(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記U字溝の設置後に、前記U字溝の側部上面に、前記U字溝の前記内側側面を上方に延長するように、追加の型枠を設置することを含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
型枠が鋼製である場合には、型枠は多数回繰り返して、転用して、使用することができる。しかし、型枠の設計、作製に時間と費用が必要である。また、重い鋼製型枠の組み立て解体を人手で、繰り返し、行う必要があるが、これは非常な重労働である。
【0008】
また、型枠が木製である場合には、型枠は耐久性に乏しくなり、多数回繰り返して使用することができないため、木材を大量に産廃処分する必要があり、無駄が多く能率的ではない。
【0009】
上記のような鋼製、木製の型枠を使用する場合には、共通して、側面型枠の組み立て解体のスペースが必要となる。また、製造費用に占める型枠の割合が大きく、型枠転用率が低い場合には、非常に割高となり、型枠の作製コストが嵩む。また、サイトプレハブとして建設現場で、プレキャストコンクリート部材製造用の型枠を設置する場合、建築が計画通りに施工されるように、事前計画を綿密に練る必要があり、時間や労力を要するため、このような要因によってもコストが嵩み得る。
【0010】
特許文献1のように、地盤をプレキャストコンクリート部材の型枠として使用する場合には、地盤面の凹凸が製造に少なからず影響を与えるため、良好な製造精度を保つことが困難である。また、一方の梁側は金鏝押さえとなり、一本の梁側の仕上げ状態が左右で異なり外観が損なわれるため、美観が求められる際には、仕上げ状態が悪い面を隠ぺいするように設計する必要があり、設計上の自由度が損なわれる。
【0011】
特許文献2のように、プレキャストコンクリート製の型枠を捨て型枠として使用する場合には、一本のプレキャストコンクリート部材の製造に一組のプレキャストコンクリート製の型枠を使用するため、型枠の作製コストが嵩む。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、型枠の作製に必要な時間とコストを抑え、型枠が多数回転用可能であり、かつ、建設現場においても容易に実施可能な、プレキャストコンクリート部材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明は、内側底面から上方に向けて、内側両側面間の間隔が増大するように、前記内側側面に勾配がついているU字溝を用い、ベッド上に複数の前記U字溝を、上方が開口するように、並べて設置すること、前記U字溝の溝にコンクリートを打設すること、打設された前記コンクリートを脱型すること、を含む、プレキャストコンクリート部材の製造方法を提供する。
このような構成によれば、型枠として既製品であるU字溝を使用することが可能であるため、型枠の設計、作製に必要な時間と費用を低減することができる。
また、型枠の組み立て解体などにおいて人手での作業が発生したとしても、それは負担が高いものではなく、重労働を必要としない。
また、内側底面から上方に向けて、内側両側面間の間隔が増大するように、内側側面に勾配がついているU字溝を用いるため、型枠を解体しなくとも、U字溝内で硬化したコンクリートの脱型が容易である。したがって、型枠を多数回繰り返して使用することができ、無駄がなく合理的である。
また、大掛かりな型枠の組み立て解体作業を必要としないため、組み立て解体のスペースが不要、あるいは少なく済み、サイトプレハブとして建設現場で、プレキャストコンクリート部材製造用の型枠を設置する場合においても、型枠に関する事項の、建築計画への影響が少なくなり、事前計画立案のための時間や労力が少なくなる。
また、地盤を梁の型枠として使用しないため、製造精度を保つことが容易であり、更に、仕上げ状態がどの面においても一定となり外観が損なわれないため、設計上の自由度が損なわれない。
更に、型枠として使用するU字溝を外溝工事に使用することができるため、U字溝を撤収する必要がなくなり、建物と外溝の双方の工事を、安価に実現することが可能となる。
【0014】
一般的に、ハーフプレキャストコンクリート部材を梁として使用する場合には、ハーフプレキャスト床板などの端部を、ハーフプレキャストコンクリート部材の、コンクリート部の上面端部に載せる必要がある。本発明においては、上記のように勾配がついているU字溝を用いるため、脱型したプレキャストコンクリート部材の断面は、例えば、底面よりも上面が広い台形形状となる。したがって、上記のような場合に、底面よりも広がっている上面の部位を、ハーフプレキャスト床板を載置するための、床材載せ掛け代、すなわちフカシとして使用することができる。これにより、フカシ相当部分の製造を改めて行う必要がなく、したがって、施工に要する時間と費用を低減することができる。
【0015】
前記コンクリートの打設の前に、前記U字溝の内部に、前記溝の方向に垂直に、前記U字溝の内部を区切る妻枠を設置することを含んでもよい。
このような構成によれば、同一断面を有する、任意の長さの、プレキャストコンクリート部材を製造することが可能となる。
【0016】
前記U字溝の設置後に、前記U字溝の側部上面に、前記U字溝の前記内側側面を上方に延長するように、追加の型枠を設置することを含んでもよい。
このような構成によれば、任意の高さ、すなわち、任意の断面形状の、プレキャストコンクリート部材を製造することが可能となる。
【0017】
本発明によれば、上記のように、任意の長さ、任意の断面形状の、プレキャストコンクリート部材を製造することが、容易に可能となるが、これは、プレキャストコンクリート部材の標準化設計を行うことが出来ることを意味する。すなわち、通常はオーダー製品であるところのプレキャストコンクリート部材を、設計や施工を効率化するために、予め決定された断面形状や長さ、あるいは断面形状と長さの組み合わせのバリエーションのみを、実際の設計において使用できるように、パターン化しておく。このような標準化設計により、設計プロジェクトごとに、プレキャストコンクリート部材の適用検討を容易、かつ迅速に、行うことが可能となる。例えば、小梁プレキャストコンクリート部材の断面形状を、数種類で標準化設計しておき、上記の方法により長さを任意に変えられるものとして、設計、施工することにより、構造建築物の躯体部品を規格化量産できるため、建築構造物を安価に提供することができる。
【0018】
前記設置した複数のU字溝を、複数列設置し、該複数列の各々は、互いに平行に、隣接して設置されてもよい。
このような製造方法によれば、型枠であるU字溝が縦横に密集している構成となるため、コンクリートを同時に、多数の型枠に対して、打設することができる。また、型枠からこぼれる、無駄なコンクリートが少なくなる。これにより、プレキャストコンクリート部材の製造コストを低減することができる。
【0019】
前記コンクリートの打設の前に、脱型用縁切り材により、前記U字溝の前記内側底面及び内側側面を覆うことを含んでもよい。
このような製造方法によれば、コンクリートの脱型が容易となり、プレキャストコンクリート部材の製造コストを更に低減できる。
また、プレキャストコンクリート部材の仕上げ状態をより滑らかにすることが可能となり、外観が損なわれることがないため、不良部分を隠ぺいする必要がなく、設計上の自由度が損なわれない。
【0020】
プレキャストコンクリート部材は、上記のような製造方法によって製造されてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、型枠の作製に必要なコストを抑え、型枠が多数回転用可能である、プレキャストコンクリート部材の製造方法を、提供することが可能となる。
【0022】
好ましい様態では、建設現場においても、容易に、実施することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態として示した、プレキャストコンクリート部材の製造方法において使用するU字溝1を示す。
図1(a)、(b)は、それぞれ、U字溝1の正面図、側面図である。
【0026】
U字溝1は、底壁2と、上方に向けて底壁2に連なる、互いに対抗する2つの側壁3を備えている。底壁2と側壁3は溝4を形成している。2つの側壁3の上端は、U字溝1の上方に向けて開口する開口壁部5をなしている。U字溝1の内側側面6には、2つの側壁3の各内側側面6間の間隔が増大するように、勾配がついている。内側側面6の上方、すなわち、開口壁部5の内側には、段部7が設けられている。
【0027】
図2は、第1の実施形態として示したプレキャストコンクリート部材の製造方法において、U字溝1の設置状況を示した図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。本第1の実施形態において製造されるプレキャストコンクリート部材は、例えば、ハーフプレキャストコンクリートの小梁である。
【0028】
第1の実施形態においては、まず、ベッド10を設置する。ベッド10は木製であり、2本の桁部材11と、複数の梁部材12を備えている。間隔をあけて、平行に延在する2本の桁部材11の上に、桁部材11に直交するように、複数の梁部材12が載置され、接合されている。
【0029】
次に、
図2(b)に示すように、ベッド10の梁部材12の上に、複数のU字溝1を、開口壁部5が上方を向くように、かつ、U字溝1同士の、溝4の方向が合致して、長さ方向に列をなすように、並べて設置する。
図2(b)においては、3個のU字溝1を並べて設置しているが、U字溝1の数は2個以下でもよいし、4個以上でもよい。
【0030】
また、
図2(a)に示すように、複数のU字溝1の列を、各列が、互いに平行に、隣接するように、設置する。
図2(a)においては、U字溝1の列を2列設置しているが、列の数は1列でもよいし、3列以上でもよい。
【0031】
本第1の実施形態においては、
図2(a)(b)に示されるように、ベッド10の上に、複数のガイド13を、U字溝1の底壁2の幅の間隔をあけて、互いに平行に、溝4の方向に延在するように、設置している。U字溝1は、ガイド13の間に設置される。これにより、並べられたU字溝1の溝4が、U字溝1同士の連接部において滑らかに接続されるように、U字溝1の設置位置を調整している。
【0032】
次に、U字溝1の2つの側壁3の上部、すなわち、開口壁部5間を、タイロッドなどの固定部材14により固定する。固定部材14は、表面に雄ネジ部が形成された棒状部材15、棒状部材15が貫通する孔を備える支持プレート16、及び、棒状部材15と螺着する雌ネジ部が形成された締結部材17を備える。棒状部材15は、U字溝1の開口壁部5をまたぐように載置される。U字溝1の各側壁3において、側壁3を挟み込むように、側壁3の内側と外側にそれぞれ、棒状部材15を貫通させた支持プレート16を当接させ、それぞれの支持プレート16の、側壁3とは反対の方向から、締結部材17を締め付け、固定する。
【0033】
上記のようにU字溝1を設置した後、列をなして連接したU字溝1同士を固定する。
図3は、本第1の実施形態において、U字溝1の固定状況を示した図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【0034】
U字溝1の各列に対し、該列の両端部にそれぞれ、該列を挟み込むように、梁部材18を設置し、梁部材18間を溝方向固定部材19で固定する。溝方向固定部材19は、表面に雄ネジ部が形成された棒状部材20、棒状部材20が貫通する孔を備える支持プレート21、及び、棒状部材20と螺着する雌ネジ部が形成された締結部材22を備える。棒状部材20は、U字溝1の列の両端部に設置された梁部材18を結合するように、U字溝1の外側に、すなわち、コンクリートが打設される溝4を避けるように、載置される。列の両端部に設置された各梁部材18において、U字溝1が載置された側とは反対の側にそれぞれ、棒状部材20を貫通させた支持プレート21を当接させ、支持プレート21の更に外側から、締結部材22を締め付け、固定する。
【0035】
U字溝1を固定した後、U字溝1の各列の両端部、及び内部を、製造予定のプレキャストコンクリート部材の長さに応じて、区画する。
図4は、本第1の実施形態において、U字溝の区画状況を示した、一部断面視した側面図である。
【0036】
図4においては、U字溝1の列の、紙面方向左端の梁部材18の内側に、梁部材18に支持されるように、止め枠25を設置し、これにより、溝4の左端を閉じている。U字溝1の列の、紙面方向右側にも、止め枠25を設置しているが、本第1の実施形態においては、右側の止め枠25は、伸縮可能な管状部材23の一端によって支持されており、管状部材23の他端は、右側の梁部材18の内側に、支えられるように、設置されている。
【0037】
U字溝1の内部の、
図4における左右両端の止め枠25の間は、溝4の方向に垂直に、溝4を区切る妻枠24を設置している。
【0038】
上記のようにU字溝1を設置、固定し、溝4内を適宜区画した後、鉄筋籠などの配筋を設置し、U字溝1の溝4の、止め枠25と妻枠24によって区切られた各区画に、コンクリートを打設する。
【0039】
最後に、所定の養生期間を経て、打設したコンクリートが硬化した後、製造されたハーフプレキャストコンクリートの小梁を吊り上げて、脱型する。
【0040】
製造されたハーフプレキャストコンクリートの小梁は、現場に設置される。その後、スラブの配筋、コンクリートの打設を経て、構造建築物が施工される。
【0041】
このような製造方法によれば、型枠として既製品であるU字溝1を使用することが可能であるため、型枠の設計、作製に必要な時間と費用を低減することができる。
【0042】
また、型枠の設置などにおける人手での作業において、重労働を必要としない。
【0043】
また、内側底面から上方に向けて、内側両側面6間の間隔が増大するように、内側側面6に勾配がついているU字溝1を用いるため、型枠を解体しなくとも、U字溝1内で硬化したコンクリートの脱型が容易である。したがって、型枠を多数回繰り返して使用することができ、無駄がなく合理的である。
【0044】
また、大掛かりな型枠の組み立て解体作業を必要としないため、組み立て解体のスペースが不要、あるいは少なく済み、サイトプレハブとして建設現場で、プレキャストコンクリート部材製造用の型枠を設置する場合においても、型枠に関する事項の、建築計画への影響が少なくなり、事前計画立案のための時間や労力が少なくなる。
【0045】
また、地盤を梁の型枠として使用しないため、製造精度を保つことが容易であり、更に、仕上げ状態がどの面においても一定となり外観が損なわれないため、設計上の自由度が損なわれない。
【0046】
また、型枠として使用するU字溝1を外溝工事に使用することができるため、U字溝1を撤収する必要がなくなり、建物と外溝の双方の工事を、安価に実現することが可能となる。
【0047】
また、上記のように勾配がついているU字溝1を用いるため、脱型したプレキャストコンクリート部材の断面は、例えば、底面よりも上面が広い台形形状となる。例えば、ハーフプレキャストコンクリート部材を梁として使用し、ハーフプレキャスト床板などの端部を、ハーフプレキャストコンクリート部材の、コンクリート部の上面端部に載せるような場合に、底面よりも広がった上面の部位を、ハーフプレキャスト床板を載置するための、床材載せ掛け代、すなわちフカシとして使用することができる。したがって、フカシ相当部分の製造を改めて行う必要がなく、したがって、施工に要する時間と費用を低減することができる。
【0048】
また、止め枠25は、伸縮可能な管状部材23によって支持されている。更に、U字溝1の列の、左右両端の止め枠25の間には、任意の場所に妻枠24を設置して、溝4を区切ることができる。したがって、同一断面を有する、任意の長さの、プレキャストコンクリート部材を製造することが可能となる。これにより、前記のように、プレキャストコンクリート部材の標準化設計を行うことが可能となる。すなわち、設計プロジェクトごとに、プレキャストコンクリート部材の適用検討を容易、かつ迅速に、行うことが可能となり、建築構造物を安価に提供することができる。
【0049】
また、型枠であるU字溝1が縦横に密集している構成となるため、コンクリートを同時に、多数の型枠に対して、打設することができる。また、型枠からこぼれる、無駄なコンクリートも少なくなる。これにより、製造コストを低減することができる。
【0050】
また、U字溝1の開口壁部5間を、固定部材14により固定しているため、溝4へのコンクリート打設により、U字溝1の開口壁部5が開き、予定とは異なる断面形状のU字溝1が製造されることを防止することが可能である。これは、特に高さが高いプレキャストコンクリート部材を製造する場合に有効である。
【0051】
また、ベッド10が木製であるため軽量であり、ベッド10ごと、プレキャストコンクリート部材の製造ユニット全体を、容易に移設することができるため、特に建設現場でプレキャストコンクリート部材の製造を行う場合は、建築計画に融通が利き、したがって、計画の立案が容易である。
【0052】
次に、
図5は、本発明の第2、3の実施形態として示した、プレキャストコンクリート部材の製造方法において使用するU字溝30を示す。
図5(a)、(b)は、それぞれ、U字溝30の正面図、側面図である。U字溝30においては、内側側面6に段部7が形成されていない点が、
図1に示されるU字溝1とは異なっている。
【0053】
図6は、第2の実施形態として示したプレキャストコンクリート部材の製造方法において、U字溝30の設置状況を示した図である。本第2の実施形態において製造されるプレキャストコンクリート部材は、例えば、ハーフプレキャストコンクリートの小梁である。
【0054】
第2の実施形態においても、まず、ベッド31を設置する。本第2の実施形態においては、ベッド31としては、長尺のH型鋼を使用している。H型鋼の、一方のフランジが地盤に接するように、地盤上に設置する。
【0055】
次に、第1の実施形態と同様、ベッド31の他方のフランジ上に、H型鋼の長さ方向と、U字溝30の溝4の方向が一致するように、複数のU字溝30を設置する。複数のU字溝30は、開口壁部5が上方を向くように、かつ、溝4の方向が合致して、長さ方向に列をなすように、設置される。
【0056】
本第2の実施形態においては、U字溝30の両側壁3の外側の表面に沿って、U字溝30の溝4の方向に延在するように、単管パイプなどのガイド32を設置している。これにより、並べられたU字溝30の溝4が、U字溝30同士の連接部において滑らかに接続されるように、U字溝30の設置位置を調整している。
【0057】
ガイド32には、長尺な支持部材33の一端が、接続されている。支持部材33の他端は、地盤などに固定されている。
【0058】
次に、U字溝30の溝4内に、打設したコンクリートの脱型を容易に行うため、及び、プレキャストコンクリート部材の表面を滑らかにするために、溝4の内側底面及び内側側面6を覆うように、ビニール、薄ベニヤ、薄鉄板、ポリエステルフィルムなどの、脱型用縁切り材34を設置する。特に、P0.125などのポリエステルフィルムは、化学薬品、医薬品や水に強く、伸び縮みが殆どなく、経年劣化しないため、脱型用縁切り材34として使用するには好適である。また、脱型用縁切り材34として、エポキシ樹脂を塗布してもよい。また更に、脱型用縁切り材34として、コンクリート剥離剤を塗布してもよい。
【0059】
その後、第1の実施形態と同様に、列に並べられたU字溝30同士の固定、
図3に示されるような止め枠25や妻枠24による区画、鉄筋籠などの配筋の設置、コンクリートの打設、養生、及び脱型を行う。
【0060】
このような製造方法によれば、ベッド31が既製品であるH型鋼であるため、複雑な設備や載置台が不要となり、製造施設ユニットの部材数を削減することができる。また、地盤面に多少凹凸があっても、特別な整地を要せずに、現場でのプレキャストコンクリート部材の製造設備を構築することが可能である。また、同一の建築現場内での製造場所の移動や、別の現場への製造設備の移転なども、容易に可能である。
【0061】
上記のように、本第2の実施形態においては、ベッド31としてH型鋼を使用しているが、この場合、U字溝30の転倒を防止するために、支持部材33を設置している。U字溝30の列が一列の場合は、
図6に示すように、当該列の両側壁3を支持するように、列の両側に、支持部材33を設置する。U字溝30の列を複数列、列同士が当接し互いに支持するように設置する場合には、最も端に位置するU字溝30の列の、他のU字溝30によって支持されていない側壁3のみを支持するように、支持部材33を設置することが可能である。このようにすることで、製造施設ユニットを、更に容易に設置することが可能となる。
【0062】
また、U字溝30の溝4内に、脱型用縁切り材34を設置した後に、コンクリートを打設するため、脱型を容易に行うことができる。また、プレキャストコンクリート部材の表面への、U字溝30の溝4表面の、ピンホールやモルタルの凹凸面などによる影響をなくし、プレキャストコンクリート部材の表面を滑らかにすることが可能である。
【0063】
脱型用縁切り材34として、エポキシ樹脂を使用して、U字溝30の溝4表面の、ピンホールやモルタルの凹凸面にエポキシ樹脂が含浸して、滑らかな表面を形成するように、溝4表面に塗り込むと、ビニールなどを用いた場合に懸念される、しわによるプレキャストコンクリート部材の表面への影響をなくすことができる。したがって、外観が非常に滑らかなプレキャストコンクリート部材を製造することが可能となる。ただし、脱型用縁切り材34として、ビニールを用いる場合であっても、接着剤をU字溝30の溝4の、内側底面及び内側側面6の、全面に塗布し、溝4の表面に隙間なくビニールを接着したり、ビニールにローラー掛けたりすることで、しわの発生を防止することは可能である。
【0064】
一度脱型用縁切り材34を設置すれば、多数回にわたり、繰り返して使用することができるため、プレキャストコンクリート部材の製造の度に、脱型用縁切り材34を再設置する必要がない。したがって、プレキャストコンクリート部材の製造時間への影響をほとんど与えずに、プレキャストコンクリート部材の表面を滑らかにして外観をよくすることが可能である。
【0065】
また、本第2の実施形態が、第1の実施形態と同様に、型枠の設計、作製に必要な時間と費用を低減する、型枠の設置などにおける人手での作業において、重労働を必要としない、型枠を多数回繰り返して使用することができ、無駄がなく合理的である、事前計画立案のための時間や労力が少なくなる、地盤を梁の型枠として使用しないため、製造精度を保つことが容易である、フカシ相当部分の製造を改めて行う必要がない、標準化設計を行うことが可能である、等の、前記した様々な効果を奏することは、いうまでもない。
【0066】
次に、
図7に、本発明の第3の実施形態として示した、プレキャストコンクリート部材の製造方法における、U字溝30の設置状況を示す。本第3の実施形態において製造されるプレキャストコンクリート部材は、例えば、ハーフプレキャストコンクリートの大梁などの、梁成が高いものである。
【0067】
本第3の実施形態は、U字溝30を設置した後に、U字溝30の側壁3の上面に、側型枠35を、U字溝30の内側側面6を上方に延長するように、設置する点、及び、図示されていないが、止め枠や妻枠に主筋を貫通させるための開口を設けてある点が、
図6に示される上記の第2の実施形態とは異なっている。
【0068】
このような製造方法によれば、内部に主筋を通した、大梁などの、梁成の高い梁でも容易に作成可能である。すなわち、任意の高さ、及び長さを有する、プレキャストコンクリート部材を製造することが、容易に可能となるため、前記のように、プレキャストコンクリート部材の標準化設計を行うことが可能となる。すなわち、設計プロジェクトごとに、プレキャストコンクリート部材の適用検討を容易、かつ迅速に、行うことが可能となり、建築構造物を安価に提供することができる。
【0069】
また、本第3の実施形態が、第1、2の実施形態と同様に、型枠の設計、作製に必要な時間と費用を低減する、型枠の設置などにおける人手での作業において、重労働を必要としない、型枠を多数回繰り返して使用することができ、無駄がなく合理的である、事前計画立案のための時間や労力が少なくなる、地盤を梁の型枠として使用しないため、製造精度を保つことが容易である、フカシ相当部分の製造を改めて行う必要がない、等の様々な効果を奏することは、いうまでもない。
【0070】
なお、上記の各実施形態において、U字溝1、30の列は、列の両端に設置された梁部材18を介して、溝方向固定部材19によって締め付け、固定されている。梁部材18の代わりに、木製の端太材を打ち付けた、木材であるコンクリートパネルを使用し、コンクリートパネルに形成された貫通穴に、表面に雄ネジ部が形成された棒状部材を挿通させて、ナットで締め付けることで固定してもよい。
【0071】
また、
図8(a)に示すように、梁部材18を使用せず、すなわち、溝方向固定部材19の支持プレート21を、列の両端に設置された、U字溝1、30の側壁3に直接接するように配した後、締め付け、固定するようにしてもよい。
【0072】
また、この場合は、
図8(b)に示すように、U字溝1、30の列を平行に並べ、一個の溝方向固定部材19を2つのU字溝1、30の列の間に配することによって、一個の溝方向固定部材19によって2つの列を同時に締め付け、固定するようにしてもよい。
【0073】
また、
図8(c)に示すように、U字溝1、30の列を、互いに接するように、緊密に設置したうえで、ベルト荷締機40などによって、全てのU字溝1、30をまとめて取り囲むように、全体を緊結してもよい。このように、U字溝1、30を密集させるとそれだけ、コンクリートを同時に、多数の型枠に対して打設することができ、かつ、型枠からこぼれる、無駄なコンクリートも少なくなるため、製造コストを更に低減することができる。
【0074】
また、一列に並べられたU字溝1、30は、隣接するU字溝1、30を、専用接続金物で互いに接続することで、形成してもよい。あるいは、ベッドとして鋼板を使用し、シーチャンネルなどをベッドに溶接することで、U字溝1、30を直にベッドに固定してもよい。
【0075】
また、
図8に示すように、クサビなどの高さ調整板41を使用して、U字溝1、30の高さの微調整を行ってもよい。
【0076】
また、
図4においては、一方の止め枠25は、管状部材23を介して、梁部材18に接続されて支持されているが、止め枠25の厚みを増して箱状として、止め枠25自身が梁部材18に接触されて、支持されるようにしてもよい。
【0077】
また、止め枠25には、プレキャストコンクリート部材の木口面に、コッターを整形するための、凹凸が形成されていてもよい。
【0078】
また、止め枠25として、コンクリートパネルなどの木材部品を使用してもよい。これにより、型枠をU字溝1、30とコンクリートパネルで構成するため、鋼製の型枠が不要となり、型枠を安価に作製することができる。
【0079】
また、上記の第1の実施形態においては、
図2などに示すように、U字溝1の開口壁部5間を、固定部材14により固定しているが、U字溝1、30の強度が十分である場合や、U字溝1、30の高さが低い場合などは、固定部材14は用いなくてもよい。
【0080】
また、上記の第3の実施形態において、
図7に示されるような、U字溝30の側壁3の上面に設置される、側型枠35に関して、その上部を、固定部材14によって締結、固定してもよい。側型枠35は木製、鋼製でもよいし、プレキャストコンクリートで製造されていてもよい。側型枠35には、脱型が容易になるように、勾配がついていてもよいし、側型枠35は勾配がなく垂直なものとして、コンクリートの打設ごとに側型枠35を解体するようにしてもよい。
【0081】
また、上記の第2、3の実施形態において、
図6、7に示される脱型用縁切り材34として、ビニールシートを用いる場合には、ビニールシートの、溝4の方向と直行する方向の幅が、溝4の底面の幅と両側内側側面6の高さ、及び両側側型枠35の高さの計よりも、長くなるように裁断して用いてもよい。このようなビニールシートは、U字溝1、30内に設置すると、ビニールシートの幅方向の余剰部分が、U字溝1、30の両側壁3からU字溝1、30の外方へはみ出て、垂れ下がる。コンクリートをU字溝1、30に打設した後、このビニールシートの余剰分を、打設したコンクリートの上に、コンクリートを包み込むように被せることで、コンクリートの採暖、養生を容易に行うことができる。
【0082】
また、上記の各実施形態において、
図2、6などにおいては、ガイド13、32を用いて、並べられたU字溝1、30の溝4が、U字溝1、30同士の連接部において滑らかに接続されるように、U字溝1、30の設置位置を調整している。このガイド13、32に代わり、H型鋼を用いてもよい。すなわち、ウェブが地盤と平行になるようにH型鋼を設置し、ウェブを底面とし、ウェブに接続し、ウェブから垂直に、上方に延びる両フランジを側面とした空間内に、U字溝1、30を、U字溝1、30の底壁2をウェブが、一方の側壁3を一方のフランジが、それぞれ支持するよう設置し、他方の側壁3と他方のフランジ間にキャンバーを打ち込み固定してもよい。このようにすることで、U字溝1、30の設置精度が容易に確保できる。
【0083】
また、上記の各実施形態において、製造されるプレキャストコンクリート部材は、ハーフプレキャストコンクリートの小梁、大梁であるが、これに代わり、中柱プレキャストコンクリート部材であってもよい。中柱の場合は、梁ほどの高さを要しないため、上記の各実施形態において容易に作成することが可能である。
【0084】
また、製造されるプレキャストコンクリート部材は、プレテンションプレストレスの、プレキャストコンクリート部材であってもよい。プレテンションプレストレス部材は、一般的には、鋼製の型枠で作成されるが、それに代わり、U字溝1、30を列に並べ、溝4内にストレスが与えられたPC鋼材を設置したうえで、コンクリートを打設することで、任意の長さで、同一断面の、プレテンションプレストレスの、プレキャストコンクリート部材を、容易に作成することが可能である。
【0085】
上記の各実施形態は、適宜、組み合わされてもよい。例えば、第1の実施形態において脱型用縁切り材34を使用してもよいし、第3の実施形態において、ベッド31を木製桁材としてもよい。
【0086】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であればこれから様々な変形及び均等な実施の形態が可能であることが理解できるであろう。
【0087】
よって、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載される本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形や改良形態も本発明に含まれる。