特許第6557440号(P6557440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学株式会社の特許一覧

特許6557440スパンボンド不織布、スパンボンド不織布の製造方法、エンボスロール
<>
  • 特許6557440-スパンボンド不織布、スパンボンド不織布の製造方法、エンボスロール 図000003
  • 特許6557440-スパンボンド不織布、スパンボンド不織布の製造方法、エンボスロール 図000004
  • 特許6557440-スパンボンド不織布、スパンボンド不織布の製造方法、エンボスロール 図000005
  • 特許6557440-スパンボンド不織布、スパンボンド不織布の製造方法、エンボスロール 図000006
  • 特許6557440-スパンボンド不織布、スパンボンド不織布の製造方法、エンボスロール 図000007
  • 特許6557440-スパンボンド不織布、スパンボンド不織布の製造方法、エンボスロール 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6557440
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】スパンボンド不織布、スパンボンド不織布の製造方法、エンボスロール
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20190729BHJP
   D04H 3/10 20120101ALI20190729BHJP
   D04H 1/50 20120101ALI20190729BHJP
   D06C 23/04 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   D04H3/16
   D04H3/10
   D04H1/50
   D06C23/04 B
【請求項の数】17
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-507875(P2019-507875)
(86)(22)【出願日】2019年1月25日
(86)【国際出願番号】JP2019002536
【審査請求日】2019年2月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】本村 茂之
(72)【発明者】
【氏名】島田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
(72)【発明者】
【氏名】國本 尚佑
(72)【発明者】
【氏名】太田 康介
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−108213(JP,A)
【文献】 特開2016−041858(JP,A)
【文献】 特開2016−005545(JP,A)
【文献】 特開2004−113489(JP,A)
【文献】 特開昭57−112454(JP,A)
【文献】 特開平11−347062(JP,A)
【文献】 特開昭10−329214(JP,A)
【文献】 特開2004−333936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
D06C 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性重合体を溶融紡糸して連続繊維群を形成すること、
形成された前記連続繊維群を移動捕集部材上に堆積させて不織ウェブを形成すること、
形成された前記不織ウェブを、凸部及び凹部が設けられ、前記凸部の面積率が5%〜18%であり、前記凸部の頂面における面積に対する前記凸部の頂面から前記凹部の底面までの深さの比で表されるエンボスアスペクト比が、2.5mm/mm〜7.0mm/mmであり、母材のロックウェル硬度が35HRC以上であるエンボスロールと、フラットロールとにより熱圧着を行うこと、
を有し、
前記熱可塑性重合体の繊維を含み、厚みt、KES法による圧縮試験で測定した圧縮仕事量WC、KES法による圧縮試験で測定した圧力0.5gf/cmにおける厚みTO、KES法による圧縮試験で測定した圧力50gf/cmにおける厚みTM、及び目付Wが、下記条件(A)〜(D)を満足するスパンボンド不織布を製造するスパンボンド不織布の製造方法。
(A):t≧0.30mm
(B):WC≧0.22gf・cm/cm
(C):TO−TM≧0.25mm
(D):W≦30g/m
【請求項2】
前記スパンボンド不織布が圧着部と非圧着部とを有する請求項1に記載のスパンボンド不織布の製造方法
【請求項3】
前記圧着部の面積率が5%〜18%である、請求項2に記載のスパンボンド不織布の製造方法
【請求項4】
前記繊維が捲縮繊維を含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のスパンボンド不織布の製造方法
【請求項5】
前記熱可塑性重合体がオレフィン系重合体を含む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のスパンボンド不織布の製造方法
【請求項6】
前記オレフィン系重合体がプロピレン系重合体を含む、請求項5に記載のスパンボンド不織布の製造方法
【請求項7】
前記繊維の平均繊維径が5μm〜20μmである、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のスパンボンド不織布の製造方法
【請求項8】
前記スパンボンド不織布は衛生材料用である、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のスパンボンド不織布の製造方法
【請求項9】
前記スパンボンド不織布がスパンボンド不織布積層体である、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のスパンボンド不織布の製造方法
【請求項10】
前記エンボスロールの母材のロックウェル硬度が35HRC〜50HRCである、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【請求項11】
回転方向に隣り合う前記凸部間距離に対する前記深さの比が、0.4mm/mm〜1.0mm/mmである、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【請求項12】
前記比が0.4mm/mm〜0.8mm/mmである、請求項11に記載のスパンボンド不織布の製造方法
【請求項13】
前記回転方向に隣り合う凸部間距離は0.5mm〜3.0mmである、請求項11又は請求項12に記載のスパンボンド不織布の製造方法
【請求項14】
前記不織ウェブが、少なくとも2層の不織ウェブである、請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【請求項15】
不織ウェブを熱圧着するためのエンボスロールであって、
凸部及び凹部が設けられ、前記凸部の面積率が5%〜18%であり、前記凸部の頂面における面積に対する前記凸部の頂面から前記凹部の底面までの深さの比で表されるエンボスアスペクト比が、2.5mm/mm〜7.0mm/mmであり、母材のロックウェル硬度が35HRC以上であるエンボスロール。
【請求項16】
前記エンボスロールの母材のロックウェル硬度が35HRC〜50HRCである、請求項15に記載のエンボスロール。
【請求項17】
回転方向に隣り合う前記凸部間距離に対する前記深さの比が、0.4mm/mm〜1.0mm/mmである、請求項15又は請求項16に記載のエンボスロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパンボンド不織布、スパンボンド不織布の製造方法、エンボスロールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不織布は通気性および柔軟性に優れることから各種用途に幅広く用いられている。そのため、不織布には、その用途に応じた各種の特性が求められるとともに、その特性の向上が要求されている。
【0003】
特に、スパンボンド法により得られる長繊維不織布は、例えば、吸収性物品(紙おむつ、生理用ナプキン等)、医療用資材(手術着用ガウン、ドレープ、衛生マスク、シーツ、医療用ガーゼ、湿布材の基布等)などに適用されている。吸収性物品、医療用資材などの用途では、肌に直接触れる部分を有するため、とりわけ、高い柔軟性が求められている。
【0004】
例えば、特許文献1〜4には、柔軟性等の各種特性を付与したスパンボンド不織布が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−167442号公報
【特許文献2】特開平01−201567号公報
【特許文献3】特開平01−229871号公報
【特許文献4】国際公開第2007/091444号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、スパンボンド不織布は、嵩高さ及び柔軟性に対する要求が高まっている。しかしながら、従来のスパンボンド不織布では、嵩高さ及び柔軟性が十分ではない場合があった。そのため、スパンボンド不織布の嵩高さ及び柔軟性を向上させるために、さらなる改善の余地があるのが実情である。
【0007】
本開示の目的は、嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布を提供することである。また、嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布の製造方法を提供することである。さらに、嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布が得られるエンボスロールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、例えば以下の<1>〜<16>に関係する。
【0009】
<1>
熱可塑性重合体の繊維を含み、厚みt、KES法による圧縮試験で測定した圧縮仕事量WC、KES法による圧縮試験で測定した圧力0.5gf/cmにおける厚みTO、KES法による圧縮試験で測定した圧力50gf/cmにおける厚みTM、及び目付Wが、下記条件(A)〜(D)を満足するスパンボンド不織布。
(A):t≧0.30mm
(B):WC≧0.22gf・cm/cm
(C):TO−TM≧0.25mm
(D):W≦30g/m
<2>
圧着部と非圧着部とを有する<1>に記載のスパンボンド不織布。
<3>
前記圧着部の面積率が5%〜18%である、<2>に記載のスパンボンド不織布。
<4>
前記繊維が捲縮繊維を含む、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布。
<5>
前記熱可塑性重合体がオレフィン系重合体を含む、<1>〜<4>のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布。
<6>
前記オレフィン系重合体がプロピレン系重合体を含む、<5>に記載のスパンボンド不織布。
<7>
前記繊維の平均繊維径が5μm〜20μmである、<1>〜<6>のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布。
<8>
衛生材料に用いる、<1>〜<7>のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布。
<9>
スパンボンド不織布積層体である、<1>〜<8>のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布。
<10>
熱可塑性重合体を溶融紡糸して連続繊維群を形成すること、
形成された前記連続繊維群を移動捕集部材上に堆積させて不織ウェブを形成すること、
形成された前記不織ウェブを、凸部及び凹部が設けられ、前記凸部の面積率が5%〜18%であり、前記凸部の頂面における面積に対する前記凸部の頂面から前記凹部の底面までの深さの比で表されるエンボスアスペクト比が、2.5mm/mm〜7.0mm/mmであり、母材のロックウェル硬度が35HRC以上であるエンボスロールにより熱圧着を行うこと、
を有する、<1>〜<9>のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布の製造方法。
<11>
前記エンボスロールの母材のロックウェル硬度が35HRC〜50HRCである、<10>に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
<12>
回転方向に隣り合う前記凸部間距離に対する前記深さの比が、0.4mm/mm〜1.0mm/mmである、<10>又は<11>に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
<13>
前記不織ウェブが、少なくとも2層の不織ウェブである、<10>〜<12>のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布の製造方法。
<14>
不織ウェブを熱圧着するためのエンボスロールであって、
凸部及び凹部が設けられ、前記凸部の面積率が5%〜18%であり、前記凸部の頂面における面積に対する前記凸部の頂面から前記凹部の底面までの深さの比で表されるエンボスアスペクト比が、2.5mm/mm〜7.0mm/mmであり、母材のロックウェル硬度が35HRC以上であるエンボスロール。
<15>
前記エンボスロールの母材のロックウェル硬度が35HRC〜50HRCである、<14>に記載のエンボスロール。
<16>
回転方向に隣り合う前記凸部間距離に対する前記深さの比が、0.4mm/mm〜1.0mm/mmである、<14>又は<15>に記載のエンボスロール。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布が提供される。また、嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布の製造方法が提供される。さらに、嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布が得られるエンボスロールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示のスパンボンド不織布積層体を製造するための装置の一例を表す概略模式図である。
図2】本開示のスパンボンド不織布積層体を製造するための装置の他の一例を表す概略模式図である。
図3】本開示のエンボスロールの一例を表す模式図である。
図4A図3に示すエンボスロールが備える凸部におけるA−A断面図である。
図4B図3に示すエンボスロールが備える凸部におけるB−B断面図である。
図5図3に示すエンボスロールが備える凸部における回転方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示のスパンボンド不織布の好ましい態様の一例について詳細に説明する。
本開示において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
本開示のスパンボンド不織布は、熱可塑性重合体の繊維を含み、厚みt、KES法による圧縮試験で測定した圧縮仕事量WC、KES法による圧縮試験で測定した圧力0.5gf/cmにおける厚みTO、KES法による圧縮試験で測定した圧力50gf/cmにおける厚みTM、及び目付Wが、下記条件(A)〜(D)を満足する。
(A):t≧0.30mm
(B):WC≧0.22gf・cm/cm
(C):TO−TM≧0.25mm
(D):W≦30g/m
【0014】
KES(Kawabata Evaluation System)法とは、不織布の風合いを計測し、客観的に評価するための方法の一つである。
圧縮仕事量WC、圧力0.5gf/cmにおける厚みTO、及び圧力50gf/cmにおける厚みTMは、カトーテック株式会社製の圧縮試験機KES−FB3−Aを用いてKES法によって測定する。具体的には、圧縮面積2cmの円形平面をもつ鋼製加圧板間で、圧縮変形速度0.020mm/secにて、0gf/cmから最大圧力50gf/cmまで試料を圧縮し、元に戻す間で測定を行う。
【0015】
圧縮仕事量WCは、KES法による圧縮試験における圧縮仕事量を表す。本開示において、WCは、0.22gf・cm/cm未満であると、スパンボンド不織布の柔軟性が劣る。一方、WCの数値が大きいほど、圧縮仕事量が大きくなるため、柔軟性に優れることを示す。WCの好ましい下限は、0.24gf・cm/cm以上であり、より好ましい下限は、0.26gf・cm/cm以上である。WCの上限は、条件(A)、(C)、及び(D)を満足する範囲であれば、特に限定されるものではない。WCの上限としては、例えば、1.00gf・cm/cm以下が例示される。
【0016】
圧力0.5gf/cmにおける厚みTOは、KES法による圧縮試験における圧力0.5gf/cmでの厚みであり、初期厚みを表す。TOは、0.40mm以上であることが好ましく、0.50mm以上であることがより好ましい。
圧力50gf/cmにおける厚みTMは、KES法による圧縮試験における圧力50gf/cmでの厚みであり、最大圧縮時の厚みを表す。TMは、0.10mm以上であることが好ましく、0.15mm以上であることがより好ましい。
TO−TMは、上記TOと上記TMとの偏差である。TO−TMが大きいほど、嵩高さに優れる。TO−TMの好ましい下限は、0.25mm以上であり、より好ましい下限は、0.30mm以上である。TO−TMの上限は、条件(A)、(B)、及び(D)を満足する範囲であれば、特に限定されるものではない。TO−TMの上限は、例えば、1.00mm以下が例示される。
【0017】
本開示のスパンボンド不織布の厚みtは、0.30mm以上である。柔軟性の向上の観点で、0.35mm以上であることが好ましい。厚みtの上限は特に限定されず、例えば、1.00mm以下であってもよい。
また、本開示のスパンボンド不織布の目付Wは、30g/m以下である。目付Wは15g/m以下であってもよい。目付Wの下限は、柔軟性を損なわない範囲であれば、特に限定されず、例えば、10g/m以上であってもよい。
厚みの測定方法については、JIS L 1096:2010に準じて測定すればよい。厚み及び目付の具体的な測定方法は後述の実施例で説明する。
【0018】
スパンボンド不織布を形成するための樹脂は、スパンボンド法で不織布が製造可能な樹脂であれば、特に限定されるものではない。樹脂としては、具体的には、例えば、オレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体が挙げられる。これら樹脂の中でも、柔軟性に優れる観点から、オレフィン系重合体が好ましく、プロピレン系重合体がより好ましい。オレフィン系重合体は、オレフィンを構造単位として含む重合体である。プロピレン系重合体は、プロピレンを構造単位として最も多く含む重合体であり、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンを最も多く含む共重合体が挙げられる。
【0019】
プロピレン系重合体は、例えば、プロピレンの単独重合体、及びプロピレン/α―オレフィンランダム共重合体(例えば、プロピレンと、炭素数2〜8の1種または2種以上のα−オレフィンとのランダム共重合体)が好ましい。柔軟性に優れる観点で、プロピレンと共重合する、好ましいα―オレフィンの具体例としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。プロピレン/α−オレフィンランダム共重合体におけるα−オレフィンの含有量は、特に限定はされず、例えば1モル%〜10モル%であることが好ましく、1モル%〜5モル%であることがより好ましい。
【0020】
プロピレン系重合体の融点(Tm)は、125℃以上であってもよく、125℃〜165℃であってもよい。メルトフローレート(MFR)(ASTM D−1238、230℃、荷重2160g)は、10g/10分〜100g/10分であってもよく、20g/10分〜70g/10分であってもよい。
【0021】
プロピレン系重合体には、必要に応じて、通常用いられる添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、親水剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料などが挙げられる。
【0022】
スパンボンド不織布を形成するため繊維は、1種類の熱可塑性重合体を含む繊維であってもよく、2種以上の熱可塑性重合体を含む複合繊維であってもよい。また、スパンボンド不織布を形成するための繊維は、非捲縮繊維であってもよく、捲縮繊維であってもよい。嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布とする観点で、スパンボンド不織布には、捲縮繊維を含むことが好ましい。捲縮繊維の捲縮数は、特に限定されず、例えば、5個/25mm以上が挙げられる。嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布とする観点で、捲縮数は、20個/25mm以上であることが好ましく、25個/25mm以上であることがより好ましい。捲縮繊維は、例えば、サイドバイサイド型、芯鞘型の複合繊維であってもよい。
【0023】
スパンボンド不織布が捲縮繊維を含み、捲縮繊維がサイドバイサイド型の複合繊維である場合、例えば、以下の態様が好ましい捲縮繊維として挙げられる。第1の熱可塑性重合体成分と第2熱可塑性重合体成分とを有し、第1の熱可塑性重合体成分の融点が、第2熱可塑性重合体成分の融点よりも5℃以上高く、第1の熱可塑性重合体成分/第2の可塑性樹脂成分の質量比が、5/95〜95/5(質量比)(より好ましくは5/95〜50/50(質量比)、更に好ましくは5/95〜30/70(質量比))である態様が好ましい一例として挙げられる。第1の熱可塑性重合体成分と第2熱可塑性重合体成分とは、プロピレン系重合体であってもよい。スパンボンド不織布に含む捲縮繊維は、スパンボンド法によって、複合溶融紡糸を行うことで得られる。
【0024】
スパンボンド不織布を形成する繊維の平均繊維径は、嵩高く、柔軟性に優れる観点で、5μm〜20μmの範囲であることが好ましい。平均繊維径の下限は、7μm以上であってもよい。上限平均繊維径の上限としては、より好ましくは19μm以下、さらに好ましくは18μm以下である。
スパンボンド不織布を形成する繊維の繊度は、嵩高く、柔軟性に優れる観点で、0.2dtex〜6.0dtexの範囲であることが好ましい。繊度の上限としては、より好ましくは4.0dtex以下、さらに好ましくは3.0dtex以下、さらに好ましくは2.5dtex以下である。
【0025】
本開示のスパンボンド不織布は、嵩高く、柔軟性に優れる観点で、圧着部と非圧着部とを有していてもよい。圧着部の面積率は、5%〜18%であることが好ましい。圧着部のより好ましい面積率は、7%以上であり、15%以下である。圧着部の面積率は、スパンボンド不織布から10mm×10mmの大きさの試験片を採取し、試験片のエンボスロールとの接触面を、電子顕微鏡(倍率:100倍)で観察し、観察した不織布の面積に対し、熱圧着された部分の面積の割合とする。
【0026】
本開示のスパンボンド不織布は、前述の条件(A)〜(D)を満足するのであれば、目的とする用途に応じて、スパンボンド不織布積層体としてもよい。つまり、本開示のスパンボンド不織布積層体は、前述の条件(A)〜(D)を満足する。具体的には、スパンボンド不織布の積層構造体は、同じスパンボンド不織布を積層したスパンボンド不織布積層体であってもよく、異なるスパンボンド不織布を積層したスパンボンド不織布積層体であってもよい。スパンボンド不織布積層体における条件(A)〜(D)の定義、好ましい定義、特性、例などの詳細は、前述のスパンボンド不織布における条件(A)〜(D)の定義、好ましい定義、特性、例などの詳細と同様である。
【0027】
また、本開示のスパンボンド不織布、又は本開示のスパンボンド不織布積層体は、目的に応じて、例えば、編布、織布、スパンボンド不織布以外の不織布、フィルム(シートを含む)等の材料と貼り合わせてもよい。
【0028】
本開示のスパンボンド不織布、及びスパンボンド不織布積層体の用途としては、衛生用材料、医療用材料、包装用材料などの各種用途が挙げられる。本開示のスパンボンド不織布、及びスパンボンド不織布積層体が適用される衛生材料としては、種々の衛生材料が挙げられる。具体的には、使い捨ておむつ、使い捨てパンツ、生理用品、尿取りパッド、ペット用シート、使い捨てマスクなどが挙げられ、これらの材料として適用可能である。この他、使い捨て手術着、レスキューガウン、メディカルガウン、手術用キャップ、使い捨てキャップ、医療用フィルムあるいはシートなどの医療用資材、包装資材としても適用可能である。
【0029】
本開示のスパンボンド不織布を得るための好ましい製造方法の一例を以下に例示する。
本開示のスパンボンド不織布の製造方法は以下の事項を有する。
熱可塑性重合体を溶融紡糸して連続繊維群を形成すること。
形成された前記連続繊維群を移動捕集部材上に堆積させて不織ウェブを形成すること。 形成された前記不織ウェブを、凸部及び凹部が設けられ、前記凸部の面積率が5%〜18%であり、前記凸部の頂面における面積に対する前記凸部の頂面から前記凹部の底面までの深さの比で表されるエンボスアスペクト比が2.5mm/mm〜7.0mm/mmであり、母材のロックウェル硬度が35HRC以上であるエンボスロールにより熱圧着を行うこと。
【0030】
エンボスロールの母材は、ロックウェル硬度が35HRC〜50HRCであってもよい。エンボスロールは、回転方向に隣り合う凸部間距離に対する凹部の底面までの深さの比(凹部の底面までの深さ/回転方向に隣り合う凸部間距離)が、0.4mm/mm〜1.0mm/mmであってもよい。
【0031】
不織ウェブは、少なくとも2層の不織ウェブであってもよい。不織ウェブが2層である場合、移動捕集部材上に堆積させて下層の不織ウェブ(第1の不織ウェブ)を形成し、下層の不織ウェブ上に上層の不織ウェブ(第2の不織ウェブ)を形成してもよい。
【0032】
ここで、図1を参照して、本開示のスパンボンド不織布の製造方法について説明する。図1は、本開示のスパンボンド不織布積層体を製造するための装置の一例を表す概略模式図である。図1に示すスパンボンド製造装置100は、第1紡糸部11Aと、第2紡糸部11Bとを備える。第1紡糸部11Aと、第2紡糸部11Bとは、同じ構成部分を有している。第1紡糸部11A及び第2紡糸部11Bにおける同じ構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0033】
スパンボンド製造装置100は、熱可塑性重合体を押し出す第1の押出機31Aと、可塑性重合体を押し出す第2の押出機31Bと、溶融した熱可塑性重合体を溶融紡糸する紡糸口金33と、紡糸口金33から溶融紡糸された連続繊維群20(20A、20B)を延伸するエジェクター37と、延伸された連続繊維群20を捕集する移動捕集部材51と、連続繊維群20を移動捕集部材51上に効率よく捕集するためのサクションユニット39と、熱圧着するためのエンボスロール53及びフラットロール55と、熱圧着後のスパンボンド不織布積層体60を巻き取るワインダー71とを備える。
【0034】
第1紡糸部11Aでは、まず、熱可塑性重合体を紡糸口金33から溶融紡糸して、連続繊維群20Aを形成する。連続繊維群20Aが捲縮連続繊維群である場合、第1の押出機31Aから第1の熱可塑性重合体を押し出し、第2の押出機31Bから第2の熱可塑性重合体を押し出して、複合紡糸してもよい。次に、連続繊維群20Aが、冷却風35によって冷却され、エジェクター37により延伸される。延伸された連続繊維群20Aは、移動捕集部材51の補集面の下部に設けられた、サクションユニット39によって、移動捕集部材51の上に効率よく補集され、第1の不織ウェブ40Aが形成される。第2紡糸部11Bでも同様にして、連続繊維群20Bが形成される。連続繊維群20Bは、第1の不織ウェブ40Aの上に積層され、第2の不織ウェブ40Bが形成され、積層構造の不織ウェブが形成される。第1の不織ウェブ40Aは下層の不織ウェブ層であり、第2の不織ウェブ40Bは上層の不織ウェブである。積層構造の不織ウェブは、エンボスロール53及びフラットロール55により熱圧着され、スパンボンド不織布積層体60が得られる。その後、スパンボンド不織布積層体60は、ワインダー71によって巻き取られる。
【0035】
ここで、前述の条件(D)を満足するスパンボンド不織布において、前述の条件(A)〜(C)を満足させるには、エンボスロール53として、下記の(1)〜(3)を満たすエンボスロールを使用して、熱圧着を行うことが好ましい。エンボスロールの詳細については後述する。
(1)凸部の面積率:5%〜18%、
(2)エンボスアスペクト比(凸部の頂面における面積に対する凸部の頂面から凹部の底面までの深さの比で表される比):2.5mm/mm〜7.0mm/mm
(3)母材のロックウェル硬度:35HRC以上
【0036】
図1を参照して、本開示のスパンボンド不織布の製造方法の一例について説明したが、これに限定されるものではない。紡糸部11は、1つのみ備えていてもよく、2つ以上備えていてもよい。第1の押出機31Aと第2の押出機31Bは、両方使用してもよく、いずれか一方のみを使用してもよい。
【0037】
また、本開示のスパンボンド不織布の製造方法は、図2に示す冷却室が密閉型構造である紡糸部12を備えた製造装置で製造されてもよい。図2は、本開示のスパンボンド不織布積層体を製造するための装置の他の一例を表す概略模式図である。図2は、図1に示すスパンボンド製造装置100における紡糸部11(紡糸部11A及び紡糸部11B)を紡糸部12に置き換えた装置を示している。つまり、紡糸部11以外の装置構成は、図1に示す製造装置と同じである。また、図1に示す製造装置と同じ構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0038】
紡糸部12は、熱可塑性重合体を押し出す第1の押出機32と、溶融した熱可塑性重合体を溶融紡糸する紡糸口金34と、紡糸口金34から溶融紡糸された連続繊維群22を冷却する冷却室38Cと、冷却風36を供給する冷却風供給部38A及び38Bと、連続繊維群22を延伸する延伸部38Dと、を有する。
【0039】
紡糸部12では、熱可塑性重合体が押し出され、溶融した熱可塑性重合体が紡糸口金34に導入される。次に、溶融した熱可塑性重合体が紡糸口金34から溶融紡糸される。溶融紡糸された連続繊維群22は、冷却室38Cに導入される。連続繊維群22は、冷却風供給部38A及び冷却風供給部38Bのいずれか一方、又は両方から供給される冷却風36によって冷却される。冷却された連続繊維群22は、冷却室38Cの下流側に備える延伸部38Dに導入される。延伸部38Dは、隘路状に設けられている。隘路で冷却風の速度が増加することによって、延伸部38Dに導入された連続繊維群22が延伸される。延伸された連続繊維群22は、分散されて、移動捕集部材51の上に捕集される。そして、分散された連続繊維群22は、移動捕集部材51の補集面の下部に備えているサクションユニット39によって、移動捕集部材51の上に効率よく補集され、不織ウェブ42が形成される。
【0040】
図2を参照して、本開示のスパンボンド不織布の製造方法の他の一例について説明したが、これに限定されるものではない。紡糸部12は、1つのみ備えていてもよく、2つ以上備えていてもよい。図2では、押出機32は、1つのみ備えているが、2つ以上備えていてもよい。また、図1に示す紡糸口金33から溶融紡糸される連続繊維群20及び図2に示す紡糸口金34から溶融紡糸される連続繊維群22は、捲縮連続繊維群であってもよい。
なお、以下の説明において、符号は省略して説明する。
【0041】
溶融紡糸された連続繊維群が、捲縮連続繊維群であると、嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布が得られやすくなる。また、捲縮連続繊維群は、熱可塑性重合体が、第1の熱可塑性重合体成分と、第1の熱可塑性重合体成分の融点よりも5℃以上高い第2の熱可塑性重合体成分とを含有し、第1の熱可塑性重合体成分と第2の熱可塑性重合体成分とを複合溶融紡糸してもよい。
【0042】
不織ウェブは、目的に応じて、2層以上の積層不織ウェブであってもよい。不織ウェブが2層である場合は、第1の連続繊維群を移動捕集部材上に堆積させて、第1の不織ウェブを形成した後、第2の連続繊維群を第1の不織ウェブ上に堆積させて、第2の不織ウェブを形成してもよい。第1の不織ウェブ及び第2の不織ウェブのいずれも捲縮繊維を含んでいると、前述の条件(A)〜(D)を満足するスパンボンド不織布積層体が得られやすい。なお、本開示において、「不織ウェブ」は単層の不織ウェブだけでなく、積層不織ウェブをも含む概念である。
【0043】
不織ウェブを熱圧着する温度は、不織ウェブに含まれる繊維によって設定すればよい。不織ウェブに含まれる繊維が、例えば、ポリプロピレン系重合体である場合、100℃〜200℃の範囲であってもよい。熱圧着するときの線圧は、例えば、100N/cm〜1500N/cmが挙げられる。熱圧着するときの圧着速度は、例えば、1m/sec〜50m/secが挙げられる。
【0044】
エンボスロールは、凸部及び凹部が設けられており、下記の(1)〜(3)を満たすことが重要である。
(1)凸部の面積率が5%〜18%である(本明細書中において、凸部の面積率を「エンボス面積率」という場合がある)。
(2)エンボスアスペクト比が、2.5mm/mm〜7.0mm/mmである。
エンボスアスペクト比は、凸部の頂面における面積と、凸部の頂面から凹部の底面までの深さとの比(凸部の頂面から凹部の底面までの深さ/凸部の頂面における面積)で表される。
(3)母材のロックウェル硬度:35HRC以上である。
【0045】
エンボスロールが上記(1)〜(3)を満たすことは、凸部頂面の面積が小さく、凸部が高く、さらに、硬度が高い凸部であり、適切な量の凸部を備えたエンボスロールであることを表す。つまり、エンボスロールには、細長い形状の硬い凸部が適切な量で設けられていることを表す。前述の条件(A)〜(D)を満足するスパンボンド不織布を得るために、単に細長い凸部が設けられたエンボスロールを用いた場合、凸部が破損しやすく、生産性に劣る。このため、上記の嵩高く、柔軟性に優れたスパンボンド不織布は得られ難い。したがって、上記(1)〜(3)を全て満たすエンボスロールにより熱圧着を行うことは、エンボスロールに設けられた凸部の破損が抑制されるため、前述の条件(A)〜(D)を満足するスパンボンド不織布を効率よく生産する上で有用である。
【0046】
嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布を得る点で、凸部の面積率の好ましい下限は、7%以上である。また、凸部の面積率の好ましい上限は15%以下である。
【0047】
エンボスアスペクト比が、2.5mm/mm未満では、嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布が得られ難い。エンボスアスペクト比が7.0mm/mmを超えるエンボスロールは製造が困難である。嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布を製造する観点で、エンボスアスペクト比の好ましい上限は、6.0mm/mm以下であり、より好ましい上限は、5.5mm/mm以下である。エンボスアスペクト比の好ましい下限は、3.0mm/mm以上であり、より好ましい上限は、3.5mm/mm以上である。
【0048】
嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布を得る観点で、エンボスロールの母材のロックウェル硬度は、35HRC以上であればよく、35HRC〜50HRCであることが好ましい。エンボスロールの母材のロックウェル硬度が35HRC以上であると、嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布が効率よく製造可能となる。
【0049】
上記(1)〜(3)の条件を全て満たすエンボスロールの製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造される。例えば、上記(3)の条件を満たす母材の表面に対し、彫刻処理、電鋳処理、サンドブラスト処理、放電加工処理、エッチング処理などの処理を施すことにより、上記(1)及び(2)の条件を満たすエンボスロールを得る方法が挙げられる。
【0050】
嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布を得る観点で、エンボスロールは、回転方向に隣り合う凸部間距離に対する凹部の底面までの深さの比(凹部の底面までの深さ/回転方向に隣り合う凸部間距離)が、0.4mm/mm〜1.0mm/mmであることが好ましい。この比のより好ましい下限は、0.5mm/mm以上であり、より好ましい上限は0.8mm/mmである。回転方向に隣り合う凸部間距離は、隣り合う凸部間における中心間距離(凸部ピッチとも称する)を表す(図3を参照)。
【0051】
嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布を得る観点で、凸部ピッチは、0.5mm〜3.0mmであることが好ましい。同様の点で、凸部の頂面の面積は、0.1mm〜1.0mmであることが好ましい。
【0052】
エンボスロールの凸部の頂面の形状は、特に限定されるものではない。例えば、丸型、楕円型、三角形、四角形、菱型、五角以上の多角形であってもよい。また、これら形状で囲まれた形状であってもよい。さらに、これら形状の組み合わせであってもよい。
【0053】
ここで、本開示のエンボスロールの一例について、図を参照して説明する。以下、図3図5を参照して、本開示のエンボスロールの一例について説明するが、これに限定されるものではい。
【0054】
図3は、本開示のエンボスロールの一例を表す模式図である。図3に示すように、エンボスロール200は、凸部201A及び凸部201Bを多数備えている。凸部201A及び凸部201Bは、それぞれ同じ形状で設けられており、凸部201A及び凸部201Bの頂面は、それぞれ同じ形状の楕円型である。エンボスロール200は、隣り合う凸部201Aと凸部201Aとの間、隣り合う凸部201Aと凸部201Bとの間、及び隣り合う凸部201Bと凸部201Bとの間に、凹部203が設けられている。凸部201Aの凸部群は、エンボスロールの回転方向に、凸部201Aの楕円の向きが同じ方向に配置されており、1列おきに楕円の向きが同じになるように配置されている。凸部201Bの凸部群も、凸部201Aの凸部群と同様の配列で設けられている。凸部201Aの凸部群及び凸部201Bの凸部群は、それぞれ、回転方向における各列毎に、配置される向きが互いに異なって設けられている。
【0055】
エンボスロール200は、図3に示すように、凸部201Aの凸部群は、回転方向に隣り合う凸部間の距離P(つまり、凸部ピッチP)を有するように設けられている。図3に示すように、回転方向に隣り合う凸部間の距離Pは、楕円の中心間距離である。楕円の中心は、最短の直径と最長の直径との交点を表す。
【0056】
図4Aは、図3に示すエンボスロールが備える凸部におけるA−A断面図である。具体的には、エンボスロール200の凸部201AにおけるA−A断面図を表している。図4Bは、図3に示すエンボスロールが備える凸部におけるB−B断面図である。具体的には、エンボスロール200の凸部201BにおけるB−B断面図を表している。図5は、図3に示すエンボスロールが備える凸部における回転方向から見た斜視図である。具体的には、図3に示すエンボスロール200の凸部201Aを回転方向から見た斜視図を表している。図4A図4B、及び図5に示すように、凸部201A及び凸部201Bは、それぞれテーパ角が設けられている。また、図4A図4B、及び図5に示すように、凸部201A及び凸部201Bの頂面から凹部203の底面までの深さtを有し、頂面の面積Sを有する。
【0057】
エンボスロール200は、回転方向に隣り合う凸部201A間の距離Pに対する凹部203の底面までの深さtの比(t/P)が、前述の範囲であることが好ましい。また、凸部201Aの頂面における面積Sと、凸部201Aの頂面から凹部203の底面までの深さtとの比(t/S)で表されるエンボスアスペクト比が前述の範囲であることが好ましい。凸部201Aの頂面から凹部203の底面までの深さtは、エンボスアスペクト比が上記範囲を満足する範囲であれば、特に限定されるものではない。以上、凸部201Aを代表して説明したが、凸部201Bについても同様である。
【0058】
本開示のエンボスロールは、本開示のスパンボンド不織布及びスパンボンド不織布積層体を得るための不織ウェブを熱圧着するために好適である。本開示のエンボスロールは、これに限定されず、不織ウェブを熱圧着できれば、スパンボンド不織布及びスパンボンド不織布積層体以外の不織ウェブに適用することも可能である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により、本開示のスパンボンド不織布について説明するが、本開示のスパンボンド不織布は、以下の実施態様により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、「%」は質量%を表す。
【0060】
実施例及び比較例における物性値等は、以下の方法により測定した。
【0061】
(1)目付〔g/m
スパンボンド不織布から100mm(流れ方向:MD)×100mm(流れ方向と直交する方向:CD)の試験片を10点採取した。試験片の採取場所は、CD方向にわたって10箇所とした。次いで、20℃、相対湿度50%RH環境下で、採取した各試験片に対して上皿電子天秤(研精工業社製)を用いて、それぞれ質量〔g〕を測定した。各試験片の質量の平均値を求めた。求めた平均値から1m当たりの質量〔g〕に換算し、小数点第2位を四捨五入して各不織布サンプルの目付〔g/m〕とした。
【0062】
(2)厚み〔mm〕
スパンボンド不織布から100mm(MD)×100mm(CD)の試験片を10点採取した。試験片の採取場所は、目付測定用の試験片と同様の場所とした。次いで、採取した各試験片に対して荷重型厚み計(尾崎製作所社製)を用いて、JIS L 1096:2010に記載の方法で厚み〔mm〕を測定した。各試験片の厚みの平均値を求め、小数点第2位を四捨五入して各不織布サンプルの厚み〔mm〕とした。
【0063】
[柔軟性の評価]
(3)WC(圧縮仕事量)〔gf・cm/cm
不織布から150mm(MD)×150mm(CD)の試験片を2点採取した。なお、採取場所はCD方向にわたって2箇所とした。次いで、試験片をカトーテック(株)製の圧縮試験機KES−FB3−Aにより、測定条件として、20℃、相対湿度50%RH環境下で、圧縮子(圧縮面積2cmの円形平面をもつ鋼製加圧板)を用い、圧縮変形速度0.020mm/sec、最大圧力50gf/cmにて圧縮試験を行い、WC〔gf・cm/cm〕を測定した。
各試験片のWCの平均値を求め、小数点第3位を四捨五入して各不織布サンプルのWC〔gf・cm/cm〕とした。
【0064】
[嵩高性の評価]
(4)TO(圧力0.5gf/cmにおける厚み)―TM(圧力50gf/cmにおける厚み)〔mm〕
不織布から150mm(MD)×150mm(CD)の試験片を2点採取した。なお、採取場所はCD方向にわたって2箇所とした。次いで、試験片をカトーテック(株)製の圧縮試験機KES−FB3−Aにより、測定条件として、20℃、相対湿度50%RH環境下で、圧縮子(圧縮面積2cmの円形平面をもつ鋼製加圧板)を用い、圧縮変形速度0.020mm/sec、最大圧力50gf/cmにて圧縮試験を行い、TO〔mm〕およびTM〔mm〕を測定した。
各試験片のTO〔mm〕およびTM〔mm〕の平均値を求め、小数点第3位を四捨五入して各不織布サンプルのTO〔mm〕およびTM〔mm〕とした。各不織布サンプルのTO―TM〔mm〕を計算した。
【0065】
<実施例1>
(下層)
下記の第1成分と下記の第2成分とを、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行い、サイドバイサイド型の捲縮複合繊維(以下「捲縮繊維A」とする)から形成される下層の不織ウェブを、移動捕集面上に堆積させた。このサイドバイサイド型の捲縮複合繊維は、第1成分/第2成分の質量比が40/60であり、平均繊維径が15μmであった。この不織ウェブの目付は、11.4g/mであった。
−捲縮繊維Aの第1成分−
融点142℃、MFR60g/10分(ASTM D1238に準拠して温度230℃、荷重2.16kgで測定。以下、特に特定しない限り同様。)のプロピレン・エチレンランダム共重合体と融点162℃、MFR3g/10分のプロピレン単独重合体との質量比(プロピレン・エチレンランダム共重合体/プロピレン単独重合体)が96対4の混合体。
−捲縮繊維Aの第2成分−
融点142℃、MFR60g/10分のプロピレン・エレンランダム共重合体
【0066】
(上層)
下記の第1成分と下記の第2成分とを、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行い、サイドバイサイド型の捲縮複合繊維(以下「捲縮繊維B」とする)から形成される上層の不織ウェブを、インラインで、下層の不織ウェブ上に堆積させ、積層構造の不織ウェブを作製した。このサイドバイサイド型の捲縮複合繊維は、第1成分/第2成分の質量比が20/80であり、平均繊維径が15μmであった。この不織ウェブの目付は、5.6g/mであった。
−捲縮繊維Bの第1成分−
融点162℃、MFR60g/10分のプロピレン単独重合体
−捲縮繊維Bの第2成分−
融点142℃、MFR60g/10分のプロピレン・エチレンランダム共重合体
【0067】
次いで、積層構造の不織ウェブを、下記エンボスロールで下記エンボス条件により熱融着して、総目付が17g/mのスパンボンド不織布積層体を得た。圧着部の面積率は、11%であった。
−エンボスロール−
エンボス面積率:11%
エンボスアスペクト比:4.1mm/mm
エンボス母材のロックウェル硬度:37HRC
−エンボス条件−
エンボス温度:140℃
エンボス線圧:784N/cm
【0068】
<実施例2>
スパンボンド不織布積層体における下層の目付を13.4g/m、上層の目付を6.6g/m、総目付を20g/mとした以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布積層体を得た。
【0069】
<実施例3>
スパンボンド不織布積層体の下層の目付を15.4g/m、上層の目付を7.6g/m、総目付を23g/mとした以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布積層体を得た。
【0070】
<実施例4>
エンボスロールとして、下記のエンボスロールを用いた以外は、実施例2と同様にしてスパンボンド不織布積層体を得た。
−エンボスロール−
エンボス面積率:7%
エンボスアスペクト比:3.0
エンボス母材のロックウェル硬度:36HRC
【0071】
<比較例1>
エンボスロールとして、下記のエンボスロールを用いた以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布積層体を得た。
−エンボスロール−
エンボス面積率:18%
エンボスアスペクト比:1.9mm/mm
エンボス母材のロックウェル硬度:38HRC
【0072】
<比較例2>
エンボスロールとして、下記のエンボスロールを用いた以外は、実施例2と同様にしてスパンボンド不織布積層体を得た。
−エンボスロール−
エンボス面積率:18%
エンボスアスペクト比:1.9mm/mm
エンボス母材のロックウェル硬度:38HRC
【0073】
<比較例3>
スパンボンド不織布積層体の下層の目付を20.0g/m、上層の目付を10.0g/m、総目付を30g/mとし、さらに、エンボスロールとして、下記のエンボスロールを用い、下記エンボス条件とした以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布積層体を得た。圧着部の面積率は、11%であった。このとき、スパンボンド不織布積層体は得られたが、エンボス母材硬度が十分でないことから設備不良が発生し、十分な量産安定性が得られなかった。
−エンボスロール−
エンボス面積率:11%
エンボスアスペクト比:4.1mm/mm
エンボス母材のロックウェル硬度:32HRC
−エンボス条件−
エンボス温度:140℃
エンボス線圧:343N/cm
【0074】
<比較例4>
スパンボンド不織布積層体の上層として、第2成分のみを用いた非捲縮繊維(「非捲縮繊維A」とする)の不織ウェブとし、下層として、第2成分のみを用いた非捲縮繊維(「非捲縮繊維B」とする)の不織ウェブとした以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布積層体を得た。
−非捲縮繊維Aの成分−
融点142℃、MFR60g/10分のプロピレン・エチレンランダム共重合体
−非捲縮繊維Bの成分−
融点142℃、MFR60g/10分のプロピレン・エチレンランダム共重合体
【0075】
<比較例5>
スパンボンド不織布積層体の上層として、下記成分を用いた非捲縮繊維(「非捲縮繊維A」とする)の不織ウェブとし、下層として、下記成分を用いた非捲縮繊維(「非捲縮繊維B」とする)の不織ウェブとした以外は、実施例2と同様にしてスパンボンド不織布積層体を得た。
−非捲縮繊維Aの成分−
融点142℃、MFR60g/10分のプロピレン・エチレンランダム共重合体
−非捲縮繊維Bの成分−
融点142℃、MFR60g/10分のプロピレン・エチレンランダム共重合体
【0076】
<比較例6>
スパンボンド不織布積層体の上層として、下記成分を用いた非捲縮繊維(「非捲縮繊維C」とする)の不織ウェブとし、下層として、下記成分を用いた非捲縮繊維(「非捲縮繊維D」とする)の不織ウェブとし、エンボス条件を下記条件とした以外は、実施例2と同様にしてスパンボンド不織布積層体を得た。
−非捲縮繊維Cの成分−
融点162℃、MFR60g/10分のプロピレン単独重合体
−非捲縮繊維Dの成分−
融点162℃、MFR60g/10分のプロピレン単独重合体
−エンボス条件−
エンボス温度:160℃
エンボス線圧:784N/cm
【0077】
<比較例7>
スパンボンド不織布積層体の下層の目付を10.0g/m、上層の目付を10.0g/m、総目付を20g/mとし、さらに、上層として、下記成分を用いた非捲縮繊維(「非捲縮繊維A」とする)の不織ウェブとした以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布積層体を得た。
−非捲縮繊維Aの成分−
融点142℃、MFR60g/10分のプロピレン・エチレンランダム共重合体
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示すように、各実施例は、目付W、厚みt、KES法により測定したWC、及びKES法により測定したTO−TMが、本開示のスパンボンド不織布(不織布積層体)の範囲内であり、嵩高く、柔軟性に優れることが分かる。
【0080】
なお、各図面に付した符号は以下のとおりである。
53 200エンボスロール、201A 201B凸部、203凹部、60スパンボンド不織布積層体
【0081】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【要約】
熱可塑性重合体の繊維を含み、厚みt、KES法による圧縮試験で測定した圧縮仕事量WC、KES法による圧縮試験で測定した圧力0.5gf/cmにおける厚みTO、KES法による圧縮試験で測定した圧力50gf/cmにおける厚みTM、及び目付Wが、条件(A)〜(D)を満足するスパンボンド不織布((A):t≧0.30mm;(B):WC≧0.22gf・cm/cm;(C):TO−TM≧0.25mm;(D):W≦30g/m
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5