(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ペアナットは、前記第1ナットと前記第2ナットとを前記ボルトに締結する際において、前記ボルトが延びる方向を鉛直方向としたときに、前記ボルトに対して水平方向の力が加わるようにして前記第1ナットと前記第2ナットとの螺合部分に形成される隙間をなくするように働き、
前記第1ナットの前記下面開口部は、円錐の側面の一部によって切り取られた形状の下面傾斜面を有しており、
前記第2ナットの前記上面突起部の外側面は、傾斜面となっており、
前記第1ナットの前記下面開口部に対して前記第2ナットの前記上面突起部を挿入したときには、前記第1ナットの前記下面と、前記第2ナットの前記上面との間には隙間があり、
前記第1ナットおよび前記第2ナットを前記ボルトに締結したときには、前記第1ナットの前記下面と、前記第2ナットの前記上面とは互いに接触する、請求項1に記載のペアナット。
前記第1ナットと前記第2ナットとを前記ボルトに締結する状態において、前記第2ナットにおける前記上面突起部は斜めに延びている、請求項1または2に記載のペアナット。
前記第2ナットにおける前記ナット本体部の前記上面は、前記第2ナットにおける前記ナット本体部の前記下面に対して傾斜している、請求項1から3の何れか一つに記載のペアナット。
前記第1ナットの前記下面開口部に対して前記第2ナットの前記上面突起部を挿入した状態において、前記第1ナットの前記側面および前記第2ナットの前記側面は、シュリンクフィルムによって覆われて、前記第1ナットおよび前記第2ナットは一体に固定されている、請求項1から6の何れか一つに記載のペアナット。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車や航空機、電車などの輸送装置、各種の産業機械・機器、搬送パイプラインや電力等の送電装置などにおける各種部分には、ボルト・ナットが高い頻度で使用されている。そして、ボルト・ナットは各種の締結部分の締結に用いられる機械要素として高い重要度を締めている。しかしながら、ボルト・ナットで締結される被締結部材やボルト等にかかる振動などの外力によって、ボルトの雄ネジにネジ締めしたナットが緩み、その結果、ネジ締め力や締結力が低下してしまうことがある。また、ボルトにネジ締めされているナットが外れて、被締結部材の締結部が外れたりすることもある。そのようなことがあることから、被締結部材の締結部における安全の向上のために、被締結部材やボルト等にかかる振動などの外力によって、ナットがボルトから緩むことを防止するナットやボルトが望まれている(例えば、特許文献1など)。
【0003】
近年では、ナットがボルトから緩むのを防止するために、種々のナットやボルトが開発されている。特に、ナットの緩みを防止するナット(緩み止めナット)として、いくつかのものが提案されている。有名なナットとしては、ハードロックナット(登録商標(以下、省略))が挙げられる(例えば、特許文献2、3)。特許文献2に開示されたハードロックナットを
図1および
図2に示す。
【0004】
図1及び
図2は、ハードロックナット103を含む締結構造1000を示している。
図1は、ハードロックナット103を締結する前の分解図である。そして、
図2は、ハードロックナット103とボルト102とによって締結構造1000を構築した図である。
【0005】
ハードロックナット103は、上ナット部104と下ナット部105とを一組としたものであり、これがボルト102に対して用いられる。ボルト102は、ねじ外径D、ピッチPの一条ネジである。ネジ山形状は、ネジ山頂部110同士の間を谷底111を含めて円弧状の凹面112で連続させた形状となっている。そして、ネジみぞ113は、つる巻角θを有している。
【0006】
上ナット部104においては、その下面部を開口し上方に向けて小径となるテーパ穴状嵌合部114が、その軸心115はネジ穴心106と一致させて設けられている。一方、下ナット部105でにおいては、その上面側にテーパ穴状嵌合部114と同形の円錐台状嵌合部117が上方に突出するように設けられている。そして、この円錐台状嵌合部117の軸心118は、上ナット部104を締め付け時にせり合ってもテーパ穴状嵌合部114に挿入可能な範囲だけネジ穴心116から偏心(a)して配置されている。
【0007】
そして、上ナット部104および下ナット部105では、谷底119が、ボルト102のネジ山頂部110に沿うように設けられている。この谷底119同士の間を円弧状凸面120で連続させてネジ山121を形成することによって雌ネジ部が構築されている。
【0008】
このハードロックナット103においては、軸心118がネジ穴心116から偏心(a)しているため、下ナット部105の締付け後に上ナット部104を締め付けることにより、テーパ穴状嵌合部114が円錐台状嵌合部117に嵌合する時にクサビ作用が発生する。その結果、剪断方向の内部応力を保留したまま強力に固定され、今までにないようなナットの緩み止め効果を得ることができる。
【0009】
そして、最近では、ハードロックナットの改良品として、座面が不安定な場合においても緩みの発生しないようにするために、
図3に示すように、下ナット部105において、径方向外方に延びる突起部125が設けたものも提案されている(特許文献3)。
図1から
図3(特許文献2、3)に示したハードロックナット103では、上ナット部104と下ナット部105との組み合わせを用いて、偏心嵌合にて締結することで強固な締結構造体を構築することができる。
【0010】
ハードロックナット以外のゆるみ止めナットとして、ナットの一部にスリットを入れる形態のものも提案されている(特許文献4)。特許文献4に開示されたナットは、部品点数が少なく構造が簡単で取り付け易く、ロック効果が高いロックナットである。
【0011】
図4及び
図5は、特許文献4に開示されたロックナット3000の構造を開示している。
図4は、通常のナット3100とともに使用されるロックナット3000を示している。
図5は、ナット3100・3000の組み合わせをボルト307に螺着して、被締結部材308と309との締結状態を示している。
【0012】
図4に示すように、通常ナット3100にはネジ孔304が形成されており、同様に、ロックナット3000にも同じネジ孔304が形成されている。ロックナット3000には、第1スリット301および第2スリット302が形成されている。また、第1スリット301および第2スリット302は、ネジ孔304を横断するように形成され、かつ、軸線方向に部分的に重なるように配置されている。ロックナット3000では、ナットに圧縮力が加わったとき、両スリット301・302の隙間が軸線方向に弾性的に縮小する。その結果、隙間の変形により、強固なダブルナット構造となって緩むことがない。また、ロックナット3000は一つの部材からなるので、取り扱いやすく、迅速にボルト307に締結することができる。
【0013】
また、特許文献1のような緩み止めナットも提案されている。特許文献1に開示されたナットを
図6および
図7に示す。
図6は、ナット本体部402にスリット部405が1つ形成されたナット4000を示している。また、
図7は、ナット本体部402にスリット部405が2つ形成されたナット4100を示している。
【0014】
図6に示したナット4000では、ナット本体402の上面402a側から座面402b側に向けて雌ネジ部403が形成されている。ナット本体402の上面402aには、面取り部450が形成されている。また、ナット本体402の内周壁には平面部404が所定長さ形成されており、平面部404には、ナット本体402の外周壁402c側からナット本体402の軸芯側へ向けて切り欠き形成されたスリット部405が形成されている。なお、
図7に示したナット4100でも、基本的に同じ構成であるが、平面部404が上面側と座面側に設けられていて、その平面部404にスリット部405が形成されている。
【0015】
特許文献1に開示されたナット4000及び4100では、平面部404にスリット部405を形成するだけで、緩み止めナットを形成することができる。したがって、構造が簡単で生産性に優れるとともに、緩み止めナット1つをボルト等の雄ネジに螺着するだけで、振動等の外力で締結力が低下することなく被締結部材を締結することができ、その結果、使用性や利便性に優れている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本願発明者が、既存のナット(特に、緩み止めナット)を検討していると次のような問題に気付いた。
【0018】
まず、
図1などに示したハードロックナットの場合、ハードロックナット103は、偏心嵌合を実行できる特殊な構造を有しているので、通常のナットと比較して、製造コスト(または購入コスト)が高いという問題がある。すべての締結構造に高価なナットを使用できるわけでなく、実際には、簡単な構造で安価なナットでありながらも、しっかりと緩まずに締結できるナットが求められることが多い。
【0019】
また、ハードロックナット103では、特殊な構造の上ナット部104と下ナット部105とを用いるが、作業工程においては、1つのナットだけで強固な締結を所望する場合もある。2つのナット(上ナット部104と下ナット部105)の場合、組み合わせの作業が追加されるとともに、それぞれの特殊ナット(104、105)をきっちりと保管し、ペアの形でそれぞれ同数個を揃えておく必要があり、現場においてはその管理作業が繁雑になることがある。すなわち、1つの緩め止めナットで済むのであれば、それだけを準備しておき、それだけを使用すればよいので便利であり、それゆえに、ハードロックナット103の場合、取り付けの手間が煩雑になり時間も作業コストもかかる。
【0020】
また、本願発明者は、スリットが入ったナットについても検討したが、既存のスリット入りナットは、スリットを入れるところで満足しており、それ以上の更なる改善が含まれていないことに気付いた。ナットは緩まないことも重要であるが、締めやすいことも重要であり、それには新たな工夫が必要である。
【0021】
本願発明者は、ふとした時に、上述の問題を解決できる手法を見つけて本発明に至った。本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、新規の緩み防止ナットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係るペアナットは、第1ナットと第2ナットとを含むペアナットである。前記第1ナットは、ネジ孔が形成されたナット本体部と、前記ナット本体部の上面と、前記上面を規定する側面と、前記ナット本体部の上面の反対側の下面とを備えている。前記第1ナットにおける前記ネジ孔の中心軸は、前記ペアナットに対応するボルトの中心軸と一致している。前記第1ナットにおける前記下面には、前記ネジ孔の径よりも広い下面開口部が形成されている。前記下面開口部の中心軸は、前記ペアナットに対応するボルトの中心軸から傾斜して延びている。前記第2ナットは、ネジ孔が形成されたナット本体部と、前記ナット本体部の上面と、前記上面を規定する側面と、前記ナット本体部の上面の反対側の下面とを備えている。前記第2ナットにおける前記上面には、前記第1ナットにおける前記下面開口部に対応した上面突起部が形成されている。前記上面突起部および前記ナット本体部に形成された前記ネジ孔の中心軸は、前記ペアナットに対応する前記ボルトの前記中心軸と一致している。
【0023】
ある好適な実施形態において、前記第1ナットの前記下面開口部は、円錐の側面の一部によって切り取られた形状の下面傾斜面を有している。前記第2ナットの前記上面突起部の外側面は、傾斜面となっている。
【0024】
ある好適な実施形態では、前記第1ナットの前記下面開口部に対して前記第2ナットの前記上面突起部を挿入したときには、前記第1ナットの前記下面と、前記第2ナットの前記上面との間には隙間がある。そして、前記第1ナットおよび前記第2ナットを前記ボルトに締結したときには、前記第1ナットの前記下面と、前記第2ナットの前記上面とは互いに接触する。
【0025】
ある好適な実施形態において、前記第1ナットの前記下面傾斜面には、放射状に延びる複数の溝部が形成されている。
【0026】
ある好適な実施形態において、前記第2ナットの前記上面突起部の外側面には、複数の凸部が形成されている。
【0027】
ある好適な実施形態では、前記第1ナットの前記下面開口部に対して前記第2ナットの前記上面突起部を挿入した状態において、前記第1ナットの前記側面および前記第2ナットの前記側面は、シュリンクフィルムによって覆われて、前記第1ナットおよび前記第2ナットは一体に固定されている。
【0028】
ある好適な実施形態において、前記第1ナットの前記側面および前記第2ナットの前記側面は、多角形ナットを規定する側面である。
【0029】
ある好適な実施形態では、前記ペアナットにおいて、前記第1ナットの前記側面および前記第2ナットの前記側面は、鉛直方向を基準にして揃って配置されている。前記ペアナットが前記ボルトに締結される前においては、前記第1ナットの前記下面と、前記第2ナットの前記上面との間には隙間がある。前記ペアナットが前記ボルトに締結された後においては、前記シュリンクフィルムは破れて、前記第1ナットの前記下面と、前記第2ナットの前記上面とは互いに接触する。
【0030】
ある好適な実施形態において、前記第1ナットの前記上面および前記下面は、互いに平行な面である。前記第2ナットの前記上面および前記下面は、互いに平行な面である。
【0031】
本発明に係るナットは、ネジ孔が形成されたナット本体部と、前記ナット本体部の上面と、前記上面を規定する側面と、前記ナット本体部の上面の反対側の下面とを備えている。前記ナット本体部における前記ネジ孔の中心軸は、前記ナットに対応するボルトの中心軸と一致している。前記ナット本体部における前記下面には、前記ネジ孔の径よりも広い下面開口部が形成されている。前記下面開口部の傾斜面の角度が異なるように、前記下面開口部は形成されている。
【0032】
本発明に係るナットは、ネジ孔が形成されたナット本体部と、前記ナット本体部の上面側に形成された環状部材と、前記環状部材の外縁側に形成された外枠部材とを備えている。前記環状部材は、前記ナット本体部の上面に接触している第2端部と、前記第2端部とは反対側に位置する第1端部とを有している。前記第1端部の上面は、前記第2端部の上面よりも上方に位置している。前記第1端部と前記ナット本体部の上面との間には、第1隙間が形成されている。前記環状部材の側面は、前記外枠部材の内壁と間に第2隙間を介して配置されている。前記環状部材の第1端部の上面は、前記外枠部材の上面よりも上方に位置している。前記外枠部材の前記内壁は、上向きに向かってテーパ状に傾斜している。
【0033】
ある好適な実施形態において、前記ナット本体部は、多角形ナットを規定する側面を備えている。前記環状部材は、前記ネジ孔に対応した開口部が形成された円環形状を有している。前記環状部材における前記第1端部の端面と、前記第2端部の端面との間には、第3隙間が形成されている。前記外枠部材の前記内壁は、前記ナット本体部の上面から前記外枠部材の上面の側の方に向かって前記第2隙間が大きくなるように傾斜している。
【0034】
ある好適な実施形態では、前記ナットが締結されたときにおいて、前記環状部材における前記第1端部は、前記ナット本体部の前記上面と接触し、そして、前記環状部材の側面は、前記外枠部材の前記内壁に接触する。
【0035】
ある好適な実施形態では、前記ナットが締結されたときにおいて、前記第1端部及び前記第2端部を含む前記環状部材の上面は、前記外枠部材の上面と同じ高さになる。
【0036】
ある好適な実施形態では、前記ナットが締結されたときにおいて、前記環状部材における前記第1端部の端面と、前記第2端部の端面とは互いに接触する。
【0037】
ある好適な実施形態において、前記ナット本体部は、多角形ナットを規定する側面を備えている。前記外枠部材の外側面は、前記ナット本体部の前記側面と同一平面で繋がって形成されている。
【0038】
ある好適な実施形態において、前記ナット本体部、前記環状部材、および、前記外枠部材は、金属材料から構成されている。
【0039】
ある好適な実施形態において、前記ナット本体部、前記環状部材、および、前記外枠部材は一体的に成型されている。
【0040】
ある好適な実施形態において、前記ナット本体部の前記上面、および、前記外枠部材の前記上面は、鉛直方向に対して直角の水平方向に沿った面である。前記環状部材は、前記第2端部から螺旋状に上方に延びる構造を有している。
【0041】
ある好適な実施形態では、前記環状部材の中央開口内壁において、前記ナット本体部の前記ネジ孔に対応したネジ溝が形成されている。
【0042】
本発明に係るナットは、ネジ孔が形成されたナット本体部と、前記ナット本体部の上面側に形成された環状部材と、前記環状部材の外縁側に形成された外枠部材とを備えている。前記環状部材は、前記ナット本体部の上面に接触している第2端部と、前記第2端部とは反対側に位置する第1端部とを有している。前記第1端部の上面は、前記第2端部の上面よりも上方に位置している。前記第1端部と前記ナット本体部の上面との間には、第1隙間が形成されている。前記外枠部材の上面の一部は、中心側に延びた延長部位となっている。前記延長部位は、前記環状部材の上面を抑える部位である。
【0043】
ある好適な実施形態において、前記外枠部材の内壁は、上向きに向かってテーパ状に傾斜している。ボルトが締結されたときにおいて、前記環状部材と、前記ナット本体部の上面との間に隙間が存在している。
【0044】
本発明に係るナットは、ネジ孔が形成されたナット本体部と、前記ナット本体部の上面と、前記上面を規定する側面とを備えている。前記ナット本体部の側面には、スリットが形成されている。前記ナット本体部の上面は、前記スリットの切欠口の側が高くなるように傾斜している。
【0045】
ある好適な実施形態において、前記ナット本体部の側面は、鉛直方向に沿って延びておいる。前記鉛直方向に対して直角の水平方向を基準にして、前記上面および前記スリットは同じ角度で斜めに延びている。
【0046】
ある好適な実施形態において、前記ナット本体部の側面は、鉛直方向に沿って延びている。前記鉛直方向に対して直角の水平方向を基準にして、前記上面は斜めに延び、かつ、前記スリットは前記水平方向に延びている。
【0047】
ある好適な実施形態において、前記ナット本体部の上面の反対側の下面は、前記スリットの切欠口の側が高くなるように傾斜している。
【0048】
ある好適な実施形態では、前記ナットが締結されたときにおいて、前記傾斜した前記上面は、鉛直方向に対して直角の水平方向に延びるように変形した状態になっている。
【0049】
ある好適な実施形態において、前記傾斜した上面、前記スリットが形成された側面を含む前記ナット本体部は、同一の金属材料から一体的に構成されている。
【0050】
本発明に係る締結構造体は、上記ペアナットと、前記ペアナットの前記ネジ孔に対応したボルトと、前記ペアナットおよび前記ボルトによって締結される被締結部材とを備えている。
【0051】
本発明に係る締結構造体は、上記ナットと、前記ナットの前記ネジ孔に対応したボルトと、前記ナットおよびボルトによって締結される被締結部材とを備えている。前記被締結部材には、前記ボルトに対応したネジ孔が形成されている。
【0052】
本発明に係るボルトは、少なくとも一部にネジ山が形成されたボルト軸部と、前記ボルト軸部の一端に形成されたボルト頭部とを備えている。前記ボルト頭部のうちの前記ボルト軸部の側には、ボルト根本開口部が形成されている。前記ボルト根本開口部には、ワッシャーが挿入されている。前記ワッシャーは、第1端部と、第2端部と、第1端部と第2端部との間の延長部とを有している。前記ボルトが締結されていない状態において、前記ワッシャーの第2端部が前記ボルト根本開口部の底面に接触した状態で、かつ、前記ワッシャーの第1端部が前記ボルト根本開口部の底面との間に隙間がある状態で、前記ワッシャーは前記ボルト根本開口部内に収納されている。
【0053】
ある好適な実施形態において、前記ワッシャーを収容した前記ボルト根本開口部の外側には、前記ボルト根本開口部を規定する外枠部材が形成されている。前記外枠部材の内壁は、上向きに向かってテーパ状に傾斜している。
【0054】
ある好適な実施形態では、前記ボルトが締結されていない状態において、前記ワッシャーの第1端部の上面は、前記外枠部材の上面よりも上方に位置しており、かつ、前記ワッシャーの第2端部の上面は、前記外枠部材の上面よりも下方に位置している。
【0055】
ある好適な実施形態では、前記ボルトが締結されたときにおいて、前記ワッシャーにおける前記第1端部の上面は、前記外枠部材の上面と同一平面に位置し、かつ、前記ワッシャーの第2端部の上面と、被締結部材との間には、隙間がある。
【0056】
ある好適な実施形態において、前記ワッシャーを収容した前記ボルト根本開口部の外側には、前記ボルト根本開口部を規定する外枠部材が形成されている。前記ボルトが締結されていない状態において、前記外枠部材の上面の一部は、前記ボルト根本開口部の側に延びた延長部位となっている。前記延長部位は、前記ワッシャーの上面を抑える部位である。
【0057】
ある好適な実施形態では、前記ボルトが締結されたときにおいて、前記ワッシャーと、前記ボルト根本開口部の底面との間に隙間が存在している。
【0058】
ある好適な実施形態において、前記ボルト頭部は、多角形ナット形状、ドライバー溝およびレンチ開口部からなる群から選択された部位を少なくとも一つ有している。前記ワッシャーの第1端部は、前記ボルト根本開口部の前記底面に付着するようにして固定されている。
【0059】
本発明に係る締結方法は、被締結部材を締結する締結方法であり、上記ペアナットを用意する工程と、前記ペアナットの前記ネジ孔に対応したボルトによって、前記ペアナットとともに、被締結部材を仮固定する工程と、前記仮固定した前記被締結部材に対して螺着を実行する工程とを含む。
【0060】
本発明に係る締結方法は、被締結部材を締結する締結方法であり、上記ナットを用意する工程と、前記ナットの前記ネジ孔に対応したボルトによって、前記ナットとともに、被締結部材を仮固定する工程と、前記仮固定した前記被締結部材に対して螺着を実行する工程とを含む。
【0061】
本発明に係る固定方法は、締結部材を用いた固定方法であり、前記締結部材は、第1端部と第2端部とを有する円環部材を含み、前記第1端部の端面と、第2端部の端面との間には第3隙間が形成されており、前記円環部材は、前記第1端部の上面が前記第2端部の上面よりも上方に位置するように螺旋状に延びており、前記締結部材においては、前記円環部材の側面に近接する傾斜面を備えた外枠部材が、前記円環部材とともに含まれている。本発明に係る固定方法は、前記締結部材を用意する工程と、前記締結部材における前記円環部材の前記第1端部を被締結部材に接触させることにより、前記第1端部を押し込む工程と、前記押し込む工程に伴って、前記円環部材の側面を前記傾斜面に押し付ける工程と、前記第1端部および前記第2端部を含む前記円環部材の上面を、前記被締結部材に接触させる工程とを含む。
【0062】
ある好適な実施形態において、前記円環部材の中央開口内壁にはネジ溝が形成されており、前記接触させる工程において、前記円環部材の上面は同一平面になり、前記第1端部の端面と、第2端部の端面とは互いに接触する。
【0063】
ある好適な実施形態では、前記接触させる工程において、前記円環部材における前記第1端部の上面は、前記外枠部材の上面と同一平面に位置し、かつ、前記円環部材における前記第1端部の上面と前記第2端部の上面と間には、隙間がある。
【0064】
ある好適な実施形態において、前記締結部材は、上記ナットである。
【0065】
ある好適な実施形態において、前記円環部材はワッシャーであり、そして、前記締結部材は上記ボルトである。
【0066】
本発明の実施形態に係るナットは、ネジ孔が形成されたナット本体部と、前記ナット本体部の上面側に形成された環状部材と、前記環状部材の外縁側に形成された外枠部材とを備えている。前記環状部材は、前記ナット本体部の上面に接触している第2端部と、前記第2端部と反対側に位置する第1端部とを有している。前記第1端部の上面は、前記第2端部の上面よりも上方に位置している。前記第1端部と前記ナット本体部の上面との間には、第1隙間が形成されている。
【0067】
ある実施形態において、前記環状部材の前記第2端部の側面は、前記外枠部材の内壁に実質的に接触している。また、前記外枠部材は、前記ナット本体部とは別の部材であってもよい。
【0068】
本発明の実施形態に係るナット(雌ナット)では、ネジ孔は鉛直方向(ボルトの軸方向)から延びているが、そのネジ孔の周囲に位置する開口部(テーパー開口部)の中心軸は当該鉛直方向からずれて延びるように形成されている。ネジ孔の周囲には、円錐形の一部で切り取られた開口部が形成されている。そのナット(雌ナット)は、突起部を有するナット(雄ナット)と組み合わされて使用される。
【0069】
本発明の実施形態に係るナット(雌ナット)では、ネジ孔は鉛直方向(ボルトの軸方向)から延びているが、そのネジ孔の周囲に位置する開口部(テーパー開口部)は、傾斜面の角度が異なるように形成されている。そのナット(雌ナット)は、突起部を有するナット(雄ナット)と組み合わされて使用される。
【0070】
本発明の実施形態に係るペアナットは、第1ナットおよび第2ナットを含んでおり、第1ナット側面および第2ナットの側面は、樹脂フィルム(例えば、環状フィルム、または、シュリンクフィルム)によって覆われて、第1ナットおよび第2ナットは一体に固定されている。ある実施形態において、第1ナットの側面および第2ナットの側面は、多角形ナットを規定する側面であり、それらの側面は、鉛直方向に沿って揃っている。
【発明の効果】
【0071】
本発明のペアナットでは、第1ナットおよび第2ナットにおけるネジ孔の中心軸は、ボルトの中心軸と一致しており、第1ナットにおける下面には下面開口部が形成され、当該下面開口部の中心軸はボルトの中心軸から傾斜して延びており、そして、第2ナットにおける上面には上面突起部が形成されている。したがって、第2ナットの上面突起部を第1ナットの下面開口部に挿入して第1ナットおよび第2ナットを締結したときに、第1ナットの下面開口部の中心軸が傾斜して延びていることから、第2ナットの上面突起部の上面は均等に第1ナットの下面開口部に接触するのではなく、不均一に(片側が優先して)第1ナットの下面開口部に接触する。それゆえに、第2ナットは最初は僅かに斜めになった状態で、第1ナットの下面開口部に入り混むので、雌ネジ部(ナット)と雄ネジ部(ボルト)との螺合部分に形成される隙間(バックラッシ)を無くして、雌ネジ部(ナット)と雄ネジ部(ボルト)とを密着させることができる。その結果、雌ネジ部(ナット)と雄ネジ部(ボルト)とで強い摩擦力を得ることができ、振動等によってナットがボルト等の雄ネジから緩み螺着力が低下することを確実に防止することができる。
【0072】
さらに、第1ナットおよび第2ナットにおけるネジ孔の中心軸は一致(ボルトの中心軸と一致)しているので、第1ナットおよび第2ナットのネジ穴の中心軸が互いに一致していないものと比較すると、第1ナットおよび第2ナットを製造することが容易となる。加えて、第1ナットおよび第2ナットにおけるネジ孔の中心軸は一致(ボルトの中心軸と一致)しているので、第1ナットおよび第2ナットの2つのナット(ペアナット)を一度の動作(回転)でボルトに入れることができるので便利である。すなわち、第1ナットおよび第2ナットのネジ穴の中心軸が互いに一致していないものでは、第1ナットと第2ナットとをそれぞれ別の動作(回転)でボルトに入れる必要があるので、手間が2倍になるが、それに比較して、本発明のペアナットの場合、ボルトへの取付効率を大幅に上げることができる。
【0073】
本発明に係るナットは、ネジ孔が形成されたナット本体部の上面側に形成された環状部材と、環状部材の外縁側に形成された外枠部材とから構成されており、環状部材の第1端部とナット本体部の上面との間には第1隙間が形成され、環状部材の側面と外枠部材の内壁と間には第2隙間が形成されている。また、環状部材の第1端部の上面は、外枠部材の上面よりも上方に位置し、そして、外枠部材の内壁は、上方に向かって第2隙間が大きくなるように傾斜している(または、テーパ形状になっている)。したがって、本発明のナットをボルトを用いて締結する場合、まず、環状部材の第1端部が先に接触し(ダブルナットの場合は他のナットに接触)、この第1端部が押し込まれて第1隙間がなくなり、ボルトのネジ山にしっかり噛むことができる。さらに具体的に説明すると、締結の際に、第1隙間がなくなる方向に環状部材が変形することで、雌ネジ部と雄ネジ部との螺合部分に形成される隙間(バックラッシ)を無くして、雌ネジ部(ナット)と雄ネジ部(ボルト)とを密着させることができ、雌ネジ部(ナット)と雄ネジ部(ボルト)とで強い摩擦力を得ることができ、その結果、振動等によってナットがボルト等の雄ネジから緩み螺着力が低下することを確実に防止することができる。また、第1端部が押し込まれた後は環状部材は外側に広がる方向に変形するが、その変形を外枠部材の内壁でとめて力が逃げないようにすることができる。加えて、この内壁は、外枠部材の内壁は、テーパ形状になっているので(上方に向かって第2隙間が大きくなるように傾斜しているので)、環状部材が外側に変形する力を上手く利用しながら、しっかりと締結することができる。また、環状部材が締結部に影響を与える異物や外力を保護することができるので、締結構造体の締結力を保護することにも貢献している。その結果、緩み防止とともに締めやすいナットを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のために、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法関係を正確に反映していない場合があるが、基本的に反映させるようにしている。
【0076】
また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。加えて、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0077】
(実施形態1)
図8は、本発明の実施形態1に係るナット100の構成を示した斜視図である。また、
図9は、本実施形態1のナット100の構造を説明するための断面図(正面図、または、側面図)である。なお、
図8において鉛直方向の上向きの矢印99を示し、当該上向きの方を、便宜上、「上」または「上面」などを称する。「上」の方向は便宜上であるので、ナット100の向きによっては、「上面」と名付けた面が、横を向いたり、下に向いたりすることがある点について付言しておく。
【0078】
本実施形態のナット100は、多角形ナットであり、図示した例では六角ナットである。ナット100は、ネジ孔30が形成されたナット本体部10と、ナット本体部10の上面11と側面15から構成されている。ネジ孔30の内面には、ネジ山31が形成されており、隣接するネジ山31の間がネジ溝となる。ナット本体部10の側面15は、六角ナットの場合6面あり、1つの側面15の間には境界線17が存在する。ナット本体部10の上面11は、側面15で規定されており、言い換えると、側面15で囲まれた領域における上方に位置する面が上面である。
図8(
図9)に示した例では、上面11を全面において平面のものを示したが、例えば
図6に示した面取り領域(450)のように、上面11の外縁の一部を面取りしてもよい。
【0079】
本実施形態の構成においては、ナット本体部10の側面15には、スリット20が形成されている。本実施形態のスリット20は、ナット本体部10の側面15の一方側から切り込みを入れてなる厚さDの平板状の隙間(平板切り欠き部)である。厚さDは、スリット20を規定する下面20aと上面20bとの間の距離のことである。また、本実施形態では、スリット20の切欠き口(一つの側面15)からスリット端面21までの距離をスリット長さSとしている。
【0080】
図9に示した例では、スリット端面21の位置(または、場合いよってはスリット切欠き口(入口)の位置)を、厚さQ1とQ2がほぼ同じような割合になるような位置に設けたが、例えば、上部側(Q1<Q2)に位置するようにスリット20を形成してもよい。また、スリット20の厚さD、長さSは、使用するナットの用途・特性・強度にあわせて適宜好適なものを採用することができる。また、スリット20が延びる形状は直線状(または平板状)であることが製造上は便利であるが、曲線(例えば、所定関数の曲線、波打ち形状など)にしても構わない。また、ナット100(特に、六角ナット)の寸法、すなわち、幅W、高さ(厚さ)Tなどは、業界で指定の規格のものを使用することが好ましく、ネジ孔30の径、ピッチなども同様である。
【0081】
本実施形態のナット100においては、ナット本体部10の上面11は傾斜している。具体的には、上面11は、スリット20の切欠口の側が高くなるように傾斜している。鉛直方向99に直角な水平線(ここでは、L2の線)に対して、上面11は、角度θ1(例えば1°〜12°、典型的には2°〜8°、または5°±2°)で傾斜している。傾斜している上面11のうち、高い領域を高位部位12aとし、低い領域を低位部位12bと称することとする。
【0082】
本実施形態の構成例では、スリット20も水平線(ここでは、L3)に対して角度θ2(例えば1°〜12°、典型的には2°〜8°、または5°±2°)で傾斜している。図示した例では、上面11の傾斜角度θ1とスリット20の傾斜角度θ2とを同じ(または、実質的に同じ)にしている。なお、ナット本体部10の下面13は傾斜しておらず、水平線(ここではL1)と平行である。
【0083】
本実施形態のナット本体部10は、金属材料(例えば、ステンレス、鉄、真鍮、アルミニウム、チタンなど)から構成されている。また、本実施形態のナット本体部10を樹脂(例えば、ポリカーボネート、または、各種エンジニアリングプラスティック(スーパーエンジニアリングプラスティック含む)など)から構成することも可能である。本願発明者は、金属材料から構成したナット本体部10とともに、樹脂材料(例えば、ポリカーボネート)から構成したナット本体部10でも、本実施形態のナット100の効果が生じることを実験により確認している。また、本実施形態のナット100(ナット本体部10)は一体成型されており、すなわち、一種類の材料が連続してなる構成を有している。したがって、一体成型の構造であるので、強度の確保が用意であり、製造コストも低下させやすいという利点がある。
【0084】
本実施形態のナット100の構造をさらにわかりやすく説明するために、
図10Aから
図10D、
図11A及び
図11B、
図12Aから
図12Cを示す。本実施形態のナットの特徴をわかりやすく示す観点から、便宜上、上面11とスリット20を実線で示して、その他は点線で表記している。
【0085】
ここで、
図10Aは、ナット100の構成を示す正面図であり、そして、この位置を正面として、
図10Bから
図10Dは、それぞれ、ナット100の構成を示す背面図、右側面図、左側面図である。また、
図11Aおよび
図11Bは、それぞれ、ナット100の構成を示す平面図(上面図)、底面図(下面図)である。さらに、
図12Aから
図12Cは、それぞれ、
図11Aの線A−Aに沿ったナット100の断面図、
図11Aの線B−Bに沿ったナット100の断面図、
図10Aの線C−Cに沿ったナット100の断面図である。
【0086】
これらの図には、上面11に形成されたネジ孔30の輪郭35とともに、下面13に形成されたネジ孔30の輪郭37も示してある。
【0087】
また、
図12Cの断面図においては、スリット20で切り欠きした部分(スリット直下の面20a)と、切り欠きされていない領域(ナット本体部の内部の一部(連続領域)19)とがわかりやすいように示している。本実施形態の構成では、スリット20は、切欠口とは反対側の位置にネジ山が露出するところまでナット本体部10を切り欠いている。ただし、スリット20の形成領域は例示であり、これ以外の領域でスリット20を形成することも可能である。例えば、スリット20は、ナット本体部10の半分程度の長さ(S)の領域に形成して、切欠口とは反対側の位置にネジ山には達しないようにしてもよい。
【0088】
次に、本実施形態のナット100の締結動作の様子(締結構造体70の形成の様子)を説明するために、
図13および
図14を参照する。
図13は、ボルト頭部82と、ネジ山81を有するボルト軸部(ネジ部)85とを備えたボルト80を示している。そして、
図13では、そのボルト80の軸部85に、典型的なナット(通常ナット)90と、本実施形態のナット100とを挿入した段階の様子を示している。そして、
図14は、通常ナット90に、本実施形態のナット100を互いに接触させて、螺着させている段階の図である。
【0089】
まず、
図13に示すように、通常ナット90の接触面91(なお、反対の面は「93」)に対して、ナット100を矢印71の方向に進めるように回転して締めていく。
【0090】
次いで、
図14に示すように、通常ナット90の接触面91に、ナット100の上面11のうち高位部位12aが接触して、互いに力が加わる(矢印72、73)。この時、本実施形態のナット100では、高位部位12a側にスリット20が存在しているので、矢印73の力を受けてスリット20がつぶれて、しっかりとネジ山81を噛んだ状態で(すなわち、バックラッシがなくなった状態で)回転していき、続いて、スリット20がつぶれることで、傾斜していた上面11が、接触面91に対して真っ平ら(平行)になって強固に螺着することができる。
【0091】
本願発明者が行った実験において、本実施形態のナット100が通常ナット90に対してしっかり締結できることが確認さらた。また、このことからわかるように、スリット20の厚さDは、上面11が対象物(ここでは、接触面91)に当たって締める時に平行になるような設計をしておくことが必要である。
【0092】
一方で、
図4から
図7に示したスリット入りのナット(3000、4000、4100)では、上面(例えば、402a)は水平面(水平方向に平行)であるのに、スリット(301・302、405)が形成されているので、スリットが押し込まれた後は、上面は傾斜面になってしまい、
図14と比較して、螺着の力をしっかり加えることができない。
【0093】
また、本実施形態の構成では、まず最初に、上面11の高位部位12aが確実に接触して、そしてその瞬間にスリット20がつぶれるので、締め付ける力を加えやすく、それゆえに、締めやすいナットを構築することができる。一方で、
図4から
図7に示したスリット入りのナットの場合、上面のうちのどの箇所が接触するかわからず、それゆえにスリットが上手くつぶれるかどうか確率論になり、その結果、本実施形態のナット100と比較すると、締めやすさでは劣ることになる。
【0094】
さらに、
図1に示したハードロックナット103の場合、2つのナット(上ナット部104、下ナット部105)が必要であるので、ナットの取り付けの手間が、1つのナットのときと比較して多くなる。さらには、この2つのナット(上ナット部104、下ナット部105)は特殊な構造をしているので製造コスト(購入コスト)も高い。一方、それと比較すると、本実施形態のナット100は1つであるので、ナットの取り付けの手間が便利であり、さらにナット100の構造は単純であるので、製造コストも易くできる。
【0095】
本実施形態の構成によれば、上面11が傾斜しており、スリット20が形成されていることで、緩み防止とともに締めやすいナット100を実現することができる。具体的には、本実施形態の構成のように上面11が傾斜していることにより、上面11のうちのスリット20が形成されている部位(高位部位)12aが先に接触して、そしてスリット20がつぶれることで変形するので、締めやすい構造となっている。特に、締め付けの際にはスリット20がつぶれて、傾斜していた上面11が接触面に対して平行(水平)になるので、接触面に対してしっかりと力を加えることが容易になる。また、締結の際に、スリット20がなくなる方向に上面11が変形(主に上下方向に変形)することで、雌ネジ部と雄ネジ部との螺合部分に形成される隙間(バックラッシ)を無くして、雌ネジ部(ナット)と雄ネジ部(ボルト)とを密着させることができ、雌ネジ部(ナット)と雄ネジ部(ボルト)とで強い摩擦力を得ることができ、その結果、振動等によってナットがボルト等の雄ネジから緩み螺着力が低下することを確実に防止することができる。
【0096】
また、本実施形態の構成のように、上面11の傾斜角θ1とスリット20の傾斜角θ2を揃えておくと(θ1及びθ2の角度が同じ、または、実質的に同一)、締結する際に、スリット20がつぶれて、上面11が、傾斜から平行に変位することを制御しなくなるという利点もある。なお、角度(θ1、θ2)とは別に、接触時に上面11が平行になる量を見積もって、水平面L2基準から高位部位12aへの高さ(厚さ)とスリット20の厚さDとは互いに揃えておく(互いに協調した数字になるようにしておく)ことが好ましい。
【0097】
なお、
図13及び
図14においては、通常ナット90と、本実施形態のナット100を接触して固定させたが(ダブルナット構造の形成)、
図15に示すように、本実施形態のナット100同士(100A、100B)を接触固定させることも好ましい。本願発明者の実験によれば、上面11同士を接触して固定(締結)させた場合、通常ナット90とナット100の固定よりも、強く固定できることがわかった。
【0098】
(実施形態2)
図16は、本発明の実施形態2に係るナット100の構成を示した斜視図である。また、
図17は、本実施形態2のナット100の構造を説明するための断面図(正面図、または、側面図)である。上記実施形態1のナット100では、スリット20を斜めに形成したが、本実施形態2のナットでは、スリット20を水平に延びるように形成している。スリット20の厚さDを適切に調整することにより、スリット20を水平(L3に平行)に延ばしても、上記実施形態1のナット100と同様に効果を得ることができる。また、斜めにスリット20を入れる場合に比べると、スリット20の形成工程が比較的容易になるという利点もあるとともに、スリット入りのナット100(ナット本体部10)の強度予測が立てやすくなるという利点もある。
【0100】
(実施形態3)
図21は、本発明の実施形態3に係るナット100の構成を示した斜視図である。また、
図22は、本実施形態3のナット100の構造を説明するための断面図(正面図、または、側面図)である。上記実施形態2のナット100では、上面11を斜めに形成したが、本実施形態3のナットでは、下面13も斜めに形成している。傾斜している下面13のうち、下方向に向かって、高い領域を高位部位14aとし、低い領域を低位部位14bと称することとする。
【0101】
また、本実施形態では、スリット20を水平に延びるように形成しているが、実施形態1のように斜めに延びるようにしても構わない。ただし、スリット20を水平に延びるように形成したときは、上面11および下面13ともに接触面(締結面)として利用しやすいという利点がある。
【0103】
(実施形態4)
図26は、本発明の実施形態4に係るナット200の構成を示した断面図(正面図、または、側面図)である。また、
図27は、本実施形態1のナット200の構成を示した斜視図である。
【0104】
本実施形態のナット200は、ネジ孔30が形成されたナット本体部10と、ナット本体部10の上面側に形成された環状部材41とから構成されている。そして、環状部材41の外縁側には、外枠部材45が形成されている。
【0105】
環状部材41は、ナット本体部10の上面11に接触している第2端部42bと、第2端部42bとは反対側に位置する第1端部42aとを有している。そして、第1端部42aの上面は、第2端部42bの上面よりも上方に位置している。また、第1端部42aとと、ナット本体部10の上面11との間には、隙間40が形成されている。
【0106】
本実施形態の構成では、環状部材41は、ネジ孔30に対応した開口部が形成された円環形状を有している。環状部材(円環部材)41における第1端部42aの端面42t1と、第2端部42bの端面(42t2)との間には、隙間48が形成されている。すなわち、本実施形態の環状部材41の一部は切れており(ほぼ円形の円弧形状)、第1端部42aと第2端部42bとは離間している。また、環状部材41の第1端部42aと第2端部42bと間には環延長部42cが位置している。そして、環状部材41は、第2端部42bから螺旋状に上方に延びる構造を有している。また、環状部材41の中央開口内壁においては、ナット本体部10のネジ孔30に対応したネジ溝が形成されている。なお、環状部材41の中央開口内壁にネジ溝が形成されていない構成も採用することが可能である。
【0107】
本実施形態では、第2端部42bは、ナット本体部10の上面11と一体の構成になっているが、第2端部42bを溶接(または他の接合手段)によってナット本体部10の上面11に接合することも可能である。また、第2端部42bは、ナット本体部10の上面11と接触しているが、それ以外の部位(42c、42a)は、当該上面11との間に隙間40が存在している。
【0108】
また、環状部材41の側面41sは、外枠部材45の内壁47と間に第2隙間49を介して配置されている。また、外枠部材45の内壁47は、上向きに向かってテーパ状に傾斜している傾斜面(または、傾斜面を含んでいる壁部)である。具体的には、内壁47は、ナット本体部10の上面11から外枠部材45上面46の側の方に向かって、第2隙間49が大きくなるように傾斜している(すなわち、テーパ形状になっている)。なお、側面41sの一部(上面11に接するくらいの領域)は、内壁47に接触しており、側面41sの他の部分が、内壁47から離間していて、それで隙間49が形成されていてもよい。内壁47の傾斜角度(テーパ角度)は、水平線L2と傾斜面47とのなす角度(鋭角側基準での角度)で、例えば45°±25°程度(一例で、70°、60°、45°など)であるが、具体的な数値は、ナット200に求められている用途・特性にあわせて適宜好適なものを採用すればよい。なお、水平線L4と傾斜面47とのなす角度(鈍角側基準での角度)によってテーパ角度を規定することも可能である。
【0109】
さらに、環状部材41の第1端部42aの上面は、外枠部材45の上面46よりも上方に位置している。本実施形態の構成では、ナット本体部10の上面11は、鉛直方向(99)に対して直角の水平方向に沿った面である。すなわち、上述した実施形態1のように上面11は傾斜しておらず、水平な面である。加えて、外枠部材45の上面46も、鉛直方向に対して直角の水平方向に沿った面(水平面)である。なお、水平面と説明したが、面取り加工などの処理を施しても構わない。
【0110】
本実施形態のナット200の締結動作の内容については後述するが、簡単に説明すると、ナット200が締結されたときにおいて、環状部材41の第1端部42aは、ナット本体部10の上面11と接触する。すなわち、隙間40がなくなって、環状部材41の第1端部42a(加えて、第2端部42b及び環延長部42c)は、ナット本体部10の上面11に接触する。また、環状部材41の側面(外側面)41sは、外枠部材45の内壁47に接触する。さらに、第1端部42a及び第2端部42bを含む環状部材41の上面は、外枠部材45の上面46と同じ高さになる。この外枠部材45の上面46も、環状部材41の上面と同様に、被締結部材(板状部材、または、ナット)に接触する面である。加えて、ナット200が締結された状態になると、環状部材41の第1端部42aの端面42t1と、第2端部42bの端面42t2とは互いに接触する。すなわち、環状部材41の第1端部42aと第2端部42bとが引っ付いて、隙間48はなくなる。
【0111】
本実施形態のナット200は、金属材料から構成されている。すなわち、ナット本体部10、環状部材41、および、外枠部材45は、金属材料から構成されている。ただし、ナット200を、金属材料以外の材料(例えば、樹脂材料など)から構成することも可能である。加えて、ナット本体部10、環状部材41、および、外枠部材45は一体的に成型されている。すなわち、ナット本体部10、環状部材41、および、外枠部材45は同一の材料で連続して繋がって構成されている。なお、ナット200を一体成型でなく、一部の部材を溶接(または接着など)で組み合わせて構築することも可能である。また、重力によって、環状部材41とナット本体部10とを接触させることも可能である。具体的には、環状部材41とナット本体部10とを別部材で構成した上で、環状部材41の第2端部42bを、重力によって、ナット本体部10の上面11に接触させるようにしてもよい。ただし、環状部材41の第2端部42bをナット本体部10の上面11に付着させると(例えば、接着剤による接着、粘着剤による粘着、液体の粘性による付着、磁力による結合など)、逆さまに(または、横や斜めに)しても落ちたりズレたりすることがないようにすることができて、取り扱いに便利である。また、一体成型の場合は、その方が強度を高くすることができるメリットがあるととも、溶接加工などのプロセスを省略することができる。
【0112】
本実施形態のナット200の具体的な寸法・構造・材料などは、使用条件・用途、求められる特性、コストなどに応じて適宜好適なものを選択することができる。
図26において、寸法「φ1」は、傾斜面47の下端を基準にした直径であり、そして、寸法「φ2」は、傾斜面47の上端を基準にした直径である。内壁(傾斜面)47はテーパ形状になっているので、φ1<φ2の関係となっている。高さ「T1」は、下面(底面)13から上面11までの距離であり、そして、高さ「T2」は、下面(底面)13から上面46までの距離である。また、「T3」は、環状部材41の厚さである。寸法「e」は、環状部材41の第1端部42aと第2端部42bとの間の隙間48の距離を表している。そして、寸法「f」は、第1端部42aの上面と、外枠部材45の上面46との間の距離を表している。なお、線「L1」及び「L2」は、それぞれ、ナット本体部10の上面11及び底面13に沿った水平線であり、そして、線「L3」は、外枠部材45の上面46に沿った水平線である。
図27においては、寸法「G」は、環状部材(円環部材)41の直径を表している。寸法「G」は、環状部材の幅を表している。また、寸法「I」は、外枠部材45の外側面45sにおける直径である。
図27に示すように、外枠部材45の壁部(または上面46)は、環状部材(円環部材)41に対応した円形(円環形状)をしている。また、寸法「J」は、外枠部材45の上面46の幅である。これらの数字については、適宜好適なものを設計・採用することができる。
【0113】
図28は、本実施形態のナット200を、ボルト80のボルト軸部(ネジ軸部)85に配置した構成を示している。このネジ軸部85は、被締結部材69である第1部材61の表面61aに形成された開口部63に挿入される。開口部63の底面にはネジ孔65が形成されている。なお、第1部材61は開口部63なしでネジ孔65を形成して、そのネジ孔65にネジ軸部85を挿入することも可能である。
【0114】
図28に示したネジ軸部85では、
図25A又は
図25Bに示すように、通常ナット90と、本実施形態のナット200を結合することができる。また、ナット200とともに、ワッシャーなどのナット以外の部材を介在させることも可能である。また、
図25Cと同様に、本実施形態のナット200の上面(環状部材41)同士を互いに接触させて締結させると、通常ナット90同士(または、ナット90とナット200の組み合わせ)のダブルナット構造と比較して、非常に強固に締結力を持ったダブルナット構造を構築することができる。本実施形態のナット200を用いた締結構造(特に、ダブルナット構造)の場合、締結時に、ナット200の上面11側(締結面側)がつぶれて、逆回しにして取り外しが非常に難しい構造になる。加えて、ナット200の上面(環状部材41)同士を接触させて締結させた場合には、さらに強く噛み合って外れにくい構造になり、逆回しにして取り外そうとしても外すこと(緩めること)が極めて困難である。
【0115】
次に、
図29及び
図30を参照しながら、本実施形態のナット200の締結動作について説明する。
図29は、被締結部材61及び62を、ネジ軸部85とナット200とで締結する様子を示す断面図である。また、
図30は、
図29に示したナット200の拡大図である。
【0116】
図29に示すように、被締結部材61および62は積層されており(接触面66)、両部材(ここでは、板状部材)61・62には、両者を貫通するネジ孔65及び67が設けられている。そのネジ孔65・67にネジ軸部85が挿入されている。その挿入されたネジ軸部85にナット200はセットされており、矢印50方向(紙面の下方向)にナット200が進行するようにナット200を回転させていく。
【0117】
ナット200を矢印50の方向に進行させていくと、
図30に示すように、最初に、ナット200の第1端部42aが接触する。そして、第1端部42aの部分が矢印51の方向に押され、隙間40が潰されて減っていく。すると、螺旋状の形態だった環状部材41はだんだん平坦な形状になっていき、環状部材41の全体を押す力(矢印51)が強くなっていく。環状部材41が押されると、押し付ける力51によって環状部材41は外縁方向に広がるが、外枠部材45の内壁47によって環状部材41は押し戻される(矢印53)。特に、外枠部材45の内壁47が傾斜面(テーパ形状)になっているので、環状部材41に加わる上下方向の力51(図面では上方向)が矢印53の力に変換されやすい。この矢印53の力で、第1端部42aと第2端部42bとの間の隙間48が埋まり、環状部材41は平坦かつ一体(円環形)となり、また隙間40が消えることによって、ネジ山81をナット200(環状部材41)がしっかり噛んで締結することができる。そして、ナット200は、通常ナットと比較して、強固に締結することができるが、締結後も、隙間(第2隙間)49の存在によって外部からの振動を吸収することができ、それによってナット200が緩みに難くなっている。加えて、外枠部材45が締結部分(41など)をしっかり保護するので、その点でも緩み難くなっている。
【0118】
以上の締結動作について、
図31を参照しながらさらに説明する。
図31(a)から(d)は、環状部材41がどのようにして締結していくかの動作を説明するための工程図である。これらの図面は、締結構造体の製造工程を説明する図面でもある。
【0119】
まず、
図31(a)に示すように、第1端部42aが下に出っ張るようにして環状部材41をセットする。環状部材41の周囲には、内壁47(特に、傾斜面)を配置しておく。ここでは、環状部材41の表面41u(
図26では上面、この図では下面)を下向きにしている。
【0120】
次に、
図31(b)に示すように、下方に出っ張っている第1端部42aが最初に押されて(矢印51)、第1端部42aが上面11側に押し込まれて行くのにしたがって隙間40が減っていく。
【0121】
続いて、
図31(c)に示すように、第1端部42aが上面11に接触すると、環状部材41の全体が押され(矢印52)、環状部材41の側面41sが外側に広がる。そして、その側面41sが内壁47に当った反動(反作用の力)で、矢印53の力が発生する。
【0122】
その後、
図31(d)に示すように、第1端部42aと第2端部42bとの間の隙間48(e)が埋まり、一体となった環状部材41は、ネジ山81をより強固に掴んで締結する。このようにして、強固な締結が得られる。したがって、本実施形態のナット200によれば、緩み防止とともに締めやすいナットを実現することができる。
【0123】
なお、
図31(a)から(d)に示した説明の例では、環状部材41における第1端部42aの上面41uとともに、第2端部42bの上面41uおよび延長部42cの上面uも、外枠部材45の上面46と同一平面に位置するようになり、接触面積を大きく(最大に)することができる。そのような構成にしてもよいが、締結されたときにおいて、第1端部42aの上面41uが、外枠部材45の上面46と同一平面に位置するようにして、第2端部42bの上面41uは外枠部材45の上面46と同一平面とならずに、被締結部材の表面(および、外枠部材45の上面46)と第2端部42bの上面41uとの間に、隙間40が残ったままにしてもよい。このように隙間40が残るようにすると、ボルト(200)に衝撃が加わった時に、環状部材41および隙間40の構造体がその衝撃(外部からの応力)を吸収することができ、その吸収により、ボルト(200)が緩むことを防止することができる。
【0124】
本実施形態の構成によれば、ナット200は、ネジ孔30が形成されたナット本体部10の上面(11)側に形成された環状部材41と、環状部材41の外縁側に形成された外枠部材45とから構成されている。そして、環状部材41の第1端部42aとナット本体部10の上面11との間には第1隙間40が形成され、環状部材41の側面41sと外枠部材45の内壁47と間には第2隙間49が形成されている。また、環状部材41の第1端部42aの上面41uは、外枠部材45の上面46よりも上方に位置している。そして、外枠部材45の内壁47はテーパ形状になっている(言い換えると、上方に向かって第2隙間49が大きくなるように傾斜している)。
【0125】
したがって、本実施形態のナット200を用いて締結する場合、まず、環状部材41の第1端部42aが先に被締結部材(61)に接触し(ダブルナットの場合は他のナットに接触し)、この第1端部42aが押し込まれて第1隙間40がなくなり(矢印51)、雄ネジ・雌ネジ(あるいは、ネジ山・ネジ谷)における遊びを打ち消して、ネジ軸部85のネジ山81をしっかり噛んで掴むことができる(ロックすることができる)。具体的には、本実施形態の構成のように環状部材41が傾斜していることにより、環状部材411のうちの出っ張っている第1端部42aが、まず最初に、接触面(被締結部材61、他のナットなど)に接触して、そして第1隙間(スリット)40がつぶれることで変形するので、締めやすい構造となっている。特に、締め付けの際には第1隙間(スリット)40がつぶれて、傾斜していた環状部材41が接触面に対して平行(水平)になるので、接触面に対してしっかりと力を加えることが容易になる。また、締結の際に、第1隙間(スリット)40がなくなる方向に環状部材41の上面41uが変形(主に上下方向に変形)することで、雌ネジ部と雄ネジ部との螺合部分に形成される隙間(バックラッシ)を無くして、雌ネジ部(ナット)と雄ネジ部(ボルト)とを密着させることができ、雌ネジ部(ナット)と雄ネジ部(ボルト)とで強い摩擦力を得ることができ、その結果、振動等によってナットがボルト等の雄ネジから緩み螺着力が低下することを確実に防止することができる。
【0126】
また、第1端部42bが押し込まれた後は環状部材41は外側に広がる方向に変形するが、その変形を外枠部材の内壁でとめて力が逃げないようにすることができる。加えて、外枠部材45の内壁47は、テーパ形状になっているので(上方に向かって第2隙間49が大きくなるように傾斜しているので)、環状部材41が外側に変形する力(および縦方向の力51)を上手く調整しながら、すなわち反作用の力53を使って、締め付ける力が逃げないようにしてしっかりと締結することができる。
【0127】
さらに、外枠部材45が締結部(41・81)に影響を与える異物や外力を保護することができるので、締結構造体の締結力をより確実に保護することができる。加えて、環状部材41の側面41sと外枠部材45の内壁47と間には第2隙間49が形成されていることから、締結部(41・81)に振動が生じても、この隙間49がその振動の影響を吸収してくれるので、この点でも締結構造体の締結力をより確実に保護することができる。
【0128】
上述の実施形態1から3のナット100の場合、ナット本体部10にスリット20が入っていることから、簡単な構造でロックナット(緩み止め防止ナット)を構築することができ、また傾斜した上面11を備えていることで、より強固な締結を実現することができる。しかしながら、ナット100では、ナット本体部10にスリット20を入れるので、強度という面では、スリットなしのナット(例えば、通常ナット90)と比べて落ちてしまう。一方、本実施形態4のナット200では、ナット本体部10にはスリット20を入れずに、ナット本体部10の上面(11)側に隙間40を設けて、その隙間40を利用した環状部材41により、ロックナットを構築することができる。ナット本体部10にはスリット20がないことから、本実施形態4のナット200は、強度の面でも優れている。また、同様の強度を達成する場合でも、本実施形態4のナット200は、スリットありのナットと比較して、比較的安価な材料・製造方法を利用することができるので、コスト的な面でも有利である。
【0129】
本実施形態のナット200は、
図32及び
図33に示すような形態に改変することもできる。
図32及び
図33は、それぞれ、本実施形態のナット200の改変例を示す断面図および斜視図である。
【0130】
図32及び
図33に示したナット200では、外枠部材45は、ナット本体部10と同様に多角形ナット(ここでは、六角ナット)の形状を有している。言い換えると、外枠部材45の外側面45sは、ナット本体部10の側面15と同一面を構成している。このような改変例にすると、六角ナット用の器具(レンチなど)を比較的自由に用いることができて便利である。すなわち、普及している規格の器具(レンチなど)を、ナット本体部10の側面15だけでなく、外枠部材45の外側面45sの部位も含めて使うことができるので、便利である。また、
図26に示したナット200と比較して、外枠部材45の強度を向上させることもできる。
【0131】
(実施形態5)
図34は、本発明の実施形態5に係るナット400の製造方法を説明するための断面図である。
図35は、本実施形態5に係るナット400(雌ナット)と、そのナット400に組み合わされるナット500(雄ナット)との構成を示す斜視図である。
図36は、ナット400とナット500とを組み合わせたペアナット600の構成を示す斜視図である。また、
図37Aから
図37Dは、それぞれ、ナット400の底面側斜視図、側面図、底面図(下面図)、および、平面図(上面図)の構成を示している。
【0132】
まず、
図34を参照しながら、本実施形態5に係るナット400の製造方法を説明しながら、ナット400の構造(特徴)について説明する。なお、
図34は、説明のわかりやすさを優先して、寸法の比率は厳密なものではない。
【0133】
本実施形態のナット400では、使用されるボルトの中心軸C2(
図10Aでいうと鉛直方向99)を基準にして傾斜した形態で(軸C2と軸C1の間の角度θ10)、ネジ孔405の外縁から延びた傾斜面(テーパー面)を有する開口部(テーパー開口部)409が形成されている。
【0134】
図34に示した例では、ロッド部材(ここで、六角ナットを構成するための六角柱)401に、ネジ山406を有するネジ孔405が形成されている。そして、ネジ孔405が形成されたロッド部材401の一端(ここでは、ナット400の底面となる端面)の円錐形状(409)の開口部407を形成する。すると、ナット(400)の底面におけるネジ孔405の出口付近の外縁に、円錐の側面の一部に対応する傾斜面(テーパー面)409が形成され、その傾斜面409によって囲まれる開口部(テーパー開口部)407ができる。なお、ロッド部材401にテーパー開口部407を形成した後に、ネジ孔405を形成するような加工をしても構わない。
【0135】
本実施形態の構成例では、ネジ孔30(ロッド部材401)の中心軸C2(後述するが、鉛直方向99に沿った軸)を基準にして、テーパー開口部407を形成するための円錐形状の中心軸C1は、傾斜角度θ10の角度で傾いている。傾斜角度θ10は、例えば、4°から15°程度(好適な一例では、7°、または、7°±3°など)であるが、それらに限定されず、傾斜角度θ10は、製造されるナット400の特性(使用用途や使用に求められる締結の状態による要求数値など)にあわせて適宜好適なものを選択することができる。また、テーパー開口部409の角度θ20は、例えば20°〜40°、好適例で30°(または、例えば、30°±10°)である。なお、この角度θ20も、それらの例示角度に限定されずに、製造されるナット400の特性(使用用途や使用に求められる締結の状態による要求数値など)にあわせて適宜好適なものを選択することができる。なお、図示した例では、傾斜面409の断面形状は直線状の形状をしているが、それを曲線にしてもよい。また、円錐形状(409)で切断されたテーパー開口部407は、断面が直線のものだけでなく、そのよ曲線形状の略円錐の形状のものも含めてもよい。
【0136】
ロッド部材の径W1(六角柱の場合は、その外接円の直径)は、例えば、15mmである。径W1は、典型的に使用されているナットの径を採用することが好ましく、15mmに限定されるものではなく、他のものでも勿論構わない(インチ基準のものでもよい)。一例として、θ20が30°でW1が15mmのときの開口深さD1(浅い側:端面からネジ孔405の外縁に達するラインまでの深さ)は、2mm〜6mm(一例として、2.0〜2.5mm、3.5mm、4.9mmなど)であり、開口深さD2(深い側)は、5mm〜12mm(一例として、2.5mm、6.8mm、10.25mm)である。また、テーパー開口部409の径(直径)φ10は、8mm〜12mm(一例として、9mm、9.4mm、10.5mmなど)である。ナット(400)の高さD3は、テーパー開口部409によってネジ山406が消えてしまうラインS1(深さD2の基準ライン)を越えて、ネジ山406が存在する領域までの延びたラインS2までの長さにする。なお、ラインS1(深さD2の基準ライン)の箇所で切っても、ネジ山406は存在している点を付言しておく。ナット(400)の高さD3は、条件によって適宜好適なものを採用したらよいが、一例では、4mm〜15mm(好適例では、7mm、または7mm±2mm)である。また、W1が15mmでないナット400の場合は上述した数値を参考にして、各数字の割合(比例)に応じて設計数字を算出してもよい。
【0137】
また、テーパー開口部407の切り欠き形成角度は、θ20(例えば、30°)であるが、テーパー開口部407の軸C1が、ネジ孔(ボルト)の中心軸C2からずれていることから、浅い側(D1の方)の傾斜面409aの角度は、深い側(D2の方)の傾斜面409bの角度よりも、より鈍角になっている(より水平に近い角度)。逆にいうと、深い側(D2の方)の傾斜面409bの角度は、浅い側(D1の方)の傾斜面409aの角度と比べて、より垂直(90°)の方に近いものとなっている(より立った角度)。例えば、ネジ孔軸C(または、ネジ孔の内面)を基準にした深い側(D2の方)の傾斜面409bの角度が約10°のとき、ネジ孔軸C(または、ネジ孔の内面)を基準にした浅い側(D1の方)の傾斜面409aの角度は約20°である。このように両者(傾斜面409a、409b)の角度は対称ではなく、角度が異なるものとなっている。
【0138】
そして、ロッド部材401のラインS2を基準にして、ロッド部材401を切断すれば、本実施形態5のナット400が得られる。切断後は、同じロッド部材401の端面に、新たにテーパー開口部407を形成して、次いで、次のラインS2で切断すれば、別のナット400が作製される。以後、同じことを繰り返して、ナット400を製造(量産)することができる。
【0139】
図35は、ナット400(雌ナット)と、そのナット400とペアで使用されるナット500(雄ナット)とを表している。ナット400(雌ナット)とナット500(雄ナット)とを組み合わせると、ペアナット600になる。
図35において、ナット400の底面13にテーパー開口部407が形成されている。そして、ナット500は、ナット400のテーパー開口部407に対応した突起部72を備えている。ナット500の突起部72を、ナット400のテーパー開口部407に挿入することによって、ペアナット600として使用することができる。以下、さらに詳述する。
【0140】
本実施形態5のペアナット600は、ナット400(第1ナット、雌ナット、上部ナット)400とナット500(第2ナット、雄ナット、下部ナット)とを含んでいる。ナット400は、
図34に示すにして作製することが可能である。
【0141】
本実施形態のナット400は、ネジ孔30(
図34では「ネジ孔405」に対応)が形成されたナット本体部10から構成されている。ナット本体部10は、ナット本体部の上面11と、上面11を規定する側面15(上面11の横に位置する側面)と、上面11の反対側の下面13とを有している。
【0142】
本実施形態の構成において、ナット400のネジ孔30(405)の中心軸(
図34の「C」)は、ペアナット600に対応するボルト(80)の中心軸(C)と一致している。図示した例では、ネジ孔30(及びボルト)の中心軸(C)は、鉛直方向99に一致している。なお、ナット400の側面15も、鉛直方向99に沿って延びている。また、図示した例では、ナット400の上面11および下面13は、鉛直方向99に対して直角の水平方向に沿って延びている。
【0143】
また、下面(背面)を上側にした
図37Aに示すように、ナット400の下面13には、ネジ孔30の径よりも広い下面開口部(ネジ孔30の穴の径を広げるテーパー開口部)407が形成されている。テーパー開口部407にはネジ山31は形成されていない。下面開口部407の中心軸(
図34中の「C2」)は、鉛直方向99(または、ネジ孔30・ボルト80の中心軸C)から傾斜している(
図34中の「θ10」参照)。
図37Aに示した例では、下面開口部(テーパー開口部)407は、紙面からみて左側にずれた形態で、下面13に形成されている。それゆえに、ナット400の下面13において、下面開口部407によって狭部位16a(左側)と、広部位16b(右側)が形成されている。また、ナット400の下面13には、下面開口部407の外縁境界線39が形成されており、その内側には、傾斜面(テーパー面)38が位置している。さらに、傾斜面(テーパー面)38の底には、ネジ孔30の下部端面のネジ孔輪郭(境界線)37が位置している。なお、本実施形態の構成において、ナット400の下面開口部407は、
図34に示したように、円錐の側面の一部によって切り取られた形状の下面傾斜面38を有しているが、下面傾斜面38は、幾何学的な意味での円錐の側面で切り取られた形状に限らず、他のテーパー形状の傾斜面であってもよい。ただし、ナット400の製造においては回転工作機で加工(削除)することが多いので、下面傾斜面38は、回転体の側面の一部であることが好ましい。
【0144】
また、
図37Aに示したナット400の側面は、
図37Bに示す通りである。また、
図37Aに示したナット400の底面図(下面図)は、
図37Cに示す通りであり、そして、ナット400の平面図(上面図)は、
図37Dに示す通りである。
【0145】
さらに、
図35に示したナット500(雄ナット)は、ネジ孔30が形成されたナット本体部10から構成されている。ナット500のナット本体部10は、ナット本体部10の上面73と、上面73を規定する側面15(上面73の横に位置する側面)と、上面73の反対側の下面75とを有している。ナット500の上面73には、ナット400の下面開口部407に対応した上面突起部72が形成されている。なお、上面突起部72が、ナット400の下面開口部407に対応しているとは、下面開口部407と同じ形状の上面突起部72が形成されているという意味でなく、締結した際に、上面突起部72が下面開口部407に入り込んで、上面突起部72と下面開口部407とが密着した状態になれる形状のことを意味している。また、ナット本体部10のネジ孔30は、上面突起部72にも形成されている。上面突起部72およびナット本体部10に形成されたネジ孔30は共通のものであり、ナット本体部10のネジ孔30が、上面突起部72の上面71まで延びて貫通している。そして、本実施形態の構成では、ナット500の上面突起部72およびナット本体部10は一体的に形成されているものである。
【0146】
また、上面突起部72およびナット本体部10に形成されたネジ孔30の中心軸は、ペアナット600に対応するボルト(80)の中心軸(C)と一致している。ここでは、中心軸(C)は、鉛直方向(99)に沿ったものになっている。そして、本実施形態の構成では、ネジ孔30の径は、ナット500およびナット400も同じ(例えば、8mm)であり、ネジ孔30の中心軸(C2)も共通しており、共に鉛直方向(99)に沿ったものである。
【0147】
ナット500の上面突起部72の外側面は、ナット本体部10の上面73から直角に延びた垂直面(または、鉛直方向99に沿って延びた垂直面)であってもよいが、本実施形態の構成では、上面突起部72の外側面は、傾斜面(テーパー面)となっている。上面突起部72の外側面に少し傾斜(例えば、鉛直方向99を基準にして、3°〜20°、または、10°±5°)をつけることにより、ナット500の上面突起部72を、ナット400の下面開口部(テーパー開口部)407に挿入しやすくすることができる。ナット500の上面突起部72の高さ(上面73と上面71との間の鉛直方向99に沿った距離)は、組み合わされるナット400の下面開口部407の形状(深さ等)によって適宜好適なものを選択することができる。図示した上面突起部72は、立体的に見たら、円錐台状をしている。また、本実施形態の構成において、上面突起部72の高さは、例えば、2mm〜8mm(好適には、3mm〜5mm)である。また、上面突起部72の上面71は、円環形状をしており、その外径は例えば9mm〜10mmであるが、適宜好適なものを選択することが可能である。
【0148】
ナット400の下面開口部407に、ナット500の上面突起部72を接触させると、
図36に示すような状態になる。本実施形態のペアナット600(ナット400、500)をボルト(80)に締結する前においては、
図36に示すように、ナット400とナット500の間には隙間610が形成されている。具体的には、ナット400の下面開口部407に対してナット500の上面突起部72を挿入して接触させただけのときには、ナット400の下面13と、ナット500の上面73との間には隙間610が存在する。本実施形態の構成において、隙間610は、例えば、0.5mm〜3mm程度(好適には、1〜2mm)である。
【0149】
そして、ペアナット600(ナット400および500)をボルト(80)に通して、ボルトにしっかりと締結したときには(すなわち、ナット400および500を互いに密着するように締結させた場合)、ナット400の下面13と、ナット500の上面73とは互いに接触する。具体的には、ペアナット600をボルトに締結すると、ナット500の上面突起部72は、ナット400の下面開口部407の奥までしっかり入りこんで、ナット400及び500の両者は互いに強固に固定され、そして、隙間610は無くなる(0mmになる)。
【0150】
また、
図36に示したペアナット600の構成においては、ナット400の側面15およびナット500の側面15の周囲に、フィルム(ここでは、樹脂フィルム)650が形成されており、ナット400およびナット500を固定している。本実施形態の樹脂フィルム650は、シュリンクフィルムであり、環状の樹脂フィルム(端面を接着して環状にしたフィルムも含む)を熱で収縮させることができるフィルムである。シュリンクフィルム650は、熱で収縮する樹脂材料から構成されており、例えば、塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィン(PO)などから構成されている。
【0151】
本実施形態の構成では、樹脂フィルム(シュリンクフィルム)650は、ナット400の側面15およびナット500の側面15の全周を覆って、隙間610を塞ぐように形成されている。具体的には、ナット400及び500の径よりも少し大きい環状のシュリンクフィルム650を、隙間610を含む側面15に被せた後、その状態で、シュリンクフィルム650を収縮させることで、シュリンクフィルム650は側面15に密着して、ナット400及び500を固定させることができる。シュリンクフィルム605は、側面15の全面を覆うように形成してもよいし、
図36に示した例のように、側面15の一部(ここでは、ナット400の上方部位、ナット500の下方部位)を露出させるようにして、側面15にシュリンクフィルム605を形成してもよい。また、シュリンクフィルム605の一部がナット400の上面11の外周領域(および/または、ナット500の下面75の外周領域)を覆うような形態で、シュリンクフィルム605を側面15の全面を覆うように形成してもよいし、
【0152】
本実施形態の構成では、ナット400およびナット500は、同一の多角形ナット(ここでは、六角ナット)であり、そして、両者(400・500)の各側面15を鉛直方向99に沿って揃えている。ナット400およびナット500は、同一のネジ孔の軸(C2)を有しており、すなわち、ペアナット600は、共通した軸(C2)を持っているので、このシュリンクフィルム650で固定されたナット400およびナット500(ペアナット600)は、この状態で、ボルトの軸に入れることができる。すなわち、ナット400とナット500とをそれぞれボルトの軸に入れなくても(2回通さなくても)、1回でボルトの軸に入れることができる。これは、作業効率を大幅に向上させることができ(2回が1回になるので、2倍の効率アップ)、非常に便利である。
【0153】
また、樹脂フィルム(シュリンクフィルム)650は、ナット400および500の側面15を覆うので、当該側面15を樹脂フィルム650で保護することができる利点もある。また、樹脂フィルム650は隙間610も塞いでいるので、隙間610に異物(汚れ、インクなども含む)が混入することができ、その点も便利である。加えて、ペアナット600をしっかりと締結した際には、ナット400および500が互いに密着して、それとともに、樹脂フィルム(シュリンクフィルム)650は破れて取れるだけなので、その後処理も便利である。さらには、樹脂フィルム650が破れてなければ、しっかりと締結されていないという証拠にもなり、締結状態の点検の観点からも技術的価値がある。なお、ペアナット600を締結すれば、シュリンクフィルム650は薄いので破れて取れしまうが、取れやすいように切れ目(点線)を入れておいても構わない。また、本実施形態では、樹脂フィルム650として、熱で収縮するシュリンクフィルムを用いているが、ペアナット600の締結の効果自体は、樹脂フィルム650なしでも得られるものであるとともに、上述した効果(保護など)は、シュリンクフィルムでなく、熱で収縮しない樹脂フィルムを巻き付けることでも得ることができる。なお、樹脂フィルム650を用いずに接着剤などで、ナット400および500の積層配置(
図36に示した配置)を構築するこ
とも可能であるが、ペアナット600の製造および/または締結の技術的・経済的なことを考慮すると、シュリンクフィルム650を用いることが好ましい。加えて、2つのナットをシュリンクフィルム650で固定する手法は、本実施形態5のナット400及び500に限らず、他の実施形態のナット(例えば、
図14に示した2つナットの組み合わせ)または典型的な2つのナット(例えば、
図5に示した2つナットの組み合わせ)に適用することも可能である。ペアナットの表面保護機能を除いて、1回の動作でボルトに入れることができる点からいうと、当該2つのナットにおいてはネジ孔の軸が共通していることが好ましい。
【0154】
また、本実施形態のナット400は、
図38Aに示すように改変することが可能である。
図38Aは、ナット400の改変例の底面(下面)の構成を示している。
図38に示したナット400では、下面傾斜面(テーパー傾斜面)38において、溝部36が形成されている。本実施形態の構成において、溝部36は、下面傾斜面38の表面において、放射状に延びるように複数本形成されている。溝部36は、下面傾斜面38の表面に段差(例えば、1mm以下)を設けるものである。
図38Bは、溝部36の断面構成を模式的に示している。当該溝部36は、ナット400を締める方向(締結方向の順方向)には抵抗にならずに、ナット400をあける方向(締結方向とは逆方向)には抵抗になるように作用するように形成されている。
図38Bに示した溝部36は、ノコギリ波(または、三角波)の断面形状を有しており、溝部36は、頂点36aと凹部36bとを有している。本実施形態のペアナット600において、
図38Aに示したナット400(雌ナット)を使用すると、さらに締結力を向上させることができる。具体的には、
図35に示したナット500(雄ナット)における上面突起部72の側面に凸部を形成したものを使用
したナット500の当該凸部と、ナット400(雌ナット)の溝部36とが合わさるようにして用いる。このようにすると、締結力が解除される力を溝部36で止めることができ、ペアナット600の締結が解除されてしまうことを抑制することができる。
【0155】
次に、
図39および
図40を参照しながら、本実施形態のペアナット600(ナット400、500)をボルト80に締結する様子を説明する。
図39は、ナット400および500を分解して示すものであり、ナット400のネジ孔30の中心軸C、ナット500のネジ孔30の中心軸C、および、ボルト80のネジ軸部85の中心軸Cが一致している様子を示している。この例において、中心軸Cは鉛直方向99と一致している。また、ペアナット600(ナット400、500)のネジ孔30は、ボルト80のネジ軸部85のねじ外径D、ピッチP(および、つる巻角θ)に対応したものになっている。
【0156】
図40に示すように、ナット400および500を積層してペアナット600にするとともに、
図40に示すように、被締結部材61及び62を、ネジ軸部85とペアナット600とで締結すると、締結構造体601が作製される。
図40で表してるように、ナット400および500を、被締結部材61(62)に対してしっかりと締結すると、ナット500の上面突起部72は、ナット400の下面開口部407の傾斜面38に接触する。ここで、ナット400の傾斜面38の傾斜角度は、薄い部位16a側と広い部位16b側とで異なるので(すなわち、傾斜面38の右側の傾斜角度、左側の傾斜角度が異なるので)、それに接触する上面突起部72は斜めに変位する。さらに、その状態で強く締結すると、上面突起部72は、ナット400の下面開口部407の奥まで入るとともに、ナット400は、被締結部材61(62)の方に強く押し付けられるので、ペアナット600に水平方向の力(矢印690)が加わり、その力(690)によって締結力が向上する。したがって、雌ネジ部と雄ネジ部との螺合部分に形成される隙間(バックラッシ)をなくすることができ、雌ネジ部(ナット)と雄ネジ部(ボルト)とを密着させることができる。それゆえに、雌ネジ部(ナット)と雄ネジ部(ボルト)とで強い摩擦力を得ることができ、その結果、振動等によってナットがボルト等の雄ネジから緩み螺着力が低下することを確実に防止することができる。
【0157】
また、
図40に示すように、ナット500の先端(突起部)72が、ナット400の裏面に深く食い込むことで、ナット400およびナット500は一体化する。それに、典型的なナット(上面、下面が平行で、平面なもの)を2つ組み合わせたものよりも、本実施形態のペアナット600は強度が増している。また、本実施形態の構成では、ナット500の下面75およびナット400の下面13はそれぞれ平行(鉛直方向99に対して直角)であるので、
図40に示した締結状態では、被締結部材61の表面(平面、水平面)に対応して、ナット500の下面75およびナット400の下面13はそれぞれ平行な状態になり、しっかりと被締結部材61・62を固定することができる。なお、
図40に示した締結状態から、スパナによって、ナット400およびナット500をそれぞれ外すことが可能である。
【0158】
さらに、
図1及び
図2に示したハードロックナット103と比較すると、本実施形態のペアナット600は次のような利点がある。まず、
図1に示したハードロックナット103では、上ナット部104のネジ孔軸と下ナット部105のネジ孔軸がずれているので(偏心(a)参照)、上ナット部104及び下ナット部105を一緒に、一度にボルト102に入れることができず、下ナット部105で一度、上ナット部104でもう一度、ボルト102に回して入れる必要があり、これが手間である。本実施形態のペアナット600であれば、一度で、ナット400および500のネジ孔軸(C)が共通しているので、をボルト80に入れることができる。さらには、
図36に示したシュリンクフィルム650で一体化した構成のペアナット600であれば、さらに取り扱いが容易であり、簡単に一度に2つのナット(400、500)を、一つのナット600として、ボルト80に回転しながら挿入配置することができる。これだけでも、本実施形態のペアナット600は、ハードロックナット103よりも2倍も取付の効率が良い。
【0159】
また、
図1及び
図2に示したハードロックナット103では、下ナット部105における円錐台状嵌合部117の軸心118をずらしているので、ナット本体部よりも厚さが薄い円錐台状嵌合部117の一方側(変位aだけズラされた側)の厚さがさらに薄くなる。そして、ハードロックナット103では、この薄い箇所を利用してクサビ作用を持たせてひずませているので、当該薄い箇所に応力が集中して、当該薄い箇所が破損しやすい。一方、本実施形態のペアナット600では、そのような薄い箇所はないので、ハードロックナット103と比較して、破損しにくいという利点がある。さらに説明すると、
図35に示すように、ナット500の突起部72の上面71の厚さは一定であり、薄い箇所がない。また、ペアナット600をボルト軸85に傾けるので、薄い箇所に応力が集中しやすいハードロックナット103と比較して、応力集中が発生しにくく、それゆえに、破損確率を低下させることができる。
【0160】
上述したように、本実施形態5のペアナット600では、第1ナット(雌ナット)400および第2ナット(雄ナット)500におけるネジ孔30の中心軸C(C2)は、ボルトの中心軸(C)と一致しており、第1ナット400における下面13には下面開口部407が形成されている。当該下面開口部407の中心軸C1はボルトの中心軸Cから傾斜(θ10)して延びており、そして、第2ナット500における上面73には上面突起部72が形成されている。したがって、第2ナット500の上面突起部72を、第1ナット400の下面開口部407に挿入して第1ナット400および第2ナット500を締結したときに、第1ナット400の下面開口部407の中心軸C1が傾斜(θ10)して延びていることから、第2ナット500の上面突起部72の上面71は均等に第1ナット400の下面開口部407に接触するのではなく、不均一に(片側が優先して)下面開口部407に接触する。それゆえに、第2ナット500は最初は僅かに斜めになった状態で、第1ナット400の下面開口部407に入り混むので、横成分の力(矢印609)が発生して、雌ネジ部(ナット400,500)と雄ネジ部(ボルト80)との螺合部分に形成される隙間(バックラッシ)を無くして、雌ネジ部(ナット400,500)と雄ネジ部(ボルト80)とを密着させることができる。その結果、雌ネジ部(ナット400,500)と雄ネジ部(ボルト80)とで強い摩擦力を得ることができ、振動等によってナット(600)がボルト80等の雄ネジから緩み螺着力が低下することを確実に防止することができる。
【0161】
さらに、上述したように、第1ナット400および第2ナット500におけるネジ孔30の中心軸C(C2)は一致(ボルトの中心軸Cと一致)しているので、第1ナットおよび第2ナット500のネジ孔の中心軸Cが互いに一致していないもの(
図1に示したナット104、105)と比較すると、第1ナット400および第2ナット500を製造することが容易となる。すなわち、
図1に示したハードロックナット103(104、105)は、偏心嵌合を実行できる特殊な構造を有しているので、通常のナットと比較して、製造コスト(または購入コスト)が高いという問題があるが、本実施形態のペアナット600(400、500)は、製造コスト(または購入コスト)が安いという利点がある。
【0162】
加えて、本実施形態のペアナット600(第1ナット400および第2ナット500)におけるネジ孔30の中心軸Cは一致(ボルトの中心軸Cと一致)しているので、第1ナット400および第2ナット500の2つのナットを重ねて、一度の動作(回転)でボルト80に入れることができるので便利である。
図1に示したハードロックナット103(104、105)は、偏心嵌合を実行できる特殊な構造であるので、互いのネジ孔の中心軸が互いに一致していないので、第1ナットと第2ナット(104、105)とをそれぞれ別にの動作(回転)でボルトに入れる必要があるので、手間が2倍になる。そのようなハードロックナット103(104、105)と比較すると、本実施形態のペアナット600(400、500)の場合、ボルト80への取付効率を大幅に(2倍またはそれ以上)上げることができる。
【0163】
(実施形態6)
次に、
図41を参照しながら、本発明の実施形態6に係るボルト700について説明する。
図41は、本実施形態6のボルト700におけるボルト軸部85の根本部分を模式的に示している。
図41では、理解しやすいように、ボルト軸部85の根本部分は正面図で示し、ボルト頭部82の下の方(側面15および境界17を含む部位)も正面図で示しているが、ボルト軸部85の根本部分の周縁に位置する外枠部材45には、断面図を示す斜線をつけずに、本実施形態6の特徴の全体がわかりやすいようにしている。
【0164】
本実施形態6のボルト700は、少なくとも一部にネジ山81が形成されたボルト軸部85と、ボルト軸部85の一端に形成されたボルト頭部82とから構成されている。本実施形態の構成では、ボルト軸部85においてネジ山81の形成部とボルト頭部82との間に、ネジ山が形成されていないネジ山非形成部88が設けられている。
【0165】
本実施形態の構成においては、ボルト頭部82のうちのボルト軸部85の側には、ボルト根本開口部89が形成されている。そして、ボルト根本開口部89には、ワッシャー41が挿入されている。具体的には、略環状のワッシャー41の中央開口部が、ボルト軸部85に挿入されており、ワッシャー41の本体部(42a、42b、42c)がボルト根本開口部89に収納されている。
【0166】
本実施形態のワッシャー41は、第1端部42aと、第2端部42bと、第1端部42aと第2端部42bとの間の延長部42cとを有している。図示したワッシャー41は、一巻きの螺旋状の形状を有しており、スプリング機能を有している。そして、第1端部42aの方が、第2端部42bよりも高い位置にある。また、第1端部42aと第2端部42bとの間には隙間がある。
【0167】
本実施形態の構成では、ボルト700が締結されていない状態においては、ワッシャー41の第2端部42bは、ボルト根本開口部89の底面87に接触した状態となっている。そして、ワッシャー41の第1端部42aは、ボルト根本開口部89の底面87との間に隙間40がある状態となっている。そのような状態で、ワッシャー41は、ボルト根本開口部89内に収納されている。
【0168】
ワッシャー41を収容したボルト根本開口部89の外側には、ボルト根本開口部89を規定する外枠部材45が形成されている。外枠部材45の内壁47は、上向きに向かってテーパ状に傾斜している。なお、ワッシャー41の延長部42cの一部(側面)が、外枠部材45の内壁47に接触してもよい。
【0169】
また、ボルト700が締結されていない状態において、ワッシャー41の第1端部42aの上面41uは、外枠部材45の上面46よりも上方に位置している。そして、ワッシャー41の第2端部42aの上面41uは、外枠部材45の上面46よりも下方に位置している。
【0170】
本実施形態6に係るボルト700は、基本的に、
図30および
図31で説明した機構のように動作して、優れた締結力を有する。具体的には、上記実施形態のナット200における外枠部材45および環状部材(円環部材)41が、本実施形態6のボルト700の外枠部材45およびワッシャー41に相当する。同様の説明は重複になるので、内容のわかりやすくするために省略する。
【0171】
図41に示した構成のボルト700を締結した状態は、
図40に示した構成における被締結部材61、62を締結するボルト80のようになる。
図40に示したボルト80のボルト頭部82におけるボルト軸部85の根本の付近に、
図41に示した構造(ボルト根本開口部89、ワッシャー41、外枠部材45)が形成されている。
図41では、外枠部材45は、ボルト頭部82の外側(側面15)よりはみ出るように構成したが、ボルト頭部82の外側(側面15)と同じ面になるような構成にしてもよい。言い換えると、
図40に示したボルト頭部82の中心領域(根本領域)に、ボルト根本開口部89を形成して、そこにワッシャー41を収納するようにしてもよい。
【0172】
上述の実施形態における
図30および
図31での説明に基づくと、ボルト700が締結されたときにおいて、ワッシャー41における第1端部42aの上面41uは、外枠部材45の上面46と同一平面に位置するようになる。加えて、ワッシャー41における第1端部42aの上面41uとともに、第2端部42bの上面41uおよび延長部42cの上面uも、外枠部材45の上面46と同一平面に位置するようになる。そのような構成にしてもよいが、ボルト700が締結されたときにおいて、第1端部42aの上面41uが、外枠部材45の上面46と同一平面に位置するようにして、第2端部42bの上面41uは外枠部材45の上面46と同一平面とならずに、被締結部材62の表面(および、外枠部材45の上面46)と第2端部42bの上面41uとの間に、隙間40が残ったままにしてもよい。このように隙間40が残るようにすると、ボルト700に衝撃が加わった時に、ワッシャー41および隙間40の構造体がその衝撃(外部からの応力)を吸収することができ、その吸収により、ボルト700が緩むことを防止することができる。
図41は、そのような構造になるように、ワッシャー41の上面41uと、外枠部材45の上面46との構造(位置関係)を設定している。上述の実施形態の構成(
図30、
図31など)でも説明したが、上述の実施形態の構成(
図30、
図31など)においても、この構造の特徴を採用することが可能である。なお、外枠部材45の上面46とワッシャー41の全ての部位の上面41uが同一平面になるような構成にしても勿論よい。その場合は、接合面積が広くなって(最大になって)、締結力が向上するという利点が得られる。
【0173】
図41(および
図40)に示した構成においては、重力の力によって、ボルト根本開口部89の底面87にワッシャー41を配置することが可能である。ただし、ボルト700は、逆さ向きや横向きに使用される場合もあるので、ワッシャー41の一部(特に、第2端部42bおよびその周辺)は、ボルト根本開口部89の底面87に付着させるような構成にしておくことが好ましい。ボルト根本開口部89の底面87に付着させる手法としては、接着剤で接着する方法、粘着剤で粘着する方法、磁石などで付ける方法などが上げられるが、それ以外にも、例えば、溶接によって付着する方法、ワッシャー41と底面87を一体的に形成する手法などが挙げられる。
【0174】
また、
図42Aおよび
図42Bに示すように、本実施形態のボルト700を改変してもよい。
図42Aは、
図41に示したボルト700のボルト頭部82(特に、ボルト根本開口部89、ワッシャー41、外枠部材45)の構造を主に示している。ここで、外枠部材45の上面46に対して、外力701を加えると(具体的には、器具(例えば、ハンマー)でその部分を叩くと)、
図42Bに示すようなボルト700になる。
【0175】
図42Bで示した構造では、外枠部材45の上面46に延長部位(突起部)46eが形成されて、その延長部位(突起部)46eがワッシャー41を抑えることができる。さらに説明すると、外枠部材45の上面46を叩くと、ボルト根本開口部89の方に(内側に)上面46の一部が延びて、それが延長部位(突起部)46eになる。この構造では、延長部位46eがワッシャー41の上面41uを抑えることができるので、ボルト700を逆さまにしても、ワッシャー41が抜けることがなく、それゆえに便利である。すなわち、
図42Bに示した構造では、ワッシャー41を溶接(または接着など)でボルト根本開口部89の底面87に付着させなくても、ワッシャー41をうまく使用することができる。
【0176】
また、
図42Bに示した構造によれば、ボルト700をしっかり締めたときも、ワッシャー41と、ボルト根本開口部89の底面87との間に隙間40が残っているので、それがクッションの役割を果たして、締結持続力の向上につながる。
図42Aおよび
図42Bでは、ボルト根本開口部89の壁面(内壁)47を傾斜面にしているが、垂直面にしても構わない。ただし、壁面(内壁)47を傾斜面にした方が、ワッシャー41が傾斜面47を押した反力を利用して締結力を高めることができる。加えて、
図42Aおよび
図42Bの構造(作用、製造方法)は、ボルト700だけでなく、ナット(特に、ナット200)にも適用することができる。同様に、
図31(a)から(d)に示した動作において、
図42Bの構造のものを適用することができる。本実施形態の構成においては、ワッシャー41の中央開口内壁においては、ネジ溝は形成されていないが、ワッシャー41の中央開口内壁にネジ溝が形成されたものを使用してもよい。
【0177】
図43Aは、本実施形態のボルト700Aのボルト頭部82を説明するための斜視図である。
図42に示したボルト700Aでは、多角形ヘッド(六角ヘッド、六角ナット形状)の形状82aを有するボルト頭部82を備えている。そのボルト頭部82は、スパナ98のアゴ部98aで保持されて、ボルト700Aは、締結されることができる。ボルト頭部82のボルト軸部85側には、上述したワッシャー41および外枠部材45などが形成されている。また、ボルト700Aのボルト頭部82には、ドライバー溝83a(ここでは、プラス穴であるが、マイナス穴でもよい)が形成されている。
【0178】
図43Bは、本実施形態のボルト700Bのボルト頭部82を説明するための斜視図である。ボルト700Bのボルト頭部82には、レンチ穴83b(ここでは、六角レンチ開口部であるが、他のレンチ開口部でもよい)が形成されている。図示したように、ボルト700Bのボルト頭部82は円形(六角ヘッドなく)でもよいが、
図43Aに示すように多角形ヘッド(82a)の形態でも構わない。
【0179】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、本発明の実施形態に係るナット100及びナット200では、六角ナットの形態のもので説明したが、他の形態のナット(例えば、四角形ナット、五角形ナット)に対して本発明の特徴を適用することも可能である。さらに、順ネジ構造のナットだけでなく、逆ネジ構造のナット(100、200など)を構築することも可能である。順ネジ構造の場合、
図26においては紙面右側に第1端部42aが位置するようにすることが好ましい。逆に、逆ネジ構造の場合は反対になる。また、上述の実施形態の番号(実施形態1、2、3、4、5,6など)は便宜上のものであり、各実施形態の特徴は、矛盾しない限り適宜相互に適用可能である点を付言しておく。具体的には、
図35及び
図36に示したペアナット600の構造において、実施形態1で説明したナット本体部10の上面11(または下面13)を傾斜させる構成、および/または、スリット20の構成を採用することを禁止するものではない。ただし、実際の適用においては、適宜好適なもの(寸法、構造)を設計して採用することが好ましい。
【0180】
また、本発明の実施形態に係るナット100において、スリット20入りのナット本体部10においてバネのような弾性を出したい場合(言い換えると、スリット20がつぶれてしまって復元しにくい場合)、ナット本体部10に圧縮処理を施しておく方が好ましい場合があるので、そのような処理を施してもよい。上述したように、ナット本体部10の所定の箇所に面取りを行ってもよいし、例えば強度を補強するような構造(または、材料の削減・軽量化を実施する構造)を追加してもよい。
【0181】
また、本発明の実施形態に係るナット(100、200など)および/またはボルト700は、各種用途に使用することができる。具体的には、橋梁、バス・トラック・乗用車のエンジンやトランスミッションまわり、火力発電所又は原子力発電所などの各種配管どめ(または構造体の締結具)、レール・架線まわり、製紙・製鉄機械、化学プラント、エレベータ・エスカレータ、鉄道車両・線路、トンネル内構造物、鉄塔、土木建設機械、高速道路構造物(防音壁、標識その他)、コンプレッサー・ポンプ、工作機械、自動倉庫・搬送機器、船舶・航空機のエンジンまわりなどが挙げられる。これらの用途においてナット100・200等、ボルト700等が使用された締結構造体(または、構造体)もまた本発明に係る製品である。
【0182】
なお、本発明の技術的思想とは本質的に異なるが、スプリングワッシャー機能を持たせたナットが提案されている(特許文献5:実開昭57−112124号公報)。
図44(a)及び(b)は、特許文献5に開示されているナット5000の斜視図および断面図である。また、
図45は、特許文献5で従来例として開示されたナット5100の断面図である。
図34に示したナット5000では、多角形の外周面502を持ったナット本体501に、外周面502から内孔504に達する切込み505を座面503から螺旋状に半周以上巻いて開設し、そして、該切込み505から座面側を引っ張って螺旋片506を形成している。そして、内周面562の直径563は、ナット本体501のネジ溝の谷径542より少し大きくしてある。
図35に示したナット5100の場合、ナット本体501のネジ溝の谷径542より少し大きい直径563がない点が、ナット5000と異なる。このナット5000及び5100によれば、ワッシャーとナットを組み合わせる手間が省けるという利点が得られる。しかしながら、このナット5000及び5100の切込み505は座面503側に形成されいるところ、座面503と反対側の面(締結側の面)は水平である。したがって、本実施形態のナット100のように傾斜した接触面(上面11)は有していない。また、この螺旋片506は、締結した際において外側に広がって力が逃げてしまう構造であるので、本実施形態のナット200のように上面11側に設けられた環状部材41と外枠部材45の構造とも大きく異なる。したがって、本発明の実施形態に係るナットと特許文献5に開示されたナットとは、互いに顕著に相違するものである。