(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記胴部の外面側の少なくとも一部又は前記胴部の内面側の少なくとも一部に潤滑剤が付着してなり、前記潤滑剤が流動パラフィン又はシリコーン系潤滑剤である請求項1に記載の紙製容器。
前記食品添加物が、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びレシチンからなる群から選ばれるいずれか1種類または2種類以上である請求項3〜5のいずれか一項に記載の紙製容器。
前記食品添加物が、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びレシチンからなる群から選ばれるいずれか1種類または2種類以上である請求項8又は9に記載の紙製容器。
前記紙製容器の内面側の前記胴部接合部が水中で垂直に配置された状態において、前記紙製容器の内面側の前記胴部接合部の端面に隣接して付着した0.18mLの気泡の上昇速度を計測したときに、前記樹脂層に沿って前記気泡が30mm上昇するのに要する時間が40秒以下である請求項1〜11のいずれか一項に記載の紙製容器。
前記紙製容器に蓋をシールした後に水中に水没させ該紙製容器内部に5mL/分の量のエアーを送ることで測定する容器の接合部の密閉性測定法において、15分間で該紙製容器から漏れ出るエアーの体積が3.0mL以下である請求項1〜12のいずれか一項に記載の紙製容器。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<紙製容器>
[紙製容器の構成]
本発明の紙製容器は、胴部接合部を有する胴部と底板部とからなる容器本体、及び前記胴部及び前記底板部の少なくとも内面側に設けられた樹脂層、を有する紙製容器であって、前記胴部の内面側に設けられた前記樹脂層の表面粗さRaが0.4μm以上1.5μm未満である。
以下、本発明に係る紙製容器の実施の形態の一例を、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の紙製容器10は、胴部接合部4を有する胴部1と底板部2とからなる容器本体3を有する紙製容器である。
本実施形態の紙製容器10は胴部1及び底板部2の内面側及び外面側に樹脂層が設けられている。
図2は紙製容器を形成する加工紙の一例を示す拡大断面図である。加工紙5には紙基材6の容器内面側に内面側樹脂層7が積層され、紙基材6の容器外面側に外面側樹脂層8が積層されて設けられている。容器内面側に内面側樹脂層7が積層されることにより、紙製容器内面に耐水性が付与されると共に、胴部接合部における胴部同士(胴部を筒状に成型するために胴部を形成する加工紙の両端の直線部分)および胴部と底部のヒートシールによる接合が可能となる。容器外面側の外面側樹脂層8は、本発明の紙製容器において必須の構成ではないが、容器外面側に外面側樹脂層8を設けることで、冷蔵、冷凍保存が必要な内容物を充填する場合に、結露による剛度低下を抑制できる。
【0011】
図3に胴部接合部4の形状の一例を胴部接合部4の拡大断面図として示す。胴部接合部4は胴部を形成する加工紙5同士が重ねて接合された部分のことをいう。
図3に示されるように、加工紙5の端面は、紙製容器の内面側と外面側にそれぞれ露出している。
図3では紙製容器10の内面側の端面を端面4a、紙製容器10の外面側の端面を端面4a’として示している。
【0012】
[樹脂]
内面側樹脂層7及び外面側樹脂層8は樹脂を含有する。内面側樹脂層7及び外面側樹脂層8が含有する樹脂の種類及び構成は互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0013】
内面側樹脂層7が含有する樹脂として熱可塑性樹脂を例示できる。熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
その中でも融点が100〜120℃の低密度ポリエチレン(LDPE)または直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。それらを使用することにより、比較的低温で融解するため、胴部および底部を隙間なくヒートシールしやすく、加熱が不十分なことによる「未融解部が接着していない」ことが起こりにくい。
更には、内面側樹脂層7が含有する樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)がより好ましい。低密度ポリエチレン(LDPE)を使用することで、紙製容器のトップカール(フランジ)部に蓋をヒートシールした後に開封する際に接着強度が高くなりすぎて開封しにくくなることをより生じ難くさせることができる。
【0014】
外面側樹脂層8が含有する樹脂としては、上記の内面側樹脂層7が含有する樹脂と同様に、熱可塑性樹脂を例示できる。熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
また、
図3で示したように、胴部接合部4では、内面側樹脂層7と外面側樹脂層8とが接合されるため、内面側樹脂層7と外面側樹脂層8とのヒートシール性が高められていることにより、当該接合をヒートシールにより行うことができる。このような観点から、内面側樹脂層7と外面側樹脂層8が含有する樹脂の組み合わせは、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及び中密度ポリエチレンのなかから適宜選択してもよい。一例として、内面側樹脂層7が含有する樹脂が低密度ポリエチレン(LDPE)であるとき、外面側樹脂層8が含有する樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、又は中密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0015】
[表面粗さ]
紙製容器10において、胴部1を形成する内面側樹脂層7の表面粗さRaは0.4μm以上1.5μm未満であり、0.5μm以上1.4μm以下であることが好ましく、0.5μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。
紙製容器の表面粗さRaは日本工業規格JIS B0601−2013に準拠して測定される算術平均粗さRaである。表面粗さRaは、市販の触針式表面粗さ測定器を用いて測定することができる。
【0016】
内面側樹脂層7の表面粗さRaを上記範囲とすること、特に内面側樹脂層7の表面粗さRaを1.5μmより小さくすることにより、気泡と熱可塑性樹脂ラミネート面との接触面積が小さくなるため、疎水性の気泡は、疎水性の熱可塑性樹脂ラミネート面に付着しにくく、離脱しやすくなり、内容物の液面に泡が残りにくい。内面側樹脂層7の表面粗さRaを0.4以上とすることにより、気泡が内面側樹脂層に付着しにくく、離脱しやすくなる。表面粗さRaが0.4以上の場合では、ヒートシールの際に内面側樹脂層7にホットエアーを当てることにより胴部材を加熱する工程、胴部材を巻く工程を経ても平滑性が失われにくい。また、熱可塑性樹脂ラミネート面の表面粗さを小さくするほど、紙材を重ねたり巻き取ったりする際に紙材同士が貼り付いてしまう傾向があり、紙材を取り扱いにくい場合がある。内面側樹脂層7では、表面粗さRaを0.4以上とすることにより紙材を重ねたり巻き取ったりする際に紙材同士が貼り付いてしまう傾向も防止できる。
内面側樹脂層7の表面粗さRaが0.4μmより小さい場合には、樹脂層の平滑性が高く、原紙に樹脂押し出しラミネート加工後に巻き取る際、接触する反対面も樹脂層で平滑性が高い場合には、樹脂層同士の接触面積が大きくなるために、加工後の余熱により接着しやすくなる(いわゆるブロッキングが生じる)。また印刷後に巻き取る際にも印刷面から反対面(紙製容器の内面側)に、接触面積が大きくなるので、インキが転写されやすくなる。
【0017】
[毛羽立ち率]
内容物への気泡の残存は、特に胴部接合部4付近に発生することが多い。このことから、胴部接合部4の内面側の端面4aの毛羽立ちの程度である毛羽立ち率を低くすることによっても、内容物における気泡の残存防止効果をより高めることができる。
【0018】
気泡の残存は、特に胴部接合部4付近に発生することが多い理由の一つとして、容器内部の減圧により容器外部から容器内部へエアーが流入する場合、胴部接合部4と底板部2との接合部付近からエアーが流入しやすいことが考えられる。増粘剤、ゲル化剤または凝固剤を含む内容物が室温以上の温度で充填された後、蓋材をシールされ、冷蔵されることにより、容器内部は減圧の状態となる。
容器内部に流入したエアーは、気泡となってまず胴部接合部4の内面側の端面4aと接触する。胴部接合部4の内面側の端面4aが平滑で毛羽立ちが少ないと、気泡との接触面積が小さいので気泡が離脱しやすく、内容物が冷却されて固まる前に気泡が離脱して内容物の液面から抜け出てしまうので、内容物の液面に気泡の混入が発生しにくくなる。
一方、胴紙を打ち抜く際に、刃物の切れが悪く、胴部接合部4の内面側の端面4aが凸凹で毛羽立ちが多いと、気泡との接触面積が大きいので気泡が離脱しにくく、内容物が冷却されて容器内部が減圧になってから気泡が離脱するので、気泡が内容物中を上昇して内容物の液面から抜け出る前に固まるので、内容物の液面に気泡が混入しやすい。
【0019】
(毛羽立ち率の測定)
本明細書中において、胴部接合部の端面の「毛羽立ち率」とは、以下の定義により規定される。
まず、毛羽立ち部分の規定を
図5を参照して説明する。
図5は胴部接合部の端面の毛羽立ちの様子を模式的に示したものである。胴部接合部の端面の谷を結ぶ線をベースラインとする。ベースラインは胴部を構成する紙材の切り口端面とほぼ一致するものと考えられる。ベースラインから15μm離れた位置にベースラインと平行に直線を引き、その直線と毛羽立ちが交わる長さYを測定する。
図5に示すように、毛羽立ちが塊状になっている場合、長さYは塊ごとに測定してもよい。
図5に示す胴部接合部の端面では、長さYは以下ように求める。
【0021】
測定した端面の長さをXとすると、胴部接合部の端面の毛羽立ち率は以下のように定義される。なお、測定した端面の長さをXは、30mm以上であることが好ましい。
【0023】
胴部接合部の端面における上記毛羽立ち率は、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
[気泡の上昇]
本実施形態の紙製容器10は、紙製容器10の内面側の胴部接合部4が水中で垂直に配置された状態において、紙製容器10の内面側の胴部接合部4の端面4aに隣接して付着した0.18mLの気泡の上昇を計測したときに、内面側樹脂層7に沿って前記気泡が30mm上昇するのに要する時間が40秒以下であることが好ましく、30秒以下であることがより好ましく、20秒以下であることがさらに好ましい。
また、本実施形態の紙製容器10は、紙製容器10の内面側の胴部接合部4が水中で垂直に配置された状態において、紙製容器10の内面側の胴部接合部4の端面4aに隣接して付着した0.18mLの気泡の上昇速度を計測したときに、内面側樹脂層7に沿って前記気泡が上昇する速度が0.75mm/秒以上であることが好ましく、1mm/秒以上であることがより好ましく、20mm/秒以上であることがさらに好ましい。
図4は、紙製容器10の内面側の胴部接合部4の端面4aに隣接して付着した気泡9の様子を説明する模式図である。
【0025】
内容物への気泡の残存は、特に胴部接合部4付近に発生することが多いことを考慮して、上記の気泡の上昇の計測条件を、胴部接合部4の端面4aに隣接して付着した気泡9の上昇を求めることとしたものである。上記の気泡の上昇に係る規定を満たす紙製容器では、気泡の残存防止効果がより高められている。
【0026】
(気泡の上昇時間の測定)
胴部接合部が水中で垂直(重力方向と平行)に配置されるとき、胴部接合部の端面に隣接して付着した0.18mLの気泡が樹脂層に沿って上昇するのに要する時間は以下のように求めることができる。
測定は室温23℃、湿度50%にコントロールされた室内で行う。室温23℃、相対湿度50%にコントロールされた室内に蒸留水の入った水槽を24時間以上放置することにより、水温は22.5℃となる。紙製容器の内面側に形成された胴部接合部を水中に沈める。紙製容器全体を水中に沈めてもよいが、計測は紙製容器の内面側に形成された胴部接合部を用いて行うので、より測定を簡便に実施できるよう、胴部接合部を含む胴部の一部分を紙製容器から切り取り、これを測定に用いるとよい。その場合、胴部接合部の長さが30mmとなるように切り取ると良い。胴部接合部の長さが30mmとなるように切り取らない場合には、胴部接合部の上端と下端の間が30mmとなるように、上端と下端に胴部接合部と直角になるように線を引くとよい。
室温23℃、相対湿度50%の室内で0.18mLのエアーを測り取り、水中に沈められた胴部接合部の内側端面に隣接して0.18mLの気泡を付着させる。その方法として例えば、体積の定量された物質を吐出可能な周知のマイクロピペット等の機器を用いて用意することができる。マイクロピペットのチップの先を胴部接合部の端面に隣接した部分に配置した後、0.18mLに定量された気泡を吐出させることで、胴部接合部の端面に隣接して付着した0.18mLの気泡を用意することができる。胴部接合部の端面に隣接して気泡を付着させる際の水深は100〜110mmの範囲内とし、その後、気泡が水深100mmの位置から熱可塑性樹脂積層面に沿って30mm上昇する(水深70mm)までに要する時間を測定する。気泡が吐出された際には、胴部接合部は、必ずしも水中で垂直に配置されていなくともよい。気泡が胴部接合部の端面に隣接して付着した後に、胴部接合部を垂直に配置し、胴部接合部を垂直に配置した時から気泡が樹脂層に沿って上昇する時間を計測し、気泡が上昇するのに要する時間としてもよい。
気泡が上昇するのに要する時間を測定する際に、0.18mLのエアーを測り取る時の温度および湿度、水槽内の水温、気泡を付着させ上昇を開始する水深、を一定にすることにより、付着させる気泡の体積を一定にすることができるので一定の条件で測定することが可能となる。
尚、気泡が上昇する速度が一定でなくとも、気泡が上昇するのに要する時間として算出しても良いものとする。気泡が上昇する速度が一定でないパターンの例として、以下の2パターンが挙げられる。
1.上昇する、止まるを繰り返す
例) 基材の樹脂層上に気泡を付着させるとしばらくそのままで動かない。「少し動き始めて直ぐに止まり、しばらく経ってから再び少し動き始めて直ぐに止まる」を繰り返す。
2.加速しながら上昇する
例)気泡を付着させてから、短時間静止の状態の後に、少し動き始めると一気に加速しながら上昇する。
【0027】
[水との接触角]
本実施形態の紙製容器10は、胴部内面側の内面側樹脂層7と水との接触角が60度以上98度以下であることが好ましく、70度以上96度以下であることがより好ましく、75度以上93度以下であることがさらに好ましく、80度以上85度以下であることが特に好ましい。
水との接触角は、内面側樹脂層7の水への濡れ性を表す指標である。内面側樹脂層7の濡れ性が高いほど、内面側樹脂層7への気泡の付着防止、早期除去の効果が高い。一方で、内面側樹脂層7の濡れ性が高すぎると胴部接合部の端面から内容物が浸透しやすくなり、漏れや外観の悪化につながる。そのため、内面側樹脂層7の濡れ性が上記範囲にあることが好ましい。胴部内面側の内面側樹脂層7と水との接触角が上記範囲にあることにより、気泡の付着防止効果及び早期除去効果の両効果と、商品品質の向上とを両立させることができる。
【0028】
(水との接触角の測定)
樹脂層と水との接触角は、例えば、自動接触角計 DMs−400(協和界面科学株式会社製)を用いて接触角を測定することができる。これ以外の測定機器を用いた場合にも、同様の原理で測定可能な機器を用いて接触角を測定することができる。
試験条件としては、以下の条件における接触角を求める。
測定環境:23℃、50%RH
測定方法:θ/2法、蒸留水を2μL試験片に滴下し、1msec後の接触角を測定
【0029】
[紙製容器の密閉性]
上述の[毛羽立ち率]の段で説明したように、容器内部の減圧により容器外部から容器内部へ流入するエアーが、気泡の発生源となっていると考えられる。このことから、紙製容器の密閉性を高めることによっても、内容物における気泡の残存防止効果をより高めることができる。
【0030】
(密閉性測定法)
紙製容器の密閉性は、次のように測定することができる。まず、紙製容器内部を密閉するため紙製容器に蓋材をシールする。蓋材がシールされた紙製容器を水温22.5℃の水中に沈め、室温23℃、相対湿度50%にコントロールされた室内で紙製容器内部に5mL/分の量のエアーを送る。エアーの送入にはエアー注入用の針が接続されたエアーポンプ等を用いればよい。15分間で25mLのエアーを紙製容器内へと送り、紙製容器から漏れ出たエアーの体積を計測する。
【0031】
上記密閉性測定法により求められた、15分間で該紙製容器から漏れ出るエアーの体積は3.0mL以下であることが好ましく、2.6mL以下であることがより好ましく、2.3mL以下であることがさらに好ましい。
紙製容器の接合部の密閉性が上記値にあることにより、内容物を充填、冷却後に紙製容器内の減圧が発生した場合でも、紙製容器外側からエアーが流入しにくいため、紙製容器外側からのエアーの流入に由来する内容物への気泡の混入をより効果的に抑制することができる。
【0032】
[潤滑剤]
本実施形態の紙製容器10において、前記胴部の外面側の少なくとも一部に潤滑剤が付着している、又は、前記胴部の内面側の少なくとも一部に潤滑剤が付着していてもよい。胴部への潤滑剤を付着させる方法は特に制限されない。しかし、一般的な紙製容器の製造においては、胴部と底板部を接合する際に(胴部下端縁を内側に折り曲げて、円盤状の周縁が折り曲げられた底板部の周縁を包むように固着するボトムカールが形成される際に)、胴部の下部外周面に潤滑剤が塗工されることがある。また、紙製容器の胴部の上端縁を外側に向けて折り曲げて、開口部にトップカールを形成させる際に、胴部の上部内周面に潤滑剤が塗工されることも行われている。このように前記潤滑剤は、上記のようにボトムカール又はトップカールを形成する際に紙製容器に塗工するものであってもよい。
【0033】
胴部の下部外周面に潤滑剤を塗工された紙製容器では、製造工程または製品となってケースに入れられる際に紙製容器が積み重ねられ、その下の紙製容器の内面側に接触し、潤滑剤が転移する。そして、紙製容器を積み重ねから引き抜く際に、転移した潤滑剤が擦れて紙製容器の内面側上方に濡れ広げられる。
胴部の上部内周面に潤滑剤を塗工された紙製容器では、製造工程または製品となってケースに入れられる際に紙製容器が積み重ねられ、その上の紙製容器の外面側に接触して上部内周面に付着している潤滑剤が擦れて紙製容器の内面側の下方に濡れ広げられる。
本実施形態の紙製容器10に設けられた内面側樹脂層7では、表面粗さが0.4μm以上1.5μm未満と、従来の紙製容器よりも小さく設定されているので、表面の微小な凹凸が少なく、比表面積が小さいため、紙製容器10に塗工された潤滑剤が少量であっても、容器内面側に擦れて濡れ広がりやすい。
【0034】
潤滑剤の中でも、操業性、コスト、品質等の観点から流動パラフィンまたはシリコーン系潤滑剤を使用することが好ましい。潤滑剤としては、「ポリオレフィン等合成樹脂製食品包装等に関する自主基準」の容器包装等に使用し得る物質の表(ポジティブリスト)に記載されている物質を使用することが好ましい。ポジティブリストに記載されており、潤滑剤として使用でき得るものとしては、食品添加物規格に合格した食添品グレードの流動パラフィン(例としてカネダ株式会社製のハイコールKシリーズ)、食品包装容器用グレードのシリコーン系潤滑剤(例として信越化学工業株式会社製 信越シリコーンKF、KMシリーズ、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製TPRシリーズ)等が挙げられる。
【0035】
流動パラフィンとしては上記を満たしておれば特に使用制限はないが、平均分子量としては198(炭素数14)以上、618(炭素数44)以下であることが好ましい。平均分子量が198以上であることより、粘度が低くなりすぎることによる潤滑性能の低下が発生せず、さらに揮発性が高すぎることによる作業環境の悪化、引火、発火等のリスクを低く抑えることができる。平均分子量が618以下であることより、粘度が高くなり過ぎないため、操業上の取り扱いが容易な上に、塗工箇所のテカリを低く抑えることができる。
【0036】
シリコーン系潤滑剤としては、メチルヒドロジエンポリシロキサン(20℃の粘度 最低100cStが好ましい)、ジメチルポリシロキサン(20℃の粘度 最低100cSt、塗布量 600mg/m
2以下が好ましい)、メチルフェニルポリシロキサン(20℃の粘度 最低100cSt、塗布量 600mg/m
2以下が好ましい)、ポリオキシアルキレン(炭素数2〜4)ジメチルポリシロキサン(添加量0.3質量%以下が好ましい)、ポリオキシエチレングラフト化ポリジメチルポリシロキサン(添加量0.3質量%以下、100℃以下での使用が好ましい)、アルキル基(炭素数1〜32)をケイ素原子上にもつ直鎖状または分岐状オルガノポリシロキサン(添加量0.75質量%以下、70℃以下での使用が好ましい)のいずれか1種類以上を使用することが挙げられる。
【0037】
[食品添加物]
紙製容器は、前記胴部の内面側の少なくとも一部に食品添加物が付着してなることが好ましい。食品添加物を付着させることで、紙製容器10内部に食品が充填された場合でも、高い安全性を保ちつつ紙製容器内面側の親水性を高めることができる。
前記胴部の内面側の少なくとも一部に潤滑剤が付着している場合、前記潤滑剤は食品添加物を含有していることにより、前記胴部の内面側の少なくとも一部に食品添加物が付着していてもよい。潤滑剤に食品添加物を含有させることで、食品添加物と潤滑剤を別工程で紙製容器に塗工するよりも効率的となり、紙製容器10内部に食品が充填された場合でも、高い安全性を保ちつつ紙製容器内面側の親水性を高めることができる。潤滑剤は、紙製容器を積み重ねることにより、紙製容器内面側に転移し、濡れ広げられ得る。
気泡は疎水性のため、疎水性の内面側樹脂層7表面に気泡が付着しやすく、離脱しにくい。内面側樹脂層7に気泡が付着した状態が生じやすいと、紙製容器内に充填された内容物が固まりつつある状態又は固まった後に内面側樹脂層7に付着した気泡が次第に内容物の液面へ浮上し、内容物の液面に泡が残存することが生じやすい。そこで、内面側に潤滑剤と共に食品添加物を付着させることで、内面側の親水性を高め、紙製容器内に充填した内容物に泡が消えないまま残存してしまうおそれを低減できる。
【0038】
前記胴部の内面側の少なくとも一部に潤滑剤が付着している場合、前記内面側樹脂層が食品添加物を含有していることにより、前記胴部の内面側の少なくとも一部に食品添加物が付着していてもよい。
【0039】
本実施形態の紙製容器10に設けられた内面側樹脂層7では、表面粗さが0.4μm以上1.5μm未満と、従来の紙製容器よりも小さく設定されているので、表面の微小な凹凸が少なく、比表面積が小さい。そのため、紙製容器10に塗工された潤滑剤と食品添加物の混合物が少量であっても、容器内面側に擦れて濡れ広がりやすい。
【0040】
潤滑剤に混合される食品添加物としては、食品と直接接触しても安全上問題のない成分であれば特に制限されない。より具体的には、厚生労働省が発行する食品添加物公定書に収載されている化合物であることが好ましく、更には食品添加物の中でも食品添加物公定書中に使用基準(使用できる食品、使用量の最大限度、使用制限)の規制がない物質であることが好ましい。上記使用基準の規制がない食品添加物としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンを挙げることができる。上記食品添加物は食品に移行しても安全上問題が無いため、上記食品添加物を含有する潤滑剤が塗工された紙製容器10は安全性が高く、食品包装用容器として好適である。
【0041】
水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値としてHLB値が用いられる。HLB値は0から20までの値を取るが、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなる。いくつかの計算方法が提案されているが、本明細書中ではアトラス法により算出された値を採用する。
アトラス法:鹸化価をS、脂肪酸の酸価をAとし、HLB値を20×(1−S/A)で定義する。
酸価とは、油脂の精製および変質の指標となる数値のひとつであり、「油脂1g中に存在する遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数」を酸価とする定義を採用する。
異なるHLB値を有する複数種類の食品添加物の混合物を用いる場合、混合物のHLB値はそれらの加重平均の値として算出する。
【0042】
潤滑剤と食品添加物を混合した後の安定性については、食品添加物のHLB値が所定の範囲内であることが好ましい。紙製容器内面側の親水性をより高めるとの観点からは、食品添加物のHLB値は1以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。食品添加物が熱可塑性樹脂に含有されている場合の食品添加物のHLB値は、1以上10以下であることが好ましい。食品添加物が潤滑剤に含有されており潤滑剤として流動パラフィンやシリコーン系潤滑剤を使用する場合には、食品添加物のHLB値が3以上17以下であると混和性が良好で分離しない。ここで「混和性が良好」とは白濁していても分離しない状態を指す。HLB値が上記範囲よりも高すぎたり低すぎたりすると潤滑剤と混和せずに分離してしまうことがある。紙製容器内面側の親水性をより高めるとの観点からは、食品添加物のHLB値は5以上であることがより好ましい。
上述の観点から、前記食品添加物のHLB値は、1以上17以下であることが好ましい。食品添加物が潤滑剤に含有されている場合の食品添加物のHLB値は、3以上17以下であることが好ましく、5以上17以下であることがより好ましく、6以上16以下であることがさらに好ましい。
【0043】
HLBが5以上17以下の食品添加物として、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンオレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンミリステート、テトラグリセリンステアレート、デカグリセリンラウレート、デカグリセリンステアレート、デカグリセリンオレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンカプリレート、ショ糖ステアリン酸エステル(モノエステル含量が30%以上80%以下)、ショ糖パルミチン酸エステル(モノエステル含量が30%以上80%以下)、ショ糖ミスチリン酸エステル(モノエステル含量が30%以上80%以下)、ショ糖オレイン酸エステル(モノエステル含量が30%以上80%以下)、ショ糖ラウリン酸エステル(モノエステル含量が30%以上80%以下)等が挙げられる。レシチンとしては植物レシチン、分別レシチン、卵黄レシチン、酵素処理レシチン、酵素分解レシチンのいずれも用いることができる。
【0044】
本発明の紙製容器は、前記胴部の内面側に食品添加物が0.0005mg/個以上1.5mg/個以下付着していることが好ましく、0.001mg/個以上1mg/個以下付着していることがより好ましく、0.01mg/個以上0.5mg/個以下付着していることがさらに好ましい。
前記紙製容器は、前記胴部の内面側に食品添加物が0.005μg/cm
2以上17μg/cm
2以下で付着してなることが好ましく、0.01μg/cm
2以上10μg/cm
2以下で付着してなることがより好ましく、0.1μg/cm
2以上5.5μg/cm
2以下で付着してなることがさらに好ましい。食品添加物が上記範囲で付着してなることにより、より効果的に親水性を高める効果が発揮され、且つ胴部接合部の端面から内容物が浸透しにくい。なお、胴部がトップカール部を有する場合、胴部の内面側とは、トップカール部のうち胴部内側に由来する部分を含むものとする。また、上記胴部の内面側の単位面積あたりの食品添加物の付着量とは、胴部内面側面積における平均値として求められるものである。
また、本発明の紙製容器は、前記胴部の外面側に食品添加物が0.0005mg/個以上、1.5mg/個以下付着していることが好ましい。
【0045】
潤滑剤が食品添加物を含有している場合、食品添加物を含有する潤滑剤の塗布量は、上述のように、胴部の内面側に付着する好ましい食品添加物量に沿って適宜定めてもよく、また潤滑剤に対する食品添加物の含有量は特に制限されるものではないが、潤滑剤あたり0.01重量%以上10重量%以下の割合で、食品添加物を含有することが好ましく、潤滑剤あたり0.1重量%以上10重量%以下の割合で、食品添加物を含有することがより好ましく、潤滑剤あたり0.3重量%以上7重量%以下の割合で、食品添加物を含有することがさらに好ましい。食品添加物の含有割合が0.01重量%以上であることにより、親水性を高める効果が効果的に発揮される。食品添加物の含有割合が10重量%以下である場合、胴部接合部の端面から内容物が浸透しにくい。また、潤滑剤に対する食品添加物の含有量が0.01重量%以上10重量%以下の範囲内である場合には、潤滑性能を阻害しない。
【0046】
前記紙製容器は、胴部の外面側の最下部から2cm以内の範囲である下部外周面に潤滑剤が付着し、前記潤滑剤は食品添加物を含有し、前記下部外周面に前記食品添加物が0.005μg/cm
2以上17μg/cm
2以下で付着してなることが好ましく、0.01μg/cm
2以上10μg/cm
2以下で付着してなることがより好ましく、0.1μg/cm
2以上5.5μg/cm
2以下で付着してなることがさらに好ましい。下部外周面に潤滑剤を付着させる方法は特に制限されないが、胴部と底板部を接合する際、即ち、胴部下端縁を内側に折り曲げて、円盤状の周縁が折り曲げられた底板部の周縁を含むように固着するボトムカールを形成させる際に、潤滑剤を胴部の下部外周面に塗工し、下部外周面に付着させることを例示できる。胴部がボトムカール部を有する場合、胴部の外面側とは、ボトムカール部のうち胴部外側に由来する部分を含むものとする。また、上記胴部の下部外周面の単位面積あたりの食品添加物の付着量とは、胴部の上下部外周面における平均値として求められるものである。
【0047】
前記紙製容器は、胴部の内面側の最上部から2cm以内の範囲である上部内周面に潤滑剤が付着し、前記潤滑剤は食品添加物を含有し、前記上部内周面に前記食品添加物が0.005μg/cm
2以上17μg/cm
2以下で付着してなることが好ましく、0.01μg/cm
2以上10μg/cm
2以下で付着してなることがより好ましく、0.1μg/cm
2以上5.5μg/cm
2以下で付着してなることがさらに好ましい。上部内周面に潤滑剤を付着させる方法は特に制限されないが、胴部の上端縁を外側に向けて折り曲げて、開口部にトップカールを形成させる際に、潤滑剤を胴部の上部内周面に塗工し、上部内周面に付着させることを例示できる。胴部がトップカール部を有する場合、胴部の内面側とは、トップカール部のうち胴部内側に由来する部分を含むものとする。また、上記胴部の上部内周面の単位面積あたりの食品添加物の付着量とは、胴部の上部内周面における平均値として求められるものである。
【0048】
<紙製容器に充填する内容物>
紙製容器に充填する内容物としては、増粘剤、ゲル化剤または凝固剤を含む内容物であることが好ましい。そのような内容物として、例えばヨーグルト、ゼリー、プリン、ババロア、ムース、寒天、ジャム、アイスクリーム、豆腐、コンニャク等が挙げられる。
ゲル化剤として、冷やすと固まる性質を有するゼラチン、コラーゲン、寒天、カラギーナン、ペクチン等が挙げられる。
増粘剤として、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グァーガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、グルコマンナン、セルロース、ヘミセルロース、澱粉類等の多糖類が挙げられる。
凝固剤には、主に豆腐用凝固剤とコンニャク用凝固剤があり、豆腐用凝固剤としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、粗製海水塩化マグネシウム(にがり)、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、グルコノデルタラクトン等が挙げられる。コンニャク用凝固剤としては、消石灰とも呼ばれる水酸化カルシウム、焼成カルシウム等が挙げられる。
【0049】
ヨーグルトは牛乳などの原料乳を乳酸菌で発酵させたものであるが、種類によって製造方法は異なる。原料をタンクで発酵させ、容器に充填する前発酵タイプ(ドリンクヨーグルトやソフトヨーグルトなど)と、原料を容器に充填した後に発酵させる後発酵タイプ(プレーンヨーグルトなど)の2つのタイプに分けられる。
後発酵タイプは、原材料を混合し、殺菌後、スターター(乳酸菌等)を添加し、その後すぐに容器に充てんし、容器内で発酵させる。前発酵タイプは、原材料の混合から殺菌、スターター(乳酸菌等)の添加までは後発酵タイプと同じ工程で、その後、タンク内で発酵させてから容器に充てんする。
【0050】
本実施形態の紙製容器は、前発酵タイプのヨーグルトと、後発酵タイプのヨーグルトの両方に適用可能であるが、前発酵タイプのヨーグルトに適用されることが好ましい。
後発酵タイプでは、発酵により気泡(二酸化炭素)が発生すると共に、酸度が上がるためにヨーグルトの粘度が高くなる。
一方、前発酵タイプでは、発酵→冷却→充填(タンクで発酵したヨーグルトと甘味料や果汁、果肉との混合物を充填し、フタをする)または、発酵→充填→冷却となり、冷却により発酵は停止するので発酵による気泡は殆ど発生しない。充填時に混入する気泡が、充填後に冷却・静置によりゼラチンや寒天等の凝固が進んで粘度が上がる前に素早く抜けてしまえば、冷却後にヨーグルト表面に気泡や亀裂が発生することはない。
【0051】
内面側に付着した気泡の上昇速度が高められた紙製容器では、充填後に冷却・静置によりゼラチンや寒天等の凝固が進んで粘度が上がる前に、気泡が素早く充填物から抜けることが可能なため、冷却後に充填物表面に気泡や亀裂が発生する恐れが低減されている。
【0052】
<紙製容器の製造方法>
[紙製容器本体の形成]
紙製容器本体は、例えば、以下のようにして製造することができる。
紙基材6の内面側に内面側樹脂層7を形成する樹脂を溶融押出法により積層(樹脂ラミネート加工)し、紙基材6の外面側に外面側樹脂層8を形成する樹脂を溶融押出法により積層(樹脂ラミネート加工)して、加工紙5を得る。
外面側には、結露による剛度低下を防止するために必要に応じて熱可塑性樹脂を溶融押出法により積層してもよい。
溶融押出し法により紙基材に熱可塑性樹脂を積層(樹脂ラミネート加工)した直後に、熱可塑性樹脂層は金属製のクーリングロールに圧着して急冷されるが、その際にクーリングロール表面に付与された凹凸が熱可塑性樹脂ラミネート層表面に転写され、熱可塑性樹脂ラミネート層に凹凸が付与される。金属製のクーリングロールの表面粗さを調整することにより、樹脂ラミネート層の表面粗さ(Ra)を0.4μm以上、1.5μm未満にすることができる。
得られた加工紙5を打ち抜き、胴部用ブランク(図示せず。)を形成する。同様に、加工紙5を打ち抜き底板部用ブランク(図示せず。)を形成する。打ち抜き用の金型を研磨してシャープな状態を維持することにより、胴部接合部の内側端面の毛羽立ちの程度である毛羽立ち率を低くすることができる。そのことによっても内容物における気泡の残存防止効果をより高めることができる。
【0053】
このようにして形成した胴部用ブランクの両端縁を重ね合わせてヒートシーリングにより接着して胴部2を形成し、胴部1の底部に底板部用ブランクを接合して底板部2を形成することにより容器本体3を成形する。
【0054】
[胴部と底板部との接合]
本発明の紙製容器の製造方法は、前記胴部と前記底板部をエクスパンションシーリング方式により接着させるものである。胴部と底板部を接合させる方法として、エキスパンダーロール方式とエクスパンションシーリング方式の2通りがある。これらの方式を説明する図を
図6に示す。
エクスパンダーロール方式では、円盤状金型(ローラー)を偏芯回転させて圧着する(
図6a)。しかし、容器の密閉性を高めるために圧着の圧を高くすると、底紙がローラーに瞬間的に一方向に強く引っ張られ、底部の円周部付近にシワが発生しやすくなり、外観が悪化するという問題が発生しやすい。
エクスパンションシーリング方式では、4箇所を同時に面で圧着する(
図6b〜
図6c)。
図6cでは2ステーション目を45°ずらして圧着させることにより、底部全面を圧着する様子を示している。エクスパンションシーリング方式では、エクスパンダーロール方式と同等の容器の密閉性を、底部の円周部付近にシワを発生させることなく得ることが可能である。
【0055】
(紙基材)
容器本体を構成する胴部と底板部で使用される紙基材は、木材またはケナフ、竹等の非木材より得られた化学パルプまたは機械パルプから成り、通常の抄紙工程により抄造して得ることができるがこれに限定されない。
その中でも化学パルプを使用することが好ましい。化学パルプを使用することにより機械パルプを使用する場合と比較して、同一の坪量でも剛度が高くなり、光を長時間浴びた場合または高温で長時間保管された場合に黄変を抑制することができ、更に強度や破断伸びが高くなることによりカップ成型時にトップカールを付与する際に破断しにくくなる。紙基材中の化学パルプの配合率は80重量%以上が好ましく、90重量%以上が更に好ましく、95重量%以上が最も好ましい。
樹脂ラミネート加工を行う前の紙基材(原紙)の坪量は150g/m
2以上が好ましい。坪量が150g/m
2以上の場合、紙製容器の強度、剛度が増すため、内容物が充填された状態での落下、積み重ね、輸送時の振動、加速度等の要因により破壊、変形するおそれがない。また内容物が充填された容器を手で保持した時に変形が小さいので保持しやすいという利点もある。
なお、樹脂ラミネート加工を行う前の紙基材(原紙)の坪量は350g/m
2以下が好ましい。坪量を350g/m
2以下とすることにより、容器の強度、剛度が過剰(オーバースペック)となることがなく、製造コストが高くなって不経済となることもない。
【0056】
トップカール加工により紙基材は抄紙方向と直角を成す方向に破断されない状態で伸ばされる必要があるため、抄紙方向と直角を成す方向の破断伸びは3%以上であることが好ましく、4%以上であることがより好ましく、5%以上であるのことが最も好ましい。そのためには含有水分は5〜9重量%であることが好ましく、6〜8重量%が好ましい。含有水分が9重量%以下の場合、紙製容器の剛度が低すぎることがなく、5重量%以上の場合は破断伸びが高くなる。
【0057】
また、紙基材の密度は、0.7g/cm
3以上、1.0g/cm
3以下であることが好ましい。紙基材の密度が0.7g/cm
3以上の場合には強度や破断伸びが高くなることによりカップ成型時にトップカールを付与する際に破断しにくくなる。紙基材の密度が1.0g/cm
3を超えると一定の坪量当たりの厚さが薄くなってしまうので、剛度が低くなり好ましくない。
【0058】
紙基材を製造するパルプの濾水度(CSF)は、200〜500mLであることが好ましく、300〜450mLであることがより好ましい。500mL以下の場合、紙基材の強度や破断伸びが低くなり過ぎないため好ましい。濾水度が200mL以上の場合、紙基材の密度が低くなり過ぎないため好ましい。
【0059】
(樹脂層厚さ)
樹脂層の厚さは20μm以上が好ましい。樹脂層の厚さが20μm以上の場合、樹脂層による原紙の被覆がより確実なものとなり、被覆不良箇所(所謂ピンホール)が発生する恐れがなく、ヒートシールされた接合部の密閉性、気密性、及び原紙と樹脂層の接着性をより高めることができる。
なお、樹脂層の厚さは60μm以下が好ましい。樹脂層の厚さが60μmを超える場合は、樹脂層による原紙の被覆性、ヒートシールされた接合部の密閉性・気密性、原紙と樹脂層の接着性について、それ以上改善されず、製造コストが高くなるため不経済である。
【実施例】
【0060】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
坪量280g/m
2(厚さ290μm、化学パルプ100%、パルプの濾水度(CSF)400ml,含水率7.0%)の紙基材の片面(容器内面側)に、低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製 銘柄名:ペトロセンP204、密度0.922g/cm
3)を溶融押出法により厚さ40μmで押出しラミネートした。低密度ポリエチレンラミネート面の表面粗さ(Ra)は0.60μmであった。
紙基材の反対面側(容器外面側)に低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製 銘柄名:ペトロセンP204、密度0.922g/cm
3)を溶融押出法により厚さ20μmで押出しラミネートして、胴部材用加工紙Aを得た。表面粗さは(Ra)は0.40μmであった。
ラミネート加工後の巻取は紙材の貼りつき(ブロッキング)は発生しなかった。
ラミネート加工後の原紙に油性グラビア印刷を行った際に、巻取内部でのインクの転写は見られなかった。
打ち抜き用の金型を研磨してシャープな状態にした上で、胴部材用加工紙Aから容器胴部材ブランクを打ち抜いた。
次いで、坪量300g/m
2の胴部材に使用したのと同じ紙基材の片面(容器内面側)に低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製 銘柄名:ペトロセンP204、密度0.922g/cm
3)を厚さ40μmで押出ラミネートした。低密度ポリエチレンラミネート面の表面粗さ(Ra)は0.60μmであった。
紙基材の反対面側(容器外面側)に低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製 銘柄名:ペトロセンP204、密度0.922g/cm
3)を溶融押出法により厚さ20μmで押出しラミネートして、底部材用加工紙Bを得た。
底部材用加工紙Bから容器底部材ブランクを打ち抜いた。
容器胴部材ブランクと容器底部材ブランクをカップ成型機で一体化させ、紙製容器を組み立てた。具体的な方法を以下に示す。
(1)胴部材ブランクの一方の端縁ともう一方の端縁を重ね合わせて接合させた。胴部材ブランクの一方の縁端ともう一方の縁端を重ね合わせて接合する際に、少なくとも内面側樹脂層の縁端にホットエアーを当てて加熱した後に縁端同士を重ね合わせて圧着した。
(2)下方に向けて先細る円錐台形状の筒体下部内面に、円形板状の周縁が折曲げられたトレー状底部材を添着した。
(3)前記筒体の下端縁を内側に折り曲げて、該トレー状底部材の周縁を包むように固着するボトムカールを形成した。前記ボトムカールの形成時には筒体の下部外周面に潤滑剤として流動パラフィン(カネダ株式会社製 製品名:ハイコールK290)を2.5mg/個塗工した。
(4)容器胴部材ブランクと容器底部材ブランクをエクスパンションシーリング方式により、胴部材と底部材の圧着に12kgf/cm
2の圧力をかけて加熱接着させた(
図7参照)。
(5)該筒体の状端縁を外側に折り曲げて、開口部にトップカールを形成し、紙製容器を完成させた。前記トップカールの形成時には筒体の上部内周面に潤滑剤として流動パラフィン(カネダ株式会社製 製品名:ハイコールK290)を2.5mg/個塗工した。
実施例1で得られた紙製容器の寸法はブリム外径71mm、カップ高さ45mm、満杯容量106ml、紙製容器胴部内面の面積92.7cm
2であった。
【0061】
<実施例2>
胴部材用加工紙Aの容器内面側の低密度ポリエチレンラミネート面の表面粗さ(Ra)を1.30μmとした以外は実施例1と同様にして実施例2の紙製容器を製造した。
<実施例3>
打ち抜き用の金型の刃がやや摩耗した状態で、胴部材用加工紙Aから容器胴部材ブランクを打ち抜き、胴部材接合部の内面側端面の毛羽立ち率が23%である以外は実施例1と同様にして実施例3の紙製容器を製造した。
<実施例4>
容器胴部材ブランクと容器底部材ブランクをエクスパンションシーリング方式により、胴部材と底部材の圧着に9kgf/cm
2の圧力をかけて加熱接着させた以外は実施例1と同様にして実施例4の紙製容器を製造した。
<実施例5>
潤滑剤の種類をシリコーン系潤滑剤(東レ・ダウコーニング株式会社製 製品名:DOW CORNING TORAY SH 200 C FLUID 100 CS)に変更した以外は実施例1と同様にして実施例5の紙製容器を製造した。
<実施例6>
潤滑剤中の食品添加物(理研ビタミン株式会社製 製品名:ポエムJ-0381V、成分:デカグリセリンオレート、HLB値12.0)の濃度を1重量%とした以外は実施例1と同様にして実施例6の紙製容器を製造した。
<実施例7>
潤滑剤中の食品添加物(理研ビタミン株式会社製 製品名:リケマールL250A、成分:ソルビタンラウレート、HLB値7.4)の濃度を1重量%とした以外は実施例1と同様にして実施例7の紙製容器を製造した。
<実施例8>
潤滑剤中の食品添加物(理研ビタミン株式会社製 製品名:ポエムJ-0021、成分:デカグリセリンラウレート、HLB値15.5)の濃度を1重量%とした以外は実施例1と同様にして実施例8の紙製容器を製造した。
<実施例9>
潤滑剤中の食品添加物(理研ビタミン株式会社製 製品名:ポエムJ-0381V、成分:デカグリセリンオレート、HLB値12.0)の濃度を5重量%とした以外は実施例1と同様にして実施例9の紙製容器を製造した。
<実施例10>
潤滑剤中の食品添加物(理研ビタミン株式会社製 製品名:ポエムJ-0381V、成分:デカグリセリンオレート、HLB値12.0)の濃度を0.5重量%とした以外は実施例1と同様にして実施例10の紙製容器を製造した。
<実施例11>
容器胴部材ブランクと容器底部材ブランクをエクスパンダーローラー方式により、エクスパンダーローラーに450kgfの荷重をかけて胴部材と底部材を接着させた以外は実施例1と同様にして実施例11の紙製容器を製造した。
【0062】
<比較例1>
胴部材用加工紙Aの容器内面側の低密度ポリエチレンラミネート面の表面粗さ(Ra)を0.30μmとした以外は実施例1と同様にして比較例1の紙製容器を製造した。
<比較例2>
胴部材用加工紙Aの容器内面側の低密度ポリエチレンラミネート面の表面粗さ(Ra)を3.1μmとした以外は実施例1と同様にして比較例2の紙製容器を製造した。
【0063】
<紙製容器の評価>
[表面粗さの測定]
内面側樹脂層の表面粗さの測定は、以下の機器を用いて以下の条件により行った。
測定器:株式会社小坂研究所社製サーフコーダーSE4000(触針式表面粗さ測定器)
測定長さ:2.5mm、測定速度:0.5mm/s
【0064】
[気泡の上昇に要する時間の測定]
室温23℃、相対湿度50%にコントロールされた室内に蒸留水の入った水槽を24時間以上放置することにより、水温は22.5℃となる。測定は室温23℃、湿度50%にコントロールされた室内で行った。紙製容器の胴部を切り取り、胴部の外面側を平滑なプラスチック板に貼り付け、室温23℃、相対湿度50%の室内で0.18mLのエアーをマイクロピペットで採取し、水中に沈められた胴部の熱可塑性樹脂積層面の胴部接合部内面側の端面に隣接して水深100〜110mmの範囲内で気泡を付着させた。水槽内に水没させた後にプラスチック板を垂直に立て、気泡が水深100mmの位置から熱可塑性樹脂積層面に沿って30mm上昇する(水深70mm)までに要する時間を測定した。
【0065】
[水との接触角の測定]
内面側樹脂層と水との接触角の測定は上記の(水との接触角の測定)に記載のとおりに行った。なお、紙製容器成型後の内面側樹脂層に紙製容器成型時に使用する潤滑剤(シリコーンオイル)が付着することによる接触角の値への影響を測るため、実施例6〜10の紙製容器に対しては、食品添加物を含有する潤滑剤が内面側樹脂層に付着したままの状態で、計測を行った。
【0066】
[毛羽立ち率の測定]
マイクロスコープにて端面の長さ30mm当たりの毛羽立ちの程度を数値化した。胴紙とマイクロスコープが垂直をなす位置から切り口端面を撮影した。写真を
図8に示す。切り口端面の谷を結ぶ線をベースラインとし、ベースラインから15μm端面から離れた位置にベースラインと平行に長さ30mmの直線を引き、その直線と毛羽立ちが交わる長さYを測定し、端面の長さ30mm当たりの毛羽立ち率(%)を求めた。
【0067】
[紙製容器の密閉性の測定]
(ポンプ条件出し)
(1)水槽に水を溜め、メスシリンダーを上下逆さまにして水槽内に入れ、メスシリンダー内のエアーをすべて抜き水で満たした。
(2)ポンプ(製造元:サン科学、製品名:SEAL TESTER FKT−100)のエアー注入用の針をメスシリンダーの中に入れ、3分間エアーを注入し、エアーの量が約5mLになるように調整した。
【0068】
(測定方法)
(1)空の紙製容器サンプルにアルミ蓋材をヒートシール(シール温度:160℃、シール圧力:5kgf、シール時間:2s)した。
(2)シールした紙製容器サンプルをシリル化ウレタン樹脂系接着剤(コニシ株式会社、ウルトラ多用途SUプレミアムソフト)で、底部接合部以外の容器外面の接合部(胴部の接合部、トップカールと接するトップカールの真下部)を目止めし(
図9参照)、接着剤を1日以上放置乾燥させた。
(3)水槽に水を溜め(1Lビーカーが1cm出る位の高さ)、1Lビーカーの上下を逆さまにして水槽内に入れ、ビーカー内のエアーをすべて抜き水で満たした。
(4)(2)で目止めした紙製容器の接着剤硬化後、アルミ蓋材の上にシールタイプのセプタムを貼り付け、この上からポンプのエアー注入用の針を刺した。セプタムを用いることで、針を刺した後も、セプタムのラバーの弾力で孔がふさがり、外側の空気や水から容器内部を遮断できる。
(5)紙製容器サンプルを水槽内のビーカーに空気が一緒に入らないように入れた。
(6)紙製容器サンプルにポンプで、15分で25mLのエアーを送り、底部接合部から漏れ出たエアーをビーカーに貯めた。
(7)15分後、紙製容器サンプルを取り出し、中に残ったエアーをスポイトで回収し、水で満たしたメスシリンダーに移し入れ、漏れ出たエアーの量を測定した。
【0069】
[端面浸透の評価方法]
サンプル:樹脂層がラミネートされた加工紙(原紙)または紙製容器
浸透液:ヨーグルト(製造元:明治、製品名:ブルガリアヨーグルト)
※各浸透液100gに対し、着色料(食用赤色102号)を0.04g添加した。
【0070】
(評価方法)
(1)両面ラミネート紙の場合は、両面ラミネート紙または紙製容器をそのまま25×50mmにカットし、試験片とした。
(2)片面ラミネート紙の場合は、非ラミネート面にOPP粘着テープ(製造元:ニチバン、製品名:カートンテープ660N 透明-50)を貼り、ローラーに挟んで気泡が入らないように圧着することにより、非ラミネート面からの浸透を防止した上で、両面ラミネート紙または紙製容器を25×50mmにカットし、試験片とした。
(3)試験片は、原紙の抄紙方向に25mm、原紙の抄紙方向と直角方向に50mmとなるようにカットした。
(4)浸透液に浸漬する前に試験片の重量を測定した。
(5)オーブンに浸漬液を入れ、オーブンの温度を40℃に設定した。浸漬液の温度は39.5℃であった。
(6)試験片を浸透液に24時間浸漬させた。
(7)24時間後、試験片を取り出し、原紙表面に付着した液体を拭き取り重量を測定した。
(8)下記の計算式にて端面浸透の値を算出した。
端面浸透(g/m)=(浸漬後の重量−浸漬前の重量)(g)/端面の長さ(0.15m)
【0071】
さらに、端面浸透の程度が高まることによる紙製容器の商品価値の一つである容器外観に与える影響を以下の基準により評価した。
○…内容物の端面浸透による容器の外観の悪化が発生しないか、軽微な悪化に留まる程度。
×…内容物の端面浸透により、容器の外観が明らかに損なわれる。
【0072】
[内容物への気泡の混入率の評価方法]
(材料)
水道水 10363g
片栗粉 137g (ホクレン農業協同組合連合会HRI、商品名:「北海道産片栗粉」、成分:ばれいしょでん粉100%)
凝固剤 72.5g (伊那食品工業株式会社、商品名:イナゲルN−65P、成分:ゼラチン、寒天、粉あめ)
【0073】
(評価用内容物のつくり方)
(1)水道水(10363g)に片栗粉(137g)、凝固剤(イナゲルN−65P、72.5g)を入れ混合液を作製した。
(2)作製した混合液を薬さじ(又はヘラ)で良く撹拌しながら、85℃まで加温し、片栗粉と凝固剤を完全に溶解させた。
(3)加温した混合液を水冷し、40℃まで冷却した。
(4)冷却後、紙製容器に80gずつ充填した。サンプル数は1水準当たり100個とした。
(5)充填した紙製容器にアルミフタ材をシール(シール温度:160℃、シール圧:4kgf、シール時間:1s)した。
(6)シール後紙製容器を1分間上下逆さまにした後元に戻し、23℃で約1時間空冷した。
(7)空冷後、紙製容器を段ボールの箱(縦40cm×横30cm×高さ8cm)に1段で20個詰め、恒温恒湿機内にて4℃で8時間冷却した。
【0074】
(評価方法)
1水準当たり100個のサンプルを開封し、内容物表面、特に胴部接合部付近に気泡が発生しているかを目視で確認した。気泡の混入率は下記の通り算出した。
気泡の混入率=気泡が混入しているサンプルの個数/全サンプル数(100個)
【0075】
実施例1〜11及び比較例1〜2の紙製容器の評価結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
実施例1〜11の紙製容器と、比較例1〜2の紙製容器との比較によれば、容器内面側のラミネート表面の粗さ(Ra)が0.3である比較例1の紙製容器、及び上記粗さ(Ra)が3.1である比較例2の紙製容器では、内容物への気泡混入が生じるが、上記粗さ(Ra)が0.6又は1.3である実施例1〜11の紙製容器では、内容物への気泡混入が生じないことが分かる。
【0078】
表面の粗さ(Ra)が0.3である比較例1の紙製容器では、接合部付近の内面側樹脂層面に細かいシワが発生していた。このシワが気泡の混入を生じさせる要因と考えられる。胴部材ブランクの一方の縁端ともう一方の縁端を重ね合わせて接合する際に、少なくとも内面側樹脂層の縁端にホットエアーを当てて加熱した後に重ね合わせて圧着するが、内面側樹脂層の縁端にホットエアーを当てて加熱することにより、内面側樹脂層の表面粗さRaが0.4μmより小さい場合には、接合部付近の内面側樹脂層面に細かいシワが発生し、表面が荒らされやすい。このことにより気泡が付着しやすく離脱しにくくなると考えられる。
その理由は不明であるが、内面側樹脂層の表面粗さRaが小さいと、平滑な樹脂層の表面はホットエアーを当てることにより「均一」に溶けた後に、ホットエアーの流速に押されて流動し、波立った状態のまま冷えて固定化されるため、接合部付近の内面側樹脂層面に細かいシワが発生したと考えられる。
一方、内面側樹脂層の表面粗さRaが大きいと、表面に微細な凹凸があるため、樹脂層の表面にホットエアーを当てると、凸部が最初に溶かされて凹部に流れるため、ホットエアーの流速による波立ちが発生しにくいと考えられる。実際に、表面粗さRaが大きい樹脂層を接合した場合には、接合部付近の内面側樹脂層面は平滑化されており、細かいシワの発生は見られなかった。
【0079】
気泡の発生率は、気泡上昇に要する時間に反映されており、実施例1〜11の紙製容器は比較例1〜2の紙製容器と比べて、気泡上昇に要する時間が格段に短縮されていた。
このことを踏まえ、胴部の内面側の少なくとも一部に食品添加物が付着してなる実施例6〜10の紙製容器と、食品添加物の付着の無い実施例1〜5及び実施例11の紙製容器同士を比較すると、胴部の内面側の少なくとも一部に食品添加物が付着してなる実施例6〜10の紙製容器は、実施例1〜5及び実施例11の紙製容器と比べて、気泡上昇に要する時間が短縮されており、気泡の残存防止効果が優れることが分かる。
【0080】
また、実施例3及び実施例1の比較によれば、容器の内面側の端面の毛羽立ち率を低くすることによって、内容物における気泡の残存防止効果をより高められることが分かる。
【0081】
エクスパンダーローラー方式を用いた実施例11の紙製容器では、底部の円周部付近にボトム成形時のシワの発生が確認された。一方、エクスパンションシーリング方式を用いた実施例1〜10、及び比較例1〜2の紙製容器では、円周部付近にシワの発生は確認されなかった。
【0082】
容器外観の評価の結果、実施例1〜11のいずれの紙製容器でも容器外観は良好と判定された。
【0083】
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。