特許第6557563号(P6557563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557563
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/124 20170101AFI20190729BHJP
   B29C 64/129 20170101ALI20190729BHJP
   B29C 64/135 20170101ALI20190729BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20190729BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20190729BHJP
【FI】
   B29C64/124
   B29C64/129
   B29C64/135
   B29C64/245
   B33Y30/00
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-181759(P2015-181759)
(22)【出願日】2015年9月15日
(65)【公開番号】特開2017-56591(P2017-56591A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 純
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−522450(JP,A)
【文献】 特開2013−043338(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/106040(WO,A1)
【文献】 特開2011−178050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 − 64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射により硬化する液体の光硬化性樹脂を用いて三次元造形物を造形する三次元造形装置であって、
前記光硬化性樹脂を貯留し、少なくとも底部が光透過性材料で形成された樹脂槽と、
前記樹脂槽の下方に配置され、前記樹脂槽の前記底部を介して前記光硬化性樹脂に光を照射する第1光学装置と、
前記樹脂槽の上方に配置され、下降したときに前記樹脂槽内の前記光硬化性樹脂に浸漬し、上昇するときに前記光が照射されて前記光硬化性樹脂が仮硬化した光硬化性樹脂層を吊り上げて保持する樹脂層保持部材と、
前記樹脂層保持部材を昇降させる第1駆動部と、
前記樹脂層保持部材を水平移動させる第2駆動部と、
前記第1駆動部の動作および前記第2駆動部の動作をそれぞれ制御する制御装置と、
光硬化型インクを吐出するインクヘッドと、
光透過性材料で形成され、前記インクヘッドにより吐出された前記光硬化型インクを受け、前記光硬化型インクが前記第1光学装置または他の光学装置からの光により仮硬化して形成されたインク層を保持する転写部材と、を備え、
前記制御装置は、前記仮硬化した状態の前記インク層を保持する前記転写部材に対して前記仮硬化した状態の前記光硬化性樹脂層を保持する前記樹脂層保持部材を相対的に移動させて前記仮硬化した状態の前記光硬化性樹脂層を前記仮硬化した状態の前記インク層に押し付けることにより前記光硬化性樹脂層に前記インク層を転写するように構成されている、三次元造形装置。
【請求項2】
前記樹脂槽の下方の位置と前記転写部材の下方の位置との間で前記第1光学装置を移動させる第3駆動部をさらに備え、
前記制御装置は、前記第3駆動部を制御することによって、前記第1光学装置を前記転写部材の下方の位置に移動させ、
前記第1光学装置は、前記インク層が転写された前記光硬化性樹脂層に光を照射することにより前記インク層および前記光硬化性樹脂層をそれぞれ本硬化させるように構成されている、請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項3】
前記転写部材の下方に前記他の光学装置として配置され、前記転写部材に吐出された前記光硬化型インクに光を照射する第2光学装置をさらに備え、
前記第1光学装置により前記光硬化性樹脂に光を照射して当該光硬化性樹脂を仮硬化する際の照射期間と、前記第2光学装置により前記光硬化型インクに光を照射して当該光硬化型インクを仮硬化する際の照射期間とが、少なくとも一部重なっている、請求項1または2に記載の三次元造形装置。
【請求項4】
前記インクヘッドを前記転写部材に近接させまたは前記転写部材から離反させる第4駆動部をさらに備え、
前記制御装置は、前記光硬化性樹脂層に前記インク層を転写する前に、前記第4駆動部により前記インクヘッドを退避させるように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の三次元造形装置。
【請求項5】
前記仮硬化とは、前記光硬化性樹脂層を前記インク層に押し付けた際に、前記光硬化性樹脂層と前記インク層とが接合される状態である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の三次元造形装置。
【請求項6】
前記転写部材は、プレートである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の三次元造形装置。
【請求項7】
前記転写部材は、回転自在のローラである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の三次元造形装置。
【請求項8】
前記転写部材は、フィルムである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形物を造形する三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、可視光または紫外光などの光を照射することにより硬化する光硬化性樹脂を用いて三次元造形物を造形する三次元造形装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような三次元造形装置により三次元造形物を造形するには、まず造形物保持板を下降させ、槽に貯留された光硬化性樹脂に浸漬させる。そして、光硬化性樹脂を貯留する槽に対して光学装置により光を照射する。これにより、光を受けた光硬化性樹脂が硬化し、一層目の樹脂層が形成される。その後、造形物保持板が上方に移動し、当該造形物保持板の移動により生じた、前記樹脂層と槽との隙間に光硬化性樹脂が流れ込む。この光硬化性樹脂に対して光学装置により光が照射されると、光を受けた光硬化性樹脂が硬化し、一層目の樹脂層上に二層目の樹脂層が形成される。以後、同様の動作が繰り返され、所望の形状を有する三次元造形物が造形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−89364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば三次元造形物を造形ヘッドにより造形し、インクヘッドにより当該三次元造形物に対して着色を行う三次元造形装置がある。しかしながら、このような三次元造形装置では、液滴により造形物を形成するため、液滴と液滴との間に隙間が生じてしまう。特に、層と層との境界においては大きな段差が生じている場合があり、境界付近の着色は困難であった。そのため、三次元造形物の品質を向上することが求められていた。また、三次元造形物の処理速度をより上げることができる三次元造形装置が望まれている現状があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、三次元造形物の品質を向上することができ、処理速度を上げることができる三次元造形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る三次元造形装置は、光の照射により硬化する液体の光硬化性樹脂を用いて三次元造形物を造形する三次元造形装置であって、前記光硬化性樹脂を貯留し、少なくとも底部が光透過性材料で形成された樹脂槽と、前記樹脂槽の下方に配置され、前記樹脂槽の前記底部を介して前記光硬化性樹脂に光を照射する第1光学装置と、前記樹脂槽の上方に配置され、下降したときに前記樹脂槽内の前記光硬化性樹脂に浸漬し、上昇するときに前記光が照射されて前記光硬化性樹脂が仮硬化した光硬化性樹脂層を吊り上げて保持する樹脂層保持部材と、前記樹脂層保持部材を昇降させる第1駆動部と、前記樹脂層保持部材を水平移動させる第2駆動部と、前記第1駆動部の動作および前記第2駆動部の動作をそれぞれ制御する制御装置と、光硬化型インクを吐出するインクヘッドと、光透過性材料で形成され、前記インクヘッドにより吐出された前記光硬化型インクを受け、前記光硬化型インクが前記第1光学装置または他の光学装置からの光により仮硬化して形成されたインク層を保持する転写部材と、を備え、前記制御装置は、前記仮硬化した状態の前記インク層を保持する前記転写部材に対して前記仮硬化した状態の前記光硬化性樹脂層を保持する前記樹脂層保持部材を相対的に移動させて前記仮硬化した状態の前記光硬化性樹脂層を前記仮硬化した状態の前記インク層に押し付けることにより前記光硬化性樹脂層に前記インク層を転写するように構成されている。
【0007】
本発明に係る三次元造形装置によれば、光硬化性樹脂層が光の照射により仮硬化状態となり、インク層が光の照射により仮硬化状態となる。そして、仮硬化された光硬化性樹脂層に仮硬化されたインク層が転写される。これによって、光硬化性樹脂層にインク層を浸透させることができる。これにより、光硬化性樹脂層に対する着色を品質良く行うことができ、また仮硬化状態の光硬化性樹脂層に対して仮硬化状態のインク層が馴染み易く迅速に着色を行うことができるので処理速度が上がる。さらに、本発明では光硬化性樹脂層ごとにインク層が転写される。これにより、複数の光硬化性樹脂層の積層体である三次元造形物に対する着色を品質良く行うことができる。以上により、造形の処理速度を上げつつ、三次元造形物の品質を向上することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、三次元造形物の品質を向上することができ、処理速度を上げることができる三次元造形装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る三次元造形装置の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る光硬化性樹脂を仮硬化させるときの状態を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る光硬化性樹脂層にインク層を転写させて各層を本硬化させるときの状態を示す図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る本硬化を行う状態を示す図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る転写部材の図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る転写部材の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1において、符号F、Re、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。以下の説明では、左、右、上、下とは、図1の三次元造形装置100の正面にいる作業者から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、図1の三次元造形装置100から上記作業者に近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。但し、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、本実施形態に係る三次元造形装置100の設置態様を何ら限定するものではない。
【0011】
図1に示すように、三次元造形装置100は、例えばデスクトップサイズの箱型に形成されている。三次元造形装置100は、本体部1、複数の脚部2と、カバー部3とを備えている。本体部1は筐体である。本体部1の内方には、後で述べる樹脂槽や光学装置などが設けられている。脚部2は、本体部1の底部の四隅に設けられている。カバー部材3は、例えば透明素材により形成されている。カバー部材3は、本体部1の内部空間を閉鎖する位置(図1の状態の位置)と、上方に向けて開くことにより前記内部空間を開放する位置との間で回動自在に設けられている。造形時には、カバー部材3は閉じられた状態となる。造形後には、カバー部材3が開けられ、本体部1の内方より三次元造形物が取り出される。
【0012】
図2に示すように、三次元造形装置100の本体部1(図1参照)には、樹脂槽4と、光学装置5と、樹脂層保持部材6と、駆動部7a,7bと、制御装置8と、インクヘッド9と、転写部材10と、駆動部11と、駆動部12a,12bと、が設けられている。なお、三次元造形装置100の本体部1には、光学装置5により出射された光を反射して樹脂槽4内の液体状の光硬化性樹脂Rに照射する図示しないミラーがさらに設けられている。なお、駆動部7a,7bとしては、例えばステッピングモータ等の各種モータを用いればよい。駆動部11および駆動部12a,12bも同様である。
【0013】
樹脂槽4は、平面視において矩形状の容器である。樹脂槽4には、液体状の光硬化性樹脂Rが貯留されている。光硬化性樹脂Rとは、光を照射することにより硬化することが可能な樹脂のことである。樹脂槽4の底部4aは、光透過性材料で形成されている。この光透過性材料として、例えば透明な樹脂またはガラス等を採用すればよい。本実施形態では、樹脂槽4の底部4aは、透明なアクリル樹脂で形成されている。なお、樹脂槽4の全てを光透過性材料により形成してもよい。樹脂槽4の底部4aに、光硬化性樹脂Rが固着してしまうことを抑制するシリコン層などの層が設けられていてもよい。
【0014】
光学装置5は、例えばプロジェクタである。光学装置5は、光を発する光源であれば、プロジェクタに限定されるものではない。光学装置5は、例えば紫外光などの光を出射する。光学装置5は、樹脂槽4の下方に配置されている。光学装置5は、樹脂槽4の底部4aを介して光硬化性樹脂Rに光を照射する。詳細には、光学装置5は、後述するように、樹脂層保持部材6が樹脂槽4内の光硬化性樹脂Rに浸漬し、上昇するときに樹脂層保持部材6の近傍の光硬化性樹脂Rに対して光を照射する。この際、上述のミラーの角度が適宜変更されることにより、光の照射位置が適宜変更され、所望の形状の光硬化性樹脂層RSが形成されるようになっている。光学装置5には、駆動部11が接続されている。光学装置5は、駆動部11により樹脂槽4の下方の位置と転写部材10の下方の位置との間で移動可能に構成されている。
【0015】
樹脂層保持部材6は、例えば板状に形成されている。樹脂層保持部材6は、平面視において例えば矩形状に形成されている。樹脂層保持部材6は、光硬化性樹脂層RSの形成時には樹脂槽4の上方に配置されている。樹脂層保持部材6には、駆動部7a,7bが接続されている。樹脂層保持部材6は、駆動部7aにより昇降自在に構成され、駆動部7bにより水平方向に移動自在に構成されている。樹脂層保持部材6は、光硬化性樹脂層RSを保持する。詳細には、樹脂層保持部材6は、樹脂槽4に向かって下降したときに当該樹脂槽4内の光硬化性樹脂Rに浸漬し、その状態から上昇するときに光学装置5からの光により仮硬化した光硬化性樹脂を吊り上げて光硬化性樹脂層RSとして保持する。つまり、光硬化性樹脂層RSは、樹脂層保持部材6の下面に接触している。上記の仮硬化とは、光硬化性樹脂層RSを後述のインク層ISに押し付けた際に、当該光硬化性樹脂層RSとインク層ISとが互いに接合される状態にあることをいう。
【0016】
制御装置8は、コンピュータで構成されている。制御装置8は、中央演算処理装置(CPU)と、当該中央演算処理装置が実行するプログラムを格納したROM、RAMなどとを備えている。制御装置8は、駆動部7a,7bの動作、駆動部11の動作および駆動部12a,12bの動作をそれぞれ制御する。また、制御装置8は、光学装置5による光の照射および非照射を制御する。さらに、本実施形態では、制御装置8は、光硬化性樹脂層RSにインク層ISを転写する際に、駆動部7a,7bの動作および駆動部12bの動作をそれぞれ制御する。詳細については後述する。
【0017】
インクヘッド9は、インク層ISの形成時には転写部材10の上方に設けられている。インクヘッド9には、駆動部12a,12bが接続されている。インクヘッド9は、駆動部12aにより昇降自在に構成され、駆動部12bにより水平方向に移動自在に構成されている。インクヘッド9は、転写部材10の上方の位置と、当該転写部材10から樹脂槽4と逆側の方に離間した退避位置との間で移動するようになっている。インクヘッド9は、図示しないインクジェットノズルを備えている。インクヘッド9のインクジェットノズルは、光硬化型インクを吐出する。インクジェットノズルは、例えば4つの第1〜第4インクジェットノズルを含む。第1インクジェットノズルは、例えばイエロー(Y)に着色されたインクを吐出する。第2インクジェットノズルは、例えばマゼンタ(M)に着色されたインクを吐出する。第3インクジェットノズルは、例えばシアン(C)に着色されたインクを吐出する。第4インクジェットノズルは、例えばブラック(K)に着色されたインクを吐出する。なお、インクヘッド9の側部には、残留インクを除去するブレード9aが設けられている。
【0018】
転写部材10は、薄板状に形成されている。本実施形態では、転写部材10はプレートである。転写部材10は、光透過性材料により形成されている。この光透過性材料として、例えば透明な樹脂またはガラス等を採用すればよい。本実施形態では、転写部材10は、透明なアクリル樹脂で形成されている。転写部材10は樹脂槽4の側方に設ければよい。図2に示すように、転写部材10は樹脂槽4の右方に設けられている。転写部材10の上面には、インクヘッド9により光硬化型インクが吐出される。転写部材10に吐出された光硬化型インクは、光学装置5により光が照射されることにより仮硬化する。これにより、転写部材10上にインク層ISが形成される。上記の仮硬化とは、インク層ISに光硬化性樹脂層RSが押し付けられた際に、当該インク層ISと光硬化性樹脂層RSとが互いに接合される状態にあることをいう。
【0019】
続いて、三次元造形装置100において三次元造形物を造形する流れについて説明する。図2に示すように、まず、駆動部7aにより樹脂層保持部材6を樹脂槽4内の光硬化性樹脂Rに浸漬させ、この状態から樹脂層保持部材6を上昇させる。この際に、光学装置5により光を光硬化性樹脂Rに対して照射する。照射時間は、例えば5秒〜15秒である。これにより、光を受けた光硬化性樹脂Rは仮硬化し、光硬化性樹脂層RSが形成される。この光硬化性樹脂層RSは、樹脂層保持部材6に保持された状態で樹脂槽4の上方に吊り上げられる。このような光硬化性樹脂槽RSを形成している間に、仮硬化状態のインク層ISを形成するようにする。詳しくは、インクヘッド9により転写部材10上に光硬化型インクが吐出される。そして、転写部材10上の光硬化型インクに対して光を照射することにより、転写部材10上に仮硬化した状態のインク層ISを形成する。照射時間は、例えば1秒〜2秒である。
【0020】
続いて、図3に示すように、転写部材10の上方に配置されたインクヘッド9を駆動部12bにより当該転写部材10の上方の位置から水平移動させて退避させる。その後、光硬化性樹脂層RSを保持した樹脂層保持部材6を駆動部7bにより転写近接位置Pに向けて水平移動させた後、駆動部7aにより当該樹脂層保持部材6を下降させることによって、光硬化性樹脂層RSをインク層ISに押し付ける。これにより、光硬化性樹脂層RSにインク層ISを転写する。この際、樹脂層保持部材6は、光硬化性樹脂層RSの下面がインク層ISの上面に接触してから当該インク層ISの厚み未満の距離を下降するように制御される。これにより、樹脂層保持部材6がインク層ISの厚み以上の距離を下降することに起因して光硬化性樹脂層RSおよびインク層ISがそれぞれ潰れてしまうようなことを防ぐことができる。
【0021】
上記のような転写が終了すると、続いて、インク層ISが転写された光硬化性樹脂層RSに対して光学装置5により光が照射される。照射時間は、例えば5秒〜20秒である。これにより、光硬化性樹脂層RSおよびインク層ISがそれぞれ本硬化する。これによって、三次元造形物の一層目の層が形成されることとなる。以上のような造形処理を層ごとに繰り返す。これにより、所望形状の複数の層で構成された三次元造形物を造形することができる。
【0022】
以上のように、本実施形態によれば、光の照射により光硬化性樹脂層RSが仮硬化状態にされ、光の照射によりインク層ISが仮硬化状態にされる。そして、仮硬化された光硬化性樹脂層RSに仮硬化されたインク層ISが転写される。これによって、光硬化性樹脂層RSにインク層ISを浸透させることができる。これにより、光硬化性樹脂層RSに対する着色を品質良く行うことができ、また仮硬化状態の光硬化性樹脂層RSに対して仮硬化状態のインク層ISが馴染み易く迅速に着色を行うことができるので処理速度が上がる。さらに、光硬化性樹脂層RSごとにインク層ISが転写される。これにより、複数の光硬化性樹脂層RSの積層体である三次元造形物に対する着色を品質良く行うことができる。以上により、造形の処理速度を上げつつ、三次元造形物の品質を向上することができる。
【0023】
また、本実施形態によれば、光硬化性樹脂層RSにインク層ISを転写した後、当該インク層ISおよび光硬化性樹脂層RSをそれぞれ本硬化させることにより、インク層ISと光硬化性樹脂層RSとを接合することができる。また、光硬化性樹脂Rに光を照射して当該光硬化性樹脂Rを仮硬化させる光学装置5を、光硬化性樹脂層RSおよびインク層ISをそれぞれ本硬化させる際にも用いることで、光硬化性樹脂Rを仮硬化させて光硬化性樹脂層RSを形成するための光学装置と、光硬化性樹脂層RSおよびインク層ISをそれぞれ本硬化するための光学装置との2台を設ける必要がなく、コストアップを避けることができる。
【0024】
また、本実施形態によれば、制御装置8は、光硬化性樹脂層RSにインク層ISを転写する前にインクヘッド9を退避させるように構成されている。これにより、樹脂層保持部材6に対するインクヘッド9の干渉を防ぐことができる。
【0025】
また、本実施形態によれば、仮硬化は、光硬化性樹脂層RSをインク層ISに押し付けた際に当該光硬化性樹脂層RSとインク層ISとが接合される状態である。それにより、接合前に本硬化すなわち完全に硬化してしまうことによって光硬化性樹脂層RSとインク層ISとが接合されない状態となることを防ぐことができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、転写部材10はプレートであるので、樹脂層保持部材6に保持された光硬化性樹脂層RSをプレートにより保持されたインク層ISに押し付け易くなる。このため、インク層ISの転写を行い易くなる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で以下のように実施することが可能である。
【0028】
上記実施形態では、光学装置5により光硬化性樹脂Rに光を照射した後、光学装置5を転写部材10の下方の位置に移動させ、光硬化型インクに光を照射することとしたが、これに限定されるものではない。光学装置5の位置を変更せずに、光硬化性樹脂Rに光を照射し得る位置であって且つ光硬化型インクに光を照射し得る位置に光学装置5を配置した状態で、当該光学装置5からの光の角度をミラーにより変更するようにしてもよい。
【0029】
また、上記実施形態では、光学装置5により光硬化性樹脂Rに光を照射した後、光学装置5を転写部材10の下方の位置に移動させ、光硬化型インクに光を照射することとしたが、これに限定されるものではない。光学装置5を転写部材10の下方の位置に移動させる代わりに、図4に示すように、光学装置5とは別の光学装置50を転写部材10の下方に設けるようにしてもよい。転写部材10に吐出された光硬化型インクは、光学装置50により光が照射されることにより仮硬化する。この場合、光学装置5により光硬化性樹脂Rを仮硬化する際の照射期間と、光学装置50により光硬化型インクを仮硬化する際の照射期間とは、少なくとも一部重なるようにすることが好ましい。これによって、光学装置5によりまず光硬化性樹脂Rの仮硬化を行い、その後に光硬化型インクの仮硬化を行う場合に比べ、処理時間を短縮することができる。これにより、造形の処理速度をさらに上げることができる。
【0030】
また、上記実施形態では、転写部材10としてプレートを用いるようにしたが、これに限定されるものではない。図5に示すように、転写部材10として、回転自在に構成されたローラ13を採用してもよい。この場合、インク層ISはローラ13上に形成される。このような構成により、転写時にローラ13を回転させながら、樹脂層保持部材6に保持された光硬化性樹脂層RSにインク層ISを接合し易くなる。これにより、インク層ISの転写を行い易くなる。
【0031】
また、上記実施形態では、転写部材10としてプレートを用いるようにしたが、これに限定されるものではない。図6に示すように、転写部材10として、支持部材16,17に支持されたフィルム15を採用してもよい。この場合、インク層ISはフィルム15上に形成される。このような構成により、転写時に、樹脂層保持部材6に保持された光硬化性樹脂層RSを万一インク層ISに押し付け過ぎた場合でも、上記フィルム15が弾性変形を行うことにより上記押し付けの力を吸収することができる。これにより、光硬化性樹脂層RSおよびインク層ISがそれぞれ押し潰されることを防ぐことができる。
【0032】
また、上記実施形態では、転写時に、樹脂層保持部材6を移動させることにより光硬化性樹脂層RSをインク層ISに押し付けるように構成したが、これに限定されるものではない。インク層ISを保持した転写部材10を樹脂層保持部材6に保持された光硬化性樹脂層RSに向けて移動させることにより、当該インク層ISを光硬化性樹脂層RSに押し付けるようにして転写してもよい。
【符号の説明】
【0033】
4 樹脂槽
4a 樹脂槽の底部
5 光学装置(第1光学装置)
6 樹脂層保持部材
7a 駆動部(第1駆動部)
7b 駆動部(第2駆動部)
8 制御装置
9 インクヘッド
10 転写部材
11 駆動部(第3駆動部)
12a 駆動部
12b 駆動部(第4駆動部)
13 ローラ(転写部材)
15 フィルム(転写部材)
50 光学装置(第2光学装置)
100 三次元造形装置
IS インク層
R 光硬化性樹脂
RS 光硬化性樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6