(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されるような熱交換ユニットでは、当該熱交換ユニットに向かって風が吹いているときに、熱交換器から流出した気流、すなわち、熱交換器で熱交換した後の低温空気を送風機が再度吸い込む場合がある。具体的に、通常、各送風機は一定の回転数で駆動されているため、前記低温空気は、各装置の側方(熱交換ユニットから離間する方向)に向かって流れるが、この低温空気の流れる向きと風向きとが逆であった場合、当該装置の側方に向かった低温空気が風により前記装置側に戻されることにより送風機がその低温空気を再度吸い込む場合がある。この場合、熱交換器で熱交換した後の気流(低温空気)の影響により温度が低くなった空気(熱交換器周辺の大気)が熱交換器に供給されるので、熱交換器において有効な熱交換(低温媒体の加熱)が行われなくなる。なお、風向きは刻一刻と変化するので、その風向きに応じて熱交換効率が低くなる熱交換器も変化する。
【0005】
本発明の目的は、風に起因する送風機による低温排気の再吸込を抑制可能な熱交換ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する手段として、本発明は、熱交換ユニットであって、少なくとも1つのユニット構成要素と、制御部と、を備え、前記少なくとも1つのユニット構成要素は、一方向に沿って並ぶように配置された複数の熱交換装置を有し、各熱交換装置は、上下方向に流れる気流を形成する送風機と、大気よりも低温の低温媒体と前記気流とを熱交換させることによって前記低温媒体を加熱する熱交換器と、を有し、前記制御部は、前記気流のうち前記熱交換器から流出した低温空気の前記送風機による再吸込が生じているか否かを判定する再吸込判定部と、風向きを判定する風向き判定部と、前記再吸込判定部が前記再吸込が生じていると判定したときに、前記複数の熱交換装置のうち前記風向き判定部により判定された風向きに対して前記一方向について最も風上側に位置する一方向風上装置の送風機の回転数と前記複数の熱交換装置のうち前記風向き判定部により判定された風向きに対して前記一方向について最も風下側に位置する一方向風下装置の送風機の回転数との差又は比に基づいて表される一方向傾きが、前記再吸込判定部が前記再吸込が生じていると判定していない定常時の前記一方向傾きよりも大きくなり、かつ、前記一方向風下装置から前記一方向風上装置に向かうにしたがって次第に前記送風機の回転数が大きくなるように各送風機の回転数を調整する一方向制御を行う風量制御部と、を備える、熱交換ユニットを提供する。
【0007】
本熱交換ユニットでは、再吸込判定部により再吸込が生じていると判定されたときに、一方向傾きが定常時の一方向傾きよりも大きくなり、かつ、一方向風下装置から一方向風上装置に向かうにしたがって次第に送風機の回転数が大きくなるように各送風機の回転数が調整される。そうすると、各熱交換器を通過する気流(低温空気)の流量が、一方向風下装置から一方向風上装置に向かうにしたがって次第に大きくなるので、各熱交換器を通過した低温空気の一部は、一方向風上装置から一方向風下装置に向かう方向に沿って流れる。つまり、熱交換ユニット全体として、一方向風上装置の熱交換器を通過した低温空気が一方向風下装置の熱交換器を通過した低温空気に合流する向きの流れが誘起される。よって、一方向風上装置の熱交換器から流出した後に風上に向かって流れる低温空気の流量が減少するので、風により本熱交換ユニット側に戻される低温空気の流量が減少する。したがって、各送風機(特に一方向風上装置の送風機)による低温空気の再吸込が抑制され、これにより各送風機による空気の吸込温度が上昇する。
【0008】
この場合において、前記少なくとも1つのユニット構成要素は、前記一方向と直交する直交方向に沿って並ぶように配置された第1ユニット構成要素及び第2ユニット構成要素を含み、前記風量制御部は、前記再吸込判定部が前記再吸込が生じていると判定したときに、前記複数の熱交換装置のうち前記風向き判定部により判定された風向きに対して前記直交方向について最も風上側に位置する直交方向風上装置の送風機の回転数と前記複数の熱交換装置のうち前記風向き判定部により判定された風向きに対して前記直交方向について最も風下側に位置する直交方向風下装置の送風機の回転数との差又は比に基づいて表される直交方向傾きが、前記定常時の前記直交方向傾きよりも大きくなり、かつ、前記直交方向風下装置から前記直交方向風上装置に向かうにしたがって次第に前記送風機の回転数が大きくなるように各送風機の回転数を調整する直交方向制御をさらに行うことが好ましい。
【0009】
このようにすれば、低温媒体の加熱量の増大と、各送風機による低温空気の再吸込の抑制と、を両立することができる。具体的に、第1ユニット構成要素及び第2ユニット構成要素の各熱交換器において低温媒体が加熱されるので、低温媒体の加熱量が増大し、しかも、直交方向についても、直交方向風上装置の熱交換器から流出した低温空気の一部が直交方向風下装置の熱交換器から流出した低温空気に合流する向きの流れが誘起されるので、各送風機による低温空気の再吸込が抑制される。
【0010】
さらにこの場合において、前記再吸込判定部は、前記低温空気による外気の冷却の影響を受けない領域の気温から各送風機による空気の吸込温度の平均である平均吸込温度を引いた温度差が規定値よりも大きくなったときに前記再吸込が生じていると判定することが好ましい。
【0011】
このようにすれば、安定的に再吸込が生じたか否かの判定を行うことができ、かつ、季節の変化等に起因する気温の変化が再吸込判定部の判定に与える影響を抑制することができる。具体的に、特定の送風機の吸込温度ではなく前記平均吸込温度を再吸込が生じているか否かの判定基準とすることにより、当該特定の送風機の吸込温度が局所的に高くなっている場合などに起因する誤判定を抑制することができ、また、前記温度差を判定基準とすることにより、特定の温度を判定基準とした場合の外気温の変動に起因する誤判定を抑制することができる。
【0012】
加えて、各ユニット構成要素に含まれる前記熱交換装置の数は、前記ユニット構成要素の数よりも大きく設定されており、前記風量制御部は、前記再吸込判定部が前記再吸込が生じていると判定したときに、前記直交方向制御よりも先に、前記一方向制御として、前記温度差が前記規定値以下となるまで、前記一方向傾きが前記定常時の前記一方向傾きよりも大きくなり、かつ、前記一方向風下装置から前記一方向風上装置に向かうにしたがって次第に前記送風機の回転数が大きくなるように各送風機の回転数を調整する制御を行うことが好ましい。
【0013】
このようにすれば、再吸込が生じている場合に先に直交方向制御を行う場合に比べ、前記温度差をより効率的に規定値に近づけることができる。具体的に、熱交換装置の並び数が多い方が、風上側に位置する熱交換装置の熱交換器から流出した低温空気が風下側に位置する熱交換装置の熱交換器から流出した低温空気へ向かう気流が形成されやすくなる。よって、熱交換装置がより多く並ぶ一方向についての一方向制御を先に行う方が、より効率的に平均吸込温度を上昇させること、すなわち、前記温度差を規定値に近づけることができる。
【0014】
この場合において、前記風量制御部は、前記一方向傾きが予め設定された一方向最大値になるまで前記一方向制御を行っても前記温度差が前記規定値以下にならない場合に前記直交方向制御を行うことが好ましい。
【0015】
このようにすれば、一方向制御において一方向傾きが一方向最大値になったときに直交方向制御が行われるので、効率的に平均吸込温度を上昇させることができる。
【0016】
また、本発明において、前記風量制御部は、前記直交方向制御として、前記温度差が前記規定値以下となるまで、前記直交方向傾きが前記定常時の前記直交方向傾きよりも大きくなり、かつ、前記直交方向風下装置から前記直交方向風上装置に向かうにしたがって次第に前記送風機の回転数が大きくなるように各送風機の回転数を調整する制御を行うことが好ましい。
【0017】
このようにすれば、より確実に平均吸込温度が上昇する。
【0018】
この場合において、前記風量制御部は、前記直交方向傾きが予め設定された直交方向最大値になるまで前記直交方向制御を行っても前記温度差が前記規定値以下にならない場合に、前記直交方向傾きが前記定常時の前記直交方向傾きよりも小さくなり、かつ、前記直交方向風下装置から前記直交方向風上装置に向かうにしたがって次第に前記送風機の回転数が小さくなるように各送風機の回転数を調整する直交方向逆制御を行うことが好ましい。
【0019】
このようにすれば、平均吸込温度をより確実に上昇させることができる。具体的に、直交方向への熱交換装置の並び数は、一方向へのそれよりも小さいので、直交方向傾きを大きくしても平均吸込温度が上昇しない(前記温度差が規定値に近づかない)場合があるが、その場合に直交方向逆制御を行うことにより、平均吸込温度が上昇する可能性がある。よって、平均吸込温度がより確実に上昇する。
【0020】
さらに、前記風量制御部は、前記直交方向傾きが予め設定された直交方向最小値になるまで前記直交方向逆制御を行っても前記温度差が前記規定値以下とならない場合に、各送風機から流出する気流の総流量が増えるように各送風機の回転数を調整する風量増大制御を行うことが好ましい。
【0021】
このようにすれば、再吸込が生じている状態における各熱交換器での低温媒体の加熱量の低下が抑制される。
【0022】
また、本発明において、前記少なくとも1つのユニット構成要素は、前記直交方向に沿って並ぶように配置された第3ユニット構成要素及び第4ユニット構成要素をさらに含み、前記第3ユニット構成要素は、前記一方向に前記第1ユニット構成要素に隣接するように配置されており、前記第4ユニット構成要素は、前記一方向に前記第2ユニット構成要素に隣接するように配置されており、前記風向き判定部は、第1ユニット構成要素の各送風機による空気の吸込温度の平均である第1平均吸込温度、第2ユニット構成要素の各送風機による空気の吸込温度の平均である第2平均吸込温度、第3ユニット構成要素の各送風機による空気の吸込温度の平均である第3平均吸込温度及び第4ユニット構成要素の各送風機による空気の吸込温度の平均である第4平均吸込温度の中で最も低い平均吸込温度を有するユニット構成要素が配置されている場所から当該熱交換ユニットの中心に向かう成分を含む風が吹いていると判定してもよい。
【0023】
このようにすれば、各ユニット構成要素の平均吸込温度を比較するだけで風向きを判定することができる。具体的に、熱交換ユニットに向かって風が吹いた場合、各ユニット構成要素のうち最も風上側に位置するユニット構成要素(風上装置を含むユニット構成要素)の各送風機は、風上装置の熱交換器から側方に向かって流出した後に風により当該熱交換ユニット側に戻された低温空気の再吸込を行いやすい。このため、熱交換ユニットに向かって風が吹いた場合、風上装置を含むユニット構成要素の平均吸込温度が最も低くなる。したがって、風向きは、風上装置を含むユニット構成要素から当該熱交換ユニットの中心に向かう成分を含むと判定することができる。
【0024】
あるいは、前記風向き判定部は、風向計により風向きを判定してもよい。
【0025】
また、本発明において、前記少なくとも1つのユニット構成要素は、前記一方向に沿って前記第1ユニット構成要素及び前記第2ユニット構成要素と並ぶように配置された追加ユニット構成要素をさらに含み、各ユニット構成要素に含まれる前記熱交換装置の数は、前記ユニット構成要素の数よりも大きく設定されていることが好ましい。
【0026】
このようにすれば、一方向及び直交方向の双方における熱交換装置の並び数がともに3以上となるので、一方向制御及び直交方向制御による前記平均吸込温度の上昇効果がより確実に得られる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、風に起因する送風機による低温排気の再吸込を抑制可能な熱交換ユニットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1実施形態の熱交換ユニットについて、
図1〜
図11を参照しながら説明する。本熱交換ユニットは、空気(大気)よりも低温の低温媒体(低温液化ガス、中間媒体等)と空気とを熱交換させることにより低温媒体を加熱する装置である。なお、本熱交換ユニットは、空気で直接低温液化ガスを加熱するために用いられてもよいし、いわゆる中間媒体式の熱交換ユニット(プロパン等の中間媒体により低温液化ガスを加熱する装置)において中間媒体を加熱するために用いられてもよい。
【0030】
図1〜
図3に示されるように、本熱交換ユニットは、複数の熱交換装置20と、制御部70と、を備えている。なお、
図1では、制御部70の図示は省略されている。各熱交換装置20は、互いに同じ形状を有している。
【0031】
複数の熱交換装置20は、複数の行と複数の列とにより形成される行列状に並ぶように配置されている。各行は、一方向に延びており、各列は、前記一方向と直交する直交方向に延びている。本実施形態では、複数の熱交換装置20は、各行に沿って6つの熱交換装置20が並び、かつ、各列に沿って2つの熱交換装置20が並ぶように配置されている。
【0032】
以下、前記一方向と直交する平面であって前記一方向について当該熱交換ユニットの中央を通る仮想的な平面を「一方向中心面P1」といい、前記直交方向と直交する平面であって前記直交方向について当該熱交換ユニットの中央を通る仮想的な平面を「直交方向中心面P2」という。また、一方向中心面P1と直交方向中心面P2とにより区画される4つの領域のうち所定の領域に位置しかつ一方向に沿って並ぶ3つの熱交換装置20をまとめて「第1ユニット構成要素11」という。また、第1ユニット構成要素11と直交方向に隣接しかつ一方向に沿って並ぶ3つの熱交換装置20をまとめて「第2ユニット構成要素12」といい、第1ユニット構成要素11と一方向に隣接しかつ一方向に沿って並ぶ3つの熱交換装置20をまとめて「第3ユニット構成要素13」という。そして、第2ユニット構成要素12と一方向に隣接するとともに第3ユニット構成要素13と直交方向に隣接し、かつ、一方向に沿って並ぶ3つの熱交換装置20をまとめて「第4ユニット構成要素14」という。
【0033】
図2に示されるように、各熱交換装置20は、送風機30と、熱交換器40と、支持部50と、を有している。
【0034】
送風機30は、下向きに流れる気流(下降気流)を形成する。具体的に、送風機30は、円筒状の送風機室32と、送風機室32内に配置されたファン34と、ファン34を駆動するモータ36と、を有する。ファン34は、モータ36が駆動したときに鉛直下向きに流れる下降気流を形成する姿勢で送風機室32内に配置されている。モータ36の回転数は、インバータにより調整可能となっている。
【0035】
熱交換器40は、送風機30により形成された下降気流(空気)と低温媒体とを熱交換させることによって低温媒体の少なくとも一部を蒸発させる。具体的に、熱交換器40は、熱交換室42と、熱交換室42内に配置された伝熱管44と、を有する。
【0036】
熱交換室42は、四角筒状に形成されている。熱交換室42の上端は、中空状の連結部38を介して送風機室32の下端に接続されている。このため、送風機30により形成された気流は、熱交換室42内を通って当該熱交換室42の下方に向かう。
【0037】
伝熱管44内には、低温媒体(低温液化ガスや中間媒体)が流れる。熱交換室42内において伝熱管44に前記気流が接触することにより、つまり、前記気流と低温媒体とが熱交換することにより、伝熱管44内を流れる低温媒体の少なくとも一部が蒸発する。本実施形態では、互いに隣接する熱交換装置20の一方側(
図2の右側)の伝熱管44と他方側(
図2の左側)の伝熱管44とは、互いに連通するように形成されている。また、前記一方側の伝熱管44は、熱交換室42内で折り返されている。
【0038】
支持部50は、熱交換器40を地面から上方に離間した位置に支持する。具体的に、支持部50は、熱交換室42の中心軸が鉛直方向と平行となる姿勢で当該熱交換室42を支持している。なお、送風機室32の中心軸も、鉛直方向と平行な姿勢となる。
【0039】
本実施形態では、熱交換室42の外側面に、踏み板60が接続されている。踏み板60は、網状に形成されており、熱交換室42の外側面の上端に接続されている。この踏み板60は、当該踏み板60上を人が歩くことができる程度の強度に設定される。
【0040】
制御部70は、再吸込判定部72と、風向き判定部74と、風量制御部76と、を有する。
【0041】
再吸込判定部72は、送風機30により形成された気流のうち熱交換器40から流出した低温空気の送風機30による再吸込が生じているか否かを判定する。本実施形態では、再吸込判定部72は、前記低温空気による外気の冷却の影響を受けない領域(前記低温空気による外気の冷却効果が生じる領域から離れた領域)の気温Tairから、各送風機30による空気の吸込温度の平均である平均吸込温度Tavを引いた温度差ΔTが、規定値Teよりも大きくなったときに再吸込が生じていると判定する。規定値Teは、低温媒体の処理量(各熱交換器40における低温媒体の加熱量)が一定以上に確保される値に設定される。
【0042】
前記気温Tairは、例えば、本熱交換ユニットから側方に20m〜30m離間した位置の気温、本熱交換ユニットから側方に離間した位置に設置される制御室周辺の気温、あるいは、地面から熱交換装置20の上下方向の寸法の2倍以上の高さ位置の気温を指す。各送風機30による空気の吸込温度は、送風機室32内に設けられた温度センサ80により検出される。温度センサ80は、ファン34の回転軸の延長線上に位置するように配置されることが好ましい。
【0043】
風向き判定部74は、本熱交換ユニット(第1ユニット構成要素11〜第4ユニット構成要素14)に向かって吹く風の向きを判定する。本実施形態では、風向き判定部74は、第1平均吸込温度Tav1、第2平均吸込温度Tav2、第3平均吸込温度Tav3及び第4平均吸込温度Tav4に基づいて風向きを判定する。第1平均吸込温度Tav1は、第1ユニット構成要素11の各送風機30による空気の吸込温度の平均である。第2平均吸込温度Tav2は、第2ユニット構成要素12の各送風機30による空気の吸込温度の平均である。第3平均吸込温度Tav3は、第3ユニット構成要素13の各送風機30による空気の吸込温度の平均である。第4平均吸込温度Tav4は、第4ユニット構成要素14の各送風機30による空気の吸込温度の平均である。具体的に、風向き判定部74は、第1平均吸込温度Tav1から第4平均吸込温度Tav4の中で最も低い温度を有するユニット構成要素から当該熱交換ユニットの中心O(一方向中心面P1と直交方向中心面P2との交点)に向かう成分を含むと判定する。この判定が可能な理由は、以下のとおりである。すなわち、熱交換ユニットに向かって風が吹いた場合、複数の熱交換装置20のうち最も風上側に位置する風上装置の熱交換器40から流出した後に風上に向かって側方に流れた低温空気は、風により当該熱交換ユニット側に戻されるので、特に風上装置の送風機30がその低温空気の再度吸い込みやすい。このため、熱交換ユニットに向かって風が吹いた場合、前記風上装置を含むユニット構成要素の平均吸込温度が、第1平均吸込温度Tav1から第4平均吸込温度Tav4の中で最も低くなる。したがって、風向きは、前記風上装置を含むユニット構成要素から当該熱交換ユニットの中心Oに向かう成分を含むと判定することができる。なお、風向きは、風向計で判定してもよい。
【0044】
風量制御部76が行う制御には、一方向制御と、直交方向制御と、直交方向逆制御と、風量増大制御と、が含まれる。
【0045】
一方向制御は、再吸込判定部72が再吸込が生じていると判定したときに、一方向傾きAが、再吸込判定部72が再吸込が生じていると判定していない定常時の一方向傾きAよりも大きくなり、かつ、一方向風下装置から一方向風上装置に向かうにしたがって次第に送風機30の回転数が大きくなるように、各送風機30の回転数を調整する制御である。一方向傾きAは、一方向風上装置の送風機30の回転数から一方向風下装置の送風機30の回転数を引いた値を、一方向風上装置と一方向風下装置との間の距離(各ファン34の回転軸間距離)で除した値である。ただし、一方向傾きAとして、一方向風上装置の送風機30の回転数から一方向風下装置の送風機30の回転数を引いた回転数差が用いられてもよい。一方向風上装置は、複数の熱交換装置20のうち風向き判定部74により判定された風向きに対して一方向について最も風上側に位置する熱交換装置20である。一方向風下装置は、複数の熱交換装置20のうち風向き判定部74により判定された風向きに対して一方向について最も風下側に位置する熱交換装置20である。
【0046】
本実施形態では、風量制御部76は、一方向制御として、一方向傾きAが予め設定された一方向最大値Amax以下の範囲内において、前記温度差ΔTが規定値Te以下となるまで、一方向傾きAが前記定常時の一方向傾きAよりも大きくなり、かつ、一方向風下装置から一方向風上装置に向かうにしたがって次第に送風機30の回転数が大きくなるように、各送風機30の回転数を調整する制御を行う。一方向最大値Amaxは、一方向風上装置の送風機30の回転数の最大値から一方向風下装置の送風機30の回転数の最小値を引いた値を、一方向風上装置と一方向風下装置との間の距離で除した値である。送風機30の最大値及び最小値は、当該送風機30の定格(モータ36の回転数の可変範囲)に依存する。
【0047】
ここで、
図4を参照しながら、一方向制御の内容を説明する。
図4は、一方向に沿って(熱交換ユニットの右側から左側に向かって)熱交換ユニットに対して風が吹いており、再吸込判定部72により再吸込が生じていると判定された場合において、風量制御部76が一方向制御を行った後の状態の一例を示している。
図4の例では、第1ユニット構成要素11のうち最も風上側に位置する熱交換装置20及び第2ユニット構成要素12のうち最も風上側に位置する熱交換装置20が、それぞれ「一方向風上装置」に相当する。そして、第3ユニット構成要素13のうち最も風下側に位置する熱交換装置20及び第4ユニット構成要素14のうち最も風下側に位置する熱交換装置20が、それぞれ「一方向風下装置」に相当する。
図4に示されるように、風量制御部76が一方向制御を行うことにより、各送風機30の回転数は、風下側から風上側に向かうにしたがって次第に大きくなる。なお、
図4において各送風機30内に示されている数字は、モータ36の回転数である。また、風量制御部76が一方向制御を行っていないときの各モータ36の回転数は、例えば全て100%であったとする。
【0048】
風量制御部76は、すべての送風機30の回転数の平均が100%となるように各送風機30の回転数を調整することが好ましい。
【0049】
直交方向制御は、再吸込判定部72が再吸込が生じていると判定したときに、直交方向傾きBが前記定常時の直交方向傾きBよりも大きくなり、かつ、直交方向風下装置から直交方向風上装置に向かうにしたがって次第に送風機30の回転数が大きくなるように、各送風機30の回転数を調整する制御である。直交方向傾きBは、直交方向風上装置の送風機30の回転数から直交方向風下装置の送風機30の回転数を引いた値を、直交方向風上装置と直交方向風下装置との間の距離で除した値である。ただし、直交方向傾きBとして、直交方向風上装置の送風機30の回転数から直交方向風下装置の送風機30の回転数を引いた回転数差が用いられてもよい。直交方向風上装置は、複数の熱交換装置20のうち風向き判定部74により判定された風向きに対して直交方向について最も風上側に位置する熱交換装置20である。直交方向風下装置は、複数の熱交換装置20のうち風向き判定部74により判定された風向きに対して直交方向について最も風下側に位置する熱交換装置20である。
【0050】
本実施形態では、風量制御部76は、直交方向制御として、直交方向傾きBが予め設定された直交方向最大値Bmax以下の範囲内において、前記温度差ΔTが規定値Te
以下となるまで、直交方向傾きBが前記定常時の直交方向傾きBよりも大きくなり、かつ、直交方向風下装置から直交方向風上装置に向かうにしたがって次第に送風機30の回転数が大きくなるように、各送風機30の回転数を調整する制御を行う。直交方向最大値Bmaxは、直交方向風上装置の送風機30の回転数の最大値から直交方向風下装置の送風機30の回転数の最小値を引いた値を、直交方向風上装置と直交方向風下装置との間の距離で除した値である。
【0051】
ここで、
図5を参照しながら、直交方向制御の内容を説明する。
図5は、直交方向に沿って(熱交換ユニットの正面から背面に向かって)熱交換ユニットに対して風が吹いており、再吸込判定部72により再吸込が生じていると判定された場合において、風量制御部76が直交方向制御を行った後の状態の一例を示している。
図5の例では、第2ユニット構成要素12の各熱交換装置20及び第4ユニット構成要素14の各熱交換装置20がそれぞれ「直交方向風上装置」に相当し、第1ユニット構成要素11の各熱交換装置20及び第3ユニット構成要素13の各熱交換装置20がそれぞれ「直交方向風下装置」に相当する。
図5に示されるように、風量制御部76が直交方向制御を行うことにより、各送風機30の回転数は、風下側から風上側に向かうにしたがって次第に大きくなる。なお、
図5においても、風量制御部76が直交方向制御を行っていないときの各モータ36の回転数は、例えば全て100%であったとする。
【0052】
続いて、
図6を参照しながら、風が一方向と平行な成分及び直交方向と平行な成分の双方を含んでいる場合における風量制御部76の制御について説明する。
図6は、熱交換ユニットの正面右側から背面左側に向かって当該熱交換ユニットに対して風が吹いており、再吸込判定部72により再吸込が生じていると判定された場合において、風量制御部76が一方向制御及び直交方向制御を行った後の状態の一例を示している。
図6の例では、第1ユニット構成要素11のうち最も風上側に位置する熱交換装置20及び第2ユニット構成要素12のうち最も風上側に位置する熱交換装置20が、それぞれ「一方向風上装置」に相当する。そして、第3ユニット構成要素13のうち最も風下側に位置する熱交換装置20及び第4ユニット構成要素14のうち最も風下側に位置する熱交換装置20が、それぞれ「一方向風下装置」に相当する。また、第2ユニット構成要素12の各熱交換装置20及び第4ユニット構成要素14の各熱交換装置20がそれぞれ「直交方向風上装置」に相当し、第1ユニット構成要素11の各熱交換装置20及び第3ユニット構成要素13の各熱交換装置20がそれぞれ「直交方向風下装置」に相当する。
図6に示されるように、風量制御部76が一方向制御及び直交方向制御の双方を行うことにより、各送風機30の回転数は、一方向及び直交方向の双方について、風下側から風上側に向かうにしたがって次第に大きくなる。この例では、風量制御部76は、一方向に沿って並ぶ6つの熱交換装置20の各送風機30の回転数が、風下側から風上側に向かって10%ずつ単調に増加するように各送風機30の回転数を調整し、かつ、直交方向に沿って並ぶ2つの熱交換装置20の各送風機30の回転数が、風下側から風上側に向かって10%増加するように各送風機30の回転数を調整している。ただし、一方向制御は、風下側から風上側に向かって単調に増加するように各送風機30の回転数を調整する制御に限られない。なお、
図6においても、風量制御部76が一方向制御及び直交方向制御を行っていないときの各モータ36の回転数は、例えば全て100%であったとする。
【0053】
直交方向逆制御は、直交方向傾きBが直交方向最大値Bmaxになるまで直交方向制御を行っても前記温度差ΔTが規定値Te
以下にならない場合に、直交方向傾きBが前記定常時の直交方向傾きBよりも小さくなり、かつ、直交方向風下装置から直交方向風上装置に向かうにしたがって次第に送風機30の回転数が小さくなるように各送風機30の回転数を調整する制御である。
【0054】
本実施形態では、風量制御部76は、直交方向逆制御として、直交方向傾きBが直交方向最小値Bmin以上の範囲内において、前記温度差ΔTが規定値Te
以下となるまで、直交方向傾きBが前記定常時の直交方向傾きBよりも小さくなり、かつ、直交方向風下装置から直交方向風上装置に向かうにしたがって次第に送風機30の回転数が小さくなるように、各送風機30の回転数を調整する制御を行う。直交方向最小値Bminは、直交方向風上装置の送風機30の回転数の最小値から直交方向風下装置の送風機30の回転数の最大値を引いた値を直交方向風上装置と直交方向風下装置との間の距離で除した値である。
【0055】
風量増大制御は、直交方向傾きBが直交方向最小値Bminになるまで直交方向逆制御を行っても前記温度差ΔTが規定値Te
以下とならない場合に、各送風機30から流出する気流の総流量が増えるように各送風機30の回転数を上げる制御である。
【0056】
以下、制御部70の具体的な制御内容について、
図7〜
図9を参照しながら説明する。
【0057】
熱交換ユニットの運転が開始されると、まず、制御部70は、前記気温Tairから平均吸込温度Tavを引いた温度差ΔTを算出する(ステップS11)。次に、制御部70(再吸込判定部72)は、その温度差ΔTが規定値Teよりも大きいか否かを判定する(ステップS12)。
【0058】
この結果、温度差ΔTが規定値Te未満であれば(ステップS12でNO)、すなわち、低温媒体の処理量が一定以上確保されていれば、制御部70は、温度差ΔTが判定値Te2未満か否かを判定する(ステップS13)。判定値Te2は、規定値Teよりも小さな値であって、低温媒体の処理量が十分に確保される値に設定される。
【0059】
ステップS13において、温度差ΔTが判定値Te2未満であれば(ステップS13でYES)、すなわち、低温媒体の処理量が十分に確保されていれば、制御部70は、各送風機30の回転数を下げ(ステップS14)、ステップS11に戻る。これにより、低温媒体の処理量を十分に確保しつつ各送風機30の駆動に必要な動力を低減することができる。一方、ステップS13において、温度差ΔTが判定値Te2以上であれば(ステップS13でNO)、制御部70は、ステップS11に戻る。
【0060】
そして、ステップS12において、温度差ΔTが規定値Te以上であれば(ステップS12でYES)、すなわち、再吸込判定部72によって各送風機30による低温空気の再吸込が生じていると判定されれば、制御部70(風向き判定部74)は、第1平均吸込温度Tav1〜第4平均吸込温度Tav4に基づいて風向きを判定する(ステップS15)。続いて、制御部70は、ステップS15において風向き判定部74が判定した風向きに基づいて、一方向傾きAの正負及び直交方向傾きBの正負を決定する(ステップS16)。
【0061】
次に、制御部70(風量制御部76)は、一方向制御を行う。具体的に、制御部70は、まず、現在の温度差ΔTを第1温度差ΔT1とする(ステップS17)。そして、制御部70は、一方向傾きAを風上側に大きくする(ステップS18)。その後、制御部70は、再び温度差ΔT(=前記気温Tair−現在の平均吸込温度Tav)を算出し(ステップS19)、その温度差ΔTが第1温度差ΔT1未満か否か、すなわち、ステップS18を経ることによって平均吸込温度Tavが上昇したか否か、を判定する(ステップS20)。
【0062】
この結果、温度差ΔTが第1温度差ΔT1未満であれば(ステップS20でYES)、制御部70は、温度差ΔTが規定値Te以下か否かを判定する(ステップS21)。この結果、温度差ΔTが規定値Te以下であれば(ステップS21でYES)、制御部70は、ステップS11に戻る。一方、温度差ΔTが規定値Teよりも大きい場合(ステップS21でNO)、制御部70は、一方向傾きAが一方向最大値Amaxか否かを判定する(ステップS22)。
【0063】
この結果、一方向傾きAが一方向最大値Amaxではない場合(ステップS22でNO)、つまり、一方向傾きAが一方向最大値Amax未満の場合、制御部70は、ステップS17に戻る。
【0064】
一方、一方向傾きAが一方向最大値Amaxである場合(ステップS22でYES)、あるいは、ステップS20において、温度差ΔTが第1温度差ΔT1以上の場合(ステップS20でNO)、すなわち、ステップS18を経ることによって平均吸込温度Tavが低下した場合、制御部70は、直交方向制御を行う。具体的には、次のとおりである。
【0065】
制御部70は、まず、現在の直交方向傾きBを第1直交方向傾きB1とする(ステップS23)。次に、制御部70は、現在の温度差ΔTを第2温度差ΔT2とする(ステップS24)。そして、制御部70は、直交方向傾きBを風上側に大きくする(ステップS25)。
【0066】
その後、制御部70は、再び温度差ΔT(=前記気温Tair−現在の平均吸込温度Tav)を算出し(ステップS26)、その温度差ΔTが第2温度差ΔT2未満か否か、すなわち、ステップS25を経ることによって平均吸込温度Tavが上昇したか否か、を判定する(ステップS27)。
【0067】
この結果、温度差ΔTが第2温度差ΔT2未満であれば(ステップS27でYES)、制御部70は、温度差ΔTが規定値Te以下か否かを判定する(ステップS28)。この結果、温度差ΔTが規定値Te以下であれば(ステップS28でYES)、制御部70は、ステップS11に戻る。一方、温度差ΔTが規定値Teよりも大きい場合(ステップS28でNO)、制御部70は、直交方向傾きBが直交方向最大値Bmaxか否かを判定する(ステップS29)。
【0068】
この結果、直交方向傾きBが直交方向最大値Bmaxではない場合(ステップS29でNO)、つまり、直交方向傾きBが直交方向最大値Bmax未満の場合、制御部70は、ステップS24に戻る。
【0069】
一方、直交方向傾きBが直交方向最大値Bmaxである場合(ステップS29でYES)、制御部70は、風量増大制御を行う。具体的には、制御部70は、各送風機30のうち回転数を上げることが可能なものについて、均等な割合で回転数を上げ(ステップS30)、ステップS11に戻る。
【0070】
また、ステップS27において、温度差ΔTが第2温度差ΔT2以上の場合(ステップS27でNO)、すなわち、ステップS25を経ることによって平均吸込温度Tavが低下した場合、制御部70は、直交方向傾きBが直交方向最大値Bmaxであるか否かを判定する(ステップS31)。
【0071】
この結果、直交方向傾きBが直交方向最大値Bmaxではない場合(ステップS31でNO)、制御部70は、ステップS24に戻る。一方、直交方向傾きBが直交方向最大値Bmaxである場合(ステップS31でYES)、制御部70は、直交方向逆制御を行う。具体的には、次のとおりである。
【0072】
制御部70は、まず、現在の直交方向傾きBを第1直交方向傾きB1に戻す(ステップS32)。これは、より早期に直交方向傾きBを小さくするためである。次に、制御部70は、現在の温度差ΔTを第3温度差ΔT3とする(ステップS33)。そして、制御部70は、直交方向傾きBを風下側に大きくする(ステップS34)。
【0073】
その後、制御部70は、再び温度差ΔT(=前記気温Tair−現在の平均吸込温度Tav)を算出し(ステップS35)、その温度差ΔTが第3温度差ΔT3未満か否か、すなわち、ステップS34を経ることによって平均吸込温度Tavが上昇したか否か、を判定する(ステップS36)。
【0074】
この結果、温度差ΔTが第3温度差ΔT3未満であれば(ステップS36でYES)、制御部70は、温度差ΔTが規定値Te以下か否かを判定する(ステップS37)。この結果、温度差ΔTが規定値Te以下であれば(ステップS37でYES)、制御部70は、ステップS11に戻る。一方、温度差ΔTが規定値Teよりも大きい場合(ステップS37でNO)、制御部70は、直交方向傾きBが直交方向最小値Bminか否かを判定する(ステップS38)。
【0075】
この結果、直交方向傾きBが直交方向最小値Bminではない場合(ステップS38でNO)、つまり、直交方向傾きBが直交方向最小値Bminよりも大きい場合、制御部70は、ステップS33に戻る。
【0076】
一方、直交方向傾きBが直交方向最小値Bminである場合(ステップS38でYES)、制御部70は、ステップS30に戻り、風量増大制御を行う。
【0077】
また、ステップS36において、温度差ΔTが第3温度差ΔT3以上の場合(ステップS36でNO)、すなわち、ステップS34を経ることによって平均吸込温度Tavが低下した場合、制御部70は、直交方向傾きBが直交方向最小値Bminであるか否かを判定する(ステップS39)。
【0078】
この結果、直交方向傾きBが直交方向最小値Bminではない場合(ステップS39でNO)、制御部70は、ステップS33に戻る。一方、直交方向傾きBが直交方向最小値Bminである場合(ステップS39でYES)、制御部70は、現在の直交方向傾きBを第1直交方向傾きB1に戻した後(ステップS40)、ステップS30に戻り、直交方向逆制御を行う。
【0079】
次に、本熱交換ユニットの動作を説明する。
【0080】
まず、熱交換ユニット本ユニットの運転が開始される。このときの各送風機30の回転数は、例えば100%に設定される。
【0081】
本ユニットの運転が開始されると、それぞれの熱交換装置20において下向きの気流が形成され、この気流が伝熱管44と接触することにより低温媒体が加熱される。そして、
図2に示されるように、熱交換器40において熱交換した後の気流(伝熱管44に接触することより冷却された低温空気)は、地面に衝突したのち、側方(熱交換ユニットから離間する方向)に向かって流れる。
【0082】
ここで、本熱交換ユニットに向かって風が吹くと、熱交換器40を通過した気流のうち風上に向かって側方に流れた低温空気が風により当該熱交換ユニット側に戻されることによって送風機30がその低温空気を再度吸い込む場合がある。この場合、平均吸込温度Tav、すなわち、低温媒体の加熱量が低下する。
【0083】
本実施形態では、再吸込判定部72により再吸込が生じていると判定されたときに、風量制御部76は、一方向制御を行う。すなわち、一方向傾きAが、再吸込判定部72により再吸込が生じていると判定されていない定常時の一方向傾きAよりも大きくなり、かつ、一方向風下装置から一方向風上装置に向かうにしたがって次第に送風機30の回転数が大きくなるように各送風機30の回転数が調整される。そうすると、各熱交換器40を通過する気流(低温空気)の流量が、一方向風下装置から一方向風上装置に向かうにしたがって次第に大きくなるので、
図3に示されるように、各熱交換器40を通過した低温空気の一部は、一方向風上装置から一方向風下装置に向かう方向に沿って流れる。つまり、熱交換ユニット全体として、一方向風上装置の熱交換器40を通過した低温空気が一方向風下装置の熱交換器40を通過した低温空気に合流する向きの流れが誘起される。よって、一方向風上装置の熱交換器40から流出した後に風上に向かって流れる低温空気の流量が減少するので、風により本熱交換ユニット側に戻される低温空気の流量が減少する。したがって、各送風機30(特に一方向風上装置の送風機30)による低温空気の再吸込が抑制され、これにより各送風機30による空気の吸込温度が上昇する。
【0084】
また、本実施形態では、風量制御部76は、一方向制御に加え、直交方向制御をも行う。このため、より確実に各送風機30による低温空気の再吸込を抑制することができる。具体的に、直交方向についても、直交方向風上装置の熱交換器40から流出した低温空気の一部が直交方向風下装置の熱交換器40から流出した低温空気に合流する向きの流れが誘起されるので、各送風機30による低温空気の再吸込が抑制される。
【0085】
また、本実施形態では、再吸込判定部72は、低温空気による外気の冷却の影響を受けない領域の気温Tairから平均吸込温度Tavを引いた温度差ΔTが規定値Teよりも大きくなったときに再吸込が生じていると判定する。このため、安定的に再吸込が生じたか否かの判定を行うことができ、かつ、季節の変化等に起因する気温の変化が再吸込判定部72の判定に与える影響を抑制することができる。具体的に、特定の送風機の吸込温度ではなく平均吸込温度Tavを再吸込が生じているか否かの判定基準とすることにより、当該特定の送風機の吸込温度が局所的に高くなっている場合などに起因する誤判定を抑制することができ、また、温度差ΔTを判定基準とすることにより、特定の温度を判定基準とした場合の外気温の変動に起因する誤判定を抑制することができる。
【0086】
さらに、風量制御部76は、再吸込判定部72が再吸込が生じていると判定したときに、直交方向制御よりも先に、一方向制御として、温度差ΔTが規定値Te以下となるまで、一方向傾きAが定常時の一方向傾きAよりも大きくなり、かつ、一方向風下装置から一方向風上装置に向かうにしたがって次第に送風機30の回転数が大きくなるように各送風機30の回転数を調整する制御を行う。このため、再吸込が生じている場合に先に直交方向制御を行う場合に比べ、温度差ΔTをより効率的に規定値Teに近づけることができる。具体的に、熱交換装置20の並び数が多い方が、風上側に位置する熱交換装置20の熱交換器40から流出した低温空気が風下側に位置する熱交換装置20の熱交換器40から流出した低温空気へ向かう気流が安定的に形成されるため、熱交換装置20がより多く並ぶ一方向についての一方向制御を先に行う方が、より効率的に平均吸込温度Tavを上昇させること、すなわち、温度差ΔTを規定値Teに近づけることができる。
【0087】
また、一方向傾きAが大きくなるにしたがって、一方向風上装置の熱交換器40から流出した低温空気が一方向風下装置の熱交換器40から流出した低温空気へ向かう気流の形成が安定し、これにより平均吸込温度Tavの上昇効果が高まるので、直交方向傾きBよりも先に一方向傾きAを大きくすることにより、早期に温度差ΔTが規定値Teに近づく。
【0088】
この点につき、
図10及び
図11を参照しながら説明する。
図10は、第1ユニット構成要素11(一方向に沿って並ぶ3つの熱交換装置20)に対して一方向に沿って風速3m/sの風が吹いた場合の第1ユニット構成要素11の各送風機30の回転数比と第1平均吸込温度Tav1との関係を示すグラフである。
図11は、第1ユニット構成要素11に対して一方向に沿って風速10m/sの風が吹いた場合の第1ユニット構成要素11の各送風機30の回転数比と第1平均吸込温度Tav1との関係を示すグラフである。前記回転数比は、第1ユニット構成要素11に含まれる3つ熱交換装置20のうちの中央の熱交換装置20の送風機30の回転数に対する、風上側に位置する熱交換装置20の送風機30の回転数の比である。また、第1ユニット構成要素11に含まれる3つ熱交換装置20のうちの風下側に位置する熱交換装置20の送風機30に対する、中央の熱交換装置20の送風機30の回転数の比も、前記回転数比に設定されている。
図10及び
図11に示されるように、回転数比が1.00よりも大きくなるほど、つまり、一方向傾きAが大きくなるほど、第1平均吸込温度Tav1が上昇している。
【0089】
また、本実施形態では、風量制御部76は、一方向傾きAが一方向最大値Amaxになるまで一方向制御を行っても温度差ΔTが規定値Te以下にならない場合に直交方向制御を行う。この態様では、一方向制御において一方向傾きAが一方向最大値Amaxになった後に直交方向制御が行われるので、効率的に平均吸込温度を上昇させることができる。
【0090】
また、風量制御部76は、直交方向制御として、温度差ΔTが規定値Te以下となるまで、直交方向傾きBが定常時の直交方向傾きBよりも大きくなり、かつ、直交方向風下装置から直交方向風上装置に向かうにしたがって次第に送風機30の回転数が大きくなるように各送風機30の回転数を調整する制御を行う。よって、より確実に平均吸込温度が上昇する。
【0091】
さらに、風量制御部76は、直交方向傾きBが直交方向最大値Bmaxになるまで直交方向制御を行っても温度差ΔTが規定値Te以下にならない場合に、直交方向逆制御を行う。これにより、直交方向傾きBが定常時の直交方向傾きBよりも小さくなり、かつ、直交方向風下装置から直交方向風上装置に向かうにしたがって次第に送風機30の回転数が小さくなるように各送風機30の回転数が調整される。このため、平均吸込温度Tavをより確実に上昇させることができる。具体的に、直交方向への熱交換装置20の並び数は、一方向へのそれよりも小さいので、直交方向傾きBを大きくしても平均吸込温度Tavが上昇しない(温度差ΔTが規定値Teに近づかない)場合があるが、その場合に直交方向逆制御を行うことにより、平均吸込温度Tavが上昇する可能性がある。よって、平均吸込温度Tavの上昇確率が高まる。
【0092】
さらに、風量制御部76は、直交方向傾きBが直交方向最小値Bminになるまで直交方向逆制御を行っても温度差ΔTが規定値Te以下とならない場合に、各送風機30から流出する気流の総流量が増えるように各送風機30の回転数を調整する風量増大制御を行う。このため、再吸込が生じている状態における各熱交換器20での低温媒体の加熱量の低下が抑制される。
【0093】
また、本実施形態では、風向き判定部74は、第1平均吸込温度Tav1から第4平均吸込温度Tav4の中で最も低い温度を有するユニット構成要素から当該熱交換ユニットの中心Oに向かう成分を含むと判定する。この態様では、各ユニット構成要素11〜14の平均吸込温度を比較するだけで風向きを判定することができる。
【0094】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0095】
例えば、再吸込判定部72は、前記気温Tairから平均吸込温度Tavを引いた温度差ΔTではなく、前記気温Tairから各送風機30による空気の吸込温度のうち最も高い温度を引いた温度差が規定値Teを下回ったときに再吸込が生じていると判定してもよい。
【0096】
あるいは、再吸込判定部72は、風向計により風向きが検知され、かつ、その風向計が示す風向きに対して風下に位置する風下装置の送風機30の吸込温度から風上に位置する風上装置の送風機30の吸込温度を引いた値が閾値以上となったときに、再吸込が生じていると判定してもよい。
【0097】
また、一方向傾きAの算出には、風上装置の送風機30の回転数から風下装置の送風機30の回転数を引いた値ではなく、風上装置の送風機30の回転数の風下装置の送風機30の回転数に対する比が用いられてもよい。このことは、直交方向傾きBについても同様である。
【0098】
また、熱交換ユニットは、前記直交方向に沿って第1ユニット構成要素11及び第2ユニット構成要素12と並ぶように配置された追加ユニット構成要素と、前記直交方向に沿って第3ユニット構成要素13及び第4ユニット構成要素14と並ぶように配置された他の追加ユニット構成要素と、さらに含んでもよい。このようにすれば、一方向及び直交方向の双方における熱交換装置20の並び数がともに3以上となるので、一方向制御及び直交方向制御による平均吸込温度Tavの上昇効果がより確実に得られる。ただし、熱交換ユニットは、単一のユニット構成要素のみにより構成されてもよい。また、ユニット構成要素は、2つの熱交換装置20により構成されてもよい。