(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
人体の精神活動状態を示すパラメータとして、皮膚電気活動(Electro Dermal Activity)がある。
このような人体の皮膚電気活動を人体の皮膚の電位を検出することで把握し、これらを使って様々な処理を行いたいという要請がある。
このようなパラメータとして、例えば顔面の眼球の周辺の複数の位置に電極を接触させて眼電位を検出し、それを基に様々な情報を得る場合がある。
ところで、人体は大きなノイズ源であり、皮膚から取得した電位には、人体に起因するノイズ成分が含まれる。このようなノイズ成分が含まれると、人体の皮膚の電位を基に高精度な人体の状態を特定できない。
そのため、このようなノイズ成分を除去するために、皮膚の複数の部位から得られた電位の差分をとることで、当該複数の部位に生じる同相のノイズ成分を除去する方法がある。当該方法は、複数の部位における電極との接触状態が均一であり、複数の電極の電位のレベルが同じであれば効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
人体の皮膚の複数の箇所に電極をさせて当該箇所の電位を検出する場合に、その電位は、電極と皮膚との接触状態に応じたレベル(振幅)となる。本発明者は、皮膚に接触した電極の電位と、それに含まれる人体のノイズ成分のレベルとは比例し、且つ同相であることから、当該複数の電極の電位レベルを検出し、それを基に当該電位のレベル調整を行い、その後、これらの差分をとることで、ノイズ成分を効果的に除去(キャンセル)できることを見出した。
【0016】
本実施形態では、人体の複数の部位の電位を取得する電極として、眼球の周りに配置された右鼻電極、左鼻電極および眉間電極を用いた場合を例示する。
以下、本発明の実施形態に係る眼鏡1について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る眼鏡1の外観斜視図である。
図2は、
図1に示す眼鏡1の機能ブロック図である。
【0017】
図1に示すように、眼鏡1は、例えば、使用者に耳に掛けられるテンプル11,13と、レンズ21,23が固定されるリム31,33と、リム31,33の間に介在するブリッジ35と、鼻パッド41,43とを有する。リム31,33の先端はモダン37,39と呼ばれる。また、テンプル11,13とリム31,33との間には丁番45,47が設けられている。
【0018】
テンプル11,13、リム31,33、リム31,33の間に介在するブリッジ35、鼻パッド41,43、モダン37,39及び丁番45,47とが、本発明の眼鏡型フレームの一例である。
【0019】
図2に示すように、鼻パッド41,43の間には、収容ボックス51が設けられている。
また、テンプル11のモダン37側には、収容ボックス53が固定されている。
【0020】
鼻パッド41の表面には右鼻電極61が設けられ、鼻パッド43の表面には左鼻電極63が設けられる。
右鼻電極61は、使用者が眼鏡1を装着した状態で使用者の鼻筋の右側面に接触し(押し付けられ)、当該接触した皮膚の電位である眼電位を検出する。
左鼻電極63は、使用者が眼鏡1を装着した状態で使用者の鼻筋の左側面に接触し、当該接触した皮膚の電位である眼電位を検出する。
右鼻電極61と左鼻電極63とは、眼鏡1の使用時の使用者の鼻を正面から見たときの左右対称の位置に配置されている。
【0021】
収容ボックス51には、使用者が眼鏡1を装着した状態で使用者の鼻根または眉間に接触し、当該接触した皮膚の電位を検出する眉間電極65が設けられている。
【0022】
右鼻電極61、左鼻電極63および眉間電極65は、例えば、ステンレスまたはチタンで形成される。
右鼻電極61、左鼻電極63および眉間電極65は、接触対象の人体部位の形状に適した形状で形成されている。
【0023】
収容ボックス53は、内部に収容空間を有し、当該収容空間内に加速度センサ71、通信部73、バッテリー75および処理部77が収容されている。
収容ボックス51と収容ボックス53とは、プリント基板等の配線で電気的に接続されている。
【0024】
加速度センサ71は、X,Y,Zの3軸の加速度センサであり、各軸の検出した加速度を処理部77に出力する。
【0025】
通信部73は、Bluetooth(登録商標)や無線LAN等の無線通信であり、右鼻電極61、左鼻電極63および眉間電極65から入力した眼電位や、加速度センサ71から入力した加速度等を、外部装置に送信することができる。高い処理能力及びメモリ容量を用いた高機能な処理を実現できる。
【0026】
処理部77は、右鼻電極61、左鼻電極63および眉間電極65から入力した眼電位、並びに加速度センサ71から入力した加速度を基に、使用者に関する情報を生成する。
右鼻電極61、左鼻電極63および眉間電極65から入力した眼電位(皮膚電位)、並びに加速度センサ71から入力した加速度は、使用者の発汗現象や動きに応じた電位であり、使用者の体調や、精神状態を反映したものである。そのため、眼電位および加速度と、使用者の体調や精神状態とを予め対応付け参照データを用意することで、処理回路77において、入力した使用者の眼電位および加速度と、上記参照データとを比較することで、使用者の体調や精神状態を検出できる。
【0027】
眼球は、角膜側が正に帯電しており、網膜側が負に帯電している。したがって、視線が上に移動した場合、眉間電極65の眼電位を基準とした右鼻電極61の眼電位と、眉間電極65を基準とした左鼻電極63の眼電位が負となる。
一方、視線が下に移動した場合、眉間電極65の眼電位を基準とした右鼻電極61の眼電位と、眉間電極65の眼電位を基準とした左鼻電極63の眼電位が正となる。
【0028】
視線が右に移動した場合、眉間電極65を基準とした右鼻電極61の眼電位が負となり、眉間電極65を基準とした左鼻電極63の眼電位が正となる。
視線が左に移動した場合、眉間電極65を基準とした右鼻電極61の眼電位が正となり、眉間電極65を基準とした左鼻電極63の眼電位が負となる。
【0029】
なお、眉間電極65の眼電位を基準とした右鼻電極61の眼電位を検出する代わりに、基準電極を基準とした右鼻電極61の眼電位から、基準電極を基準とした眉間電極65の眼電位を減じてもよい。そして同様に、眉間電極65の眼電位を基準とした左鼻電極63の眼電位を検出する代わりに、基準電極を基準とした左鼻電極63の眼電位から、基準電極を基準とした眉間電極65の電位を減じてもよい。基準電極としては、接地電極を用いてよい。
【0030】
このように、基準電極の基準電位に対して右鼻電極61および左鼻電極63の眼電位が正の場合には視線が上を向いたことを検出できる。また、負の場合には視線が下を向いたことを検出できる。
さらに、右鼻電極61からの眼電位が負、左鼻電極63からの眼電位が正である場合には視線が右、右鼻電極61からの眼電位が正、左鼻電極63からの眼電位が負である場合は視線が左に向いたことを検出できる。
【0031】
上述した右鼻電極61、左鼻電極63および眉間電極65と皮膚との間の接触状態は相互に異なることが多く、その場合に接触抵抗も異なる。そのため、右鼻電極61、左鼻電極63および眉間電極65の眼電位に含まれるノイズ成分のレベルは相互に異なる。
眼鏡1では、以下の構成により、これらのノイズ成分の影響をキャンセルする。
【0032】
図3は、
図2に示す処理部77のノイズ除去に関する処理の機能ブロック図である。
図3に示すように、処理部77は、例えば、ノイズレベル検出部91、レベル調整部93、差分検出部95および人体特性検出部97を有する。
【0033】
処理部77の各部の機能は、処理回路(コンピュータ)でプログラムを実行して実現してもよし、少なくとも一部の機能をハードウェアで実現してもよい。
【0034】
ノイズレベル検出部91は、右鼻電極61からの右眼電位、左鼻電極63からの左眼電位および眉間電極65からの眉間電位のノイズレベル(分散レベル)をそれぞれ検出する。
レベル調整部93は、ノイズレベル検出部91で検出したノイズレベルを基に、上記右眼電位、上記左眼電位および上記眉間電位に含まれるノイズのレベルが相互に同じになるように、上記右眼電位、上記左眼電位および上記眉間電位のレベル(ゲイン)を調整する。これにより、右眼電位と左眼電位に含まれる人体のノイズ成分のレベルが同じになる。
なお、本発明および実施形態において、レベルが同じになるとは、レベルが完全に同一の場合の他、多少の相違はあっても処理要求精度を満たす範囲において問題がない場合をも含む概念である。
なお、眼電位のレベルとそれに含まれるノイズレベルとは比例するため、ノイズレベル検出部91は、眼電位のレベルを検出することで、実質的にノイズレベルを検出するようにしてもよい。
【0035】
差分検出部95は、レベル調整部93でレベル調整した後の右眼電位と左眼電位との差分電位を検出用眼電位として生成する。
その他、差分検出部95は、レベル調整部93でレベル調整した後の右眼電位と眉間電位との第1の差分電位と、左眼電位と眉間電位との第2の差分電位とを検出用眼電位として生成してもよい。当該検出用眼電位では、ノイズ成分が効果的に除去されている。
【0036】
人体特性検出部97は、差分検出部95で検出した検出用眼電位を基に、人体の様々な状態を判断する。人体の様々な状態には、視線や瞬目等がある。
【0037】
以下、本発明の実施形態の眼鏡1の作用を説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る眼鏡1の瞬目検出の動作を説明するためのフローチャートである。
先ず、使用者が眼鏡1を装着し、使用者の鼻筋の右側面に右鼻電極61が接触し
、左側面に左鼻電極63が接触する。また、使用者の眉間に眉間電極65が接触する。
これにより、右鼻電極61、左鼻電極63および眉間電極65が、それぞれ使用者の右鼻側面の皮膚の電位(右眼電位)、左鼻側面の皮膚の電位(左眼電位)および眉間の皮膚の電位(眉間電位)となる。
そして、これらの右眼電位、左眼電位および眉間眼電位が処理部77に出力(伝達)される。
【0038】
ステップST11:
処理部77は、右鼻電極61、左鼻電極63および眉間電極65から、それぞれ右眼電位、左眼電位および眉間眼電位を入力したと判断すると、ステップST12に進む。
【0039】
ステップST12:
ノイズレベル検出部91は、右鼻電極61からの右眼電位、左鼻電極63からの左眼電位および眉間電極65からの眉間電位のノイズレベル(分散レベル)をそれぞれ検出する。
【0040】
ステップST13:
レベル調整部93は、ノイズレベル検出部91で検出したノイズレベルを基に、上記右眼電位、上記左眼電位および上記眉間電位に含まれるノイズのレベルが相互に同じになるように、上記右眼電位、上記左眼電位および上記眉間電位のレベル(ゲイン)を調整する。これにより、右眼電位と左眼電位に含まれる人体のノイズ成分のレベルが同じになる。
【0041】
ステップST14:
差分検出部95は、レベル調整部93でレベル調整した後の右眼電位と左眼電位との差分電位を検出用眼電位として生成する。当該検出用眼電位では、ノイズ成分が効果的に除去されている。すなわち、ステップST13において、右眼電位および左眼電位に含まれるノイズ成分が同じになるように調整され、且つこれらは同相であるため、右眼電位と左眼電位との差分電位では、ノイズ成分が除去されている。
【0042】
ステップST15:
人体特性検出部97は、差分検出部95で検出した検出用眼電位を基に、人体の様々な状態を判断する。人体の様々な状態には、視線や瞬目等がある。上述したように、検出用眼電位は、ノイズが除去されたものであるため、これを基に高精度な判定ができる。
【0043】
以上説明したように、眼鏡1によれば、
図6に示すアルゴリズムで使用者の皮膚の電位を検出することで、ノイズ成分を除去した高精度な電位を得ることができる。これにより、眼鏡1によれば人体の状態を正確に判断できる。
【0044】
眼鏡1によれば、小規模且つ安価な構成で人体特性検出装置2を実現できる。
また、眼鏡1によれば、収容ボックス53内に加速度センサ71、通信部73、バッテリー75および処理部77を収容するため、優れたデザイン性を有すると共に、日常で違和感なく装着できる。
【0045】
また、眼鏡1によれば、収容ボックス53内の通信部73を介して携帯型通信装置等の外部装置に各信号(データ)送信することで、外部装置の高い処理能力及びメモリ容量を用いた高機能な処理を実現できる。
【0046】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【0047】
上述した実施形態では、人体の電位として、眼球の周辺の複数の電位を検出する場合を例示したが、眼球の周辺以外の人体の複数の部位の電位を電極で検出する場合にも本発明は適用可能である。
例えば、右鼻電極61および左鼻電極63の代わりに、鼻背に接触する電極を設けてもよい。また、眉間電極65の代わりに、鼻根に接触する電極を設けてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、本発明をレンズ21,23を備えた眼鏡1に適用した場合を例示したが、レンズが無いアイウェア等に適用してもよい。