【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。以下に挙げる例は単に例示のために記すものであり、発明の範囲がこれによって制限されるものではない。
【0033】
[製造実施例1]
不活性ガス雰囲気中で、1.67mol/LのNaOH水溶液3.85Lに、Fe
2+1.50mol/Lを含む硫酸第一鉄水溶液2.15Lを加え、水酸化第一鉄の生成を行った。(水酸化ナトリウムの使用量はFe
2+に対し、1.04当量に該当する。)次いで、水酸化第一鉄を含む水溶液に、Fe
2+に対しFe
3+として1.7重量%の硫酸第二鉄水溶液を添加して、黒酸化鉄の結晶核を生成させた。次に、黒酸化鉄の核を含む水酸化第一鉄スラリーに、NaOH水溶液を添加して、pHを12.3に調整した。この核を含む水酸化第一鉄スラリーを温度90℃において、機械撹拌を行いながら、毎分2Lの空気を120分通気して、黒酸化鉄粒子を成長させた。次いで生成した黒酸化鉄に対しAl
2O
3として1.5重量%のアルミン酸ナトリウムを撹拌しながらゆっくりと添加し、1時間撹拌を行った後、希硫酸を添加しpHを8.0に調整した。これをろ別、洗浄した後、100℃にて乾燥してサンプルAを得た。サンプルAの電子顕微鏡写真を
図1に示す。
図1から明らかなように、得られたサンプルAの粒子形状は八面体であった。BET法により測定したサンプルAの比表面積は、13.3m
2/gであった。また、サンプルAは淡色のL*値が27.4、淡色のb*値が−1.1であった。
【0034】
[製造実施例2]
不活性ガス雰囲気中で、1.67mol/LのNaOH水溶液3.85Lに、Fe
2+1.50mol/Lを含む硫酸第一鉄水溶液2.15Lを加え、水酸化第一鉄の生成を行った。(水酸化ナトリウムの使用量はFe
2+に対し、1.04当量に該当する。)次いで、水酸化第一鉄を含む水溶液に、Fe
2+に対しFe
3+として4.2重量%の硫酸第二鉄水溶液を添加して、黒酸化鉄の核を生成させた。次に、黒酸化鉄の核を含む水酸化第一鉄スラリーに、NaOH水溶液を添加して、pHを12.5に調整した。この核を含む水酸化第一鉄スラリーを温度85℃において、機械撹拌を行いながら、毎分2Lの空気を120分通気して、黒酸化鉄粒子を成長させた。次いで生成した黒酸化鉄に対しAl
2O
3として3.0重量%のアルミン酸ナトリウムを撹拌しながらゆっくりと添加し、1時間撹拌を行った後、希硫酸を添加しpHを8.0に調整した。これをろ別、洗浄した後、100℃にて乾燥してサンプルBを得た。サンプルBの粒子形状は八面体であり、比表面積は18.8m
2/gであった。また、サンプルBは淡色のL*値が27.7、淡色のb*値が1.1であった。
【0035】
[製造実施例3]
不活性ガス雰囲気中で、1.67mol/LのNaOH水溶液3.85Lに、Fe
2+1.50mol/Lを含む塩化第一鉄水溶液2.15Lを加え、水酸化第一鉄の生成を行った。(水酸化ナトリウムの使用量はFe
2+に対し、1.04当量に該当する。)次いで、水酸化第一鉄を含む水溶液に、Fe
2+に対しFe
3+として0.9重量%の塩化第二鉄水溶液を添加して、黒酸化鉄の核を生成させた。次に、黒酸化鉄の核を含む水酸化第一鉄スラリーにNaOH水溶液を添加して、pHを12.1に調整した。この核を含む水酸化第一鉄スラリーを温度95℃において、機械撹拌を行いながら、毎分2Lの空気を120分通気して、黒酸化鉄粒子を成長させた。次いで生成した黒酸化鉄に対しAl
2O
3として1.5重量%のアルミン酸ナトリウムを撹拌しながらゆっくりと添加し、1時間撹拌を行った後、希塩酸を添加しpHを8.0に調整した。これをろ別、洗浄した後、100℃にて乾燥してサンプルCを得た。サンプルCの粒子形状は八面体であり、比表面積は8.6m
2/gであった。また、サンプルCは淡色のL*値が28.8、淡色のb*値が−2.9であった。
【0036】
[製造実施例4]
不活性ガス雰囲気中で、1.67mol/LのNaOH水溶液3.85Lに、Fe
2+1.50mol/Lを含む硫酸第一鉄水溶液2.15Lを加え、水酸化第一鉄の生成を行った。(水酸化ナトリウムの使用量はFe
2+に対し、1.04当量に該当する。)次いで、水酸化第一鉄を含む水溶液に、Fe
2+に対しFe
3+として1.7重量%の硫酸第二鉄水溶液を添加して、黒酸化鉄の核を生成させた。次いで、黒酸化鉄の核を含む水酸化第一鉄スラリーにNaOH水溶液を添加して、pHを12.7に調整した。この核を含む水酸化第一鉄スラリーを温度80℃において、機械撹拌を行いながら、毎分2Lの空気を120分通気して、黒酸化鉄粒子を成長させた。次いで生成した黒酸化鉄に対しSiO
2として3.0重量%のケイ酸ナトリウムを撹拌しながらゆっくりと添加し、1時間撹拌を行った後、希塩酸を添加しpHを5.0に調整した。これをろ別、洗浄した後、100℃にて乾燥してサンプルDを得た。サンプルDの粒子形状は八面体であり、比表面積は13.0m
2/gであった。また、サンプルDは淡色のL*値が27.5、淡色のb*値が−1.0であった。
【0037】
[製造比較例1]
核生成後の調整pHを8.8とした以外は、製造実施例1と同様にしてサンプルEを得た。サンプルEの電子顕微鏡写真を
図2に示す。
図2より明らかなように、粒子形状は球状であった。サンプルEの比表面積は12.0m
2/gであった。また、サンプルEは淡色のL*値が31.5、淡色のb*値が−1.6であった。
【0038】
[製造比較例2]
硫酸第二鉄水溶液の添加量をFe
2+に対しFe
3+として0.7重量%とした以外は、製造実施例1と同様にしてサンプルFを得た。サンプルFの粒子形状は八面体であり、比表面積は7.5m
2/gであった。また、サンプルFは淡色のL*値が31.7、淡色のb*値が−3.4であった。
【0039】
[製造比較例3]
硫酸第二鉄水溶液の添加量をFe
2+に対しFe
3+として7.0重量%とした以外は、製造実施例1と同様にしてサンプルGを得た。サンプルGの粒子形状は八面体であり、比表面積は22.0m
2/gであった。また、サンプルGは淡色のL*値が27.5であり、淡色のb*値が2.4であった。
【0040】
[製造比較例4]
黒酸化鉄生成後の表面処理(アルミン酸ナトリウムの添加)を行わない以外は、製造実施例1と同様にしてサンプルHを得た。サンプルHの粒子形状は八面体であり、比表面積は13.1m
2/gであった。また、サンプルHは淡色のL*値が28.9、淡色のb*値が1.7であった。
【0041】
[実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例5:プレスタイプアイシャドー]
製造実施例1〜4で得られたサンプルA〜Dおよび製造比較例1〜5で得られたサンプルE〜H、さらに代表的な黒酸化鉄として
図3の写真に示したチタン工業製 BL−100P(粒子形状:角無立方体、比表面積:6.6m
2/g、淡色のL*値:39.0、淡色のb*値:−4.2)20.0重量%、セリサイト 35.0重量%、タルク 14.9重量%、雲母チタン(BASF製:Flamenco Super Pearl 120C)20.0重量%およびメチルパラベン 0.1重量%を混合粉砕し、混合した。ついで、別の容器にて混合していたジメチコン1000cs 7.0重量%とリンゴ酸ジイソステアリル 3.0重量%を加えて、均一になるよう撹拌混合した。この混合物をイソプロピルアルコールに適度な粘性になるよう分散させ、これをスラリー充填機にて直径57mm、深さ4mmの金皿に圧縮充填した。40℃で12時間乾燥し、目的のプレスタイプアイシャドーを得た。
[高着色力黒酸化鉄を用いた評価項目および評価方法]
(官能試験)
得られたプレスタイプアイシャドーについて、カバー力、黒色度、つや等の官能試験を行った。
【0042】
(評価および評価基準)
実施例1〜4および比較例1〜5で作製したプレスタイプアイシャドーをパネラー10人に使用させ、表1の官能試験項目について5段階に分けて官能評価し、その平均点より判定した。
(評価基準)
非常に良好:5点 良好:4点 普通:3点 やや不良:2点 不良:1点
(判定基準)
4.0〜5.0点:◎ 3.0〜4.0点未満:○ 2.0〜3.0点未満:△
1.0〜2.0点未満:×
その結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
官能試験の結果、本発明の実施例1〜5により得られたプレスタイプアイシャドーはいずれも比較例1〜4や従来の黒酸化鉄を配合した比較例5に比べ、カバー力や黒色度に優れ、つやのある仕上がりであった。このように、八面体形状を呈しており、かつ比表面積が8.0〜20.0m
2/gの範囲にあり、粒子表面が無機化合物の一種または二種以上を含む層で被覆され、L*値が31.0以下であり、かつb*値が1.5以下であることを特徴とする高着色力黒酸化鉄を化粧料に配合することにより、カバー力や黒色度に優れ、つやのある仕上がり演出する化粧料を提供できた。
【0045】
[実施例5:水性アイライナー]
【表2】
(製造方法)
A:成分1〜3を秤量し、ビーズミルにて黒酸化鉄を微細に分散させた。
B:別の容器に成分4〜7を秤量し、70℃でAを加えて均一に分散した後、室温まで冷却し、成分8を加え、水性アイライナーを得た。
得られた水性アイライナーは、黒色度が高く隠蔽性が高いものであった。
【0046】
[実施例6:乳化マスカラ]
【表3】
(製造方法)
A:成分8〜10をヘンシェルミキサーにて撹拌混合した。
B:成分1〜7にAを加え、撹拌機にて均一に分散した。
C:Bに加熱溶解させた成分11〜16を加え乳化させた後、40℃まで冷却し、成分17を加え、室温まで冷却し、乳化マスカラを得た。
得られた乳化マスカラは、若干赤みがあるが黒色度、隠蔽性に優れた乳化マスカラであった。
【0047】
[実施例7:アイブロウペンシル]
【表4】
(製造方法)
A:成分1〜4を混合粉砕した。
B:成分5〜13を加熱溶解し、これにAを加えて3本ロールミルにて均一練り合わせた。
C:芯に成型し、木にはさんで鉛筆状にし、アイブロウペンシルを得た。
得られたアイブロウペンシルは、黒色度が高いばかりか配合量が低減できるため、滑らかな使用感となった。
【0048】
[実施例8:ほほ紅]
【表5】
(製造方法)
A:成分1〜7をヘンシェルミキサーで混合した。
B:成分8〜11を加熱溶解させ、これをAに混合した後、アトマイザーにて粉砕した。
C:これをアルミ皿にプレス成型し、目的のほほ紅を得た。
得られたほほ紅は、使用性に優れたほほ紅であった。
【0049】
[実施例9:ネイルエナメル]
【表6】
(製造方法)
A:成分2、3の各半量を採取し、成分7〜8を混合し、よく練り合わせた。
B:Aに成分2、3の残部と成分1、4〜6および9を添加し、均一になるまで混合し、ネイルエナメルを得た。
得られたネイルエナメルは、黒色度および隠蔽性に優れたネイルエナメルであった。
【0050】
[実施例10:O/W乳化ファンデーション]
【表7】
(製造方法)
A:成分7〜11を混合粉砕した。
B:85℃にて加熱溶解した成分1〜6にAを加え均一に分散した。
C:成分12〜16を85℃にて加熱溶解し、Bにこれを徐々に添加して乳化を行い、室温まで撹拌冷却後、適当な容器に充填し、O/W乳化ファンデーションを得た。
得られたO/W乳化ファンデーションは、伸びが良く、さらっとした使用感でありながら、カバー力に優れたO/W乳化ファンデーションであった。
【0051】
[実施例11:2WAYケーキファンデーション]
【表8】
(製造方法)
A:成分1〜8をヘンシェルミキサーで混合した。
B:成分9〜13を加熱溶解させ、これをAに混合した。
C:Bをアトマイザーにて粉砕し、アルミ皿にプレス成型し、2WAYファンデーションを得た。
得られた2WAYファンデーションは、滑らかな使用感で、さっぱりとした使用感の2WAYファンデーションであった。
【0052】
[実施例12:口紅]
【表9】
(製造方法)
A:成分1〜16を秤量し、加熱混合した。
B:Aを3本ロールで均一に分散した後、さらに加熱し均一に撹拌した。
C:脱泡後、モールドにバルクを流し込み、急冷した。適当な容器に装着し、口紅を得た。
得られた口紅は、深い赤みが得られ、独特の色調を示した。
【0053】
[実施例13:ボディーシャンプー]
【表10】
(製造方法)
A:成分1〜3を70〜80℃で加熱溶解させた。
B:成分10〜11を混合粉砕した。
C:Aに、成分4を徐々に加えケン化を行った。ケン化が終了した時点で、成分5〜9を加え均一になるまで撹拌した。
D:
Cを40℃まで冷却し、これにBを加え、撹拌混合しながら室温まで冷却し、ボディーシャンプーを得た。
得られたボディーシャンプーは、少量で着色するため、高温環境下で顔料の沈降を抑制することが出来た。
【0054】
[実施例14:固形石鹸]
【表11】
(製造方法)
A:成分1の組成の脂肪酸に、水酸化ナトリウム(48%)と水酸化カリウム(48%)を添加し、高温で撹拌混合し、成分1の脂肪酸アルカリ金属塩を調製した。
B:Aに成分2〜4を加え、混合し、更に3本ロールを用いて均一化した。
C:Bを押出し機で混練・加圧圧縮して棒状石鹸に押し出した後、型打ち機で成形することによって、固形石鹸を得た。
得られた固形石鹸は、水分量が11.5%で、若干の赤みを呈した黒色の安定性に優れた石鹸であった。
【0055】
[実施例15:粉末状入浴剤]
【表12】
(製造方法)
成分1〜7を秤量し、ヘンシェルミキサーにて均一に混合し、粉末状入浴剤を得た。
得られた粉末状入浴剤を使用した場合、浴槽中の湯が半透明性を有する黒色を呈した。
【0056】
[実施例16:ピールオフパック]
【表13】
(製造方法)
A:成分9〜11を混合粉砕した。
B:成分1〜8を加熱溶解させ、これにAを加え均一に分散させた後、40℃まで冷却した。
C:成分12〜14をBに加えて室温まで撹拌冷却し、ピールオフパックを調製した。
得られたピールオフパックは、均一な黒色を示し、パック後の皮脂や汚れが実感できるものとなった。