(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6557430
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】歯口隙間の大きさが変更可能な横編機構造
(51)【国際特許分類】
D04B 15/32 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
D04B15/32
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-23597(P2019-23597)
(22)【出願日】2019年2月13日
【審査請求日】2019年2月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】393010101
【氏名又は名称】佰龍機械廠股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】林 裕盛
(72)【発明者】
【氏名】李 志強
【審査官】
姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2002/046508(WO,A1)
【文献】
特開2002−020952(JP,A)
【文献】
特開平11−061604(JP,A)
【文献】
特開平09−031806(JP,A)
【文献】
特開2004−316063(JP,A)
【文献】
特開2006−183181(JP,A)
【文献】
特開2007−231447(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/074944(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 15/32
D04B 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの針床であって、それぞれバットを備える複数の編針と、そのうち1つの前記編針に対応して設けられ、各前記バットと同じ側に設けられる制御バットを備える複数のキャリッジとを有し、当該2つの針床が互いに間隔を隔てて設けられることにより、互いに対向するキャリッジにより歯口隙間が設定され、前記歯口隙間の間隔は、互いに対向する2つの前記キャリッジの間隔に等しく、各前記編針により編針の延伸線が設定され、各前記バットは、そのうち1つの前記編針の延伸線上にそれぞれ配置され、各前記制御バットは、そのうち1つの前記編針に対応して前記編針の延伸線上に配置され、各前記キャリッジは、前記制御バットが成形された延伸区間と、前記延伸区間に接続される湾曲区間と、前記湾曲区間に接続されるとともにそのうち1つの前記編針の先端に並列して設けられる編目進入区間とを備える2つの針床と、
そのうち1つの前記針床に向くようにそれぞれ設けられ、且つ、これらのバットを受け入れるとともに各前記編針が前記歯口隙間に向かって編成行程にて移動するようにガイドする編針カムと、これらの制御バットを受け入れるキャリッジカムとを備え、前記キャリッジカムは、これらのキャリッジを連動させて前記歯口隙間の大きさを変更する変位行程を有するように制御される2つのカムシステムとを含むことを特徴とする歯口隙間の大きさが変更可能な横編機構造。
【請求項2】
各前記キャリッジは、前記編目進入区間に配置される編目脱出ワイヤ取付け孔と、前記延伸区間に配置される少なくとも1つの規制ワイヤ取付け孔とを備えることを特徴とする請求項1に記載の歯口隙間の大きさが変更可能な横編機構造。
【請求項3】
各前記針床は、針床座にそれぞれ設けられる複数のスライド溝を備え、各前記キャリッジは、前記編目進入区間に配置されるとともに前記キャリッジカムが前記変位行程にて移動する時、前記スライド溝内で摺動する底部を備えることを特徴とする請求項2に記載の歯口隙間の大きさが変更可能な横編機構造。
【請求項4】
各前記キャリッジカムは、第1の遷移区間と、前記第1の遷移区間に接続される直線区間と、前記直線区間に接続される第2の遷移区間とを備え、前記第1の遷移区間及び前記第2の遷移区間は、前記直線区間に向かってそれぞれ漸次縮小し、前記直線区間の寸法は同一であることを特徴とする請求項1に記載の歯口隙間の大きさが変更可能な横編機構造。
【請求項5】
各前記キャリッジカムは、そのうち1つの前記カムシステムの前記歯口隙間に向く側にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の歯口隙間の大きさが変更可能な横編機構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横編機構造に関し、より詳しくは、キャリッジが可動で歯口隙間の大きさが変更可能な横編機構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、厚みの異なる立体構造編物を編成するためには一般的に、経編機を用いる。関連技術としては、中国特許公開第CN102704180A号、中国特許公開第CN102978823A号、中国特許公開第CN105220347A号等がある。
【0003】
しかしながら、従来の横編機を使用する場合、立体構造編物の編成を実現できない。その理由は、横編機の歯口隙間が固定されたキャリッジにより決まるため、厚みが同一の編物の編成にしか対応できないためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の横編機を使用する場合において、歯口隙間の大きさが一定であるため生じている一連の課題を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本発明は、歯口隙間の大きさが変更可能な横編機構造を提供する。当該横編機構造は、2つの針床と、そのうち1つの当該針床に向くようにそれぞれ設けられるカムシステムとを含み、各当該針床は、複数の編針と、そのうち1つの当該編針に対応して設けられる複数のキャリッジとを含み、各当該編針は、バットを備え、各当該キャリッジは、各当該バットと同じ側に設けられる制御バットを備え、当該2つの針床は、間隔を隔てて設けられることにより、互いに対向するキャリッジにより歯口隙間が設定され、当該歯口隙間の間隔は、互いに対向する2つの当該キャリッジの間隔に等しく、各当該編針により編針の延伸線が設定され、各当該バットは、そのうち1つの当該編針の延伸線上にそれぞれ配置され、各当該制御バットは、そのうち1つの当該編針に対応して当該編針の延伸線上に配置され、各当該キャリッジは、当該制御バットが成形された延伸区間と、当該延伸区間に接続される湾曲区間と、当該湾曲区間に接続されるとともにそのうち1つの当該編針の先端に並列して設けられる編目進入区間とを備える。各当該カムシステムは、これらのバットを受け入れるとともに各当該編針が当該歯口隙間に向かって編成行程にて移動するようにガイドする編針カムと、これらの制御バットを受け入れるキャリッジカムとを備え、当該キャリッジカムは、これらのキャリッジを連動させて当該歯口隙間の大きさを変更する変位行程を有するように制御される。
【0006】
本発明に係る横編機構造の一実施形態において、各当該キャリッジは、当該編目進入区間に配置される編目脱出ワイヤ取付け孔と、当該延伸区間に配置される少なくとも1つの規制ワイヤ取付け孔とを備える。
【0007】
本発明に係る横編機構造の一実施形態において、各当該針床は、針床座にそれぞれ設けられる複数のスライド溝を備え、各当該キャリッジは、当該編目進入区間に配置されるとともに当該キャリッジカムが当該変位行程にて移動する時、当該スライド溝内で摺動する底部を備える。
【0008】
本発明に係る横編機構造の一実施形態において、各当該キャリッジカムは、第1の遷移区間と、当該第1の遷移区間に接続される直線区間と、当該直線区間に接続される第2の遷移区間とを備え、当該第1の遷移区間及び当該第2の遷移区間は、当該直線区間の方に向かってそれぞれ漸次縮小し、当該直線区間の寸法は同一である。
【0009】
本発明に係る横編機構造の一実施形態において、各当該キャリッジカムは、そのうち1つの当該カムシステムの当該歯口隙間に向く側にそれぞれ設けられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の概要にて記載されている内容から分かるように、本発明に係る横編機構造は、従来技術に比べ以下の利点を有する。本発明に係る横編機構造において、カムシステムはキャリッジカムを含んで構成されることにより、キャリッジは編成時のニーズに応じて移動して、当該横編機構造の当該歯口隙間の大きさを変更できるため、厚みの異なる立体構造編物の編成にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る横編機構造の一実施形態を概略的に示す図である。
【
図2】本発明に係る横編機構造の一実施形態における歯口隙間が小さい場合の針床部分の構造を概略的に示す図である。
【
図3】本発明に係る横編機構造の一実施形態における歯口隙間が大きい場合の針床部分の構造を概略的に示す図である。
【
図4】本発明に係る横編機構造の一実施形態におけるキャリッジの構造を概略的に示す図である。
【
図5】本発明に係る横編機構造の一実施形態におけるキャリッジと編針の構造関係を概略的に示す図である。
【
図6】本発明に係る横編機構造の一実施形態におけるキャリッジと編針の構造関係について、部分的に拡大して概略的に示す図である。
【
図7】本発明に係る横編機構造の一実施形態におけるカムシステムの構造を概略的に示す図である。
【
図8】本発明に係る横編機構造の一実施形態におけるカムシステムの動作を概略的に示す図である。
【
図9】厚みの異なる立体構造編物の構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、関連する各図を参照しながら、本発明に係る横編機構造を詳細に説明する。
【0013】
図1及び
図9に示すように、本発明は、横編機構造100を提供する。横編機構造100は、編成プロセスにおいて編成時のニーズに応じて、歯口隙間10の大きさを変更することにより、立体構造編物90(Spacer Fabric)を編成する過程で立体構造編物90の厚みを変更することができる。横編機構造100は、2つの針床11、12と、そのうち1つの針床11(12)に向くようにそれぞれ設けられるカムシステム13(14)とを含む。なお、2つの針床11、12とは、従来技術でいう前針床及び後針床を指す。2つの針床11、12は、一定の角度にて傾斜するようにそれぞれ設けられ、且つ間隔を隔てて設けられることにより両者の間に隙間を形成する。各針床11はそれぞれ複数の編針15と、そのうち1つの編針15に対応するようにそれぞれ設けられるキャリッジ16とを備える。本発明に係る横編機構造において、これらのキャリッジ16はシンカー以外のものとし、これらのキャリッジ16は、可動的に構成されるが、対応するそのうち1つの編針15が動作する時には動作しない。また、本発明に係る横編機構造において、歯口隙間10は、2つの針床11、12における互いに対向して設けられるこれらのキャリッジ16により設定される。歯口隙間10の間隔は、互いに対向するように設けられる2つのキャリッジ16の間隔に等しい(図中101を参照する)。
図3から
図6に示すように、各編針15はそれぞれバット151を備え、各キャリッジ16は、各バット151と同じ側に設けられる制御バット161を備える。さらに、本発明に係る横編機構造において、各キャリッジ16は、対応するそのうち1つの編針15にそれぞれ載置される。バット151は、編針15の針床座17から離隔する側に設けられ、制御バット161は、キャリッジ16の針床座17から離隔する側に設けられる。
図6に示すように、本発明に係る横編機構造において、各編針15により編針の延伸線152が設定される。編針15におけるバット151は、編針の延伸線152上に配置され、編針15に対応するように設けられるキャリッジ16における制御バット161も、編針の延伸線152上に配置される。また、制御バット161及びバット151が同一の編針の延伸線152上に位置するように、各キャリッジ16の長さは編針15の全長より短いように構成される。
【0014】
図4及び
図6に示すように、本発明に係る横編機構造の一実施形態において、キャリッジ16は、制御バット161が成形された延伸区間162と、延伸区間162に接続される湾曲区間163と、湾曲区間163に接続されるとともにそのうち1つの編針15の先端に並列して設けられる編目進入区間164とを備える。さらに、延伸区間162は、編針15の上方に載置され、湾曲区間163により編目進入区間164と延伸区間162は、異なる延伸線上に配置されるとともに、編目進入区間164と編針15が並列することにより編針15が動作すると、編目に入れる動作を行う。また、各キャリッジ16は、編目進入区間164に配置される編目脱出ワイヤ取付け孔165と、延伸区間164に配置される少なくとも1つの規制ワイヤ取付け孔166とをさらに備える。
図5及び
図6に示すように、本発明に係る横編機構造の一実施形態において、キャリッジ16は、編目進入区間164において厚みが同一でないように、キャリッジ16の編目進入区間164における厚みは、その他の部分における厚みより小さいように構成されてもよい(
図6を参照)。
図2及び
図4に示すように、各針床11は、針床座17にそれぞれ成形された複数のスライド溝171を備え、各キャリッジ16は、編目進入区間164に配置されるとともにスライド溝171内に設けられる底部167を備える。
【0015】
図2、
図7及び
図8に示すように、さらに、各カムシステム13(14)は、そのうち1つの針床11(12)に向くようにそれぞれ設けられる。各カムシステム13(14)は、これらのバット151を受け入れる編針カム131と、これらの制御バット161を受け入れるキャリッジカム132とを備える。各編針カム131及び各キャリッジカム132は、少なくとも1つのカムユニットを備えて構成され、編針カム131には連続する隆起部及び陥没部を備えることにより、その中に設けられたバット151は、各カムシステム13(14)が動作する時、歯口隙間10に向かって編成行程153にて移動する。また、本発明に係る横編機構造の一実施形態において、各キャリッジカム132は、第1の遷移区間134と、第1の遷移区間134に接続される直線区間135と、直線区間135に接続される第2の遷移区間136とを備え、第1の遷移区間134及び第2の遷移区間136は、直線区間135の方に向かってそれぞれ漸次縮小し、直線区間135の寸法は同一である。さらに、第1の遷移区間134及び第2の遷移区間136が漸次縮小する構成とするのは、キャリッジカム132が変位後も、これらの制御バット161をガイドできるようにするためである。各キャリッジカム132は、そのうち1つのカムシステム13(14)の歯口隙間10に向く側にそれぞれ設けられる。
【0016】
さらに、本発明に係る横編機構造において、キャリッジカム132により各キャリッジ16の位置が決まり、そして歯口隙間10の大きさを変更させる。キャリッジカム132は、編針カム131のように、明らかな起伏を有する当該隆起部及び当該陥没部を備えるものではなく、キャリッジカム132における各キャリッジ16をガイドするための部位は、その大半が平面である。本発明に係る横編機構造において、キャリッジカム132は変位行程133を有するように制御される。変位行程133において、キャリッジカム132がカム載置座137に対して線形移動を行うとともに、各キャリッジ16を連動して変位させて、各キャリッジ16の位置を変更することにより、歯口隙間10の大きさを変更する。キャリッジカム132の変位については、
図2及び
図3に示すとおりである。
【0017】
さらに、本発明に係る横編機構造において、各キャリッジカム132には、移動機構が接続されてもよい。当該移動機構は、制御信号を受信することでキャリッジカム132を連動して変位行程133にて移動させることができ、当該制御信号は、プログラムにより生成されるものであってもよい。これにより、立体構造編物90を編成する過程で、立体構造編物90の厚みを変更したり、さらには立体構造編物90を起伏を有する構造にしたりすることが可能である。
【符号の説明】
【0018】
100 横編機構造
10 歯口隙間
101 間隔
11、12 針床
13、14 カムシステム
131 編針カム
132 キャリッジカム
133 変位行程
134 第1の遷移区間
135 直線区間
136 第2の遷移区間
137 カム載置座
15 編針
151 バット
152 編針の延伸線
153 編成行程
16 キャリッジ
161 制御バット
162 延伸区間
163 湾曲区間
164 編目進入区間
165 脱出ワイヤ取付け孔
166 規制ワイヤ取付け孔
167 底部
17 針床座
171 スライド溝
90 立体構造編物
【要約】 (修正有)
【課題】従来技術では歯口隙間の大きさが一定であるためできなかった厚みの異なる立体構造編物を編成できる横編機を提供する。
【解決手段】歯口隙間10大きさが変更可能な横編機構造であって2つの針床11,12とそのうち1つの針床に向くように設けられるカムシステム13とを含み各針床は複数の編針15とそのうち1つの編針に対応して設けられる複数のキャリッジ16は各編針に備えられた各バットと同じ側に設けられる制御バット161を備え2つの針床は間隔を隔てて設けられることにより互いに対向するキャリッジにより設定される歯口隙間の間隔は互いに対向する2つのキャリッジの間隔に等しく各カムシステムはバットを受け入れるとともに各編針が歯口隙間に向かって編成行程にて移動するようにガイドする編針カムと制御バットを受け入れるキャリッジカムはキャリッジを連動させ歯口隙間の大きさを変更する変位行程を有するように制御される。
【選択図】
図2