(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接続構造の連続体は、栽培期間が一定期間を経過した栽培物が定植された隣り合う前記栽培パレット間に、前記栽培期間が一定期間を経過時に、前記定植孔を有しない栽培パレットが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の水耕栽培装置。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培には、DFT湛液水耕、NFT薄膜水耕、毛管水耕(浮き根式水耕)および噴霧耕がある。DFT湛液水耕は、栽培槽に培養液(植物の生長に必要な肥料が溶けた液肥)を溜めて栽培する方法であり、特徴として、(1)培地なし、(2)根が培養液中に位置する、(3)根が培養液から養水分を摂る、(4)根が培養液から酸素を摂る。NFT薄膜水耕は、1%程度の緩やかな傾斜を持つ床面上に、培養液を薄膜となるように流下させて栽培する方法であり、特徴として、(1)培地なし、(2)根が培養液中および空気中に位置する、(3)根が培養液から養水分を摂る、(4)根が空気中から酸素を摂る。DFT湛液水耕は、NFT薄膜水耕に比べ、養液の量が多いため肥料濃度や液温の変化がゆるやかとなり、管理しやすい。
【0003】
従来より、DFT湛液水耕について、栽培槽の長手方向の一端で苗を定植した複数の栽培床を培養液に浮ばせ、栽培日数を経過するごとに栽培床を培養液に浮んだ状態で栽培槽の長手方向の他端方向に順次に移動可能であり、栽培槽の長手方向の他端で成長作物を収穫することが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1に開示された水耕栽培装置は、培養液供給管理手段により栽培槽に培養液を一定の深さに貯留し気泡を注ぎ込み一定の速度で流し、複数の栽培容器を培養液に浮かべ、流されないように係留機構で係留する。栽培容器は、発泡スチロール等の気泡含有材料製の円板形の定植部材である浮遊部とこの浮遊部に回転を与える液中に没する翼とからなり、定植部材の中央に植物を定植する。係留機構は、移動阻止用のバーと、バーを移動させるアクチュエータとからなる。この水耕栽培は、DFT湛液水耕であり、培養液の流れ方向上流側で苗を定植した栽培容器を培養液に浮ばせ、必要に応じて係留を解いて栽培容器を下流側へ順次移動させ、培養液の流れの下流側で成長作物を収穫する。
【0005】
特許文献2に開示された水耕栽培装置は、栽培槽の長手方向に沿った一側に複数の低い開閉可能な排水口および栽培槽の長手方向の一端に高い排水口を有する。栽培槽内に長手方向に敷き詰めた状態に複数の栽培床を載置し、低い排水口を開いて培養液供給管理手段により栽培槽内に培養液を供給する。培養液は栽培槽の短手方向に流れ、かつ培養液の深さを浅く維持され、これにより、DFT湛液水耕栽培が行われる。ただし、低い排水口を限りなく低くした場合にはNFT薄膜水耕栽培となる。栽培日数が1日または数日経過するごとに収穫する。この収穫に当っては、低い排水口を閉じ培養液の深さを深くし複数の栽培床を浮上させる。高い排水口から培養液の排水が行われることにより、培養液の流れが栽培槽長手方向に変わる。培養液の流れ方向下流端で複数の栽培床を取り外して成長作物を収穫する。すると、残りの栽培床が培養液の流れにより移動し、流れ方向上流端が空く。そこで、苗を定植した複数の栽培床を培養液に浮ばせ、もって、複数の栽培床が栽培槽の長手方向に一杯に並んだ状態になるので、低い排水口を開いて培養液の深さを浅くし、複数の栽培床を栽培槽に載置して栽培を続行する。以後、これを繰り返す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1〜
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る水耕栽培装置および水耕栽培方法を示す図である。
先ず構成を説明する。第1の実施の形態に係る水耕栽培装置1は、所要の液深を保ち、かつ槽内全域を通流するように培養液を貯留する栽培槽10と、栽培槽内に培養液を常時または経時的に供給する培養液供給管理手段20と、培養液中に常時または経時的に空気を供給する空気供給手段30と、定植孔41aを有し、定植孔41aに栽培物の根を挿通して根基部を保持し栽培槽10内の培養液に浮かぶ栽培床40と、を備え、栽培床40は、定植孔41aを有する定植部材41と、定植部材41の下面に設けられ定植部材41を培養液から離反した状態にして浮かぶ浮子部42と、を有した栽培パレット43が栽培槽10の長手方向に複数連なり、栽培中は、培養液との間に空気層が存在する状態に浮かび、かつ、培養液の液面を栽培槽10に照射する栽培光から遮蔽する状態になる接続構造の連続体である。
【0016】
以下さらに詳述する。
図1に示すように、水耕栽培装置1は、栽培槽10と培養液供給管理手段20と空気供給手段30と栽培床40とを備えている。
【0017】
栽培槽10は、金属製あるいは合成樹脂製であり、上面が開放した直方体空間を有する長矩形の容器であり、栽培作業がやりやすい高さとなるように架台上に載置される構成であることが望ましい。栽培槽10の大きさは、栽培の規模に応じて決められる。例えば、一日の収穫の栽培パレット43を3つとし、30日で苗から成長植物に成長するものとし、毎日収穫する場合には、90個の栽培パレット43を同時に栽培できる長さに決められる。また、1つの栽培パレット43から、例えば3つの成長植物を収穫するには、栽培槽10の幅および栽培パレット43の長さを、3つの苗が適切な間隔を空けられる大きさであることにより、成長植物として成長したときに、隣り合う成長植物の根同士が絡まず、かつ栽培床40上の葉菜部と葉菜部との間隔が保たれるように、設定する。
【0018】
栽培槽10は、槽内における給液管11と溢流管13との相対的な平面的位置関係および高さ位置関係により、所要の液深を保ち、かつ栽培槽10内の隅に培養液の停滞が存在しないで槽内全域を通流するように培養液を貯留するように設けられている。この実施の形態では、栽培槽10は、長手方向の一側に培養液の給液管11、他側に溢流管13を有し、培養液が所要の液深を保って長手方向の一側から他側に向かって流れるようになっている。
【0019】
一層具体的には、給液管11は、長手方向の一側において栽培槽10内底部へ培養液を給液できるように給液口12が位置され、溢流管13は、長手方向の他側において溢流口14が高さ調整自在であることにより、後述する栽培床40から垂下する栽培物の根の長さに応じた所要の液深となるように培養液の液面レベルを調整できるように設けられている。
【0020】
培養液供給管理手段20は、初期の培養液調整に必要な栽培槽10の内容積よりも大きく設けられる容積を有する貯液タンク21と、貯液タンク21と栽培槽10との間で培養液を循環させるための循環ポンプ22と、送液管23と、還流管24と、を有し、上述した栽培槽10の構成の一部である給液管11と溢流管13と協働して培養液の供給管理を行うようになっている。栽培初期の栽培槽10への培養液の供給時においては、貯液タンク21において、水分および水分に対して所定割合の養分が供給され、水分中に養分を溶解、または混合してなる培養液が調整される。
【0021】
また、必要に応じて、栽培初期から一定期間経過するごとに、貯液タンク21において養分の補給が行われる。なお、攪拌羽を有し攪拌を行う攪拌手段が貯液タンク21内に設けられるのが好ましい。別の方法としては、栽培槽で行っている空気供給手段と同じものを用いて貯液タンク21内でバブリングすることも好ましい。循環ポンプ22は、制御装置により常時または経時的に駆動されるようになっている。
【0022】
培養液供給管理手段20は、循環ポンプ22を作動し、貯液タンク21に貯留される培養液を、送液管23および給液管11を通して栽培槽10内に培養液を常時または経時的に供給するようになっており、栽培槽10内に貯留される培養液が所定の液深になり液面が溢流口14の高さに達すると、それ以後、培養液が、溢流口14内にオーバーフローし、溢流管13および還流管24を通して貯液タンク21内に還流されるようになっている。
【0023】
空気供給手段30は、栽培槽10の外部に設けられるコンプレッサ31と、一端をコンプレッサ31の空気吐出口に接続され、中途が栽培槽10の底面部を貫通し、栽培槽10内の底面部に沿って長手方向に伸びている空気供給管32と、栽培槽10内において空気供給管32に一定ピッチで設けられた複数の空気吐出ノズル33と、を有する。コンプレッサ31は、制御装置により常時または経時的に駆動されるようになっており、培養液中に常時または経時的に空気を供給する。なお、循環ポンプ22の上流側にエグゼクタを利用したマイクロ粒子状の泡を引き込むことにより、送液管23および給液管11を通して栽培槽10内に供給する培養液中にマイクロ粒子状の泡を注入する構成としてもよい。
【0024】
図2、
図3に示すように、栽培床40は、栽培槽10の両側の側壁部10aの上方に被さる長さを有する定植部材41と、定植部材41の下面に設けられ栽培槽10の短手方向に浮動しないように栽培槽10の側壁部10a内面により規制され一部が培養液中に沈む浮子部42と、を有する複数の栽培パレット43よりなり、栽培中は、隣り合う栽培パレット43の定植部材41の端部同士を次々に重ね、かつ、各重ね面に貼着された雌雄一対の面状ファスナ45,46同士を係合させてなる、複数の栽培床40の接続構造の連続体である。栽培床40は、栽培中は、培養液との間に空気層が存在する状態に浮かび、かつ、培養液の液面を栽培槽10に照射する栽培光から遮蔽する状態になる、栽培中において接続構造の連続体である。
【0025】
さらに詳述すると、栽培床40は、栽培槽10内に貯留する培養液に対し次々に一部が重なる連結状態となって液面全面を遮光するように浮かぶ複数の栽培パレット43よりなる。各栽培パレット43は、定植孔41aを有する定植部材41と、定植部材41の下面に設けられた2つの浮子部42と、を有する。定植部材41と2つの浮子部42は、耐久性、耐候性、耐寒性、軽量性および剛性等を有する材料で形成されることが好ましい。定植部材41と2つの浮子部42は、一体成形体であっても、別体を一体に連結した構成であってもよい。浮子部42は、中空タンク状に形成されても、あるいは発泡スチロール製の中実体であってよい。
【0026】
定植部材41は、長尺方向が栽培槽10の幅方向に一致している矩形板であり、栽培槽10の両側側面部の上端面に対して非接触でありかつ栽培槽10の両側側面部の外方に若干寸法延びた長さを有する。
【0027】
2つの浮子部42は、定植部材41を培養液から離反した状態にして浮かぶように設けられる。これにより、定植部材41の下面と培養液の液面との間に隙間空間が設けられ、定植部材41に定植される栽培物Pの根の上部が空気に直接接触し、空気から酸素を摂取できる。さらに、2つの浮子部42は、栽培槽10の両側側面部に対して例えば5mm離間するように互いの間隔を大きく離れた状態に設けられる。2つの浮子部42が、栽培槽10の幅方向への移動を規制されることにより、定植部材41は、長尺方向の両端部が栽培槽10の両側側面部の上端面に被さる状態に保持され、これによって、栽培光(太陽光または蛍光灯やLEDによる人工光)が培養液の液面に到達しない。
【0028】
栽培物(苗)Pの栽培床40への定植に際し、根挟持具44により栽培物(苗)Pの根基部が挟持され、先に栽培物Pの根を定植孔41aに挿通してから、根挟持具44が定植孔41aに嵌合される。以後、収穫までの期間、根挟持具44により栽培物(苗)Pの根基部が挟持される。根挟持具44は、定植孔41aに安定した差込状態に保持されればよく、通常は発泡ウレタン製が好ましい。定植孔41aは、例えば22φmmとし、根挟持具44は、例えば一辺が30mmの発泡ウレタン製の立方体とするのがよい。
【0029】
栽培床40は、栽培槽10内の培養液の全液面を栽培光から遮蔽した状態に培養液に浮かんだ状態で、栽培物Pを栽培するように構成されている。栽培床40は、栽培物Pの根の下部を培養液に浸漬させ、かつ栽培物Pの根の上部を空気に接触させた状態で、栽培物Pを栽培するように構成されている。
【0030】
次に、上述のように構成された水耕栽培装置1による水耕栽培方法を説明する。
【0031】
上記水耕栽培装置1による水耕栽培方法は、栽培槽10に培養液を供給し、所要の液深を保ち、かつ槽内全域を通流するように培養液を貯留し、栽培槽10に、定植孔41aを有し定植孔41aに栽培物Pを定植した定植部材41と定植部材41の下面に浮子部42とを有する、栽培中において接続構造の連続体である栽培床40を、培養液に浮かばせ、かつ培養液の液面を栽培光から遮蔽し、定植部材41に定植した栽培物Pの根を、定植部材41と培養液との間に空気層に接触させるとともに培養液中に垂れた状態に設置し、水耕栽培を行い、栽培日数が1日または数日経過するごとに、栽培槽10の長手方向の一端および他端のいずれか一方において、栽培物(成長物)Pを収穫し、かつ、収穫に係る栽培床部分を栽培槽10外に取り出し、残りの栽培床部分を収穫により空いた培養液の液面部分を遮蔽するように移動し、反対側に露出する培養液の液面部分を遮蔽するように栽培物(苗)Pを定植した新しい栽培床部分を供給する構成である。
【0032】
以下さらに詳述する。まず、便宜的に、栽培槽10の、培養液の流れ方向下流側を収穫側、流れ方向上流側を苗供給側とする。最初に、栽培槽10の上面開口を覆うだけの数の栽培パレット43を用意し、パレット上面に貼着された雄形の面状ファスナ45の側を収穫側、パレット下面に貼着された雌形の面状ファスナ46の側を苗供給側として、各栽培パレット43の各両端を栽培槽10の両側側面に載せる。
【0033】
この際、一の栽培パレット43の面状ファスナ45の下側に、苗供給側の隣りの栽培パレット43の面状ファスナ46を重ねて接続することを次々に行って、栽培槽10の上面開口を必要な数の栽培パレット43で覆う。一日に収穫する数に相当する苗供給側の複数の栽培パレット43については、定植孔41aに根挟持具44を介して栽培物(苗)Pを定植する。これにより、栽培槽10の培養液の液面には、光が届かない状態になる。この手順は、最初だけ行う。
【0034】
次いで、栽培物(苗)を定植してから根が乾燥しない短時間のうちに、栽培槽10に培養液を供給し、所要の液深を保ち、かつ槽内全域を通流するように培養液を貯留する。これにより、栽培槽10の両側側面上端に載置されていた全ての栽培パレット43が、定植部材41の下面の浮子部42の浮力作用により栽培槽10の両側側面上端から離れ、培養液に浮かんだ状態になる。なお、先に培養液の貯留を行い、次いで、上述した培養液に浮かんだ状態の複数の栽培パレット43からなる接続構造の連続体を形成してもよい。
【0035】
次いで、収穫日数が来る毎に、栽培槽10の収穫側の端部において、一日に収穫する数に相当する収穫側の1つまたは複数の栽培パレット43を、面状ファスナ45,46接続を解いて取り外し、これにより、栽培槽10の収穫側が開くので、残りの培養液に浮かんだ状態の接続構造の連続体である複数の栽培床40を手押しにより収穫側に移動して栽培槽10の収穫側を塞ぎ、さらに今度は、栽培槽10の苗供給側が開くので、栽培槽10の苗供給側の端部において、栽培物(苗)Pを定植した1つまたは複数の栽培パレット43を面状ファスナ45,46により接続することにより、再び延長した接続構造の連続体で栽培槽10の全面を遮蔽し、栽培光が培養液の液面に到達しないようにする。このように、接続構造の連続体で栽培槽10の全面を遮蔽して栽培するので、栽培光が培養液の液面に到達しないから、栽培槽10内に藻が発生しない。
【0036】
こうして、定植部材41に定植した栽培物Pの根を、定植部材41と培養液との間に空気層に接触させるとともに培養液中に垂れた状態に設置し、水耕栽培を継続する。
【0037】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る水耕栽培装置1を用いた水耕栽培方法によれば、複数の栽培パレット43の接続構造の連続体からなる栽培床40を移動が容易であるように培養液に浮かべて栽培し、栽培床40に定植した栽培物Pの根に空気を接触させ根が空気中の酸素を摂取できるとともに培養液から養分を摂取でき、栽培中に栽培光が培養液に照射することが無く栽培槽10の内面および定植部材41に藻が繁殖するのを無くして栽培床40の反復使用が可能である。
【0038】
[第1の実施の形態の変形例]
この変形例に係る水耕栽培装置および水耕栽培方法として、
図4、
図5に示すように、複数の栽培床40Aの接続構造の連続体は、栽培期間が一定期間を経過した栽培物が定植された隣り合う栽培パレット43間に、定植孔を有しない栽培パレット43Aが配置された構成とすることができる。
【0039】
すなわち、栽培床40Aが、栽培途中の位置から、隣接する栽培パレット43と栽培パレット43との間に、定植孔を有しない栽培パレット43Aを挿入されている形態に変更されるということである。栽培パレット43Aは、定植孔41aを有していない点が、第1の実施の形態に係る栽培パレット43と相違している。
【0040】
この変形例では、栽培植物の成長につれて、隣り合う栽培パレット43間における、隣り合う成長植物の根同士が絡まず、かつ葉菜部と葉菜部との間隔が十分に保たれることを栽培者において観察し、成長植物の成長により栽培パレット43間の隣接では対応できないものとなったとき、栽培中の栽培パレット43間に定植孔41aを有しない栽培パレット43Aが挿入された形態である。
【0041】
ここで、栽培槽10の長さについて説明する。第1の実施の形態では、栽培槽10の大きさは、栽培の規模に応じて、例えば、90個の栽培パレット43を同時に栽培できる長さに決められる。これに対し、この変形例では、栽培槽10の大きさを、前記90個の栽培パレット43を同時に栽培できる長さに、挿入するパレット43Aの数量分の長さを加えた大きさに決められるが、栽培パレット43の幅は、第1の実施の形態に係る栽培パレット43の幅よりも小さくすることができる。
【0042】
すなわち、この変形例によれば、栽培パレット43の幅を、定植孔41aを有しない栽培パレット43Aの挿入時の成長植物の成長途中の大きさに対応させればよく、収穫時の成長植物の大きさに対応させる第1の実施の形態に係る栽培パレット43よりも栽培パレット43を幅狭に設計することができる。その結果、栽培パレット43Aの挿入後の成長植物の間隔を第1の実施の形態と同じとした場合には、栽培パレット43Aの挿入前の区間で栽培パレット43を幅狭とした縮小分だけ、栽培槽10の大きさが短縮される。
【0043】
[第2の実施の形態]
図6〜
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る水耕栽培装置および水耕栽培方法を示す図である。
【0044】
図6に示すように、水耕栽培装置1Aは、第1の実施の形態と同一の構成・作用を有する栽培槽10、培養液供給管理手段20および空気供給手段30と、第2の実施の形態に特有の構成・作用を有する栽培床50と、を備えている。栽培槽10と、培養液供給管理手段20と、空気供給手段30については、第1の実施の形態と同一の符号を付けて各説明を省略する。
【0045】
図7、
図8に示すように、栽培床50は、定植孔51aを有する定植部材51と定植部材51の下面に設けられ2つの浮子部52とからなる複数の栽培パレット53が次々にヒンジ部54でキャタピラー状に連結された連続体であり、栽培槽10の長手方向の両端の各外方でかつ栽培槽10の幅方向各外方に備える各一対のガイド輪56,57に巻き掛けられることにより、栽培槽10の上側と下側および長手方向の両側を取り巻いて設けられる。ヒンジ部54は、隣り合う栽培パレット53の定植孔51a同士を連結している。ヒンジ部54は、両端が栽培槽10の幅方向両側に張り出したピン軸を有し、かつピン軸の両端に回転可能なコロ55を有している。定植孔51aを有する定植部材51と、2つの浮子部52は、第1の実施の形態に係る定植孔41aを有する定植部材41と、2つの浮子部42と同一の構成、機能を有するので、説明を省略する。
【0046】
各一対のガイド輪56,57は、それぞれハンドルにより回転可能であり、かつ、ロック手段により回転をロックされるようになっている。一対のガイド輪56,57は、それぞれ外周側が開放している断面U形のガイド溝を有している。栽培床50は、ヒンジ部54のピン軸の両端に備えられたコロ55がガイド溝に嵌合してガイド輪56,57に巻き掛けられている。ガイド輪56,57の断面U形のガイド溝内には、コロ55の前後に突出する突起を有し、コロ55がガイド輪56,57の円周位置に係合される。ガイド輪56がハンドルにより回転されると、栽培槽10の上側に位置する栽培パレット53がガイド輪56に巻き付く方向に、キャタピラー状の連続体である栽培床50を旋回移動可能である。
【0047】
栽培床50は、栽培槽10の上側に来る複数の栽培パレット53が栽培槽10内の培養液に浮かび、定植部材51の下面と培養液とが離間しているとともに、培養液の全液面を覆い、栽培光が培養液に届かないように構成されている。
【0048】
次に、上述のように構成された水耕栽培装置1Aの作用、すなわち水耕栽培方法を説明する。
【0049】
図6に示すように、この水耕栽培方法は、栽培槽10に培養液を供給し、所要の液深を保ち、かつ槽内全域を通流するように培養液を貯留し、栽培槽10に、定植孔51aを有し定植孔51aに栽培物(苗)Pを定植した定植部材51と定植部材51の下面に浮子部42とを有する一体形の連続体である栽培床50を、培養液に浮かばせ、かつ培養液の液面を栽培光から遮蔽し、定植部材41に定植した栽培物Pの根を、定植部材41と培養液との間に空気層に接触させるとともに培養液中に垂れた状態に設置し、水耕栽培を行い、栽培日数が1日または数日経過するごとに、栽培槽10の長手方向の一端および他端のいずれか一方において、成長作物Pを収穫し、かつ、収穫に係る栽培床部分を栽培槽10外に取り出し、ガイド輪56を回動させることにより、キャタピラー状の連続体である栽培床50を収穫に係る栽培床部分の個数だけ収穫方向に移動させ、反対側の、収穫に係る栽培床部分の個数に対応する数の未定植の栽培パレット53に栽培物(苗)Pを定植した新しい栽培床部分を供給し、ガイド輪56,57をロックし、培養液の液面栽培を続行する。成長した栽培物Pの収穫は、ガイド輪56の軸心の上方位置まで引き上げて、葉菜部と根を切り離す。
【0050】
以上説明したように、上記第2の実施の形態に係る水耕栽培装置および水耕栽培方法によれば、栽培床50を移動が容易であるように培養液に浮かべて栽培し、栽培床50に定植した栽培物Pの根に空気を接触させ根が空気中の酸素を摂取できるとともに培養液から養分を摂取でき、栽培中に栽培光が培養液に照射することが無く栽培槽10の内面および定植部材51に藻が繁殖するのを無くして、キャタピラー状の連続体である栽培床50の反復使用が可能である。
【0051】
[第3の実施の形態]
図9〜
図12は、本発明の第3の実施の形態に係る水耕栽培装置および水耕栽培方法を示す図である。
【0052】
図9に示すように、水耕栽培装置1Bは、第1の実施の形態と同一の構成・作用を有する栽培槽10B、培養液供給管理手段20および空気供給手段30と、第3の実施の形態に特有の構成・作用を有する栽培床60と、を備えている。培養液供給管理手段20と、空気供給手段30については、第1の実施の形態と同一の符号を付けて各説明を省略する。栽培槽10Bについては、両側の側壁部上端に栽培槽10Bの側壁部付近への栽培光を遮蔽する庇15が付設されているとともに、栽培槽10Bの長手方向両端で栽培床60を載せた状態にガイドする上流側ガイド板16と下流側ガイド板17が設けられており、栽培槽10Bのその他については、第1の実施の形態と同一の構成・作用を有するので説明を省略する。
【0053】
図10に示すように、栽培床60は、一方の面では突出し他方の面では凹部となるように成形された一のフィルムと、一のフィルムの凹部に空気を閉じ込めて一のフィルムに対して接着した他のフィルムと、の2枚のフィルムからなる柱状突起部を配列状に有する気泡緩衝材61と、気泡緩衝材61の他方の面(平面)に積層された遮光性シート62とからなる連続体である栽培床用シートである。この栽培床用シート60は、幅寸法が、栽培槽10の両側の側壁部10aに接する大きさであり、定植孔63が、幅方向の中程にかつ長さ方向に所要ピッチで開けられている。
図9、
図11に示すように、栽培床用シート60を巻いてなる原反ロールRが、栽培槽10の長手方向の一端外方に設置される。栽培床用シート60は、原反ロールRから巻き解かれ、気泡緩衝材61が下側になるように上流側ガイド板16上に載せられてから、栽培槽10内の培養液に浮かぶように導かれ、さらに、下流側ガイド板17上に載せられ、栽培槽10の長手方向の他端外方まで延ばして巻き取られるように構成されている。
【0054】
栽培床60は、気泡緩衝材61の空気を閉じ込められた配列状の複数の柱状突起部が浮子部であり、その他の部分が定植部材である。栽培床60は、シート幅中央に定植孔63を有し、定植孔63に栽培物(苗)Pの根を挿通し、根挟持具64を介して根基部を保持し、上流側ガイド板16と下流側ガイド板17との間で、栽培槽10内の培養液に浮かんだ状態になる。栽培床60は、気泡緩衝材61の空気を閉じ込められた配列状の複数の柱状突起部が浮子部となり、培養液の液中に全没しないので、
図12に示すように、各柱状突起部の周りにair溜まりができる。
【0055】
次に、上述のように構成された水耕栽培装置1Bの作用、すなわち水耕栽培方法を説明する。
【0056】
図9に示すように、この水耕栽培方法は、上流側ガイド板16寄りの一日収穫分の定植孔63に栽培物(苗)Pを定植し、この定植を所定期日ごとに繰り返して、上流側ガイド板16と下流側ガイド板17との間を栽培槽10内の培養液に浮かんだ状態に栽培物Pが埋め尽くし、下流側ガイド板17寄りの一日収穫分の栽培物Pが大きく成長したときに収穫することができる。栽培物Pの収穫は、下流側ガイド板17上に栽培物Pを根ごと引き上げ、下流側ガイド板17と巻取装置Wとの間の位置で、葉菜部と根を切り離す。収穫後は、収穫側に設置された巻取装置Wで栽培床用シート60を収穫分のピッチだけ所要巻き取る。これにより、上流側ガイド板16と下流側ガイド板17との間で、栽培槽10内の培養液に浮かんだ状態になる部分が、収穫分のピッチだけ移動する。上流側ガイド板16寄りで新しく栽培槽10内の培養液に浮かんだ状態に位置する定植孔63に栽培物(苗)Pを定植する。以後、次の収穫日がきたら、上記と同様の手順の作業を行う。
【0057】
この水耕栽培方法によれば、栽培床用シートである栽培床60を培養液に浮かべて栽培し、栽培床60に定植した栽培物Pの根に空気を接触させ根が空気中の酸素を摂取できるとともに培養液から養分を摂取でき、栽培中に栽培光が培養液に照射することが無く、栽培槽10の内面および栽培床用シートである栽培床60に藻が繁殖するのを無くし、全部巻き取った原反ロールRの反復使用が可能である。
【0058】
[第3の実施の形態の変形例]
この変形例に係る水耕栽培装置および水耕栽培方法は、
図13に示すように、第3の実施の形態に係る栽培床60Aが、栽培開始側の栽培床用シートの栽培物(苗)Pと栽培物(苗)Pとの間を2つ折りに立ち上げてクリップ62で2つ折りの端縁を挟持し、栽培期間が一定期間を経過した時点より、クリップ65が外され2つ折りが解消され平面になっていることを特徴とする。この特徴以外の構成は、第3の実施の形態と同一であるので説明を省略する。
【0059】
すなわち、栽培床60Aは、栽培物を定植してから栽培期間が短く、栽培物がまだ小さいうちは、栽培槽の長手方向に隣接する栽培物同士の距離が近くなるよう、栽培開始側の栽培床60Aを折りたたんでおく。具体的には、栽培床用シートの栽培物(苗)と栽培物(苗)との間を2つ折りに立ち上げてクリップ65で2つ折りの端縁を挟持する。
【0060】
そして、所定日数の栽培期間が経過したとき、苗のときよりも大きく成長した隣り合う栽培物P同士が、引き続いて、根同士が絡まず、かつ栽培床40上の葉菜部と葉菜部との間隔が保たれるように、成長植物の成長段階に応じて、クリップ65が外され2つ折りが解消され平面になる、すなわち、2つ折りに折り畳まれた部分が平面展開した状態に戻される。
【0061】
栽培槽10の大きさは、第1の実施形態の変形例での説明と同様に、折り畳みの展開分を加えたものとする。この形態を用いると、第1の実施形態の変形例と同じく、栽培槽10の長さを短縮することができる。
【0062】
本発明によれば、栽培床を移動が容易であるように培養液に浮かべて栽培し、栽培床に定植した栽培物の根に空気を接触させ根が空気中の酸素を摂取できるとともに培養液から養分を摂取でき、栽培中に栽培光が培養液に照射することが無く栽培槽の内面および定植部材に藻が繁殖するのを無くして栽培床の反復使用が可能であるという効果を有し、DFT湛液水耕栽培全般に有用である。