(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0018】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態の医療用電気刺激電極について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の医療用電気刺激電極の全体構成を示す模式図である。
図2は、本発明の第1の実施形態の医療用電気刺激電極の主要部の構成を示す模式図である。
図3は、本発明の第1の実施形態の医療用電気刺激電極のリード部の電極支持体固定部材および操作シースの遠位端部を示す模式的な斜視図である。
図4は、本発明の第1の実施形態の医療用電気刺激電極の電極支持体の構成を示す模式的な正面図である。
図5は、
図4におけるA1方向から見た側面図である。
図6は、本発明の第1の実施形態の医療用電気刺激電極の弾性部材の構成を示す模式的な斜視図である。
図7は、
図6におけるA2方向から見た平面図である。
図8は、
図6におけるA3方向から見た側面図である。
図9は、
図8におけるA4方向から見た側面図である。
図10は、
図8におけるA5方向から見た側面図である。
図11は、本発明の第1の実施形態の医療用電気刺激電極の弾性部材の長手方向に沿う模式的な断面図である。
図12は、
図11におけるA7−A7断面図である。は、
図13は、
図11におけるA8−A8断面図である。
なお、各図面は模式図のため、形状および寸法は誇張されている(以下の図面も同様)。
【0019】
図1に示す本実施形態の電気刺激電極1(医療用電気刺激電極)は、血管の内壁から神経を刺激するために、血管内に挿入して用いられる。電気刺激電極1は、電気刺激電極1に刺激パルスを印加する電気刺激装置70とともに用いられる。
電気刺激電極1と電気刺激装置70とは、電気刺激システム200(医療用電気刺激システム)を構成する。
【0020】
電気刺激電極1は、刺激電極部10、11と、リード部20と、電極支持体25と、操作シース50と、抜去シース60とを備える。
【0021】
刺激電極部10、11は、血管の内壁を通して電気刺激を与える。刺激電極部10、11のうち、一方はプラス電極として用いられ、他方はマイナス電極として用いられる。
リード部20は、線状に形成され、刺激電極部11、10に電気的に接続された後述の配線35(
図11参照)を挿通する。リード部20の第1端部には、後述する電極支持体25が設けられる。リード部20の第2端部には、電気刺激装置70が連結される。
電極支持体25は、線状の弾性部材26A、26B、26Cによって一定の軸線C周りに略回転対称となる籠状に形成される。弾性部材26Aは、刺激電極部10、11を備える。電極支持体25は、リード部20の第1端部に、後述する電極支持体固定部材22を介して固定される。
以下では、電気刺激電極1の各部材の間の電気刺激電極1の長手方向に沿う相対位置関係を説明する場合、電極支持体25寄りの位置を先端側、電気刺激装置70寄りの位置を基端側という場合がある。電極支持体25においては、リード部20に対する遠位側を先端側、リード部20に対する近位側を基端側という場合がある。
【0022】
操作シース50および抜去シース60は、いずれもリード部20を挿通させる管状部材である。
操作シース50は、抜去シース60よりも先端側に配置される。
抜去シース60は、リード部20の基端側に配置される。
【0023】
リード部20は、リード本体21、電極支持体固定部材22、およびコネクタ23を備える。
リード本体21は、ポリアミド樹脂等の生体適合性を有する材料で形成された管状部材である。例えば、リード本体21の外径は0.8mm以上2mm以下である。例えば、リード本体21の長さは500mm以上1000mm以下である。リード本体21の管路内には、配線35(
図11参照)が挿通される。
例えば、配線35は、耐屈曲性を有するニッケルコバルト合金からなる撚り線を、電気的絶縁材で被覆して形成することができる。
ニッケルコバルト合金の例としては、35NLT25%Ag材、35NLT28%Ag材、または35NLT41%Ag材を挙げることができる。
配線35の電気的絶縁材の例としては、厚さ20μmのETFE(四フッ化エチレン−エチレン共重合体樹脂)、厚さ20μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)などの例を挙げることができる。
図11には、刺激電極部10に接続される配線35を示すが、刺激電極部11にも同様な構成を有する他の配線35が接続されている。弾性部材26Aにおいて刺激電極部11よりも基端側では、後述する被覆34内に2本の配線35が並行して配置される。これらの配線35は互いに電気的に絶縁された状態である。
【0024】
リード本体21の管内には、配線35の他に、リード本体21の引張り強度を高めるために金属ワイヤ等の補強部材(テンションメンバ)を配置したり、挿通したりしてもよい。補強部材を配置、挿通する場合、リード本体21に引張り力が作用した際に、補強部材が引張り力の負荷を負担することができるため、配線35の断線等を防止することができる。
リード本体21の表面には、適宜のコーティングを施してもよい。例えば、リード本体21の表面に抗血栓コーティングを施してもよい。例えば、リード本体21の表面に摺動性を向上するコーティングを施してもよい。
【0025】
図2に示すように、リード本体21は、先端側から基端側に向かって、柔軟部21Aと、非柔軟部21Bとをこの順に備える。
柔軟部21Aは、リード本体21の先端部から一定の長さの範囲に形成される。柔軟部21Aは、第1の屈曲性を有する。
非柔軟部21Bは、リード本体21において柔軟部21Aを除く基端側の範囲に形成される。非柔軟部21Bは、第1の屈曲性よりも小さい(より曲がりにくい)第2の屈曲性を有する。
【0026】
リード本体21が全長にわたって硬い場合、留置後に体動など患者の動きによる外力が、血管内に留置した電極支持体25に伝わって、電極支持体25の位置移動が生じる可能性がある。電極支持体25の位置移動が生じると、神経を刺激する効果が低減、もしくは消失する可能性がある。
しかし、リード本体21の一部である柔軟部21Aが十分に軟らかい場合、柔軟部21Aを血管内でたるませて設置することができる。この結果、基端側に生じた外力を柔軟部21Aにおいて吸収することにより、電極支持体25の位置移動を防ぐことができる。
第1の屈曲性とは、血管内において、例えば、体動などによって基端側に発生する外力を吸収できる程度にたるむことができる屈曲性を意味する。
柔軟部21Aに第1の屈曲性を持たせるには、例えば、柔軟部21Aをショア硬度20D以上40D以下程度の材質で構成する。柔軟部21Aに第1の屈曲性を持たせるには、さらに、柔軟部21Aの長さを、体動などによる外力を吸収するのに十分な長さに設定する。
第1の屈曲性を得る長さは、電極支持体25の留置場所によって異なる。例えば、電極支持体25を内頚静脈から埋植して、上大静脈に留置する場合には、柔軟部21Aの長さを、50mm以上200mm以下程度にすればよい。同じく電極支持体25を、鎖骨下静脈から埋植する場合には、50mm以上250mm以下程度にすればよい。なお、外力を吸収するためには、柔軟部21Aは長い方がより好ましい。例えば、柔軟部21Aは、電極支持体25を内頚静脈、鎖骨下静脈のいずれから埋植する場合にも、100mm以上とする方がより良好に外力を吸収できる。
【0027】
非柔軟部21Bが有する第2の屈曲性は、非柔軟部21Bの基端部において非柔軟部21Bの軸線方向に加えた力を、非柔軟部21Bの先端部に伝達することができる程度の剛性を意味する。
【0028】
電極支持体固定部材22は、リード本体21の先端側である第1端部に設けられた管状部材である。
図3に示すように、電極支持体固定部材22の電極支持体固定部材22の中心には長手方向に延びる貫通孔22cが形成されている。貫通孔22cの先端側には、後述する弾性部材26A、26B、26Cの基端部が挿入されている。貫通孔22cにおける図示略の基端側には、弾性部材26Aから延びる配線35が挿通される。
電極支持体固定部材22の外周部には、円筒面状の外周面22bから、係合突起22aが突出している。
係合突起22aの形状は、後述する操作シース50の先端部と軸線C回りに係合可能な非円形の形状であれば、特に限定されない。本実施形態では、一例として、外周面22bの一部が径方向外側に張り出し、電極支持体固定部材22の長手方向に延ばされた形状を有する。本実施形態における係合突起22aは、外周面22bを周方向に4等分する4箇所に設けられている。
電極支持体固定部材22は、生体適合性に優れた金属、例えば、チタンなどによって形成できる。
電極支持体固定部材22の表面には、抗血栓コーティングを施してもよい。
【0029】
コネクタ23は、配線35と電気刺激装置70とを電気的に接続する。
コネクタ23としては、例えば公知のIS−1コネクタやその他の防水型コネクタなどを用いることができる。ただし、電気刺激電極1において、コネクタ23は必須ではなく、リード部20に挿通される配線35と電気刺激装置70とは、直接的に接続されてもよい。
【0030】
図4、5に示すように、電極支持体25は、線状の弾性部材26A、26B、26Cを備える。弾性部材26A、26B、26Cの形状は、互いに同一形状でなくてもよい。以下では、一例として、弾性部材26A、26B、26Cが、互いに同一形状に曲げられた場合の例で説明する。
弾性部材26A、26B、26Cは、電極支持体固定部材22の中心軸線を先端側に延長した軸線Cを中心として周方向にずらして組み合わされる。本実施形態では、電極支持体25は、軸線C回りに回転対称性を有する籠状(バスケット状)に形成される。
ここで「籠状(バスケット状)」とは、線状体が張る立体形状であって、先端側に開口し、外形が基端側に向かって縮径する形状を意味する。先端側は略円筒状であってもよい。基端側は、より基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐状または擬似円錐状であってもよい。擬似円錐状とは、側面が真の円錐に比べて膨らみを有するかまたは細っている形状である。
本実施形態の電極支持体25の外形は、先端側で略円筒状であり、基端側では、真の円錐よりも膨らみを持った擬似円錐状である。すなわち、本実施形態の電極支持体25の外形は、基端側に頂部を有する砲弾型である。
【0031】
弾性部材26A、26B、26Cには、それぞれの外面から突出する凸部30が設けられている。凸部30の個数は特に限定されないが、本実施形態では、弾性部材26A、26B、26Cにそれぞれ2個ずつ凸部30が設けられている。
弾性部材26Aは、刺激電極部10、11を備える。
弾性部材26B、26Cは、刺激電極部10、11を有しない点を除いて、弾性部材26Aと同様の外形を有する。
【0032】
以下では、特に断らない限り、弾性部材26Aの形状について説明する。弾性部材26Aの各部は、数字、または数字および英小文字からなる符号の末尾に英大文字「A」を付す。弾性部材26B、26Cにおいて、弾性部材26Aと同形状の部位は、数字、または英小文字からなる弾性部材26Aと共通の符号の末尾に英大文字「B」、「C」をそれぞれ付して説明を省略する。
例えば、弾性部材26B(26C)における屈曲部27fB(27fC)は、弾性部材26Aにおける屈曲部27fAと対応する同一形状の部位を指す。
【0033】
弾性部材26Aは、弾性を有する1本の線状の部材を折り曲げることにより、立体的なループ状に形成されている。以下では、弾性部材26A単体の自然状態の形状について説明する。ここで、弾性部材26A単体の自然状態とは、弾性部材26Aに外力が作用しないか、作用しても変形が無視できる状態である。
図6〜8に示すように、弾性部材26Aは、一端部から他端部に向かって、連結端部26aA、基端側線状部26bA、屈曲部27fA、先端側線状部26cA、屈曲部27hA、基端側線状部26dA、および連結端部26eAを、この順に備える。
【0034】
連結端部26aA、26eAは、弾性部材26Aを電極支持体固定部材22に固定し、電極支持体固定部材22を介してリード本体21と係合するための部位である。連結端部26aA、26eAは、それぞれ第1軸線O1に沿って直線状に延ばされている。連結端部26aA、26eAは、第1軸線O1を挟んで平行かつ互いに近接して配置されている。
連結端部26aA、26eAは、軸線Cに対して第1軸線O1が平行となるように配置される。
連結端部26aA、26eAと電極支持体固定部材22との固定方法は特に限定されず、電極支持体固定部材22の材質に応じて、例えば、接着、溶接、カシメなどの固定方法を適宜選択することができる。
カシメによって、連結端部26aA、26eAを電極支持体固定部材22と固定する場合、カシメ時に、カシメ用の金型によって電極支持体固定部材22の係合突起22a、外周面22bの形状を同時に形成してもよい。
【0035】
基端側線状部26bA、26dAは、連結端部26aA、26eAの先端から互いに離間して延ばされた、全体としてU字状の部位である。基端側線状部26bA、26dAは、第1軸線O1を含み、連結端部26aA、26eAの中心軸線を通る平面S2上に配置されている。基端側線状部26bA、26dAは、平面S2において、第1軸線O1に関して互いに線対称である。
すなわち、
図7に示すように、基端側線状部26bA、26dAは、それぞれ、連結端部26aA、26eAの先端から、互いに離間するように、先端側(
図7における図示左側)に向かって斜め方向に延ばされている。基端側線状部26bA、26dAは、先端側に向かうにつれてそれぞれ第1軸線O1から漸次離間している。基端側線状部26bA、26dAは、それぞれの先端部では、第1軸線O1と略平行(平行の場合を含む)になっている。
【0036】
基端側線状部26bAは、第1軸線O1から離間する方向に凸となる曲線部、折れ線部、またはこれら曲線部と折れ線部との組み合わせによって構成することができる。
本実施形態では、基端側線状部26bAの形状は、一例として、連結端部26aAに近い基端側領域b1では、先端側線状部26cAに近い先端側領域b2に比べて、第1軸線O1に対する傾斜の平均変化率がより大きくなる曲線形状を採用している。
基端側線状部26dAは、第1軸線O1に関して、基端側線状部26bAと線対称な形状である。
本実施形態では、基端側線状部26bA、26dAは、先端側に向かうにつれて互いに離間するように傾斜する形状を採用している。このため、基端側線状部26bA、26dAの先端側端部は、自然状態において、弾性部材26Aの第1軸線O1と直交する方向の最大幅となる部位になっている。
【0037】
屈曲部27hAは、
図6に示すように、基端側線状部26dAの先端部と、後述する先端側線状部26cAの基端部との間にU字状に形成された部位である。屈曲部27hAは、平面S2に関して先端側線状部26cAと反対側に向かって突出している。
本明細書では、「U字状」は、平行な2つの直線部が円弧状の湾曲部で接続された形状には限定されない。例えば、2つの直線部は非平行に並行していてもよく、湾曲部は円弧以外の曲線で湾曲していてもよい。さらに、湾曲部は、直線または曲線からなる折れ線で構成されていてもよい。例えば、
図9に示す本実施形態のように、2つの直線部の端部で屈曲された1つの直線部からなる形状(コ字状)であってもよい。
本実施形態の屈曲部27hAは、第1部分h1、第2部分h2、および第3部分h3を備える。
【0038】
第1部分h1は、基端側線状部26dAの先端部にて屈曲された線状部である。第1部分h1は直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。本実施形態では、第1部分h1は、一例として、直線状である。
第1部分h1の屈曲角度φ1は、90°±30°の範囲(60°以上120°以下の範囲)としてもよい。第1部分h1の長さは、刺激電極部10の長手方向よりも長い。第1部分h1の長さの例としては、例えば、4.5mm以上7.0mm以下でもよい。
ここで、屈曲角度φ1は、第1部分h1と基端側線状部26dAの先端部とのなす角のうち、小さい方の角度(曲げ内で測った角度)である。ただし、
図9、10では、見易さのため、寸法引き出し線は、屈曲角度φ1の対頂角の位置に記載している。
【0039】
第2部分h2は、第1部分h1の突出方向における先端において、屈曲された線状部である。第2部分h2は、平面S2の法線方向から見て基端側線状部26dAの延長線上となる位置(
図7参照)で、平面S2に平行に延ばされている。第2部分h2は直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。本実施形態では、第2部分h2は、一例として、直線状である。
第2部分h2の長さは、例えば、3.0mm以上7.0mm以下としてもよい。
第2部分h2の長手方向の中間部には、後述する凸部30が設けられている。
【0040】
第3部分h3は、第2部分h2の延出方向の端部において、屈曲されて、先端側線状部26cAの基端部に接続された線状部である。第3部分h3は直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。本実施形態では、第3部分h3は、一例として、直線状である。
第3部分h3の屈曲角度φ2は、90°±30°の範囲(60°以上120°以下の範囲)としてもよい。
ここで、屈曲角度φ2は、第3部分h3と第2部分h2とのなす角のうち、小さい方の角度である。ただし、
図9、10では、見易さのため、寸法引き出し線は、屈曲角度φ2の同位角の位置に記載している。
第3部分h3の先端部は、本実施形態では、平面S2上に位置する。
【0041】
このような構成の屈曲部27hAにおいて、第1部分h1上には刺激電極部11が配置される。第3部分h3上には刺激電極部10が配置される。すなわち、刺激電極部10、11は屈曲部27hAに形成される。
刺激電極部11は、その長手方向が、第1部分h1の中心軸線方向に沿うように、第1部分h1の中間部に配置される。刺激電極部10は、その長手方向が、第3部分h3の中心軸線方向に沿うように、第3部分h3の中間部に配置される。
刺激電極部10、11の詳細構成については、弾性部材26Aについて説明した後で説明する。
【0042】
次に、弾性部材26Aの屈曲部27fAについて説明する。
図10に示すように、屈曲部27fAは、基端側線状部26bAの先端部と、後述する先端側線状部26cAの基端部との間にU字状に形成された部位である。屈曲部27fAは、屈曲部27hAと同様に、平面S2に関して先端側線状部26cAと反対側に突出する。
本実施形態の屈曲部27fAは、第1部分f1、第2部分f2、および第3部分f3を備える。
屈曲部27fAの外形は、第1軸線O1を含み平面S2と直交する平面S1(
図6参照)を挟んで対向する位置に設けられた屈曲部27hAと異なっていてもよい。しかし、本実施形態では、屈曲部27fAの外形は、平面S1に関して、屈曲部27hAと面対称である。
すなわち、第1部分f1、第2部分f2、および第3部分f3は、それぞれ屈曲部27hAにおける第1部分h1、第2部分h2、および第3部分h3と同じ外形状を有する。
第2部分f2の長手方向の中間部には、第2部分h2と同様に、後述する凸部30が設けられている。
ただし、屈曲部27fAは、屈曲部27hAとは異なり、刺激電極部10、11は設けられていない。
【0043】
先端側線状部26cAは、
図6に示すように、屈曲部27fA、27hAにおける第3部分f3、h3の先端部から、さらに先端側に向かうにつれて、平面S2の側方に向かって、張り出す凸状に湾曲した部位である。
本実施形態では、先端側線状部26cAは、一例として、平面S2内の第3軸線O3を含み平面S2に対して角度θをなして交差する平面S3上に配置される。かつ、先端側線状部26cAは、平面S1に関して面対称なC字状に形成されている。
ここで、第3軸線O3は、平面S2内にあって、第3部分f3、h3の先端部を通り第1軸線O1に直交する軸線である。
このため、平面S1、S3の交線からなる第2軸線O2が、先端側線状部26cAと交差する位置に、先端側線状部26cAの頂部26gAが形成されている。
平面S3の角度θは、5°以上90°以下としてもよい。
【0044】
先端側線状部26cAは、第3軸線O3から離間する方向に凸となる曲線部、折れ線部、またはこれら曲線部と折れ線部との組み合わせによって構成することができる。
本実施形態では、
図7に示すように、先端側線状部26cAの形状は、一例として、屈曲部27fA(27hA)に近い基端側領域c1(c3)では、屈曲部27fA(27hA)の第3部分f3(h3)の先端側端部から平面S1に向かって傾斜する曲線状または直線状に延ばされている。
また、先端側線状部26cAは、基端側領域c1、c3の間の先端側領域c2では、頂部26gAを頂点とする山形の形状を有する。先端側領域c2における山形は、例えば、円弧、楕円弧などの曲線からなる山形や、複数の折れ線で形成された山形でもよい。本実施形態では、一例として、頂部26gAの曲率が最大となり頂部26gAの近傍に屈曲状の部位が形成された曲線形状を採用している。
【0045】
このような構成により、弾性部材26Aは、刺激電極部10、11以外は、平面S1に関して面対称な形状である。
ここで、弾性部材26Aの内部構造と、刺激電極部10、11および凸部30の構成について説明する。
【0046】
図11〜13に示すように、弾性部材26Aは、ワイヤ部33の外周面が、電気的絶縁性を有する被覆34(被覆材)で覆われた線状体で構成される。
ワイヤ部33の長手方向に直交する断面形状は、特に限定されない。例えば、ワイヤ部33の長手方向に直交する断面形状は、円形、楕円形、正方形、長方形などを採用することができる。ワイヤ部33の外径または辺寸法は、0.2mm以上0.5mm以下程度としてもよい。
本実施形態では、ワイヤ部33の長手方向に直交する断面は、例えば0.3mm角(辺寸法が0.3mm)の正方形に形成されている。ワイヤ部33の材質としては、形状記憶合金、超弾性ワイヤ等を用いることができる。
ワイヤ部33の外周面には、樹脂被膜を設けてもよい。樹脂被膜の材質としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂などを用いることができる。樹脂被膜の厚さは、例えば、50μm以上500μm以下であってもよい。
【0047】
被覆34の長手方向に直交する断面は、円形である。被覆34の外径は、例えば0.8mmである。被覆34に好適な材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などの樹脂を採用することができる。
【0048】
刺激電極部10は、白金イリジウム合金等の生体適合性を有する金属で円筒状に形成されている。刺激電極部10の寸法は、例えば外径が0.8mm、長さが4mmである。刺激電極部10は、外周面の一部が被覆34から外部に露出している。刺激電極部10の露出面積は、例えば、1mm
2以上5mm
2以下であってもよい。
刺激電極部10の露出方向は、弾性部材26Aを電極支持体25に組み立てた際に、電極支持体25の径方向外側に向く方向である。電極支持体25の径方向外側に向く方向とは、軸線Cに直交する直線に沿って、軸線Cから遠ざかる方向である。
刺激電極部10とワイヤ部33との間は、被覆34により電気的に絶縁されている。被覆34とワイヤ部33との間の電気的な絶縁をより確実にするために、刺激電極部10とワイヤ部33との間に樹脂製の絶縁部材を設けてもよい。
刺激電極部10の内周面には、配線35が溶接等により電気的に接続される。配線35は、被覆34内に配置されてワイヤ部33に沿って延び、連結端部26eAの基端部から、リード部20側に延出される。
特に図示しないが、刺激電極部11は、第1部分h1に形成されている点を除いて、刺激電極部10と同一の構成である。
刺激電極部10、11は、少なくとも3mmから20mm程度の間をあけて配置される。
【0049】
凸部30は、第2部分h2、f2にそれぞれ一つずつ設けられている。第2部分h2、f2における配置位置は、特に限定されないが、本実施形態では、一例として、第2部分h2、f2の中央に設けられている。
各凸部30の形状はすべて同一である。
図11、13を参照して、凸部30の形状について説明する。
図11に示すように、凸部30は、被覆34の外周面で構成される弾性部材26Aの外面34a上に、基端側の第1端部E1と、先端側の第2端部E2とを有する。凸部30の表面は、傾斜面30b(外周面)と、端面30aとを含む。
【0050】
傾斜面30bは、第1端部E1(リード部に対する近位端)から先端側に向かって、外面34aの外径から漸次外径が増大する円錐面状の湾曲面(テーパ面)である。傾斜面30bと外面34aとのなす角は、鈍角θ1である。
ここで、傾斜面30bと外面34aとのなす角の大きさは、弾性部材26Aの中心軸線を含む断面において、それぞれの表面の間の角度である。
端面30aは、第2端部E2において、外面34aと角度θ2で交差する。角度θ2は、鋭角、直角、および鈍角のいずれでもよい。端面30aの形状は、外面34aから弾性部材26Aの径方向外方に延びる円錐面状の湾曲面(θ2が鋭角または鈍角の場合)または平面(θ2が直角の場合)である。
ここで、端面30aと外面34aとのなす角の大きさは、弾性部材26Aの中心軸線を含む断面において、それぞれの表面の間の角度である。
【0051】
傾斜面30bと端面30aとは、互いに交差し、エッジ部E3(リード部に対する遠位端)を形成する。エッジ部E3は、θ2が直角の場合には、弾性部材26Aの中心軸線に沿う方向において、第2端部E2と同位置に形成される。エッジ部E3は、θ2が鋭角の場合には、弾性部材26Aの中心軸線に沿う方向において第2端部E2よりも先端側に形成される。エッジ部E3は、θ2が鈍角の場合には、弾性部材26Aの中心軸線に沿う方向において第2端部E2と第1端部E1との間に形成される。
本実施形態では、エッジ部E3は、凸部30の最外周部である。
外面34aからエッジ部E3までの高さは、hである。エッジ部E3の高さhは、凸部30の突出高さを表す。
【0052】
凸部30の具体的な寸法は、弾性部材26Aが電極支持体25として組み立てられた際に、電極支持体25が血管内で先端側に移動しにくくなる適宜の寸法が可能である。
例えば、凸部30の突出高さhは、0.05mm以上0.5mm以下としてもよい。
凸部30の軸方向の長さd(第1端部E1からエッジ部E3までの弾性部材26Aの中心軸線に沿う長さ)は、例えば、0.5mm以上2mm以下としてもよい。
例えば、θ2は、30°以上150°以下としてもよい。例えば、θ1は、120°以上180°未満としてもよい。
以下では、一例として、θ2が90°の場合の例で説明する。
【0053】
凸部30は、被覆34と同材料で形成してもよいし、異なる材料で形成してもよい。ここで、同材料とは、樹脂の主成分に基づく分類における樹脂種類が同一であることを意味する。すなわち、樹脂の主成分に基づく分類における樹脂種類が同一であって、主成分樹脂以外の添加剤が異なる程度の差異がある場合も同材料である。例えば、樹脂の主成分に基づく分類における樹脂種類が同一であって、メーカーあるいは製品グレードが相違する場合も同材料である。
凸部30の形成方法は特に限定されない。例えば、凸部30は、予め形成された被覆34上に溶着、接着などによって接合されてもよい。例えば、凸部30を被覆34と同材料で形成する場合、凸部30は、被覆34と一体成形で形成されてもよい。
例えば、凸部30は、被覆34によってワイヤ部33を被覆する際に、凸部30の形状を形成する成形型を用いてモールド成形されてもよい。
例えば、凸部30は、予めワイヤ部33を被覆34で被覆してから、凸部30を形成する材料を外面34aに配置し、外面34a上で成形されてもよい。成形方法としては、凸部30となる樹脂材料を熱溶融してから成形型によって成形してもよい。他の成形方法としては、熱硬化性樹脂や、紫外線硬化樹脂など塗布し、成形型に合わせて硬化させる成形を挙げることができる。
例えば、凸部30は、被覆34自体あるいは被覆34上に付着させた樹脂材料をレーザー加工などによる除去加工することによって、形成されてもよい。
【0054】
上記のように構成された弾性部材26A、26B、26Cは、ワイヤ部33等によって弾性を有する。
弾性部材26A、26B、26Cは、電極支持体25として組み立てられる。
図5に示すように、電極支持体25において、弾性部材26A、26B、26Cは、各第1軸線O1が軸線Cに重なる。かつ弾性部材26A、26B、26Cの頂部26gA、26gB、26gCは、軸線Cに関する周方向において、等間隔(120°間隔)に離間するようにして配置される。
各弾性部材26A、26B、26Cは、それぞれの先端側線状部26cA、26cB、26cCの張り出し方向が軸線Cに関して径方向外側に向くように配置される。
図5に示すように、電極支持体25の先端側から見たときに、弾性部材26A、26B、26Cは、反時計回りに弾性部材26A、26B、26Cの順で配置されている。
【0055】
図4、5に示すように、基端側線状部26bA、26dBと、基端側線状部26bB、26dCと、基端側線状部26bC、26dAとは、それぞれ周方向において隙間をあけて対向する位置に配置される。この配置によって、屈曲部27fA、27hBと、屈曲部27fB、27hCと、屈曲部27fC、27hAとは、それぞれのU字状の開口が対向する。
屈曲部27fA、27hBは、張出し部40を構成する。同様に、屈曲部27fB、27hCは、張出し部41を構成し、屈曲部27fC、27hAは、張出し部42を構成する。
張出し部40、41、42は、血管内に電極支持体25が配置されたときに、血管内で突っ張って電極支持体25の位置ズレを抑える部分である。
【0056】
電極支持体25において、隣り合う弾性部材26A、26B、26Cは互いに交差している。
弾性部材26A、26Bと、弾性部材26B、26Cと、弾性部材26C、26Aとがそれぞれ交差した部分は、弾性部材固定部38によって固定される。
弾性部材固定部38は、例えば、各弾性部材26A、26B、26Cの被覆34を溶融接合により互いに接合して形成することができる。電極支持体25には、3つの弾性部材固定部38が設けられる。
【0057】
張出し部40、41、42は、自然状態の電極支持体25において、外径が最大となる外周部を構成する。ここで、電極支持体25の自然状態とは、組み立てられた状態であって、外力が作用しないか作用しても変形が無視できる状態である。電極支持体25は軽量であるため、自重による変形は以下の説明の範囲では無視することができる。
電極支持体25においては、弾性部材26A、26B、26Cが、互いに交差し、かつ弾性部材固定部38によって互いに固定される。このため、電極支持体25の自然状態においては、弾性部材26A、26B、26Cは、弾性部材26A、26B、26Cの各自然状態からある程度変形していてもよい。
【0058】
電極支持体25の自然状態における外径は、電極支持体25を留置する上大静脈等の血管の内径よりも大きい。例えば、血管が上大静脈の場合、電極支持体25の自然状態における外径は、20mm以上40mm以下とすることができる。電極支持体25の軸線C方向の長さは、例えば、35mmである。
電極支持体25の弾性部材26A、26B、26Cの基端部は、リード部20の電極支持体固定部材22に溶接接合、接着接合、またはカシメ接合によって接続される。
【0059】
このような構成の電極支持体25は、軸線C回りに略回転対称となる籠状である。
籠形状における開口は、弾性部材固定部38の間に延びる先端側線状部26cA、26cB、26cCによるループによって形成される。
電極支持体25において、先端側線状部26cA、26cB、26cCおよび張出し部40、41、42が張る立体形状は、略円筒状である。
電極支持体25において、基端側線状部26bA、26dB、26bB、26dC、26bC、26dAが張る立体形状は、先端側から基端側に向かって縮径する擬似円錐状である。
【0060】
このように構成された電極支持体25は、例えば、張出し部40、41、42などを通して、径方向内側に向かう外力が作用すると、電極支持体25は、径方向において、自然状態の外径よりも縮径する。このとき、電極支持体25の軸方向の長さは、軸線Cに沿って延びる。周方向に隣り合う弾性部材26A、26B、26Cは、それぞれ周方向の間隔が縮まる。
【0061】
次に、操作シース50、抜去シース60、および電気刺激装置70について説明する。
図14は、本発明の第1の実施形態の医療用電気刺激電極のリード部が操作シースに挿入された様子を示す模式的な断面図である。
図15は、本発明の第1の実施形態の医療用電気刺激電極の抜去シース内に電極支持体が挿入された状態を示す断面図である。
図16は、本発明の第1の実施形態の医療用電気刺激電極のリード部が抜去シースに挿入された様子を示す模式的な断面図である。
図17は、本発明の第1の実施形態の医療用電気刺激電極とともに用いられる電気刺激装置が発生する刺激パルスの例を示す模式図である。
【0062】
図1に示す操作シース50は、電極支持体25を血管内に配置する際、電極支持体25を血管内で進退および回転させる操作が可能である。
操作シース50は、先端側から、係合部53、シース本体51、およびハブ52を備える。
【0063】
図3に示すように、係合部53は、操作シース50の先端部において、リード部20の電極支持体固定部材22を周方向に係合する部位である。
係合部53の内周面は、電極支持体固定部材22の外周部の凹凸形状と嵌合する凹凸形状が形成される。本実施形態では、係合部53の内周部には、電極支持体固定部材22の外周面22bと、軸線Cに沿う方向に摺動可能に外嵌する円筒面状の内周面53bと、電極支持体固定部材22の係合突起22aと嵌合する係合溝53aとが形成される。
係合溝53aは、係合突起22aが電極支持体固定部材22の軸線方向(軸線Cに沿う方向)に延びていることに対応して、操作シース50の軸線方向(長手方向)に沿って延ばされる。このため、電極支持体固定部材22は、係合部53に挿入されると、操作シース50に対して、軸線方向に移動可能、かつ周方向に移動不能に係合される。電極支持体固定部材22と係合部53とが係合すると、操作シース50をその軸線回りに回転させることによって、電極支持体25に回転トルクを伝達することができる。
【0064】
係合部53は、後述するシース本体51と一体成形したり、シース本体51を変形させたりして形成されてもよい。ただし、係合部53は、シース本体51と固定されていれば、シース本体51とは別部品で構成されてもよい。
【0065】
図1に示すように、シース本体51は、内部にリード部20を挿通する筒状部材である。シース本体51は、リード部20に対して相対的に摺動可能である。
シース本体51の先端部には、係合部53がシース本体51と同軸に配置されている。
シース本体51の基端部には、後述するハブ52が固定されている。
シース本体51は、生体適合性を有する材料、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂などを用いて形成される。
シース本体51は、例えば、基端部を手に持って回転させるなどして、与えられる回転トルクを係合部53に伝達できる程度のねじり剛性を備える。
【0066】
シース本体51の樹脂内部には、例えば、ステンレス、タングステン等を用いた金属ブレードを封入してもよい。この場合、シース本体51の剛性を向上したり、耐キンク性を向上したりすることができる。
シース本体51の表面には、必要に応じて、適宜の被膜を設けてもよい。被膜の例としては、例えば、抗血栓性、摺動性を向上する被膜を挙げることができる。
シース本体51の外径は、例えば、2.0mm以上2.9mm以下としてもよい。シース本体51の内径は、例えば、1.0mm以上2.5mm以下としてもよい。
シース本体51の長さは、係合部53を、電極支持体25の留置位置の近傍に配置できる程度の長さである。例えば、シース本体51の長さは、300mm以上400mm以下としてもよい。
シース本体51がこのような形状および長さの場合、電極支持体固定部材22に対する回転操作を行うためのねじり剛性を得るには、例えば、シース本体51に用いる材料の硬度が、ショア硬度55D以上70D以下程度であればよい。シース本体51の内部に金属ブレードを封入する場合には、さらにショア硬度が低い材料も使用可能である。
【0067】
図14に示すように、ハブ52は、略円筒状の部材である。ハブ52は、軸線方向に延びてシース本体51の内部空間と連通する貫通孔52aと、貫通孔52aから分岐する側孔54とが設けられている。
貫通孔52aには、Oリング等のシール部材55が配置される。シール部材55は、操作シース50に挿通されたリード本体21の周囲を水密に封止して血液等の漏れを防止する。
側孔54には、チューブ56が接続される。チューブ56の他端(
図1参照)には、ルアーロックコネクタなどのコネクタ57が設けられる。このコネクタ57を介して、例えば、ヘパリン加生理食塩水等の薬液の供給源に接続すれば、チューブ56、側孔54を通して、ヘパリン加生理食塩水等の薬液を操作シース50内に供給することができる。なお、チューブ56は必須ではなく、投薬用チューブ等が接続可能なコネクタ等を側孔54に直接設けてもよい。
【0068】
ハブ52は、患者の体外に配置される。このため、ハブ52の材料としては、ポリカーボネート、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)樹脂などの樹脂を用いることができる。
【0069】
操作シース50は、後述する電極支持体25の留置が終了したら、血管内から除去する。この場合、ハサミ等の術具を用いて除去してもよいが、操作シース50をピールアウェイ可能な構成とすることによって手で引き裂いて除去できるようにしてもよい。
ピールアウェイ可能な構成の例としては、例えば、樹脂の配向方向を操作シース50の軸線方向に沿わせるなどして、軸線方向に沿って引き裂けるようにした構成を挙げることができる。ピールアウェイ可能な構成の例としては、操作シース50の外周部に、操作シース50の軸線方向に沿って、引き裂きのカットラインとなる溝などの低強度部を設けた構成も挙げることができる。
【0070】
図1に示す抜去シース60は、電極支持体25およびリード部20を抜去する際、電極支持体25を縮径状態で収容し、患者の体外に搬出する部材である。抜去シース60によれば、電極支持体25およびリード部20を抜去する際、電極支持体25が拡径状態で血管の開口を通過することがないため、電極支持体25が血管壁を傷つけることを防止できる。
抜去シース60は、電極支持体25およびリード部20の留置期間中、電極支持体25およびリード部20とともに、血管内に留置される。
【0071】
抜去シース60は、先端側から、シース本体61と、ハブ62とを備える。
シース本体61は、内部にリード部20と、縮径した電極支持体25とを挿通する筒状部材である。シース本体61は、リード部20および縮径した電極支持体25に対して相対的に摺動可能である。
図15に、電極支持体25がシース本体61の内部に収容された様子を示す。シース本体61の内部には、6個の凸部30を有する6本分の弾性部材26A、26B、26Cが密集する。したがって、シース本体61の内径は、電極支持体25における最小の縮径状態の外径よりも大きい寸法にする。
【0072】
シース本体61の外径は、例えば、2.5mm以上2.9mm以下としてもよい。シース本体61の内径は、例えば、2.0mm以上2.5mm以下としてもよい。シース本体61の長さは、縮径状態の電極支持体25全体を収容できる長さであって、かつ留置時に基端側の一部が患者の体外に出る長さであればよい。シース本体61の長さは、例えば、50mm以上100mm以下としてもよい。
シース本体61の硬度は、内部に電極支持体25を収容する際に、電極支持体25から受ける軸方向および径方向の外力に耐えることができればよい。例えば、シース本体61の硬度は、ショア硬度55D以上70D以下としてもよい。
後述するように抜去シース60は使用時に患者の頚部に穿刺される。シース本体61は、穿刺部位付近での折れを防止するために、穿刺部位の近傍となる基端側の部位を厚肉にして、折れに対する耐性を向上させてもよい。
シース本体51の基端部には、後述するハブ62が固定されている。
【0073】
図16に示すように、ハブ62は、略円筒状の部材である。ハブ62は、軸線方向に延びてシース本体61の内部空間と連通する貫通孔63と、貫通孔63から分岐する側孔64とが設けられている。
貫通孔63には、Oリング等のシール部材65が配置される。シール部材65は、抜去シース60に挿通されたリード本体21の周囲を水密に封止して血液等の漏れを防止する。
側孔64には、チューブ66が接続される。図示略のチューブ66の他端(図示略)には、ルアーロックコネクタなどのコネクタ69(
図1参照)が設けられる。このコネクタ69を介して、例えば、ヘパリン加生理食塩水等の薬液の供給源に接続すれば、チューブ66、側孔64を通して、ヘパリン加生理食塩水等の薬液を抜去シース60内に供給することができる。なお、チューブ66は必須ではなく、投薬用チューブ等が接続可能なコネクタ等を側孔64に直接設けてもよい。
【0074】
さらに、ハブ62は、糸掛け穴67aを有する板状の羽部67と、基端側に設けられた締め込みノブ68とを備えている。
羽部67は、患者の皮膚に通した糸を糸掛け穴67aに通すことによって抜去シース60を患者の体表面に固定する用途に用いることができる。皮膚に通した糸は、必要に応じてハブ62に設けた糸掛け溝62aに巻きつけてもよい。
板状の羽部67をテープ等で患者の皮膚に固定することによって、電気刺激電極1による治療期間に抜去シース60が軸線まわりに回転することが防止される。
締め込みノブ68は、ハブ62にネジ嵌合されている。締め込みノブ68をハブ62に螺入すると、シール部材65が圧縮される。シール部材65の圧縮の度合いを調節することで、貫通孔63に挿通されたリード本体21と抜去シース60との摺動抵抗を調節することができる。このため、締め込みノブ68による締め込みを緩めれば、リード本体21と抜去シース60とが相対移動可能な摺動可能状態を形成することができる。締め込みノブ68による締め込みを強めれば、リード本体21と抜去シース60とが相対移動不能な固定状態を形成することができる。
【0075】
シース本体61およびハブ62の材料は、それぞれ操作シース50のシース本体51およびハブ52と同様の材料で形成することができる。シース本体61の内部に金属ブレードが封入されてもよいこと、およびシース本体61の表面に適宜の被膜を形成してもよいことも、シース本体51と同様である。
ただし、抜去シース60は、電極支持体25およびリード部20とともに血管から抜去するため、ピールアウェイ可能な構成を採用する必要はない。
【0076】
電気刺激装置70は、
図17に示すように、定電流方式または定電圧方式のバイフェージック波形である刺激パルスを発生する。
例えば、電気刺激装置70は、周波数10Hz以上20Hz以下(周期tは、0.05sec以上0.1sec以下)、パルス幅50μsec以上400μsec以下のプラス数ボルトからマイナス数ボルトの刺激パルスを発生する。
刺激パルスは、リード部20内の配線35を通して、刺激電極部10、11に伝達される。
電気刺激装置70は、このような刺激パルス群を、印加時間Ton、印加周期Tで繰り返し印加することができる。例えば、印加時間Tonは、3sec以上20sec以下、印加周期Tは、60secに設定してもよい。刺激パルスを集中的に印加したい場合には、印加時間Tonと印加周期Tとを同一として、連続的な印加を行ってもよい。
【0077】
次に、電気刺激電極1の作用について、電気刺激電極1の留置動作および抜去動作とともに説明する。
図18は、本発明の第1の実施形態の医療用電気刺激電極の電極支持体を上大静脈内に挿入した状態を示す模式図である。
図19は、本発明の第1の実施形態の医療用電気刺激電極の電極支持体を上大静脈内に挿入した状態を示す模式的な断面図である。
図20は、
図19におけるA9方向から見た側面図である。
図21は、図
19におけるA10部の部分拡大図である。
図22は、本発明の第1の実施形態の医療用電気刺激電極のリード本体におけるたるみの例を示す模式図である。
図23は、本発明の第1の実施形態の医療用電気刺激電極のリード本体におけるたるみの例を示す模式図である。
【0078】
まず、患者の体外で、リード部20に対して操作シース50を先端側に移動させて、電極支持体固定部材22に操作シース50の係合部53を係合させる。心拍数を計測するための心電計を患者に取付ける。
図18に示すように、患者Pの頚部P1の近傍を小切開して開口P2を形成する。この開口P2に、公知のイントロデューサ(図示略)を取付ける。イントロデューサは、その先端部が電極支持体25の留置位置である上大静脈P5(血管)に達するように取り付ける。
イントロデューサは、操作シース50と同様に引き裂き可能である。
【0079】
イントロデューサを通して右内頚静脈P3(血管)内に電極支持体25および操作シース50を挿入する。このとき、電極支持体25は、イントロデューサに挿入可能な外径まで弾性的に変形(縮径)させてから挿入する。
電極支持体25および操作シース50は、イントロデューサの内周面と摺動して挿入される。
挿入時には、X線透視下で電気刺激電極1の刺激電極部10、11、および電極支持体25のワイヤ部33等の位置を確認する。
図18は、電極支持体25の留置後の様子を示すため、操作シース50はすでに除去された状態が描かれている。
【0080】
電極支持体25がイントロデューサの先端部から押し出されると、電極支持体25および操作シース50が上大静脈P5内に導入される。このとき、電極支持体25は動かさず、イントロデューサを後退させることで、相対的に電極支持体25および操作シース50をイントロデューサ先端部から突出させてもよい。
縮径されていた電極支持体25は、弾性復元力によって拡径する。電極支持体25の自然状態の外径は、上大静脈P5の内径よりも大きいため、電極支持体25は上大静脈P5の内壁を押圧する。
刺激電極部10、11は、電極支持体25の径方向外側に露出しているため、上大静脈P5の内壁と当接する。
このようにして、電極支持体25が上大静脈P5に概略配置される。
【0081】
本実施形態では、電極支持体25を右内頚静脈P3から上大静脈内に導入するがこれは一例である。電極支持体25は、右内頚静脈P3以外にも、右外頚静脈、左外頚静脈、左内頚静脈、右鎖骨下静脈、左鎖骨下静脈などから上大静脈内に導入してもよい。
【0082】
電極支持体25の挿入時には、操作シース50および抜去シース60のコネクタ57、69にシリンジを接続する。シリンジ内にヘパリン加生理食塩水等の抗凝固剤を収容し、シリンジに対してピストンを押込む。抗凝固剤は、コネクタ57、69、チューブ56、66、ハブ52、62、およびシース本体51、61内に充填される。
【0083】
上大静脈P5に隣接して、刺激対象である迷走神経P6(神経)が並走している。
術者は、電極支持体25の刺激電極部10、11が迷走神経P6を刺激できるように、電極支持体25の位置合わせを行う。
術者は、電気刺激装置70を操作し、刺激パルスを刺激電極部10、11に印加する。刺激パルスは血管の内壁に伝達される。
この状態で、術者が操作シース50およびリード部20の基端部を把持して、前進または後退させると、先端側の電極支持体25が、上大静脈P5の軸線方向に沿って移動する。
ここで、前進は、操作シース50を先端側(遠位端側)に向かって押し出す移動、後退は、リード部20を基端側(近位端側)に戻す移動をいう。
【0084】
術者が、操作シース50およびリード部20の基端部を把持して、操作シース50を軸線回りに回転させると、操作シース50の先端部の係合部53が同方向に回転する。この結果、係合部53に係合された電極支持体固定部材22も同方向に回転し、リード部20および電極支持体25も同方向に回転する。
このように、術者が、操作シース50およびリード部20の基端部を把持して、前進、後退、および回転を行うことによって、上大静脈P5における電極支持体25の軸線方向および周方向の位置を調整することができる。
この位置調整は、患者Pに取り付けた心電計などにより心拍数を計測しながら行う。刺激電極部10、11が迷走神経P6に近づいて、対向するように配置されると、刺激電極部10、11から迷走神経P6に印加される電気刺激が大きくなったときに、患者Pの心拍数が最も低下する。術者は、心拍数が最も低下するように、電極支持体25の位置を調整する。
【0085】
図19、20に、上大静脈P5内の電極支持体25の様子を示す。
電極支持体25の自然状態の外径は、上大静脈P5の内径よりも大きいため、電極支持体25は自然状態よりも縮径し、外径が大きい外周部が上大静脈P5の内壁Vと当接する。本実施形態では、少なくとも、張出し部40、41、42およびこの近傍が内壁Vと当接する。
張出し部40、41、42は、縮径量に応じた弾性復元力で、内壁Vを径方向外側に押圧する。
張出し部40、41、42は、それぞれ弾性部材固定部38によって固定され、径方向から見て略六角形のループ形状をなして、内壁Vを押圧する。このため、押圧力が略六角形状の範囲に作用して、安定した押圧状態が形成される。
さらに、張出し部40、41、42は、軸線Cに関して略回転対称に配置されるため、張出し部40、41、42は、内壁Vを周方向に略等分する位置で略均等に押圧する。
このため、電極支持体25によれば、押圧力のバランスが良好になり安定した押圧状態を維持しやすい。
【0086】
本実施形態では、張出し部40、41、42にそれぞれ、2つずつの凸部30が設けられる。凸部30は各屈曲部の外面34aよりも突出しているため、電極支持体25の径方向外側では、凸部30が内壁Vに食い込む状態になる。
例えば、屈曲部27hBにおける凸部30は、
図21に示すように、傾斜面30bが内壁Vと密着し、エッジ部E3が内壁Vに食い込む状態になる。特に図示しないが、他の凸部30も同様である。
このため、各凸部30によって、内壁Vに対する電極支持体25の摺動抵抗が増大する。
凸部30の突出高さは、基端側から先端側に向かって増大する。最も先端側のエッジ部E3においては、外面34aに対する段差が形成される。端面30aの角度θ2は、一例として、90°である。この結果、凸部30は、先端側から基端側に向かう後退移動(
図21の矢印b参照)では、内壁Vに対する凸部30の引っ掛かりが生じにくい。
これに対して、凸部30は、基端側から先端側に向かう前進移動(
図21の矢印f参照)では、エッジ部E3が内壁Vに食い込んで引っ掛かりを生じるため、後退移動に比べて摺動抵抗が格段に大きくなる。θ2が鋭角であると、さらに摺動抵抗が大きくなる。
θ2が鈍角の場合には、θ2<θ1とすることによって、後退移動に比べて前進運動の摺動抵抗を大きくすることができる。
上大静脈P5は、心臓P7に向かって拡径しているため、電極支持体25は、前進するほど押圧力が低下し、外力の影響を受けて留置位置が変動しやすくなる。しかし、本実施形態の電極支持体25によれば、凸部30によって、後退時よりも前進時の摺動抵抗が大きくなるため、上大静脈P5においても、留置位置が安定する。
【0087】
電極支持体25の先端側には、先端側線状部26cA、26cB、26cCによって、ループ状の開口が形成されている。電極支持体25の縮径に伴って、先端側線状部26cA、26cB、26cCによる開口の開口径も小さくなる。しかし、先端側線状部26cA、26cB、26cCは、内壁Vの近傍に位置し、上大静脈P5の内径に近い開口を形成している。このため、上大静脈P5内の血流が妨げられにくい。
【0088】
図20に示すように、電極支持体25の基端側の基端側線状部26bA、26dA、26bB、26dB、26bC、26dCは、上大静脈P5の軸線方向から見て、中心部から放射状に延びる。しかし、電極支持体25の縮径によって周方向に隣り合う、基端側線状部26dA、26bCと、基端側線状部26bA、26dBと、基端側線状部26dC、26bBと、がそれぞれ周方向に密集する。このため、6本の基端側線状部が略等間隔に配置される場合に比べて、血流の乱れが少なくなる。この点でも、上大静脈P5内の血流が妨げられにくい。
【0089】
電極支持体25の位置が決まったら、術者は、電極支持体25の留置を行う。
術者は、リード部20を把持して、リード部20の軸線方向の位置を固定する。この状態で、術者は、操作シース50のみを後退させることによって、電極支持体固定部材22と係合部53との係合を解除する。
術者は、さらに操作シース50を後退させる。例えば、術者は、操作シース50を電極支持体25から100mm程度後退させる。このとき、操作シース50を後退させるとともに、リード部20を前進させる操作を行うと、電極支持体25の位置ずれをより確実に防止することができる。リード部20の基端側を前進させても、リード部20の先端側には柔軟部21Aが形成されているため、基端側の非柔軟部21Bを前進させても、柔軟部21Aがたるむのみで、電極支持体25の位置は変動しない。
操作シース50を後退した後、術者は、リード部20を前進させて上大静脈P5内に送り込む。これは、患者Pの血管内で柔軟部21Aの適宜量のたるみを形成し、患者Pの血管内のリード部20の長さに余裕を持たせるためである。
柔軟部21Aをたるませておくことにより、例えば、患者Pの体動などによって、基端側のリード部20が動いても、電極支持体25には、基端側のリード部20の動きが伝わらない。この結果、電極支持体25の留置位置を安定させることができる。
【0090】
柔軟部21Aのたるみの形状は特に限定されない。柔軟部21Aは、たるんでさえいれば、基端側のリード部20に作用する外力が電極支持体25に伝わる前に吸収できるためである。
例えば、
図22に示すように、柔軟部21Aが血管内で蛇行するように、点pから点qまでの間でたるませてもよい。
例えば、
図23に示すように、点pから点qまでの間に、柔軟部21Aがループ部Lを有するようにたるませてもよい。
いずれの場合も、点pから点qまでの柔軟部21Aの実長さは、点pから点qまでの血管に沿う最短の長さよりも大きい。
【0091】
たるみの形状およびたるみ量は、例えば、術者が、X線透視下でリード部20の形状を観察することによって、確認することができる。たるみ量は、基端部のリード部20が動く可能性のある変位を吸収できるように決めればよい。
術者は、必要なたるみが得られ、かつリード部20の基端部をある程度移動しても電極支持体25の位置が変わらないことを確かめる。
【0092】
もし、電極支持体25の位置ずれが生じた場合には、術者は操作シース50を前進して、係合部53を電極支持体固定部材22に係合し、電極支持体25の位置の再調整を行う。
電極支持体25の位置ずれが生じなかった場合には、術者は、操作シース50をリード部20から外し、患者Pの血管内から除去する。
例えば、操作シース50が手で引き裂き可能な構成であれば、操作シース50を後退して引き抜きつつ、手で引き裂いて操作シース50を除去する。
手で引き裂き可能でない場合には、例えば、ハサミなどで操作シース50を長手方向に切り裂いて除去すればよい。
【0093】
術者は、操作シース50を除去した後、イントロデューサを除去しかつ抜去シース60を開口P2に挿入する。
術者は、抜去シース60をイントロデューサの除去後に挿入してもよいが、以下のようにして、イントロデューサを除去するのと同時に抜去シース60を挿入してもよい。
まず、術者は、抜去シース60の締め込みノブ68を緩めて、摺動可能状態にする。術者は、抜去シース60をリード本体21に沿って前進させ、イントロデューサ近位端に抜去シース60の先端部を挿入する。
その後、術者は、抜去シース60をイントロデューサ内に前進させつつ、同時に、イントロデューサをピールオフするなどして除去する。このようにして、イントロデューサの除去が完了すると、抜去シース60が右内頚静脈P3内に挿入された状態になる。
【0094】
術者は、抜去シース60を適正な位置まで挿入したら、抜去シース60の締め込みノブ68を締めて、固定状態を形成する。
次に、術者は、例えば、糸掛け穴67aに糸をかけたり、粘着テープなどを用いて羽部67を患者Pの皮膚に固定したりする。
抜去シース60のハブ62には、チューブ66が接続されているため、術者は、コネクタ69にシリンジポンプなどを接続し、例えばヘパリン加生理食塩水などの液体の投与を行うこともできる。例えば、抗凝固剤を投与すると、放出される抗凝固剤は血液の流れに乗り、リード部20および電極支持体25の近傍に拡散し、リード部20および電極支持体25の位置する箇所で血栓の発生を低減することができる。
このようにして、電極支持体25およびリード部20が患者Pの血管内に留置される。
上大静脈P5に留置された電極支持体25は、電気刺激装置70によって電気刺激を印加することによって、患者Pに神経刺激治療を行うことができる。
【0095】
患者Pに必要な神経刺激治療が終了したら、以下のようにして、電気刺激電極1の抜去を行う。本実施形態では、電気刺激電極1の抜去を行うために、外科的な再手術は必要とされない。
次に、抜去シース60の締め込みノブ68を緩め、摺動可能状態を形成する。この状態で、術者は、リード部20を把持し、リード部20を引っ張って電極支持体25を後退させる。このとき、術者は、抜去シース60のハブ62も把持し、抜去シース60が右内頚静脈P3から抜けないようにする。
【0096】
リード部20が引っ張られると、電極支持体25は、血管内に沿って後退する。このとき、電極支持体25は、基端側がすぼまる籠状であることと、後退移動では凸部30が血管の内壁に引っ掛からないこととによって、円滑に後退することができる。
電極支持体25は、抜去シース60の先端部まで後退すると、シース本体61内に引き込まれる。電極支持体25は、シース本体61の内周面に沿って縮径し、抜去シース60内に収納される。
【0097】
術者は、電極支持体25がシース本体61内に収納されたら、糸を切る等して、抜去シース60のハブ62と頚部P1の皮膚との固定を解除する。なおこの作業は抜去シース60の締め込みノブ68を緩める前に行っても構わない。
この後、術者は、開口P2を通して右内頚静脈P3から、抜去シース60を引き抜く。このようにすれば、開口P2には、一定外径のシース本体61が通過するのみであるため、開口P2の血管壁を押し広げることなく電極支持体25を引き抜くことができる。すなわち、電極支持体25を単独で開口P2から引き抜く場合のように、開口P2を通過する際電極支持体25が拡径して開口P2の血管壁を押し広げることがないため、患者Pに負荷を与えることなく抜去することができる。
電気刺激電極1を抜去したら、術者は、穿刺部の皮膚に対し、縫合や圧迫など、一般的な止血処置を行い、治療を終了する。
【0098】
本実施形態の電気刺激電極1によれば、電極支持体25が上大静脈P5などの血管内に挿入されると、電極支持体25が縮径して、張出し部40、41、42等が、血管の内壁を径方向外側に押圧する。張出し部42において電極支持体25の径方向外側に露出された刺激電極部10、11は血管の内壁と密着して当接する。
このような当接状態では、刺激電極部10、11と血液との接触が抑制されるため、刺激電極部10、11間に印加した電気刺激が血液側に漏洩するのを抑制することができる。
刺激電極部10、11は、血管の内壁を介して迷走神経P6に電気刺激を印加することで、迷走神経P6に直接的に接触することなく間接的に電気刺激を印加することができる。このため、低侵襲で電気刺激を与えることができる。
【0099】
さらに、電気刺激電極1は、張出し部40、41、42に、凸部30を備える。凸部30は、外面34aから径方向外方に突出しているため、外周のエッジ部E3の近傍が柔軟な血管の内壁に食い込む。このため、留置位置における血管の内壁に対する電極支持体25の摺動抵抗が増大する。
電気刺激電極1によれば、外面34aに凸部30を有しない場合に比べて、電極支持体25の留置位置をより安定させることができる。
特に、凸部30は、角度θ2の大きさが角度θ1の大きさより小さい場合、血管内の後退移動に比べて前進移動の摺動抵抗をより増大させる。
この場合、凸部30は、心臓P7に向かうにつれて漸次内径が大きくなる上大静脈P5などに留置する際に発生しやすい前進移動による位置ずれを抑制することができる。凸部30において、特に角度θ2が、鋭角または直角の場合には、角度θ2が鈍角の場合に比べて格段に前進移動による位置ずれを抑制することができる。
一方、電極支持体25を位置調整時に後退したり、抜去時に後退したりする際には、凸部30による摺動抵抗は小さい。このため、電気刺激電極1は、留置動作および抜去動作において操作性に優れる。
電気刺激電極1によれば、柔軟で滑りやすい血管内であっても、刺激電極部10、11を安定して留置することができる。
【0100】
近年、心不全の治療法の分野において、慢性心不全の憎悪時に、その予後が悪化することが明らかになりつつある。自律神経に対して直接的に電子的介入を加える組織刺激システムを用いることにより、循環調節異常を是正できることが知られるようになった。
本実施形態の電気刺激電極1を用いることにより、急性心筋梗塞時の再灌流治療後に発生する不整脈及びリモデリング現象を低減することができる。迷走神経を電気的に刺激し、再灌流治療後に一定期間、継続的に心拍数を低下させることにより、心臓の負荷を減少させ、心臓リモデリングを低減することができる。
【0101】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態の医療用電気刺激電極について説明する。
図24は、本発明の第2の実施形態の医療用電気刺激電極の主要部の構成を示す模式的な正面図である。
図25は、
図24におけるA11方向から見た側面図である。
図26は、本発明の第2の実施形態の医療用電気刺激電極の弾性部材の長手方向に沿う模式的な断面図である。
図27は、
図26におけるA12−A12断面図である。
【0102】
図24に主要部を示すように、本実施形態の電気刺激電極2(医療用電気刺激電極)は、上記第1の実施形態の電気刺激電極1の電極支持体25に代えて、電極支持体80を備える。電極支持体80は、上記第1の実施形態の電気刺激システム200において、電極支持体25に代えて用いることができる。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0103】
電極支持体80は、凸部30に代えて、凸部81を備える点が、電極支持体25と異なる。
凸部81は、凸部30と同様、弾性部材26A、26B、26Cの外面から突出する。凸部81は、配置位置および配置個数と、突出形状とが、凸部30と異なる。
図24、25に示すように、凸部81は、先端側線状部26cA、26cB、26cCにおいて、各頂部26gA、26gB、26gCを挟む位置にそれぞれ2個ずつ配置されている。各配置位置は、特に限定されないが、本実施形態では、一例として、各頂部と弾性部材固定部38との間の中点よりも基端寄りに配置される。先端側線状部26cA、26cB、26cC上の凸部81は、一例として軸線Cを中心とする同一円周上に並んでいる。
【0104】
さらに、凸部81は、上記第1の実施形態における凸部30と同様の位置に配置される。すなわち、凸部81は、屈曲部27fA、27hA、27fB、27hB、27fC、27hCの各第2部分f2、h2上にそれぞれ1つずつ配置される。各第2部分f2、h2上の凸部81は、一例として軸線Cを中心とする同一円周上に並んでいる。
【0105】
さらに、凸部81は、基端側線状部26bA、26dA、26bB、26dB、26bC、26dCの先端寄りの位置にそれぞれ1つずつ配置される。基端側線状部26bA、26dA、26bB、26dB、26bC、26dC上の凸部81は、一例として軸線Cを中心とする同一円周上に並んでいる。
【0106】
電極支持体80の凸部81は、合計18個である。
本実施形態における各凸部81の配置位置は、電極支持体80を血管に留置する際に血管の内壁と確実に当接する範囲から選ばれる。血管の内壁と確実に当接する範囲は、予め、留置位置の血管の形状に対する電極支持体81の変形を、実験やシミュレーションなどによって調べればよい。
弾性部材上における凸部81の配置間隔(隣り合う凸部81の間の長さ)は、例えば、5mm以上30mm以下としてもよい。
【0107】
各凸部81の形状は互いに同一である。凸部81の軸方向の長さは、上記第1の実施形態の凸部30の長さと同程度でもよいし、異なっていてもよい。
以下では、凸部81の構成について、
図26、27に示す屈曲部27hAに設けられた凸部81を例にとって説明する。
図26に示すように、屈曲部27hAにおける凸部81は、弾性部材26Aの軸線方向に沿って離間して配列された複数の突起からなる。本実施形態では、凸部81は、先端側(
図26における図示左側)から基端側(
図26における図示右側)に向かって、突起81X、81Y、81Zを備える。突起81X、81Y、81Zの形状は異なっていてもよいが、本実施形態では、互いに同一である。以下では、突起81Xの形状を説明し、突起81Y、81Zの対応部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0108】
突起81Xは、弾性部材26Aの外面34a上に、基端側の第1端部e1と、先端側の第2端部e2とを有する。突起81Xの表面は、傾斜面81b(外周面)、端面81a、および側面81cを含む。
【0109】
傾斜面81bは、第1端部e1(リード部に対する近位端)から先端側に向かって、外面34aの外径から漸次外径が増大する円錐面状の湾曲面(テーパ面)である。傾斜面81bと外面34aとのなす角は、鈍角ψ1である。ψ1の測り方は、上記第1の実施形態におけるθ1と同様である。
傾斜面81bの最外周部には、後述する側面81cと交差することにより、外面34aからの高さがh4のエッジ部e4が形成されている。エッジ部e4は、弾性部材26Aの中心軸線と同軸の円周上に延びる。
【0110】
端面81aは、第2端部e2において、外面34aと角度ψ2で交差する。ψ2の大きさは、上記第1の実施形態におけるθ2と同様である。端面81aの形状は、外面34aから弾性部材26Aの径方向外方に延びる円錐面状の湾曲面(ψ2が鋭角または鈍角の場合)または平面(ψ2が直角の場合)である。ψ2の測り方は、上記第1の実施形態におけるθ2と同様である。
端面81aの最外周部には、後述する側面81cと交差することにより、外面34aからの高さがh3(ただし、h3≧h4)のエッジ部e3(リード部に対する遠位端)が形成されている。エッジ部e3は、弾性部材26Aの中心軸線と同軸の円周上に延びる。
本実施形態では、高さh3、h4は、屈曲部27hAの中心軸線を通る断面において、第1端部e1とエッジ部e3とを結ぶ直線よりも、エッジ部e4が径方向外方に位置する寸法である。
【0111】
エッジ部e3、e4の間には、側面81cが形成される。
側面81cは、弾性部材26Aの中心軸線と同軸の円筒面(h3=h4のとき)、または、弾性部材26Aの中心軸線と同軸の円錐面(h3>h4のとき)である。
本実施形態では、エッジ部e4の近傍における傾斜面81bと側面81cとの表面と間の角ψ3は180°以上である。すなわち、外面34aに対する傾斜は、傾斜面81bに比べて、側面81cの方が緩い。
本実施形態では、側面81cの全体またはエッジ部e3が、突起81Xの最外周部を構成する。
【0112】
突起81Xの具体的な寸法は、弾性部材26Aが電極支持体90として組み立てられた際に、電極支持体90が血管内で先端側に移動しにくくなる適宜の寸法が可能である。
例えば、エッジ部e3の高さh3は、0.05mm以上0.5mm以下としてもよい。
突起81Xの軸方向の長さd1(第1端部e1からエッジ部e3までの弾性部材26Aの軸線方向に沿う長さ)は、凸部81の軸方向の長さおよび突起81X、81Y、81Zの配置間隔に応じて適宜設定することができる。
例えば、ψ2は、30°以上150°以下としてもよい。例えば、ψ1は、120°以上180°未満としてもよい。
【0113】
突起81X、81Y、81Zの配置間隔d2(一方の突起の第1端部e1から他方の突起の第2端部e2までの距離)は、突起81X、81Y、81Zを形成可能な適宜寸法を採用することができる。本実施形態では、一例としてd2<d1としている。
このような構成の突起81X、81Y、81Zは、凸部30と同様の材料、形成方法によって形成することが可能である。
【0114】
本実施形態の電気刺激電極2によれば、上記第1の実施形態と同様にして弾性部材26A、26B、26Cが組み立てられた電極支持体80を備える。このため、電気刺激電極1と同様にして、電極支持体80を、例えば、上大静脈P5などの血管内に留置して、電気刺激を行うことができる。
【0115】
電気刺激電極2では、電極支持体80において、凸部30よりも多くの凸部81を備える。
各凸部81は、突起81X、81Y、81Zを備える。突起81X、81Y、81Zは、それぞれ、凸部30と同様に、端面81a、エッジ部e3を備えるため、凸部30と同様に、血管の内壁に対する電極支持体80の摺動抵抗が増大する。
さらに、凸部81は、電極支持体80において、軸線Cに沿う方向の位置が異なる箇所に分散して配置されている。このため、電極支持体80の縮径時の変形状態が変化しても、凸部81が血管の内壁から外れる確率が減る。
電気刺激電極2によれば、電気刺激電極1に比べても、電極支持体80の留置位置をより安定させることができる。
【0116】
さらに、電気刺激電極2における突起81X、81Y、81Zは、弾性部材の軸方向に沿う断面が四辺形である。このため、突起81X、81Y、81Zでは、先端側のエッジ部e3が、弾性部材の外面に対する傾斜が浅いもしくは外面と平行な側面81cと、傾斜面81bとが交差して形成される。これに対して、上記第1の実施形態の凸部30では、弾性部材の軸方向に沿う断面が三角形である。
したがって、突起81X、81Y、81Zでは、それぞれの長さd1が、凸部30の長さdに比べて短くても、エッジ部e3の近傍の角度を、凸部30エッジ部E3の近傍の角度に比べて大きくすることができる。
この結果、エッジ部e3における食い込みによる血管の内壁の負荷がより軽減される。かつ、エッジ部e3の強度を向上することができるため、突起81X、81Y、81Zの損傷を防止しやすい。
【0117】
電気刺激電極2によれば、柔軟で滑りやすい血管内であっても、刺激電極部10、11を安定して留置することができる。
【0118】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態の医療用電気刺激電極について説明する。
図28は、本発明の第3の実施形態の医療用電気刺激電極の弾性部材の長手方向に沿う模式的な断面図である。
図29は、
図28におけるA13−A13断面図である。
【0119】
図1に示すように、本実施形態の電気刺激電極3(医療用電気刺激電極)は、上記第1の実施形態の電気刺激電極1の電極支持体25に代えて、電極支持体90を備える。電極支持体90は、上記第1の実施形態の電気刺激システム200において、電極支持体25に代えて用いることができる。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0120】
電極支持体90は、凸部30に代えて、凸部91を備える点が、電極支持体25と異なる。
凸部91は、凸部30と同様、弾性部材26A、26B、26Cの外面から突出する。凸部90は、突出形状が凸部30と異なる。
凸部91は、凸部30が外面34aの周方向の全周に形成されていたのに対して、周方向の一部のみに形成されている(
図29参照)。凸部91が形成されている位置は、電極支持体90の軸線Cに対して径方向外側となる外面34a上である。
【0121】
各凸部91の形状は互いに同一である。以下では、凸部91の構成について、
図28、29示す屈曲部27hAに設けられた凸部91を例にとって説明する。
図28は、電極支持体90の軸線Cおよび屈曲部27hAの中心軸線を含む平面における断面図である。
【0122】
図28に示すように、凸部91は、被覆34の外周面で構成される弾性部材26Aの外面34a上に、基端側の第1端部E4と、先端側の第2端部E5とを有する。凸部91の表面は、傾斜面91b(外周面)と、端面91aとを含む。
【0123】
傾斜面91bは、第1端部E4から先端側に向かって、外面34aの外径から漸次外径が増大する部分円錐面状の湾曲面である。傾斜面91bと外面34aとのなす角は、上記第1の実施形態と同様に、鈍角θ1である。
ここで、傾斜面91bと外面34aとのなす角の大きさは、電極支持体90の軸線Cおよび屈曲部27hAの中心軸線を含む断面において、それぞれの表面の間の角度である。
端面91aは、第2端部E5において、外面34aと、上記第1の実施形態と同様の角度θ2で交差する。端面91aの形状は、外面34aから弾性部材26Aの径方向外方に延びる円錐面状の湾曲面(θ2が鋭角または鈍角の場合)または平面(θ2が直角の場合)である。
ここで、端面91aと外面34aとのなす角の大きさは、電極支持体90の軸線Cおよび屈曲部27hAの中心軸線を含む断面において、それぞれの表面の間の角度である。
【0124】
傾斜面91bと端面91aとは、第2端部E5と同位置または第2端部E5よりも先端側で交差し、エッジ部E6を形成する。
傾斜面91bは、外面34aと交差し、軸線Cと反対側の外周部で交差する。交差部E7(
図29参照)は、軸線Cに対向する径方向外側から見ると、先端側に開口するU字状である。交差部E7は、外面34aにおいて、軸線Cに対する裏側の半円部(
図29における図示上側の半円部)に位置する。
外面34aからエッジ部E6までの最大の高さは、上記第1の実施形態と同様に、hである。ただし、外面34aからエッジ部E6までの高さは、交差部E7に向かうにつれて減少し、交差部E7で0になる。
このような構成の凸部91は、凸部30と同様の材料、形成方法によって形成することが可能である。
【0125】
本実施形態の電気刺激電極3によれば、上記第1の実施形態と同様にして弾性部材26A、26B、26Cが組み立てられた電極支持体80を備える。このため、電気刺激電極1と同様にして、電極支持体80を、例えば、上大静脈P5などの血管内に留置して、電気刺激を行うことができる。
【0126】
電気刺激電極3では、電極支持体90において、軸線Cに対する径方向外側の領域のみに、凸部91を備える。凸部91の突出形状は、電極支持体90の径方向では、上記第1の実施形態と同様である。
本実施形態における凸部91は、上記第1の実施形態における凸部30から、血管の内壁と当接しない径方向内側の突出部分を取り除いた突出形状になっている。したがって、凸部91は交差部E7の近傍における血管への食い込み量が減少するのみで、凸部30と同様に、電極支持体90の摺動抵抗を増大させることができる。
電気刺激電極3によれば、凸部91を有しない場合に比べて、電極支持体90の留置位置をより安定させることができる。
電気刺激電極3によれば、柔軟で滑りやすい血管内であっても、刺激電極部10、11を安定して留置することができる。
【0127】
電気刺激電極3によれば、凸部91は、凸部30に比べて1個当たりの樹脂量が少なくて済むため、より容易かつ安価に形成することができる。
さらに、凸部91は、電極支持体90の径方向外側のみに形成される。すなわち、弾性部材26A、26B、26Cの各外面34aの軸線方向に沿って、軸線Cに対する裏側の半円部の領域に形成される。凸部91は、電極支持体25における周方向には突出しない。
このため、電極支持体90が縮径して、軸線Cに対する周方向に隣り合う弾性部材26A、26B、26Cの間隔が狭まっても、凸部91は、隣の弾性部材または隣の凸部91と干渉しない。この結果、電極支持体90は、電極支持体25に比べてより小径に縮径される。そのため、抜去時に抜去シース60へ電極支持体90を引き込むために必要な力量を電極支持体25に比べて低減することができる。
また、電極支持体90の血液接触面すなわち弾性部材26A、26B、26Cの各外面34aの軸線方向に沿って軸線C側が、凸のない滑らかな構造となるため、血栓が生成されにくくなる。
【0128】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態の医療用電気刺激電極について説明する。
図30は、本発明の第4の実施形態の医療用電気刺激電極の主要部の構成を示す模式的な正面図である。
図31は、
図30におけるA14方向から見た側面図である。
【0129】
図30に主要部の構成を示すように、本実施形態の電気刺激電極4(医療用電気刺激電極)は、上記第1の実施形態の電気刺激電極1の電極支持体25に代えて、電極支持体100を備える。電極支持体100は、上記第1の実施形態の電気刺激システム200において、電極支持体25に代えて用いることができる。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0130】
図30、31に示すように、電極支持体100は、上記第1の実施形態と同様に6個の凸部30を備える。電極支持体100は、凸部30の配置位置のみが電極支持体25と異なる。
上記第1の実施形態では、凸部30の配置位置は、電極支持体25の軸線方向では同一位置であるのに対して、本実施形態における凸部30の配置位置は、互いに電極支持体100の軸線方向においてずれている。
凸部30の配置位置のずらし方は、特に限定されない。
以下では、6個の凸部30を互いに区別する場合には、凸部30i、30j、30k、30m、30n、30pという場合がある。
【0131】
弾性部材26Aの基端側線状部26bAの先端部寄りには、凸部30iが配置される。
基端側線状部26bAと周方向に隣り合う弾性部材26Bの基端側線状部26dBにおいて、凸部30iよりも基端側となる位置には、凸部30jが配置される。
弾性部材26Cの屈曲部27fCの第1部分f1には凸部30kが配置される。
屈曲部27fCと周方向に隣り合う弾性部材26Aの屈曲部27hAの第2部分h2には、凸部30mが配置される。
弾性部材26Cの屈曲部27hCの第3部分h3には、凸部30nが配置される。
弾性部材26Bの先端側線状部26cBには、頂部26gBと、弾性部材26Cに接続する弾性部材固定部38との間に、凸部30pが配置される。
【0132】
本実施形態における各凸部30の配置位置は、電極支持体100を血管に留置する際に血管の内壁と確実に当接する範囲から選ばれる。血管の内壁と確実に当接する範囲は、予め、留置位置の血管の形状に対する電極支持体100の変形を、実験やシミュレーションなどによって調べればよい。
本実施形態における各凸部30の配置方向は、それぞれが位置する弾性部材26A、26B、26Cの中心軸線に沿う方向において、先端側に端面30aが向く方向である。例えば、凸部30nの場合、第3部分h3における先端側は、先端側線状部26cCと接続する方である。
【0133】
本実施形態の電気刺激電極4によれば、上記第1の実施形態と同様にして弾性部材26A、26B、26Cが組み立てられた電極支持体100を備える。このため、電気刺激電極1と同様にして、電極支持体100を、例えば、上大静脈P5などの血管内に留置して、電気刺激を行うことができる。
電極支持体100は、例えば、上大静脈P5などの血管内に配置されると、拡径して、血管の内壁を押圧する。その際、各凸部30が、血管の内壁に当接しすることにより、電極支持体100の摺動抵抗が増大する。
このため、電気刺激電極4によれば、柔軟で滑りやすい血管内であっても、刺激電極部10、11を安定して留置することができる。
【0134】
本実施形態では、例えば、凸部30i、30j、30mは、電極支持体100の自然状態および縮径時に、端面30aが、電極支持体100の軸線方向における先端側に向くため(
図30における小矢印参照)、電極支持体100の前進時の摺動抵抗を特に増大させる。
一方、凸部30k、30n、30pは、電極支持体100の自然状態では、端面30aが弾性部材の中心軸線に沿う先端側に向き、電極支持体100の軸線方向に対しては斜め方向に向いている(
図30における小矢印参照)。このため、凸部30k、30n、30pの向きは、電極支持体100の縮径時には、縮径量に応じて回転して、より電極支持体100の軸線方向に近づく。しかし、凸部30i、30j、30mが縮径時も電極支持体100の軸線方向に向いているのに対して、凸部30k、30n、30pは、縮径時でも、ある程度は、電極支持体100の軸線方向に対する傾斜が残る。このため、凸部30k、30n、30pは、電極支持体100の軸線方向における摺動抵抗に加えて、電極支持体100の周方向における摺動抵抗にも寄与している。
【0135】
電気刺激電極4では、電極支持体100において、凸部30が、電極支持体100の軸線方向においてずらされている。特に、上記の例では、凸部30の軸線方向の位置がすべて異なる。
このため、電極支持体100が縮径して、隣り合う弾性部材との間隔が減少する場合に、凸部30同士が当接することがない。
このため、縮径時に凸部30のエッジ部E3等が互いに接触して、凸部30が変形したり、損傷したりすることを防止できる。
さらに、電気刺激電極4によれば、周方向に隣り合う凸部30が当接する配置に比べて、電極支持体100の縮径時の外径を縮小することができる。そのため、抜去時に抜去シース60へ電極支持体100を引き込むために必要な力量を低減することができる。
【0136】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態の医療用電気刺激電極について説明する。
図32は、本発明の第5の実施形態の医療用電気刺激電極の主要部の構成を示す模式的な正面図である。
図33は、
図32におけるA15方向から見た側面図である。
【0137】
図32に主要部の構成を示すように、本実施形態の電気刺激電極5(医療用電気刺激電極)は、上記第1の実施形態の電気刺激電極1の電極支持体25に代えて、電極支持体110を備える。電極支持体110は、上記第1の実施形態の電気刺激システム200において、電極支持体25に代えて用いることができる。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0138】
図32、33に示すように、電極支持体110は、上記第1の実施形態と同様に6個の凸部30を備える。電極支持体110は、凸部30の配置位置のみが電極支持体25と異なる。
上記第1の実施形態では、凸部30の配置位置は、電極支持体25の軸線方向では同一位置になっており、かつ凸部30が、周方向に他の凸部30と隣り合うように配置されている。これに対して、本実施形態における凸部30の配置位置は、電極支持体110の軸線方向では同一位置となる複数の凸部30が、互いに周方向において隣り合わないように配置される。
以下では、6個の凸部30を互いに区別する場合には、凸部30q、30r、30s、30t、30u、30vという場合がある。
【0139】
弾性部材26Aの屈曲部27hAの第2部分h2には、凸部30qが配置される。
弾性部材26Bの屈曲部27hBの第2部分h2には、凸部30rが配置される。
弾性部材26Cの屈曲部27hCの第2部分h2には、凸部30sが配置される。
凸部30q、30r、30sは、電極支持体110の軸線方向では、同一位置に配置される。
弾性部材26Aの先端側線状部26cAには、頂部26gAと、弾性部材26Bに接続する弾性部材固定部38との間に、凸部30tが配置される。
弾性部材26Bの先端側線状部26cBには、頂部26gBと、弾性部材26Cに接続する弾性部材固定部38との間に、凸部30uが配置される。
弾性部材26Cの先端側線状部26cCには、頂部26gCと、弾性部材26Aに接続する弾性部材固定部38との間に、凸部30vが配置される。
凸部30t、30u、30vは、電極支持体110の軸線方向では、同一位置に配置される。
【0140】
本実施形態における各凸部30の配置位置は、電極支持体110を血管に留置する際に血管の内壁と確実に当接する範囲から選ばれる。血管の内壁と確実に当接する範囲は、予め、留置位置の血管の形状に対する電極支持体110の変形を、実験やシミュレーションなどによって調べればよい。
本実施形態における各凸部30の配置方向は、それぞれが位置する弾性部材26A、26B、26Cの中心軸線に沿う方向において、先端側に端面30aが向く方向である。例えば、凸部30tの場合、先端側線状部26cAにおける先端側は、頂部26gAの方である。
【0141】
本実施形態の電気刺激電極5によれば、上記第1の実施形態と同様にして弾性部材26A、26B、26Cが組み立てられた電極支持体110を備える。このため、電気刺激電極1と同様にして、電極支持体110を、例えば、上大静脈P5などの血管内に留置して、電気刺激を行うことができる。
電極支持体110は、例えば、上大静脈P5などの血管内に配置されると、拡径して、血管の内壁を押圧する。その際、各凸部30が、血管の内壁に当接しすることにより、電極支持体110の摺動抵抗が増大する。
このため、電気刺激電極5によれば、柔軟で滑りやすい血管内であっても、刺激電極部10、11を安定して留置することができる。
【0142】
電気刺激電極5では、電極支持体110において、軸線方向において同一位置となる凸部30は、1本の弾性部材を挟んで隣り合っている。このため、電極支持体110が縮径して、隣り合う弾性部材との間隔が減少する場合に、凸部30同士が当接することがない。
このため、縮径時に凸部30のエッジ部E3等が互いに接触して、凸部30が変形したり、損傷したりすることを防止できる。
さらに、電気刺激電極5によれば、周方向に隣り合う凸部30が当接する配置に比べて、電極支持体110の縮径時の外径を縮小することができる。そのため、抜去時に抜去シース60へ電極支持体110を引き込むために必要な力量を低減することができる。
【0143】
なお、上記各実施形態の説明では、凸部が、テーパ状の傾斜面を備える場合の例で説明した。しかし、傾斜面は、基端側から先端側に向かって滑らかに傾斜する傾斜面であれば、円錐状のテーパ面には限定されない。
例えば、真の円錐面に対して軸方向の中間部が径方向外側に膨らんだ湾曲面でもよい。例えば、真の円錐面に対して軸方向の中間部が径方向内側に細くなる湾曲面でもよい。
例えば、傾斜面は平面の組み合わせからなる多角錘台の外形を有してもよい。
【0144】
上記各実施形態の説明では、電極支持体が、一対の刺激電極部10、11のみを有する場合の例で説明した。しかし、このような刺激電極部の数および配置位置は、一例であり、これに限定されない。例えば、刺激電極部は、複数の屈曲部に形成してもよい。例えば、刺激電極部は、屈曲部以外の先端側線状部あるいは基端側線状部に形成してもよい。
【0145】
上記各実施形態の説明では、電極支持体上の凸部が、6個もしくは18個の場合の例で説明した。しかし、凸部の個数は、このような刺激電極部の数および配置位置は、一例であり、これに限定されない。凸部は、2以上の適宜個数設けることが可能である。
【0146】
上記各実施形態の説明では、電極支持体固定部材22と係合部53とが、4箇所の係合突起22aとが、4箇所の係合溝53aとで係合する場合に例で説明した。しかし、係合に用いる凹凸形状は、これには限定されない。例えば、電極支持体固定部材22の外形を六角形などの多角形に形成し、係合部53にこれと係合する六角孔を設けてもよい。
【0147】
上記第2の実施形態の説明では、凸部81が、突起81X、81Y、81Zからなる場合の例で説明したが、突起81X、81Y、81Zは、それぞれ単独に凸部として設けてもよい。
例えば、凸部81を突起81Xのみで構成してもよい。この場合、突起81Xの軸方向の長さは凸部30と同程度にしてもよい。
さらに、上記第1、第4、および第5の実施形態の凸部30の一部または全部を突起81Xに代えてもよい。
例えば、凸部81は、突起81X、81Y、81Zの配置間隔d2が、それぞれの軸方向の長さd1よりも広い構成としてもよい。この場合、突起81X、81Y、81Zは、3個の凸部が並んでいると見なしてもよい。
【0148】
上記第2の実施形態の説明では、複数の凸部81を、弾性部材上の特定部位に分けて配置した場合の例で説明した。しかし、弾性部材上の複数の凸部は、配置個数、配置位置は、配置間隔を一定になるように決めてもよい。複数の凸部の配置間隔は、例えば、5mm以上30mm以下の範囲から選らんでもよい。
【0149】
上記第2の実施形態の説明では、凸部81が、突起81X、81Y、81Zからなる場合の例で説明したが、凸部81を構成する突起の数は、2個、または4個以上でもよい。
【0150】
上記各実施形態の説明では、弾性部材の軸方向に沿う凸部の断面形状(以下、単に、凸部の断面形状という)が、三角形または四辺形である場合の例で説明した。しかし、凸部の断面形状はこのような形状に限定されない。
例えば、凸部の断面形状は、三角形または四辺形以外の多角形であってもよい。
例えば、凸部の断面形状は、直線の組み合わせによって形成される形状には限定されない。例えば、凸部の断面形状は、直線と曲線との組み合わせ、あるいは、曲線のみで構成されてもよい。
例えば、凸部の断面形状は、周方向において変化してもよい。例えば、凸部は、リード部に対する近位端から遠位端に向かって弾性部材の外方に漸次突出する外周面を有していれば、円錐状、半球状、角錐状、鋸歯状の突起が、周方向に不連続に配置された構成でもよい。
【0151】
上記に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせたり、削除したりして実施することができる。
例えば、上記第2の実施形態における凸部81は、上記第1、第4、および第5の実施形態の凸部30の一部または全部と代えて用いることができる。
例えば、上記第3の実施形態における凸部91は、上記第1、第4、および第5の実施形態の凸部30の一部または全部と代えて用いることができる。
例えば、上記第1の実施形態における凸部30は、上記第2の実施形態における凸部81の一部または全部と代えて用いることができる。
例えば、上記第1の実施形態における凸部30は、上記第3の実施形態における凸部91の一部または全部と代えて用いることができる。
例えば、上記第2の実施形態における凸部80の各突起は、それぞれ上記第3の実施形態の凸部91と同様の形状とを有する突起でもよい。
例えば、凸部は、各弾性部材にすべて設けることは必須ではない。電極支持体は、凸部のない弾性部材を有してもよい。
例えば、凸部は、各弾性部材に同数設けることは必須ではない。電極支持体の弾性部材に設けられる凸部の数は、異なっていてもよい。