特許第6557566号(P6557566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NTN株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6557566-導波管スロットアンテナ 図000002
  • 特許6557566-導波管スロットアンテナ 図000003
  • 特許6557566-導波管スロットアンテナ 図000004
  • 特許6557566-導波管スロットアンテナ 図000005
  • 特許6557566-導波管スロットアンテナ 図000006
  • 特許6557566-導波管スロットアンテナ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557566
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】導波管スロットアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/22 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   H01Q13/22
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-185040(P2015-185040)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2017-60086(P2017-60086A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】園嵜 智和
(72)【発明者】
【氏名】赤井 洋
(72)【発明者】
【氏名】服部 圭
【審査官】 西村 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−060700(JP,A)
【文献】 特開2004−120044(JP,A)
【文献】 特開2001−308611(JP,A)
【文献】 特開2004−312089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00−25/04
H01P 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管軸方向に延びた導波路を有し、該導波路の画成面が導電性被膜で被覆された樹脂製の導波管と、該導波管の管軸方向に沿って所定間隔で設けられた複数の放射スロットとを備えた導波管スロットアンテナであって、前記導波管が、前記導波路の延在方向各部における横断面が有端状をなし、相手側と結合されることで前記導波路を画成する第1および第2の導波管形成部材からなるものにおいて、
前記管軸方向に沿って配置された芯金を有し、該芯金が、前記第1および第2の導波管形成部材の双方に保持されており、
前記第1および第2の導波管形成部材の少なくとも一方が、前記芯金を一体的に有する樹脂の射出成形品であることを特徴とする導波管スロットアンテナ。
【請求項2】
管軸方向に延びた導波路を有し、該導波路の画成面が導電性被膜で被覆された樹脂製の導波管と、該導波管の管軸方向に沿って所定間隔で設けられた複数の放射スロットとを備えた導波管スロットアンテナであって、前記導波管が、前記導波路の延在方向各部における横断面が有端状をなし、相手側と結合されることで前記導波路を画成する第1および第2の導波管形成部材からなるものにおいて、
前記管軸方向に沿って配置された芯金を有し、該芯金が、前記第1および第2の導波管形成部材の双方に保持されており、
前記芯金は、第1の芯金と第2の芯金の結合体からなり、
前記第1の導波管形成部材が、前記第1の芯金を一体的に有する樹脂の射出成形品であり、前記第2の導波管形成部材が、前記第2の芯金を一体的に有する樹脂の射出成形品であることを特徴とする導波管スロットアンテナ。
【請求項3】
前記芯金の一部が、前記導波管の外表面に露出している請求項1又は2に記載の導波管スロットアンテナ。
【請求項4】
前記第1および第2の導波管形成部材は、何れも、前記横断面が凹形状をなす請求項1〜の何れか一項に記載の導波管スロットアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波管スロットアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、導波管スロットアンテナは、無線通信機能を備えた種々の機器(システム)において、高周波帯域の電波(例えばミリ波帯の電波)や、低周波帯域の電波(例えばセンチメートル波帯の電波)を送受信するためのアンテナとして使用されている。ミリ波帯の電波は、例えば車載用レーダシステムで利用され、センチメートル波帯の電波は、例えば、放送衛星(BS)や通信衛星(CS)などによる衛星放送システム、無線LANやBluetooth(登録商標)などのデータ伝送システム、電子料金収受システム(ETC(登録商標))などで利用されている。なお、ミリ波帯の電波とは、波長1〜10mm、周波数30〜300GHzの電波であり、センチメートル波帯の電波とは、波長10〜100mm、周波数3〜30GHzの電波である。
【0003】
無線通信機能を備えた各種システムの低価格化を推進すべく、導波管スロットアンテナのコスト低減を図る必要が生じている。そこで、本出願人は、下記の特許文献1において、樹脂製の導波管スロットアンテナを提案している。より具体的には、管軸方向に延びた導波路を有し、導波路の画成面が導電性被膜で被覆された樹脂製の導波管と、該導波管に、その管軸方向に沿って所定間隔で設けられた複数の放射スロットとを備え、導波管が、横断面(管軸方向と直交する断面)が有端状をなし、相手側と結合されることで導波路を画成する第1および第2の導波管形成部材で構成された導波管スロットアンテナである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−60700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特に低周波数帯域の電波を送受信する用途では、波長との関係でアンテナサイズを大きくする(アンテナを長寸化する)必要があるが、特許文献1に記載の導波管スロットアンテナにおいて、そのサイズを大きくした場合、温度変化等に伴って導波管(両導波管形成部材の何れか一方又は双方)に望まない変形、例えば、管軸方向に沿う方向の反りや曲りが生じ易い。そして、上記のような変形が生じると、
・導波路の形状精度に悪影響が及び、電波の伝搬効率が低下する、
・両導波管形成部材の結合部に隙間が生じ、この隙間を介して導波路を伝搬する電波が外部に漏れ易くなる、
などといった不具合が生じ易くなることから、所望のアンテナ特性を安定的に発揮することができなくなる。
【0006】
以上の実情に鑑み、本発明の目的は、温度変化等に伴う導波管形成部材の変形を可及的に防止可能とし、これにより所望のアンテナ特性を安定的に発揮することのできる導波管スロットアンテナを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために創案された本発明は、管軸方向に延びた導波路を有し、導波路の画成面が導電性被膜で被覆された樹脂製の導波管と、導波管の管軸方向に沿って所定間隔で設けられた複数の放射スロットとを備えた導波管スロットアンテナであって、導波管が、導波路の延在方向各部における横断面が有端状をなし、相手側と結合されることで導波路を画成する第1および第2の導波管形成部材で構成されるものにおいて、管軸方向に沿って配置された芯金を有し、この芯金が、第1および第2の導波管形成部材の双方に保持されていることを特徴とする。
【0008】
上記のように、第1および第2の導波管形成部材の双方で、管軸方向に沿って配置された芯金(管軸方向に延びる芯金)を保持しておけば、両導波管形成部材の結合体からなる導波管の曲げ剛性やねじり剛性を高めることができるので、温度変化等に伴う導波管の変形(特に管軸方向に沿う方向の反り・曲がり)が生じ難くなる。このため、上述のような不具合が生じる可能性を可及的に減じ、所望のアンテナ特性を安定的に発揮することのできる導波管スロットアンテナを実現することができる。
【0009】
上記構成において、第1および第2の導波管形成部材の少なくとも一方を、芯金を一体的に有する樹脂の射出成形品(芯金をインサート部品とした樹脂の射出成形品)とすることができる。このようにすれば、少なくとも上記一方の成形収縮に伴う変形も可及的に防止することができる。このため、成形収縮に伴う変形に起因した導波管形成部材同士の結合精度の低下等も可及的に防止することが可能となり、これを通じて、アンテナ特性に優れた導波管スロットアンテナを安定的に得ることができる。
【0010】
上記構成において、芯金を、第1の芯金と第2の芯金の結合体で構成し、第1の導波管形成部材を、第1の芯金を一体的に有する樹脂の射出成形品(第1の芯金をインサート部品とした樹脂の射出成形品)で構成すると共に、第2の導波管形成部材を、第2の芯金を一体的に有する樹脂の射出成形品(第2の芯金をインサート部品とした樹脂の射出成形品)で構成するようにしても良い。このようにすれば、第1および第2の導波管形成部材の双方について、その成形収縮に伴う変形を可及的に防止することができるので、一層アンテナ特性に優れた導波管スロットアンテナを安定的に得ることができる。
【0011】
芯金は、導波管の壁部内に埋設しても良いし、その一部を導波管の外表面に露出させても良い。
【0012】
第1および第2の導波管形成部材は、何れも、上記横断面が凹形状をなすものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上に示すように、本発明によれば、温度変化等に伴う導波管(導波管形成部材)の変形を可及的に防止することができるので、所望のアンテナ特性を安定的に発揮することのできる導波管スロットアンテナを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)図は、本発明に係る導波管スロットアンテナを備えたアンテナユニットの概略平面図、(b)図は、同背面図である。
図2】(a)図は、本発明の第1実施形態に係る導波管スロットアンテナの概略横断面図、(b)図は図1(a)中に示すY−Y線概略断面図である。
図3】(a)図は、図2に示す導波管スロットアンテナの組立方法の一例を示す概略斜視図、(b)図および(c)図は、同アンテナの組立方法の他例を示す概略斜視図である。
図4】(a)図は、本発明の第2実施形態に係る導波管スロットアンテナの組立前の状態における概略斜視図、(b)図は、同アンテナの概略斜視図である。
図5】(a)図は、本発明の第3実施形態に係る導波管スロットアンテナの部分平面図、(b)図は、(a)図中に示すX−X線概略断面図、(c)図は、(a)図中に示すY−Y線概略断面図である。
図6】(a)図は、本発明の第4実施形態に係る導波管スロットアンテナの概略横断面図、(b)図は、本発明の第5実施形態に係る導波管スロットアンテナの概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1(a)(b)に、本発明の第1実施形態に係る導波管スロットアンテナAを備えたアンテナユニット1の概略平面図及び概略背面図をそれぞれ示す。図1に示すアンテナユニット1は、センチメートル波帯の電波を送受信するためのものであって、並列に接続された複数本(図示例では5本)の導波管スロットアンテナAと、各導波管スロットアンテナAに高周波電力(電波)を供給する給電導波管9[図1(b)中に二点鎖線で示す]とを備える。導波管スロットアンテナAを並列に接続するための手段に特段の限定はなく、例えば、接着、両面テープ止め、凹凸嵌合などの固定手段を単独で、あるいは二種以上組み合わせることができる。5本の導波管スロットアンテナAのうち、例えば中央部に配置されたアンテナAは電波の送信用アンテナとして機能させることができ、その両側に2本ずつ配置されたアンテナAは電波の受信用アンテナとして機能させることができる。なお、このアンテナユニット1を24GHz帯の電波を送受信するための用途に用いる場合、各導波管スロットアンテナAのサイズは、例えば、管軸方向(図1の紙面上下方向)の寸法:100mm、幅方向(図1の紙面左右方向)の寸法:20mm、高さ方向(図1において紙面と直交する方向)の寸法:5mm、とされる。
【0017】
次に、各導波管スロットアンテナAの詳細構造を説明する。導波管スロットアンテナAは、図2(a)(b)にも示すように、内部に管軸方向に延びた導波路2を有する導波管10と、導波管10の管軸方向に沿って所定間隔で設けられた複数の放射スロット3と、導波管10の管軸方向の一端に設けられ、導波路2に高周波電力を供給する給電スロット5と、を備える。図1(a)に示すように、本実施形態の放射スロット3は、その幅方向中央部を通って延びる直線が管軸方向に対して45°傾くように設けられているが、管軸方向に対する放射スロット3の傾斜角は、用途等に応じて適宜設定することができる。
【0018】
図2(a)(b)に示すように、導波管10は、導波路2の延在方向各部における横断面が方形状をなす方形導波管とされる。より具体的には、互いに平行な頂壁10aおよび底壁10bと、互いに平行な側壁10c,10dとを備え、さらに、管軸方向の一端および他端開口を閉塞する終端壁10e,10fを備える。複数の放射スロット3は頂壁10aに設けられ、給電スロット5は底壁10bに設けられている。本実施形態において、頂壁10aおよび底壁10bの横断面寸法は、側壁10c,10dの横断面寸法よりも長寸とされる。なお、以下では、説明の便宜上、頂壁10aが設けられた側を上側、底壁10bが設けられた側を下側とも言うが、導波管スロットアンテナAの使用態様を限定するわけではない。
【0019】
頂壁10aには、その外表面に開口した窪み部4が管軸方向に沿って複数設けられ、各窪み部4の内底面に一の放射スロット3が開口している。本実施形態では、窪み部4を平面視で真円状に形成しているが、窪み部4は、平面視で矩形状、楕円状等に形成することもできる。このような窪み部4を設けることにより、グレーティングローブとも称される不要放射が抑制される。
【0020】
導波管10は、導波路2の延在方向各部における横断面が有端状をなす第1および第2の導波管形成部材11,12を結合することで形成される。具体的には、図2(a)に示すように、放射スロット3が設けられた頂壁10aと、側壁10c,10dおよび終端壁10e,10fの一部(上側部分)とを一体に有する第1の導波管形成部材11と、給電スロット5が設けられた底壁10bと、側壁10c,10dおよび終端壁10e,10fの残部(下側部分)とを一体に有する第2の導波管形成部材12とを結合することで導波管10が形成される。要するに、本実施形態の導波管10は、上記横断面が下側に開口した凹形状をなす第1の導波管形成部材11と、上記横断面が上側に開口した凹形状をなす第2の導波管形成部材12とを結合することで形成される。
【0021】
第1の導波管形成部材11は、樹脂の射出成形品とされ、射出成形と同時に放射スロット3および窪み部4が型成形される。また、第2の導波管形成部材12も樹脂の射出成形品とされ、射出成形と同時に給電スロット5が型成形される。導波管形成部材11,12の成形用樹脂としては、例えば、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)およびポリアセタール(POM)の群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂をベース樹脂としたものが使用され、ベース樹脂には、必要に応じて、グラスファイバー(GF)やカーボンファイバー(CF)等の充填材が一種又は複数種添加される。以上で例示した樹脂の中でも、LCPは、PPS等に比べて形状安定性に優れ、かつ成形に伴うバリの発生量を抑制し得る点で好ましい。
【0022】
第1の導波管形成部材11のうち導波路2を画成する面、および第2の導波管形成部材12のうち導波路2を画成する面は、図2(a)中の拡大図に示すような導電性被膜6で被覆されている。これにより、導波路2に沿って電波を円滑に伝播させることができる。なお、導電性被膜6は、両導波管形成部材11,12の表面全域に形成しても構わない。このようにすれば、導電性被膜6の形成前におけるマスキングの形成作業と、導電性被膜6の形成後におけるマスキングの除去作業とが不要となるので、被膜形成コスト、ひいては導波管スロットアンテナAの製造コストを抑えることができる。
【0023】
導電性被膜6は、単層の金属メッキ被膜で構成しても構わないが、ここでは、導波管形成部材11,12に析出形成した第1被膜6aと、この第1被膜6a上に析出形成した第2被膜6bとで導電性被膜6を構成している。第1被膜6aは、銅、銀、金等、特に導電性(電波の伝搬性)に優れた金属のメッキ被膜とすることができ、また、第2被膜6bは、ニッケル等、耐久性(耐腐食性)に優れた金属のメッキ被膜とすることができる。導電性被膜6をこのような積層構造とすることにより、導電性被膜6に高い導電性と高い耐久性とを同時に付与することができることに加え、高価な金属である銅や銀等の使用量を抑えてコスト増を抑制することができる。
【0024】
導電性被膜6(6a,6b)は、例えば、電解メッキ法や無電解メッキ法で形成することができるが、無電解メッキ法の方が好ましい。無電解メッキ法の方が、電解メッキ法よりも均一厚みの導電性被膜6(6a,6b)を得易いため、所望のアンテナ特性を確保する上で有利となるからである。導電性被膜6の膜厚は、これが薄過ぎると耐久性に乏しくなり、逆に厚過ぎると被膜形成に多大な時間を要してコスト高を招来する。かかる観点から、導電性被膜6の膜厚は0.2μm以上1.5μm以下とするのが好ましい。なお、本実施形態のように、導電性被膜6を第1被膜6aと第2被膜6bの積層構造とする場合、第1被膜6aおよび第2被膜6bの膜厚は、それぞれ、例えば0.1〜1.0μm程度および0.1〜0.5μm程度とすることができる。
【0025】
導波管スロットアンテナAを構成する導波管10は、管軸方向に沿って配置され、第1および第2の導波管形成部材11,12の双方に保持された芯金20をさらに有する。芯金20は、図3にも示すように、管軸方向に延びる矩形状(長方形状)の板状部材からなり、その一面を上下方向(導波管10の高さ方向)に沿って配置した起立姿勢で側壁10c,10dの内部にそれぞれ埋設されている。すなわち、本実施形態において、一対の芯金20,20は、導波管10の内側面(導波路2)および外側面の何れにも露出していない。芯金20は、例えば、ステンレス鋼、黄銅、アルミニウム(アルミニウム合金)等の金属板の他、鉄又は銅を主成分とする焼結金属製の板状部材を採用することができる。なお、導波路2を伝搬する電波の伝搬性を一層高めるため、芯金20としては、導電性に優れた黄銅板やアルミニウム板を採用するのが特に好ましい。
【0026】
一対の芯金20,20は、例えば、以下の(1)〜(3)に示す何れかの手段(手順)を採用することにより、第1および第2導波管形成部材11,12の双方で保持することができる。
(1)芯金20,20の上側部分を第1の導波管形成部材11(の側壁10c,10dを構成する部分)に設けた保持部11aに嵌合すると共に、芯金20,20の下側部分を第2の導波管形成部材12(の側壁10c,10dを構成する部分)に設けた保持部12aに嵌合する[図3(a)を参照]。
(2)芯金20,20の下側部分を第2の導波管形成部材12で一体的に保持するように、芯金20,20をインサート部品として第2の導波管形成部材12を樹脂で射出成形してから、芯金20,20の上側部分(第2の導波管形成部材12から突出した部分)を第1の導波管形成部材11の側壁10c,10dを構成する部分にそれぞれ設けた保持部11aに嵌合する[図3(b)を参照]。
(3)芯金20,20の上側部分を第1の導波管形成部材11で一体的に保持するように、芯金20,20をインサート部品として第1の導波管形成部材11を樹脂で射出成形してから、芯金20,20の下側部分(第1の導波管形成部部材11から突出した部分)を第2の導波管形成部材12の側壁10c,10dを構成する部分にそれぞれ設けた保持部12aに嵌合する[図3(c)を参照]。
【0027】
なお、本実施形態では、上記(2)の手段を採用することにより、一対の芯金20,20を両導波管形成部材11,12で保持している。ここで、上記(2)の手段を採用する場合において、第1の導波管形成部材11に設けた保持部11aの上下方向寸法が、この保持部11aで保持すべき芯金20の上側部分の上下方向寸法よりも小さいと、第1の導波管形成部材11と第2の導波管形成部材12の対向二面を当接させることができない(両導波管形成部材11,12間に隙間が生じる)ため、アンテナ特性に悪影響が及ぶ可能性がある。そのため、保持部11aの上下方向寸法は、この保持部11aで保持すべき芯金20の上側部分の上下方向寸法よりも大きく設定しておく。上記(1)又は(3)の手段を採用する場合においても、同様の理由から、保持部11a,12aの上下方向寸法を設定する。
【0028】
以上から、本実施形態に係る導波管スロットアンテナA(導波管10)は、第1の導波管形成部材11を樹脂で射出成形すると共に、芯金20,20をインサート部品として第2の導波管形成部材12を樹脂で射出成形してから、両導波管形成部材11,12の導波路2を画成する面に導電性被膜6を形成し、その後、両導波管形成部材11,12を結合することで完成する。第1の導波管形成部材11と第2の導波管形成部材12の結合方法は任意であり、例えば、両導波管形成部材11,12の当接部に塗布した接着剤を硬化させる接着や、両導波管形成部材11,12の当接部において、導波管形成部材11,12同士を溶着させる溶着などを採用することができる。この他にも、両導波管形成部材11,12の何れか一方に設けた凹部に対し、他方に設けた凸部を嵌合(圧入)することにより、両導波管形成部材11,12を結合することもできる。また、芯金20を利用して両導波管形成部材11,12を結合することも可能である。具体的には、例えば、芯金20の上側部分を第1の導波管形成部材11に設けた保持部11aに対して圧入(締まり嵌めの状態で嵌合)する、接着剤を充填した保持部11aに対して芯金20の上側部分を嵌合した後に接着剤を硬化させる、などを採用することもできる。
【0029】
なお、両導波管形成部材11,12を結合するのに接着剤を使用する場合、接着剤としては、例えば熱硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、嫌気性接着剤などを使用することができるが、接着剤を硬化させる際に加熱処理が必要となる熱硬化型接着剤では、加熱処理に伴って、樹脂製の導波管形成部材11,12が変形等する可能性がある。そのため、接着剤としては紫外線硬化型接着剤や嫌気性接着剤が好ましい。なお、接着剤は一般に絶縁体であるので、導波路2の画成面に接着剤が付着すると電波の伝搬性に悪影響が及ぶ可能性がある。そのため、両導波管形成部材11,12を結合するのに接着剤を用いる場合、導波路2の画成面に接着剤が付着しないように注意を払うことが肝要である。
【0030】
以上で説明したように、本実施形態の導波管スロットアンテナAでは、第1および第2の導波管形成部材11,12の双方で管軸方向に沿って配置された芯金20を保持している。このようにすれば、導波管10の曲げ剛性やねじり剛性が高まるので、温度変化等に伴って、両導波管形成部材11,12の何れか一方又は双方が変形しようとしても、その変形を芯金20で規制することができる。このため、導波管形成部材11,12の変形により導波路2の形状精度に狂いが生じることで電波の伝搬性が低下する、両導波管形成部材11,12の結合部に隙間が生じ、この隙間を介して導波路2を伝搬する電波が外部に漏れ出す、などといった不具合が生じる可能性を可及的に低減することができる。従って、所望のアンテナ特性を安定的に発揮することのできる導波管スロットアンテナAを実現することができる。
【0031】
特に本実施形態では、第2の導波管形成部材12を、芯金20を一体的に有する樹脂の射出成形品(芯金20をインサート部品とした樹脂の射出成形品)としたので、第2の導波管形成部材12については、その成形収縮に伴う変形も可及的に防止することができる。このため、第2の導波管形成部材12の成形収縮に伴う変形に起因した導波管形成部材11,12同士の結合精度の低下等も可及的に防止することが可能となり、これを通じて、アンテナ特性に優れた導波管スロットアンテナAを安定的に量産することができる。
【0032】
以上、本発明の第1実施形態に係る導波管スロットアンテナAについて説明を行ったが、この導波管スロットアンテナAには、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更を施すことが可能である。以下、本発明の他の実施形態について図面を参照しながら説明するが、以上で説明した第1実施形態に準ずる構成には共通の参照番号を付し、重複説明を出来る限り省略する。
【0033】
図4(特に図4(b))に、本発明の第2実施形態に係る導波管スロットアンテナAの概略斜視図(横断面を含む概略斜視図)を示す。同図に示す導波管スロットアンテナAが、上述した導波管スロットアンテナAと異なる主な点は、導波管10の側壁10c,10dのそれぞれに埋設した芯金20を、第1の芯金20Aと第2の芯金20Bとの結合体で構成し、第1の導波管形成部材11を、第1の芯金20Aを一体的に有する樹脂の射出成形品(第1の芯金20Aをインサート部品とした樹脂の射出成形品)で構成すると共に、第2の導波管形成部材12を、第2の芯金20Bを一体的に有する樹脂の射出成形品(第2の芯金20Bをインサート部品とした樹脂の射出成形品)で構成した点にある。
【0034】
このようにすれば、第1および第2の導波管形成部材11,12の双方について、成形収縮に伴う変形を可及的に防止することができるので、両導波管形成部材11,12の結合精度を一層高めることができる。そのため、一層アンテナ特性に優れた導波管スロットアンテナAを実現することができる。なお、本実施形態では、図4(a)(b)に示すように、第1の芯金20A(の下端)に設けた凹部に対し、第2の芯金20B(の上端)に設けた凸部を圧入することにより、両芯金20A,20Bの結合体からなる芯金20を実現している。なお、両芯金20A,20Bは、上記の圧入以外にも、例えば、接着、圧入と接着の併用等の手段によって結合させることもできる。また、両導波管形成部材11,12は、任意の方法で結合することができる。
【0035】
図5(a)〜(c)のそれぞれに、本発明の第3実施形態に係る導波管スロットアンテナAの部分平面図、横断面図および縦断面図を概念的に示す。この実施形態の導波管スロットアンテナAでは、図5(a)に示すように、複数の放射スロット3を管軸方向に沿って所定間隔で配置してなる放射スロット列を導波管10の幅方向に二列設けると共に、一方の放射スロット列を構成する放射スロット3と他方の放射スロット列を構成する放射スロット3の管軸方向における配設位置を互いに異ならせている。簡単に言うと、この実施形態の導波管スロットアンテナAでは、放射スロット3および窪み部4が千鳥状に複数配置されている。
【0036】
また、この実施形態の導波管スロットアンテナA(導波管10)は、図5(b)(c)に示すように、側壁10c,10dと平行に配設され、導波路2を二条の導波路2A,2Bに分岐させる分岐壁10gと、放射スロット3の形成位置において導波路2(2A,2B)の断面積を縮小させる複数の内壁13とをさらに有する。内壁13は底壁10bの内底面に立設されており、管軸方向で隣り合う2つの内壁13,13のうち、相対的に給電スロット5に近い側の内壁13の高さ寸法をh1、相対的に給電スロット5から遠い側の内壁13の高さ寸法をh2としたとき、h1≦h2の関係式を満たすように形成されている[図5(c)中の拡大図参照]。一方の放射スロット列は導波路2Aに沿って形成され、他方の放射スロット列は導波路2Bに沿って形成されている。
【0037】
上記のように、放射スロット3の形成位置において導波路2の断面積を縮小させる内壁13を設けておけば、導波路2を伝搬する電波の放射効率を高めることができる。特に、管軸方向で隣り合う2つの内壁13,13のうち、相対的に給電スロット5に近い側の内壁13の高さ寸法をh1、相対的に給電口5から遠い側の内壁13の高さ寸法をh2としたとき、h1≦h2の関係式を満たすようにすれば、各放射スロット3を介して当該アンテナAの外部に放射される電波量が放射スロット3相互間でばらつき難くなり、各放射スロット3から概ね等しい量の電波を放射することが可能となる。従って、管軸方向各部でアンテナ性能にばらつきが生じるのを可及的に回避することができ、導波管スロットアンテナAの信頼性が向上する。
【0038】
この実施形態の導波管スロットアンテナAを構成する導波管10も、導波路2の延在方向各部における横断面が有端状をなし、少なくとも導波路2の画成面が導電性被膜6で被覆された樹脂製の第1および第2の導波管形成部材11,12を結合することで形成される。具体的には、放射スロット3および窪み部4が設けられた頂壁10aと、側壁10c,10d、終端壁10e,10fおよび分岐壁10gの一部(上側部分)とを一体に有する第1の導波管形成部材11と、給電スロット5が設けられた底壁10bと、側壁10c,10d、終端壁10e,10fおよび分岐壁10gの残部(下側部分)とを一体に有する第2の導波管形成部材12とを結合することで導波管10が形成される。
【0039】
また、この実施形態の導波管スロットアンテナAも、管軸方向に沿って配置され、第1および第2の導波管形成部材11,12の双方に保持された芯金20をさらに有する。芯金20は、管軸方向に延びる矩形状(長方形状)の板状部材からなり、その一面を上下方向に沿って配置した起立姿勢で側壁10c,10dおよび分岐壁10gの内部にそれぞれ埋設されている。上記態様で芯金20を配設したことにより、本実施形態の導波管スロットアンテナAも、図2等に示す導波管スロットアンテナAと同様の作用効果を享受することができる。
【0040】
なお、詳細な図示は省略するが、この実施形態においては、3つの芯金20の全てを両導波管形成部材11,12の何れか一方で一体的に保持するように、3つの芯金20をインサート部品として第1又は第2の導波管形成部材11,12を樹脂で射出成形することができる他、側壁10c,10dでそれぞれ保持される芯金20,20をインサート部品として両導波管形成部材11,12の何れか一方を樹脂で射出成形すると共に、分岐壁10gで保持される芯金20をインサート部品として両導波管形成部材11,12の他方を樹脂で射出成形することもできる。
【0041】
図6(a)に、本発明の第4実施形態に係る導波管スロットアンテナAの概略横断面図を示す。同図に示す導波管スロットアンテナAは、図5(a)〜(c)に示す導波管スロットアンテナAの変形例であり、分岐壁10gを、第1および第2の導波管形成部材11,12のみで形成している。すなわち、分岐壁10gは芯金20を保持していない。なお、図6(a)では、第1の導波管形成部材11の分岐壁10gを形成する部分に設けた凹部に対し、第2の導波管形成部材12の分岐壁10gを形成する部分に設けた凸部を嵌合(圧入)することにより、分岐壁10gを形成している。
【0042】
図6(b)に、本発明の第5実施形態に係る導波管スロットアンテナAの概略横断面図を示す。同図に示す導波管スロットアンテナAは、図5(a)〜(c)に示す導波管スロットアンテナAの変形例であり、側壁10cで保持した芯金20および側壁10dで保持した芯金20の一面を導波管10の外側面に露出させている。図示は省略するが、図2および図4に示す導波管スロットアンテナAにおいても同様の構成を採用しても良い。
【0043】
以上で説明した本発明の実施形態に係る導波管スロットアンテナAは、上述したように、温度変化等に伴う変形を可及的に防止することができるという特徴を有する。そのため、本発明は、導波管スロットアンテナの中でも、特に、波長との関係でアンテナサイズを大きくする(管軸方向に長寸化する)必要があり、温度変化等に伴う変形が生じ易い低周波帯域の電波を送受信するための導波管スロットアンテナに好ましく適用することができる。
【0044】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論である。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0045】
1 アンテナユニット
2 導波路
3 放射スロット
5 給電スロット
10 導波管
11 第1の導波管形成部材
12 第2の導波管形成部材
20 芯金
20A 第1の芯金
20B 第2の芯金
A 導波管スロットアンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6