(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557511
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】塗膜構成体及びその製造方法並びに建築板
(51)【国際特許分類】
B32B 3/30 20060101AFI20190729BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20190729BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
B32B3/30
B32B7/023
B05D1/26 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-96567(P2015-96567)
(22)【出願日】2015年5月11日
(65)【公開番号】特開2016-210112(P2016-210112A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】合川 英男
(72)【発明者】
【氏名】後藤 明治
【審査官】
清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−264036(JP,A)
【文献】
特開2007−177573(JP,A)
【文献】
特開2007−176773(JP,A)
【文献】
特開2007−176772(JP,A)
【文献】
特開2011−056362(JP,A)
【文献】
特開平11−019579(JP,A)
【文献】
特開平07−024959(JP,A)
【文献】
特開昭62−269776(JP,A)
【文献】
意匠登録第1303325(JP,S)
【文献】
KMEW CBWall COLOR Best|CBウォール工法,ケイミュー株式会社,2014年 3月28日,第1版,p.表紙、4、6−7、奥付,URL,https://catalog.e-setsubi.net/iportal/cv.do?c=23402940000&pg=9&v=CATALABO&d=HAT&pp=L
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B05D 1/00−7/26
B41M 1/00−3/18
7/00−9/04
E04F 13/00−13/30
C04B 41/70−41/71
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の凹凸のある表面に積層形成された塗膜構成体であって、
前記基材の表面に形成された下地層と、
該下地層の表面の一部に形成され、前記下地層と異なる色を呈する着色層と、
少なくとも前記下地層と前記着色層との境界を含み、かつ、前記境界が視認可能なように形成されたインク層と、
を備え、
前記インク層は、第一のインク層と第二のインク層とを有してインクジェット印刷により形成され、
前記インク層には、前記基材の凹部と凸部との境界に対応する境界があり、
前記インク層の前記境界は、前記第一のインク層と前記第二のインク層との境界である
ことを特徴とする塗膜構成体。
【請求項2】
請求項1に記載の塗膜構成体において、
前記着色層は前記下地層の表面のうち少なくとも前記基材の凹部に対応する部分に形成される
ことを特徴とする塗膜構成体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塗膜構成体において、
前記着色層は前記下地層の表面のうち前記基材の凸部に対応する部分に形成され、該下地層よりも淡い色を呈する
ことを特徴とする塗膜構成体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の塗膜構成体において、
前記着色層は白色を呈する
ことを特徴とする塗膜構成体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の塗膜構成体と前記基材とから形成されることを特徴とする建築板。
【請求項6】
基材の凹凸のある表面に積層形成される塗膜構成体の製造方法であって、
前記基材の表面に下地層を形成する工程と、
該下地層の表面の一部に前記下地層と異なる色を呈する着色層を形成する工程と、
少なくとも前記下地層と前記着色層との境界を含み、かつ、前記境界の視認が可能で、かつ、前記基材の凹部と凸部との境界に対応する境界があるインク層を形成する工程とを備え、
前記インク層を形成する工程では、前記インク層が第一のインク層と第二のインク層とを有し、かつ、前記第一のインク層と前記第二のインク層との境界が前記基材の前記凹部と前記凸部との前記境界に対応するように、前記インク層をインクジェット印刷により形成する
ことを特徴とする塗膜構成体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜構成体及びその製造方法並びに建築板に関する。より詳しくは、複数の塗膜が積層された塗膜構成体とその製造方法、並びに塗膜構成体が表面に設けられた建築板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凹凸のある表面にフルカラーインクジェット印刷された化粧建築板が提案されており、メリハリのある意匠を表現するために、様々な工夫がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4A及び
図4Bに化粧された建築板100の一例を示す。この建築板100は、基材105の表面が凹部106と凸部107からなる凹凸面に形成されている。基材105の凹凸表面には塗膜層101とインク層103からなる塗膜構成体104が形成されている。塗膜層101は白色で全面にわたって基材105の凹凸表面に形成されている。インク層103は塗膜層101の表面にインクジェット印刷によって全面にわたって形成されている。インク層103は明度の低い低明度インク層111と、明度の高い高明度インク層110とで形成されている。低明度インク層111は高明度インク層110よりも明度が低くなっている。低明度インク層111は凹部対応箇所(凹部106の底面及び側面)に形成されている。高明度インク層110は凸部対応箇所(凸部107の頂面)に形成されている。そして、低明度インク層111と高明度インク層110とを形成することにより、凹部106と凸部107の明暗を鮮明にし、建築板100の表面の凹凸にメリハリを持たせるようにして建築板100の外観を向上させようとしている。
【0004】
ここで、インクジェット印刷用のデータは、被印刷体である基材105の凹凸の位置に合わせて作成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−88502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基材105に寸法変化が生じた場合、例えば、
図5に示す凹部106aが他の凹部106よりも幅広に形成された場合など、低明度インク層111が凹部106aの中央部分のみに形成されて、凹部106aの両端部に形成されない一方、当該凹部106aの両側の凸部107の頂面を覆う高明度インク層110の一部が凹部106aの端部も覆うため、高明度インク層110と低明度インク層111との境界が凹部106aと凸部107の頂面との境界に一致せずに凹部106a内にズレやすいという問題があった。そして、このような印刷ズレにより、塗膜構成体104の外観が低下しやすいものであった。
【0007】
また、
図6のように、高明度インク層110が印刷されずに塗膜層101が露出するようなインク抜け部108が生じることもあり、塗膜構成体104の外観が低下しやすいものであった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、外観が低下しにくい塗膜構成体及びその製造方法並びに建築板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る塗膜構成体の第一の形態は、基材の凹凸のある表面に積層形成された塗膜構成体であって、前記基材の表面に形成された下地層と、該下地層の表面の一部に形成され、前記下地層と異なる色を呈する着色層と、少なくとも前記下地層と前記着色層との境界を含み、かつ、前記境界が視認可能なように形成されたインク層と、を備え、
前記インク層は、第一のインク層と第二のインク層とを有してインクジェット印刷により形成され、前記インク層には、前記基材の凹部と凸部との境界に対応する境界があ
り、前記インク層の前記境界は、前記第一のインク層と前記第二のインク層との境界であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る塗膜構成体の第二の形態は、基材の表面に積層形成された塗膜構成体であって、前記基材の表面に形成された下地層と、該下地層の表面の一部に形成され、前記下地層と異なる色を呈する着色層と、前記下地層の表面のうち前記着色層が形成された部分を除く非着色面に形成された第一のインク層と、前記着色層の表面に形成された第二のインク層とを備え、前記第一のインク層と前記第二のインク層とが互いに異なる色を呈することを特徴とする。
【0011】
前記第一または第二の塗膜構成体において、前記基材の表面には凹凸が形成されており、前記着色層は前記下地層の表面のうち少なくとも前記基材の凹部に対応する部分に形成されることが好ましい。
【0012】
前記第一または第二の塗膜構成体において、前記基材の表面には凹凸が形成されており、前記着色層は前記下地層の表面のうち前記基材の凸部に対応する部分に形成され、該下地層よりも淡い色を呈することが好ましい。
【0013】
前記第一または第二の塗膜構成体において、前記着色層は白色を呈することが好ましい。
【0014】
前記第一または第二の塗膜構成体において、前記インク層はインクジェット印刷により形成されていることが好ましい。
【0015】
本発明に係る建築板は、前記塗膜構成体と前記基材とから形成されることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る塗膜構成体の製造方法の第一の形態は、基材の凹凸のある表面に積層形成される塗膜構成体の製造方法であって、前記基材の表面に下地層を形成する工程と、該下地層の表面の一部に前記下地層と異なる色を呈する着色層を形成する工程と、少なくとも前記下地層と前記着色層との境界を含み、かつ、前記境界の視認が可能で、かつ、前記基材の凹部と凸部との境界に対応する境界があるインク層を形成する工程とを備え
、前記インク層を形成する工程では、前記インク層が第一のインク層と第二のインク層とを有し、かつ、前記第一のインク層と前記第二のインク層との境界が前記基材の前記凹部と前記凸部との前記境界に対応するように、前記インク層をインクジェット印刷により形成することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る塗膜構成体の製造方法の第二の形態は、基材の表面に積層形成される塗膜構成体の製造方法であって、前記基材の表面に下地層を形成する工程と、該下地層の表面の一部に前記下地層と異なる色を呈する着色層を形成する工程と、前記下地層の表面のうち前記着色層が形成された部分を除く非着色面に第一のインク層を形成すると共に、前記着色層の表面に第二のインク層を形成する工程と備え、前記第一のインク層と前記第二のインク層とが互いに異なる色を呈することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る塗膜構成体の第一の形態は、下地層と着色層との境界が視認可能なようにインク層が形成されているので、インク層に印刷ズレが生じても、インク層の下地により印刷ズレが目立たないようにすることができ、印刷ズレによる外観低下を抑制することができる。また、インク層を形成するインクの使用量を抑制することができる。さらに、インク層の下地が複数色で形成されるので、表現可能な色域が広がる。
【0019】
本発明に係る塗膜構成体の第二の形態は、下地層及び着色層によって、第一のインク層と第二のインク層との印刷ズレが生じても、印刷ズレが目立たないようにすることができ、印刷ズレによる外観低下を抑制することができる。また、インク層を形成するインクの使用量を抑制することができる。さらに、インク層の下地が複数色で形成されるので、表現可能な色域が広がる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1Aは本発明の第一の実施形態の一例を示す断面図、
図1Bは本発明の第一の実施形態の一例を示す平面図である。
【
図2】
図2Aは本発明の第二の実施形態の一例を示す断面図、
図2Bは本発明の第二の実施形態の一例を示す平面図、
図2Cは本発明の第二の実施形態の他の一例を示す断面図、
図2Dは本発明の第二の実施形態の他の一例を示す平面図である。
【
図3】
図3Aは本発明の第三の実施形態の一例を示す断面図、
図3Bは本発明の第三の実施形態の一例を示す平面図である。
【
図6】
図6は従来例の他の問題点を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0022】
(第一の実施形態)
[塗膜構成体及び建築板の説明]
図1A及び
図1Bには第一の実施形態の建築板10が示されている。建築板10は塗膜構成体4と基材5とを備えて形成されている。塗膜構成体4は基材5の表面に積層形成されている。
【0023】
基材5は板状に形成されている。基材5は、例えば、窯業系板材(セメントを含む水硬性材料の硬化物)、プラスチック板、木質板、金属板などの任意の材質で形成されており、特に、従来から建材として用いられている材質で形成することが好ましい。基材5の表面には凹凸が形成されている。この凹凸は、複数の凹部6と複数の凸部7とで形成され、凹部6と凸部7が隣り合って形成されている。
【0024】
塗膜構成体4は、下地層1と着色層2とインク層3とを備えて形成されている。
【0025】
下地層1は基材5の凹凸が形成された表面に全面にわたって密着して設けられている。
【0026】
着色層2は下地層1の表面の一部に密着して設けられている。着色層2は、例えば、下地層1の表面のうち、基材5の凸部7の頂面に対応する部分に形成されている。また着色層2は、下地層1の表面のうち、基材5の凹部6の底面及び側面に対応する部分に形成されていてもよい。また着色層2は下地層1と異なる色を呈している。また着色層2は下地層1よりも淡い色を呈することが好ましく、この場合、基材5の凹凸の位置とインク層3の印刷パターンとが多少位置ズレしていても、目立ち難くすることができる。すなわち、凹部6と凸部7をインクジェット印刷等にて異なる色で塗り分ける場合、凹部6の印刷データと凸部7の印刷データを別けて作製し、印刷する。凹部6の印刷データと凸部7の印刷データは、基材5の設計時の寸法に基づいて作成される。この方法においては、実際に製造された基材5の寸法が設計時の基材5の寸法に対して変化した場合に、凹部6と凸部7の印刷データの面積が基材5の寸法変化に追従しないため、柄の境界(凹部6と凸部7の境界)と印刷データの境界(凹部6の印刷データと凸部7の印刷データの境界)が一致しないことから、印刷の位置ズレが目立ってしまうことがある。これに対し、本実施形態では、
図1Aに示すように基材5の表面全体に下地層1を形成すると共に該下地層1の表面のうち凸部7対応箇所に着色層2を形成することにより、凹部6と凸部7との境界が下地層1と着色層2との異なる色による境界20として形成される。よって、凹部6の印刷データと凸部7の印刷データとの境界と、凹部6と凸部7との境界と、の位置ズレが目立ち難くなる。
【0027】
着色層2は、例えば、白色にすることができる。尚、下地層1は着色層2よりも濃い色であればよく、例えば、黒色である。
【0028】
インク層3は下地層1と着色層2との境界20を含んで形成されている。ここで、下地層1と着色層2との境界20を含んでいるとは、境界20がインク層3で覆われていることを意味する。従って、下地層1の着色層2が形成されていない表面と着色層2の表面とにわたるようにインク層3が形成されている。下地層1の着色層2が形成されていない表面全面と着色層2の表面全面とを覆うようにインク層3が形成されていてもよい。またインク層3は境界20が視認可能に形成されている。従って、インク層3は境界20が透かして見えるように、透明または半透明などに形成されている。インク層3は境界20が透かして見えるのであれば、有色であっても無色であっても良い。このようにインク層3は下地層1と着色層2との境界20を含んで形成され、インク層3は境界20が視認可能なように形成されているので、基材5の凹凸の位置とインク層3の印刷パターンとが多少位置ズレしていても、目立ち難くすることができる。すなわち、上記のように、凹部6と凸部7をインクジェット印刷等にて異なる色で塗り分けた場合、印刷の位置ズレが目立ってしまうおそれがある。これに対し、本実施形態では、上記のように、基材5の表面全体に下地層1を形成すると共に該下地層1の表面のうち凸部7対応箇所(凸部7の頂面に対応する部分)に着色層2を形成することにより、凹部6と凸部7との境界を下地層1と着色層2との異なる色による境界20として形成することができ、さらに、インク層3が形成されていても、この境界20が外部から視認可能なので、インク層3に形成された柄の境界が凹部6と凸部7との境界と一致しなくても、下地層1と着色層2との異なる色による境界20が凹部6と凸部7との境界として認識されるので、位置ズレが目立ち難くなる。
【0029】
また、塗膜構成体4は、インク層3を形成するインクの使用量を抑制することができる。つまり、インク層3を形成する前に予め凹部6に色づけが施されている為、凹部6を埋め尽くして色づけるのに必要なインクの使用量を減らすことができ、色づけるデザインのインク量のみ必要となるため、インクの使用量を抑制することができる。さらに、塗膜構成体4は、インク層3の下地が互いに色の異なる下地層1と着色層2との複数色で形成されるので、表現可能な色域が広がる。
【0030】
なお、本実施例において、インク層3として基材5の凹凸に対応する印刷パターン、即ち凹部6と凸部7とを異なる色柄で塗り分ける場合について説明したがこれに限られることなく、例えば、凹部6と凸部7に関係なく作成された印刷データを用いた場合であっても、下地層1と着色層2との異なる色による境界20の視認により、凹部6と凸部7とが認識されるようになる。また、下地層1と着色層2との異なる色とインク層3の色とが混ざり合って見えることで、表現可能な色域が広がる。さらに、凹部6で表現したい色柄に多く使用する色に近似する色の下地層1や凸部7で表現したい色柄に多く使用する色に近似する色の着色層2とすることで、インクの使用量を減らしても、下地層1や着色層2自身の色がインクの減量分を補完するため、高価なインクの使用量を抑制することができる。
【0031】
[塗膜構成体の製造方法の説明]
第一の実施形態のような塗膜構成体4を製造するにあたっては、次のようにして行う。
【0032】
まず、基材5の表面に下地層1を形成する工程を行う。下地層1は、例えば、エナメル塗料をスプレーで塗布して乾燥硬化させることにより形成され得る。次に、下地層1の表面の一部に下地層1と異なる色を呈する着色層2を形成する工程を行う。
【0033】
着色層2は、例えば、下地層1の表面のうち、基材5の凸部7の頂面に対応する部分に形成されている。また着色層2は、下地層1の表面のうち、基材5の凹部6の底面及び側面に対応する部分に形成されていてもよい。着色層2は、例えば、エナメル塗料をロールで塗布して乾燥硬化させることにより形成され得る。次に、少なくとも下地層1と着色層2との境界20を含み、かつ、境界20が視認可能なインク層3を形成する工程を行う。この場合、下地層1の着色層2が形成されていない表面と着色層2の表面とにわたるようにインク層3が形成される。また下地層1の着色層2が形成されていない表面全面と着色層2の表面全面とを覆うようにインク層3が形成されてもよい。インク層3はCMYKインク(シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、黒インク)を用いたインクジェット印刷で形成されることが好ましく、これにより、インク層3は簡単に形成され得る。
【0034】
このようにして塗膜構成体4を形成することにより、上記のような効果を有する塗膜構成体4を容易に作成することができる。
【0035】
(第二の実施形態)
[塗膜構成体及び建築板の説明]
図2A及び
図2Bには第二の実施形態の建築板10が示されている。建築板10は塗膜構成体4と基材5とを備えて形成されている。塗膜構成体4は基材5の表面に積層形成されている。
【0036】
基材5は板状に形成されている。基材5は、例えば、窯業系板材(セメントを含む水硬性材料の硬化物)、プラスチック板、木質板、金属板などの任意の材質で形成されており、特に、従来から建材として用いられている材質で形成することが好ましい。基材5の表面には凹凸が形成されている。この凹凸は、複数の凹部6と複数の凸部7とで形成され、凹部6と凸部7が隣り合って形成されている。
【0037】
塗膜構成体4は、下地層1と着色層2とインク層3とを備えて形成されている。
【0038】
下地層1は基材5の凹凸が形成された表面に全面にわたって密着して設けられている。
【0039】
着色層2は下地層1の表面の一部に密着して設けられている。着色層2は、例えば、下地層1の表面のうち、基材5の凹部6の底面及び側面に対応する部分に形成されている。これら着色層2及び下地層1は、凹凸に対応する柄を形成する。また着色層2は、下地層1の表面のうち、基材5の凸部7の頂面に対応する部分に形成されていてもよい。また着色層2は下地層1と異なる色を呈している。また
図2に示すように着色層2が基材5の凹部6の底面及び側面に対応する箇所に形成されている場合には、着色層2は下地層1よりも濃い色を呈することが好ましい。この場合、基材5の凹凸の位置とインク層3の印刷パターンとが多少位置ズレしていても、目立ち難いようにすることができる。すなわち、凹部6と凸部7をインクジェット印刷等にて異なる色で塗り分ける場合、凹部6の印刷データと凸部7の印刷データを別けて作製し、印刷する。凹部6の印刷データと凸部7の印刷データは、基材5の設計時の寸法に基づいて作成される。この方法においては、実際に製造された基材5の寸法が設計時の基材5の寸法に対して変化した場合に、凹部6と凸部7の印刷データの面積が基材5の寸法変化に追従しないため、柄の境界(凹部6と凸部7の境界)と印刷データの境界(凹部6の印刷データと凸部7の印刷データの境界)が一致しないことから、印刷の位置ズレが目立ってしまうことがある。これに対し、本実施形態では、
図2Aに示すように基材5の表面全体に下地層1を形成すると共に該下地層1の表面のうち凹部6対応箇所(凹部6の底面及び側面に対応する箇所)に着色層2を形成することにより、凹部6と凸部7との境界が下地層1と着色層2との異なる色による境界20として形成される。よって、凹部6の印刷データと凸部7の印刷データとの境界と、凹部6と凸部7との境界と、の位置ズレが目立ち難くなる。着色層2は、例えば、
図2Aに示すように着色層2が凹部6に対応する箇所に形成する場合、黒色にすることができる。尚、下地層1は着色層2よりも淡い色であればよく、例えば、白色である。
【0040】
インク層3は第一のインク層31と第二のインク層32とで構成されている。これら第一のインク層31及び第二のインク層32は、下地層1及び着色層2で形成された柄の上に形成されて当該柄の一層細かな柄を形成する。第一のインク層31は、下地層1の表面のうち着色層2が形成された部分を除く非着色面11に形成されている。第二のインク層32は着色層2の表面に形成されている。尚、第一のインク層31は非着色面11に完全に一致している必要はなく、第一のインク層31の一部が着色層2の表面に重ねられて形成されていてもよい。また、第二のインク層32は着色層2に完全に一致している必要はなく、第二のインク層32の一部が非着色面11に形成されていてもよい。そして、インク層3は、下地層1と着色層2との異なる色による境界20がインク層3に形成された凹部6の印刷データと凸部7の印刷データとの境界よりも鮮明に視認することができるように形成されている。
【0041】
上記のような塗膜構成体4は、下地層1及び着色層2によって、基材5の凹凸の位置と第一のインク層31と第二のインク層32との印刷ズレが生じても、目立ち難くすることができる。すなわち、上記のように、凹部6と凸部7をインクジェット印刷等にて異なる色で塗り分けた場合、印刷の位置ズレが目立ってしまうおそれがある。これに対し、本実施形態では、上記のように、基材5の表面全体に下地層1を形成すると共に該下地層1の表面のうち凹部6対応箇所に着色層2を形成することにより、凹部6と凸部7との境界を下地層1と着色層2との異なる色による境界20として形成することができ、さらに、インク層3が形成されていても、この境界20がインク層3に形成された凹部6の印刷データと凸部7の印刷データとの境界よりも鮮明に視認可能なので、インク層3に形成された柄の境界の位置ズレが目立ち難くなる。
【0042】
また、
図2Cのように、基材5が設計時の寸法から変化して一部の凹部6aが他の凹部6よりも幅広に形成された場合、インク層3の第二のインク層32が凹部6aの中央部分のみに形成されて、凹部6aの両端部に第一のインク層31が形成されることになる。しかし、この場合でも、
図2Dのように、凹部6と凸部7との境界を下地層1と着色層2との異なる色による境界20として形成することができ、さらに、インク層3が形成されていても、この境界20がインク層3に形成された凹部6の印刷データと凸部7の印刷データとの境界21よりも鮮明に視認可能なので、インク層3に形成された凹部6の印刷データと凸部7の印刷データとの境界21の位置ズレが目立ち難くなる。
【0043】
また、塗膜構成体4は、第一の実施の形態と同様に、インク層3を形成するインクの使用量を抑制することができる。さらに、塗膜構成体4は、第一の実施の形態と同様に、インク層3の下地が互いに色の異なる下地層1と着色層2との複数色で形成されるので、表現可能な色域が広がる。
【0044】
[塗膜構成体の製造方法の説明]
第二の実施形態のような塗膜構成体4を製造するにあたっては、次のようにして行う。
【0045】
まず、基材5の表面に下地層1を形成する工程を行う。下地層1は、例えば、エナメル塗料をスプレーで塗布して乾燥硬化させることにより形成され得る。次に、下地層1の表面の一部に下地層1と異なる色を呈する着色層2を形成する工程を行う。着色層2は下地層1の表面のうち基材5の凹部6に対応する部分(凹部6の底面及び側面)に形成される。着色層2は、凹部6に対応する部分以外に、下地層1の表面のうち基材5の凸部7に対応する部分(凸部7の頂面)に形成されてもよい。着色層2は、例えば、エナメル塗料をスプレーで塗布して乾燥硬化させることにより形成され得る。ここで、着色層2を基材5の凹部6の底面及び側面に対応する部分に形成する場合、例えば、比較的流動性の高い塗料を下地層1の表面に塗布する。これにより、下地層1の表面のうち凸部7の頂面に対応する部分に塗布された塗料が凹部6に流れ込むため、少なくとも凹部6の底面及び側面に対応する部分に着色層2が形成される。次に、下地層1の表面のうち着色層2が形成された部分を除く非着色面11に第一のインク層31を形成すると共に、着色層2の表面に第二のインク層32を形成する工程を行う。第一のインク層31及び第二のインク層32からなるインク層3はCMYKインク(シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、黒インク)を用いたインクジェット印刷で形成されることが好ましく、これにより、インク層3は簡単に形成され得る。
【0046】
このようにして塗膜構成体4を形成することにより、上記のような効果を有する塗膜構成体4を容易に作成することができる。
(第三の実施形態)
[塗膜構成体及び建築板の説明]
図3A及び
図3Bには第三の実施形態の建築板10が示されている。着色層2は、例えば、下地層1の表面のうち、基材5の凸部7の頂面に対応する部分に形成されている。また着色層2は、下地層1の表面のうち、基材5の凹部6の底面及び側面に対応する部分に形成されていてもよい。第三の実施の形態の他の構成は第二の実施の形態と同様である。第三の実施の形態は、第二の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0047】
[塗膜構成体の製造方法の説明]
下地層1の表面のうち基材5の凸部7に対応する部分(凸部7の頂面)に着色層2を形成する工程を行う以外は、第二の実施の形態と同様にして塗膜構成体4を形成する。なお、凸部7の頂面に着色層2を形成する場合は、ロールで塗布して乾燥硬化させるのが好ましい。第三の実施の形態は、第二の実施の形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0048】
1 下地層
2 着色層
3 インク層
31 第一のインク層
32 第二のインク層
4 塗膜構成体
5 基材
6 凹部
10 建築板
11 非着色面
20 境界