【実施例】
【0033】
本発明の化合物(I)〜(VI)は、例えば、以下の実施例に記載した方法により製造することができ、また、当該化合物の効果は、以下の試験例に記載した方法により確認することができる。ただし、これらは例示的なものであって、本発明は、如何なる場合も以下の具体例に制限されるものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
【0034】
文献名等が記載されている化合物は、その文献等に従って製造したことを示す。
【0035】
また、本明細書に使用される略号は当業者に周知の慣用的な略号である。本明細書においては以下の略号を使用する。
DCE:1,2−ジクロロエタン
DCM:ジクロロメタン
DIPEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMT−MM:4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム クロリド
DMSO:ジメチルスルホキシド
EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
HATU:O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HOBT:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
n−:ノルマル
NMM:N−メチルモルホリン
t−:ターシャリー
TBD:1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン
TBME:ターシャリーブチルメチルエーテル
TEA:トリエチルアミン
THF:テトラヒドロフラン
1H−NMR:プロトン核磁気共鳴スペクトルメトリー
MS:マススペクトルメトリー
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
【0036】
以下の実施例及び製造例中の「室温」は通常約10℃から約35℃を示す。%は特記しない限り重量パーセントを示す。
【0037】
プロトン核磁気共鳴スペクトルの化学シフトは、テトラメチルシランに対するδ単位(ppm)で記録、カップリング定数はヘルツ(Hz)で記録されている。パターンは、s:シングレット、d:ダブレット、t:トリプレット、q:カルテット、m:マルチプレット、br:ブロード、br.s:ブロードシングレット。
【0038】
化合物の光学分割には、Biotage社製Parallex Flex
TM(カラム:DAICEL社製CHIRALPAK(登録商標) AD−H,IA,IB,IC,DAICEL社製CHIRALCEL(登録商標) OD−H,OJ−Hのいずれか)を用いた。
【0039】
製造例、参考例および実施例においてマイクロウェーブ反応装置を用いた反応は、Biotage社製initiator
TMまたはinitiator+
TMを用いた。
【0040】
クロマトグラフィーに関して、シリカゲルは、Merck社製Silica Gel60(70−230mesh、もしくは、230−400mesh ASTM)または富士シリシア化学社製PSQ60Bを用いるか、プレパックカラム{カラム:YAMAZEN社製 Hi−Flash
TM Column(Silicagel)、サイズ;S(16×60mm)、M(20×75mm)、L(26×100mm)、2L(26×150mm)、3L(46×130mm)のいずれか、またはBiotage社製Biotage
TMSNAP Ultra Silica Cartridge、サイズ:10g、25g、50gのいずれか}を用いた。
【0041】
NHシリカゲルは、富士シリシア化学社製CHROMATOREX NH−DM2035を用いるか、プレパックカラム{カラム:YAMAZEN社製 Hi−Flash
TM Column(Amino)、サイズ;S(16×60mm)、M(20×75mm)、L(26×100mm)、2L(26×150mm)、3L(46×130mm)のいずれか、もしくは和光純薬工業社製 プレセップ
TM(ルアーロック)NH2(HC)、サイズ:タイプM(14g/25mL)、タイプL(34g/70mL)、タイプ2L(50g/100mL)、タイプ3L(110g/200mL)のいずれか}を用いた。
【0042】
以下に示す化合物の命名は、一般的に用いられる試薬を除き、「E−ノートブック」バージョン12(パーキンエルマー社)で表示されたものを用いた。
【0043】
製造例1
エチル 2−アミノ−6−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[2,3−c]ピリジン−3−カルボキシレートの合成
【化13】
1−メチル−4−ピペリドン(CAS No.1445−73−4)(51.5mL,442mmol)、エチルシアノアセテート(CAS No.105−56−6)(47.2mL,442mmol)、硫黄(CAS No.7704−34−9)(14.2g,442mmol)およびエタノール(800mL)の混合物に室温でTEA(61.6mL,442mmol)を加えた。反応混合物を40℃で15時間撹拌した後、減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、酢酸エチル)で精製した。得られた濃縮残渣を酢酸エチルでトリチュレーションした。沈殿物をろ取し、酢酸エチルで洗浄し、そして減圧下に乾燥して、標記化合物(58.4g)を得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):1.33(t,J=7.0Hz,3H),2.44(s,3H),2.62−2.70(m,2H),2.79−2.88(m,2H),3.37(t,J=2.0Hz,2H),4.26(q,J=7.3Hz,2H),5.97(br.s,2H).
MS(ESI)m/z:241[M+H]
+【0044】
製造例2
7−フルオロ−4−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
【化14】
6−フルオロ−1H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−2,4−ジオン(CAS No.321−69−7)(10.0g,55.2mmol)のピリジン(100mL)溶液へ、サルコシン(CAS No.107−97−1)(5.16g,58.0mmol)を室温で加え、反応混合物を100℃で8時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した。沈殿物をろ取し、ジエチルエーテルで洗浄した。得られた固体を減圧下に乾燥し、標記化合物(5.34g)を得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):3.30(s,3H),3.90(s,2H),6.97(dd,J=8.8,4.5Hz,1H),7.20(ddd,J=8.6,7.6,2.9Hz,1H),7.67(dd,J=9.0, 3.1Hz,1H),7.99(br.s,1H).
MS(ESI)m/z:209[M+H]
+【0045】
製造例3
4−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−チエノ[3,2−e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
【化15】
1H,2H,4H−チエノ[3,2−d][1,3]オキサジン−2,4−ジオン(CAS No.78756−28−2)(300mg,1.77mmol)、サルコシン(395mg,4.43mmol)と水(10mL)の混合物を2時間加熱還流した。反応混合物を0℃まで冷却した。沈殿物をろ取し、水およびジエチルエーテルで順次洗浄した。得られた固体を減圧下に乾燥して、標記化合物(165mg)を得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):3.24(s,3H),4.00(s,2H),6.72(d,J=5.3Hz,1H),7.52(d,J=5.3Hz,1H),7.96(br.s,1H).
MS(ESI)m/z:197[M+H]
+【0046】
製造例4
4−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−チエノ[2,3−e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
【化16】
サルコシン(790mg,8.87mmol)の水(12mL)溶液へ、1H,2H,4H−チエノ[2,3−d][1,3]オキサジン−2,4−ジオン(CAS No.103979−54−0)(600mg,3.55mmol)を加えた。反応混合物を1.5時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却した。反応混合物へクロロホルムを加え、有機層を分離した。水層をクロロホルム(2回)、酢酸エチル(3回)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下に濃縮した。得られた固体を乾燥し、標記化合物(430mg)を得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):3.23(s,3H),3.99(s,2H),6.90(d,J=5.9Hz,1H),7.29(d,J=5.7Hz,1H),8.39(br.s,1H).
MS(ESI)m/z:197[M+H]
+【0047】
製造例5
(5aS,8aR)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
【化17】
(1)
メチル 2−((1S,2R)−2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−N−メチルシクロペンタンカルボキサミド)アセテートの合成
(1S,2R)−2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)シクロペンタン−1−カルボン酸(CAS No.137170−89−9)(14.6g,63.6mmol)、サルコシンメチルエステル塩酸塩(CAS No. 13515−93−0)(10.7g,76.3mmol)およびTHF(150mL)の混合物へ、TEA(22.2mL,159mmol)、HOBT・一水和物(11.7g,76.3mmol)、およびEDC(14.6g,76.3mmol)を氷冷下に順次加えた。反応混合物を室温で15時間撹拌したのち、酢酸エチルと水を加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下に濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、25−30%酢酸エチル/n−ヘプタン)で2回精製して、標記化合物(16.1g)を得た。
MS(ESI)m/z:337[M+Na]
+
(2)
(5aS,8aR)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
メチル 2−((1S,2R)−2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−N−メチルシクロペンタンカルボキサミド)アセテート(16.1g,51.3mmol)へ、4N 塩化水素/1,4−ジオキサン溶液(160mL,640mmol)を氷冷下で加えた。反応混合物を同温で30分間撹拌し、ついで室温で45分撹拌した後、減圧下に濃縮した。残渣のメタノール(130ml)溶液へ、水冷下に、TBD(8.57g,61.6mmol)を加えた。反応混合物を水冷下に3時間撹拌したのち、0℃に冷却した。生じた固体をろ取し、氷冷したメタノールで3回洗浄し、減圧下に乾燥して標記化合物(5.22g)を得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):1.41−1.59(m,2H),1.78−1.98(m,2H),2.00−2.15(m,1H),2.36−2.53(m,1H),3.08(s,3H),3.18−3.32(m,1H),3.49(dd,J=15.5,1.7Hz,1H),3.91−4.04(m,1H),4.51(d,J=15.4Hz,1H),5.54(br.s,1H).
MS(ESI)m/z:183[M+H]
+【0048】
製造例6
(5aR,8aR)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
【化18】
(1)
t−ブチル 2−((1R,2R)−2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−N−メチルシクロペンタンカルボキサミド)アセテートの合成
(1R,2R)−t−ブトキシカルボニル−2−アミノシクロペンタンカルボン酸(CAS No.245115−25−7)(1.00g,4.36mmol)、サルコシンt−ブチルエステル塩酸塩(CAS No.136088−69−2)(872mg,4.80mmol)およびDCM(10mL)の混合物へ、DIPEA(1.81mL,10.5mmol)およびHATU(1.99g,5.23mmol)を室温で順次加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した後、直接カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、30−50%酢酸エチル/n−ヘプタン)で精製して、標記化合物(1.61g)を得た。
MS(ESI)m/z:357[M+H]
+
(2)
(5aR,8aR)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
t−ブチル 2−((1R,2R)−2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−N−メチルシクロペンタンカルボキサミド)アセテート(1.61g,4.52mmol)へ4N 塩化水素/1,4−ジオキサン溶液(16mL,64mmol)を室温で加え、20時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮した。残渣に炭酸水素ナトリウム(0.911g,10.8mmol)、メタノール(24mL)、NMM(0.099mL,0.90mmol)、およびDMT−MM(12.3%H
2O,1.80g,5.70mmol)を室温で順次加え、20時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し、残渣をDCMで洗浄した。洗浄液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、5−20%メタノール/酢酸エチル)で精製して、標記化合物(745mg)を得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):1.56−1.88(m,3H),1.91−2.02(m,1H),2.13−2.23(m,1H),2.26−2.39(m,1H),3.07(s,3H),3.08−3.16(m,1H),3.51−3.62(m,1H),3.79(d,J=18.0Hz,1H),4.58(d,J=18.0Hz,1H),6.76(br.s,1H).
MS(ESI)m/z:183[M+H]
+【0049】
製造例7
(5aS,8aS)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
【化19】
(1)
t−ブチル 2−((1S,2S)−2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−N−メチルシクロペンタンカルボキサミド)アセテートの合成
(1S,2S)−t−ブトキシカルボニル−2−アミノシクロペンタンカルボン酸(CAS No.143679−80−5)(1.00g,4.36mmol)、サルコシンt−ブチルエステル塩酸塩(872mg,4.80mmol)、DIPEA(1.81mL,10.5mmol)およびDCM(10mL)の混合物へ、HATU(1.99g,5.23mmol)を室温で加えた。反応混合物を室温にて終夜撹拌した後、直接カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、30−50%酢酸エチル/n−ヘプタン)で精製して、標記化合物(1.55g)を得た。
MS(ESI)m/z:357[M+H]
+
(2)
(5aS,8aS)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオンの合成
t−ブチル 2−((1S,2S)−2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−N−メチルシクロペンタンカルボキサミド)アセテート(1.55g,4.35mmol)へ4N 塩化水素/1,4−ジオキサン溶液(16mL,64mmol)を室温で加え、16時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮した。残渣に炭酸水素ナトリウム(0.877g,10.4mmol)、メタノール(24mL)、NMM(0.096mL,0.87mmol)、およびDMT−MM(12.3%H
2O,1.73g,5.48mmol)を室温で順次加え、3時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し、残渣をDCMで洗浄した。洗浄液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、0−20%メタノール/酢酸エチル)で精製して、標記化合物(753mg)を得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):1.55−1.88(m,3H),1.91−2.02(m,1H),2.11−2.22(m,1H),2.25−2.40(m,1H),3.07(s,3H),3.07−3.16(m,1H),3.51−3.62(m,1H),3.78(d,J=18.0Hz,1H),4.57(d,J=18.0Hz,1H),6.54(br.s,1H).
MS(ESI)m/z:183[M+H]
+【0050】
実施例1
3−フルオロ−6,11−ジメチル−6,7,10,11,12,13−ヘキサヒドロベンゾ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−5,14−ジオンの合成
【化20】
製造例1で得たエチル 2−アミノ−6−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[2,3−c]ピリジン−3−カルボキシレート(6.00g,25.0mmol)、製造例2で得た7−フルオロ−4−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオン(5.20g,25.0mmol)およびDCE(300mL)の混合物へ、オキシ塩化リン(4.65mL,49.9mmol)を室温で加えた。反応混合物を80℃で20時間攪拌した。氷冷攪拌下、反応混合物にナトリウム エトキシド(20%エタノール溶液、80mL,207mmol)を加えた。反応混合物を室温で20分攪拌した。反応混合物へ飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および酢酸エチルを加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、50−100%酢酸エチル/n−ヘプタン)、(シリカゲル、0―50%メタノール/酢酸エチル)で順次精製した。得られた固体をTBMEでトリチュレーションし、沈殿物をろ取した。得られた固体をTBMEで洗浄し、減圧下に乾燥して、標記化合物(4.56g)を得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):2.51(s,3H),2.66−2.76(m,1H),2.77−2.88(m,1H),3.04−3.18 (m,2H),3.25(s,3H),3.57−3.75(m,2H),4.09 (d,J=15.2Hz,1H),4.47(d,J=14.8Hz,1H),7.25−7.31(m,1H),7.60−7.64(m,1H),7.67(dd,J=9.0,4.7Hz,1H).
MS(ESI)m/z:385[M+H]
+【0051】
実施例2
5,10−ジメチル−5,6,9,10,11,12−ヘキサヒドロピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a]チエノ[2,3−f][1,4]ジアゼピン−4,13−ジオンの合成
【化21】
製造例1で得たエチル 2−アミノ−6−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[2,3−c]ピリジン−3−カルボキシレート(303mg,1.26mmol)、製造例3で得た4−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−チエノ[3,2−e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオン(165mg,0.841mmol)、および1,4−ジオキサン(10mL)の混合物へ、オキシ塩化リン(0.157mL,1.68mmol)を、室温で加えた。反応混合物を70℃で2時間撹拌した後、90℃で5時間撹拌した。室温まで冷却した反応混合物へ、ナトリウム エトキシド(20%エタノール溶液、2.60mL,6.73mmol)を加えた。反応混合物を室温で40分攪拌した。反応混合物へ酢酸エチル、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、50%メタノール/酢酸エチル)で精製し、標記化合物(90.0mg)を得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):2.51(s,3H),2.66−2.87(m,2H),3.07−3.20(m,2H),3.26(s,3H),3.56−3.74(m,2H),4.21(d,J=15.0Hz,1H),4.56(d,J=15.0Hz,1H),7.54(d,J=5.3Hz,1H),7.59(d,J=5.3Hz,1H).
MS(ESI)m/z:373[M+H]
+【0052】
実施例3
5,10−ジメチル−5,6,9,10,11,12−ヘキサヒドロピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a]チエノ[3,2−f][1,4]ジアゼピン−4,13−ジオンの合成
【化22】
製造例4で得た4−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−チエノ[2,3−e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオン(1.00g,5.10mmol)、製造例1で得たエチル 2−アミノ−6−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[2,3−c]ピリジン−3−カルボキシレート(1.84g,7.64mmol),および1,4−ジオキサン(30mL)の混合物へ、オキシ塩化リン(1.43mL,15.3mmol)を室温で加えた。反応混合物を室温で5分攪拌し、90℃で2時間撹拌した。室温まで冷却した反応混合物に、ナトリウム エトキシド(20%エタノール溶液、21.7mL,56.1mmol)を5分かけて加えた。反応混合物を室温で1.5時間攪拌した。反応混合物に酢酸エチル、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、そして水を順次加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出した。合せた有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、20%−50%メタノール/酢酸エチル)で精製した。得られた固体をエタノールでトリチュレーションし、沈殿物をろ取した。得られた固体をエタノールで洗浄し、減圧下に乾燥して標記化合物(712mg)を得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):2.52(s,3H),2.71−2.87(m,2H),3.05−3.30(m,5H),3.59−3.75(m,2H),4.23(d,J=14.8Hz,1H),4.57(d,J=14.8Hz,1H),7.35(d,J=6.2Hz,1H),7.39(d,J=5.9Hz,1H).
MS(ESI)m/z:373[M+H]
+【0053】
実施例4
(3aS,14aR)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオンの合成
【化23】
製造例5−(2)で得た(5aS,8aR)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオン(3.10g,17.0mmol)、製造例1で得たエチル 2−アミノ−6−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[2,3−c]ピリジン−3−カルボキシレート(8.18g,34.0mmol)およびDCE(300mL)の混合物へ、オキシ塩化リン(7.93mL,85.1mmol)を室温で加えた。反応混合物を80℃で14.5時間撹拌した。反応混合物へ飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を0℃で加え、室温で3.5時間撹拌した後、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、30−60%酢酸エチル/n−ヘプタン)で精製した。得られた濃縮残渣をTBMEでトリチュレーションし、沈殿物をろ取した。得られた固体をTBMEで3回洗浄し、減圧下に乾燥して、標記化合物(3.70g)を得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):1.51−1.73(m,2H),1.94−2.18(m,2H),2.30−2.41(m,1H),2.44−2.59(m,4H),2.71−2.82(m,2H),3.04−3.19(m,5H),3.42−3.54(m,1H),3.64(s,2H),4.17(d,J=15.6Hz,1H),4.75(d,J=15.6Hz,1H),5.69−5.82(m,1H).
MS(ESI)m/z:359[M+H]
+
比旋光度:[α]
D20 −146.0(c 0.50,CHCl
3)
HPLCによる分析;
(分析条件)カラム:CHIRALPAK IB(ダイセル化学工業社製)(0.46cmφ×15cm),40℃,溶離液:エタノール/ヘキサン=20/80(v/v),流速:1ml/min.,検出:UV(254nm)
(分析結果)標記化合物を上記分析条件で分析したところ、保持時間は10.38分であり、光学純度は>98%ee、旋光性は(−)であった。エナンチオマーの保持時間は、ラセミ体の出発原料を用いて同様に合成して確認した。
【0054】
実施例5
(3aR,14aR)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオンの合成
【化24】
製造例6−(2)で得た(5aR,8aR)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオン(310mg,1.70mmol)、製造例1で得たエチル 2−アミノ−6−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[2,3−c]ピリジン−3−カルボキシレート(613mg,2.55mmol)およびDCE(16mL)の混合物へ、オキシ塩化リン(0.793mL,8.51mmol)を室温で加えた。反応混合物を70℃にて2.5時間撹拌した後、室温に戻し、酢酸エチル(15mL)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL)を加えた。反応混合物を室温で5日間撹拌し、酢酸エチルを加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出した。合せた有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、50−70%酢酸エチル/n−ヘプタン)で精製した。得られた生成物をジエチルエーテルで3回洗浄したのち、TBMEで洗浄し、減圧下に乾燥して標記化合物(143mg)を得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):1.29−1.49(m,1H),1.68−1.83(m,1H),1.82−2.21(m,3H),2.50(s,3H),2.76(t,J=5.7Hz,2H),2.98−3.23(m,6H),3.40−3.54(m,1H),3.57−3.68(m,2H),4.17−4.34(m,2H),5.30(d,J=17.4Hz,1H).
MS(ESI)m/z:359[M+H]
+
HPLCによる分析;
(分析条件)カラム:CHIRALPAK IC(ダイセル化学工業社製)(0.46cmφ×15cm),40℃,溶離液:エタノール,流速:1mL/min.,検出:UV(254nm)
(分析結果)標記化合物の保持時間は6.64分であり、光学純度は>99%ee、旋光性は(−)であった。
【0055】
実施例6
(3aS,14aS)−5,10−ジメチル−3,3a,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−1H−シクロペンタ[f]ピリド[4’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピリミド[1,2−a][1,4]ジアゼピン−4,13(2H,14aH)−ジオンの合成
【化25】
製造例7−(2)で得た(5aS,8aS)−4−メチルオクタヒドロシクロペンタ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオン(336mg,1.84mmol)、製造例1で得たエチル 2−アミノ−6−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[2,3−c]ピリジン−3−カルボキシレート(665mg,2.77mmol)およびDCE(17mL)の混合物へ、オキシ塩化リン(0.859mL,9.22mmol)を室温で加えた。反応混合物を60℃にて3.5時間撹拌した後、室温に戻した。反応混合物へ、酢酸エチル(15mL)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL)を加えた。反応混合物を室温で5日間撹拌し、酢酸エチルを加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出した。合せた有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、40−80%酢酸エチル/n−ヘプタン)で精製した。得られた生成物をジエチルエーテルで3回洗浄し、減圧下に乾燥して標記化合物(166mg)を得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):1.31−1.50(m,1H),1.69−1.83(m,1H),1.84−1.97(m,1H),1.97−2.20(m,2H),2.50(s,3H),2.73−2.80(m,2H),3.02−3.23(m,6H),3.41−3.55(m,1H),3.57−3.69(m,2H),4.19−4.34(m,2H),5.30(d,J=17.2Hz,1H).
MS(ESI)m/z:359[M+H]
+
(分析条件)カラム:CHIRALPAK IC(ダイセル化学工業社製)(0.46cmφ×15cm),40℃,溶離液:エタノール,流速:1mL/min.,検出:UV(254nm)
(分析結果)標記化合物の保持時間は8.34分であり、光学純度は>99%ee、旋光性は(+)であった。
【0056】
薬理試験例
実施例1−6の化合物を用いて、以下の薬理試験を行った。
【0057】
ラット胎仔脳由来神経細胞培養系におけるNGF存在下Acetylcholine(ACh)放出量の測定
(1)ラット初代神経細胞培養
胎生18日齢のSprague−Dawley系(SD)ラット(日本チャールズリバー社)より中隔野を単離し培養に供した。具体的には、イソフルラン麻酔下、妊娠ラットより無菌的に胎仔を摘出した。胎仔より脳を摘出し、氷冷L−15 medium(11415−064、Thermo Fisher Scientific)に浸した。その摘出脳から、実体顕微鏡下で中隔野を採取した。採取した中隔野を、0.25% trypsin(15050−065、Thermo Fisher Scientific)および0.01% DNase(D5025−150KU,Sigma)を含有した酵素溶液中、37℃下30分間の酵素処理することにより、細胞を分散させた。この際、酵素反応は非働化済みウマ血清(26050−088、Thermo Fisher Scientific)を加えることで停止させた。この酵素処理溶液を1000rpmにて3分間遠心分離し、上清を除いた。得られた細胞塊に培地を10mL加えた。培地にはDulbecco‘s Modified Eagle’s Medium(044−29765、WAKO)にN2サプリメント(17502−048、Thermo Fisher Scientific)と1mM Sodium pyruvate(11360−070、Thermo Fisher Scientific)およびPenicilin streptmycin(15140−1221、Thermo Fisher Scientific)を用いた。培地が加えられた細胞塊を、緩やかなピペッティング操作により細胞を再分散後、再度1000rpmにて3分間遠心分離し、上清を除いた。得られた細胞塊に培地を10mL加え、この細胞分散液を40μmナイロンメッシュ(Cell Strainer)でろ過し、細胞塊を除くことにより神経細胞懸濁液を得た。この神経細胞懸濁液を培地にて希釈し、10%非働化済みウシ血清(26140−079、Thermo Fisher Scientific)と10%非働化済みウマ血清を加えた。その後、予めpoly−D−lysineにてコーティングされた96well培養器(354461、CORNING)に初期培養密度が1.4×10
5cells/cm
2になるように100μL/wellにて播種した。播種した細胞は5%CO
2−95%air下、37℃インキュベータ中にて二日培養した後、培地全量を新鮮な培地120μLと交換し、引き続き5日間培養した。
(2)化合物添加
培養7日目に薬物添加を以下の通りに行った。試験化合物のDMSO液を培地にて最終濃度の10倍になるように希釈した。NGF(450−01、PEPRO TECH,INC.)を0.3ng/mLに調製した。これらの2つの溶液をそれぞれ15μL/well添加し、よく混和した。最終DMSO濃度は0.1%以下とした。また、対照群にはDMSO及びNGFのみを添加した。
(3)ACh放出量測定
薬物添加1日後に、以下の方法でHPLCにてACh放出量を測定した。培地回収後のwellに温めたバッファーを100μL/well加え、直ぐにバッファーを除いた。その後、10μM choline、10μM physostigmineと6mM KClを加えたバッファーを120μL/well加えた。バッファーは、125mM NaCl、25mM 4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid、1.2mM KH
2PO
4、1.2mM MgSO
4、2.2mM CaCl
2(2H
2O)、10mM Glucoseに滅菌水にて調製し、溶液の最終pHを7.4にした。バッファーを加えた96well培養器を5%CO
2−95%air下、37℃インキュベータ中にて40分間インキュベートした後、80μLを回収した。回収したバッファーに内部標準液IPHC(5×10
−7M)を6μL加え、HPLC測定用チューブにバッファーを移し、HPLC測定に供した。結果は、対照群のバッファー中ACh濃度に対する百分率(% of control)にて化合物の作用を示し、対照群のバッファー中ACh濃度に対して20%の上昇を示した化合物濃度を以下の表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
ラット中隔野におけるcholine acetyltransferase(ChAT)mRNA発現量の測定
(1)化合物投与
本試験では体重約250−350gのSD雄性ラット(日本チャールズリバー社)を使用した。試験化合物は0.01規定塩酸に溶解し、経口投与した。
(2)サンプリング
試験化合物投与24時間目に、ペントバルビタール麻酔下で脳組織を摘出した。氷冷下で中隔野を分画し、液体窒素で凍結後−80℃にて保管した。
(3)ChAT mRNA発現量の測定
RNA精製にはRNeasy(登録商標) Plus Mini Kit(#74136:QIAGEN社)を使用した。RNA精製はキットの添付文書に記載の方法にて実施した。RNA精製後、total RNA濃度はQIAxpert Instrument(QIAGEN社)で測定した。cDNAはSuperScript(登録商標) VILO
TM cDNA Synthesis Kit(#11754:Thermo Fisher Scientific)を使用して調製した。cDNAの調製はキットの添付文書に記載の方法で実施した。調製したcDNAをRNase free waterで4倍希釈し、希釈したcDNA溶液をサンプルとした。Taqman(登録商標) Universal PCR Master Mix(#4304437:Thermo Fisher Scientific)、Taqman(登録商標) Gene Expression Assays,INVENTORIED(#4331182:Thermo Fisher Scientific)、RNase free waterおよびcDNA溶液をそれぞれ10μL、1μL、4μLおよび5μlずつ混和し、測定サンプル溶液とした。Quantitative polymerase chain reaction(qPCR)はABI PRISM(登録商標) 7900HT(Thermo Fisher Scientific)を使用し、蛍光プローブ法で実施した。解析はSDS2.4(Thermo Fisher Scientific)で実施した。結果は媒体投与群のChAT mRNA発現量に対しての試験化合物投与群のChAT mRNA発現量の増加量を百分率で算出した。結果を以下の表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
ラットCerebrospinal fluid(CSF)におけるAcetylcholine(ACh)量の測定
(1)背景
脳内とCerebrospinal fluid(CSF)中の神経伝達物質の増減は相関することが齧歯類の研究から明らかとなり、その相関はヒトにおいても同様に捉えられることが明らかとなっている(Lowe S et al. Psychopharmacology 219 (2012) 959−70.)。そこで、試験化合物による脳内のアセチルコリン量変化を検出するために、CSF中アセチルコリン量変化を評価した。
(2)化合物投与
本試験では体重約150−250gのFischer344系雄性ラット(日本チャールズリバー社)を使用した。試験化合物は1日1回、3日間、10mg/kg経口投与した。媒体は0.01規定塩酸水溶液を使用した。
(3)サンプリング
媒体および試験化合物の最終投与24時間後に、ペントバルビタール麻酔下で大槽からAChE阻害剤入りのチューブにCSFを採取した。採取したCSFを3500xg、4℃で10分間遠心し、上清を回収した。回収した上清を液体窒素で凍結後、−80℃にて保管した。
(4)LCMSを用いたACh測定
内標準物質としてCSF 10μLに最終濃度0.34nmol/L acetylcholine−d9 chloride(ACh−d9)を50μL加えた。ピペッティングにて混和後、1200xg、4℃で10分間遠心した。上清を回収し,LC/MS法(NexeraX2(MS)、TSQ Altis(HPLC))により、AChはprecursor ion m/z 146.050、product ion m/z 87.071を(内標のACh−d9はprecursor ion m/z 155.088、product ion m/z 87.000)を検出した。結果は、媒体投与群のCSF中ACh濃度に対しての試験化合物投与群のCSF中ACh濃度増加を百分率(% of control)で算出した。結果を表3に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
Human tau P301Sトランスジェニックマウスにおける評価
(1)化合物投与
本試験では4ヶ月齢から7ヶ月齢までの約3ヶ月間、Human tau P301S transgenicマウスに1日1回,試験化合物を経口投与した。媒体は0.01規定塩酸水溶液を使用した。
(2)サンプリング
投与開始日に投与開始時群(4ヶ月齢)、最終投与翌日に媒体投与群及び試験化合物投与群にペントバルビタール(50mg/kg,ip)で麻酔後,PBSで経心的に灌流した。灌流後,内側中隔野を含む前脳を採取し,4%パラホルムアルデヒドで固定した。
(3)脳冠状凍結切片作製
採取した内側中隔野を含む前脳を4%パラホルムアルデヒドで一晩浸漬、振とうした後、7.5%スクロース溶液に置換した。翌日に7.5%スクロース溶液に置換し一晩浸漬、振とう後、15%スクロース溶液に置換しさらに一晩浸漬、振とうした。浸漬液を30%スクロース溶液に置換し一晩浸漬、振とう後、内側中隔野を含む前脳のサンプルから滑走式ミクロトーム(Leica,SM2000R)を用いて30μmの厚さの脳冠状凍結切片を作製した。
(4)Choline acetyltransferase(ChAT)陽性細胞数の免疫組織学的定量
作製した脳冠状凍結切片を用いて,一次抗体としてChAT抗体(SantaCruz,SC−20672)を使用し,DAB染色(DAB PEROXIDASE SUBSTRATE KIT(Vector,SK−4100))を行った。オールインワン蛍光顕微鏡(キーエンス,BZ−X710)でThe mouse Brain in stereotaxic coordinates(COMPACT THIRD EDITION, Keith B.J. Franklin & Geroge Paxinos)に示される内側中隔野を含む切片画像を撮影し、BZ解析ソフト(キーエンス)によりその内側中隔野の主軸沿いに存在するChAT陽性細胞数の計測を行った。結果は投与開始時群(4ヶ月齢)のChAT陽性細胞数を100%としたときの媒体投与群と試験化合物投与群のChAT陽性細胞数を百分率で示した。結果は平均値±標準誤差で表した。投与開始時群と媒体投与群間の差(有意差あり:*)及び媒体投与群と試験化合物群の差(有意差あり:#)はそれぞれ対応のないt検定で解析した。p<0.05を統計学的有意差として判断した。統計解析はGraphPad Prism version 7.02を用いて行った。結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
ラット海馬采脳弓切断モデルを用いたコリン作動性神経細胞に対する神経細胞保護及び改善効果
(1)ラット海馬采-脳弓切断モデルの作製
本試験では体重約250−350gのSprague−Dawley系雄性ラット(日本チャールズリバー社)を使用した。ラットをミダゾラム2mg/kg皮下投与、塩酸メデトミジン0.15mg/kg皮下投与、酒石酸ブトルファノール2.5mg/kg皮下投与の三種を混合して麻酔し、脳定位固定装置(株式会社ナリシゲ)に固定した。頭蓋を露出し、Bregmaより2mm後方の正中線から右側頭蓋骨を横幅5mmにドリルで穴をあけた。4mm幅のカミソリをBregmaより深さ5.5mmに刺入し、海馬采-脳弓を切断した。止血後、頭皮を縫合し、手術後ラットをケージにもどし麻酔から回復させた。Bregmaより2mm後方の正中線から右側頭蓋骨を横幅5mmにドリルで穴をあけ、カミソリを刺入しない群を偽手術群とした。
(2)化合物投与
手術5日後から9日間(実施例1:10mg/kg)、または7日後から14日間(実施例3:3mg/kg)、1日1回、試験化合物を経口投与した。媒体は0.01規定塩酸水溶液を使用し、偽手術群も化合物同様に1日1回、媒体を経口投与した。
(3)サンプリング
ペントバルビタール麻酔下で氷冷PBSで経心的に灌流した。灌流後,内側中隔野を含む前脳を採取し,4%パラホルムアルデヒドに一晩浸漬、振とうした。翌日に7.5%スクロース溶液に置換し一晩浸漬、振とう後、15%スクロース溶液に置換しさらに一晩浸漬、振とうした。浸漬液を30%スクロース溶液に置換し一晩浸漬、振とう後、内側中隔野を含む前脳のサンプルから滑走式ミクロトーム(Leica,SM2000R)を用いて30μmの厚さの脳冠状凍結切片を作製した。
(4)Choline acetyltransferase(ChAT)陽性細胞数およびvesicular acetylcholine transporter〈VAChT〉の免疫組織学的定量
作製した脳冠状凍結切片を用いて,一次抗体としてChAT抗体(SantaCruz,SC−20672)またはVAChT抗体(Merck Millipore,ABN100)を使用し,DAB染色(DAB PEROXIDASE SUBSTRATE KIT(Vector,SK−4100))を行った。オールインワン蛍光顕微鏡(キーエンス,BZ−X710)でThe Rat Brain in stereotaxic coordinates (COMPACT THIRD EDITION, GEORGE PAXINOS & CHARLES WATSON)に示される内側中隔野または海馬を含む切片画像を撮影し、BZ解析ソフト(キーエンス)により内側中隔野のChAT陽性細胞数または海馬VAChTの光学密度(Optical density,OD)の計測を行った。結果は、偽手術群の内側中隔野ChAT陽性細胞数または海馬VAChTのODを100%としたときの媒体投与群と試験化合物投与群のChAT陽性細胞数または海馬VAChTのODを百分率で示した。結果は平均値±標準誤差で表した。媒体投与群と試験化合物群の差(有意差あり:#)はそれぞれ対応のないt検定で解析した。p<0.05を統計学的有意差として判断した。統計解析はGraphPad Prism version 7.02を用いて行った。結果を表5、表6に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】