特許第6557441号(P6557441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6557441
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】五環式化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/22 20060101AFI20190729BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20190729BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20190729BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   C07D495/22CSP
   A61K31/551
   A61P25/16
   A61P25/28
【請求項の数】14
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2019-516726(P2019-516726)
(86)(22)【出願日】2018年9月5日
(86)【国際出願番号】JP2018032797
【審査請求日】2019年3月27日
(31)【優先権主張番号】特願2017-172169(P2017-172169)
(32)【優先日】2017年9月7日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】大橋 芳章
(72)【発明者】
【氏名】乗嶺 吉彦
(72)【発明者】
【氏名】星川 環
(72)【発明者】
【氏名】吉田 融
(72)【発明者】
【氏名】小林 義久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信裕
(72)【発明者】
【氏名】萩原 幸司
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−118621(JP,A)
【文献】 特開昭54−024896(JP,A)
【文献】 USTALAR,A. et al.,Microwave assisted synthesis of 2,3-dihydro-4H-benzo[4,5]thiazolo[3,2-a]furo[2,3-d]pyrimidin-4-ones,Tetrahedron Letters,2016年12月24日,Vol.58, No.6,p.516-519,ISSN 0040-4039
【文献】 HUANG,G. et al.,A simple heterocyclic fusion reaction and its application for expeditious syntheses of rutaecarpine,Tetrahedron Letters,ISSN 0040-4039,2014年,Vol.55, No.26,p.3607-3609
【文献】 DECKER,M.,Novel inhibitors of acetyl- and butyrylcholinesterase derived from the alkaloids dehydroevodiamine a,European Journal of Medicinal Chemistry,2005年,Vol.40, No.3,p.305-313,ISSN 0223-5234
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の群から選ばれる化合物またはその薬剤学的に許容される塩:
3−フルオロ−6,11−ジメチル−6,7,10,11,12,13−ヘキサヒドロベンゾ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−5,14−ジオン:
【化1】

5,10−ジメチル−5,6,9,10,11,12−ヘキサヒドロピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a]チエノ[2,3−f][1,4]ジアゼピン−4,13−ジオン:
【化2】

5,10−ジメチル−5,6,9,10,11,12−ヘキサヒドロピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a]チエノ[3,2−f][1,4]ジアゼピン−4,13−ジオン:
【化3】

(3aS,14aR)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオン:
【化4】

(3aR,14aR)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオン:
【化5】

および
(3aS,14aS)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオン:
【化6】

【請求項2】
3−フルオロ−6,11−ジメチル−6,7,10,11,12,13−ヘキサヒドロベンゾ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−5,14−ジオンまたはその薬剤学的に許容される塩:
【化7】

【請求項3】
5,10−ジメチル−5,6,9,10,11,12−ヘキサヒドロピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a]チエノ[2,3−f][1,4]ジアゼピン−4,13−ジオンまたはその薬剤学的に許容される塩:
【化8】

【請求項4】
5,10−ジメチル−5,6,9,10,11,12−ヘキサヒドロピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a]チエノ[3,2−f][1,4]ジアゼピン−4,13−ジオンまたはその薬剤学的に許容される塩:
【化9】

【請求項5】
(3aS,14aR)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオンまたはその薬剤学的に許容される塩:
【化10】

【請求項6】
(3aR,14aR)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオンまたはその薬剤学的に許容される塩:
【化11】

【請求項7】
(3aS,14aS)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオンまたはその薬剤学的に許容される塩:
【化12】

【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物またはその薬剤学的に許容される塩および1以上の薬剤学的に許容される添加剤を含有する医薬組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物またはその薬剤学的に許容される塩を含有する、アルツハイマー病治療剤。
【請求項10】
アルツハイマー病の治療に使用される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物またはその薬剤学的に許容される塩。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物またはその薬剤学的に許容される塩を含有する、レビー小体型認知症治療剤。
【請求項12】
レビー小体型認知症の治療に使用される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物またはその薬剤学的に許容される塩。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物またはその薬剤学的に許容される塩を含有する、認知症を伴うパーキンソン病治療剤。
【請求項14】
認知症を伴うパーキンソン病の治療に使用される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物またはその薬剤学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コリン作動性神経細胞賦活作用および/または神経保護作用を有する、五環式化合物又はその薬剤学的に許容される塩及びその医薬用途に関するものである。本発明はまた、前記化合物を有効成分として含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アセチルコリンを伝達物質として放出するコリン作動性神経細胞は、前脳では前脳基底部のマイネルト基底核や中隔核から海馬、偏桃体、そして大脳皮質へ広く投射し、記憶・学習や認知・注意の調節を担っている(非特許文献1)。また、脳幹の脚橋被蓋核と背外側被蓋核のコリン作動性神経細胞は線条体、側坐核、黒質や視床へ投射し、動機付けや覚醒状態の調節に関与すると考えられている(非特許文献2−4)。
【0003】
特に、前脳基底部のコリン作動性神経細胞の役割については、多くの障害モデル動物等を用いた解析により明らかとなってきた。中でも、コリン作動性神経細胞の機能障害と記憶学習の低下が相関することが障害モデル動物において示され(非特許文献5−7)、コリンエステラーゼ阻害剤によりアセチルコリン量を増加させコリン作動性神経細胞の機能を上げることにより認知機能が改善されることが示されてきた(非特許文献8−12)。
【0004】
コリン作動性神経細胞の脱落を示す動物モデルにおいて、Nerve Growth Factor(NGF)による神経保護作用を示すことが報告されている(非特許文献13−15)。
【0005】
特にアルツハイマー型認知症(AD)では、コリン作動性神経細胞の脱落は発症初期より見られ、ADの病理学的特徴の一つでもある。ADではアミロイドβの沈着による老人斑蓄積と,タウの凝集による神経原繊維変化も病理学的特徴に持ち、特に神経原繊維変化は病態の進行に伴い増大し、神経細胞死を引き起こすことが知られている。AD発症初期からマイネルト基底核や経嗅内野皮質おいて神経原繊維変化が見られ、中でも、マイネルト基底核に存在するコリン作動性神経細胞は早期よりタウの蓄積により脱落し、その脱落と認知機能スコアの低下は相関することが報告されている(非特許文献16−17)。同様に、家族性前頭側頭葉認知症から発見されたP301S変異を持つタウ遺伝子を発現させた遺伝子改変マウス(Human tau P301Sトランスジェニックマウス)では、AD同様にタウの過剰リン酸化および異常蓄積が起きる。その結果、ADの病理学的特徴である神経原繊維変化が起き(非特許文献18)、シナプス障害,神経変性及び神経細胞脱落による認知機能障害を引き起こす。これらの結果から、Human tau P301SトランスジェニックマウスはAD様モデル動物としても広く用いられており(非特許文献19−22)、Human tau P301SトランスジェニックマウスにおいてAD様病理学的変化を抑制することで、アルツハイマー型認知症の認知機能低下の改善及び病態進行抑制の効果が期待できる。
【0006】
また、複数の遺伝子改変マウスや障害モデル動物を用いた解析からコリン作動性神経細胞の脱落の原因の一つとして、軸索輸送障害が示唆されている(非特許文献23−25)。中でも、海馬采脳弓切断モデルは、中隔野から海馬に投射するコリン作動性神経細胞の軸索を障害し、生存や機能に関わる分子の逆行性輸送を障害させることで細胞脱落を引き起こす(非特許文献26−28)。この逆行性輸送の障害は遺伝子改変マウスにおいても見られ(非特許文献23、24)、海馬采脳弓切断によるコリン作動性神経細胞の脱落は病態の一つの側面を反映している。そのため、この障害モデルにおいてコリン作動性神経細胞の脱落を抑制・改善することで、アルツハイマー型認知症の認知機能低下の改善及び病態進行抑制の効果が期待できる。
【0007】
レビー小体型認知症(DLB; Dementia with Lewy bodies)、パーキンソン病(PD; Parkinson disease)はαシヌクレインを主成分とする異常な封入体(レビー小体)が神経細胞内に出現し、神経細胞の変性・脱落をきたす進行性の神経変性疾患である。レビー小体が大脳皮質に多く分布すると認知機能障害などを発症し、脳幹に多く分布するとパーキンソニズムを発症する。その他、幻視、幻覚、妄想、うつ症状などの精神症状、睡眠障害、自律神経症状が見られる。パーキンソニズム発症前あるいは発症1年以内に認知症を生じた場合はレビー小体型認知症と診断されるが、パーキンソニズムが認知症発症の1年以上前から存在する場合は認知症を伴うパーキンソン病(PDD; Parkinson disease with dementia)と診断される。このように、認知機能障害やパーキンソニズムの時間的な出現順序や程度の違いによって、レビー小体型認知症、認知症を伴うパーキンソン病、パーキンソン病という異なる診断名となるが、病理学的には同一疾患とみなされ、これらはまとめてレビー小体病(LBD; Lewy body disease)と呼ばれる。レビー小体型認知症、認知症を伴うパーキンソン病においては、アルツハイマー病同様にアセチルコリン作動性神経の起始核であるマイネルト基底核の神経細胞が変性、脱落しており、海馬や皮質において重度のコリン作動性神経細胞障害が見られることが報告されている(非特許文献29−31)。また、コリン作動性神経細胞障害の進行と認知機能低下は相関し(非特許文献29)、コリンエステラーゼ阻害剤により認知機能が改善されることが示されてきた。これらから、コリン作動性神経細胞の機能を改善することにより認知機能が改善されることが示され、複数の障害モデルにおいてコリン作動性神経細胞の脱落を抑制・改善することは、アルツハイマー型認知症同様にレビー小体型認知症、認知症を伴うパーキンソン病の認知機能低下の改善及び病態進行抑制の効果が期待できる。
【0008】
したがって、これらの知見より、臨床においてもコリン作動性神経細胞の機能賦活化および/または神経保護を達成することで、コリン作動性神経細胞の機能低下によって起こる認知機能低下の改善が期待できる。
【0009】
上記の疾患以外にも、認知機能障害とコリン作動性神経細胞の機能低下の関連が報告されている疾患としてハンチントン舞踏病、ダウン症候群、筋委縮性側索硬化症(ALS)、大うつ病性障害、統合失調症等が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Everitt BJ et al. “Central cholinergic systems and cognition.” Annu. Rev. Psychol. 48 (1997) 649-684.
【非特許文献2】Gulledge AT. et al. “Cholinergic inhibition of neocortical pyramidal neurons.” J. Neurosci. 25 (2005) 10308-20.
【非特許文献3】Daniel Dautan D. et al. “A major external source of cholinergic innervation of the striatum and nucleus accumbens originates in the brainstem.” J. Neurosci. 34 (2014) 4509-18.
【非特許文献4】M Steriade M. et al. “Neuronal activities in brain-stem cholinergic nuclei related to tonic activation processes in thalamocortical systems.” J. Neurosci. 10 (1990) 2541-59.
【非特許文献5】Fischer W. et al. “Progressive decline in spatial learning and integrity of forebrain cholinergic neurons in rats during aging.” Neurobiol. Aging 13 (1992) 9-23.
【非特許文献6】Leanza G.et al. “Selective lesioning of the basal forebrain cholinergic system by intraventricular 192 IgG-saporin: behavioural, biochemical and stereological studies in the rat.” Eur. J. Neurosci. 7 (1995) 329-43.
【非特許文献7】Leanza G. et al. “Selective immunolesioning of the basal forebrain cholinergic system disrupts short-term memory in rats.”Eur. J. Neurosci. 8 (1996) 1535-44.
【非特許文献8】Ogura H. et al. “Donepezil, a centrally acting acetylcholinesterase inhibitor, alleviates learning deficits in hypocholinergic models in rats.” Methods Find Exp. Clin. Pharmacol. 22 (2000) 89-95.
【非特許文献9】Spowart-Manning L. et al. “Spatial discrimination deficits by excitotoxic lesions in the Morris water escape task.”Behav. Brain Res. 156 (2005) 269-76.
【非特許文献10】Bruce AP. et al. “Choline acetyltransferase activity and cognitive domain score of Alzheimer’s patients.” Neurobiol. Aging. 21 (2000) 11-17.
【非特許文献11】Rogers SL. et al. “The efficacy and safety of donepezil in patients with Alzheimer's disease: results of a US Multicentre, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial.The Donepezil Study Group.” Dementia 7 (1996) 293-303.
【非特許文献12】Mori E. et al. “Donepezil for dementia with Lewy bodies: a randomized, placebo-controlled trial.” Ann. Neurol. 72 (2012) 41-52.
【非特許文献13】Mufson EJ. et al. “Human cholinergic basal forebrain: chemoanatomy and neurologic dysfunction.” J. Chem. Neuroanat. 26 (2003) 233-242.
【非特許文献14】Mufson EJ. et al. “Cholinergic system during the progression of Alzheimer’s disease: therapeutic implication.” Expert. Rev. Neurother. 8 (2008) 1703-1718.
【非特許文献15】Schliebs R. et al. “The significance of the cholinergic system in the brain during aging and in Alzheimer’s disease.” J. Neural. Transm 113 (2006) 1625-1644.
【非特許文献16】Vana L et al. “Progression of tau pathology in cholinergic Basal forebrain neurons in mild cognitive impairment and Alzheimer's disease.” Am. J. Pathol. 179 (2011) 2533-2550.
【非特許文献17】G&oacute;mez-Isla T et al. “Neuronal loss correlates with but exceeds neurofibrillary tangles in Alzheimer's disease.” Ann. Neurol. 41 (1997) 17-24.
【非特許文献18】Lee VM et al. “Neurodegenerative tauopathies.” Annu. Rev. Neurosci. 24 (2001) 1121-1159.
【非特許文献19】Allen B et al. “Abundant tau filaments and nonapoptotic neurodegeneration in transgenic mice expressing human P301S tau protein.” J. Neurosci. 22 (2002) 9340-9351.
【非特許文献20】Xu H et al. “Memory deficits correlate with tau and spine pathology in P301S MAPT transgenic mice.” Neuropathol. Appl. Neurobiol. 40 (2014) 833-43.
【非特許文献21】Yoshiyama Y et al. “Synapse loss and microglial activation precede tangles in a P301S tauopathy mouse model.” Neuron 53 (2007) 337-351.
【非特許文献22】Hoffmann NA et al. “Impaired plasticity of cortical dendritic spines in P301S tau transgenic mice.” Acta Neuropathol Commun. 1 (2013) 82.
【非特許文献23】Salehi A et al. “Increased App Expression in a Mouse Model of Down’s Syndrome Disrupts NGF Transport and Causes Cholinergic Neuron Degeneration” Neuron 51 (2006) 29-42.
【非特許文献24】Onishi T et al. “Early-onset cognitive deficits and axonal transport dysfunction inP301S mutant tau transgenic mice” Neuroscience Research 80 (2014) 76-85.
【非特許文献25】Xu W et al. “Amyloid precursor protein-mediated endocytic pathway disruption induces axonal dysfunction and neurodegeneration” J. Clin. Invest. 126 (2016) 1815-33.
【非特許文献26】Lapchak PA et al. “Effect of recombinant human nerve growth factor on presynaptic cholinergic function in rat hippocampal slices following partial septohippocampal lesions: measures of [3H]acetylcholine synthesis, [3H]acetylcholine release and choline acetyltransferase activity” Neuroscience 42 (1991) 639-49.
【非特許文献27】Gilmor ML et al. “Coordinate expression of the vesicular acetylcholine transporter and choline acetyltransferase following septohippocampal pathway lesions” J. Neurochem. 71 (1998) 2411-20.
【非特許文献28】Gu H et al. “Recombinant human NGF-loaded microspheres promote survival of basal forebrain cholinergic neurons and improve memory impairments of spatial learning in the rat model of Alzheimer's disease with fimbria-fornix lesion” Neurosci. Lett. 453 (2009) 204-9.
【非特許文献29】Shimada, H. et al., "Mapping of brain acetylcholinesterase alterations in Lewy body disease by PET" Neurology, vol.73, pp. 273-278, 2009.
【非特許文献30】Tiraboschi, P. et al., "Cholinergic dysfunction in diseases with Lewy bodies" Neurology 54 (2000) 407-411.
【非特許文献31】Perry, E. K. et. al., "Neocortical cholinergic activities differentiate Lewy body dementia from classical Alzheimer’s disease", NeuroReport, vol.5, pp.747-749 (1994).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、コリン作動性神経細胞賦活作用および/または神経保護作用を有し、アルツハイマー病、レビー小体型認知症および認知症を伴うパーキンソン病の治療剤としての利用可能性を有する化合物またはその薬剤学的に許容される塩を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、精力的に研究を重ねた結果、コリン作動性神経細胞賦活作用および/または神経保護作用を有する、五環式化合物又はその薬剤学的に許容される塩を見出した。
【0013】
すなわち、本発明は以下<1>から<14>に関する。
<1>以下の群から選ばれる化合物またはその薬剤学的に許容される塩:
3−フルオロ−6,11−ジメチル−6,7,10,11,12,13−ヘキサヒドロベンゾ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−5,14−ジオン:
【化1】

5,10−ジメチル−5,6,9,10,11,12−ヘキサヒドロピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a]チエノ[2,3−f][1,4]ジアゼピン−4,13−ジオン:
【化2】

5,10−ジメチル−5,6,9,10,11,12−ヘキサヒドロピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a]チエノ[3,2−f][1,4]ジアゼピン−4,13−ジオン:
【化3】

(3aS,14aR)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオン:
【化4】

(3aR,14aR)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオン:
【化5】

および
(3aS,14aS)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオン:
【化6】


<2>3−フルオロ−6,11−ジメチル−6,7,10,11,12,13−ヘキサヒドロベンゾ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−5,14−ジオンまたはその薬剤学的に許容される塩:
【化7】


<3>5,10−ジメチル−5,6,9,10,11,12−ヘキサヒドロピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a]チエノ[2,3−f][1,4]ジアゼピン−4,13−ジオンまたはその薬剤学的に許容される塩:
【化8】


<4>5,10−ジメチル−5,6,9,10,11,12−ヘキサヒドロピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a]チエノ[3,2−f][1,4]ジアゼピン−4,13−ジオンまたはその薬剤学的に許容される塩:
【化9】


<5>(3aS,14aR)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオンまたはその薬剤学的に許容される塩:
【化10】


<6>(3aR,14aR)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオンまたはその薬剤学的に許容される塩:
【化11】


<7>(3aS,14aS)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオンまたはその薬剤学的に許容される塩:
【化12】


<8><1>〜<7>のいずれか一項に記載の化合物またはその薬剤学的に許容される塩および1以上の薬剤学的に許容される添加剤を含有する医薬組成物。
<9><1>〜<7>のいずれか一項に記載の化合物またはその薬剤学的に許容される塩を含有する、アルツハイマー病治療剤
<10>アルツハイマー病の治療に使用される、<1>〜<7>のいずれか一項に記載の化合物またはその薬剤学的に許容される塩
<11><1>〜<7>のいずれか一項に記載の化合物またはその薬剤学的に許容される塩を含有する、レビー小体型認知症治療剤
<12>レビー小体型認知症の治療に使用される、<1>〜<7>のいずれか一項に記載の化合物またはその薬剤学的に許容される塩
<13><1>〜<7>のいずれか一項に記載の化合物またはその薬剤学的に許容される塩を含有する、認知症を伴うパーキンソン病治療剤
<14>認知症を伴うパーキンソン病の治療に使用される、<1>〜<7>のいずれか一項に記載の化合物またはその薬剤学的に許容される塩。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る式(I)〜(VI)で表される五環式化合物(以下、化合物(I)〜(VI)という。)またはその薬剤学的に許容される塩は、下記の薬理試験例における活性データにて示されているように神経細胞賦活作用および/または神経保護作用を有している。本発明の化合物(I)〜(VI)は、神経細胞賦活作用および/または神経保護作用により認知機能の改善につながることから、アルツハイマー病、レビー小体型認知症および認知症を伴うパーキンソン病の治療剤としての利用可能性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
【0016】
本明細書中においては、化合物の構造式が便宜上一定の異性体を表すことがあるが、本発明には化合物の構造上生ずる回転異性体または互変異性体およびそれら混合物を含んでもよく、便宜上の式の記載に限定されるものではなく、いずれか一方の異性体でも、各異性体を任意の比率で含む混合物でもよい。
【0017】
また、結晶多形が存在することもあるが同様にいずれにも限定されず、いずれかの結晶形の単一物であっても混合物であってもよく、また、本発明には非晶質体も含まれ、そして、本発明に係る化合物には、無水物と溶媒和物(特に水和物)とが包含される。
【0018】
本発明には、化合物(I)〜(VI)の同位体標識された化合物も含まれる。同位体標識された化合物は1つまたはそれ以上の原子が自然界に通常見出される原子質量か質量数と異なった原子質量か質量数を有する原子で置き換えられていること以外、化合物(I)〜(VI)と同一である。本発明の化合物に組み入れることができる同位元素は、例えば、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、リン、硫黄、沃素、および塩素の同位元素であり、H、H、11C、14C、15N、18O、18F、32P、35S、123I、および125I等が含まれる。
【0019】
上記同位体標識化合物、例えば、Hおよび/または14Cなどの放射性同位元素が組み入れられた化合物は医薬および/または基質の組織分布アッセイに有用である。Hと14Cはそれらの調製と検出の容易さのため有用と考えられている。同位元素11Cおよび18FはPET(陽電子放射断層撮影)で有用と考えられており、同位元素125IはSPECT(単光子放出コンピュータ断層撮影)で有用と考えられており、脳イメージングですべて有用である。Hなどのより重い同位元素による置換は、より高い代謝的安定性による生体内半減期を増加または必要用量の減少等のある種の治療上の利点を生じさせ、それ故に、ある状況下では有用と考えられている。上記同位体標識化合物は容易に利用可能な同位体標識された試薬を同位体標識されていない試薬の代わりに用いて、以下の実施例に開示された手順を行うことによって一様に調製することができる。
【0020】
本明細書における「薬剤学的に許容される塩」とは、本発明に係る化合物と塩を形成されるものであれば特に限定されず、具体的には例えば、無機酸塩、有機酸塩または酸性アミノ酸塩等の酸付加塩が挙げられる。
【0021】
本明細書における「薬剤学的に許容される塩」とは、特に限定する記載がない限り、適宜な比で塩を形成しさえすれば、形成された塩において、当該化合物1分子に対する酸の分子数は特に限定されないが、好ましくは該化合物1分子に対して酸は約0.5〜約2分子であり、より好ましくは、当該化合物1分子に対して酸は、約0.5、約1、または約2分子である。
【0022】
無機酸塩の好ましい例としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等が挙げられ、有機酸塩の好ましい例としては、例えば、酢酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0023】
酸性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えば、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などが挙げられる。
【0024】
本発明に係る化合物(I)〜(VI)がフリー体として得られる場合、前記の化合物(I)〜(VI)が形成していてもよい塩またはそれらの水和物の状態に常法に従って変換することができる。
【0025】
本発明に係る化合物(I)〜(VI)が化合物(I)〜(VI)の塩または化合物(I)〜(VI)の水和物として得られる場合、前記の化合物(I)〜(VI)のフリー体に常法に従って変換することができる。
【0026】
また、本発明に係る化合物(I)〜(VI)について得られる種々の異性体(例えば光学異性体、回転異性体、立体異性体等)は、通常の分離手段、例えば、再結晶、ジアステレオマー塩法、酵素分割法、種々のクロマトグラフィー(例えば薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等)を用いることにより精製し、単離することができる。
【0027】
[製剤]
本発明に係る医薬組成物は、薬剤学的に許容される添加物を化合物群(I)〜(VI)から選ばれる化合物またはその薬剤学的に許容される塩と混和することにより製造することができる。本発明に係る医薬組成物は、例えば、第十七改正日本薬局方の製剤総則に記載の方法など既知の方法に従って製造することができる。
【0028】
本発明に係る医薬組成物は、その剤形に応じて適切に患者に投与することができる。
【0029】
本発明に係る化合物(I)〜(VI)またはその薬剤学的に許容される塩の投与量は、症状の程度、年齢、性別、体重、投与形態・塩の種類、疾患の具体的な種類等に応じて異なるが、通常、成人の場合は1日あたり経口投与で約30μg〜10g、好ましくは100μg〜5g、さらに好ましくは100μg〜1gを、注射投与で約30μg〜1g、好ましくは100μg〜500mg、さらに好ましくは100μg〜300mgをそれぞれ1回または数回に分けて投与する。
【0030】
本発明の化合物は生理活性低分子化合物の標的タンパクを捕捉するためのケミカルプローブとすることができる。すなわち、本発明の化合物は、当該化合物の活性発現に必須な構造部分とは異なる部分に、J. Mass Spectrum. Soc. Jpn. Vol.51, No.5 2003, p492−498または WO2007/139149等に記載の手法で標識基、リンカー等を導入することでアフィニティークロマトグラフィープローブ、フォトアフィニティープローブ等に変換することができる。
【0031】
ケミカルプローブに用いる標識基、リンカー等は、例えば以下の(1)ないし(5)からなる群に示される基が挙げられる。
(1)光親和性標識基(例えば、ベンゾイル基、ベンゾフェノン基、アジド基、カルボニルアジド基、ジアジリジン基、エノン基、ジアゾ基およびニトロ基等)および化学親和性基(例えば、アルファー炭素原子がハロゲン原子で置換されたケトン基、カルバモイル基、エステル基、アルキルチオ基、α、β−不飽和ケトン、エステル等のマイケル受容体、およびオキシラン基等)等のタンパク質標識基、
(2)−S−S−、−O−Si−O−、単糖(グルコース基、ガラクトース基等)または二糖(ラクトース等)等の開裂可能なリンカー、および酵素反応で開裂可能なオリゴペプチドリンカー、
(3)ビオチン、3−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4H−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン−3−イル)プロピオニル基等のフィッシングタグ基、
(4)125I、32P、H、14Cなどの放射性標識基;フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、ウンベリフェロン、7−ニトロフラザニル、3−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4H−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン−3−イル)プロピオニル基等の蛍光標識基;ルシフェリン、ルミノール等の化学発光基;ランタノイド金属イオン、ラジウムイオン等の重金属イオン等の検出可能なマーカー、または
(5)ガラスビーズ、ガラスベット、マイクロタイタープレート、アガロースビーズ、アガロースベッド、ポリスチレンビーズ、ポリスチレンベッド、ナイロンビーズ、ナイロンベッド等の固相担体と結合させる基等。
【0032】
上記の(1)ないし(5)からなる群より選択される標識基等を上記文献に記載の方法等に準じて本発明の化合物に導入して調製されるプローブは、新たな創薬ターゲットの探索等に有用な標識タンパクの同定のためのケミカルプローブとして用いることができる。
【実施例】
【0033】
本発明の化合物(I)〜(VI)は、例えば、以下の実施例に記載した方法により製造することができ、また、当該化合物の効果は、以下の試験例に記載した方法により確認することができる。ただし、これらは例示的なものであって、本発明は、如何なる場合も以下の具体例に制限されるものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
【0034】
文献名等が記載されている化合物は、その文献等に従って製造したことを示す。
【0035】
また、本明細書に使用される略号は当業者に周知の慣用的な略号である。本明細書においては以下の略号を使用する。
DCE:1,2−ジクロロエタン
DCM:ジクロロメタン
DIPEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMT−MM:4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム クロリド
DMSO:ジメチルスルホキシド
EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
HATU:O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HOBT:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
n−:ノルマル
NMM:N−メチルモルホリン
t−:ターシャリー
TBD:1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン
TBME:ターシャリーブチルメチルエーテル
TEA:トリエチルアミン
THF:テトラヒドロフラン
H−NMR:プロトン核磁気共鳴スペクトルメトリー
MS:マススペクトルメトリー
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
【0036】
以下の実施例及び製造例中の「室温」は通常約10℃から約35℃を示す。%は特記しない限り重量パーセントを示す。
【0037】
プロトン核磁気共鳴スペクトルの化学シフトは、テトラメチルシランに対するδ単位(ppm)で記録、カップリング定数はヘルツ(Hz)で記録されている。パターンは、s:シングレット、d:ダブレット、t:トリプレット、q:カルテット、m:マルチプレット、br:ブロード、br.s:ブロードシングレット。
【0038】
化合物の光学分割には、Biotage社製Parallex FlexTM(カラム:DAICEL社製CHIRALPAK(登録商標) AD−H,IA,IB,IC,DAICEL社製CHIRALCEL(登録商標) OD−H,OJ−Hのいずれか)を用いた。
【0039】
製造例、参考例および実施例においてマイクロウェーブ反応装置を用いた反応は、Biotage社製initiatorTMまたはinitiator+TMを用いた。
【0040】
クロマトグラフィーに関して、シリカゲルは、Merck社製Silica Gel60(70−230mesh、もしくは、230−400mesh ASTM)または富士シリシア化学社製PSQ60Bを用いるか、プレパックカラム{カラム:YAMAZEN社製 Hi−FlashTM Column(Silicagel)、サイズ;S(16×60mm)、M(20×75mm)、L(26×100mm)、2L(26×150mm)、3L(46×130mm)のいずれか、またはBiotage社製BiotageTMSNAP Ultra Silica Cartridge、サイズ:10g、25g、50gのいずれか}を用いた。
【0041】
NHシリカゲルは、富士シリシア化学社製CHROMATOREX NH−DM2035を用いるか、プレパックカラム{カラム:YAMAZEN社製 Hi−FlashTM Column(Amino)、サイズ;S(16×60mm)、M(20×75mm)、L(26×100mm)、2L(26×150mm)、3L(46×130mm)のいずれか、もしくは和光純薬工業社製 プレセップTM(ルアーロック)NH2(HC)、サイズ:タイプM(14g/25mL)、タイプL(34g/70mL)、タイプ2L(50g/100mL)、タイプ3L(110g/200mL)のいずれか}を用いた。
【0042】
以下に示す化合物の命名は、一般的に用いられる試薬を除き、「E−ノートブック」バージョン12(パーキンエルマー社)で表示されたものを用いた。
【0043】
製造例1
エチル 2−アミノ−6−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[2,3−c]ピリジン−3−カルボキシレートの合成
【化13】
1−メチル−4−ピペリドン(CAS No.1445−73−4)(51.5mL,442mmol)、エチルシアノアセテート(CAS No.105−56−6)(47.2mL,442mmol)、硫黄(CAS No.7704−34−9)(14.2g,442mmol)およびエタノール(800mL)の混合物に室温でTEA(61.6mL,442mmol)を加えた。反応混合物を40℃で15時間撹拌した後、減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、酢酸エチル)で精製した。得られた濃縮残渣を酢酸エチルでトリチュレーションした。沈殿物をろ取し、酢酸エチルで洗浄し、そして減圧下に乾燥して、標記化合物(58.4g)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.33(t,J=7.0Hz,3H),2.44(s,3H),2.62−2.70(m,2H),2.79−2.88(m,2H),3.37(t,J=2.0Hz,2H),4.26(q,J=7.3Hz,2H),5.97(br.s,2H).
MS(ESI)m/z:241[M+H]
【0044】
製造例2
7−フルオロ−4−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
【化14】
6−フルオロ−1H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−2,4−ジオン(CAS No.321−69−7)(10.0g,55.2mmol)のピリジン(100mL)溶液へ、サルコシン(CAS No.107−97−1)(5.16g,58.0mmol)を室温で加え、反応混合物を100℃で8時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した。沈殿物をろ取し、ジエチルエーテルで洗浄した。得られた固体を減圧下に乾燥し、標記化合物(5.34g)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):3.30(s,3H),3.90(s,2H),6.97(dd,J=8.8,4.5Hz,1H),7.20(ddd,J=8.6,7.6,2.9Hz,1H),7.67(dd,J=9.0, 3.1Hz,1H),7.99(br.s,1H).
MS(ESI)m/z:209[M+H]
【0045】
製造例3
4−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−チエノ[3,2−e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
【化15】
1H,2H,4H−チエノ[3,2−d][1,3]オキサジン−2,4−ジオン(CAS No.78756−28−2)(300mg,1.77mmol)、サルコシン(395mg,4.43mmol)と水(10mL)の混合物を2時間加熱還流した。反応混合物を0℃まで冷却した。沈殿物をろ取し、水およびジエチルエーテルで順次洗浄した。得られた固体を減圧下に乾燥して、標記化合物(165mg)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):3.24(s,3H),4.00(s,2H),6.72(d,J=5.3Hz,1H),7.52(d,J=5.3Hz,1H),7.96(br.s,1H).
MS(ESI)m/z:197[M+H]
【0046】
製造例4
4−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−チエノ[2,3−e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
【化16】
サルコシン(790mg,8.87mmol)の水(12mL)溶液へ、1H,2H,4H−チエノ[2,3−d][1,3]オキサジン−2,4−ジオン(CAS No.103979−54−0)(600mg,3.55mmol)を加えた。反応混合物を1.5時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却した。反応混合物へクロロホルムを加え、有機層を分離した。水層をクロロホルム(2回)、酢酸エチル(3回)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下に濃縮した。得られた固体を乾燥し、標記化合物(430mg)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):3.23(s,3H),3.99(s,2H),6.90(d,J=5.9Hz,1H),7.29(d,J=5.7Hz,1H),8.39(br.s,1H).
MS(ESI)m/z:197[M+H]
【0047】
製造例5
(5aS,8aR)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
【化17】
(1)メチル 2−((1S,2R)−2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−N−メチルシクロペンタンカルボキサミド)アセテートの合成
(1S,2R)−2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)シクロペンタン−1−カルボン酸(CAS No.137170−89−9)(14.6g,63.6mmol)、サルコシンメチルエステル塩酸塩(CAS No. 13515−93−0)(10.7g,76.3mmol)およびTHF(150mL)の混合物へ、TEA(22.2mL,159mmol)、HOBT・一水和物(11.7g,76.3mmol)、およびEDC(14.6g,76.3mmol)を氷冷下に順次加えた。反応混合物を室温で15時間撹拌したのち、酢酸エチルと水を加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下に濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、25−30%酢酸エチル/n−ヘプタン)で2回精製して、標記化合物(16.1g)を得た。
MS(ESI)m/z:337[M+Na]
(2)(5aS,8aR)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
メチル 2−((1S,2R)−2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−N−メチルシクロペンタンカルボキサミド)アセテート(16.1g,51.3mmol)へ、4N 塩化水素/1,4−ジオキサン溶液(160mL,640mmol)を氷冷下で加えた。反応混合物を同温で30分間撹拌し、ついで室温で45分撹拌した後、減圧下に濃縮した。残渣のメタノール(130ml)溶液へ、水冷下に、TBD(8.57g,61.6mmol)を加えた。反応混合物を水冷下に3時間撹拌したのち、0℃に冷却した。生じた固体をろ取し、氷冷したメタノールで3回洗浄し、減圧下に乾燥して標記化合物(5.22g)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.41−1.59(m,2H),1.78−1.98(m,2H),2.00−2.15(m,1H),2.36−2.53(m,1H),3.08(s,3H),3.18−3.32(m,1H),3.49(dd,J=15.5,1.7Hz,1H),3.91−4.04(m,1H),4.51(d,J=15.4Hz,1H),5.54(br.s,1H).
MS(ESI)m/z:183[M+H]
【0048】
製造例6
(5aR,8aR)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
【化18】
(1)t−ブチル 2−((1R,2R)−2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−N−メチルシクロペンタンカルボキサミド)アセテートの合成
(1R,2R)−t−ブトキシカルボニル−2−アミノシクロペンタンカルボン酸(CAS No.245115−25−7)(1.00g,4.36mmol)、サルコシンt−ブチルエステル塩酸塩(CAS No.136088−69−2)(872mg,4.80mmol)およびDCM(10mL)の混合物へ、DIPEA(1.81mL,10.5mmol)およびHATU(1.99g,5.23mmol)を室温で順次加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した後、直接カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、30−50%酢酸エチル/n−ヘプタン)で精製して、標記化合物(1.61g)を得た。
MS(ESI)m/z:357[M+H]
(2)(5aR,8aR)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
t−ブチル 2−((1R,2R)−2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−N−メチルシクロペンタンカルボキサミド)アセテート(1.61g,4.52mmol)へ4N 塩化水素/1,4−ジオキサン溶液(16mL,64mmol)を室温で加え、20時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮した。残渣に炭酸水素ナトリウム(0.911g,10.8mmol)、メタノール(24mL)、NMM(0.099mL,0.90mmol)、およびDMT−MM(12.3%HO,1.80g,5.70mmol)を室温で順次加え、20時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し、残渣をDCMで洗浄した。洗浄液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、5−20%メタノール/酢酸エチル)で精製して、標記化合物(745mg)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.56−1.88(m,3H),1.91−2.02(m,1H),2.13−2.23(m,1H),2.26−2.39(m,1H),3.07(s,3H),3.08−3.16(m,1H),3.51−3.62(m,1H),3.79(d,J=18.0Hz,1H),4.58(d,J=18.0Hz,1H),6.76(br.s,1H).
MS(ESI)m/z:183[M+H]
【0049】
製造例7
(5aS,8aS)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
【化19】
(1)t−ブチル 2−((1S,2S)−2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−N−メチルシクロペンタンカルボキサミド)アセテートの合成
(1S,2S)−t−ブトキシカルボニル−2−アミノシクロペンタンカルボン酸(CAS No.143679−80−5)(1.00g,4.36mmol)、サルコシンt−ブチルエステル塩酸塩(872mg,4.80mmol)、DIPEA(1.81mL,10.5mmol)およびDCM(10mL)の混合物へ、HATU(1.99g,5.23mmol)を室温で加えた。反応混合物を室温にて終夜撹拌した後、直接カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、30−50%酢酸エチル/n−ヘプタン)で精製して、標記化合物(1.55g)を得た。
MS(ESI)m/z:357[M+H]
(2)(5aS,8aS)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
t−ブチル 2−((1S,2S)−2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−N−メチルシクロペンタンカルボキサミド)アセテート(1.55g,4.35mmol)へ4N 塩化水素/1,4−ジオキサン溶液(16mL,64mmol)を室温で加え、16時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮した。残渣に炭酸水素ナトリウム(0.877g,10.4mmol)、メタノール(24mL)、NMM(0.096mL,0.87mmol)、およびDMT−MM(12.3%HO,1.73g,5.48mmol)を室温で順次加え、3時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し、残渣をDCMで洗浄した。洗浄液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、0−20%メタノール/酢酸エチル)で精製して、標記化合物(753mg)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.55−1.88(m,3H),1.91−2.02(m,1H),2.11−2.22(m,1H),2.25−2.40(m,1H),3.07(s,3H),3.07−3.16(m,1H),3.51−3.62(m,1H),3.78(d,J=18.0Hz,1H),4.57(d,J=18.0Hz,1H),6.54(br.s,1H).
MS(ESI)m/z:183[M+H]
【0050】
実施例1
3−フルオロ−6,11−ジメチル−6,7,10,11,12,13−ヘキサヒドロベンゾ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−5,14−ジオンの合成
【化20】
製造例1で得たエチル 2−アミノ−6−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[2,3−c]ピリジン−3−カルボキシレート(6.00g,25.0mmol)、製造例2で得た7−フルオロ−4−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオン(5.20g,25.0mmol)およびDCE(300mL)の混合物へ、オキシ塩化リン(4.65mL,49.9mmol)を室温で加えた。反応混合物を80℃で20時間攪拌した。氷冷攪拌下、反応混合物にナトリウム エトキシド(20%エタノール溶液、80mL,207mmol)を加えた。反応混合物を室温で20分攪拌した。反応混合物へ飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および酢酸エチルを加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、50−100%酢酸エチル/n−ヘプタン)、(シリカゲル、0―50%メタノール/酢酸エチル)で順次精製した。得られた固体をTBMEでトリチュレーションし、沈殿物をろ取した。得られた固体をTBMEで洗浄し、減圧下に乾燥して、標記化合物(4.56g)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):2.51(s,3H),2.66−2.76(m,1H),2.77−2.88(m,1H),3.04−3.18 (m,2H),3.25(s,3H),3.57−3.75(m,2H),4.09 (d,J=15.2Hz,1H),4.47(d,J=14.8Hz,1H),7.25−7.31(m,1H),7.60−7.64(m,1H),7.67(dd,J=9.0,4.7Hz,1H).
MS(ESI)m/z:385[M+H]
【0051】
実施例2
5,10−ジメチル−5,6,9,10,11,12−ヘキサヒドロピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a]チエノ[2,3−f][1,4]ジアゼピン−4,13−ジオンの合成
【化21】
製造例1で得たエチル 2−アミノ−6−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[2,3−c]ピリジン−3−カルボキシレート(303mg,1.26mmol)、製造例3で得た4−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−チエノ[3,2−e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオン(165mg,0.841mmol)、および1,4−ジオキサン(10mL)の混合物へ、オキシ塩化リン(0.157mL,1.68mmol)を、室温で加えた。反応混合物を70℃で2時間撹拌した後、90℃で5時間撹拌した。室温まで冷却した反応混合物へ、ナトリウム エトキシド(20%エタノール溶液、2.60mL,6.73mmol)を加えた。反応混合物を室温で40分攪拌した。反応混合物へ酢酸エチル、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、50%メタノール/酢酸エチル)で精製し、標記化合物(90.0mg)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):2.51(s,3H),2.66−2.87(m,2H),3.07−3.20(m,2H),3.26(s,3H),3.56−3.74(m,2H),4.21(d,J=15.0Hz,1H),4.56(d,J=15.0Hz,1H),7.54(d,J=5.3Hz,1H),7.59(d,J=5.3Hz,1H).
MS(ESI)m/z:373[M+H]
【0052】
実施例3
5,10−ジメチル−5,6,9,10,11,12−ヘキサヒドロピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a]チエノ[3,2−f][1,4]ジアゼピン−4,13−ジオンの合成
【化22】
製造例4で得た4−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−チエノ[2,3−e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオン(1.00g,5.10mmol)、製造例1で得たエチル 2−アミノ−6−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[2,3−c]ピリジン−3−カルボキシレート(1.84g,7.64mmol),および1,4−ジオキサン(30mL)の混合物へ、オキシ塩化リン(1.43mL,15.3mmol)を室温で加えた。反応混合物を室温で5分攪拌し、90℃で2時間撹拌した。室温まで冷却した反応混合物に、ナトリウム エトキシド(20%エタノール溶液、21.7mL,56.1mmol)を5分かけて加えた。反応混合物を室温で1.5時間攪拌した。反応混合物に酢酸エチル、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、そして水を順次加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出した。合せた有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、20%−50%メタノール/酢酸エチル)で精製した。得られた固体をエタノールでトリチュレーションし、沈殿物をろ取した。得られた固体をエタノールで洗浄し、減圧下に乾燥して標記化合物(712mg)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):2.52(s,3H),2.71−2.87(m,2H),3.05−3.30(m,5H),3.59−3.75(m,2H),4.23(d,J=14.8Hz,1H),4.57(d,J=14.8Hz,1H),7.35(d,J=6.2Hz,1H),7.39(d,J=5.9Hz,1H).
MS(ESI)m/z:373[M+H]
【0053】
実施例4
(3aS,14aR)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオンの合成
【化23】
製造例5−(2)で得た(5aS,8aR)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオン(3.10g,17.0mmol)、製造例1で得たエチル 2−アミノ−6−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[2,3−c]ピリジン−3−カルボキシレート(8.18g,34.0mmol)およびDCE(300mL)の混合物へ、オキシ塩化リン(7.93mL,85.1mmol)を室温で加えた。反応混合物を80℃で14.5時間撹拌した。反応混合物へ飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を0℃で加え、室温で3.5時間撹拌した後、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、30−60%酢酸エチル/n−ヘプタン)で精製した。得られた濃縮残渣をTBMEでトリチュレーションし、沈殿物をろ取した。得られた固体をTBMEで3回洗浄し、減圧下に乾燥して、標記化合物(3.70g)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.51−1.73(m,2H),1.94−2.18(m,2H),2.30−2.41(m,1H),2.44−2.59(m,4H),2.71−2.82(m,2H),3.04−3.19(m,5H),3.42−3.54(m,1H),3.64(s,2H),4.17(d,J=15.6Hz,1H),4.75(d,J=15.6Hz,1H),5.69−5.82(m,1H).
MS(ESI)m/z:359[M+H]
比旋光度:[α]20 −146.0(c 0.50,CHCl
HPLCによる分析;
(分析条件)カラム:CHIRALPAK IB(ダイセル化学工業社製)(0.46cmφ×15cm),40℃,溶離液:エタノール/ヘキサン=20/80(v/v),流速:1ml/min.,検出:UV(254nm)
(分析結果)標記化合物を上記分析条件で分析したところ、保持時間は10.38分であり、光学純度は>98%ee、旋光性は(−)であった。エナンチオマーの保持時間は、ラセミ体の出発原料を用いて同様に合成して確認した。
【0054】
実施例5
(3aR,14aR)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオンの合成
【化24】
製造例6−(2)で得た(5aR,8aR)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオン(310mg,1.70mmol)、製造例1で得たエチル 2−アミノ−6−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[2,3−c]ピリジン−3−カルボキシレート(613mg,2.55mmol)およびDCE(16mL)の混合物へ、オキシ塩化リン(0.793mL,8.51mmol)を室温で加えた。反応混合物を70℃にて2.5時間撹拌した後、室温に戻し、酢酸エチル(15mL)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL)を加えた。反応混合物を室温で5日間撹拌し、酢酸エチルを加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出した。合せた有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、50−70%酢酸エチル/n−ヘプタン)で精製した。得られた生成物をジエチルエーテルで3回洗浄したのち、TBMEで洗浄し、減圧下に乾燥して標記化合物(143mg)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.29−1.49(m,1H),1.68−1.83(m,1H),1.82−2.21(m,3H),2.50(s,3H),2.76(t,J=5.7Hz,2H),2.98−3.23(m,6H),3.40−3.54(m,1H),3.57−3.68(m,2H),4.17−4.34(m,2H),5.30(d,J=17.4Hz,1H).
MS(ESI)m/z:359[M+H]
HPLCによる分析;
(分析条件)カラム:CHIRALPAK IC(ダイセル化学工業社製)(0.46cmφ×15cm),40℃,溶離液:エタノール,流速:1mL/min.,検出:UV(254nm)
(分析結果)標記化合物の保持時間は6.64分であり、光学純度は>99%ee、旋光性は(−)であった。
【0055】
実施例6
(3aS,14aS)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオンの合成
【化25】
製造例7−(2)で得た(5aS,8aS)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオン(336mg,1.84mmol)、製造例1で得たエチル 2−アミノ−6−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[2,3−c]ピリジン−3−カルボキシレート(665mg,2.77mmol)およびDCE(17mL)の混合物へ、オキシ塩化リン(0.859mL,9.22mmol)を室温で加えた。反応混合物を60℃にて3.5時間撹拌した後、室温に戻した。反応混合物へ、酢酸エチル(15mL)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL)を加えた。反応混合物を室温で5日間撹拌し、酢酸エチルを加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出した。合せた有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、40−80%酢酸エチル/n−ヘプタン)で精製した。得られた生成物をジエチルエーテルで3回洗浄し、減圧下に乾燥して標記化合物(166mg)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.31−1.50(m,1H),1.69−1.83(m,1H),1.84−1.97(m,1H),1.97−2.20(m,2H),2.50(s,3H),2.73−2.80(m,2H),3.02−3.23(m,6H),3.41−3.55(m,1H),3.57−3.69(m,2H),4.19−4.34(m,2H),5.30(d,J=17.2Hz,1H).
MS(ESI)m/z:359[M+H]
(分析条件)カラム:CHIRALPAK IC(ダイセル化学工業社製)(0.46cmφ×15cm),40℃,溶離液:エタノール,流速:1mL/min.,検出:UV(254nm)
(分析結果)標記化合物の保持時間は8.34分であり、光学純度は>99%ee、旋光性は(+)であった。
【0056】
薬理試験例
実施例1−6の化合物を用いて、以下の薬理試験を行った。
【0057】
ラット胎仔脳由来神経細胞培養系におけるNGF存在下Acetylcholine(ACh)放出量の測定
(1)ラット初代神経細胞培養
胎生18日齢のSprague−Dawley系(SD)ラット(日本チャールズリバー社)より中隔野を単離し培養に供した。具体的には、イソフルラン麻酔下、妊娠ラットより無菌的に胎仔を摘出した。胎仔より脳を摘出し、氷冷L−15 medium(11415−064、Thermo Fisher Scientific)に浸した。その摘出脳から、実体顕微鏡下で中隔野を採取した。採取した中隔野を、0.25% trypsin(15050−065、Thermo Fisher Scientific)および0.01% DNase(D5025−150KU,Sigma)を含有した酵素溶液中、37℃下30分間の酵素処理することにより、細胞を分散させた。この際、酵素反応は非働化済みウマ血清(26050−088、Thermo Fisher Scientific)を加えることで停止させた。この酵素処理溶液を1000rpmにて3分間遠心分離し、上清を除いた。得られた細胞塊に培地を10mL加えた。培地にはDulbecco‘s Modified Eagle’s Medium(044−29765、WAKO)にN2サプリメント(17502−048、Thermo Fisher Scientific)と1mM Sodium pyruvate(11360−070、Thermo Fisher Scientific)およびPenicilin streptmycin(15140−1221、Thermo Fisher Scientific)を用いた。培地が加えられた細胞塊を、緩やかなピペッティング操作により細胞を再分散後、再度1000rpmにて3分間遠心分離し、上清を除いた。得られた細胞塊に培地を10mL加え、この細胞分散液を40μmナイロンメッシュ(Cell Strainer)でろ過し、細胞塊を除くことにより神経細胞懸濁液を得た。この神経細胞懸濁液を培地にて希釈し、10%非働化済みウシ血清(26140−079、Thermo Fisher Scientific)と10%非働化済みウマ血清を加えた。その後、予めpoly−D−lysineにてコーティングされた96well培養器(354461、CORNING)に初期培養密度が1.4×10cells/cmになるように100μL/wellにて播種した。播種した細胞は5%CO−95%air下、37℃インキュベータ中にて二日培養した後、培地全量を新鮮な培地120μLと交換し、引き続き5日間培養した。
(2)化合物添加
培養7日目に薬物添加を以下の通りに行った。試験化合物のDMSO液を培地にて最終濃度の10倍になるように希釈した。NGF(450−01、PEPRO TECH,INC.)を0.3ng/mLに調製した。これらの2つの溶液をそれぞれ15μL/well添加し、よく混和した。最終DMSO濃度は0.1%以下とした。また、対照群にはDMSO及びNGFのみを添加した。
(3)ACh放出量測定
薬物添加1日後に、以下の方法でHPLCにてACh放出量を測定した。培地回収後のwellに温めたバッファーを100μL/well加え、直ぐにバッファーを除いた。その後、10μM choline、10μM physostigmineと6mM KClを加えたバッファーを120μL/well加えた。バッファーは、125mM NaCl、25mM 4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid、1.2mM KHPO、1.2mM MgSO、2.2mM CaCl(2HO)、10mM Glucoseに滅菌水にて調製し、溶液の最終pHを7.4にした。バッファーを加えた96well培養器を5%CO−95%air下、37℃インキュベータ中にて40分間インキュベートした後、80μLを回収した。回収したバッファーに内部標準液IPHC(5×10−7M)を6μL加え、HPLC測定用チューブにバッファーを移し、HPLC測定に供した。結果は、対照群のバッファー中ACh濃度に対する百分率(% of control)にて化合物の作用を示し、対照群のバッファー中ACh濃度に対して20%の上昇を示した化合物濃度を以下の表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
ラット中隔野におけるcholine acetyltransferase(ChAT)mRNA発現量の測定
(1)化合物投与
本試験では体重約250−350gのSD雄性ラット(日本チャールズリバー社)を使用した。試験化合物は0.01規定塩酸に溶解し、経口投与した。
(2)サンプリング
試験化合物投与24時間目に、ペントバルビタール麻酔下で脳組織を摘出した。氷冷下で中隔野を分画し、液体窒素で凍結後−80℃にて保管した。
(3)ChAT mRNA発現量の測定
RNA精製にはRNeasy(登録商標) Plus Mini Kit(#74136:QIAGEN社)を使用した。RNA精製はキットの添付文書に記載の方法にて実施した。RNA精製後、total RNA濃度はQIAxpert Instrument(QIAGEN社)で測定した。cDNAはSuperScript(登録商標) VILOTM cDNA Synthesis Kit(#11754:Thermo Fisher Scientific)を使用して調製した。cDNAの調製はキットの添付文書に記載の方法で実施した。調製したcDNAをRNase free waterで4倍希釈し、希釈したcDNA溶液をサンプルとした。Taqman(登録商標) Universal PCR Master Mix(#4304437:Thermo Fisher Scientific)、Taqman(登録商標) Gene Expression Assays,INVENTORIED(#4331182:Thermo Fisher Scientific)、RNase free waterおよびcDNA溶液をそれぞれ10μL、1μL、4μLおよび5μlずつ混和し、測定サンプル溶液とした。Quantitative polymerase chain reaction(qPCR)はABI PRISM(登録商標) 7900HT(Thermo Fisher Scientific)を使用し、蛍光プローブ法で実施した。解析はSDS2.4(Thermo Fisher Scientific)で実施した。結果は媒体投与群のChAT mRNA発現量に対しての試験化合物投与群のChAT mRNA発現量の増加量を百分率で算出した。結果を以下の表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
ラットCerebrospinal fluid(CSF)におけるAcetylcholine(ACh)量の測定
(1)背景
脳内とCerebrospinal fluid(CSF)中の神経伝達物質の増減は相関することが齧歯類の研究から明らかとなり、その相関はヒトにおいても同様に捉えられることが明らかとなっている(Lowe S et al. Psychopharmacology 219 (2012) 959−70.)。そこで、試験化合物による脳内のアセチルコリン量変化を検出するために、CSF中アセチルコリン量変化を評価した。
(2)化合物投与
本試験では体重約150−250gのFischer344系雄性ラット(日本チャールズリバー社)を使用した。試験化合物は1日1回、3日間、10mg/kg経口投与した。媒体は0.01規定塩酸水溶液を使用した。
(3)サンプリング
媒体および試験化合物の最終投与24時間後に、ペントバルビタール麻酔下で大槽からAChE阻害剤入りのチューブにCSFを採取した。採取したCSFを3500xg、4℃で10分間遠心し、上清を回収した。回収した上清を液体窒素で凍結後、−80℃にて保管した。
(4)LCMSを用いたACh測定
内標準物質としてCSF 10μLに最終濃度0.34nmol/L acetylcholine−d9 chloride(ACh−d9)を50μL加えた。ピペッティングにて混和後、1200xg、4℃で10分間遠心した。上清を回収し,LC/MS法(NexeraX2(MS)、TSQ Altis(HPLC))により、AChはprecursor ion m/z 146.050、product ion m/z 87.071を(内標のACh−d9はprecursor ion m/z 155.088、product ion m/z 87.000)を検出した。結果は、媒体投与群のCSF中ACh濃度に対しての試験化合物投与群のCSF中ACh濃度増加を百分率(% of control)で算出した。結果を表3に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
Human tau P301Sトランスジェニックマウスにおける評価
(1)化合物投与
本試験では4ヶ月齢から7ヶ月齢までの約3ヶ月間、Human tau P301S transgenicマウスに1日1回,試験化合物を経口投与した。媒体は0.01規定塩酸水溶液を使用した。
(2)サンプリング
投与開始日に投与開始時群(4ヶ月齢)、最終投与翌日に媒体投与群及び試験化合物投与群にペントバルビタール(50mg/kg,ip)で麻酔後,PBSで経心的に灌流した。灌流後,内側中隔野を含む前脳を採取し,4%パラホルムアルデヒドで固定した。
(3)脳冠状凍結切片作製
採取した内側中隔野を含む前脳を4%パラホルムアルデヒドで一晩浸漬、振とうした後、7.5%スクロース溶液に置換した。翌日に7.5%スクロース溶液に置換し一晩浸漬、振とう後、15%スクロース溶液に置換しさらに一晩浸漬、振とうした。浸漬液を30%スクロース溶液に置換し一晩浸漬、振とう後、内側中隔野を含む前脳のサンプルから滑走式ミクロトーム(Leica,SM2000R)を用いて30μmの厚さの脳冠状凍結切片を作製した。
(4)Choline acetyltransferase(ChAT)陽性細胞数の免疫組織学的定量
作製した脳冠状凍結切片を用いて,一次抗体としてChAT抗体(SantaCruz,SC−20672)を使用し,DAB染色(DAB PEROXIDASE SUBSTRATE KIT(Vector,SK−4100))を行った。オールインワン蛍光顕微鏡(キーエンス,BZ−X710)でThe mouse Brain in stereotaxic coordinates(COMPACT THIRD EDITION, Keith B.J. Franklin & Geroge Paxinos)に示される内側中隔野を含む切片画像を撮影し、BZ解析ソフト(キーエンス)によりその内側中隔野の主軸沿いに存在するChAT陽性細胞数の計測を行った。結果は投与開始時群(4ヶ月齢)のChAT陽性細胞数を100%としたときの媒体投与群と試験化合物投与群のChAT陽性細胞数を百分率で示した。結果は平均値±標準誤差で表した。投与開始時群と媒体投与群間の差(有意差あり:*)及び媒体投与群と試験化合物群の差(有意差あり:#)はそれぞれ対応のないt検定で解析した。p<0.05を統計学的有意差として判断した。統計解析はGraphPad Prism version 7.02を用いて行った。結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
ラット海馬采脳弓切断モデルを用いたコリン作動性神経細胞に対する神経細胞保護及び改善効果
(1)ラット海馬采-脳弓切断モデルの作製
本試験では体重約250−350gのSprague−Dawley系雄性ラット(日本チャールズリバー社)を使用した。ラットをミダゾラム2mg/kg皮下投与、塩酸メデトミジン0.15mg/kg皮下投与、酒石酸ブトルファノール2.5mg/kg皮下投与の三種を混合して麻酔し、脳定位固定装置(株式会社ナリシゲ)に固定した。頭蓋を露出し、Bregmaより2mm後方の正中線から右側頭蓋骨を横幅5mmにドリルで穴をあけた。4mm幅のカミソリをBregmaより深さ5.5mmに刺入し、海馬采-脳弓を切断した。止血後、頭皮を縫合し、手術後ラットをケージにもどし麻酔から回復させた。Bregmaより2mm後方の正中線から右側頭蓋骨を横幅5mmにドリルで穴をあけ、カミソリを刺入しない群を偽手術群とした。
(2)化合物投与
手術5日後から9日間(実施例1:10mg/kg)、または7日後から14日間(実施例3:3mg/kg)、1日1回、試験化合物を経口投与した。媒体は0.01規定塩酸水溶液を使用し、偽手術群も化合物同様に1日1回、媒体を経口投与した。
(3)サンプリング
ペントバルビタール麻酔下で氷冷PBSで経心的に灌流した。灌流後,内側中隔野を含む前脳を採取し,4%パラホルムアルデヒドに一晩浸漬、振とうした。翌日に7.5%スクロース溶液に置換し一晩浸漬、振とう後、15%スクロース溶液に置換しさらに一晩浸漬、振とうした。浸漬液を30%スクロース溶液に置換し一晩浸漬、振とう後、内側中隔野を含む前脳のサンプルから滑走式ミクロトーム(Leica,SM2000R)を用いて30μmの厚さの脳冠状凍結切片を作製した。
(4)Choline acetyltransferase(ChAT)陽性細胞数およびvesicular acetylcholine transporter〈VAChT〉の免疫組織学的定量
作製した脳冠状凍結切片を用いて,一次抗体としてChAT抗体(SantaCruz,SC−20672)またはVAChT抗体(Merck Millipore,ABN100)を使用し,DAB染色(DAB PEROXIDASE SUBSTRATE KIT(Vector,SK−4100))を行った。オールインワン蛍光顕微鏡(キーエンス,BZ−X710)でThe Rat Brain in stereotaxic coordinates (COMPACT THIRD EDITION, GEORGE PAXINOS & CHARLES WATSON)に示される内側中隔野または海馬を含む切片画像を撮影し、BZ解析ソフト(キーエンス)により内側中隔野のChAT陽性細胞数または海馬VAChTの光学密度(Optical density,OD)の計測を行った。結果は、偽手術群の内側中隔野ChAT陽性細胞数または海馬VAChTのODを100%としたときの媒体投与群と試験化合物投与群のChAT陽性細胞数または海馬VAChTのODを百分率で示した。結果は平均値±標準誤差で表した。媒体投与群と試験化合物群の差(有意差あり:#)はそれぞれ対応のないt検定で解析した。p<0.05を統計学的有意差として判断した。統計解析はGraphPad Prism version 7.02を用いて行った。結果を表5、表6に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【要約】
本発明は、式(I)〜(VI)で表される化合物またはその薬剤学的に許容される塩を提供する。