(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、測量機に備えられる望遠鏡は、測量機本体に対し水平軸および垂直軸によって回転可能に支承されている。これらの回転軸には、上記望遠鏡の視準を精度よく行うために、手動ツマミにより回転する駆動機構が設けられている。この種の駆動機構には、代表的な方法が2つ知られており、一つ目はネジを利用した機構(特許文献1の
図4参照)、二つ目は歯車を利用した機構(特許文献1の
図5参照)がある。
【0003】
また、この種の駆動機構には、視準動作に応じて2速動作が可能なものが要望されており、例えばネジ機構であれば、微動用と粗動用でネジピッチを変えた二つのネジ機構を備えることで、歯車機構であれば多段ギアで構成することで、微動と粗動の2速動作を行える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の駆動機構への要望として、近年では、「正確な視準」「エンドレス動作(移動範囲制限無し)」が挙げられることも多い。しかし、ネジ機構では移動範囲に制限がある。歯車機構は、移動範囲制限の無いエンドレス動作が可能であるが、歯車のバックラッシュにより正確な視準が阻害されるという不具合がある。さらに「小型化」「コストダウン」の要望も加味すれば、上記した手段で2速動作を叶えていては、構成が複雑となり、サイズアップやコスト高となるおそれがある。
【0006】
本発明は、前記問題を解決するため、第1に、2速動作が可能で、正確な視準、エンドレス動作を可能とする新規な測量機の駆動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る駆動機構は、測量機本体に回転可能に設けられた望遠鏡に備えられる駆動機構であって、前記望遠鏡を回転させる回転軸と、前記回転軸と同軸で前記回転軸とともに回転する第1の回転体と、前記第1の回転体を前記望遠鏡の回転方向である第1の方向に駆動させるために第2の方向に直線移動する第2の回転体と、前記第2の回転体の一端部に連結され、前記第2の回転体を前記第2の方向に押引する第3の回転体と、を有する。
【0008】
この態様によれば、望遠鏡の回転を担う第1の回転体は、第2の回転体の直進移動により回転方向に駆動されるとともに、第2の回転体の一端部に自身の軸方向に移動可能に連結された第3の回転体の直進移動によっても駆動される。
【0009】
上記態様において、前記第3の回転体の1回転による前記第1の回転体の駆動が前記第2の回転体の1回転による前記第1の回転体の駆動よりも小さく構成されることが好ましい。これにより、第1の回転体(望遠鏡)は、第2の回転体による粗動と第3の回転体による微動の2速動作が可能となる。
【0010】
上記態様において、第1の回転体はウォームホイル、前記第2の回転体はウォームギアであることが好ましい。これにより、移動範囲の制限なく、望遠鏡を回転させることができる。
【0011】
上記態様において、第3の回転体はネジであることが好ましい。これにより、望遠鏡の回転をネジピッチで微調整することができる。
【0012】
上記態様において、前記ウォームギアはセルフロック式であって、前記ウォームホイルの駆動が自動固定されるのが好ましい。これにより、駆動機構にロック機構を別装することなく、ウォームホイルの駆動を固定できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、2速動作が可能で、正確な視準、エンドレス動作を可能とする新規な駆動機構を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において、矢印L-Rは測量機を正面視した場合の左右方向を、矢印U-Dは同上下方向を、矢印F-Bは同前後方向を示している。
【0016】
(第1の実施形態)
図1において、符号1は測量機であり、測量機1は、図示を略する三脚上に整準台を介して固設される基盤2と、基盤2に縦軸3を介して公知の手段により水平方向に回転可能に支承された一対の支柱4と、支柱4に横軸5を介して駆動機構7により鉛直方向に回転可能に支承された視準望遠鏡6(以下単に望遠鏡とする)と、を有する。
【0017】
図2を用いて、望遠鏡6に備えられた駆動機構7について説明する。駆動機構7は、測量機1の支柱4に鉛直方向に回転可能に設けられた望遠鏡6の、横軸5(回転軸)に設けられている。駆動機構7は、ウォームホイル10(第1の回転体)、ウォームギア20(第2の回転体)、微動ネジ30(第3の回転体)を有する。
【0018】
ウォームホイル10は、支柱4内において、横軸5の端部周面(
図1の右端)に設けられ、支承されている。ウォームホイル10は、横軸5と同軸で横軸5とともに鉛直方向(第1の方向)に回転する。
【0019】
ウォームギア20は、支柱4内において、ウォームホイル10に噛合し、ウォームホイル10の下方に、前後方向に設けられている。ウォームギア20を回転させると、ウォームギア20が前後方向(第2の方向)に直線移動し、ウォームホイル10が鉛直方向に回転する。ウォームギア20には、セルフロック式のもの(出力側の歯車から入力側の歯車を逆回転させることができない機能を有するもの)を使用する。
【0020】
微動ネジ30は、支柱4内において、一方の端部(以下、前端31とする)がカップリング40を介してウォームギア20の後端21と連結され、前後方向に設けられている。微動ネジ30には、全ねじのタイプ(外周全域に雄ねじが形成され、頭部を有さないもの)を使用する。
【0021】
微動ネジ30の他方の端部(以下、後端32とする)には、手動動作されるツマミ部50が設けられている。ツマミ部50は、支柱4の外表に現れる。ツマミ部50には、微動ネジ30の雄ネジ部(図示略)と螺合する雌ネジ部(図示略)が内周全域に形成された円筒部51が、前後方向に形成されている。ツマミ部50を回すと、微動ネジ30は、円筒部51において自身の軸方向(前後方向)に移動可能である。
【0022】
微動ネジ30およびこれにカップリング40で連結されたウォームギア20は、ツマミ部50を介して固定部に片持ち状に保持されている。この固定部は特に限定されないが、本形態のように支柱4の筐体が担うと部品点数が削減され好適である。微動ネジ30を回転させると、微動ネジ30は円筒部51を前後方向(第2の方向)に直線移動する。
【0023】
駆動機構7による視準動作を説明する。まず、ツマミ部50を利用して望遠鏡6を粗動調整したい場合は、ツマミ部50を図の矢印Rまたは矢印Lのいずれか任意の方向に回し、微動ネジ30の後端32を円筒部51の後端または前端まで突き当てる。この状態から、ツマミ部50を同方向に回し続ければ、微動ネジ30は回転が停止された状態となるため、微動ネジ30およびウォームギア20が一体に回転し、ウォームホイル10はその歯数に応じて駆動される。
【0024】
上記粗動調整の後、望遠鏡6を微動調整したい場合は、ツマミ部50を上記の微動ネジ30を突き当てした方向とは逆の方向に回す。すると、微動ネジ30は係止状態から開放されるので、上記方向とは逆の方向に直進移動する。微動ネジ30は、その前端31においてウォームギア20と連結されているため、微動ネジ30の直進移動に押引されてウォームギア20も微小に直進移動し、ウォームホイル10はネジピッチ単位で駆動される。
【0025】
または、視準したい方向までおおよそ手で望遠鏡6を動かして粗動調整してもよく、この場合、駆動機構7はウォームギア20のセルフロック機構により固定されたままとなる。この後、微動調整したい場合は、ツマミ部50を矢印Rまたは矢印Lのいずれか調整したい方向に回す。微動ネジ30が突き当たらない限り、微動ネジ30は円筒部51を直進移動し、上記と同様に、ウォームギア20を介してウォームホイル10はネジピッチ単位で微小に駆動される。
【0026】
以上の構成からなる駆動機構7によれば、望遠鏡6の回転を担うウォームホイル10は、ウォームギア20の直進移動(回転)により鉛直方向に駆動されるとともに、ウォームギア20の後端21に同一直線上に接続された微動ネジ30の直進移動(回転)によっても駆動される。駆動機構7は、従来の手法のように複数ネジ又は多段ギアのみで構成された2速動作機構ではなく、ネジと歯車それぞれの利点を発揮できるように構成されており、ウォームギア20の回転によるエンドレスな粗動動作と、微動ネジ30の回転による微動動作の、2速動作が行える。
【0027】
また、駆動機構7は、ウォームギア20の一端部に微動ネジ30を移動可能に連結した構成であるため、簡易な構成で、粗動と微動を使い分ける(切り換える)ことができる。特に、微動ネジ30はツマミ部50(円筒部51)において移動可能であり、端部連結によりウォームギア20を押引する構造であるため、ウォームギア20がどの位置でウォームホイル10と噛み合っていても、その位置から微動調整を開始することができる。このため、上記したように、ツマミ部50を利用して粗動調整した後に微動調整を行う、手でおおよその粗動調整をした後に微動調整を行う、あるいは微動調整を一旦キャンセルして粗動調整をやり直す、などの様々な視準動作に対し、移動範囲制限少なくスムーズに対応することができる。
【0028】
また、駆動機構7は、ウォームギア20にセルフロック式が採用されているため、ウォームホイル10の駆動がウォームギア20に伝達することがなく、特段のロック機構を設けなくとも、自動でロックがかかる。
【0029】
さらに、微動動作においては、ツマミ部50での調整は、微動ネジ30による微小な移動に変換されるため、ギアのバックラッシュが生じにくい。また、微動ネジ30とウォームギア20を連結するカップリング40においてもバックラッシュは吸収されるため、高精度な視準が行える。
【0030】
また、駆動機構7は、ウォームギア20と微動ネジ30を端部で連結させたことによって2ストロークを実現しているため、多段ギアにより構成される2速動作機構に比して安価であり、ユニットサイズも低減できる。さらに、手動による動作で成立するため、ウォームギア20に対するモータ等の高価部品を必要としない。
【0031】
また、駆動機構7は、ウォームギア20の端部と微動ネジ30の端部をカップリング40によって連結するだけの簡易な構成であるため、ウォームホイル10、ウォームギア20、および微動ネジ30を、専用部品に加工する必要はなく、いずれも汎用に流通しているものを使用してよい。このため、部品の加工工数やそれによるコストアップも生じさせずに済む。また、上記のように、ウォームギア20のセルフロックにより、別途のロック機構を備えなくてよいことも、部品点数の削減およびコスト面に有利となる。なお、カップリング40も、ウォームギア20と微動ネジ30の軸と軸を連結する機能を有すればよく、簡易なタイプで十分であり、複雑な構成で高価なものを用いる必要がない。
【0032】
また、駆動機構7は、微動ネジ30のネジピッチにより容易に分解能を設定することができる。また、ウォームホイル10の歯数と微動ネジ30のネジピッチでギア比が設定できるため、減速比の設計が容易である。
【0033】
なお、以上の駆動機構7は、以下の変形を伴ってよい。
【0034】
図3に示すように、駆動機構7は、望遠鏡6を鉛直方向に回転させる横軸5に設けられる場合に限らず、例えば望遠鏡6を水平方向に回転させる縦軸3に設けられても良い。
【0035】
駆動機構7は、測量機1の基盤2に対して支柱4を介して水平方向(第1の方向)に回転可能に設けられた望遠鏡6の、縦軸3(回転軸)に設けられている。ウォームホイル10は、基盤2内において、縦軸3の端部周面(
図3の下端)に設けられ、支承されている。ウォームギア20は、基盤2内において、ウォームホイル10に噛合し、ウォームホイル10の右方に、前後方向(第2の方向)に直進移動可能に設けられている。微動ネジ30は、基盤2内において、前端31がカップリング40を介してウォームギア20の後端21と連結され、前後方向に直進移動可能に設けられている。この構成とすれば、望遠鏡6は、水平方向にも駆動機構7による2速動作が可能となる。
【0036】
この他に、駆動機構7は、微動ネジ30を、ウォームギア20がウォームホイル10の回転方向である第1の方向に回転させる第2の方向に押引されるように構成すればよいことから、カップリング40にユニバーサルジョイントを用いれば、ウォームギア20と微動ネジ30を同一直線上に配置しなくてもよい。この形態としても、微動ネジ30の直線移動(回転)でウォームギア20を第2の方向へ押引可能であり、設計自由度を広げることができる。
【0037】
なお、上記において、第1の方向および第2の方向は測量機1の仕様に応じて適宜に変更されてよく、第1の方向は、例示した鉛直方向または水平方向に限定されず望遠鏡6の回転方向に倣う方向であればよい。第2の方向も、例示した前後方向のみに限定されず、第1の回転体を第1の方向に駆動させられる方向であればよい。また、微動ネジ30が連結される側は、例示したウォームギア20の後端21に限定されず、前端22の側であってもよい。
【0038】
以上、本発明の駆動機構7について、実施の形態および変形例を述べたが、これらは本発明の一例であり、各形態および各変形を当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。