(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電子素子の材質と前記基板の材質との熱膨張係数の差が、前記補助電子素子の材質と前記基板の材質との熱膨張係数の差よりも大である、請求項11に記載の電子装置。
前記導電層は、前記素子配置用凹部底面に形成され、且つ前記接合補助凹部内面導電部に繋がる素子配置用凹部底面連絡部を有する、請求項1ないし20のいずれかに記載の電子装置。
前記導電層は、前記素子配置用凹部側面に形成され、且つ前記主面連絡部と前記素子配置用凹部底面連絡部とを繋ぐ素子配置用凹部側面連絡部を有する、請求項21に記載の電子装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、電子素子を適切に支持することが可能な電子装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によって提供される電子装置は、厚さ方向において互いに反対側を向く主面および裏面を有し、半導体材料よりなる基板と、前記基板に配置された電子素子と、前記電子素子に導通する導電層と、前記基板と前記導電層との間に介在する絶縁層と、を備え、前記基板には、前記主面から凹み且つ厚さ方向を向く素子配置用凹部底面を有する素子配置用凹部と、前記素子配置用凹部底面から凹み接合補助凹部内面を有する接合補助凹部と、が形成されており、前記絶縁層は、前記接合補助凹部内面の少なくとも一部を覆う接合補助凹部内面絶縁部を有しており、前記導電層は、前記接合補助凹部内面絶縁部上に積層された接合補助凹部内面導電部を有しており、前記接合補助凹部に充填され、且つ前記接合補助凹部導電部と前記電子素子とを接合する導電性接合材を備える。
【0006】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記接合補助凹部内面は、厚さ方向を向く接合補助凹部底面と、この接合補助凹部底面と前記素子配置用凹部底面とを繋ぐ接合補助凹部側面と、を有している。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記接合補助凹部側面は、前記厚さ方向に対し傾斜している。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記接合補助凹部底面に対する前記接合補助凹部側面の角度は、55度である。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記素子配置用凹部は、前記素子配置用凹部底面から起立する素子配置用凹部側面を有する。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記素子配置用凹部側面は、前記厚さ方向に対し傾斜している。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記素子配置用凹部底面に対する前記素子配置用凹部側面の角度は、55度である。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記素子配置用凹部側面は、前記主面に繋がっている。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記基板は、半導体材料の単結晶よりなる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記半導体材料は、Siである。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記主面および前記裏面は、前記基板の厚さ方向に直交し、且つ、平坦である。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記主面は、(100)面である。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記導電層は、前記素子配置用凹部底面に形成された素子配置用凹部パッドを含んでおり、前記素子配置用凹部パッドに搭載された補助電子素子を備えている。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記電子素子の材質と前記基板の材質との熱膨張係数の差が、前記補助電子素子の材質と前記基板の材質との熱膨張係数の差よりも大である。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記電子素子は、前記補助電子素子よりも体積が大である。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記導電層は、前記素子配置用凹部底面に形成され、且つ前記接合補助凹部を囲むとともに前記接合補助凹部内面導電部に繋がる接合補助凹部包囲部を含み、前記絶縁層および前記導電層上に積層され、且つ前記接合補助凹部包囲部の一部を露出させる開口を有する絶縁被覆層を備える。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記絶縁被覆層は、前記導電層よりも溶融状態の前記導電性接合材に対する濡れ性が低い材料からなる。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記絶縁被覆層は、半導体化合物からなる。
【0023】
本発明の好ましい実施の形態においては、半導体化合物は、SiNである。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記絶縁被覆層は、ポリイミド樹脂からなる。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記絶縁被覆層の前記開口の内端縁は、厚さ方向視において前記導電層の前記接合補助凹部包囲部に内包されている。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記導電層は、前記主面に形成された主面連絡部を有する。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記主面連絡部に繋がる主面電極パッドを備える。
【0028】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記導電層は、前記素子配置用凹部底面に形成され、且つ前記接合補助凹部内面導電部に繋がる素子配置用凹部底面連絡部を有する。
【0029】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記導電部は、前記素子配置用凹部側面に形成され、且つ前記主面連絡部と前記素子凹部底面連絡部とを繋ぐ素子配置用凹部側面連絡部を有する。
【0030】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記厚さ方向において前記素子配置用凹部とは反対側を向くシールチップ主面と、該シールチップ主面とは反対側を向くシールチップ裏面とを有するとともに、前記主面側において前記素子配置用凹部の少なくとも一部を覆うシールチップを備える。
【0031】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記シールチップは、前記主面に接合されている。
【0032】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記シールチップは、Siからなる。
【0033】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記シールチップ主面に形成されたシールチップ電極パッドを備える。
【0034】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記シールチップは、前記シールチップ裏面から前記シールチップ主面に向かうほど前記厚さ方向視において内方に位置するように傾いたシールチップ側面を有しており、前記導電層は、前記シールチップ側面に形成されたシールチップ側面連絡部を含む。
【0035】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記シールチップ側面連絡部は、前記主面の端縁に到達している。
【0036】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記導電層は、前記基板の前記主面に形成され、且つ前記シールチップ側面連絡部に接する主面連絡部を含む。
【0037】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記導電層は、前記素子配置用凹部底面に形成され、且つ前記接合補助凹部内面導電部に繋がる素子配置用凹部底面連絡部を有する。
【0038】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記導電部は、前記素子配置用凹部側面に形成され、且つ前記主面連絡部と前記素子凹部底面連絡部とを繋ぐ素子配置用凹部側面連絡部を有する。
【0039】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記素子配置用凹部には、空隙領域が設けられている。
【0040】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記空隙領域は、前記電子素子に接している。
【0041】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記電子素子と前記シールチップとは、前記空隙領域を介して離間している。
【0042】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記素子配置用凹部のすべてを、前記空隙領域が占めている。
【0043】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記素子配置用凹部の少なくとも一部を占める封止樹脂部を備える。
【0044】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記封止樹脂部は、前記電子素子に接している。
【0045】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記封止樹脂部は、前記電子素子のすべてを覆っている。
【0046】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記節樹脂部は、前記素子配置用凹部のすべてを占める。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、前記電子素子を支持する前記導電性接合材は、前記接合補助凹部を埋める構成とされている。前記接合補助凹部は、前記素子配置用凹部底面から凹んでいるため、前記導電性接合材の厚さは、前記接合補助凹部の深さ分厚くなる。前記導電性接合材が厚いほど、前記基板と前記電子素子との間に応力が生じた場合、この応力を緩和する機能を果たす。したがって、前記電子素子と前記導電性接合材との剥離等を防止可能であり、前記電子素子をより適切に支持することができる。
【0048】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0051】
図1および
図2は、本発明の第1実施形態に基づく電子装置を示している。本実施形態の電子装置A1は、基板1、絶縁層2、導電層3、主面電極パッド342、絶縁被覆層5、封止樹脂部6および電子素子71を備えている。
図1は電子装置A1を示す断面図である。
図2は、電子装置A1を示す要部拡大断面図である。また、
図3は、基板1を示す平面図である。
図4は、基板1、導電層3および絶縁被覆層5を示す要部拡大平面図である。
【0052】
基板1は、半導体材料の単結晶よりなる。本実施形態においては、基板1は、Si単結晶からなる。基板1の材質は、Siに限定されず、たとえば、SiCであってもよい。基板1の厚さは、たとえば、200〜550μmである。基板1には、電子素子71が配置されている。
【0053】
基板1は、主面111と、裏面112と、を有する。
【0054】
主面111は、厚さ方向の一方を向く。主面111は平坦である。主面111は厚さ方向に直交する。主面111は、(100)面、あるいは、(110)面である。本実施形態では、主面111は、(100)面である。
【0055】
裏面112は、厚さ方向の他方を向く。すなわち、裏面112および主面111は互いに反対側を向く。裏面112は平坦である。裏面112は厚さ方向に直交する。
【0056】
基板1には、
図3に示すように、素子配置用凹部14および複数の接合補助凹部18が形成されている。
【0057】
素子配置用凹部14は、主面111から凹んでいる。素子配置用凹部14には、電子素子71が配置されている。素子配置用凹部14の深さ(主面111と後述の素子配置用凹部底面142との、厚さ方向における離間寸法)は、たとえば、100〜300μmである。素子配置用凹部14は、厚さ方向視において矩形状である。素子配置用凹部14の形状は、主面111として(100)面を採用したことに依存している。
【0058】
素子配置用凹部14は、素子配置用凹部側面141および素子配置用凹部底面142を有している。
【0059】
素子配置用凹部底面142は、基板1の厚さ方向において主面111と同じ側を向く。素子配置用凹部底面142は、厚さ方向視において矩形状である。素子配置用凹部底面142には、電子素子71が配置されている。素子配置用凹部底面142は、厚さ方向に直交する面である。
【0060】
素子配置用凹部側面141は、素子配置用凹部底面142から起立する。素子配置用凹部側面141は、素子配置用凹部底面142につながっている。素子配置用凹部側面141は、厚さ方向に対し傾斜している。厚さ方向に直交する平面に対する素子配置用凹部側面141の角度は、55度である。これは、主面111として(100)面を採用したことに由来している。素子配置用凹部側面141は、4つの平坦面を有している。
【0061】
接合補助凹部18は、素子配置用凹部底面142から凹んでいる。接合補助凹部18の深さ(素子配置用凹部底面142と後述の接合補助凹部底面182との、厚さ方向における離間寸法)は、たとえば、5〜50μmである。接合補助凹部18は、厚さ方向視において矩形状である。接合補助凹部18の形状は、主面111として(100)面を採用したことに依存している。
【0062】
接合補助凹部18は、接合補助凹部内面181を有している。接合補助凹部内面181は、接合補助凹部底面182および接合補助凹部底面182からなる。
【0063】
接合補助凹部底面182は、基板1の厚さ方向において主面111と同じ側を向く。素接合補助凹部底面182は、厚さ方向視において矩形状である。接合補助凹部底面182は、厚さ方向に直交する面である。
【0064】
接合補助凹部側面183は、接合補助凹部底面182から起立する。接合補助凹部側面183は、接合補助凹部底面182につながっている。接合補助凹部側面183は、厚さ方向に対し傾斜している。厚さ方向に直交する平面に対する接合補助凹部側面183の角度は、55度である。これは、主面111として(100)面を採用したことに由来している。接合補助凹部側面183は、4つの平坦面を有している。
【0065】
絶縁層2は、導電層3と基板1との間に介在している。絶縁層2の厚さは、たとえば0.1〜1.0μm程度である。絶縁層2は、たとえば、SiO
2あるいはSiNよりなる。
【0066】
絶縁層2は、凹部内面絶縁部21、接合補助凹部内面絶縁部22および裏面側絶縁部24を有する。
【0067】
凹部内面絶縁部21は、基板1の素子配置用凹部14に形成されている。本実施形態では、凹部内面絶縁部21は、素子配置用凹部側面141および素子配置用凹部底面142のすべてに形成されている。凹部内面絶縁部21は、たとえば熱酸化によって形成されている。凹部内面絶縁部21は、たとえば、SiO
2よりなる。
【0068】
接合補助凹部内面絶縁部22は、基板1の接合補助凹部18に形成されている。本実施形態では、接合補助凹部内面絶縁部22は、接合補助凹部内面181の接合補助凹部底面182および接合補助凹部側面183のすべてに形成されている。接合補助凹部内面絶縁部22は、たとえば熱酸化によって形成されている。接合補助凹部内面絶縁部22は、たとえば、SiO
2よりなる。
【0069】
裏面側絶縁部24の少なくとも一部は、基板1の裏面112に形成されている。裏面側絶縁部24は、熱酸化によって形成されている。裏面側絶縁部24は、たとえば、SiO
2よりなる。本実施形態においては、裏面側絶縁部24は、裏面112のすべてを覆っている。
【0070】
導電層3は、電子素子71に導通する。導電層3は、電子素子71に入出力する電流経路を構成するためのものである。導電層3は、主面111、素子配置用凹部側面141、素子配置用凹部底面142および接合補助凹部内面181に形成されている。
【0071】
導電層3は、シード層31およびメッキ層32を含む。
【0072】
シード層31は、所望のメッキ層32を形成するためのいわゆる下地層である。シード層31は、基板1とメッキ層32との間に介在している。シード層31は、たとえばCuよりなる。シード層31は、たとえばスパッタリングによって形成される。シード層31の厚さは、たとえば、1μm以下である。
【0073】
メッキ層32は、シード層31を利用した電解めっきによって形成される。メッキ層32は、たとえばCuあるいはTi、Ni、Cuなどが積層された層よりなる。メッキ層32の厚さは、たとえば3〜10μm程度である。メッキ層32の厚さは、シード層31の厚さよりも厚い。
【0074】
導電層3は、接合補助凹部内面導電部34、接合補助凹部包囲部35、素子配置用凹部底面連絡部36、主面連絡部38および素子配置用凹部側面連絡部39を含む。
【0075】
接合補助凹部内面導電部34は、接合補助凹部18に設けられており、接合補助凹部内面絶縁部22上に形成されている。接合補助凹部内面導電部34は、接合補助凹部18の接合補助凹部内面181の少なくとも一部を覆うものであり、本実施形態においては、接合補助凹部内面181のすべてを覆う接合補助凹部内面絶縁部22のすべてを覆っている。接合補助凹部内面導電部34は、電子素子71を素子配置用凹部底面142に搭載するために用いられる。
【0076】
接合補助凹部包囲部35は、素子配置用凹部底面142に形成され、且つ接合補助凹部18を囲むとともに接合補助凹部内面導電部34に繋がる。また、接合補助凹部包囲部35は、素子配置用凹部内面絶縁部21上に積層されている。本実施形態においては、
図4に示すように、接合補助凹部包囲部35は、接合補助凹部18を全周にわたって囲んでいる。また、接合補助凹部内面導電部34のすべての外縁は、接合補助凹部包囲部35の内縁と一致している。
【0077】
素子配置用凹部底面連絡部36は、素子配置用凹部14の素子配置用凹部底面142に形成されており、素子配置用凹部内面絶縁部21上に積層されている。素子配置用凹部底面連絡部36は、接合補助凹部包囲部35と繋がっており、且つ素子配置用凹部底面142の外縁に到達している。
【0078】
主面連絡部38は、基板1の主面111に形成されており、絶縁層2のうち主面111を覆う部分に積層されている。主面連絡部38は、素子配置用凹部14の素子配置用凹部側面141の外縁に到達している。
【0079】
素子配置用凹部側面連絡部39は、基板1の素子配置用凹部14の素子配置用凹部側面141に形成されており、素子配置用凹部内面絶縁部21上に積層されている。素子配置用凹部側面連絡部39は、素子配置用凹部底面連絡部36と主面連絡部38とを繋いでいる。
【0080】
主面電極パッド342は、基板1の主面111に形成されており、主面連絡部38のうち封止樹脂部6から露出する部分に接している。より具体的には、主面電極パッド342は、導電層3の主面連絡部38に接しており、且つ、電子素子71に導通している。主面電極パッド342は、たとえば基板1の主面111に近い順に、Ni層、Pd層、およびAu層が積層された構造となっている。
【0081】
電子素子71は、素子配置用凹部14に配置されており、素子配置用凹部底面142よりも厚さ方向において主面111側に位置している。電子素子71の一例としては、たとえばインダクタやキャパシタなどの受動素子が挙げられる。これらの受動素子は、基板1を構成する半導体とは異なる材質であるたとえば金属などからなる。このため、基板1と電子素子71との熱膨張係数は、互いに相違する。あるいは、電子素子71の他の例としては、集積回路素子が挙げられ、具体的には、いわゆるASIC(Application Specific Integrated Circuit)素子である。
【0082】
電子素子71は、導電性接合材75を介して導電層3の接合補助凹部内面導電部34に接合されている。導電性接合材75は、導電性を有する材質からなり、
図2に示すように、電子素子71の電極711と導電層3の接合補助凹部内面導電部34とを接合している。本実施形態においては、導電性接合材75は、接合補助凹部内面導電部34のすべてと接しており、接合補助凹部18のすべてを埋めている。また、導電性接合材75は、素子配置用凹部底面142よりも厚さ方向において主面111側に位置する部分を有している。導電性接合材75の一例としては、たとえばハンダが挙げられる。
【0083】
絶縁被覆層5は、絶縁層2および導電層3のほとんどを覆っている。絶縁被覆層5は、絶縁性材料からなる。溶融状態の導電性接合材75に対する絶縁被覆層5濡れ性は、導電層3の当該濡れ性よりも低い。この絶縁性材料の一例を挙げると、たとえば半導体化合物であり、より具体的にはSiNである。また、絶縁性材料の他の例としては、たとえばポリイミド樹脂が挙げられる。
【0084】
絶縁被覆層5は、複数の開口51を有している。
図4に示すように、開口51は、接合補助凹部包囲部35の一部を露出させる。本実施形態においては、絶縁被覆層5の開口51の内端縁は、厚さ方向視において導電層3の接合補助凹部包囲部35に内包されている。
【0085】
図2によく表れているように、導電性接合材75の端縁は、絶縁被覆層5の開口51の内端縁と一致している。すなわち、導電性接合材75は、接合補助凹部内面導電部34および接合補助凹部包囲部35のうち絶縁被覆層5の開口51から露出して部位のすべてに接している。また、導電性接合材75は、絶縁被覆層5よりも厚さ方向において主面111側に突出している。
【0086】
封止樹脂部6は、素子配置用凹部14に充填され、電子素子71を覆っている。封止樹脂部6の材質としては、たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール(PBO)樹脂、および、シリコーン樹脂が挙げられる。封止樹脂部6は、透光性樹脂または非透光性樹脂のいずれであってもよいが、本実施形態においては、非透光性樹脂が好ましい。封止樹脂部6は、電子素子71のすべてを覆っている。
【0087】
図1に示すように、絶縁被覆層5のうち主面111を覆う部分には、主面連絡部38を露出させる開口が設けられている。同様に、封止樹脂部6のうち主面111を覆う部分には、主面連絡部38を露出させる開口が設けられている。これらの開口を通して、主面電極パッド342は、主面連絡部38に接するように形成されている。
【0088】
次に、電子装置A1の製造方法の一例について、
図5〜
図12を参照しつつ、以下に説明する。
【0089】
まず、
図5に示すように基板1を用意する。基板1は、半導体材料の単結晶からなり、本実施形態においては、Si単結晶からなる。基板1の厚さは、たとえば200〜550μm程度である。基板1は、上述した電子装置A1の基板1を複数個得ることのできるサイズである。すなわち、以降の製造工程においては、複数の電子装置A1を一括して製造する手法を前提としている。1つの電子装置A1を製造する方法であっても構わないが、工業上の効率を考慮すると、複数の電子装置A1を一括して製造する手法が現実的である。なお、
図4に示す基板1は、電子装置A1における基板1とは厳密には異なるが、理解の便宜上、いずれの基板についても、基板1として表すものとする。
【0090】
基板1は、互いに反対側を向く主面111および裏面112を有している。本実施形態においては、主面111として結晶方位が(100)である面、すなわち(100)面を採用する。
【0091】
次いで、主面111をたとえば酸化させることによりSiO
2からなるマスク層を形成する。このマスク層の厚さは、たとえば0.7〜1.0μm程度である。
【0092】
次いで、前記マスク層に対してたとえばエッチングによるパターニングを行う。これにより、前記マスク層にたとえば矩形状の開口を形成する。この開口の形状および大きさは、最終的に得ようとする素子配置用凹部14の形状および大きさに応じて設定する。
【0093】
次いで、基板1に対して、たとえばKOHを用いた異方性エッチングによって行う。KOHは、Si単結晶に対して良好な異方性エッチングを実現しうるアルカリエッチング溶液の一例である。これにより、基板1には、素子配置用凹部14が形成される。さらに、素子配置用凹部14を覆うマスク層を形成し、このマスク層に複数の接合補助凹部18に対応する矩形状の開口を形成する。次いでたとえばKOHを用いた異方性エッチングを行う。これにより、
図6に示すように、素子配置用凹部14および複数の接合補助凹部18が形成される。素子配置用凹部14は、素子配置用凹部側面141および素子配置用凹部底面142を有しており、主面111から凹んでいる。素子配置用凹部14は、厚さ方向視矩形状である。接合補助凹部18は、接合補助凹部底面182および接合補助凹部側面183からなる接合補助凹部内面181を有しており、素子配置用凹部底面142から凹んでいる。
【0094】
次いで、
図7に示すように、熱酸化させることにより、主面111、素子配置用凹部側面141、素子配置用凹部底面142および接合補助凹部内面181と裏面112とに、絶縁層2を形成する。この絶縁層2は、上述した凹部内面絶縁部21および接合補助凹部内面絶縁部22となる部分を含む。
【0095】
次いで、
図8に示すように、導電層3を形成する。導電層3の形成は、シード層31およびメッキ層32の形成を含む。シード層31は、たとえばCuを用いたスパッタリングを行った後にパターニングを施すことにより、形成される。メッキ層32の形成は、たとえばシード層31を利用した電解メッキによって行う。この結果、たとえばCuあるいはTi、Ni、Cuなどが積層された層からなるメッキ層32が得られる。シード層31およびメッキ層32は、積層されることにより導電層3をなす。この際、導電層3は、たとえば接合補助凹部内面導電部34、接合補助凹部包囲部35、素子配置用凹部底面連絡部36、主面連絡部38および素子配置用凹部側面連絡部39を含む形状とされている。
【0096】
次いで、
図9に示すように、絶縁被覆層5を形成する。絶縁被覆層5の形成は、たとえばSiNなどの半導体化合物あるいはポリイミド樹脂を、スパッタリングやCVDによって成膜することによって行う。また、この絶縁被覆層5には、複数の開口51を形成する。開口51は、接合補助凹部18を囲む形状である。また、絶縁被覆層5には、主面連絡部38の一部を露出させる開口を形成する。
【0097】
次いで、
図10に示すように、接合補助凹部内面導電部34と接合補助凹部包囲部35のうち絶縁被覆層5の開口51から露出する部分に、導電性ペースト75Aを塗布する。75Aは、たとえばハンダペーストである。
【0098】
次いで、
図11に示すように、電子素子71と搭載する。まず、上述した電子素子71の電極711を導電性ペースト75Aに付着させるように電子素子7を素子配置用凹部14内に配置する。次いで、リフロー炉内において加熱するなどにより、導電性ペースト75Aを硬化させる。これより、導電性接合材75が形成され、電子素子71が接合補助凹部内面導電部34に接合される。なお、本方法に代えて、電子素子71の電極711に、たとえばハンダボールを形成しておく手法を採用してもよい。ハンダボールには、フラックスを塗布しておく。このフラックスの粘着性を利用して、電子素子71を接合補助凹部内面導電部34に載置する。
【0099】
次いで、
図12に示すように、封止樹脂部6を形成する。封止樹脂部6の形成は、たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール(PBO)樹脂、および、シリコーン樹脂を含む液体樹脂材料を素子配置用凹部14に注入し、これを硬化させることによって行う。また、封止樹脂部6には、主面連絡部38の一部を露出させる開口を形成する。
【0100】
次いで、主面電極パッド342を形成する。主面電極パッド342は、たとえばNi,Pd,Auなどの金属を無電解めっきすることにより形成される。
【0101】
そして、基板1をたとえばダイサーによって切断するこれにより、
図1および
図2に示した電子装置A1が得られる。
【0102】
次に、電子装置A1の作用について説明する。
【0103】
本実施形態によれば、電子素子71を支持する導電性接合材75は、接合補助凹部18を埋める構成とされている。接合補助凹部18は、素子配置用凹部底面142からへこんでいるため、導電性接合材75の厚さは、接合補助凹部18の深さ分厚くなる。導電性接合材75が厚いほど、基板1と電子素子71との間に応力が生じた場合、この応力を緩和する機能を果たす。したがって、電子素子71と導電性接合材75との剥離等を防止可能であり、電子素子71をより適切に支持することができる。
【0104】
接合補助凹部18の接合補助凹部内面181を構成する接合補助凹部底面182よび接合補助凹部側面183のすべてを接合補助凹部内面導電部34が覆うことにより、導電性接合材75によって接合補助凹部18のすべてを埋めやすくなるという利点がある。
【0105】
開口51を有する絶縁被覆層5によって絶縁層2および導電層3を覆うことにより、電子装置A1の製造においては、溶湯状態の導電性接合材75は、開口51内に留められる。このため、溶融状態の導電性接合材75が不当に広がってしまうことにより、意図しない導通が生じてしまうことを防止することができる。また、溶融状態の導電性接合材75の広がりを抑制することにより、導電性接合材75の厚さをより厚くすることが可能である。これは、電子素子71と導電性接合材75との剥離防止等に好ましい。
【0106】
電子素子71は、素子配置用凹部14に配置されている。このため、電子素子71は、基板1の主面111に対して基板1の内部に位置することとなる。このため、電子装置A1の使用時などにおいて、電子素子71に外力が直接作用することを防止することが可能である。これは、電子素子71を適切に支持するのに好ましい。また、電子素子71を覆う封止樹脂部6を素子配置用凹部14に充填するように形成することにより、電子素子71をより確実に保護することができる。
【0107】
主面111として(100)面を選択し、上述したKOHを用いた異方性エッチングを施すことにより、素子配置用凹部底面142および素子配置用凹部側面141は、非常に平滑な平面となっている。このような素子配置用凹部底面142および素子配置用凹部側面141は、接合補助凹部包囲部35および素子配置用凹部底面連絡部36や素子配置用凹部側面連絡部39を形成するのに適しており、素子配置用凹部底面連絡部36や素子配置用凹部側面連絡部39が断線することなどを回避することができる。
【0108】
主面111として(100)面を選択し、上述したKOHを用いた異方性エッチングを施すことにより、接合補助凹部内面181の接合補助凹部底面182および接合補助凹部側面183は、非常に平滑な平面となっている。このような接合補助凹部底面182および接合補助凹部側面183は、接合補助凹部内面導電部34を形成するのに適しており、接合補助凹部内面導電部34が断線することなどを回避することができる。
【0109】
図13〜
図15は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0110】
図13および
図14は、本発明の第2実施形態に基づく電子装置を示している。本実施形態の電子装置A2は、電子装置A2における封止樹脂部6および主面電極パッド342を備えていない点と、シールチップ4おおびシールチップ電極パッド341を備えている点と、が電子装置A2と異なっている。
図13は、電子装置A2全体の断面図である。
図14は、電子装置A2を示す要部拡大断面図である。
【0111】
シールチップ4は、厚さ方向において主面111と同じ側を向くシールチップ主面41およびシールチップ主面41とは反対側を向くシールチップ裏面42を有している。シールチップ4は、主面111側において素子配置用凹部14の少なくとも一部を覆っている。本実施形態においては、シールチップ4は、素子配置用凹部14のすべてを覆っている。シールチップ4は、たとえばSiからなる。また、シールチップ4には、電子装置A2の機能の一部を果たす集積回路が作りこまれていてもよい。
【0112】
シールチップ4は、シールチップ側面43を有する。シールチップ側面43は、シールチップ裏面42からシールチップ主面41に向かうほど厚さ方向視において内方に位置するように傾いている。シールチップ主面41およびシールチップ裏面42が(100)面である場合シールチップ側面43がシールチップ主面41またはシールチップ裏面42となす角度は、55度である。シールチップ4は、主面111に接合層45によって接合されている。接合層45は、導電性材料でも絶縁性材料であってもよい。
【0113】
本実施形態においては、素子配置用凹部14は、シールチップ4によって密閉状態とされている。また、素子配置用凹部14は、空隙領域145を含んでいる。空隙領域145は、不活性ガスなどの気体または真空とされた空間である。本実施形態においては、素子配置用凹部14は、そのすべてが空隙領域145によって占められている。空隙領域145は、電子素子71に接している。また、電子素子71とシールチップ4との間には、空隙領域145が介在している。
【0114】
シールチップ4の厚さは、電子素子71を適切に保護しうる厚さであればよい。また、シールチップ4の厚さは、基板1の厚さが固定されている場合に、電子装置A2全体の厚さを調整することを目的として設定されてもよい。
【0115】
導電層3は、シールチップ側面連絡部37を含んでいる。シールチップ側面連絡部37は、シールチップ4のシールチップ側面43に形成されており、導電層3のうちシールチップ4のシールチップ主面41に形成された部分とシールチップ裏面42側に位置する主面連絡部38とを連絡している。また、本実施形態においては、シールチップ側面連絡部37は、主面111の端縁に到達している。シールチップ側面連絡部37は、シード層31およびメッキ層32によって構成されているが、これ以外の層構造であってもよい。
【0116】
シールチップ電極パッド341は、シールチップ4のシールチップ主面41に形成されている。シールチップ電極パッド341は、導電層3に接しており、且つ、電子素子71に導通している。シールチップ電極パッド341は、たとえばシールチップ4のシールチップ主面41に近い順に、Ni層、Pd層、およびAu層が積層された構造となっている。本実施形態では、シールチップ電極パッド341は矩形状である。
【0117】
本実施形態によっても、導電性接合材75によって電子素子71を適切に支持することが可能である。
【0118】
また、素子配置用凹部14は、シールチップ4によって覆われている。これにより、素子配置用凹部14に収容された電子素子71をシールチップ4によってより適切に保護することができる。
【0119】
素子配置用凹部14は、空隙領域145を含んでいる。空隙領域145は、電子素子71に接している。空隙領域145は、電子素子71に対して力を伝えない。このため、電子素子71に外力が作用することを抑制することが可能であり、電子素子71を保護するのに好ましい。
【0120】
シールチップ4と電子素子71との間には、空隙領域145が介在している。これにより、外部からの力などを受けうるシールチップ4から電子素子71へとこの力が伝えられてしまうことを防止することができる。
【0121】
本実施形態においては、素子配置用凹部14のすべてが空隙領域145によって占められている。これにより、電子素子71に外力が伝わることをより好適に回避することができる。
【0122】
空隙領域145は、シールチップ4によって密閉されている。これにより、外部からの湿気などが素子配置用凹部14に侵入し、電子素子71に影響を及ぼすことを防止することができる。
【0123】
シールチップ4には、シールチップ側面43が設けられている。シールチップ側面43は、シールチップ裏面42からシールチップ主面41に向かうほど厚さ方向視において内方に位置するように傾いている。このため、めっきなどの手法によってシールチップ側面連絡部37を容易に形成することが可能である。これにより、シールチップ4のシールチップ主面41に設けたシールチップ電極パッド341と電子素子71とを適切に導通させることができる。
【0124】
シールチップ電極パッド341は、平面視において主面111や素子配置用凹部14と重なる位置に設けることができる。これにより、電子装置A2の平面視寸法を小型化することができる。
【0125】
図15は、本発明の第3実施形態に基づく電子装置を示している。本実施形態の電子装置A3は、電子素子71に加えて補助電子素子72を備えている。
【0126】
補助電子素子72は、本発明における搭載態様が、電子素子71の搭載態様と比べて補助的である。具体的には、導電層3は、素子配置用凹部パッド33を含んでいる。素子配置用凹部パッド33は、素子配置用凹部14の素子配置用凹部底面142に形成されており、素子配置用凹部底面連絡部36に繋がっている。補助電子素子72は、素子配置用凹部パッド33に対してたとえばハンダなどの導電性接合材75を介して接合されている。
【0127】
電子素子71と補助電子素子72との関係の一例を挙げると、電子素子71の熱膨張係数と基板1の熱膨張係数との差は、補助電子素子72の熱膨張係数と基板1の熱膨張係数との差よりも大である。この場合、温度変化によって電子素子71により大きな熱応力が生じる。このような相対的に大きな熱応力が生じる電子素子71を導電性接合材75によって搭載することにより、導電性接合材75と電子素子71とが剥離することを回避することができる。たとえば、基板1が半導体からなり、電子素子71が金属からなり、補助電子素子72が半導体からなる場合がこれにあたる。あるいは、電子素子71が補助電子素子72よりも体積が大である関係が挙げられる。仮に材質が同じであっても、体積が大である方が、より大きな熱応力を生じうる。この場合においても導電性接合材75の剥離抑制機能が発揮される。
【0128】
本発明に係る電子装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る電子装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。