さらに、第一成形型1の保持部11(平滑面11a)には、ワークWを着脱自在に保持するための保持チャック12が設けられる。保持チャック12は、ワークWの非載置面W2とZ方向へ対向する保持面12aを有する。保持チャック12としては、後述する粘着チャック12bを用いることが好ましい。
保持チャック12が後述する粘着チャック12bである場合には、保持部11とワークWの非載置面W2との間に離型シートSを挟み込むことなく粘着チャック12bでワークWが直接的に粘着保持される。
図1図8に示される例では、ワークWとして円板状のシリコンウエハが用いられ、第一成形型1の保持部11(平滑面11a)に対しシリコンウエハを保持チャック12(粘着チャック12b)で吊持している。
これに加えて、図1図7に示される本発明の第一実施形態に係る樹脂封止装置Aでは、キャビティ21の内底面に対して直接的に離型シートSが載置される。
また、その他の例として図示しないが、ワークWとしてシリコンウエハに代え、ガラス、金属シート、ガラスクロス、BTレジンなどからなる基板やそれに類似するものを保持(吊持)することや、ワークWの外形状を矩形(長方形及び正方形を含む角が直角の四辺形)状などに変更することなどが可能である。
【0011】
保持チャック12となる粘着チャック12bは、その全体又は一部が例えばフッ素ゴムやエラストマー、ブチルゴム、感光性樹脂、アクリル系やシリコン系などの粘着材料からなり、保持面12aとなる粘着面を有している。保持チャック12(粘着チャック12b)において少なくとも保持面(粘着面)12aは、弾性変形可能な材料からなり、第一成形型1の保持部11(平滑面11a)から若干突出させることが好ましい。
粘着チャック12bの具体例として図1図8に示される例の場合には、第一成形型1の保持部11(平滑面11a)に複数の凹溝部11bが分散して形成され、各凹溝部11bの直径を約10mm以下に設定している。各凹溝部11bの内部には、粘着シートが嵌着され、その保持面(粘着面)12aを第一成形型1の保持部11(平滑面11a)から僅か(約50um以下)に突出させている。
これにより、密閉室31が所定真空度の減圧雰囲気DPになってもワークWが落下不能になる。その結果、減圧された密閉室31内で未硬化樹脂Rが発泡しても、調圧部5でガスを密閉室31の外部に効率よく排気可能となると同時に、ワークWの載置面W1及び半導体素子Cの隙間C2から確実に排気可能となる。このため、樹脂封止の内部に気泡となって残存せず、ボイドの発生を防止でき、高精度に樹脂封止されたパッケージを実現できて、品質の向上が図れる。
また、第一成形型1の保持部11(平滑面11a)にワークWの非載置面W2が保持(吊持)されるため、後述する減圧工程おいてワークWの載置面W1及び半導体素子Cと、キャビティ21内の離型シートSや未硬化樹脂Rとの間に所定のギャップ(間隙)を空けた状態で、密閉室31内の気体が外部空間Oへ排出(真空排気、真空引き)することが可能になる。これにより、密閉室31の中で未硬化樹脂Rの表面が十分に真空暴露され、未硬化樹脂Rの脱泡が促進される。
このため、ワークWの載置面W1と半導体素子Cの接続部材C1を除く隙間C2の全体に対する未硬化樹脂Rの進入性に優れ、内部に気泡(ボイド)がより発生しないモールド成形を安定して製作することができる。
なお、その他の例として図示しないが、ワークWの保持チャック12として粘着チャック12aに代え静電チャックを用いることや、粘着チャック12aに加えて吸着チャックや静電チャックを併用することなどの変更が可能である。
【0012】
さらに、第一成形型1の保持部11(平滑面11a)は、ワークWの非載置面W2を保持チャック12(粘着チャック12b)の保持面(粘着面)12aに向け移動して強制的に押し付ける押圧部13と、保持チャック12(粘着チャック12b)の保持面(粘着面)12aからワークWの非載置面W2を剥がす剥離部14と、を有することが好ましい。
押圧部13によるワークWの押し付け力は、第一成形型1の保持部11(平滑面11a)と、保持部11(平滑面11a)から若干突出する保持チャック12(粘着チャック12b)の保持面(粘着面)12aと、をそれぞれワークWの非載置面W2で押し込む(押圧)ように設定される。押圧部13により、第一成形型1の保持部11(平滑面11a)においてワークWの非載置面W2と圧接する部位が部分的に圧縮変形するとともに、保持チャック12(粘着チャック12b)の保持面(粘着面)12aが押し潰され、第一成形型1の保持部11(平滑面11a)とワークWの非載置面W2とが密接し、両者間に未硬化樹脂Rが入り込む間隙を生じさせないように構成される。
押圧部13の具体例として図1図8に示される例の場合には、第一成形型1の保持部11(平滑面11a)に、真空吸引する吸着孔13aが開設され、吸着孔13aのサイズを凹溝部11bのサイズと略同等に設定して複数分散配置している。各吸着孔13aは、管路13bを通って減圧ポンプや真空吸引又は気体噴射するコンプレッサなどのアクチュエータ(図示しない)と連通している。アクチュエータの作動で吸着孔13aから真空吸引することにより、ワークWの非載置面W2が粘着チャック12bに向け引き寄せられて非載置面W2を保持面(粘着面)12aに押し付ける。
剥離部14としては、第一成形型1に対してZ方向へ往復動自在に設けられる押しピン14aを用い、押しピン14aの先端でワークWの非載置面W2を保持面(粘着面)12aから押し剥がすことが好ましい。剥離部14の他の例として、吸着孔13aから圧縮気体を噴射することにより、保持面(粘着面)12aからワークWの非載置面W2を押し剥がすことも可能である。
図1図8に示される例の場合には、各吸着孔13aの周囲に複数の粘着チャック12が分散配置されている。図5(a)に示される例の場合には、剥離部14として押しピン14aのみでワークWを押し剥がしている。
また、その他の例として図示しないが、ワークWの押圧部13として吸着孔13aに代えて静電チャックを用い、静電チャックによる電磁的な引力でワークWの非載置面W2を保持チャック12(粘着チャック12b)に向け引き寄せて押し付けることや、電気的な斥力で保持面(粘着面)12aからワークWの非載置面W2を押し剥がすことなどの変更が可能である。剥離部14として押しピン14aと、吸着孔13aからの圧縮気体の噴射を併用することも可能である。
【0013】
第二成形型2は、金属などの剛体で歪み(撓み)変形しない厚さの平板状に形成され、半導体素子Cを搭載したワークWの載置面W1とZ方向へ対向する第二成形型2の表面は、未硬化樹脂Rが供給されるキャビティ21を有する。
キャビティ21は、少なくともワークWの載置面W1に搭載されたすべての半導体素子Cが入る大きさで且つワークWの載置面W1まで入る深さを有する容積の凹状に形成される。
少なくとも第二成形型2には、キャビティ21及びその周囲を加熱するためのヒータ(図示しない)が設けられる。加熱用のヒータは第一成形型1に設けることも可能である。
第二成形型2の具体例として図1図8に示される例の場合には、モールド成形の樹脂側に配置される下型である。この下型の上側面の中央部には、未硬化樹脂Rとすべての半導体素子C及び接続部材C1が入る円形凹状のキャビティ21を一体的に形成している。さらに、キャビティ21と連続して、ワークWの全体が入る円形状の凹部を一体的に形成している。
また、その他の例として図示しないが、キャビティ21の形状は、ワークWの外形状に対応して矩形凹状などに変更することや、ワークWの全体が入る凹部を形成せずキャビティ21のみを形成することなどの変更が可能である。
【0014】
未硬化樹脂Rの具体例として図1図5に示される例の場合には、キャビティ21の形状及びサイズに対応した外形状のシート状の熱硬化性樹脂R1が、キャビティ21内に供給され、加熱用のヒータで溶融している。
また、未硬化樹脂Rの他の例として、図6に示されるように粉末状又は顆粒状の熱硬化性樹脂R2をキャビティ21内に供給して加熱用のヒータで溶融することや、図7に示されるように未硬化樹脂層R31が樹脂含浸繊維基材R32に含浸された繊維含有樹脂基板R3をキャビティ21内に供給することなどの変更が可能である。それ以外に図示しないがゲル状の未硬化樹脂をキャビティ21内に供給することも可能である。
図6に示されるように粉末状又は顆粒状の熱硬化性樹脂R2は、シート状の熱硬化性樹脂R1や繊維含有樹脂基板R3に比べて、未硬化樹脂Rの微妙な容量調整を容易に行えて作業性に優れるという利点がある。
図7に示される繊維含有樹脂基板R3は、特許第5934078号公報に記載されるように、XY方向の線膨張係数が3ppmより小さい炭素繊維、ガラス繊維、石英ガラス繊維などからなる樹脂含浸繊維基材R32と、樹脂含浸繊維基材R32の片面上に形成された未硬化のエポキシ系樹脂などからなる未硬化樹脂層R31と、を有している。
図7に示される変形例では、未硬化樹脂層R31を硬化させた時の収縮応力が抑制可能となる。このため、ワークWとして大口径ウエハや金属等の大口径基板を封止した場合、特には薄いものを封止する場合であっても、ワークW(ウエハや基板)の反り、ワークW(ウエハや基板)からの半導体素子Cの剥離、ワークW(ウエハや基板)の破損を抑制でき、半導体素子Cを搭載したワークW(ウエハや基板)の載置面W1、又は半導体素子Cを形成したワークW(ウエハや基板)の載置面W1をワークW(ウエハや基板)のレベルで一括封止でき、かつ封止後には耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れるという利点がある。
【0015】
さらに、第二成形型2は、キャビティ21の底面部を構成する中央部位22と、キャビティ21の側面部となる外側部位23とに分割され、中央部位22及び外側部位23の間には、スペーサPや離型シートSの位置決め部6として吸気口61を設けることが好ましい。
すなわち、キャビティ21は、キャビティ21内において離型シートSで覆われた閉鎖空間(図示しない)と連通する吸気口61を有している。吸気口61は、キャビティ21の内側面に沿って環状のスリット状に形成され、真空ポンプなどの吸気装置62と連通している。
外側部位23は、離型シートSの有無と関係なく第一成形型1と接する従動部23aと、第一成形型1及び従動部23aのZ方向への移動を規制するストッパ23bと、従動部23aを第一成形型1に向けて常時付勢する弾性部材23cと、を有している。
従動部23aは、Z方向へ往復動自在に支持され、第一成形型1が従動部23aを介してストッパ23bと当接した状態で、第一成形型1の保持部11(平滑面11a)からキャビティ21の底面部までの間隔が、ワークWを含めた成形品Mの厚みと同じか又はそれによりも長くなるように設定されている。
また、その他の例として図示しないが、第二成形型2を中央部位22と外側部位23に分割せずに一体形成することや、外側部位23との形状及び構造を図示以外の形状及び構造に変更することなども可能である。
【0016】
これに加えて第二成形型2の外側部位23には、未硬化樹脂Rの加圧部7を設けることが好ましい。
未硬化樹脂Rの加圧部7は、キャビティ21の外側に連続して形成される越流路71と、越流路71へ向け突出自在に設けられるプランジャ72と、越流路71内の未硬化樹脂R及びプランジャ72の間に設けられる変形可能な分離部73と、を有している。
越流路71は、図2に示されるように、キャビティ21の周囲に複数の越流路71をそれぞれ所定間隔毎に形成することが好ましい。複数の越流路71には、複数のプランジャ72がそれぞれ設けられ、複数の越流路71及び複数のプランジャ72をキャビティ21の形状に対して対称的な配置とすることが好ましい。
プランジャ72は、越流路71の容積を可変させるために外側部位23の従動部23aなどに対してZ方向へ往復動自在に支持される。プランジャ72を越流路71に向け突出移動させることにより、越流路71内の未硬化樹脂Rが加圧されてキャビティ21側に押し返すように構成されている。
分離部73は、キャビティ21に沿って供給された離型シートSの外周部に一体形成することが好ましい。
加圧部7の具体例として図1図8に示される例の場合には、円形凹状のキャビティ21の外周に複数の越流路71をそれぞれ周方向へ所定間隔毎でかつ且つXY方向へ放射状に配置し、各越流路71の底面先端にプランジャ72を配置している。
また、その他の例として図示しないが、キャビティ21の形状を矩形凹状などに変更した場合には、各辺や各角部に複数の越流路71を所定間隔毎に配置するなど、越流路71の配置数や形状又はプランジャ72の配置箇所を図示例以外に変更することも可能である。
これにより、樹脂封止された成形品M内の気泡(ボイド)の発生防止が達成可能になる。これと同時に越流路71からキャビティ21側に押し返された未硬化樹脂Rの流勢により、ワークWの基板端子と半導体素子Cをつなぐワイヤーなどの接続部材C1が変形するなどの悪影響の発生防止も達成可能になる。接続部材C1の変形などによる悪影響としては、ワークWの基板に対する半導体素子Cの位置ズレ、接続部材C1の断線、半導体素子Cの破損などが挙げられる。
【0017】
密閉室31は、真空チャンバーなどからなる真空装置3の内部に形成され、真空ポンプなどの調圧部5の作動で密閉室31から気体を排出(真空排気、真空引き)することが好ましい。これにより、密閉室31は、大気雰囲気APから所定真空度の減圧雰囲気DPまで変圧調整可能に構成される。
真空装置3は、密閉室31にワークW,未硬化樹脂R,離型シートS及び成形品Mなどを出し入れするためにその全体又は一部が開閉自在に構成される。真空装置3内の密閉室31と真空装置3の外部空間Oに亘って、例えば搬送ロボットなどの搬送機構(図示しない)を設けることで自動化が図れる。
詳しく説明すると、密閉室31が大気雰囲気APである時に、ワークW,未硬化樹脂R及び離型シートSを搬送機構により密閉室31へそれぞれ搬入する。密閉室31が所定真空度の減圧雰囲気DPになってから、モールド成形を行う。モールド成形が完了した後は、大気雰囲気APに戻して成形品Mを密閉室31から外部空間Oへ搬出する。
真空装置3の具体例として図1図8に示される例の場合には、真空装置3の上側を構成する第一成形型1の外周に周壁部32が、真空装置3の下側を構成する第二成形型2の外周部と着脱自在に密接するように設けられている。周壁部32は、第二成形型2の外周部とZ方向へ密着するシール部位32aと、Z方向へ弾性変形可能な伸縮部位32bと、を有している。
また、その他の例として図示しないが、第一成形型1の周壁部32に代えて、第二成形型2の外周に周壁部を設けることや、第一成形型1及び第二成形型2の外周にZ方向へ分離可能な周壁部を設けることなどの変更が可能である。
【0018】
昇降用の駆動部4は、第一成形型1又は第二成形型2のいずれか一方か若しくは第一成形型1及び第二成形型2の両方をZ方向へ往復動させるアクチュエーターなどで構成され、後述する制御部8により作動制御している。
制御部8による昇降用の駆動部4の制御例としては、図1の実線に示されるワークWや未硬化樹脂Rなどの搬入時と、少なくとも図5(b)に示される成形品Mの搬出時には、第一成形型1と第二成形型2をZ方向へ相対的に離隔移動させる。それ以外は、図3(a)(b)及び図4(a)(b)に示されるように、第一成形型1と第二成形型2をZ方向へ相対的に接近移動させる。特に必要がある場合には、第一成形型1と第二成形型2が更に接近移動してワークWや未硬化樹脂Rを加圧する。
詳しく説明すると、昇降用の駆動部4によって、搬入時や搬出時には、第一成形型1又は第二成形型2のいずれか一方を他方からZ方向へ相対的に離隔移動させるか、若しくは第一成形型1及び第二成形型2の両方を互いにZ方向へ相対的に離隔移動させる。それ以外は、第一成形型1又は第二成形型2のいずれか一方を他方へ向けZ方向へ相対的に接近移動させるか、若しくは第一成形型1及び第二成形型2の両方を互いにZ方向へ相対的に接近移動させる。
昇降用の駆動部4の具体例として、図1に示される例の場合には、第一成形型1のみを昇降用の駆動部4と連係させて、第一成形型1側を第二成形型2側に向けてZ方向へ接近移動させている。
また、その他の例として図示しないが、第二成形型2のみを昇降用の駆動部4と連係させて、第二成形型2側を第一成形型1側に向けZ方向へ相対的に接近移動させることや、第一成形型1及び第二成形型2をそれぞれ昇降用の駆動部4と連係させて、第一成形型1側と第二成形型2側を同時にZ方向へ接近移動することなどの変更も可能である。
【0019】
制御部8は、押圧部13のアクチュエータや昇降用の駆動部4や調圧部5だけでなく、調圧部5、位置決め部6の吸気装置62、加圧部7のプランジャ72の駆動源、ワークW,未硬化樹脂R及び離型シートSの搬送機構などにも電気的に接続するコントローラーである。
制御部8となるコントローラーは、その制御回路(図示しない)に予め設定されたプログラムに従って、予め設定されたタイミングで順次それぞれ作動制御している。
【0020】
そして、制御部8の制御回路に設定されたプログラムを、成形品Mを生産するための樹脂封止方法として説明する。
本発明の実施形態に係る樹脂封止方法は、開口した密閉室31へワークW,未硬化樹脂R及び離型シートSを搬入する搬入工程と、密閉室31を大気雰囲気APから所定真空度の減圧雰囲気DPまで減圧させる減圧工程と、密閉室31が所定真空度に減圧された状態でワークWの載置面W1及び半導体素子Cをキャビティ21内の未硬化樹脂Rに浸漬させる浸漬工程と、未硬化樹脂Rの硬化により樹脂封止する硬化工程と、密閉室31を開口させて成形品Mを取り出す搬出工程と、を主要な工程として含んでいる。
特に、浸漬工程と硬化工程の間には、越流路71に流出した未硬化樹脂Rをプランジャ72の突出移動により加圧する未硬化樹脂Rの圧縮工程を含むことが好ましい。
さらに、硬化工程と搬出工程の間には、密閉室31を減圧雰囲気DPから大気雰囲気APに戻す大気開放工程を含むことが好ましい。
【0021】
搬入工程では、図1及び図2に示すように、第一成形型1と第二成形型2がZ方向へ相対的に離隔移動され、大気雰囲気APで第一成形型1の保持部11(平滑面11a)に対し、ワークWを搬送機構で搬入して粘着チャック12により粘着保持する。これにより、保持部11の平滑面11aがワークWの非載置面W2に沿って凹状に弾性(圧縮)変形し、平滑面11aと非載置面W2とを密着させて、ワークWが保持部11(平滑面11a)の所定位置にセットされる。
また、第二成形型2のキャビティ21に向け搬送機構により離型シートS及び未硬化樹脂Rを供給する。これにより、キャビティ21の所定位置に離型シートSを介して未硬化樹脂Rがセットされる。
減圧工程では、図3(a)に示すように、第一成形型1又は第二成形型2のいずれか一方か若しくは両方を昇降用の駆動部4でZ方向へ相対的に接近移動して、第一成形型1と第二成形型2の間に亘り密閉室31を形成する。これに続いて、調圧部5で密閉室31内の気体を外部空間Oへ排出(真空排気、真空引き)して大気雰囲気APから減圧させている。この頃には、キャビティ21内の未硬化樹脂Rが加熱用のヒータで溶融されている。
その後も図3(b)に示すように、第一成形型1と第二成形型2が相対的に接近移動し、密閉室31が約100Pa以下の高真空になった頃には、溶融状態の未硬化樹脂RにワークWの載置面W1及び半導体素子Cが押し込まれる。この際、保持部11の平滑面11aとワークWの非載置面W2とは密接して両者間に間隙が無いため、溶融状態の未硬化樹脂Rなどが侵入しない。
浸漬工程では、図4(a)に示すように、第一成形型1と接した外側部位23の従動部23aが、ストッパ23bに突き当たるまでZ方向へ接近移動して型締めを行い、未硬化樹脂Rが加圧される。これにより、溶融状態の未硬化樹脂Rに対してワークWの載置面W1及び半導体素子Cを浸漬した容積分だけ、未硬化樹脂Rが越流路71に流れて溢れ出る。
圧縮工程では、図4(b)に示すように、プランジャ72が分離部73を介して越流路71へ向け突出移動する。これにより、分離部73を越流路71内に突出させた容積分の未硬化樹脂Rが、プランジャ72側へ流入することなく越流路71に押し返されて、キャビティ21内の未硬化樹脂Rを加圧し、未硬化樹脂Rが更に圧縮する。
その後の硬化工程では、ヒータによる加熱や時間経過などにより、キャビティ21及び越流路71内の未硬化樹脂Rが共に硬化して、ワークWの載置面W1及び半導体素子Cと、両者間の接続部材C1を除く隙間C2と、が一体的に樹脂封止される。
未硬化樹脂Rの硬化後の大気開放工程では、図5(a)に示すように、調圧部5で外部空間Oから密閉室31へ給気して大気雰囲気APに戻す。これと同時に、プランジャ72が逆移動して初期状態に戻す。この際、第一成形型1と第二成形型2が昇降用の駆動部4により離隔移動して、第一成形型1の保持部11(平滑面11a)からワークWの非載置面W2を剥離している。これにより、保持部11の平滑面11aにおいてワークWの非載置面W2と対向する部位は、ワークWの押し込み(押圧)が解除されるため、凹状から弾性(膨張)変形して、平滑面11aの全体がワークWを保持する前の平滑状態に復元される。
その後の搬出工程では、図5(b)に示すように、第一成形型1と第二成形型2が更に離隔移動して、真空装置3が完全に開口したところで、樹脂封止が完了した成形品M及び離型シートSを搬送機構により密閉室31から外部空間Oへ搬出する。成形品Mと離型シートSは、密閉室31内又は外部空間Oにおいて分離される。
【0022】
次に、本発明の第二実施形態に係る樹脂封止装置Aを図8に基づいて説明する。
本発明の第二実施形態に係る樹脂封止装置Aでは、キャビティ21の内部に板状のスペーサPを挟んで未硬化樹脂Rが供給され、前述した第一実施形態と同様に型締めして、モールド成形された成形品Mを製造するする構成が、前述した第一実施形態とは異なり、それ以外の構成は第一実施形態と同じものである。
スペーサPは、その厚みが異なるものを複数種類用意しておき、成形品Mの厚みに応じて適した厚みのスペーサPが用いられる。
このため、第二実施形態では、図8に示される初期状態において、キャビティ21の内底面に対してスペーサPと離型シートSが重なり合うようにセットされ、離型シートSの上に未硬化樹脂Rが供給される。それ以降は、第二実施形態も前述した第一実施形態の図3(a)(b)〜図5(a)(b)と同様に作動制御している。
スペーサPの具体例として図8に示される場合には、初期状態においてキャビティ21の内部に一枚のスペーサPをセットしている。これに代えて図示しないが、複数枚のスペーサPを組み合わせてセットすることも可能である。
また、その他の例として図示しないが、未硬化樹脂Rとしてシート状の熱硬化性樹脂R1を、図6に示される粉末状又は顆粒状の熱硬化性樹脂R2に代えることや、図7に示される未硬化樹脂層R31が樹脂含浸繊維基材R32に含浸された繊維含有樹脂基板R3に代えるなどの変更が可能である。
これにより、スペーサPの厚み分だけ成形品Mの厚みが薄くなるため、キャビティ21の深さが一定であっても厚みが異なる複数種類の成形品Mが容易に製造可能になる。
【0023】
このような本発明の実施形態(第一実施形態及び第二実施形態)に係る樹脂封止装置A及び樹脂封止方法によると、第一成形型1の保持部11でワークWを保持することにより、保持部11の平滑面11aがワークWの非載置面W2に沿って凹状に弾性変形し、平滑面11aと非載置面W2が密着する。
調圧部5で密閉室31内が所定真空度の減圧雰囲気DPに減圧されることに伴い、キャビティ21内の未硬化樹脂Rが発泡してガスと微細な樹脂成分が発生する。この状態で、駆動部4にてワークWの載置面W1及び半導体素子Cが未硬化樹脂Rに浸漬される。
これにより、密着した保持部11の平滑面11aとワークWの非載置面W2の間には、発泡ガスと微細な樹脂成分(発泡ガスに混じった微細な樹脂成分)が侵入しない。これと同時に、ワークWの載置面W1と半導体素子Cの接続部材C1を除く隙間C2の全体には、未硬化樹脂Rがスムーズに進入し、数10um程度の狭い隙間C2であっても十分に未硬化樹脂Rが行き渡る。
これに続いて未硬化樹脂Rの硬化で成形品Mが形成される。
したがって、第一成形型1の保持部11でワークWを保持しながら両者間への発泡ガス及び微細な樹脂成分(発泡ガスに混じった微細な樹脂成分)の侵入を防止することができる。
その結果、減圧に伴い発生する樹脂の発泡ガス及び微細な樹脂成分が上型面の吸着固定部(通気性部材)と第二フィルムの隙間に侵入し易い従来のものに比べ、減圧に伴い未硬化樹脂Rから発泡ガスと微細な樹脂成分が発生しても、保持部11の平滑面11aにワークWの非載置面W2が貼り付いて固化しない。
このため、ワークWの非載置面W2に樹脂成分の付着が無い成形品Mを安定して且つスムーズに製作することができる。このため、高精度に樹脂封止されたパッケージを実現できて、品質の向上が図れる。
さらに、隙間に侵入固化した樹脂の除去を図って頻繁に分解洗浄を行う必要もないから、連続運転可能となって稼働率の向上も図れる。
【0024】
さらに、第一成形型1の保持部11は、ワークWを着脱自在に保持する保持チャック12と、ワークWの非載置面W2を保持チャック12に向け移動して押し付ける押圧部13と、を有し、押圧部13によるワークWの押し付け力を、保持部11の平滑面11aにおいてワークWの非載置面W2と圧接する部位が部分的に圧縮変形するように設定することが好ましい。
この場合には、保持部11の押圧部13により、第一成形型1の保持部11(平滑面11a)においてワークWの非載置面W2と圧接する部位が部分的に圧縮変形し、保持部11の平滑面11aとワークWの非載置面W2とが密接して、両者間に未硬化樹脂Rの入り込む間隙が生じない。
したがって、ワークWの保持チャック12に対する発泡ガス及び微細な樹脂成分(発泡ガスに混じった微細な樹脂成分)の付着や浸透を防止することができる。
その結果、保持チャック12の経時的に変化せず、長期間に亘り安定して使用でき、稼働率が低下しない。
特に、保持部11の押圧部13として、真空吸引する吸着孔13aが用いられる場合であっても、保持部11の平滑面11aとワークWの非載置面W2との隙間を通って、発泡ガスに混じった微細な樹脂成分が吸着孔13aに真空吸引されて浸入しない。
これにより、発泡ガスに混じった微細な樹脂成分が、吸着孔13aから管路13bを通って減圧ポンプなどのアクチュエータまで到達することがなく、管路13b及び樹脂封止装置Aの配管や減圧ポンプなどのアクチュエータの故障を防止できる。
【0025】
また、第一成形型1のベース面11oに対して、保持部11となる成形板11pが着脱自在に取り付けられ、成形板11pの表面側に平滑面11aを設けることが好ましい。
この場合には、平滑面11aに破損や重度の汚損などのトラブルが発生しても、第一成形型1のベース面11oに対して成形板11pの交換だけで対向可能になる。
したがって、第一成形型1に対して保持部11及び平滑面11aを着脱することができる。
その結果、第一成形型1の全体を取り外して交換する必要があるものに比べ、短時間で平滑面11aの交換作業を完了でき、樹脂封止装置Aによる成型作業の再開が可能になる。このため、稼働率の低下を防止でき、交換に伴うコストの低減化も図れる。
特に、平滑面11aとなる板状部材を未硬化樹脂Rと離形性が高い材料で構成した場合には、成形後の成形品Mの取出し時において破損などをすることがなく、また成形後に平滑面11aとなる板状部材に付着した未硬化樹脂Rの硬化物も容易に離形できるため、清掃も簡便になる。
さらに、平滑面11aとなる板状部材を粘着シートによる貼着で第一成形型1のベース面11oに対して着脱自在に取り付けた場合には、平滑面11aとなる板状部材の交換作業が簡便で、専門業者でない使用ユーザーでも現場内で簡単に交換することができる。コーティングのような熱処理の必要が無いため、平滑面11aとなる板状部材が熱処理によって歪むこともなく、より高精度に樹脂封止されたパッケージを実現できて、更なる品質の向上が図れる。
【0026】
なお、前示の第一実施形態及び第二実施形態において図示例では、第一成形型1がモールド成形の基板側に配置される上型であり、第二成形型2がモールド成形の樹脂側に配置される下型であるが、これに限定されず、第一成形型1がモールド成形の樹脂側に配置される下型であり、第二成形型2がモールド成形の基板側に配置される上型であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
A 樹脂封止装置 1 第一成形型
11 保持部 11a 平滑面
11o ベース面 11p 成形板
12 保持チャック 13 押圧部
2 第二成形型 21 キャビティ
31 密閉室 4 駆動部
5 調圧部 8 制御部
AP 大気雰囲気 DP 減圧雰囲気
C 半導体素子 M 成形品
O 外部空間 R 未硬化樹脂
W ワーク W1 載置面
W2 非載置面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8