特許第6557595号(P6557595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557595
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】鉄道車両用台車
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/30 20060101AFI20190729BHJP
   B61F 19/00 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   B61F5/30 Z
   B61F19/00
   B61F5/30 E
   B61F5/30 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-252985(P2015-252985)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-114367(P2017-114367A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多賀 之高
(72)【発明者】
【氏名】鴻池 史一
(72)【発明者】
【氏名】佐野 行拓
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴也
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/137257(WO,A1)
【文献】 特開平6−227393(JP,A)
【文献】 特開2002−293238(JP,A)
【文献】 米国特許第1742148(US,A)
【文献】 中国実用新案第204222877(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/30
B61F 19/00−19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びる車軸と、前記車軸の車幅方向両側に設けられる一対の車輪とを有する輪軸と、
前記輪軸を回転自在に支持する軸受と、
前記軸受を上側から覆う上側軸箱要素と、前記上側軸箱要素に締結部材により固定されて前記軸受を下側から覆う下側軸箱要素とを有する軸箱と、
前記車輪に対して車両長手方向一方側に配置され、かつ、前記車両長手方向一方側から見て前記車輪と重なる排障部と、前記排障部を前記軸箱に連結する連結部とを有する排障器と、を備え、
前記排障器の前記連結部は、前記上側軸箱要素に設けられた受け座に固定される、鉄道車両用台車。
【請求項2】
前記受け座は、車幅方向から見て、前記上側軸箱要素のうち車軸中心よりも前記車両長手方向一方側で、かつ、前記車軸中心を通って車両長手方向に延びる水平線と交差する領域に設けられている、請求項1に記載の鉄道車両用台車。
【請求項3】
前記受け座と前記連結部とを固定する締結部材を更に備え、
前記受け座には、前記締結部材が挿通される挿通孔を有する締結面が設けられ、
前記受け座は、側面視において、前記締結面の法線が前記車軸中心を通る鉛直線と交差するように前記上側軸箱要素の外周壁部に設けられている、請求項1又は2に記載の鉄道車両用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用台車に関し、特に排障器を備える鉄道車両用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用台車には、輪軸を回転自在に支持する軸受を収容する軸箱が設けられている。ここで、軸箱は、上下に分割され、ボルト締結された上部軸箱及び下部軸箱から構成される場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、鉄道車両用台車には、レール上の障害物を排除するための排障器が取り付けられる場合がある(例えば、特許文献2参照)。例えば、特許文献2の鉄道車両用台車では、軸箱のうち下部軸箱に車両長手方向に延びる棒材が固定されており、当該棒材の先端部に排障器が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−278791号公報
【特許文献2】特開2014−12530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の鉄道車両用台車では、下部軸箱に排障器を取り付けていたため、走行により軸箱が振動を受けると排障器の自重による力が下部軸箱やボルトに負荷される。そのため、使用するボルトの数を増加させたり、下部軸箱及びボルト自体の強度を高める必要があった。
【0006】
そこで本発明は、排障器が取り付けられる鉄道車両用台車において、排障器の取付部分における振動の影響を低減しつつ、当該取付部分の強度要求を緩和することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る鉄道車両用台車は、車幅方向に延びる車軸と、前記車軸の車幅方向両側に設けられる一対の車輪とを有する輪軸と、前記輪軸を回転自在に支持する軸受と、前記軸受を上側から覆う上側軸箱要素と、前記上側軸箱要素に締結部材により固定されて前記軸受を下側から覆う下側軸箱要素とを有する軸箱と、前記車輪に対して車両長手方向一方側に配置され、かつ、前記車両長手方向一方側から見て前記車輪と重なる排障部と、前記排障部を前記軸箱に連結する連結部とを有する排障器と、を備え、前記排障器の前記連結部は、前記上側軸箱要素に設けられた受け座に固定される。
【0008】
前記構成によれば、鉄道車両用台車において、軸箱が振動を受けた際に発生する排障器の自重による力は、下側軸箱要素やその締結部材に伝わらない。これにより、排障器の取付部分には下側軸箱要素に生じる振動の影響を考慮する必要がなくなる。そのため、排障器を台車に取り付けるにあたって、使用する締結部材の本数を増加させる等の対策も不要となる。よって、排障器の振動の影響の低減と取付強度の要求緩和とを両立することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排障器が取り付けられる鉄道車両用台車において、排障器の取付部分における振動の影響を低減しつつ、当該取付部分の強度要求を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る鉄道車両用台車の側面図である。
図2図1に示す排障器が取り付けられた軸箱の分解側面図である。
図3図2のIII矢視図である。
図4】第2実施形態に係る鉄道車両用台車の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。なお、同一の又は対応する要素には全ての図を通じて同一の符号を付して重複する詳細説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る鉄道車両用台車1の側面図である。図1に示すように、鉄道車両用台車(以下、台車と呼ぶ。)1は、空気バネ2を介して車体30を支持するための台車枠3を備えている。台車枠3は、台車1の車両長手方向中央において車幅方向に延びる横ばり4と、横ばり4の車幅方向両端部から車両長手方向に延びる側ばり5と、を有している。
【0013】
台車枠3の車両長手方向両側には、それぞれ車幅方向に沿って延びる一対の車軸6が配置されている。車軸6の車幅方向両側には車輪7が圧入されている。車軸6及び車輪7は輪軸15を構成する。そして、台車1に設けられた一対の輪軸15は、台車枠3の車両長手方向両側に離間して配置されている。車軸6の車幅方向両側の端部には、車輪7よりも車幅方向外側にて車輪7を回転自在に支持する軸受8が設けられ、その軸受8は軸箱10に収容されている。
【0014】
軸箱10は、軸箱支持装置16により台車枠3に対して弾性的に連結されている。軸箱支持装置16は、軸箱10と側ばり5の車両長手方向端部5aとを上下方向に連結する軸バネ20と、軸箱10と側ばり5の受け座5bとを車両長手方向に連結する軸ばり21と、を有している。軸ばり21は、軸箱10と一体に形成されて当該軸箱10から車両長手方向のうち横ばり4側に向かって延びている。そして、軸ばり21の先端部は、側ばり5の受け座5bに対して、ゴムブッシュ及び心棒(図示せず)を介して弾性的に連結されている。受け座5bは、側ばり5の下面5cのうち車両長手方向における軸箱10と横ばり4との間の部分から下方に突出して設けられている。ここで、軸箱10には、レール上の障害物を排除するための排障器40が取り付けられる。本実施形態では、排障器40は紙面左側の軸箱10に取り付けられているが、紙面右側の軸箱10に取り付けられていてもよい。
【0015】
図2は、図1に示す排障器40が取り付けられた軸箱10の分解側面図である。図2に示すように、軸箱10は、車軸中心Oよりも下側の部分において、上下に分割された構造となっている。軸箱10は、軸受8を上側から覆う上側軸箱要素11と、当該上側軸箱要素11に対して下方から重ね合わせられることで軸受8を下側から覆う下側軸箱要素12とを有している。下側軸箱要素12は、例えばボルト等の締結部材13によって上側軸箱要素11に固定される。ここで、上側軸箱要素11は軸ばり21と一体に形成されている。また、上側軸箱要素11は、レールに支持される輪軸15の車軸6に軸受8を介して上側から被さっている。
【0016】
上側軸箱要素11の内面S10と下側軸箱要素12の内面S20とによって軸受8を収容する空間が画定される。上側軸箱要素11の内面S10及び下側軸箱要素12の内面S20はそれぞれ、側面視において、車軸中心Oを中心とする真円の一部をなす形状を有している。上側軸箱要素11には、その上部に軸バネ20(図1参照)を下方から支持する軸バネ座22が設けられている。本実施形態では、軸バネ座22は上側軸箱要素11と一体に形成されており、軸バネ座22の上面が上側軸箱要素11の上面を構成している。なお、軸バネ座22は、上側軸箱要素11と別体に形成されてもよい。
【0017】
また、上側軸箱要素11の外周壁部11aのうち車両長手方向外側の側壁部11bには、排障器40が固定される一対の受け座23,24が設けられている。側壁部11bにおいて、受け座23は車軸中心Oを通って車両長手方向に延びる水平線Hと交差する領域に設けられており、受け座24は受け座23のやや上方に設けられている。そして、受け座23,24は、車幅方向から見て、水平線Hに対して上向きに傾斜している。また、受け座23,24は、上側軸箱要素11と一体に形成されて当該上側軸箱要素11の側壁部11bから車両長手方向外側に向けて斜め上方に突出している。排障器40は、例えばボルト等の締結部材51によって受け座23,24に固定されている。
【0018】
図3は、図2のIII矢視図である。図2及び3に示すように、排障器40は、排障部41と、連結部42とを有している。排障部41はレール上の障害物に当接することで、当該障害物をレールの外方へと排除する機能を有する。そのため、排障部41は、車輪7に対して車両長手方向外側に配置され、かつ、車両長手方向外側から見て車輪7と部分的に重なっている。また、排障部41は、側面視において、上側軸箱要素11よりも下方に配置されている。本実施形態では、排障部41は、金属製の板材(例えば、鋼板)を曲げ加工することによって形成されているが、ゴムや樹脂材料によって形成されてもよい。
【0019】
連結部42は、排障部41と上側軸箱要素11とを車両長手方向に連結している。連結部42は、側面視において、排障部41との固定部分から受け座23,24に向けて斜め上方に傾斜しながら延びている。本実施形態では、連結部42は、排障部41と同様に金属材料によって形成されている。なお、連結部42は、樹脂材料によって形成されてもよい。連結部42は、締結部材52(例えば、ボルト及びナット)によって排障部41と固定されている。また、連結部42は、上側軸箱要素11に固定される板状の取付金42aを有している。取付金42aは、上側軸箱要素11の受け座23,24に複数のボルト51によって固定されている。
【0020】
受け座23,24は、車両長手方向から見て、車幅方向に長い略矩形の形状を有している。受け座23,24は、側面視において、締結面Fの法線Nが車軸中心Oを通る鉛直線Vと交差するように上側軸箱要素11の側壁部11bに設けられている(図2参照)。受け座23,24の締結面Fは、車両長手方向外側に向けて斜め下方に傾斜している。なお、受け座23,24の締結面Fは傾斜面としているが、これに限られない。
【0021】
また、受け座23,24の締結面Fにはそれぞれ、ボルト51が挿通されるタップ加工が施された3つの挿通孔h1〜h3が設けられている。ここで、連結部42の取付金42aには、ボルト51が貫通する4つの貫通孔が形成されている。受け座23,24に排障器40の連結部42を固定する場合、取付金42aの4つの貫通孔を、受け座23,24の各挿通孔h1,h2と車両長手方向に重なるように配置した上で、ボルト51によって取付金42aを固定している。これにより、受け座23,24に対して、排障器40を車輪7に寄せて取り付けることができる。
【0022】
以上のように構成された台車1は、以下の効果を奏する。
【0023】
台車1において、上側軸箱要素11に排障器40が固定されることによって下側軸箱要素12を介在させる必要がない。そのため、走行により軸箱10に振動が加わっても排障器40の自重によって生じる力が下側軸箱要素12に作用しない。これにより、従来のように下側軸箱要素12の強度を大きくしたり、上側軸箱要素11との締結ボルト13の強度を大きくしたり数を増やす必要がない。よって、台車1において、排障器40の影響の低減と取付強度の要求緩和とを両立することができる。
【0024】
また、受け座23,24は、水平面に対して上向きに傾斜しているため、障害物が排障器40に衝突し、排障部41に車両長手方向の荷重が作用しても、受け座23,24には締結面Fの法線N方向の力の成分が大きく、締結面Fに平行な力の成分は小さくなる。そのため、ボルト51に対する強度要求を緩和することができる。
【0025】
なお、受け座23,24は、水平面に対して上向きに傾斜させずに、鉛直に設置してもよく、かかる場合でも排障器の取付部分における振動の影響を低減しつつ、当該取付部分の強度要求を緩和することができる。
【0026】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る台車201は、第1実施形態に係る台車1から台車枠3の構成等を一部変更したものである。以下では、第2実施形態に係る台車201について、第1実施形態に係る台車1と異なる点を中心に説明する。
【0027】
図4は、第2実施形態に係る台車201の側面図である。図4に示すように、台車枠203は、台車201の車幅方向中央において車幅方向に延びる横ばり204を備えるが、第1実施形態の台車枠3の構成とは異なり、側ばり5を備えていない。
【0028】
また、軸箱210と横ばり204との間には、車両長手方向に延びる板バネ209が架け渡されている。板バネ209は、その車両長手方向中央部209aにおいて、横ばり204の車幅方向両端部204aを下方から支持しており、板バネ209の車両長手方向両端部209bは、軸箱210に支持されている。即ち、板バネ209は、第1実施形態の軸バネ20(一次サスペンション)の機能と第1実施形態の側ばり5の機能とを有している。
【0029】
板バネ209の車両長手方向端部209bは、支持部材231を介して軸箱210に下方から支持されている。支持部材231は軸箱210の上部に設けられている。支持部材231の上面は、車両長手方向の中央側に向けて斜め下方に傾斜している。なお、支持部材231の上面は、板バネ209のうち車両長手方向端部209bの下面と略平行であれば、傾斜していなくてもよい。そして、支持部材231は、受け部材232と、防振ゴム233とを有している。受け部材232は平面視で略矩形の形状を有しており、板バネ209の下面を支持する底壁部と、当該底壁部の車両長手方向両端から上方に突出する外壁部とを有している。
【0030】
防振ゴム233は略円柱状であり、軸箱210と受け部材232との間に挿入されている。軸箱210の上側軸箱要素211には、その上部に防振ゴム233の下面と面接触する上面を含むバネ座222が設けられている。バネ座222の上面も、板バネ209の下面と略平行であり、車両長手方向の中央側に向けて斜め下方に傾斜している。そして、バネ座222が一体に形成された上側軸箱要素211の車両長手方向外側の側壁部211bに受け座23,24が設けられている。これ以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0031】
このような第2実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が得られる。即ち、受け座23,24が設けられた上側軸箱要素211を有する軸箱210は、一般的な台車枠3を備える台車1に限らず、板バネ209を用いた台車201においても適用可能である。これにより、板バネ式の台車201に排障器40を取り付けた場合においても、排障器40の振動抑制と取付強度の要求緩和とを両立することができる。
【0032】
なお、本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。また、前記各実施形態は互いに任意に組み合わせてもよく、例えば1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよい。前述の実施形態では、排障器40の連結部42と受け座23,24とを4つのボルト51で固定していたが、この構成に限らず、排障器40の連結部42と受け座23,24との固定構造は任意に変更してもよい。この場合、受け座23,24の構成及び形状も排障器40との固定構造に対応させて変更してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1,201 鉄道車両用台車
6 車軸
7 車輪
8 軸受
10,210 軸箱
11,211 上側軸箱要素
11a 外周壁部
12 下側軸箱要素
13 締結部材
15 輪軸
23,24 受け座
40 排障器
41 排障部
42 連結部
h1〜h3 挿通孔
F 締結面
H 水平線
P 軸線
図1
図2
図3
図4