(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557448
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】金属接着導電性樹脂フィルム及び導電性樹脂金属複合材
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20190729BHJP
B32B 15/085 20060101ALI20190729BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20190729BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20190729BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20190729BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20190729BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20190729BHJP
H01B 5/02 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
C08J5/18CES
B32B15/085 Z
B32B27/32 101
C08K3/04
C08K7/06
C08L23/26
H01B1/24 B
H01B5/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-237172(P2013-237172)
(22)【出願日】2013年11月15日
(65)【公開番号】特開2015-96578(P2015-96578A)
(43)【公開日】2015年5月21日
【審査請求日】2016年11月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079050
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 憲秋
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】今泉 卓三
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直美
(72)【発明者】
【氏名】芝 尚紀
【審査官】
赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−111068(JP,A)
【文献】
特開2013−216786(JP,A)
【文献】
特開2007−018852(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/088540(WO,A1)
【文献】
特開2009−176721(JP,A)
【文献】
特開2013−091783(JP,A)
【文献】
特開2005−263607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00− 5/24
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
B32B 1/00− 43/00
H01M 8/00− 8/24
H01B 1/00− 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材表面に熱融着され接着される、基材樹脂と導電性炭素材料とが混練圧延されてなる導電性樹脂フィルムであって、
前記基材樹脂は、熱可塑性を備える酸変性ポリオレフィン樹脂を主体とし前記樹脂フィルムの全体重量に対して20ないし30重量%の重量配合を有するとともに、
前記導電性炭素材料は、前記樹脂フィルムの全体重量に対して70ないし80重量%の重量配合を有し、かつ、少なくとも、前記樹脂フィルムの全体重量に対して30ないし60重量%の重量配合を有する粒状黒鉛、及び前記樹脂フィルムの全体重量に対して15ないし30重量%の重量配合を有するカーボンナノチューブとを含む
ことを特徴とする金属接着導電性樹脂フィルム。
【請求項2】
前記導電性炭素材料が、さらに前記樹脂フィルムの全体重量に対して5ないし30重量%の重量配合を有する炭素繊維を含む請求項1に記載の金属接着導電性樹脂フィルム。
【請求項3】
前記導電性樹脂フィルムの厚さが100μm以下である請求項1または2に記載の金属接着導電性樹脂フィルム。
【請求項4】
前記導電性樹脂フィルムの一面側に他の樹脂部材が接着される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の金属接着導電性樹脂フィルム。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の金属接着導電性樹脂フィルムが金属部材表面に接着されてなることを特徴とする導電性樹脂金属複合材。
【請求項6】
請求項4に記載の金属接着導電性樹脂フィルムにおける前記他の樹脂部材が接着されていない面側が金属部材表面に接着されてなることを特徴とする導電性樹脂金属複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属接着導電性樹脂フィルム及び導電性樹脂金属複合材に関し、特に、良好な導電性と金属部材との良好な接着性を備える樹脂フィルムとこれを用いた導電性樹脂金属複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
従前、樹脂材料は絶縁体であることから、金属の絶縁用途に用いられてきた。その一方、樹脂材料は成形性、耐食性を備える。さらには軽量かつ加工しやすく、他の樹脂材料とも融合しやすいとの利点から、極めて広汎な用途に利用されている。例えば、燃料電池等においては内部にセパレータ等の部品に金属部材が用いられるとともに、当該金属部材の耐性を高めるため、樹脂部材も配される。しかし、樹脂材料単体では導電性が極めて低いことが問題視されていた。
【0003】
この問題に対処するため、予め樹脂に炭素素材を混練して導電性を高めた導電フィルムが提案されている(特許文献1,2,3等参照)。これらの特許文献に開示のフィルムは、金属板に貼り付けられる。すると、当該フィルムが備える導電性により金属部材のみならずフィルムの側においても導電性が発揮され、燃料電池の効率向上が期待されている。
【0004】
しかしながら、依然として既存の導電性樹脂フィルムの導電性は乏しい。つまり、抵抗値は高い。このため、実用化段階の燃料電池用途を想定した場合、性能面では十分とはいえない。今後のさらなる発電効率向上を目標とするに際し、克服すべき障害の一つとなっていた。
【0005】
加えて、導電性樹脂フィルム自体の金属板等への接着性能も重要である。いったん接着した後、安易に剥離しない性質も求められる。不用意な剥離は金属部材の腐食等の原因となるおそれがある。このような導電性や強接着の性質は、燃料電池用途に限られず、リチウム等の陽イオン電池をはじめとする各種の高性能な電池、その他の高度な電気機器用の材料としても求められる。
【0006】
上述の経緯から、導電性樹脂フィルムにおいてこれまで以上の導電性の確保が要求されている。そして、金属部材との強固な接着性能も要求されている。ところが、樹脂フィルムにおける導電性を高めようとすると金属部材との接着力は低下する。逆に、金属部材との接着性を優先すると、目的である導電性が悪化する。このような相互矛盾から、好適な性質を備えた導電性樹脂フィルムは開発途上である。そこで、互いに反する性質の両立を図り、さらに単独で要求を充足する導電性樹脂フィルムが切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開番号 WO 2005/027248
【特許文献2】特開2008−207404号公報
【特許文献3】特開2013−93334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、単独の樹脂フィルムにおいて導電性の向上と金属部材との接着力の強化の互いに反する性質の両立を図り、かついずれの性質も既存の樹脂フィルムよりも改善した金属接着導電性樹脂フィルム、及び当該フィルムを用いた導電性樹脂金属複合材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、金属部材表面に
熱融着され接着される
、基材樹脂と導電性炭素材料とが混練圧延されてなる導電性樹脂フィルムであって
、前記基材樹脂は、熱可塑性を備える酸変性ポリオレフィン樹脂を主体とし前記樹脂フィルムの全体重量に対して20
ないし30重量%の重量配合を有
するとともに、前記導電性炭素材料は、前記樹脂フィルムの全体重量に対して70ないし80重量%の重量配合を有し、かつ、少なくとも、前記樹脂フィルムの全体重量に対して30ないし60重量%の重量配合を有する粒状黒鉛、及び前記樹脂フィルムの全体重量に対して15ないし30重量%の重量配合を有するカーボンナノチューブと
を含むことを特徴とする金属接着導電性樹脂フィルムに係る。
【0010】
請求項
2の発明は、前記導電性炭素材料が、さらに
前記樹脂フィルムの全体重量に対して5ないし30重量%の重量配合を有する炭素繊維を含む請求項1
に記載の金属接着導電性樹脂フィルムに係る。
【0011】
請求項
3の発明は、前記導電性樹脂フィルムの厚さが100μm以下である請求項1
または2に記載の金属接着導電性樹脂フィルムに係る。
【0012】
請求項
4の発明は、前記導電性樹脂フィルムの一面側に他の樹脂部材が接着される請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の金属接着導電性樹脂フィルムに係る。
【0013】
請求項
5の発明は、請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の金属接着導電性樹脂フィルムが金属部材表面に接着されてなることを特徴とする導電性樹脂金属複合材に係る。
【0014】
請求項
6の発明は、請求項
4に記載の金属接着導電性樹脂フィルムにおける前記他の樹脂部材が接着されていない面側が金属部材表面に接着されてなることを特徴とする導電性樹脂金属複合材に係る。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明に係る金属接着導電性樹脂フィルムによると、金属部材表面に
熱融着され接着される
、基材樹脂と導電性炭素材料とが混練圧延されてなる導電性樹脂フィルムであって
、前記基材樹脂は、熱可塑性を備える酸変性ポリオレフィン樹脂を主体とし前記樹脂フィルムの全体重量に対して20
ないし30重量%の重量配合を有
するとともに、 前記導電性炭素材料は、前記樹脂フィルムの全体重量に対して70ないし80重量%の重量配合を有し、かつ、少なくとも、前記樹脂フィルムの全体重量に対して30ないし60重量%の重量配合を有する粒状黒鉛、及び前記樹脂フィルムの全体重量に対して15ないし30重量%の重量配合を有するカーボンナノチューブと
を含むことを特徴とするため、酸変性ポリオレフィン樹脂と導電性炭素材料との混練圧延加工を好適に行うことができ、単独の樹脂フィルムにおいて導電性の向上と金属部材との接着力の強化の互いに反する性質の両立を図り、かついずれの性質も既存の樹脂フィルムよりも改善することができる。
【0016】
請求項
2の発明に係る金属接着導電性樹脂フィルムによると、請求項1
において、前記導電性炭素材料が、さらに
前記樹脂フィルムの全体重量に対して5ないし30重量%の重量配合を有する炭素繊維を含むため、導電性は向上し構造強度が高められる。
【0017】
請求項
3の発明に係る金属接着導電性樹脂フィルムによると、請求項1
または2において、前記導電性樹脂フィルムの厚さが100μm以下であるため、良好な導電性を確保することができる。
【0018】
請求項
4の発明に係る金属接着導電性樹脂フィルムによると、請求項1ないし
3のいずれかにおいて、前記導電性樹脂フィルムの一面側に他の樹脂部材が接着されるため、酸変性ポリオレフィン樹脂以外の樹脂を使用することができる。
【0019】
請求項
5の発明に係る導電性樹脂金属複合材によると、請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の金属接着導電性樹脂フィルムが金属部材表面に接着されてなるため、金属部材とこれに接着する導電性樹脂の一体化した複合体を簡便に製造できる。
【0020】
請求項
6の発明に係る導電性樹脂金属複合材によると、請求項
4に記載の金属接着導電性樹脂フィルムにおける前記他の樹脂部材が接着されていない面側が金属部材表面に接着されてなるため、金属部材とこれに接着する導電性樹脂の一体化した複合体を簡便に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の金属接着導電性フィルムは、適宜の金属部材表面に熱融着され接着される樹脂フィルムであり、導電性のある樹脂と金属の複合体を形成する際に役立つ。この用途としては、主に燃料電池のセパレータが有望視される。むろん、導電性樹脂の特性を活かし得る限り用途は広範囲である。本発明の金属接着導電性フィルムの主要部分は導電性樹脂フィルムである。
【0022】
第1実施形態の金属接着導電性フィルム(A)の本体となる導電性樹脂フィルムは、酸変性ポリオレフィン樹脂を主体とする基材樹脂により形成される。そして、当該基材樹脂の内部に導電性炭素材料が所定量配合される。基材樹脂の内部に導電性炭素材料として粒状黒鉛及びカーボンナノチューブが散在している。
【0023】
基材樹脂の酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂が好適に用いられ、このような不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられ、これらのエステルや無水物も用いることができ、さらに該誘導体としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ナトリウム、等を挙げることができる。
【0024】
また、使用可能なポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、及びこれらの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。このときの、ポリオレフィン系樹脂に含有される不飽和カルボン酸またはその誘導体の量は、0.001〜3重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.03〜0.5重量%である。該変性物中の変性量が少ないと、層間接着性の向上効果に乏しく、逆に多いと架橋反応を起こし、成形性が悪くなることがあり好ましくない。また、これらの接着性樹脂にはポリイソブチレン、エチレン−プロピレンゴム等のゴム・エラストマー成分や、接着性樹脂の母体のポリオレフィン系樹脂と異なるポリオレフィン系樹脂をブレンドすることにより、接着性が向上することがあり有用である。
【0025】
そして、酸変性ポリオレフィン樹脂には、熱可塑性が求められる。熱可塑性は加熱により溶融し流動性が高まり、導電性炭素材料との混練や圧延等の加工に好適なためである。
【0026】
酸変性ポリオレフィン樹脂単独では導電性を有さない。この場合、金属の微粉末を導電材料として添加することも可能である。しかし、一般的な金属では腐食性の問題がある。金やプラチナ等の金属は耐食性を有するものの製造原価が高騰する。このことから、導電性フィルムに金属微粉末を採用することは極めて困難である。そこで、良好な導電材料であるとともに耐食性に優れた導電性炭素材料が使用される。
【0027】
導電性炭素材料を構成する成分の一つである粒状黒鉛は、ほぼ球状の黒鉛(Spherical graphite)であり、その直径(粒径)は5μm以上、好ましくは10ないし30μmである。導電性樹脂フィルムの全体重量に占める粒状黒鉛は、重量割合は30ないし60重量%である。従って、粒状黒鉛同士は導電性樹脂フィルム内において近接ないし接触する配置となり、導電性樹脂フィルム全体の導電性は向上する。
【0028】
また、導電性炭素材料を構成する成分の二つ目であるカーボンナノチューブ(Carbon nanotube)は、直径10nm以上ないし150nm前後以下の炭素原子のみからなる炭素化合物である。導電性樹脂フィルムの全体重量に占めるカーボンナノチューブは、重量割合は15ないし30重量%である。カーボンナノチューブが基材樹脂中に含まれることにより、基材樹脂中の粒状黒鉛同士の間に、導電体の橋渡しが行われる。このため、さらに導電性が高まる。
【0029】
導電性樹脂フィルムを製造するに際し、基材樹脂である酸変性ポリオレフィン樹脂は加熱溶融され、ここに所定量の粒状黒鉛とカーボンナノチューブが投入され、十分に混練されて均質に樹脂中に分散される。混練では、加熱溶融可能なブレンダーやニーダー等の公知の混練装置が用いられる。その後、導電性炭素材料を含有する基材樹脂の混練物は圧延ローラ等に通されて所定の厚さになるまで圧延される。こうして、導電性樹脂フィルムはできあがる。
【0030】
導電性樹脂フィルムの厚さは圧延段階で調整される。どの厚さを採用するかについては、専ら導電性樹脂フィルムの用途等に依存する。ただし、厚くし過ぎると、導電性が悪化する。その一方、薄くし過ぎると金属表面の保護性能が低下する。そこで、導電性樹脂フィルムの厚さは100μm以下、より好ましくは20ないし50μm程度とされる。
【0031】
第2実施形態の金属接着導電性フィルム(B)の本体となる導電性樹脂フィルムも、酸変性ポリオレフィン樹脂を主体とする基材樹脂により形成される。そして、当該基材樹脂の内部に導電性炭素材料が所定量配合される。基材樹脂の内部に導電性炭素材料として粒状黒鉛及びカーボンナノチューブが散在している。さらに、導電性炭素材料として炭素繊維も加えられる。導電性樹脂フィルムの特徴は、導電性炭素材料として形態の異なる3種類の炭素材料を一括して含有することである。
【0032】
導電性炭素材料を構成する成分の三つ目である炭素繊維(Carbon fiber)は、樹脂繊維を炭化して得た繊維状物であり直径5μm以上ないし30μm前後以下である。導電性樹脂フィルムの全体重量に占める炭素繊維は、重量割合は5ないし30重量%である。
【0033】
基材樹脂の内部に、導電性炭素材料として粒状黒鉛及びカーボンナノチューブに加えて、さらに炭素繊維も加わることによって、さらに導電性は向上する。また、炭素繊維が導電性樹脂フィルム内に分散していることにより、当該フィルム内に複雑な網状構造が生じる。このことから、基材樹脂の構造強度が高められ、導電性樹脂フィルムの剛性が高まる。
【0034】
導電性樹脂フィルムの製造に際しても、前述の導電性樹脂フィルムと同様に、導電性炭素材料である粒状黒鉛、カーボンナノチューブ、及び炭素繊維は所定量ずつ計量され、加熱溶融可能なブレンダーやニーダー等による混練される。その後、導電性炭素材料を含有する基材樹脂の混練物は圧延ローラ等に通されて所定の厚さになるまで圧延される。
【0035】
第3実施形態の金属接着導電性フィルムにあっては、前述の導電性樹脂フィルムの一面側に他の樹脂部材(C)が熱融着により接着されて形成される。組み合わせとしては、「金属接着導電性フィルム(A)|樹脂部材(C)」…{P}、「金属接着導電性フィルム(B)|樹脂部材(C)」…{Q}となる。樹脂部材には、金属接着導電性フィルムの用途に応じ適宜の樹脂が用いられる。そのため、樹脂部材を導電性樹脂としても良く、あるいは不導体とすることもできる。樹脂部材は直接金属部材表面との接着を想定しない。そのため、必ずしも前述の酸変性ポリオレフィン樹脂に限定されない。従って、安価なポリエチレンやポリプロピレンを採用することができる。選択に際し、酸変性ポリオレフィン樹脂との相溶性等の性質が考慮される。
【0036】
別途接着される樹脂部材の導電性を高めるため、その樹脂の内部に粒状黒鉛及びカーボンナノチューブが配合される。これらの導電性炭素材料は共通であるため、説明を省略する。さらにここに炭素繊維を加えることもできる。樹脂に含有される各導電性炭素材料の重量割合は、強度、用途等に依存する。概ね樹脂の混練、圧延の加工の便宜から、前述の導電性樹脂フィルムと同程度の配合である。
【0037】
一連の金属接着導電性フィルムについては対象とする金属部材(D)の表面に接着され、導電性樹脂金属複合材が形成される。具体的な組み合わせは、「金属部材(D)|金属接着導電性フィルム(A)」…{X}、「金属部材(D)|金属接着導電性フィルム(B)」…{Y}となる。
【0038】
さらに、金属接着導電性フィルムのおける他の樹脂部材が接着されていない面側が金属部材表面に接着される。具体的な組み合わせは、「金属部材(D)|金属接着導電性フィルム(A)|樹脂部材(C)」…{Z}、「金属部材(D)|金属接着導電性フィルム(B)|樹脂部材(C)」…{W}となる。
【0039】
いずれも樹脂部材表面との接着は熱融着であるため強固に金属と貼り付く。酸変性樹脂の極性基と金属原子とのイオン結合による影響から、接着は強固となる。例えば、金属部材と金属接着導電性フィルムが加熱盤や加熱ローラの間に搬入され、熱融着が行われる。このため、金属部材とこれに接着する導電性樹脂の一体化物を簡便に製造可能となる。特に、金属接着導電性フィルムの一面側は樹脂の面となるため、適宜の加工も容易である。
【実施例】
【0040】
発明者は、下記の原料を用い後出の表1ないし3に開示の配合に基づき試作例1ないし13の金属接着導電性フィルムを作成した。そして、各試作例のフィルムについて、表中の表記に従い、厚さ(μm)、貫通抵抗(mΩ・cm
2)、体積抵抗(Ω・cm)、及び接着性(%)を測定した。
【0041】
[使用原料]
酸変性ポリオレフィン樹脂として下記を使用した。
無水マレイン酸変性低密度ポリエチレン(三菱化学株式会社製,モディックM504,融点121℃)(表中、変性LLとする。)
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三菱化学株式会社製,モディックP555,融点168℃)(表中、変性PPとする。)
他の使用樹脂として下記を使用した。
低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製,ユメリット4540F,融点134℃)(表中、LLとする。)
ホモポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製,ノバテックFL100A,融点161℃)(表中、PPとする。)
各基材樹脂とも、樹脂のペレットを凍結粉砕して粉末にして用いた。
【0042】
導電性炭素材料に下記を用いた。
カーボンナノチューブ:昭和電工株式会社製,VGCF−X(繊維径:10〜15nm)(表中、CNTとする。)
粒状黒鉛:日本カーボン株式会社製,ニカビーズP25B−ZG(平均粒子径:25μm,真密度:2.17g/cm
3)(表中、SGとする。)
炭素繊維:三菱樹脂株式会社製,ダイアリードK223HE(繊維径:11μm,真密度:2.0g/cm
3)(表中、CFとする。)
【0043】
表中の配合割合(wt%)の表記は「基材樹脂/CNT/SC/CF」の順でそれぞれの重量%(合計100wt%)を示す。空欄は無配合である。「炭素材重量比」は基材樹脂の重量を「100」としたときの合計の導電性炭素材料の重量である。「樹脂比率」は金属接着導電性フィルムの全体積に占める樹脂成分の体積割合(vol%)である。
【0044】
[試作例1ないし11の作成]
表中に記載の樹脂(変性LL、変性PP、LL)及び各種導電性炭素材料を同表に記載の配合割合で計量し、樹脂を溶融しながら混練し樹脂混練物とした。各試作例の樹脂混練物について、線圧約2t/cmとし、使用樹脂の融点より1℃ないし5℃低い温度に加熱したカレンダーロール機に通して100μm以下に圧延してフィルム状に成形した。
【0045】
できあがった導電性樹脂フィルムを鏡面仕上げのステンレス板に載せ、上下から加熱プレスして接着した。このときのプレス温度は、使用樹脂の融点より20℃ないし50℃高温に設定した。プレスの圧力は30MPaとした。
【0046】
[試作例12,13の作成]
導電性樹脂フィルムに接着する他の樹脂部材として、表3の配合に基づき別途フィルム状物を作成した。これらの作成手法は前述の試作例1ないし11と同様である。できあがった試作例12,13の他の樹脂部材(導電性のフィルム状物)を試作例2の導電性樹脂フィルム上に載置するとともに、試作例2の導電性樹脂フィルム側を鏡面仕上げのステンレス板に載せ、上下から加熱プレスして接着した。プレスの温度、圧力は同様とした。
【0047】
[厚さの測定]
シチズン時計株式会社製:MEI−10 JIS式紙厚測定機により、各試作例のフィルムを10枚重ねて厚さを測定し、1枚当たりの厚さ(μm)を算出した。
【0048】
[体積抵抗率の測定]
JIS K 7194(1994){導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法}に準拠し、株式会社三菱化学アナリテック製,低抵抗率計 ロレスタGP MCP−T610型,PSPプローブを用いて抵抗率(Ω・cm)を測定した。
[貫通抵抗の測定]
株式会社三菱化学アナリテック製,低抵抗率計 ロレスタGP MCP−T610型を使用し、測定対象の試作例のフィルムを厚さ方向から、直径30mmの金めっき板により挟み、1MPaで加圧し、フィルムの厚さ方向の抵抗(mΩ・cm
2)を測定した。
【0049】
[接着性の評価]
各試作例のフィルムが接着したステンレス板を蒸留水中に入れた。これを100℃に設定したオーブン内に搬入し24時間加熱した。加熱後ここから取り出し、ステンレス板上に貼り付いたフィルムの表面に対し、セロハンテープを貼り付けた。そして、セロハンテープを剥離した。当該セロハンテープ剥離後のステンレス板に残存する導電性樹脂フィルムの面積を計測し、当初からの剥離の程度をパーセントで示した。無剥離ならば100%残存である。半分の面積の剥離ならば50%である。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
[表1,2の結果と考察]
試作例1は導電性炭素材料を多くした影響から相対的に基材樹脂が減少した。そのため、抵抗値は低いものの接着性の低下が顕著である。試作例10,11については逆に導電性炭素材料の配合を少なくしたため導電性は低下した。試作例9によると酸変性ポリオレフィン樹脂以外の使用であり接着性が皆無である。この結果から、金属部材との直接接着を目的とする限り酸変性ポリオレフィン樹脂の使用が必須で
、基材樹脂は、酸変性ポリオレフィン樹脂を主体とし前記樹脂フィルムの全体重量に対して20ないし30重量%の重量配合を有することが必要である。試作例2ないし8については、導電性炭素材料と基材樹脂の量的均衡も良好であり導電性、接着性のいずれの指標も極めて良好である。導電性炭素材料については、
前記樹脂フィルムの全体重量に対して70ないし80重量%の重量配合を有し、かつ、少なくとも、前記樹脂フィルムの全体重量に対して30ないし60重量%の重量配合を有する粒状黒鉛(SG)と
、前記樹脂フィルムの全体重量に対して15ないし30重量%の重量配合を有するカーボンナノチューブ(CNT)の両方が必須である。そして、
前記樹脂フィルムの全体重量に対して5ないし30重量%の重量配合を有する炭素繊維(CF)が加わることで、より性能改善が進むことも明らかにした。
【0054】
[表3の結果と考察]
試作例12,13における他の樹脂部材は、いわば前出の試作例9等の単なる導電性樹脂に相当する。しかし、試作例2の金属接着導電性フィルムを介在することにより金属部材とも良好に接着することができた。特に、試作例12は他の試作例と遜色ない貫通抵抗となった。試作例13の貫通抵抗は厚さのためと考える。加えて、樹脂同士の相溶性の点から良好な接着性も確保された。従って、金属接着導電性フィルムは、導電性樹脂フィルムの単独、導電性樹脂フィルムと他の樹脂部材との積層とすることができ、極めて自由度が高い。
【0055】
[金属部材の種類変更の評価]
次に、金属接着導電性フィルムの接着対象となる金属部材を変更し、貫通抵抗を測定し、接着性も評価した。金属部材として、金めっきしたステンレス板(試作例14)、銅板(試作例15)、アルミニウム板(試作例16)、ダイヤモンドライクカーボンによりコーティングした鉄板(試作例17)を用いた。評価に際し、試作例2の金属接着導電性フィルムを用いた。接着手法は前述と同様とした。表4のとおりである。
【0056】
【表4】
【0057】
[金属部材の種類変更の結果]
いずれにおいても接着性は良好である。なお、試作例17の表面は金属ではないため、無剥離とはならなかった。試作例ごとの貫通抵抗の相違は金属部材自体の抵抗の影響と考える。この結果から、金属接着導電性フィルムは種々の金属部材を接着対象とすることができる。さらに、導電性樹脂金属複合材として広汎な用途に対応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の金属接着導電性フィルム及び導電性樹脂金属複合材は良好な導電性と金属接着性を兼備しており、金属を被覆するとともに導電性が求められる用途に好適である。例えば、燃料電池等のセパレータ用途に有望である。むろん、これ以外にも、本発明の特性を必要とする種々の用途にも使用することができる。