(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された装置により、機内への水の流入を防止する一定の効果が見込まれるものの、航空機にはより高度の信頼性が要求されるため、機内への水の流入をより十分に防止でき、より安定して作動する手段の拡充が望まれる。
本発明は、そういった要求に応えることのできる航空機用の水流入防止装置およびそれを備えた気圧調整弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、機内の気圧を調整する気圧調整弁を備える航空機が着水した際に、気圧調整弁を介した機内への水の流入を防止する装置であって、機内と機外とを連通し、気圧調整弁の弁体が位置する流路を着水時に機外側から塞ぐ閉塞体を備えている。
そして、本発明は、閉塞体が、流路の機外側の端部を形成する部材に、着水時に変形する接続部を介して支持され、接続部が、着水時に流路の周囲から流路内に流入しようとする水の力が閉塞体に作用することで、閉塞体により流路を塞ぐ向きに変形することを特徴とする。
【0007】
第2の本発明は、気圧調整弁の弁体が位置する流路を着水時に機外側から塞ぐ閉塞体が、流路の機外側の端部を形成する部材に対して回転可能であり、着水していない平常時には、少なくとも流路を塞ぐ向きへの回転が規制されていることを特徴とする。
以下、「平常時には閉塞体の回転が規制されていること」について説明する。
閉塞体の回転には、流路を塞ぐ向きへの回転と、それとは逆向きの回転とがあるが、少なくとも、平常時に流路を塞ぐ向きには閉塞体が回転しないことが必要である。閉塞体の姿勢によっては、自重により流路を塞ぐ向きには回転しない場合があるので、その場合は、閉塞体の自重により、流路を塞ぐ向きへの閉塞体の回転が規制されている。
上記のように、流路を塞ぐ向きへの閉塞体の回転を規制する要求を満足することに加えて、空気の流動や機体の振動により閉塞体が、逆向きにも回転しないようにすることも望まれる。したがって、閉塞体の自重が働く向きも考慮して、平常時に、流路を塞ぐ向きとは逆向きに閉塞体が回転することをも規制するため、流路を塞ぐ向きへと閉塞体を回転させる力と、それとは逆向きへと閉塞体を回転させる力(閉塞体の自重)とがつり合った状態とすることが好ましい。
【0008】
平常時に流路を塞ぐ向きへの閉塞体の回転を規制する規制部として、(1)水に溶解されて破断する、(2)水圧により破断する、(3)水圧により伸びる、これら(1)から(3)の少なくとも一つの特性を備えているものを好ましく採用することができる。
【0009】
また、第2の本発明の水流入防止装置は、閉塞体に対して所定の回転向きに力を加える加圧部と、平常時に、加圧部の力に抗して閉塞体の回転を規制する加圧規制部と、を備える、ことが好ましい。
そうすると、平常時に、加圧部の力、そして加圧規制部による拘束により、流路を塞ぐ向き、およびそれとは逆向きのいずれの向きへの閉塞体の回転も規制することができる。
加圧部が流路を塞ぐ向きへと閉塞体を加圧する場合は、着水時に加圧規制部による規制を脱した加圧部により、閉塞体を回転させて流路を確実に塞ぐことができる。
【0010】
第1および第2の本発明において、流路を部分的に塞ぐ閉塞体が複数あり、複数の閉塞体によって流路の全体が塞がれることが好ましい。
【0011】
第3の本発明は、機内の気圧を調整する気圧調整弁を備える航空機が着水した際に、気圧調整弁を介した機内への水の流入を防止する装置であって、機内と機外とを連通し、気圧調整弁の弁体が位置する流路内で着水時に回転することで流路を塞ぐ閉塞体と、着水時に回転した閉塞体のそれ以上の回転を規制するストッパと、を備えている。
そして、本発明は、閉塞体が、水平方向に沿った流路内に配置され、着水していない平常時には、機内側の端部よりも機外側の端部が下方に位置するように、水平方向に対して傾いた姿勢に保持されていることを特徴とする。
ここで、本発明における「水平」は、厳密に水平であることを必要としておらず、若干、水平からシフトしていても許容される。
【0012】
本発明の気圧調整弁は、上述の水流入防止装置を備えることを特徴とする。
本発明の航空機は、上述の気圧調整弁を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水流入防止装置は、流路内の大気圧と流路の周囲の水圧との圧力差に基づいて流路内に流入しようとする水の力を利用して閉塞体により流路を塞ぐ。それによって気圧調整弁を介した機内への水の流入を防止することができるので、機内の浸水を遅らせ、乗客および乗員が機外へと脱出するために必要な時間を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1(a)を参照し、各実施形態に共通する航空機100の構成について簡単に説明する。
航空機100は、胴体101と、主翼102とを備えている。
胴体101の内部に設置されたフロア103の上方の空間104(床上空間)は、客室、操縦室、貨物室等に区画されている。床上空間104および床下空間105は、航空機に搭載された図示しない空調システムにより与圧されている。
【0016】
胴体101の下部には、主脚106をはじめとする種々の装備品を収容するとともに主翼102の中央部が配置されるベイ107が形成されている。ベイ107はフェアリング108により覆われている。フェアリング108の内側は与圧されていない。フェアリング108の内側と外側とは開口や間隙を介して連通している。
ベイ107は、機内の与圧空間と、与圧されていない外部空間とを隔てる圧力隔壁109(
図1(b))により区画されている。
【0017】
航空機100は、機内の与圧空間の気圧を調整する気圧調整弁1(
図1(b))を胴体101の下部に備えている。
空調システムは、図示しない航空機のエンジンからの抽気を熱源および圧力源として、機内の空調および与圧を行う。
空調システムは、気圧調整弁1の開度を調整することにより、機内を所定の気圧範囲に保つ。
図1(b)に細い矢印で示すように、気圧調整弁1を介して機内から機外へと空気が流れる。
【0018】
気圧調整弁1は、圧力隔壁109の内側(機内)と外側(機外)とを連通する円筒状のダクト2と、ダクト2の内側に配置される弁体3とを備えている。ダクト2は、鉛直方向に起立した圧力隔壁109を水平方向に貫通している。
気圧調整弁1は、弁体3が軸3Aを中心に回転することによりダクト2内の流路が開閉されるバタフライバルブ(butterfly valve)である。弁体3が実線で示す位置にあるとき気圧調整弁1は全開の状態にある。弁体3は、図示しないアクチュエータにより、気圧調整弁1の開度に対応する位置まで駆動される(例えば、一点鎖線で示す位置)。
【0019】
気圧調整弁1として、シャッタバルブ等、公知の種々のバルブを採用することができる。
ダクト2は、適宜な形状に定めることができる。例えば、ダクト2の機内側の端部2Aをベルマウス状に形成することができる。
【0020】
冗長性を確保するために、圧力隔壁109に複数の気圧調整弁1を設置することができる。
【0021】
航空機100が非常着水すると、水面との衝突によりフェアリング108が破損し、胴体101の下部が水に浸かる。そのとき気圧調整弁1を介して、
図1(b)に白抜きの矢印で示すように機内へと水が流入することで機内が浸水するのを避ける必要がある。
ここで、操縦士が気圧調整弁1を閉じる操作を行うことができるが、その操作が遅れることもありうる。また、非常着水に先立ち航空機100が衝撃を受けていると、気圧調整弁1の制御系が故障していて、操縦士が操作を行っても弁体3を作動させることができない場合もありうる。
以下で説明する各実施形態では、気圧調整弁1を閉じる操作が遅れたり制御系の故障により弁体3が作動しないとしても、気圧調整弁1を介した機内への水の流入を防止することが可能な装置について説明する。
【0022】
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る水流入防止装置10は、
図1(b)および(c)に示すように、ダクト2の機外側に突出した端部2Bに設置されている一対の蓋11と、蓋11をダクト2に接続する接続部12とを備えている。蓋11は、
図1(b)に示すように、着水していない平常時には開いている。
水流入防止装置10は、
図1(c)に示すように、着水すると蓋11を閉じてダクト2の開口2Cを塞ぐことで、気圧調整弁1のダクト2を介した機内への水の流入を防止する。
【0023】
蓋11は、
図2(a)および
図2(b)に示すように半円形の板状に形成されている。
図2(b)に示すように一対の蓋11が閉じると、ダクト2の円形の開口2Cが塞がれる。このとき一方の蓋11の端部11Aと他方の蓋11の端部11Aとの間に隙間があいていてもよい。また、一方の蓋11の端部11Aと他方の蓋11の端部11Aとが重なり合っていてもよい。なお、蓋11の形状は、半円に限らず、例えば矩形であってもよい。また、ダクト2の開口2Cを塞ぐ適宜な形状に蓋11の形状を定めることができる。
蓋11は、アルミニウム合金等の金属材料、繊維強化樹脂、樹脂材料等の適宜な材料から形成されている。
蓋11は、
図1(b)に示すように、平常時は、ダクト2の上端および下端にそれぞれ、接続部12を介して支持されている。このとき、蓋11は、ダクト2の軸線と平行に配置されている。
【0024】
接続部12は、所定の力が加えられると変形し、それによって
図1(c)に示すように蓋11が閉じる。本実施形態では蓋11と接続部12とが板材から一体に形成されており、板材の表面には直線状の溝121(
図2(a))が形成されている。溝121の形成により板材の裏側に残された肉薄の部分が接続部12に該当する。
ダクト2と接続部12とは、締結等の適宜な方法により結合されている。
【0025】
図1(c)を参照し、水流入防止装置10の作用について説明する。
航空機100の胴体101の下部が着水すると、ダクト2の機外側の開口2Cの周りに水が到達する。そのとき、ダクト2内の大気圧に対して水圧が必ず大きいので、水が開口2Cの周囲からダクト2内に流入しようとする。その流入しようとする水の力(
図1(c)に3つの平行な矢印で示す)が蓋11に作用することで、蓋11をダクト2に接続する接続部12に所定以上の力が加えられると、接続部12(肉薄部)が溝121に沿って折れ曲がるように変形する。それに伴い、蓋11がダクト2の開口2Cを塞ぐように内側へと転回する(一点鎖線の矢印を参照)。
【0026】
大気圧と水圧との圧力差に基づいてダクト2内に流入しようとする水の力は、一対の蓋11のいずれに対しても作用するので、それらの蓋11のそれぞれに対応する接続部12のいずれも変形する。開口2Cに向けて転回した蓋11は、水面からの深さに応じた水圧によりダクト2の端面に押圧される。それによって気圧調整弁1を介した機内への水の流入が防止される。
本明細書において、水の流入防止とは、水の流入が完全に阻止されることのみを意味するものではなく、水が流入したとしてもその量が軽減されることをも包含している。
【0027】
気圧調整弁1以外の箇所、例えば、非常着水時に破損した機体の一部や部材同士の接合箇所などから機内に水が流入することで、床下空間105の浸水が徐々に進行するとしても、水流入防止装置10により、比較的開口部の面積が大きいダクト2の開口2Cが塞がれていることで、浸水の速度を遅らせることができる。そのため、乗客および乗員が機外へと脱出するために必要な時間を確保することができる。
【0028】
本実施形態の水流入防止装置10は、着水時にダクト2の開口2Cを閉じる蓋11と、蓋11をダクト2に接続し、着水時に変形する接続部12とを備えているだけで、非常着水時における機内への水の流入を防止することができる。
したがって、同様の目的から、気圧調整弁1の付近で水を検知するセンサと、センサによる水の検知信号を受けてダクト2の開口2Cを塞ぐ電磁弁と、センサおよび電磁弁を繋ぐ配線とを備えた構成と比べて、軽量化を図ることができる。
しかも、そういった電気的な装置と比べて、本実施形態の水流入防止装置10は、衝撃を受けても故障する可能性が低いので、非常着水時に確実に作動させることができる。
さらに、電気的な装置を用いる場合は定期的な整備を必要とし、修理や交換を行うこととなるのに対して、機体に一旦水流入防止装置10を装備したならば、そのまま、整備を要することなく機体の寿命を全うすることが可能である。
【0029】
水流入防止装置10の蓋11が、
図3(a)に示すように、ダクト2の開口2Cに向かって、左右の両端に接続部12を介して支持されていてもよい。その場合も、ダクト2の周囲からダクト2内に流入しようとする水の力が一対の蓋11のいずれに対しても作用するので、上記同様に、蓋11が閉じてダクト2の開口2Cが塞がれる。
【0030】
また、
図3(b)に示すように、1つの蓋11によりダクト2の開口2Cを塞ぐようにしてもよい。開口2Cを塞ぐ蓋11の数は任意であり、3つ以上の蓋11により開口2Cを塞ぐようにしてもよい。
【0031】
ダクト2の周方向のいずれの位置に接続部12を介して蓋11が支持されていても、蓋11を閉じるために十分な力が蓋11に作用する。
但し、蓋11の挙動は、航空機100の非常着水時の信頼性を確保するため重要であるから、航空機100の模型を用いる着水試験や、解析等に基づいて、蓋11を迅速かつ十分に、しかも安定して閉じるために好適な位置に、蓋11を設置することが好ましい。
一つの考え方として、ダクト2の開口2Cの周囲に水の流れがあまりない状態を仮定すると、ダクト2内の大気圧と水圧との圧力差が水面からより深い位置で大きいため、ダクト2の上端に設置された蓋11に作用する水の力よりも、ダクト2の下端に設置された蓋11に作用する水の力の方が大きい。そのため、1つの蓋11により開口2Cを塞ぐ場合は、蓋11をダクト2の下端に設置するとよい。
【0032】
複数の蓋11により開口2Cを塞ぐ場合は、水中の浮遊物やフェアリング108の破片等の障害物により一部の蓋11の動きが妨げられたり、障害物との衝突により一部の蓋11が破損したとしても、残りの蓋11が閉じることでダクト2を介した水の流入を抑制することができる。そのため、ダクト2を介した機内への水の流入による床下空間105への浸水を遅らせて、機外への脱出に必要な時間を確保することができる。
【0033】
本実施形態に示す気圧調整弁1が設置される機体の位置は、一例に過ぎず、与圧空間と外部空間とを隔てる適宜な隔壁(例えば、胴体101の後部に設けられる圧力隔壁)に気圧調整弁1を設置することができる。
【0034】
水流入防止装置10は、設置されるダクト2の向きを問わず、ダクト2を介した機内への水の流入を防止することができる。
つまり、本実施形態ではダクト2の開口2Cは後方(尾翼側)を向いているが、それとは逆に、ダクト2の開口2Cが前方(機首側)を向いていてもよいし、ダクト2の開口2Cが上方を向いていたり、
図4(a)に示すように下方を向いていてもよい。いずれの場合であっても、上記で説明したのと同様に、大気圧と水圧との圧力差に基づいてダクト2内に流入しようとする水の力により、蓋11が動いて開口2Cを塞ぐことで、機内への水の流入を防止することができる。
【0035】
接続部12は、平常時には変形せずに、開いた状態に蓋11の姿勢を保持し、かつ、非常着水時にダクト2内に流入しようとする水の力を受けて変形するように(破断することなく)所定の剛性を有している。
適宜な材料や厚みを選択することにより、接続部12に適切な剛性を与えることができる。
接続部12は蓋11とは別体の部材であってもよい。
【0036】
平常時の蓋11の姿勢は、必ずしもダクト2の軸線と平行である必要はなく、
図4(b)に示すように、一対の蓋11がダクト2の端部2Bから拡がるようにダクト2の軸線に対して傾斜していてもよい。その場合も、大気圧と水圧との圧力差に基づく水の力が蓋11に作用することで接続部12が変形し、蓋11を閉じることができる。
また、蓋11が
図4(b)に示す向きとは逆向きに傾斜していることで、少し閉じた状態となっていてもよい。
【0037】
〔第2実施形態〕
次に、
図5を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。
以下、第1実施形態とは相違する事項を中心に説明する。
第2実施形態の水流入防止装置20は、
図5(a)に示すように、回転軸21によりダクト2の機外側の端部2Bに対して回転可能に接続される一対の蓋11と、平常時に一対の蓋11が回転することをそれぞれ規制する規制部22とを備えている。
【0038】
回転軸21は、ダクト2の軸線方向に対して直交している。
蓋11は、平常時には、
図5(a)に示すように開いており、非常着水時には、規制部22による規制を脱する。すると、
図5(b)に示すように、ダクト2内の大気圧と水圧との圧力差に基づいてダクト2内に流入しようとする水の力により、蓋11が回転軸21を中心に回転し、それによってダクト2の開口2Cが塞がれる。
開口2Cを塞ぐために蓋11に回転自由度を与える適宜な方法により、蓋11をダクト2の端部21Bに回転可能に接続することができる。例えば、紐等を介して蓋11とダクト2の端部2Bとを接続することができる。
【0039】
規制部22は、少なくとも平常時は、蓋11の表面と圧力隔壁109の機外側の面とを連結している。規制部22は、平常時に蓋11が回転することを防ぐために必要な剛性を備えている。それに加えて、規制部22は、着水時に規制を解除するために、(1)水に溶解されて破断する、(2)水圧により破断する、(3)水圧により伸びる、これら(1)〜(3)の少なくとも一つの特性を備えている。具体的には、セルロースを含む部材(例えば、紙製の紐)や、弾性体(例えば、バネ)を規制部22として採用することができる。
図5(a)および(b)は、規制部22として上記の(1)または(2)の特性を備えるものを採用した例を示している。
上記の(3)の特性を備えるものとしては、例えば、水圧により変形するバネを用いることができる。そのバネが水圧により弾性域を超えて塑性域で変形してもよい。
【0040】
ダクト2から流出した機内の乾燥した空気が規制部22の周囲を流れることにより、平常時に規制部22を乾燥した状態に保つことができる。規制部22が位置するベイ107はフェアリング108により覆われているので、規制部22に雨が振りかかることもない。
【0041】
規制部22として、柔軟性(または可撓性)を有する部材を採用することもできる。
柔軟性を有する規制部22により、ダクト2の下端に設置された蓋11が圧力隔壁109に連結されていると、平常時に、蓋11が自重により開く向きに回転するが、蓋11は閉じないので許容される。
平常時に蓋11が閉じないことに加えて、周囲の空気の流動や機体の振動により蓋11が回転することを規制するためには、規制部22に、自立する剛性が必要となる。例えば紙製の芯材を用いることで規制部22が自立する剛性を備えていると、開く向きおよび閉じる向きのいずれの向きへの蓋11の回転をも規制し、平常時に蓋11を所定の姿勢(例えば、ダクト2の軸線に沿った姿勢)に保持することができる。
【0042】
〔第3実施形態〕
次に、
図6を参照し、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態の水流入防止装置30は、第2実施形態の水流入防止装置20が備えている構成(一対の蓋11、回転軸21、および規制部22)に加えて、蓋11を閉じる向き(矢印参照)に加圧するバネ23を備えている。
バネ23は、回転軸21に設けることができる。バネ23の形態は特に限定されない。後述するバネ(
図7)についても同様である。
【0043】
規制部22(加圧規制部)は、平常時に、バネ23の弾性力に抗して蓋11の回転を規制し、蓋11が閉じる向きにも開く向きにも回転しない。
周囲の空気の流動や機体の振動により、蓋11に開く向きの力が作用したとしても、バネ23により蓋11の回転が規制される。また、蓋11に閉じる向きの力が作用したとしても、規制部22により蓋11の回転が規制される。
【0044】
非常着水時に、規制部22が破断したり伸びたりすると、蓋11がバネ23の弾性力と、ダクト2内に流入しようとする水の力とによって閉じ、ダクト2の開口2Cが塞がれる。
つまり、水の力に加えてバネ23の弾性力が働くことで、非常着水時に蓋11をより確実に閉じることができる。
また、バネ力単体であっても水中で蓋11が閉じるようにバネ23の弾性力を適切に設定することにより、波やうねりがあるために水の力が蓋11を閉じる向きに十分に作用しない場合であっても、蓋11を安定して閉じることができる。
【0045】
〔第4実施形態〕
次に、
図7を参照し、本発明の第4実施形態について説明する。
第4実施形態の水流入防止装置40は、規制部として、蓋11の自重に抗して蓋11の回転を規制するバネ13を備えている。水流入防止装置40は上述の規制部22を備えていない。
バネ13は、ダクト2に設置された上方の蓋11と下方の蓋11とをそれぞれ、矢印の向きに加圧している。
上方の蓋11(11U)の閉じる向きへの回転はバネ13(13A)によって規制されている。上方の蓋11Uの自重とバネ13Aの弾性力とがつり合っていて、蓋11Uは閉じる向きにも開く向きにも回転しない。
また、下方の蓋11(11D)の開く向きへの回転はバネ13(13B)によって規制されている。下方の蓋11Dの自重とバネ13Bの弾性力とがつり合っていて、蓋11Dは開く向きにも閉じる向きにも回転しない。
【0046】
着水時に、上方の蓋11Uは、バネ13Aの弾性力に抗してダクト2内に流入しようとする水の力により閉じ、下方の蓋11Dは、自重に抗してダクト2内に流入しようとする水の力により閉じる。それによってダクト2の開口2Cを塞ぐことができる。
【0047】
上述した規制部22やバネ13の他、蓋11の回転を規制するために、蓋11を支持する回転軸21の動きに摩擦を与えることも可能である。
【0048】
〔第5実施形態〕
次に、
図8を参照し、本発明の第5実施形態について説明する。
第5実施形態の水流入防止装置50は、一対の蓋11をそれぞれ開く向きへと加圧するバネ14(加圧部)と、バネ14による加圧力に抗して蓋11の回転を規制するストッパ15(加圧規制部)とを備えている。バネ14による加圧力と、ストッパ15による拘束により、蓋11は閉じる向きにも開く向きにも回転しない。
着水時に、蓋11は、ダクト2内に流入しようとする水の力により閉じ、それによってダクト2の開口2Cが塞がれる。
【0049】
〔第6実施形態〕
次に、
図9を参照し、本発明の第6実施形態について説明する。
第6実施形態の水流入防止装置60は、水平に設置されたダクト2の機外側の開口2Cを非常着水時に塞ぐために閉塞体24を備えている。閉塞体24は円板状に形成されている。
閉塞体24は、気圧調整弁1が備えている弁体3であるバタフライバルブと同様の構造であり、ダクト2の直径に沿って水平に設置された軸241を中心に、
図9の時計回り方向(矢印の向き)に回転する。
【0050】
ダクト2の内壁には、回転した閉塞体24の端部が突き当てられるストッパ25が設けられている。ストッパ25は、閉塞体24のそれ以上の回転を規制する。
ストッパ25は、ダクト2の周方向の少なくとも一箇所に設けられていれば足りる。周方向に連続する環状のストッパ25を設けることもできる。
【0051】
図9に示すように、平常時において、閉塞体24は水平方向に対して少し傾いており、機内側の端部24Aよりも機外側の端部24Bが下方に位置している。平常時、閉塞体24はこの姿勢のまま保持される。この姿勢から閉塞体24が
図9の時計回りまたは反時計回りに回転するのを規制するため、例えばバネを用いることができる。
【0052】
着水すると、まずは胴体101の下端部が水に浸かる。このことから、大気圧と水圧との圧力差によりダクト2内に流入しようとする水は、傾けて配置された閉塞体24の機外側で、かつ下側に位置する端部24Bの表面に到達する(白抜きの矢印参照)、その水の力が加えられることで矢印の向きに閉塞体24が回転し、一点鎖線で示すように、閉塞体24が鉛直方向に沿った姿勢でストッパ25により係止される。
閉塞体24はその姿勢のまま、水圧により保持される。4本の矢印で水圧の分布を示すように、水圧は水面から深いほど大きいので、閉塞体24を時計回りに回転させる向きに水圧が作用する。そのため、ダクト2の開口2Cを塞いだ状態に維持することができる。
【0053】
閉塞体24が弁体3よりも機内側に設けられる場合も、上記と同様に閉塞体24が作動し、ダクト2内の流路を塞ぐことができる。
【0054】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
例えば、
図3(a)や
図4(a)に二点鎖線で示すように、水中で浮上するフロート26を蓋11に取り付けることにより、非常着水時の蓋11の動作を助けることができる。フロート26として、水に対する比重が小さい適宜な形態、例えば、中空のカプセルを用いることができる。
また、ダクト2の開口2Cを塞ぐ蓋11とダクト2の端面との間の隙間を封止するシールを、蓋11あるいはダクト2の端面に設けることにより、ダクト2を介して機内へと流入する水の量を低減することに寄与できる。
【0055】
図10は、第2実施形態の板状の蓋11に代えて、球体のフロート27を用いた例を示す。
フロート27は、ダクト2の下端に紐28で吊り下げられているとともに、ダクト2の外周部とフロート27とを連結する規制部29により平常時において開口2Cを塞ぐ向きへと回転することが規制されている。規制部29がフロート27と圧力隔壁109とを連結していてもよい。
フロート27の径は、ダクト2の開口2Cの径よりも大きい。
航空機の着水により規制部29が水に浸漬されることで破断したり伸びたりすると、ダクト2内に流入しようとする水の力と、フロート27に働く浮力とによってフロート27が矢印の向きに回転する。それによって、開口2Cがフロート27(二点鎖線で示す)により塞がれる。
【0056】
上記各実施形態とは異なり、
図11に示すように、ダクト2が圧力隔壁109の機外側には突出していない場合もある。
図11の例では、圧力隔壁109に形成された通気開口110にダクト2が機内側から接続されている。この例では、ダクト2および通気開口110により、機内と機外とを連通し、気圧調整弁1の弁体3が位置する流路111が構成されている。
その場合は、流路111の機外側の端部を形成する部材である圧力隔壁109に、蓋11を設置することができる。
【0057】
上記各実施形態で説明した水流入防止装置は、気圧調整弁の他にも、航空機の着水時に水が流入する可能性のある弁や開口に広く適用することができる。