(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一方に封止部が固定された第1基材及び第2基材を、前記第1基材と前記第2基材との間に前記封止部を挟み込み且つ前記第1基材と前記第2基材と前記封止部とによって形成される閉空間内に被封止物を配置した状態で重ね合せた後、プレス部を用いて前記封止部を加圧して前記封止部によって前記第1基材と前記第2基材とを貼り合せて基材組立体を製造する基材組立体の製造装置であって、
前記プレス部に対向配置され、前記プレス部側に前記第1基材を配置させる第1基材配置部を有し、
前記プレス部が、
本体部と、
前記本体部の前記第1基材配置部側の一面に設けられ、前記封止部を加圧する加圧部とを有し、
前記基材組立体の製造装置が、
前記本体部又は前記第1基材配置部の一面から突出して設けられ、前記第1基材配置部の前記本体部側への相対的な移動を規制する少なくとも1つのストッパ部を有し、
前記ストッパ部の線膨張係数が、前記加圧部の線膨張係数よりも小さい、基材組立体の製造装置。
前記ストッパ部が、前記本体部と前記第1基材配置部とによって前記第1基材を介して挟まれた後、前記第1基材配置部の前記本体部側への相対的な移動を規制するものである、請求項3に記載の基材組立体の製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の基材組立体の製造装置は、以下に示す課題を有していた。
【0006】
すなわち、上記特許文献1に記載の基材組立体の製造装置は、得られる基材組立体における封止部の厚さの均一性の点で改善の余地を有していた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、得られる基材組立体における封止部の厚さの均一性を向上させることができる基材組立体の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも一方に封止部が固定された第1基材及び第2基材を、前記第1基材と前記第2基材との間に前記封止部を挟み込み且つ前記第1基材と前記第2基材と前記封止部とによって形成される閉空間内に被封止物を配置した状態で重ね合せた後、プレス部を用いて前記封止部を加圧して前記封止部によって前記第1基材と前記第2基材とを貼り合せて基材組立体を製造する基材組立体の製造装置であって、前記プレス部に対向配置され、前記プレス部側に前記第1基材を配置させる第1基材配置部を有し、前記プレス部が、本体部と、前記本体部の前記第1基材配置部側の一面に設けられ、前記封止部を加圧する加圧部とを有し、前記基材組立体の製造装置が、前記本体部又は前記第1基材配置部の一面から突出して設けられ、前記第1基材配置部の前記本体部側への相対的な移動を規制する少なくとも1つのストッパ部とを
有し、前記ストッパ部の線膨張係数が、前記加圧部の線膨張係数よりも小さい、基材組立体の製造装置である。
【0009】
この基材組立体の製造装置によれば、少なくとも一方に封止部が固定された第1基材及び第2基材のうち第1基材が第1基材配置部のプレス部側に配置される。そして、第1基材と第2基材とが、第1基材と第2基材との間に封止部を挟み込み且つ第1基材と第2基材と封止部とによって形成される閉空間内に被封止物を配置した状態で重ね合わされる。そして、プレス部の加圧部によって第1基材及び第2基材を介して封止部が加圧される。このとき、ストッパ部が、本体部と第1基材配置部又は第1基材とによって挟まれた状態、又は、第1基材配置部と第2基材又は本体部とによって挟まれた状態で第1基材と第2基材との貼合せが行われる。こうして、封止部によって第1基材と第2基材とが貼り合わされて基材組立体が得られる。このとき、第1基材と第2基材とが封止部によって貼り合わされる際、ストッパ部が本体部と、第1基材配置部又は第1基材とによって挟まれた後、又は、第1基材配置部と第2基材又は本体部とによって挟まれた後は、ストッパ部によって第1基材配置部が本体部側に相対的に移動することが規制される。このため、本発明の基材組立体の製造装置によれば、得られる基材組立体において、第1基材と第2基材との間における封止部の厚さの均一性を向上させることができる。また1つのプレス部を用いて複数の基材組立体を一括して製造する場合、又は、1つのプレス部を用いて1つの基材組立体を製造する操作を複数回行うことにより複数の基材組立体を製造する場合には、これらの複数の基材組立体において、第1基材と第2基材との間の封止部の厚さの均一性を向上させることができる。別言すると、1つのプレス部を用いて複数の基材組立体を一括して製造する場合、又は、1つのプレス部を用いて1つの基材組立体を製造する操作を複数回行うことにより複数の基材組立体を製造する場合には、これらの複数の基材組立体において、第1基材と第2基材との間の封止部の厚さが過度に小さくなったり、過度に大きくなったりする基材組立体が製造されることが十分に抑制される。このため、本発明の基材組立体の製造装置によれば、複数の基材組立体を製造する場合に、基材組立体の歩留まりを向上させることもできる。
また、本発明の基材組立体の製造装置によれば、プレス部によって封止部が加熱される際にも、ストッパ部が加圧部よりも膨張しにくくなる。このため、第1基材と第2基材との間の封止部の厚さが過度に大きくなって第1基材及び第2基材同士が密着不良になることがより十分に抑制される。
【0010】
上記基材組立体の製造装置においては、前記少なくとも1つのストッパ部が複数のストッパ部で構成され、前記複数のストッパ部及び前記加圧部を前記第1基材配置部から前記本体部に向かう方向に平面視した場合に、前記複数のストッパ部が前記加圧部に沿うように設けられていることが好ましい。
【0011】
この場合、第1基材と第2基材とを貼り合せる際、ストッパ部が、本体部と、第1基材配置部又は第1基材とによって挟まれた後、又は、第1基材配置部と第2基材又は本体部とによって挟まれた後、第1基材配置部がプレス部の本体部側に相対的に移動することが複数のストッパ部によってより十分に規制される。その結果、得られる基材組立体において、封止部の厚さの均一性をより向上させることができる。
【0012】
上記基材組立体の製造装置においては、前記プレス部が前記ストッパ部を有し、前記ストッパ部が、前記本体部の一面から突出するように設けられていることが好ましい。
【0013】
この場合、第1基材配置部にストッパ部が設けられる場合に比べて、プレス部にストッパ部が直接設けられているため、封止部の厚さの均一性をより向上させることができる。
【0014】
上記基材組立体の製造装置においては、前記ストッパ部が、前記本体部と前記第1基材配置部とによって前記第1基材を介して挟まれた後、前記第1基材配置部の前記本体部側への相対的な移動を規制するものであることが好ましい。
【0015】
この場合、ストッパ部が、本体部と第1基材配置部とによって第1基材を介さないで挟まれた後、第1基材配置部の本体部側への相対的な移動を規制するものである場合に比べて、得られる基材組立体において、封止部の厚さの均一性をより向上させることができる。
【0018】
上記基材組立体の製造装置においては、前記加圧部が前記封止部を加熱することが可能であることが好ましい。
【0019】
この場合、封止部が加圧部によって加熱されて流動することが可能となるので、封止部の厚さの均一性をより向上させることができる。
【0020】
上記基材組立体の製造装置においては、前記ストッパ部の熱伝導率が、前記加圧部の熱伝導率よりも小さいことが好ましい。
【0021】
この場合、加圧部の方が、ストッパ部よりも熱が伝わりやすくなる。このため、第1基材と第2基材との間で封止部が効果的に加熱される。このため、第1基材と第2基材との貼合せをより短時間で行うことができる。
【0022】
また本発明は、上述した基材組立体の製造装置を用いて基材組立体を製造する基材組立体の製造方法であって、少なくとも一方に前記封止部が固定された前記第1基材及び前記第2基材のうち前記第1基材を前記第1基材配置部の前記プレス部側に配置させ、前記第1基材及び前記第2基材を、前記第1基材と前記第2基材との間に前記封止部を挟み込み且つ前記第1基材と前記第2基材と前記封止部とによって形成される閉空間内に前記被封止物を配置した状態で重ね合せる重合せ工程と、前記ストッパ部が、前記本体部と前記第1基材配置部若しくは前記第1基材とによって挟まれた状態か、又は、前記第1基材配置部と前記第2基材若しくは前記本体部とによって挟まれた状態で、前記プレス部の前記加圧部によって前記第1基材及び前記第2基材を介して前記封止部を加圧して、前記封止部によって前記第1基材と前記第2基材とを貼り合せて基材組立体を得る貼合せ工程とを含む、基材組立体の製造方法である。
【0023】
この基材組立体の製造方法によれば、少なくとも一方に封止部が固定された第1基材及び第2基材のうち第1基材が第1基材配置部のプレス部側に配置される。そして、第1基材と第2基材とが、第1基材と第2基材との間に封止部を挟み込み且つ第1基材と第2基材と封止部とによって形成される閉空間内に被封止物を配置した状態で重ね合わされる。次に、プレス部の加圧部によって第1基材及び第2基材を介して封止部が加圧される。このとき、ストッパ部が、本体部と第1基材配置部若しくは第1基材とによって挟まれた状態か、又は、第1基材配置部と第2基材又は本体部とによって挟まれた状態で第1基材と第2基材との貼合せが行われる。こうして、封止部によって第1基材と第2基材とが貼り合わされて基材組立体が得られる。上記製造方法においては、第1基材と第2基材とが封止部によって貼り合わされる際、ストッパ部が本体部と第1基材配置部若しくは第1基材とによって挟まれた後、又は、第1基材配置部と第2基材又は本体部とによって挟まれた後は、ストッパ部によって第1基材配置部がプレス部の本体部側に相対的に移動することが規制される。このため、本発明の基材組立体の製造方法によれば、得られる基材組立体における封止部の厚さの均一性を向上させることができる。また1つのプレス部を用いて複数の基材組立体を一括して製造する場合、又は、1つのプレス部を用いて少なくとも1つの基材組立体を製造する操作を複数回行うことにより複数の基材組立体を製造する場合には、これらの複数の基材組立体において、第1基材と第2基材との間の封止部の厚さの均一性を向上させることができる。別言すると、1つのプレス部を用いて複数の基材組立体を一括して製造する場合、又は、1つのプレス部を用いて少なくとも1つの基材組立体を製造する操作を複数回行うことにより複数の基材組立体を製造する場合には、これらの複数の基材組立体において、第1基材と第2基材との間の封止部の厚さが過度に小さくなったり、過度に大きくなったりする基材組立体が製造されることが十分に抑制される。このため、本発明の基材組立体の製造方法によれば、複数の基材組立体を製造する場合に、基材組立体の歩留まりを向上させることもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、得られる基材組立体における封止部の厚さの均一性を向上させることができる基材組立体の製造装置及び製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0027】
まず本発明の基材組立体の製造装置の第1実施形態について
図1〜
図4を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の基材組立体の製造装置による製造対象である基材組立体の一例を示す断面図、
図2は、本発明の基材組立体の製造装置の第1実施形態を示す部分切断面端面図、
図3は、
図2のプレス部を示す平面図、
図4は、
図2のプレス部を示す切断面端面図である。
【0028】
まず基材組立体の製造装置100による製造対象である基材組立体110について説明する。
【0029】
図1に示すように、基材組立体110は、第1基材10と、第1基材10に対向する第2基材20と、第1基材10及び第2基材20の間に配置される被封止物13と、第1基材10及び第2基材20の間で被封止物13を包囲する封止部12,22とを備えている。なお、本実施形態では、第1基材10が、導電性基板10aと、導電性基板10aの上に設けられる酸化物半導体層10bとを有している。
【0030】
次に、基材組立体の製造装置100について説明する。
【0031】
図2に示すように、基材組立体の製造装置100はチャンバ1を有している。チャンバ1は、開口を有する本体部1aと、本体部1aの開口を塞ぐように設けられる蓋部1bとを有している。
【0032】
チャンバ1の本体部1aには、ガスを流通させるガス流通口1cが形成され、ガス流通口1cにはガス排出管2aを介して真空ポンプ2bが接続されている。ガス排出管2aにはバルブV1が設置されている。なお、チャンバ1を構成する材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鋼、SUSなどが用いられる。
【0033】
またチャンバ1の蓋部1bには、封止部12,22を加圧するプレス部3が固定されている。
【0034】
チャンバ1の本体部1a内には、プレス部3に対向配置され、第1基材10をプレス部3側に配置させる第1基材配置部11が設けられており、第1基材配置部11は、第1基材10を配置させる第1基材配置面11aをプレス部3側に有している。第1基材配置部11に対向する位置には、第1基材10側で第2基材20を配置させる第2基材配置部(図示せず)が配置されるようになっている。なお、第1基材配置部11を構成する材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鋼、SUSなどが用いられる。
【0035】
ここで、プレス部3について説明する。
【0036】
図2〜
図4に示すように、プレス部3は、本体部3aと、本体部3aのうち第1基材配置部11側の平坦な一面3dに設けられ、封止部12,22を加圧する加圧部3bと、本体部3aの平坦な一面3dにから突出して設けられ、第1基材配置部11の本体部3a側への移動を規制する複数のストッパ部3cとを有している。加圧部3bは環状となっており、封止部12,22の形状に対応するパターン形状を有している。本体部3aの一面3dであって加圧部3bの内側には凹部3eが形成され、本体部3aの一面3dであって加圧部3bとストッパ部3cとの間には環状の凹部3fが形成されている。なお、本実施形態では、プレス部3は加熱機能をも有しており、加圧部3bは封止部12,22を加熱することが可能となっている。
【0037】
図3に示すように、複数のストッパ部3c及び加圧部3bを第1基材配置部11から本体部3aに向かう方向に平面視した場合に、複数のストッパ部3cは、加圧部3bの外側で加圧部3bに沿って不連続状に設けられている。ストッパ部3cは、本体部3aの一面3dから一定の高さTsを有している(
図4参照)。なお、ストッパ部3cの高さTsは、最終的に得られる基材組立体110の第2基材20の厚さをT、封止部12,22の合計厚さをtとした場合、下記式を満たすように設定される。
Ts≧T+t
【0038】
さらに基材組立体の製造装置100は、第1基材配置部11をプレス部3に向かって移動させる移動機構30を備えている。移動機構30は、第1基材配置部11の下面で第1基材配置部11を支持し、チャンバ1の本体部1aを貫通して
図2の矢印A方向に沿って第1基材配置部11を昇降させる昇降シャフト31と、チャンバ1の外側に配置され、昇降シャフト31を昇降させる駆動部32とを有している。移動機構30としては、例えばエアシリンダが用いられる。なお、基材組立体の製造装置100は、チャンバ1の本体部1aと駆動部32とを気密に接続する気密保持部材40によって接続されている。気密保持部材40としては、例えばベローズなどが用いられる。
【0039】
次に、上述した基材組立体の製造装置100を用いた基材組立体110の製造方法について、
図2〜
図8を参照しながら、基材組立体110として色素増感太陽電池を製造する場合を例にして説明する。
図5〜
図8は、
図2の基材組立体の製造装置100を用いた基材組立体110の製造方法の一連の工程を示す部分切断面端面図である。
【0040】
まず第1基材10及び第2基材20を用意する。第1基材10としては、例えば作用極を用いる。ここで、作用極としては、導電性基板10a上に多孔質酸化物半導体層10bが配置されたものを用いる。導電性基板10aとしては、例えば透明基板上に透明導電層を形成したものを用いる。
【0041】
第2基材20としては、例えば対極を用いる。対極としては、例えば導電性基板上に触媒層が形成されたものを用いる。
【0042】
そして、第1基材10及び第2基材20の各々に環状の封止部12、22を固定する(封止部固定工程)。
【0043】
次に、
図5に示すように、チャンバ1の蓋部1bを取り外した状態で、チャンバ1の本体部1a内において、第1基材配置部11の第1基材配置面11a上に、封止部12が固定された第1基材10をプレス部3側に配置させる(基材配置工程)。その後、第1基材10の多孔質酸化物半導体層10b上に被封止物13としての電解質を配置する。ここで、電解質としては、液体電解質、固体電解質又は疑似固体電解質のいずれを用いることもできる。
【0044】
一方、
図5に示すように、封止部22が固定された第2基材20をチャンバ1の本体部1a内に入れ、第2基材配置部に配置させる(基材配置工程)。
【0045】
そして、封止部22が固定された第2基材20を、封止部12が固定された第1基材10上に重ね合わせる(重合せ工程)。
【0046】
次に、
図6に示すように、チャンバ1の本体部1aに蓋部1bを取り付ける。このとき、蓋部1bにはプレス部3を固定しておく。そして、バルブV1を開き、真空ポンプ2bを作動させて、チャンバ1内のガス流通口1cからガスを排出する。こうしてチャンバ1の内部を減圧して真空雰囲気とする。
【0047】
その後、移動機構30により、第1基材配置部11をプレス部3に向かって移動させる。具体的には、駆動部32を駆動することにより、昇降シャフト31を
図6の矢印A方向に移動させる。すると、やがて、第2基材20がプレス部3の加圧部3bに接触する(
図7参照)。これにより、封止部12,22はプレス部3の加圧部3bによって加熱及び加圧される。
【0048】
このとき、第2基材20の移動は停止されるが、プレス部3のストッパ部3cがこの時点でまだ第1基材10に接触していない場合には、封止部12,22は加熱により溶融されるので、第1基材配置部11の移動はまだ可能である。このため、さらに移動機構30により、第1基材10がプレス部3のストッパ部3cに接触するまで第1基材配置部11をプレス部3に向かって移動させる。こうして第1基材10をストッパ部3cに接触させた後も引き続き、封止部12,22の加熱及び加圧が行われる。
【0049】
プレス部3のストッパ部3cがこの時点で第1基材10に接触している場合には、第1基材配置部11はこれ以上プレス部3の本体部3a側に移動することはできない。このため、この場合は、引き続き、封止部12,22の加熱及び加圧が行われる。
【0050】
こうして、封止部12、22によって第1基材10と第2基材20との貼合せが行われ、基材組立体110としての色素増感太陽電池が得られる(貼合せ工程)。
【0051】
上記製造方法においては、第1基材10と第2基材20とが封止部12,22によって貼り合わされる際、プレス部3のストッパ部3cが本体部3aと第1基材配置部11とによって第1基材10を介して挟まれた後は、ストッパ部3cによって第1基材配置部11の本体部3a側への移動が規制される。このため、上記製造方法によれば、得られる基材組立体110における封止部12,22の合計厚さの均一性を向上させることができる。また1つのプレス部3を用いて1つの基材組立体110を製造する操作を複数回行うことにより複数の基材組立体110を製造する場合には、これらの複数の基材組立体110において、第1基材10と第2基材20との間の封止部12,22の合計厚さの均一性を向上させることもできる。別言すると、1つのプレス部3を用いて1つの基材組立体110を製造する操作を複数回行うことにより複数の基材組立体110を製造する場合には、これらの複数の基材組立体110において、第1基材10と第2基材20との間の封止部12,22の合計厚さが過度に小さくなったり、過度に大きくなったりする基材組立体110が製造されることが十分に抑制される。このため、基材組立体110の製造方法によれば、基材組立体110の歩留まりを向上させることもできる。
【0052】
特に、基材組立体の製造装置100においては、プレス部3が複数のストッパ部3cを有し、複数のストッパ部3c及び加圧部3bを第1基材配置部11から本体部3aに向かう方向に平面視した場合に、複数のストッパ部3cが加圧部3bに沿うように設けられている。このため、第1基材10と第2基材20とを貼り合せる際、ストッパ部3cが、本体部3aと第1基材配置部11とによって第1基材10を介して挟まれた後、第1基材配置部11がプレス部3の本体部3a側に移動することが複数のストッパ部3cによってより十分に規制される。その結果、得られる基材組立体110において、封止部12,22の合計厚さの均一性をより向上させることができる。
【0053】
またプレス部3においては、本体部3aの一面3dであって加圧部3bの内側には凹部が形成されている。このため、プレス部3の熱が封止部12,22に効率よく伝わり、第1基材10と第2基材20との貼合せをより短時間で行うことができる。
【0054】
さらに複数のストッパ部3cが加圧部3bの外側で加圧部3bに沿って不連続状に設けられているため、1つの環状のストッパ部が加圧部3bを包囲するように連続状に設けられている場合に比べて、プレス部3からの熱がプレス部3cを通して第1基材10に逃げにくくなっている。そのため、プレス部3からの熱が加圧部3bを通して封止部12,22に効率よく伝わることが可能となる。
【0055】
ここで、上述したプレス部3についてさらに詳細に説明する。
【0056】
プレス部3は、上述したように、本体部3aと、加圧部3bと、ストッパ部3cとを有している。
【0057】
プレス部3の本体部3aを構成する材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、炭素鋼、銅、SUSなどが用いられる。
【0058】
ストッパ部3cを構成する材料は、特に限定されないが、ストッパ部3cを構成する材料としては、具体的には、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)などの耐熱性樹脂や、セラミック、ガラスなどの無機絶縁物、銅、SUSなどの金属が挙げられる。
【0059】
ストッパ部3cの線膨張係数は特に限定されるものではなく、加圧部3bの線膨張係数よりも小さい線膨張係数を有していてもよいし、加圧部3bの線膨張係数以上の線膨張係数を有していてもよいが、加圧部3bの線膨張係数よりも小さい線膨張係数を有することが好ましい。
【0060】
この場合、プレス部3によって封止部12,22が加熱される際にも、ストッパ部3cが加圧部3bよりも膨張しにくくなる。このため、第1基材10と第2基材20との間の封止部12,22の厚さが過度に大きくなって第1基材10及び第2基材20同士が密着不良になることがより十分に抑制される。
【0061】
加圧部3bの線膨張係数に対するストッパ部3cの線膨張係数の比は0より大きく10以下であることが好ましく、0.1〜1であることがより好ましい。
【0062】
加圧部3bの線膨張係数は、特に限定されるものではないが、例えば1×10
−6〜50×10
−6/Kであることが好ましい。またストッパ部3cの線膨張係数は、特に限定されるものではないが、例えば0.5×10
−6〜50×10
−6/Kであることが好ましい。
【0063】
またストッパ部3cの熱伝導率は特に限定されるものではなく、加圧部3bの熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有していてもよいし、加圧部3bの熱伝導率以上の熱伝導率を有していてもよいが、加圧部3bの熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有することが好ましい。
【0064】
この場合、加圧部3bの方がストッパ部3cよりも熱が伝わりやすくなる。このため、第1基材10と第2基材20との間で封止部12,22が効果的に加熱される。このため、第1基材10と第2基材20との貼合せをより短時間で行うことができる。
【0065】
加圧部3bの熱伝導率に対するストッパ部3cの熱伝導率の比は、0より大きく1以下であることが好ましく、0.0001〜0.1であることがより好ましい。
【0066】
加圧部3bの熱伝導率は、特に限定されるものではないが、例えば10〜400W・m
−1・K
−1であることが好ましい。またストッパ部3cの熱伝導率は、特に限定されるものではないが、例えば0.1〜400W・m
−1・K
−1であることが好ましい。
【0067】
ストッパ部3cは、例えば耐熱性の接着剤で本体部3aに接着させることにより固定させることができる。またストッパ部3cが金属で構成されている場合には、溶接によってプレス部3cを本体部3aに固定させることができる。
【0068】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、第1基材10及び第2基材20の各々に封止部12,22が固定された基材組立体を製造する場合を例にして基材組立体の製造方法について説明したが、本発明の基材組立体の製造装置は、第1基材10及び第2基材20のいずれか一方に封止部が固定された基材組立体を製造する場合でも、適用可能である。
【0069】
さらに上記実施形態では、ストッパ部3cは、環状の加圧部3bの外側で環状の加圧部3bに沿って不連続状に設けられているが、ストッパ部3cは、環状の加圧部3bの外側に環状の加圧部3bを包囲するように連続状に設けられていてもよいし、例えばストッパ部3cが2本である場合には、環状の加圧部3bを挟むように設けられていてもよい。
【0070】
さらに上記実施形態では、ストッパ部3cは、環状の加圧部3bの外側に設けられているが、基材組立体自体が環状である場合には、環状の加圧部3bの外側のみならず、環状の加圧部3bの内側にさらにストッパ部3cが設けられてもよい。
【0071】
また上記実施形態では、本体部3aの一面3dであって加圧部3bの内側に凹部3eが形成されているが、凹部3eは形成されていなくてもよい。
【0072】
また上記実施形態では、本体部3aの一面3dであって加圧部3bとストッパ部3cとの間には環状の凹部3fが形成されているが、凹部3fは必ずしも形成されていなくてもよい。
【0073】
さらにまた上記実施形態では、プレス部3が蓋部1bに固定され、第1基材配置部11が移動機構30によりプレス部3に向かって移動されるようになっているが、第1基材配置部11がチャンバ1に対して固定され、プレス部3が第1基材配置部11に向かって移動機構により移動されるようになっていてもよい。この場合でも、相対的には、第1基材配置部11がプレス部3に向かって移動されることとなる。
【0074】
さらに上記実施形態では、プレス部3において、ストッパ部3cが、本体部3aと第1基材配置部11とによって第1基材10を介して挟まれた後、第1基材配置部11の本体部3a側への移動を規制するようになっているが、プレス部3においては、
図9に示す基材組立体の製造装置200のように、ストッパ部3cが、本体部3aと第1基材配置部11とによって第1基材10を介して挟まれた後ではなく、本体部3aと第1基材配置部11とによって第1基材10を介さずに挟まれた後、第1基材配置部11の本体部3a側への移動を規制するようになっていてもよい。
【0075】
さらに上記実施形態では、プレス部3がストッパ部3cを有しているが、
図10に示す基材組立体の製造装置300のように、第1基材配置部11の第1基材配置面11a上にストッパ部3cが設けられてもよい。この場合でも、ストッパ部3cが本体部3aと第1基材配置部11とによって第1基材10を介することなく挟まれた状態で第1基材10と第2基材20との貼合せが行われる。このため、第1基材10と第2基材20とが封止部12,22によって貼り合わされる際、ストッパ部3cが本体部3aと第1基材配置部11とによって第1基材10を介することなく挟まれた後は、ストッパ部3cによって第1基材配置部11がプレス部3の本体部3a側に相対的に移動することが規制される。従って、得られる基材組立体における封止部12,22の合計厚さの均一性を向上させることができる。
【0076】
なお、
図10に示す基材組立体の製造装置300において、第1基材配置部11の第1基材配置面11a上にストッパ部3cが設けられ且つ第2基材20の面積が第1基材10の面積より大きい場合には、ストッパ部3cは、第2基材20と第1基材配置部11とによって挟まれた後、第1基材配置部11の本体部3a側への移動を規制するものとなっていてもよい。
【0077】
また上記実施形態では、プレス部3において、本体部3aの一面3dに1つの加圧部3bのみが設けられているが、
図11に示すプレス部303のように、本体部3aの一面3dに複数の(
図11では4つの)加圧部3bが設けられてもよい。なお、
図11に示すプレス部303においては、各加圧部3bは、4つのストッパ部3cによって包囲されている。
図11に示すプレス部303を用いて基材組立体110を製造する場合でも、得られる基材組立体110における封止部12,22の合計厚さの均一性を向上させることができる。また1つのプレス部303を用いて複数の基材組立体110を一括して製造することができるが、これら複数の基材組立体110においても、第1基材10と第2基材20との間の封止部12,22の合計厚さが過度に小さくなったり、過度に大きくなったりする基材組立体110が製造されることが十分に抑制される。このため、基材組立体の製造装置100によれば、複数の基材組立体110を製造する場合に、基材組立体110の歩留まりを向上させることもできる。
【0078】
また上記実施形態では、封止部12,22を加熱しながらプレスして第1基材10と第2基材20との貼合せが行われているが、封止部12,22がエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの紫外線硬化性樹脂を含む場合には、紫外線を照射しながら封止部12,22をプレスすることによって第1基材10と第2基材20との貼合せを行うこともできる。あるいは、封止部12,22がブチルゴム等の常温硬化性樹脂を含む場合には、封止部12,22をプレスするだけで第1基材10と第2基材20との貼合せを行うことができる。
【0079】
さらに上記実施形態では、基材組立体の製造装置100が第2基材配置部を有しているが、基材組立体の製造装置100は、第2基材配置部を有していなくてもよい。
【0080】
さらにまた上記実施形態では、基材組立体110として色素増感太陽電池を製造する場合を例にして説明したが、基材組立体110は、有機EL素子、液晶表示器、有機薄膜太陽電池であってもよい。この場合、被封止物13は電解質に代えて、有機発光体や液晶となる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0082】
(実施例1)
図2に示す基材組立体の製造装置100を用いて基材組立体を製造した。但し、プレス部としては、プレス部3に代えて、
図11に示す形状のプレス部303を使用した。具体的には、本体部3aの一面3dに4個の矩形環状の加圧部3bが形成され、4個の加圧部3bの外側で加圧部3bの各辺(直線状部分)に対向する位置にそれぞれストッパ部3cが1本ずつ形成され、隣り合う加圧部3b同士間には1本ずつストッパ部3cが形成されたプレス部を用いた。すなわち、プレス部303においては、各加圧部3bの外側であって4辺に対向する位置にそれぞれストッパ部3cが設けられるようにした。
【0083】
プレス部303の本体部3aを構成する材料としては、タフピッチ銅を用いた。各加圧部3bは、110mm×80mmの外形寸法を有し、その内側の幅を2mmとした。ストッパ部3cのうち加圧部3bの長辺に対向する位置のストッパ部3cとしては、厚さ150μm、幅5mm、長さ100mmのポリイミド樹脂からなるポリイミドテープ(線膨張係数:15×10
−6/K、熱伝導率:0.29W・m
−1・K
−1)を用いた。4つのストッパ部3cのうち加圧部3bの短辺に対向する位置のストッパ部3cとしては、厚さ150μm、幅5mm、長さ70mmのポリイミド樹脂からなるポリイミドテープ(線膨張係数:15×10
−6/K、熱伝導率:0.29W・m
−1・K
−1)を用いた。
【0084】
次に、第1基材10及び第2基材20を4つずつ用意した。第1基材10としては、作用極を用いた。ここで、作用極としては、導電性基板10a上にチタニアからなる厚さ10μmの多孔質酸化物半導体層10bが配置されたものを用いた。導電性基板10aとしては、305mm×305mm×厚さ2.2mmの透明導電性基板を用いた。透明導電性基板としては、透明ガラス基板の上にFTO膜が形成されたものを用いた。
【0085】
第2基材20としては、対極を用いた。対極としては、チタン箔からなる厚さ42μmの導電性基板上に白金からなる厚さ10nmの触媒層が形成されたものを用いた。
【0086】
そして、第1基材10及び第2基材20の各々に厚さ60μm、幅2mmの矩形環状の封止部12、22を固定した。封止部12、22としては、バイネル(商品名、デュポン社製)を用いた。
【0087】
次に、
図5に示すように、チャンバ1の蓋部1bを取り外した状態で、チャンバ1の本体部1a内において、SUSからなる厚さ2cmの第1基材配置部11の第1基材配置面11a上に、封止部12が固定された第1基材10を配置させた。その後、第1基材10の多孔質酸化物半導体層10b上に被封止物13としての電解質を配置した。電解質としては、溶媒としてのアセトニトリルとヨウ素系溶質とで構成されるものを用いた。
【0088】
一方、
図5に示すように、封止部22が固定された第2基材20をチャンバ1の本体部1a内に入れた。このとき、第2基材配置部は使用しなかった。
【0089】
そして、第2基材20に環状の封止部22を固定したものを、第1基材10に環状の封止部12を固定したものの上に重ね合わせた。
【0090】
次に、
図6に示すように、チャンバ1の本体部1aに蓋部1bを取り付けた。このとき、蓋部1bにはプレス部303を固定した。そして、バルブV1を開き、真空ポンプ2bを作動させて、チャンバ1内のガス流通口1cからガスを排出した。こうしてチャンバ1の内部を減圧して真空雰囲気とした。
【0091】
その後、移動機構30としてのエアシリンダにより、第1基材配置部11をプレス部303に向かって移動させた。具体的には、エアシリンダの推力を0.17MPaに設定して、昇降シャフト31を
図6の矢印A方向に移動させた。やがて、第2基材20がプレス部303に接触した後、移動機構30により、第1基材10がプレス部303のストッパ部3cに接触するまで第1基材配置部11をプレス部303に向かって移動させ、封止部12,22をプレス部303の加圧部3bによって加熱及び加圧した。このとき、加熱及び加圧時間は90秒とし、加圧部3bの表面温度は200℃とした。
【0092】
こうして、封止部12によって第1基材10と第2基材20とを貼り合せ、基材組立体としての色素増感太陽電池モジュールを得た。
【0093】
(実施例2)
表1に示すように、第1基材10と第2基材20とを貼り合せる際のエアシリンダの推力を0.25MPaとしたこと以外は実施例1と同様にして基材組立体としての色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0094】
(実施例3)
表1に示すように、第1基材と第2基材とを貼り合せる際のエアシリンダの推力を0.40MPaとしたこと以外は実施例1と同様にして基材組立体としての色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0095】
(実施例4)
プレス部として、各加圧部3bの長辺に対向する位置にのみストッパ部3cを設け、短辺に対向する位置にストッパ部3cを設けないものを用いたこと以外は実施例1と同様にして基材組立体としての色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0096】
(実施例5)
表1に示すように、ストッパ部3cを、ポリイミド樹脂に代えて、セラミック(線膨張係数:9.3ppm/℃、熱伝導率:1.4W/mK)で構成したこと以外は実施例1と同様にして基材組立体としての色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0097】
(実施例6)
表1に示すように、ストッパ部3cの高さTsを150μmから165μmとしたこと以外は実施例1と同様にして基材組立体としての色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0098】
(実施例7)
表1に示すように、ストッパ部3cを、ポリイミド樹脂に代えて、銅で構成したこと以外は実施例1と同様にして基材組立体としての色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0099】
(比較例1)
表1に示すように、プレス部として、プレス部303からストッパ部3cを全て除いたものを用いたこと以外は実施例1と同様にして基材組立体としての色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0100】
<歩留まり評価>
上記のようにして得られた実施例1〜7及び比較例1の色素増感太陽電池モジュールを構成する各色素増感太陽電池について、第2基材(対極)20の厚さt及び封止部12,22の厚さの合計厚さ(=t+T)をマイクロゲージで測定し、4つの色素増感太陽電池における合計厚さ(=t+T)の平均値及び標準偏差σ(バラツキ)を算出した。結果を表1に示す。
【0101】
またこのとき、合計厚さ(=t+T)の合格基準を115〜165μmの範囲内とし、歩留まりを下記式に基づいて算出した。結果を表1に示す。
歩留まり(%)=100×(N−合格基準を満たさなかった色素増感太陽電池の数)/N
(式中、Nは色素増感太陽電池モジュールを構成する全色素増感太陽電池の数を表す。)
【表1】
【0102】
表1に示す結果より、実施例1〜7の色素増感太陽電池モジュールでは合計厚さ(=t+T)のバラツキを表す標準偏差σが3.1〜9.4であったのに対し、比較例1の色素増感太陽電池モジュールでは標準偏差σが12.7であり、実施例1〜7の色素増感太陽電池モジュールにおける封止部の厚さの均一性が比較例1の色素増感太陽電池モジュールにおける封止部の厚さの均一性よりも向上していることが分かった。また実施例1〜7の色素増感太陽電池モジュールでは歩留まりが93〜100%であったのに対し、比較例1の色素増感太陽電池モジュールでは歩留まりは75%であり、実施例1〜7の色素増感太陽電池モジュールにおける歩留まりが比較例1の色素増感太陽電池モジュールにおける歩留まりよりも大きいことが分かった。
【0103】
以上より、本発明の基材組立体の製造装置によれば、得られる基材組立体における封止部の厚さの均一性を向上させることができることが確認された。