(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記予熱器は、少なくとも、前記ガスタービンの最大出力よりも小さい第1出力閾値以上、且つ、該第1出力閾値よりも大きい第2出力閾値以下の予熱制限出力範囲において、前記温度上昇量が前記ガスタービンの出力増大とともに減少するよう前記予熱量を制御するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のガスタービン。
前記予熱器は、少なくとも、前記ガスタービンの最大出力よりも小さい第1出力閾値と前記ガスタービンの定格出力との間の予熱制限出力範囲において、前記温度上昇量が前記ガスタービンの出力増大とともに減少するよう前記予熱量を制御するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のガスタービン。
前記予熱器は、前記予熱制限出力範囲内において、前記温度上昇量が前記ガスタービンの出力増大とともに絶えず減少するよう前記予熱量を制御するように構成されたことを特徴とする請求項4乃至6の何れか一項に記載のガスタービン。
前記予熱器は、前記ガスタービンおよび前記ガスタービンの排ガスの熱を用いて高温の蒸気または水の少なくとも一方を生成する排熱回収ボイラを備えたガスタービンプラントの排熱回収ボイラにおいて生成された蒸気との熱交換によって、前記圧縮空気を予熱するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載のガスタービン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガスタービンの高出力時、空気又は燃料の予熱を無制限に行うと、ガスタービンの車室又はロータの温度が過度に上昇し、場合によっては、車室又はロータの材料によって定まる許容温度を超えてしまう事態も起こり得る。この場合、車室又はロータをより高価な材料に変更する必要が生じる。
また、ガスタービンの高出力時、空気又は燃料の予熱を無制限に行うと、燃焼器において逆火が発生し、燃焼が不安定になる可能性がある。
【0006】
この点、特許文献1は、予熱器の暖気が十分でない起動直後の非定常状態における予熱実施の弊害をなくすための技術を開示しているものの、予熱実施に起因した車室又はロータの過度な温度上昇や逆火発生の問題への対策は特許文献1には記載されていない。
【0007】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態の目的は、車室又はロータの過度な温度上昇や逆火発生の抑制と運転効率の向上とを両立可能なガスタービン及びその運転方法、並びにコンバインドサイクルプラントを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るガスタービンは、
圧縮空気を生成するための圧縮機と、
前記圧縮空気を用いて燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成するための燃焼器と、
前記燃焼ガスによって駆動されるように構成されたタービンと、
前記燃焼器の上流側において、前記圧縮空気または前記燃料の少なくとも一方を予熱するための予熱器と、を備えるガスタービンであって、
前記予熱器は、前記ガスタービンの少なくとも一部の出力範囲において、予熱に起因した前記圧縮空気または前記燃料の少なくとも一方の温度上昇量が前記ガスタービンの出力増大とともに減少するよう予熱量を制御するように構成される。
【0009】
ガスタービンの高出力時においては、無制限に予熱実施すると、車室又はロータの過度な温度上昇や逆火発生のリスクが高まる。一方、ガスタービンの低出力時においては、ガスタービンの特性上もともと効率が低いから予熱の必要性が大きいことに加えて、車室又はロータの過度な温度上昇や逆火発生のリスクはそれほど高くない。
この点、上記(1)の構成では、少なくとも一部の出力範囲において、予熱に起因した圧縮空気又は燃料の少なくとも一方の温度上昇量をガスタービン出力の増大とともに減少させるようになっている。このように、ガスタービン出力に応じて予熱量を制御することで、ガスタービン高出力時における車室又はロータの過度な温度上昇や逆火発生を抑制するとともに、ガスタービン低出力時における運転効率の向上を実現することができる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記予熱器は、前記少なくとも一部の出力範囲において、予熱に起因した前記圧縮空気の温度上昇量が前記ガスタービンの出力増大とともに減少するよう、前記圧縮空気の予熱量を制御するように構成される。
【0011】
ガスタービンでは、燃焼器に投入される圧縮空気は燃料に比べて質量流量が極めて多い(典型的なガスタービンの場合、空気質量流量/燃料質量流量=20〜50)。このため、予熱実施によるガスタービン低出力時の運転効率向上効果は、圧縮空気に対して予熱を行う場合の方が、燃料に対して予熱を行う場合に比べて大きい。しかしながら、圧縮機から出た圧縮空気は、通常、ガスタービン車室内部を流れて燃焼器に到達するから、圧縮空気に対して予熱を行う場合には、ガスタービン高出力時における車室又はロータの過度な温度上昇のリスクがある。
上記(2)の構成では、ガスタービンの出力圧縮空気の予熱量を制御して、少なくとも一部の出力範囲において、予熱に起因した圧縮空気の温度上昇量をガスタービン出力の増大とともに減少させるようになっている。このように、ガスタービン出力に応じて圧縮空気の予熱量を制御することで、ガスタービン高出力時における車室又はロータの過度な温度上昇を抑制しながら、ガスタービン低出力時における大きな運転効率向上効果を享受することができる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記予熱器は、前記少なくとも一部の出力範囲において、前記圧縮空気または前記燃料の少なくとも一方の前記予熱器出口における温度が制限温度以下になるよう、前記ガスタービンの出力に応じて前記予熱量を制御するように構成される。
【0013】
上記(3)の構成によれば、予熱器出口における圧縮空気又は燃料の温度を制限温度以下に抑えて、車室又はロータの過度な温度上昇や逆火発生を抑制することができる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記予熱器は、前記少なくとも一部の出力範囲において、前記圧縮空気または前記燃料の少なくとも一方の前記予熱器出口における温度が前記制限温度に固定されるよう、前記ガスタービンの出力に応じて前記予熱量を制御するように構成される。
【0015】
上記(4)の構成によれば、予熱器出口における圧縮空気又は燃料の温度を制限温度に固定することで、車室又はロータの過度な温度上昇や逆火発生を抑制する観点から許容されるほぼ最大の予熱量にて予熱を行って、運転効率を大きく向上させることができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の構成において、
前記予熱器は、少なくとも、前記ガスタービンの最大出力よりも小さい第1出力閾値以上、且つ、該第1出力閾値よりも大きい第2出力閾値以下の予熱制限出力範囲において、前記温度上昇量が前記ガスタービンの出力増大とともに減少するよう前記予熱量を制御するように構成される。
【0017】
上記(5)の構成によれば、第1出力閾値〜第2出力閾値の予熱制限出力範囲においてガスタービン出力に応じて予熱量を制御するようにしたので、予熱制限出力範囲のうち比較的高出力の領域において車室又はロータの過度な温度上昇や逆火発生を抑制しながら、予熱制限出力範囲のうち比較的低出力の領域において運転効率を向上させることができる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記予熱器は、少なくとも、前記ガスタービンの最大出力よりも小さい第1出力閾値と前記ガスタービンの定格出力との間の予熱制限出力範囲において、前記温度上昇量が前記ガスタービンの出力増大とともに減少するよう前記予熱量を制御するように構成される。
【0019】
上記(6)の構成によれば、第1出力閾値〜定格出力の予熱制限出力範囲においてガスタービン出力に応じて予熱量を制御するようにしたので、予熱制限出力範囲のうち比較的高出力の領域において車室又はロータの過度な温度上昇や逆火発生を抑制しながら、予熱制限出力範囲のうち比較的低出力の領域において運転効率を向上させることができる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)又は(6)の構成において、
前記予熱器は、少なくとも前記予熱制限出力範囲における出力上限値において前記予熱量をゼロとするように構成される。
【0021】
上記(7)の構成によれば、車室又はロータの過度な温度上昇や逆火発生のリスクが予熱制限出力範囲内で最も大きい予熱制限出力範囲の出力上限値にて予熱量をゼロ(予熱なし)にすることで、車室又はロータの過度な温度上昇や逆火発生を効果的に抑制できる。
【0022】
(8)幾つかの実施形態では、上記(5)乃至(7)の何れかの構成において、
前記予熱器は、前記予熱制限出力範囲内において、前記温度上昇量が前記ガスタービンの出力増大とともに絶えず減少するよう前記予熱量を制御するように構成される。
【0023】
上記(8)の構成によれば、予熱制限出力範囲内において圧縮空気又は燃料の少なくとも一方の温度上昇量をガスタービン出力の増大とともに絶えず減少させることで、車室又はロータの過度な温度上昇や逆火発生の抑制と運転効率の向上との両立を効果的に実現できる。
【0024】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の構成において、
前記予熱器は、前記ガスタービンからの排ガスとの熱交換によって、前記圧縮空気または前記燃料の少なくとも一方を予熱するように構成される。
(10)他の幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の構成において、
前記予熱器は、前記ガスタービンおよび前記ガスタービンの排ガスの熱を用いて高温の蒸気または水の少なくとも一方を生成する排熱回収ボイラを備えたガスタービンプラントの排熱回収ボイラにおいて生成された蒸気との熱交換によって、前記圧縮空気または前記燃料の少なくとも一方を予熱するように構成される。
(11)さらに他の幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の構成において、
前記予熱器は、前記ガスタービンおよび蒸気タービンを備えたコンバインドサイクルプラントの排熱回収ボイラにおいて生成された蒸気との熱交換によって、前記圧縮空気または前記燃料の少なくとも一方を予熱するように構成される。
【0025】
上記(9)乃至(11)の構成によれば、ガスタービンからの排ガスを有効活用してガスタービンプラントの効率を高めることができる。
また、上記(10)又は(11)の構成によれば、予熱器における熱媒体として、圧力および熱伝導率に優れた蒸気を使用することで、予熱器(熱交換器)を小型化することができる。
【0026】
(12)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るコンバインドサイクルプラントは、
上記(1)乃至(11)の何れかに記載のガスタービンを備える。
これにより、ガスタービン高出力時における車室又はロータの過度な温度上昇や逆火発生を抑制するとともに、ガスタービン低出力時におけるガスタービンの運転効率の向上を実現することができるので、不具合が少なく、効率的なコンバインドサイクルプラントを提供できる。
【0027】
(13)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るガスタービンの運転方法は、
圧縮空気を生成するための圧縮機と、
前記圧縮空気を用いて燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成するための燃焼器と、
前記燃焼ガスによって駆動されるように構成されたタービンと、を備えるガスタービンの運転方法であって、
前記燃焼器の上流側において、前記圧縮空気または前記燃料の少なくとも一方を予熱するための予熱ステップを備え、
前記予熱ステップでは、前記ガスタービンの少なくとも一部の出力範囲において、予熱に起因した前記圧縮空気または前記燃料の少なくとも一方の温度上昇量が前記ガスタービンの出力増大とともに減少するよう予熱量を制御する。
【0028】
上記(13)の方法では、少なくとも一部の出力範囲において、予熱に起因した圧縮空気又は燃料の少なくとも一方の温度上昇量をガスタービン出力の増大とともに減少させるようになっている。このように、ガスタービン出力に応じて予熱量を制御することで、ガスタービン高出力時における車室又はロータの過度な温度上昇や逆火発生を抑制するとともに、ガスタービン低出力時における運転効率の向上を実現することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、ガスタービン高出力時における車室又はロータの過度な温度上昇や逆火発生を抑制するとともに、ガスタービン低出力時における運転効率の向上を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0032】
最初に、
図1、
図9乃至
図12を参照して、幾つかの実施形態に係るガスタービン1の全体構成について説明する。
幾つかの実施形態に係るガスタービン1は、圧縮空気を生成するための圧縮機2と、圧縮空気及び燃料を用いて燃焼ガスを発生させるための燃焼器3と、燃焼ガスによって回転駆動されるように構成されたタービン4と、を備える。圧縮機2の圧縮機ロータとタービン4のタービンロータとは、同一の軸線を中心として回転するように構成されている。すなわち、圧縮機ロータとタービンロータとが互いに連結されて、タービンロータ(以下、ロータと称する)5を成している。図示されるガスタービン1は発電用に用いられる構成を例示しており、この場合、ロータ5に発電機6のロータが接続され、タービン4の回転エネルギーによって発電機6が駆動されて発電を行うようになっている。
【0033】
また、上記ガスタービン1は、燃焼器3の上流側に、圧縮空気を予熱するための予熱器8または燃料を予熱するための予熱器9の少なくとも一方を含む予熱装置7をさらに備えている。なお、
図1、
図9乃至
図12に示す構成例では、予熱装置7が、圧縮空気を予熱するための第1予熱器8と、燃料を予熱するための第2予熱器9との両方を含む構成を示している。但し、他の構成例では、予熱装置7は、圧縮空気を予熱するための第1予熱器8、または、燃料を予熱するための第2予熱器9の一方のみを含む構成としてもよい。
【0034】
ここで、一例として、燃焼器3の具体的な構成例を
図13に示す。なお、同図には一つの燃焼器3を例示しているが、通常、燃焼器3は、ロータ5を中心として環状に複数配置される。
図13に示すように、燃焼器3は、ケーシング31により画定される車室32に設けられた燃焼器ライナ33と、燃焼器ライナ33内にそれぞれ配置されたパイロット燃焼バーナ34及び複数のメイン燃焼バーナ(予混合燃焼バーナ)35と、を含む。なお、燃焼器3は、燃焼ガスをバイパスさせるためのバイパス管(不図示)等の他の構成要素を備えていてもよい。
上記構成を有する燃焼器3においては、
図1、
図9乃至
図12に示すように、圧縮機2で生成された圧縮空気が、第1予熱器8によって予熱された後、
図13に示すように車室入口32aから車室32内に供給される。この車室32内に供給された圧縮空気は、車室32からメインバーナ筒36内に流入し、燃料ポート37から供給された燃料と予混合された後、燃焼器ライナ33に流れ込む。また、圧縮空気と、燃料ポート38を介してパイロット燃焼バーナ34から噴射された燃料とが燃焼器ライナ33で混合され、図示しない種火により着火されて燃焼し、燃焼ガスが発生する。なお、燃料ポート37,38から供給される燃料は、
図1、
図9乃至
図12に示すように、第2予熱器9によって予熱されている。
【0035】
図1、
図9乃至
図12に示すように、上記構成を有するガスタービン1において、圧縮機2は、大気中の空気を圧縮し、圧縮空気A1は第1予熱器8によって予熱された後、予熱圧縮空気A2として燃焼器3に供給される。また、燃焼器3には、燃料F1が第2予熱器9によって予熱された後、予熱燃料F2として供給される。燃焼器3内では、圧縮空気A2と燃料F2とが混合して燃焼して、高温高圧の燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスはタービン4に送られて、タービン4が駆動することによって発電機6が発電を行うようになっている。
【0036】
ところで、ガスタービン1の高出力時においては、圧縮機2の圧力比が高く、圧縮機2の出口の圧縮空気の温度が高いため、無制限に予熱実施すると、車室32(
図13参照)又はロータ5(
図1、
図9乃至
図12参照)の過度な温度上昇や逆火発生のリスクが高まる。一方、ガスタービン1の低出力時においては、ガスタービン1の特性上もともと効率が低いから予熱の必要性が大きいことに加えて、圧縮機2の圧力比が低く、圧縮機2の出口の圧縮空気の温度が低いため、車室32又はロータ5の過度な温度上昇や逆火発生のリスクはそれほど高くなく、また、特に燃焼器3の入口の圧縮空気を予熱する場合においては、温度上昇量を大きくすることが容易であり、大きな効率向上効果を得ることができる。
【0037】
そこで、上記ガスタービン1は、ガスタービン1の高出力時における車室32又はロータ5の過度な温度上昇や逆火発生を抑制するとともに、ガスタービン1の低出力時における運転効率の向上を実現するために、以下の構成をさらに備えている。
【0038】
図1、
図9乃至
図12に示すガスタービン1において、第1予熱器8は、ガスタービン1の少なくとも一部の出力範囲において、予熱に起因した圧縮空気の温度上昇量がガスタービン1の出力増大とともに減少するよう予熱量を制御するように構成される。
同様に、第2予熱器9は、ガスタービン1の少なくとも一部の出力範囲において、予熱に起因した燃料の温度上昇量がガスタービン1の出力増大とともに減少するよう予熱量を制御するように構成される。
具体的には、ガスタービン1の出力に関連する量に基づいて、第1予熱器8における圧縮空気の温度上昇量または第2予熱器9における燃料の温度上昇量の少なくとも一方が制御される。ここで、ガスタービン1の出力に関連する量とは、例えば、ガスタービン1の出力自体でもよいし、他の指標として、圧縮機2出口(第2予熱器9入口)における圧縮空気A1の温度又は圧力、あるいは、タービン4の入口温度であってもよい。
【0039】
上記構成においては、ガスタービン1の少なくとも一部の出力範囲において、予熱に起因した圧縮空気A2又は燃料F2の少なくとも一方の温度上昇量をガスタービン1の出力の増大とともに減少させるようになっている。このように、ガスタービン1の出力に応じて予熱量を制御することで、ガスタービン1の高出力時における車室32又はロータ5の過度な温度上昇や逆火発生を抑制するとともに、ガスタービン1の低出力時における運転効率の向上を実現することができる。
【0040】
ここで、第1予熱器8または第2予熱器9における予熱量の具体的な制御について説明する。なお、以下の説明では、ガスタービン1の出力に関連する量として、ガスタービン1の出力自体を用いた場合を例示しているが、上述したようにガスタービン1の出力に関連する量として他の指標を用いてもよい。
【0041】
図2A乃至
図8Aは、各実施形態における圧縮空気の予熱量制御を示す図であり、ガスタービン1の出力と空気温度との関係を示すグラフとなっている。
図2B乃至
図8Bは、各実施形態における燃料の予熱量制御を示す図であり、ガスタービン1の出力と燃料温度との関係を示すグラフとなっている。これらの図において、破線は予熱前の圧縮空気A1または燃料F1の温度であり、実線は予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度である。すなわち、予熱前の圧縮空気A1または燃料F1の温度と、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度との差が温度上昇量(予熱量)となる。
【0042】
図2A及び
図2Bは、一実施形態における圧縮空気及び燃料の予熱量制御を示す図である。
図2Aは、ガスタービン1が第1予熱器8を備える場合に適用される。
同図に示すように、一実施形態では、ガスタービン1の出力が第1出力閾値と第2出力閾値との間であるとき、第1予熱器8における圧縮空気の予熱量は、ガスタービン1の出力が増大するにつれて減少するように制御される。なお、第2出力閾値は、第1出力閾値よりも大きい。
すなわち、ガスタービン1の出力が第1出力閾値未満のとき、圧縮空気A1に対する予熱量は一定であり、予熱後の圧縮空気A2の温度は、予熱前の圧縮空気A1の温度と同じ傾きで上昇する。ガスタービン1の出力が第1出力閾値以上且つ第2出力閾値以下のとき、ガスタービン1の出力が増大するにつれて予熱前の圧縮空気A1の温度も上昇するが、圧縮空気A1に対する予熱量はガスタービン1の出力増大とともに減少するため、予熱後の圧縮空気A2の温度上昇(出力に対応した温度変化)の傾きは、予熱前の圧縮空気A1の温度上昇の傾きよりも小さくなる。例えば、図示されるように予熱後の圧縮空気A2の温度上昇の傾きは0であり、第1出力閾値と第2出力閾値の間において予熱後の圧縮空気A2の温度は概ね一定である。
【0043】
また、ガスタービン1では、燃焼器3に投入される圧縮空気A1は燃料F1に比べて質量流量が極めて多い(典型的なガスタービン1の場合、空気質量流量/燃料質量流量=20〜50)。このため、予熱実施によるガスタービン1の低出力時の運転効率向上効果は、圧縮空気A1に対して予熱を行う場合の方が、燃料F1に対して予熱を行う場合に比べて大きい。しかしながら、圧縮機2から出た圧縮空気A1は、通常、ガスタービン1の車室内部を流れて燃焼器3に到達するから、圧縮空気A1に対して予熱を行う場合には、ガスタービン1の高出力時における車室32又はロータ5の過度な温度上昇のリスクがある。
そこで、ガスタービン1の出力圧縮空気の予熱量を制御して、少なくとも一部の出力範囲(第1出力閾値以上且つ第2出力閾値以下の範囲)において、予熱に起因した圧縮空気の温度上昇量をガスタービン1の出力の増大とともに減少させる。このように、ガスタービン1の出力に応じて圧縮空気の予熱量を制御することで、ガスタービン1の高出力時における車室32又はロータ5の過度な温度上昇を抑制しながら、ガスタービン1の低出力時における大きな運転効率向上効果を享受することができる。
【0044】
図2Bは、ガスタービン1が第2予熱器9を備える場合に適用される。
同図に示すように、一実施形態では、ガスタービン1の出力が第1出力閾値と第2出力閾値との間であるとき、第2予熱器9における燃料の予熱量は、ガスタービン1の出力が増大するにつれて減少するように制御される。なお、第2出力閾値は、第1出力閾値よりも大きい。
すなわち、ガスタービン1の出力が第1出力閾値未満のとき、燃料F1に対する予熱量は一定であり、予熱後の燃料F2の温度は、予熱前の燃料F1の温度と同じ傾きで上昇する。ガスタービン1の出力が第1出力閾値以上且つ第2出力閾値以下のとき、ガスタービン1の出力が増大するにつれて予熱前の燃料F1の温度も上昇するが、燃料F1に対する予熱量はガスタービン1の出力増大とともに減少するため、予熱後の燃料F2の温度上昇温度上昇(出力に対応した温度変化)の傾きは、予熱前の燃料F1の温度上昇の傾きよりも小さくなる。例えば、図示されるように予熱後の燃料F2の温度上昇の傾きは0であり、第1出力閾値と第2出力閾値の間において予熱後の燃料F2の温度は一定である。
なお、ガスタービン1が第1予熱器8及び第2予熱器9の両方を備える場合、第1予熱器8における第1出力閾値及び第2出力閾値と、第2予熱器9における第1出力閾値及び第2出力閾値とは、同一であってもよいし、相違していてもよい。
【0045】
図3A及び
図3Bに、
図2A及び
図2Bに示した一実施形態に係る構成の変形例を示す。
図3Aは、ガスタービン1が第1予熱器8を備える場合に適用され、
図3Bは、ガスタービン1が第2予熱器9を備える場合に適用される。
図3A又は
図3Bに示すように、一実施形態の変形例においては、ガスタービン1の出力が第1出力閾値以上且つ第2出力閾値以下のとき、または、ガスタービン1の出力が第2出力閾値超過のときの少なくとも一方において、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度が上昇傾向となるように第1予熱器8または第2予熱器9が制御される。
すなわち、ガスタービン1の出力が第1出力閾値未満のとき、圧縮空気A1または燃料F1に対する予熱量は一定であり、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度は、予熱前の圧縮空気A1または燃料F1の温度と同じ傾きで上昇する。ガスタービン1の出力が第1出力閾値以上且つ第2出力閾値以下のとき、圧縮空気A1または燃料F1に対する予熱量はガスタービン1の出力増大とともに減少するため、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度上昇の傾きは、予熱前の圧縮空気A1または燃料F1の温度上昇の傾きよりも小さくなる。例えば、図示されるように予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度上昇の傾きは0より大きく、第1出力閾値と第2出力閾値の間において予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度は出力が増加するにつれて上昇傾向となる。さらに、ガスタービン1の出力が第2出力閾値超過のとき、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の出力に対応した温度上昇の傾きは、予熱前の圧縮空気A1または燃料F1の温度上昇の傾きよりも小さく、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度は出力が増加するにつれて上昇傾向となる。ガスタービン1の出力が第1出力閾値以上且つ第2出力閾値以下のときと、第2出力閾値超過のときとは、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度上昇の傾きは同一であってもよいし、相違していてもよい。
【0046】
図4A及び
図4Bは、他の実施形態に係るガスタービン1に関する図である。
図4Aは、ガスタービン1が第1予熱器8を備える場合に適用される。
同図に示すように、他の実施形態では、第1予熱器8は、ガスタービン1の少なくとも一部の出力範囲において、第1予熱器8の出口における圧縮空気A2の温度が制限温度以下になるよう、ガスタービン1の出力に応じて予熱量を制御するように構成される。この場合、第1予熱器8は、ガスタービン1の少なくとも一部の出力範囲において、第1予熱器8の出口における圧縮空気A2の温度が制限温度に固定されるよう、ガスタービン1の出力に応じて予熱量を制御するように構成されてもよい。
すなわち、ガスタービン1の出力増加に伴って第1予熱器8に供給される圧縮空気A1の温度は上昇し、圧縮空気A1の温度が制限温度未満のとき、圧縮空気A1は第1予熱器8において一定の予熱量で予熱されるため、予熱後の圧縮空気A2の温度は、予熱前の圧縮空気A1の温度と同じ傾きで上昇する。圧縮空気A1の温度が制限温度以上になったとき、第1予熱器8における予熱量を減少させることによって、予熱前の圧縮空気A1の温度上昇に関わらず、予熱後の圧縮空気A2の温度は概ね一定となる。
【0047】
これにより、第1予熱器8の出口における圧縮空気A2の温度を制限温度以下に抑えて、車室32又はロータ5の過度な温度上昇や逆火発生を抑制することができる。また、図示されるように、第1予熱器8の出口における圧縮空気A2の温度を制限温度に固定することで、車室32又はロータ5の過度な温度上昇や逆火発生を抑制する観点から許容されるほぼ最大の予熱量にて予熱を行って、運転効率を大きく向上させることができる。
【0048】
図4Bは、ガスタービン1が第2予熱器9を備える場合に適用される。
同図に示すように、他の実施形態では、第2予熱器9は、ガスタービン1の少なくとも一部の出力範囲において、第2予熱器9の出口における燃料F2の温度が制限温度以下になるよう、ガスタービン1の出力に応じて予熱量を制御するように構成される。
すなわち、ガスタービン1の出力増加に伴って第2予熱器9に供給される燃料F1の温度は上昇し、燃料F1の温度が制限温度未満のとき、燃料F1は第2予熱器9において一定の予熱量で予熱されるため、予熱後の燃料F2の温度は、予熱前の燃料F1の温度と同じ傾きで上昇する。燃料F1の温度が制限温度以上になったとき、第2予熱器9における予熱量を減少させることによって、予熱前の燃料F1の温度上昇に関わらず、予熱後の燃料F2の温度は概ね一定となる。
【0049】
これにより、第2予熱器9の出口における燃料F2の温度を制限温度以下に抑えて、車室32又はロータ5の過度な温度上昇や逆火発生を抑制することができる。また、図示されるように、第2予熱器9の出口における燃料F2の温度を制限温度に固定することで、車室32又はロータ5の過度な温度上昇や逆火発生を抑制する観点から許容されるほぼ最大の予熱量にて予熱を行って、運転効率を大きく向上させることができる。
【0050】
図5A及び
図5Bは、さらに他の実施形態に係るガスタービン1に関する図である。
図5Aは、ガスタービン1が第1予熱器8を備える場合に適用され、
図5Bは、ガスタービン1が第2予熱器9を備える場合に適用される。
図5A又は
図5Bに示すように、さらに他の実施形態では、第1予熱器8または第2予熱器9は、少なくとも、ガスタービン1の最大出力よりも小さい第1出力閾値以上、且つ、該第1出力閾値よりも大きい第2出力閾値以下の予熱制限出力範囲において、温度上昇量がガスタービン1の出力増大とともに減少するよう予熱量を制御するように構成される。
すなわち、ガスタービン1の出力増加に伴って第1予熱器8または第2予熱器9に供給される圧縮空気A1または燃料F1の温度は上昇し、圧縮空気A1の温度または燃料F1が制限温度未満のとき、圧縮空気A1または燃料F1は、第1予熱器8または第2予熱器9において一定の予熱量で予熱されるため、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度は、予熱前の圧縮空気A1または燃料F1の温度と同じ傾きで上昇する。ガスタービン1の出力が第1出力閾値以上且つ第2出力閾値以下の予熱制限出力範囲のとき、ガスタービン1の出力が増大するにつれて予熱前の圧縮空気A1または燃料F1の温度も上昇するが、圧縮空気A1または燃料F1に対する予熱量はガスタービン1の出力増大とともに減少するため、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度上昇の傾きは、予熱前の圧縮空気A1または燃料F1の温度上昇の傾きよりも小さくなる。例えば、図示されるように予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度上昇の傾きは0であり、第1出力閾値と第2出力閾値の間において予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度は概ね一定である。
【0051】
この構成によれば、第1出力閾値から第2出力閾値の予熱制限出力範囲においてガスタービン1の出力に応じて予熱量を制御するようにしたので、予熱制限出力範囲のうち比較的高出力の領域において車室32又はロータ5の過度な温度上昇や逆火発生を抑制しながら、予熱制限出力範囲のうち比較的低出力の領域において運転効率を向上させることができる。
【0052】
また、第1予熱器8または第2予熱器9は、少なくとも予熱制限出力範囲における出力上限値において予熱量をゼロとするように構成されてもよい。
これにより、車室32又はロータ5の過度な温度上昇や逆火発生のリスクが予熱制限出力範囲内で最も大きい予熱制限出力範囲の出力上限値にて予熱量をゼロ(予熱なし)にすることで、車室32又はロータ5の過度な温度上昇や逆火発生を効果的に抑制できる。
【0053】
さらに、第1予熱器8または第2予熱器9は、予熱制限出力範囲内において、温度上昇量がガスタービン1の出力増大とともに絶えず減少するよう予熱量を制御するように構成されてもよい。
このように、予熱制限出力範囲内において圧縮空気又は燃料の少なくとも一方の温度上昇量をガスタービン1の出力の増大とともに絶えず減少させることで、車室32又はロータ5の過度な温度上昇や逆火発生の抑制と運転効率の向上との両立を効果的に実現できる。
【0054】
図6A及び
図6B、
図7A及び
図7B、
図8A及び
図8Bは、さらに他の実施形態に係るガスタービン1に関する図である。
これらの図に示すように、さらに他の実施形態においては、第1予熱器8または第2予熱器9は、少なくとも、ガスタービン1の最大出力よりも小さい第1出力閾値とガスタービン1の定格出力との間の予熱制限出力範囲において、温度上昇量がガスタービンの出力増大とともに減少するよう予熱量を制御するように構成される。
【0055】
図6Aは、ガスタービン1が第1予熱器8を備える場合に適用され、
図6Bは、ガスタービン1が第2予熱器9を備える場合に適用される。
これらの図に示す例では、ガスタービン1の出力が第1閾値未満のとき、圧縮空気A1または燃料F1に対する予熱量は一定であり、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度は、予熱前の圧縮空気A1または燃料F2の温度と同じ傾きで、出力の増大に伴って上昇する。
ガスタービン1の出力が第1出力閾値以上且つ定格出力以下の予熱制限出力範囲のとき、ガスタービン1の出力が増大するにつれて予熱前の圧縮空気A1または燃料F1の温度も上昇するが、圧縮空気A1または燃料F1に対する予熱量はガスタービン1の出力増大とともに減少するため、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度上昇の傾きは、予熱前の圧縮空気A1または燃料F1の温度上昇の傾きよりも小さくなる。例えば、図示されるように、第1出力閾値と定格出力との間において予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度上昇の傾きは大部分の出力範囲において0であり、このときの予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度は概ね一定である。
【0056】
また、ガスタービン1の出力が第1出力閾値以上のとき、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度上昇量は部分的に0以上となっている。具体的には、予熱制限出力範囲のうち部分範囲100では、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度が一定の割合で上昇する。この部分範囲100の前後の出力においては、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度は一定の値である。
さらに、ガスタービン1の出力が定格出力以上のとき、第1予熱器8または第2予熱器9における予熱量は0であり、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度は予熱前の圧縮空気A1または燃料F1の温度上昇と一致する。
【0057】
図7A及び
図8Aは、ガスタービン1が第1予熱器8を備える場合に適用され、
図7B及び
図8Bは、ガスタービン1が第2予熱器9を備える場合に適用される。
これらの図に示すように、さらに他の実施形態においては、第1予熱器8または第2予熱器9は、定格出力以下の通常の運転範囲内において、制限温度以下となるように制御されてもよい。なお、通常の運転範囲とは、ガスタービン1の設計寿命(例えば運転時間や起動回数)の運転が可能な運転範囲をいう。
【0058】
これらの図において、ガスタービン1の出力増加に伴って第1予熱器8に供給される圧縮空気A1の温度は上昇し、圧縮空気A1の温度が制限温度未満のとき、圧縮空気A1は第1予熱器8において一定の予熱量で予熱されるため、予熱後の圧縮空気A2の温度は、ガスタービン1の出力増大に伴って、予熱前の圧縮空気A1の温度と同じ傾きで上昇する。
圧縮空気A1の温度が制限温度以上になったとき、ガスタービン1の出力が定格出力以下の通常の運転範囲においては、第1予熱器8における予熱量を減少させることによって、予熱前の圧縮空気A1の温度上昇に関わらず、予熱後の圧縮空気A2の温度は概ね一定となる。
ガスタービン1の出力が定格出力以上のとき、すなわち、通常の運転範囲以外のとき、
図7A又は
図7Bに示す例では、第1予熱器8または第2予熱器9における予熱量は0であり、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の温度は予熱前の圧縮空気A1または燃料F1の温度上昇と一致する。一方、
図8A又は
図8Bに示す例では、第1予熱器8または第2予熱器9における予熱量は0以上であり、予熱後の圧縮空気A2または燃料F2の出力に対応した温度上昇は、予熱前の圧縮空気A1または燃料F1の出力に対応した温度上昇よりも大きくなる。
【0059】
上記構成によれば、第1出力閾値から定格出力の予熱制限出力範囲においてガスタービン1の出力に応じて予熱量を制御するようにしたので、予熱制限出力範囲のうち比較的高出力の領域において車室32又はロータ5の過度な温度上昇や逆火発生を抑制しながら、予熱制限出力範囲のうち比較的低出力の領域において運転効率を向上させることができる。
【0060】
図9は、一実施形態に係るガスタービンプラント60の構成図である。
一実施形態において、ガスタービンプラント(コンバインドサイクルプラント)60は、ガスタービン(ガスタービンシステム)1及び蒸気タービンシステム40を備えている。
ガスタービン1は、
図1に示したように、圧縮機2と、燃焼器3と、第1予熱器8及び第2予熱器9と、タービン4と、発電機6と、を含んでいる。
蒸気タービンシステム40は、ガスタービン1から排気された排ガスEGの熱で蒸気を発生させる排熱回収ボイラ41と、排熱回収ボイラ41で発生した蒸気で駆動する蒸気タービン42a,42b,42cと、蒸気タービン42a,42b,42cにより駆動されて発電を行う発電機43と、蒸気タービン42aを駆動させた蒸気を水に戻す復水器44と、復水器44中の水を排熱回収ボイラ41に戻す給水ポンプ45と、排熱回収ボイラ41を通過した排ガスEGを大気に放出する煙突46と、を備えている。
【0061】
蒸気タービン42a,42b,42cは、低圧蒸気タービン42aと、中圧蒸気タービン42bと、高圧蒸気タービン42cと、を含む。高圧蒸気タービン42cを駆動させた蒸気は、再熱器47によって加熱されるようになっている。
また、排熱回収ボイラ41は、低圧蒸気を発生する低圧蒸気発生部41aと、中圧蒸気を発生する中圧蒸気発生部41bと、高圧蒸気を発生する高圧蒸気発生部41cと、を含む。
なお、図示される例では、各々の蒸気タービン42a,42b,42cに発電機43が設けられた構成を示しているが、低圧蒸気タービン42a、中圧蒸気タービン42b、高圧蒸気タービン42cの合計3基の蒸気タービンに対して1基の発電機43を設けた構成としてもよい。
【0062】
また、蒸気タービンシステム40の排熱回収ボイラ41で生成された蒸気の一部は、予熱蒸気ライン50を介してガスタービン1の予熱装置7に供給される。具体的には、予熱蒸気ライン50は、予熱装置7の入口側において第1分岐供給ライン50aおよび第2分岐供給ライン50bに分岐しており、第1分岐供給ライン50aは第1予熱器8の入口側に接続され、第2分岐供給ライン50bは第2予熱器9の入口側に接続されている。一方、予熱装置7の出口側には、予熱蒸気回収ライン51が設けられている。予熱蒸気回収ライン51は、予熱装置7の出口側において第1分岐回収ライン51aおよび第2分岐回収ライン51bに分岐しており、第1分岐回収ライン51aは第1予熱器8の出口側に接続され、第2分岐回収ライン51bは第2予熱器9の出口側に接続されている。そして、第1予熱器8および第2予熱器9において予熱に用いられた後の蒸気は、第1分岐回収ライン51a、第2分岐回収ライン51b、および予熱蒸気回収ライン51を介して排熱回収ボイラ41にて過熱された後、第2予熱蒸気ライン52を介して排熱回収ボイラ41に戻される。なお、図示される例では、第1予熱器8および第2予熱器9において予熱に用いられた後の蒸気は、再熱器47を介して中圧蒸気タービン42bに導かれた後、排熱回収ボイラ41に戻されている。
【0063】
上記構成を有するガスタービンプラント60において、ガスタービン1の圧縮機2は、大気中の空気NAを圧縮し、圧縮空気A1は第1予熱器8によって予熱された後、予熱圧縮空気A2として燃焼器3に供給される。また、燃焼器3には、燃料F1が第2予熱器9によって予熱された後、予熱燃料F2として供給される。燃焼器3内では、圧縮空気A2と燃料F2とが混合して燃焼して、高温高圧の燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスはタービン4に送られて、タービン4が駆動することによって発電機6が発電を行うようになっている。
【0064】
タービン4から排出された燃焼ガスは、排ガスEGとして排熱回収ボイラ41に送られて、排熱回収ボイラ41において蒸気生成のための熱源として用いられる。
排熱回収ボイラ41では、低圧蒸気発生部41aにおいて、復水器44からの水と排ガスとを熱交換することによって低圧蒸気を生成する。ここで生成された低圧蒸気は、低圧蒸気タービン42aに供給されて該低圧蒸気タービン42aを駆動する。低圧蒸気タービン42aから排出された蒸気は、復水器44で水に戻される。
低圧蒸気発生部41aで加熱された水の一部は中圧蒸気発生部41bに送られ、他の一部は高圧蒸気発生部41cに送られる。
【0065】
高圧蒸気発生部41cは、低圧蒸気発生部41aで加熱された水を排ガスEGと熱交換させて加熱し、高圧蒸気を生成する。この高圧蒸気は、高圧蒸気タービン42cに供給されて高圧蒸気タービン42cを駆動する。
中圧蒸気発生部41bは、低圧蒸気発生部41aで加熱された水を排ガスEGと熱交換させて加熱し、中圧蒸気を生成する。この中圧蒸気は、高圧蒸気タービン42cから排出された蒸気と合流し、再熱器47で再加熱される。
【0066】
再熱器47で再加熱された蒸気は、予熱蒸気ライン50を介して予熱装置7に送られ、第1予熱器8および第2予熱器9の予熱を行った後、再熱器47を通って中圧蒸気タービン42bに供給され、該中圧蒸気タービン42bを駆動する。
中圧蒸気タービン42bから排出された蒸気は、低圧蒸気タービン42aに供給される。
【0067】
上記構成によれば、ガスタービン1からの排ガスを有効活用してガスタービンプラント60の効率を高めることができる。
また、第1予熱器8または第2予熱器9における熱媒体として、圧力および熱伝導率に優れた蒸気(例えば排熱回収ボイラ41の蒸気)を使用することで、第1予熱器8または第2予熱器9を小型化することができる。
【0068】
本実施形態では、排熱回収ボイラ41で発生した蒸気で蒸気タービンシステム40を駆動し、電力を得るコンバインドサイクルプラントの例を示したが、排熱回収ボイラ41で発生した蒸気をプラント外部で熱源として利用するガスタービンコージェネレーションプラントにも本実施形態を適用することもできる。
【0069】
図10は、他の実施形態に係るガスタービンの構成図である。
同図に示すように他の実施形態では、第1予熱器8または第2予熱器9の少なくとも一方は、ガスタービン1からの排ガスEGとの熱交換によって、圧縮空気A1または燃料F1の少なくとも一方を予熱するように構成される。
具体的には、ガスタービン1は、タービン4から排出された排ガスEGの少なくとも一部を第1予熱器8に導く排ガスライン10と、タービン4から排出された排ガスの少なくとも一部を第2予熱器9に導く排ガスライン11と、を備えている。そして、これらの排ガスライン10,11を介して第1予熱器8または第2予熱器9に供給される排ガス量を調節することによって、圧縮空気A1または燃料F1の予熱量を制御するようになっている。
なお、図示される例では、第1予熱器8及び第2予熱器の両方が、ガスタービン1からの排ガスとの熱交換によって予熱を行うように構成されている。但し、他の構成例では、第1予熱器8または第2予熱器9の一方のみが、ガスタービン1からの排ガスEGとの熱交換によって予熱を行うように構成されてもよい。
この構成によれば、ガスタービン1からの排ガスEGを有効活用してガスタービンプラントの効率を高めることができる。
【0070】
図11は、さらに他の実施形態に係るガスタービン1の構成図である。
同図に示すように他の実施形態では、第1予熱器8または第2予熱器9の少なくとも一方における予熱の熱源が太陽熱である。図示される例では、ガスタービン1は、第1予熱器8に太陽熱を供給するための反射鏡12と、第2予熱器9に太陽熱を供給するための反射鏡13と、を備えている。
上記構成によれば、自然エネルギーを有効利用することによって、ガスタービン1の効率を向上させることができる。
【0071】
図12は、さらに他の実施形態に係るガスタービン1の構成図である。
同図に示すように他の実施形態では、第1予熱器8または第2予熱器9の少なくとも一方における予熱の熱源が、廃棄物焼却によって生じた排熱である。図示される例では、廃棄物焼却炉14(二点鎖線)において廃棄物が焼却処理され、第1予熱器8または第2予熱器9の少なくとも一方では、廃棄物焼却炉14での焼却により発生した排熱によって、圧縮空気または燃料が予熱される。例えば、第1予熱器8または第2予熱器9は廃棄物焼却炉14の炉壁に設けられ、圧縮空気または燃料と排熱とが熱交換する構成としてもよい。あるいは、第1予熱器8または第2予熱器9は廃棄物焼却炉14とは別に設けられ、廃棄物焼却炉14からの排ガス、または該排ガスによって生成された蒸気が第1予熱器8または第2予熱器9に導かれる構成としてもよい。なお、廃棄物焼却炉14から排出された排ガスは、排気浄化装置15にて排ガス処理を施された後、煙突から大気放出される。
【0072】
ここで、
図14A乃至
図14Fを参照して、第1予熱器8または第2予熱器9における予熱量制御の具体例について説明する。
これらの図において、第1予熱器8または第2予熱器9は、胴体内に複数の伝熱管を備える構成を有しており、伝熱管の内部に圧縮空気または燃料が流通するとともに、胴体の内部(伝熱管の外部)を熱源である高温の流体(以下、高温流体と称する)が流入することで熱交換が行われるようになっている。
【0073】
図14Aに示すように、一実施形態において、第1予熱器8または第2予熱器9は、第1予熱器8または第2予熱器9に高温流体を供給するための熱源ライン70と、該熱源ライン70を流れる高温流体の流量を調整する第1バルブ71と、を有している。
この構成においては、ガスタービン1の出力に応じて、第1バルブ71の開度を制御することで第1予熱器8または第2予熱器9に供給される高温流体の流量を調整し、圧縮空気または燃料の予熱量を制御するようになっている。
【0074】
予熱器出口における圧縮空気または燃料の温度が制限温度以下になるように予熱量を制御する場合においては、第1予熱器8または第2予熱器9の出口の圧縮空気、または燃料の温度を計測する、予熱器出口温度計97bを設け、ガスタービン1の出力に応じて、例えば
図4Aや
図4Bに示したように圧縮空気または燃料の制限温度を設定し、予熱器出口温度計97bで計測される温度が、制限温度以上となる場合に第1バルブ71の開度を下げて、熱源ライン70を流れる高温流体の流量を減少させ、圧縮空気または燃料の予熱量を減少させる。逆に、予熱器出口温度計97bで計測される温度が、制限温度未満の場合は、第1バルブ71の開度を上げて、熱源ライン70を流れる高温流体の流量を増加させ、圧縮空気または燃料の予熱量を増大する。なお、第1バルブ71の開度を上げて、熱源ライン70を流れる高温流体の流量を増加させても、予熱器出口温度計97bで計測される温度が、制限温度に到達しない場合は、第1バルブ71を全開とし、可能な限り予熱量を増大する。このようにすることで、圧縮空気または前記燃料の予熱器出口における温度が制限温度以下になるよう、ガスタービンの出力に応じて予熱量を制御することが可能となる。
【0075】
一方、第1予熱器8または第2予熱器9における予熱に起因した圧縮空気の温度上昇量がガスタービン1の出力増大とともに減少するよう、圧縮空気の予熱量を制御する場合においては、第1予熱器8または第2予熱器9の出口の圧縮空気、または燃料の温度を計測する、予熱器出口温度計97b、および、第1予熱器8または第2予熱器9の入口の圧縮空気、または燃料の温度を計測する、予熱器入口温度計97aを設け、ガスタービン1の出力に応じて、例えば
図2Aや
図2Bに示したように、予熱に起因した圧縮空気または燃料の温度上昇量がガスタービンの出力増大とともに減少するように、圧縮空気または燃料の予熱による温度上昇量を設定し、予熱器出口温度計97bで計測される温度と予熱器入口温度計97aで計測される温度との差が、設定された温度上昇量以上となる場合に第1バルブ71の開度を下げて、熱源ライン70を流れる高温流体の流量を減少させ、圧縮空気または燃料の予熱量を減少させる。逆に、予熱器出口温度計97bで計測される温度と予熱器入口温度計97aで計測される温度との差が、設定された温度上昇量未満の場合は、第1バルブ71の開度を上げて、熱源ライン70を流れる高温流体の流量を増加させ、圧縮空気または燃料の予熱量を増大する。なお、第1バルブ71の開度を上げて、熱源ライン70を流れる高温流体の流量を増加させても、予熱器出口温度計97bで計測される温度と予熱器入口温度計97aで計測される温度との差が、設定された温度上昇量に到達しない場合は、第1バルブ71を全開とし、可能な限り予熱量を増大する。このようにすることで、予熱に起因する圧縮空気または前記燃料の温度上昇量が前記ガスタービンの出力増大とともに減少するよう予熱量を制御することが可能となる。
【0076】
あるいは、第1バルブ71は開閉制御される構成であってもよく、その場合、熱源である高温流体の供給をON又はOFFすることによって、圧縮空気または燃料の予熱量を制御する。
これらの構成によれば、第1予熱器8または第2予熱器9における予熱量制御機構の簡素化が図れる。
【0077】
図14Bに示すように、他の実施形態において、第1予熱器8または第2予熱器9は、第1予熱器8または第2予熱器9に高温流体を供給するための熱源ライン70と、該熱源ライン70を流れる高温流体の流量を調整する第1バルブ71と、第1予熱器8または第2予熱器9の出口側と入口側において熱源ライン70をバイパスするバイパスライン72と、該バイパスライン72上に設けられた第2バルブ73と、を有している。
この構成においては、ガスタービン1の出力に応じて、第1バルブ71の開度を制御することで第1予熱器8または第2予熱器9に供給される高温流体の流量を調整し、圧縮空気または燃料の予熱量を制御するとともに、第2バルブ73の開度を制御してバイパスライン72を流れる高温流体の流量を調整する。このように、バイパスライン72によって、一部の高温流体が第1予熱器8または第2予熱器9を通らずに下流側へバイパスされることによって、熱源ライン70を流れる高温流体の流量を一定の範囲内に維持することができる。なお、
図14Bにおいて、バイパスライン72以外の構成については、
図14Aと同一の構成であってもよい。
【0078】
図14Cに示すように、他の実施形態において、第1予熱器8または第2予熱器9は、第1予熱器8または第2予熱器9に圧縮空気または燃料を流すための予熱流体ライン75と、第1予熱器8または第2予熱器9の出口側と入口側において予熱流体ライン75をバイパスするバイパスライン76と、該バイパスライン76上に設けられた第3バルブ77と、を有している。
この構成においては、ガスタービン1の出力に応じて第3バルブ77の開度を制御することで、バイパスライン76を介して第1予熱器8または第2予熱器9をバイパスする圧縮空気または燃料の流量が調整される。そのため、第1予熱器8または第2予熱器9に流入する圧縮空気または燃料の流量が調整され、圧縮空気または燃料の予熱量が制御される。この場合、必要に応じて、圧縮空気または燃料の全量をバイパスして、熱交換量をゼロとしてもよい。
【0079】
本構成では、予熱器出口における圧縮空気または燃料の温度が制限温度以下になるように予熱量を制御する場合においては、第1予熱器8または第2予熱器9の出口の圧縮空気、または燃料の温度を計測する、予熱器出口温度計97bを設け、ガスタービン1の出力に応じて、例えば
図4Aや
図4Bに示したように圧縮空気または燃料の制限温度を設定し、予熱器出口温度計97bで計測される温度が、制限温度以上となる場合に第3バルブ77の開度を上げて、バイパスライン76を流れる圧縮空気または燃料の流量を増大させ、圧縮空気または燃料の予熱量を減少させる。逆に、予熱器出口温度計97bで計測される温度が、制限温度未満の場合は、第3バルブ77の開度を下げて、バイパスライン77を流れる圧縮空気または燃料の流量を減少させ、圧縮空気または燃料の予熱量を増大する。なお、第3バルブ77の開度を下げて、バイパスライン76を流れる高温流体の流量を減少させても、予熱器出口温度計97bで計測される温度が、制限温度に到達しない場合は、第3バルブ77を全閉とし、可能な限り予熱量を増大する。このようにすることで、圧縮空気または前記燃料の予熱器出口における温度が制限温度以下になるよう、ガスタービンの出力に応じて予熱量を制御することが可能となる。
【0080】
一方、第1予熱器8または第2予熱器9における予熱に起因した圧縮空気の温度上昇量がガスタービンの出力増大とともに減少するよう、圧縮空気の予熱量を制御する場合においては、第1予熱器8または第2予熱器9の出口の圧縮空気、または燃料の温度を計測する、予熱器出口温度計97b、および、第1予熱器8または第2予熱器9の入口の圧縮空気または燃料の温度を計測する、予熱器入口温度計97aを設け、ガスタービン1の出力に応じて、例えば
図2Aや
図2Bに示したように、予熱に起因した圧縮空気または燃料の温度上昇量がガスタービンの出力増大とともに減少するように、圧縮空気または燃料の予熱による温度上昇量を設定し、予熱器出口温度計97bで計測される温度と予熱器入口温度計97aで計測される温度との差が、設定された温度上昇量以上となる場合に第3バルブ77の開度を上げて、バイパスライン76を流れる圧縮空気または燃料の流量を増大させ、圧縮空気または燃料の予熱量を減少させる。逆に、予熱器出口温度計97bで計測される温度と予熱器入口温度計97aで計測される温度との差が、設定された温度上昇量未満の場合は、第3バルブ77の開度を下げて、バイパスライン76を流れる圧縮空気または燃料の流量を減少させ、圧縮空気または燃料の予熱量を増大する。なお、第3バルブ76の開度を下げて、バイパスライン76を流れる圧縮空気または燃料の流量を減少させても、予熱器出口温度計97bで計測される温度と予熱器入口温度計97aで計測される温度との差が、設定された温度上昇量に到達しない場合は、第3バルブ77を全閉とし、可能な限り予熱量を増大する。
このようにすることで、予熱に起因する圧縮空気または前記燃料の温度上昇量が前記ガスタービンの出力増大とともに減少するよう予熱量を制御することが可能となる。
【0081】
図14Dに示すように、他の実施形態において、第1予熱器8または第2予熱器9は、熱源である高温流体と中間熱輸送媒体とを熱交換するための熱交換器80と、第1予熱器8または第2予熱器9と熱交換器80との間を中間熱輸送媒体が循環するための循環ライン81と、を備える。循環ライン81には、中間熱輸送媒体を循環させるためのポンプ82と、中間熱輸送媒体の循環量を調整するための第4バルブ83と、が設けられている。
この構成においては、ガスタービン1の出力に応じて第4バルブ83を開度制御することによって中間熱輸送媒体の循環量が調整され、第1予熱器8または第2予熱器9における圧縮空気または燃料の予熱量が制御される。なお、第1予熱器8または第2予熱器9における予熱が不要な場合には、第4バルブ83を閉にし、且つ、ポンプ82を停止して、中間熱輸送媒体の循環量をゼロとしてもよい。
【0082】
本構成において、予熱器出口における圧縮空気または燃料の温度が制限温度以下になるように予熱量を制御する場合においては、第1予熱器8または第2予熱器9の出口の圧縮空気、または燃料の温度を計測する、予熱器出口温度計97bを設け、ガスタービン1の出力に応じて、例えば
図4Aや
図4Bに示したように圧縮空気または燃料の制限温度を設定し、予熱器出口温度計97bで計測される温度が、制限温度以上となる場合に第4バルブ83の開度を下げて、循環ライン81を流れる中間熱輸送媒体の流量を減少させ、圧縮空気または燃料の予熱量を減少させる。逆に、予熱器出口温度計97bで計測される温度が、制限温度未満の場合は、第4バルブ83の開度を上げて、循環ライン81を流れる中間熱輸送媒体の流量を増加させ、圧縮空気または燃料の予熱量を増大する。なお、第4バルブ83の開度を上げて、循環ライン81を流れる中間熱輸送媒体の流量を増加させても、予熱器出口温度計97bで計測される温度が、制限温度に到達しない場合は、第4バルブ83を全開とし、可能な限り予熱量を増大する。このようにすることで、圧縮空気または前記燃料の予熱器出口における温度が制限温度以下になるよう、ガスタービンの出力に応じて予熱量を制御することが可能となる。
【0083】
一方、第1予熱器8または第2予熱器9における予熱に起因した圧縮空気の温度上昇量がガスタービンの出力増大とともに減少するよう、圧縮空気の予熱量を制御する場合においては、第1予熱器8または第2予熱器9の出口の圧縮空気、または燃料の温度を計測する、予熱器出口温度計97b、および、第1予熱器8または第2予熱器9の入口の圧縮空気、または燃料の温度を計測する、予熱器入口温度計97aを設け、ガスタービン1の出力に応じて、例えば
図2Aや
図2Bに示したように、予熱に起因した圧縮空気または燃料の温度上昇量がガスタービンの出力増大とともに減少するように、圧縮空気または燃料の予熱による温度上昇量を設定し、予熱器出口温度計97bで計測される温度と予熱器入口温度計97aで計測される温度との差が、設定された温度上昇量以上となる場合に第4バルブ83の開度を下げて、循環ライン81を流れる中間熱輸送媒体の流量を減少させ、圧縮空気または燃料の予熱量を減少させる。逆に、予熱器出口温度計97bで計測される温度と予熱器入口温度計97aで計測される温度との差が、設定された温度上昇量未満の場合は、第4バルブ83の開度を上げて、循環ライン81を流れる中間熱輸送媒体の流量を増加させ、圧縮空気または燃料の予熱量を増大する。なお、第4バルブ83の開度を上げて、循環ライン81を流れる中間熱輸送媒体の流量を増加させても、予熱器出口温度計97bで計測される温度と予熱器入口温度計97aで計測される温度との差が、設定された温度上昇量に到達しない場合は、第4バルブ83を全開とし、可能な限り予熱量を増大する。
このようにすることで、予熱に起因する圧縮空気または前記燃料の温度上昇量が前記ガスタービンの出力増大とともに減少するよう予熱量を制御することが可能となる。
【0084】
図14Eに示すように、他の実施形態において、第1予熱器8または第2予熱器9は、伝熱面積が分割された複数のユニット8A〜8Cまたは9A〜9Cを含み、熱源である高温流体が流れる第1予熱器8または第2予熱器9の伝熱面積を調整することによって、圧縮空気または燃料の予熱量が制御されるようになっている。図示される例では、高温流体が流れる熱源ライン90は、第1ユニット8Aまたは9Bに高温流体を供給する第1熱源ライン90Aと、第2ユニット8Bまたは9Bに高温流体を供給する第2熱源ライン90Bと、第3ユニット8Cまたは9Cに高温流体を供給する第3熱源ライン90Cと、第3ユニット8Cまたは9Cの出口側に高温流体を供給する第4熱源ライン90Dと、第1ユニット8A、第2ユニット8B、第3ユニット8Cを直列に接続する直列熱源ライン91と、を含む。すなわち、第1熱源ライン90Aから供給された高温流体は、第1ユニット8A〜8Cまたは9A〜9Cの全てを通過する。第2熱源ライン90Bから供給された高温流体は、第2ユニット8Bまたは9Bと、第3ユニット8Cまたは9Cとを通過する。第3熱源ライン90Cから供給された高温流体は、第3ユニット8Cまたは9Cのみ通過する。そして、第4熱源ライン90Dから供給された高温流体は、第1予熱器8または第2予熱器9をバイパスするようになっている。また、各熱源ライン90A〜90Dには、それぞれ、バルブ92A〜92Dが設けられている。
【0085】
この構成においては、ガスタービン1の出力に応じて、各バルブ92A〜92Dを開閉制御して高温流体の流れる流路を切り替えることによって、第1予熱器8または第2予熱器9の伝熱面積を変更することができ、これにより圧縮空気または燃料の予熱量を調整することができる。
なお、図示される例では、高温流体の流路を切り替える構成としたが、他の構成例として、圧縮空気または燃料の流路を切り替えるようにしてもよい。また、第1ユニット8Aまたは9Bの出口側(圧縮空気または燃料の出口側)に位置する予熱器出口温度計97b、若しくは、第1ユニット8Aまたは9Bの入口側(圧縮空気または燃料の入口側)に位置する予熱器入口温度計97aの少なくとも一方を設けてもよい。この場合、例えば、
図14A、
図14C又は
図14Dにおいて説明したように、各バルブ92A〜92Dの制御に際して、予熱器出口温度計97b又は予熱器入口温度計97aで計測される温度が用いられる。
【0086】
図14Fに示すように、他の実施形態において、第1予熱器8または第2予熱器9は、熱交換効果が異なる複数のユニット8A,8Bまたは9A,9Bを含む。ユニット8A,8Bまたは9A,9Bは、圧縮空気または燃料が流れる予熱流体ライン94に対して並列に設けられている。ここで、第1予熱器8または第2予熱器9において熱交換効果を変える方法として、例えば、ユニット8Aまたは9Aと、ユニット8Bまたは9Bとの間で、伝熱面積を異ならせてもよい。あるいは、ユニット8Aまたは9Aにおいては伝熱管の内外面が滑らかな伝熱管を用い、ユニット8Bまたは9Bにおいては伝熱管内外面の少なくとも一方に乱流促進体が施工された伝熱管を用いてもよい。
また、第1予熱器8または第2予熱器9は、熱源である高温流体が流れる熱源ライン95を有しており、この熱源ライン95は、ユニット8Aまたは9Aに高温流体を供給する第1熱源ライン95Aと、ユニット8Bまたは9Bに高温流体を供給する第2熱源ライン95Bと、から構成される。第1熱源ライン95A及び第2熱源ライン95Bには、それぞれ、バルブ96A,96Bが設けられている。
【0087】
この構成においては、ガスタービン1の出力に応じて、各バルブ96A,96Bを開閉制御して、予熱に用いられるユニット8A,8Bまたは9A,9Bを切り替えるようにしてもよいし、各バルブ96A,96Bを開度制御して、ユニット8A,8Bまたは9A,9Bに流れる高温流体の流量を調整してもよい。また、第1ユニット8Aまたは9Bの出口側(圧縮空気または燃料の出口側)に位置する予熱器出口温度計97b、若しくは、第1ユニット8Aまたは9Bの入口側(圧縮空気または燃料の入口側)に位置する予熱器入口温度計97aの少なくとも一方を設けてもよい。この場合、例えば、
図14A、
図14C又は
図14Dにおいて説明したように、各バルブ96A,96Bの制御に際して、予熱器出口温度計97b又は予熱器入口温度計97aで計測される温度が用いられる。
【0088】
次に、一実施形態に係るガスタービン1の運転方法について説明する。なお、以下の説明では、適宜、
図1乃至
図13に示す符号を用いている。
一実施形態において、ガスタービン1の運転方法は、燃焼器3の上流側において、圧縮空気または燃料の少なくとも一方を予熱するための予熱ステップを備えている。
予熱ステップでは、予熱ステップでは、ガスタービン1の少なくとも一部の出力範囲において、予熱に起因した圧縮空気または燃料の少なくとも一方の温度上昇量がガスタービン1の出力増大とともに減少するよう予熱量を制御する。
【0089】
この方法によれば、少なくとも一部の出力範囲において、予熱に起因した圧縮空気又は燃料の少なくとも一方の温度上昇量をガスタービン1の出力の増大とともに減少させるようになっている。このように、ガスタービン1の出力に応じて予熱量を制御することで、ガスタービン1の高出力時における車室又はロータの過度な温度上昇や逆火発生を抑制するとともに、ガスタービン1の低出力時における運転効率の向上を実現することができる。
【0090】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0091】
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。