(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557601
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】表示装置、表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/04 20060101AFI20190729BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20190729BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20190729BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20190729BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
H05B33/04
H05B33/14 A
H05B33/10
H01L27/32
G09F9/30 365
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-257676(P2015-257676)
(22)【出願日】2015年12月29日
(65)【公開番号】特開2017-120749(P2017-120749A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大輔
【審査官】
中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/108020(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50−51/56
H01L 27/32
H05B 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素によって構成された表示領域を備えた表示装置であって、
前記表示領域より外側の周辺領域に形成された吸湿剤と、前記吸湿剤の前記表示領域側の一部を露出させる孔を有し、前記表示領域を囲う領域に配置され、かつ、前記孔以外の領域で前記吸湿剤を覆うように形成された封止膜と、を有する第1基板と、
前記第1基板と対向して配置される第2基板と、
前記表示領域に配置され、前記第1基板と前記第2基板を接着する第1接着剤と、
前記表示領域を囲うように配置され、前記第1基板と前記第2基板を接着する第2接着剤と、を有し、
前記吸湿剤は、前記第1基板と前記第2基板の間隔を保持する支柱として形成されることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記孔は、水分子の侵入を許容する侵入孔であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記吸湿剤は、前記第2基板と対向する上面を有し、
前記封止膜の一部は、前記上面と前記第2基板との間に位置し、
前記一部には、前記上面の側に窪む孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記窪む孔は、前記上面を露出することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記吸湿剤は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属で形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項6】
前記吸湿剤は、前記周辺領域を、少なくとも2つの不連続な領域で4辺を取り囲むように形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表示装置。
【請求項7】
前記複数の画素の各々は、アノード電極と発光層とカソード電極とを含む発光素子を備え、
前記封止膜は、前記発光素子を覆うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の表示装置。
【請求項8】
前記封止膜は、前記表示領域において、前記第1接着剤に覆われていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の表示装置。
【請求項9】
複数の画素を備える表示領域と、前記表示領域より外側の周辺領域とを備えた表示装置であって、
前記複数の画素の各々は、アノード電極と発光層とカソード電極とを含む発光素子を備え、
前記発光素子は、第1基板に設けられ、
前記第1基板には、前記表示領域と前記周辺領域とに跨って位置し、前記発光素子を覆う封止膜が設けられ、
前記周辺領域には、前記第1基板と前記封止膜との間に位置する吸湿剤が設けられ、
前記表示領域には、前記第1基板と前記第2基板を接着する第1接着剤が設けられ、
前記周辺領域には、前記表示領域を囲うように前記第1基板と前記第2基板を接着する第2接着剤が設けられ、
前記封止膜は、前記吸湿剤の前記表示領域側の一部を露出させる孔を有し、前記表示領域を囲う領域に配置され、かつ、前記孔以外の領域で前記吸湿剤を覆うように形成され、
前記吸湿剤は、前記第1基板と前記第2基板の間隔を保持する支柱として形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項10】
前記吸湿剤は、前記吸湿剤の前記第1基板とは反対側に位置する上面を有し、
前記封止膜の一部は、前記上面と対向し、
前記一部には、前記上面の側に窪む孔が設けられていることを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記吸湿剤は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含むことを特徴とする請求項9又は10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記吸湿剤は、柱状に形成され、
前記封止膜は、前記封止膜の前記第1基板とは反対側に位置する表面を有し、
前記第1基板から前記柱状に形成された吸湿剤の上面までの距離は、前記表示領域における前記第1基板から前記表面までの距離よりも大きいことを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の表示装置。
【請求項13】
複数の画素によって構成された表示領域を備えた表示装置の製造方法であって、
前記表示領域より外側の周辺領域に形成された吸湿剤、及び、前記表示領域を囲う領域に配置され、かつ、前記吸湿剤を覆うように形成された封止膜を有する第1基板を形成する工程と、
前記第1基板と対向する第2基板を形成する工程と、
前記第1基板または前記第2基板の一方に対して、前記表示領域に第1接着剤と、前記表示領域を囲うように第2接着剤と、を滴下する工程と、
前記第1接着剤及び前記第2接着剤によって前記第1基板と前記第2基板を貼り合わせ、押圧により前記封止膜に対して、前記吸湿剤の前記表示領域側の一部を露出させる孔を形成する工程と、を有し、
前記吸湿剤は、前記第1基板と前記第2基板の間隔を保持する支柱として形成される、
ことを特徴とする表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL(Electro-luminescent)素子を用いた有機EL表示装置や、液晶表示装置等の表示装置が実用化されている。しかしながら、有機EL素子は水分子や酸素分子等に対して脆弱であることから、有機EL素子が劣化し、ダークスポット等の点灯不良が生じるおそれがあった。また、液晶表示装置においても、侵入した水分の影響を受けて薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)の特性が変動し、表示品位の劣化が発生する問題が生じていた。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1は、ガラス基板上の基板面内の周縁部に、吸湿性を有するカルシウム部剤を形成し、ガラス基板と保護ガラスを貼り合せる接着剤で当該カルシウム部剤を覆うことによって、表示領域に水分子が侵入することを防止する表示装置を開示している。
【0004】
また、例えば、特許文献2は、発光素子が形成される素子基板と、素子基板と貼り合わされる封止基板との間に極性体を設け、該極性体が両基板を貼り合せるシール剤に含まれる気泡を吸着することによって、気泡に含まれる酸素分子や水分子と発光素子が化学反応を起こすことを防止する表示装置を開示している。
【0005】
また、引用文献3は、有機EL層を密封するように形成された密封部材を有し、密封部材により密封された空間内のいずれかの位置に、脱酸素脱水部を形成する有機EL表示装置を開示している。
【0006】
また、引用文献4は、基板の外周部分において接着剤によって電極層を覆う封止基板を備えることによって、封止基板の外部から水分等が侵入することを防止する表示装置を開示している。
【0007】
さらに、引用文献5は、撥液性の枠体の外周にシール材を塗布し、吸湿性物質を含む層を平板素子基板の有機EL素子と対向させて貼り合わせた上で、シール材を硬化して封止することによって、枠体の内部に水分等が侵入することを防止する表示装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−80094号公報
【特許文献2】特開2010−198926号公報
【特許文献3】特開2002−8852号公報
【特許文献4】特開2013−110116号公報
【特許文献5】特開2008−77951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記先行技術文献のように、有機EL素子が形成された基板の外周をシール材等の有機材料で封止したとしても、シール剤等を介して表示領域内に徐々に水分が侵入してしまう。また、基板上に吸湿剤等を形成する構成とした場合であっても、吸湿剤を形成する工程の後、表示パネルが完成するまでの過程で吸湿剤が水分等と反応してしまうため、表示パネルが完成した時点で吸湿剤の性能が低下してしまう。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、発光素子への水分子の侵入を効果的に抑制し、発光素子の劣化を防止することが可能な画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、複数の画素によって構成された表示領域を備えた表示装置であって、前記表示領域の周囲に形成された吸湿剤と、前記吸湿剤を覆う封止膜と、を有する第1基板と、前記第1基板と対向して配置される第2基板と、少なくともその一部が前記吸湿剤よりも前記表示領域の側に配置され、前記第1基板と前記第2基板を接着する接着層と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他の一態様は、複数の画素を備える表示領域と、前記表示領域より外側の周辺領域とを備えた表示装置であって、前記複数の画素の各々は、アノード電極と発光層とカソード電極とを含む発光素子を備え、前記発光素子は、第1基板に設けられ、前記第1基板には、前記表示領域と前記周辺領域とに跨って位置し、前記発光素子を覆う封止膜が設けられ、前記周辺領域には、前記第1基板と前記封止膜との間に位置する吸湿剤が設けられ、前記周辺領域には、前記表示領域を囲うダム剤が設けられ、前記封止膜の一部と前記吸湿剤とは、前記ダム剤で覆われていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の他の一態様は、複数の画素によって構成された表示領域を備えた表示装置の製造方法であって、前記表示領域の外側の周辺領域に形成された吸湿剤、及び、前記吸湿剤を覆うように形成された封止膜を有する第1基板を形成する工程と、前記第1基板と対向する第2基板を形成する工程と、前記第1基板または前記第2基板の一方に有機系剤料からなる接着剤を滴下する工程と、前記接着剤によって前記第1基板と前記第2基板を貼り合わせ、押圧により前記封止膜に割れ目を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る表示装置を概略的に示す図である。
【
図2】有機ELパネルを表示する側から見た構成を示す図である。
【
図3】有機ELパネルの断面について説明するための図である。
【
図4】吸湿剤の配置レイアウトについて説明するための図である。
【
図5】有機ELパネルの製造工程について説明するための図である。
【
図6】有機ELパネルの製造工程について説明するための図である。
【
図7】有機ELパネルの製造工程について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略することがある。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る表示装置100の概略を示す図である。図に示すように、表示装置100は、上フレーム110及び下フレーム120に挟まれるように固定された有機ELパネル200を含むように構成されている。
【0017】
図2は、
図1の有機ELパネル200の構成を示す概略図である。
図2に示すように、有機ELパネル200は、アレイ基板201と、対向基板202と、駆動IC(Integrated Circuit)203と、を有する。アレイ基板201は、後述する吸湿剤308、封止膜309等が配置され、接着層(フィル剤315及びダム剤316)によって対向基板202と接着される。
【0018】
駆動IC203は、例えば、1画素を構成する複数の副画素204のそれぞれに対応して配置された画素トランジスタ318(
図3等参照)の走査信号線に対してソース・ドレイン間を導通させるための電位を印加すると共に、各画素トランジスタ318のデータ信号線に対して画素の階調値に対応する電流を流す。また、複数の画素の各々は、後述するアノード電極304と発光層とカソード電極307とを含む発光素子を備える。当該駆動IC203によって、有機ELパネル200は、複数色からなる複数の副画素204によって構成されるカラー画像を、表示領域205に表示する。
【0019】
図3は、第1の実施形態における画素の断面について概略的に示す図の一例であり、
図2におけるIII−III断面を示す図である。以下の説明においては、複数の画素は、それぞれ赤色、緑色、及び青色の光を発光する3つの副画素204を組み合わせて構成される場合について説明するが、複数の画素は、それぞれ4つ以上の副画素204を組み合わせて構成されていてもよい。
【0020】
図3に示すように、アレイ基板201は、下ガラス基板301と、下ガラス基板301上に対向基板202に向かって順に形成されたTFT(Thin Film Transistor)回路層302と、有機平坦化膜303と、アノード電極304と、有機バンク305と、有機膜306と、カソード電極307と、吸湿剤308と、封止膜309と、を含んで構成される。対向基板202は、上ガラス基板310と、上ガラス基板310上に形成されたカラーフィルタ層311,312,313及び遮光層314と、を含んで構成される。また、アレイ基板201と対向基板202の間には、フィル剤315及びダム剤316が充填され、アレイ基板201と対向基板202は、フィル剤315及びダム剤316によって貼り合わされる。
【0021】
TFT回路層302は、ソース電極、ドレイン電極317、ゲート電極や半導体層等を含んで構成される画素トランジスタ318を有する。画素トランジスタ318の詳細な構造については、従来技術と同様である為説明を省略する。
【0022】
有機平坦化膜303は、表示領域205においてTFT回路層302を覆うように形成され、下層側に配置された配線や画素トランジスタ318による段差を平坦化する。また、有機平坦化膜303は、表示領域205の外側の領域である周辺領域319に、表示領域205を囲うように形成される。
【0023】
アノード電極304は、画素トランジスタ318の上部に形成される。具体的には、例えば、アノード電極304は、表示領域205において、有機平坦化膜303のコンタクトホールを介して、画素トランジスタ318のソース又はドレイン電極317と電気的に接続されるように、ソース又はドレイン電極317の上層側に形成される。
【0024】
有機バンク305は、表示領域205において、各アノード電極304のそれぞれの周縁部を覆うように形成され、周辺領域319において、有機平坦化膜303を覆うように形成される。具体的には、例えば、
図3のように、有機バンク305は、表示領域205において、各アノード電極304の間及びアノード電極304の端部の上方に、また、周辺領域319において、有機平坦化膜303の上方に樹脂材料で形成される。当該有機バンク305によって、アノード電極304とカソード電極307のショートを防止することができる。
【0025】
有機膜306は、表示領域205において、アノード電極304及び有機バンク305の端部の上層側に形成される。また有機膜306は、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子注入層、及び、電子輸送層が積層されることによって形成される。発光層は、アノード電極304から注入されたホールと、カソード電極307から注入された電子とが再結合することにより発光する。ホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、及び、電子輸送層については従来技術と同様である為説明を省略する。
【0026】
カソード電極307は、有機膜306の上層側に形成される。具体的には、例えば、カソード電極307は、表示領域205において、有機バンク305及び有機膜306を覆うように形成され、アノード電極304との間に電圧が印加されることによって、有機膜306に電流を流して発光させる。また、カソード電極307は、透明な剤料を用いて形成される。具体的には、例えば、カソード電極307は、酸化インジウム錫(ITO:Indium Tin Oxide)等の金属を含んで構成される透過性を有する金属薄膜で形成される。
【0027】
吸湿剤308は、表示領域205の外側の周辺領域319に形成される。具体的には、例えば、
図3に示すように、吸湿剤308は、周辺領域319において、有機バンク305の上層側に、アレイ基板201と対向基板202の間隔を保持する支柱として形成される。また、吸湿剤308は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属で形成される。具体的には、例えば、吸湿剤308は、カルシウム、マグネシウム、リチウム、セシウム、バリウム等の材料を用いて形成される。
【0028】
吸湿剤308は、有機ELパネル200の外部から侵入した水分子と化学反応を超すことによって水分子を吸収するだけでなく、当該化学反応を終えた後も水分子の表示領域205への侵入を阻止する障壁として機能する。具体的には、例えば、カルシウムを用いて吸湿剤308を形成した場合には、カルシウムは水分子と化学反応を起こすと水酸化カルシウムに変化し、当該水酸化カルシウムが表示領域205への水分子の侵入を阻止する。
【0029】
なお、
図3においては、吸湿剤308は、アレイ基板201と対向基板202の間隔を保持する支柱として形成されているが、吸湿剤308の高さは、アレイ基板201と対向基板202の間隔よりも低くてもよい。具体的には、例えば、吸湿剤308は、対向基板202と対向する上面を有し、封止膜309の一部が、当該上面と対向基板202との間に位置するように構成してもよい。当該構成であっても、カルシウムの化学反応が完了するまで吸湿剤308として機能することによって、表示領域205への水分子の侵入が阻止される。また、アレイ基板201から吸湿剤308の上面までの距離が、表示領域205におけるアレイ基板201から封止膜309の表面までの距離よりも大きくなるように、柱状の吸湿剤308を形成してもよい。
【0030】
続いて、吸湿剤308の平面的な配置について説明する。吸湿剤308は、周辺領域319を、少なくとも2つの不連続な領域で4辺を取り囲むように形成される。具体的には、例えば、
図4を用いて、吸湿剤308の配置レイアウトについて説明する。
図4(a)に示すように、吸湿剤308は、表示領域205の周囲の全てを取り囲むように、周辺領域319に形成される。表示領域205を囲うように吸湿剤308を形成することにより、吸湿剤308の化学反応が完了した後に、有機ELパネル200外部から表示領域205への水分子の侵入が阻止される。なお、
図4(b)及び(c)に示すように、吸湿剤308を2分割または4分割して形成するようにしてもよい。当該構成によれば、
図4(a)に示す吸湿剤308の製造工程よりも簡易な製造工程で吸湿剤308を形成することができる。
【0031】
封止膜309は、吸湿剤308を覆うように形成される。具体的には、
図3に示すように、表示領域205においてはカソード電極307を覆うように、換言すればアノード電極304、発光層を有する有機膜306、カソード電極307などを含む発光素子を覆うように、周辺領域319においては有機バンク305及び吸湿剤308を覆うように形成される。吸湿剤308を封止膜309で覆うことにより、有機ELパネル200を製造する過程において、吸湿剤308と水分子の化学反応が進行する事態を防止することができる。
【0032】
また、
図3においては、封止膜309が孔を有しない場合を記載しているが、封止膜309は、吸湿剤308を露出する孔、吸湿剤308の上面の側に窪む孔、水分子の侵入を許容する孔(侵入孔)を有するようにしてもよい。具体的には、例えば、封止膜309は、アレイ基板201と対向基板202を貼り合せの押圧によって生じる割れ目を有する構成としてもよい。当該孔は、吸湿剤308の上面を露出するようにしてもよいし、吸湿剤308の側面を露出するようにしてもよい。さらに、封止膜309の一部が、吸湿剤308の上面と対向基板202との間に位置するように構成した場合に、封止膜309の一部に、当該上面の側に窪む孔が設けられる構成としてもよい。詳細については後述するが、アレイ基板201と対向基板202を貼り合わせる工程において、封止膜309に侵入孔が生じるようにすることによって、吸湿剤308は、貼り合わせ工程の後に初めて吸湿性を発揮する状態とすることができる。
【0033】
カラーフィルタ層311,312,313は、特定の波長の光のみを透過する材料で形成される。例えば、カラーフィルタ層は、赤色の光を選択的に透過する赤色カラーフィルタ層311、緑色の光を選択的に透過する緑色カラーフィルタ層312、及び、青色の光を選択的に透過する青色カラーフィルタ層313を含んで構成される。具体的には、
図3に示すように、図面上の左から順に、赤色カラーフィルタ層311、緑色カラーフィルタ層312、及び、青色カラーフィルタ層313が、上ガラス基板310上に形成される。
【0034】
遮光層314は、光を遮断する材料で形成される。具体的には、例えば、
図3に示すように、遮光層314は、表示領域205におけるカラーフィルタ層の間及び周辺領域319に形成される。遮光層314によって、隣り合う副画素204から発光された光が混ざって混色が生じる事態を防止する。
【0035】
接着層は、フィル剤315及びダム剤316を含んで形成される。接着層は、少なくともその一部が吸湿剤308の内側によりも表示領域205の側に配置され、アレイ基板201と対向基板202を接着する。フィル剤315は、少なくとも一部が表示領域205に位置し、封止膜309が、表示領域205において、フィル剤315に覆われるように形成される。具体的には、例えば、フィル剤315は、吸湿剤308の内側、即ち吸湿剤308よりも表示領域205の側に配置される。フィル剤315は、有機系剤料からなり、吸湿剤308の内側に配置されることでアレイ基板201と対向基板202を接着する。
【0036】
ダム剤316は、周辺領域319に位置して表示領域205を囲うと共に、吸湿剤308を覆うように形成される。具体的には、ダム剤316は、フィル剤315よりも透水性が低い材料を用いて、フィル剤315の外側に表示領域205を囲うように形成される。
【0037】
上記のように、本発明の構成によれば、吸湿剤308の化学反応が完了するまでは吸湿剤308が水分子を吸収することによって、また、化学反応が完了した後は、発光素子への水分子の侵入を抑制することによって、発光素子の劣化が防止される。
【0038】
なお、上記においては、アレイ基板201と対向基板202を貼り合せる構成について記載しているが、対向基板202を有しない構成であってもよい。本変形例においては、有機ELパネル200は、上記と同様に、複数の画素を備える表示領域205と、表示領域205より外側の周辺領域319とを備える。そして、有機ELパネル200は、アレイ基板201と、駆動IC(Integrated Circuit)203と、を含んで構成される。
【0039】
そして、アレイ基板201は、上記と同様に、表示領域205と周辺領域319とに跨って位置し、発光素子を覆う封止膜309や、下ガラス基板301と封止膜309との間に位置する吸湿剤308等を含んで形成される。アレイ基板に含まれる発光層が、副画素204毎に異なる色の光を発する材料で形成される点は上記実施例と異なる。
【0040】
また、本変形例では対向基板202が設けられないが、アレイ基板201には、ダム剤316が設けられる。具体的には、アレイ基板201は、周辺領域319において、表示領域205を囲うダム剤316が設けられ、封止膜309の一部と吸湿剤308とが、ダム剤316で覆われるように形成される。
【0041】
本変形例においても、封止膜309が吸湿剤308を露出する孔を有するように形成してもよい。また、吸湿剤308が下ガラス基板301とは反対側に位置する上面を有し、封止膜309の一部は、当該上面と対向し、上面の側に窪む孔が設けられるようにしてもよい。また、吸湿剤308は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(例えばカルシウム)によって形成してもよい。さらに、吸湿剤308を柱状に形成し、下ガラス基板301から柱状に形成された吸湿剤308の上面までの距離が、表示領域205における下ガラス基板301から封止膜309の下ガラス基板301とは反対側に位置する表面までの距離よりも大きくなるように形成してもよい。
【0042】
続いて、本発明における表示装置100の製造工程について説明する。
図5乃至
図7は、本発明の実施形態における、製造工程を表す図である。まず、
図5(a)に示すように、下ガラス基板301上に、TFT回路層302を形成し、TFT回路層302を覆うように有機平坦化膜303を形成する。ここで、有機平坦化膜303は周辺領域319にも形成される。続いて、ドレイン電極317上部に積層された有機平坦化膜303にコンタクトホールを開口し、開口部のドレイン電極317上にアノード電極304を形成する。そして、各アノード電極304のそれぞれの周縁部を覆うように、有機バンク305が形成される。ここで、有機バンク305は、周辺領域319に形成された有機平坦化膜303の上層側にも形成される。さらに、表示領域205において、アノード電極304及び有機バンク305の端部の上層側に有機膜306が形成され、有機膜306の上層側にはカソード電極307が形成される。
【0043】
続いて、
図5(b)に示すように、周辺領域319に形成された有機バンク305の上層側に、吸湿剤308が形成される。ここで、吸湿剤308の高さは、アレイ基板201と対向基板202の間隔と同等、または、アレイ基板201と対向基板202の間隔よりも高くなるように形成される。また、吸湿剤308は、真空蒸着法等の方法によって形成される。
【0044】
次に、
図6(a)に示すように、表示領域205に形成されたカソード電極307、及び、周辺領域319に形成された有機バンク305並びに吸湿剤308を覆うように封止膜309が形成される。ここで、封止膜309は、吸湿剤308が形成される工程の後、吸湿剤308が空気に触れない環境で連続して形成されることが望ましい。吸湿剤308を形成する工程の直後に封止膜309を形成することで、吸湿剤308と水分子等との化学反応の進行を防止することができる。
【0045】
次に、
図6(b)に示すように、アレイ基板201に対して、接着剤が滴下される。具体的には、例えば、ディスペンサーを用いて、周辺領域319に形成された吸湿剤308及び有機バンク305と重なるようにダム剤316を滴下し、表示領域205には、一定間隔毎に、フィル剤315を滴下する。
【0046】
そして、
図7に示すように、
図6(b)の工程においてダム剤316及びフィル剤315が滴下されたアレイ基板201と対向基板202とを貼り合せる。ここで、対向基板202の製造方法は従来技術と同様である為説明を省略する。上記のように、吸湿剤308の高さは、アレイ基板201と対向基板202の間隔と同等以上となるように形成されているため、アレイ基板201と対向基板202とを貼り合せの際に、吸湿剤308を覆うように形成された封止膜309に対して圧力が加えられる。その結果、吸湿剤を覆うように形成された封止膜309には、水分子等を透過する割れ目が発生する。
【0047】
上記のように、
図6(a)の工程で形成された封止膜309は、
図7に示す工程で押圧によって割れ目が生じるまでの工程において、吸湿剤308と水分子との化学反応の進行を防止する。そして、
図7に示す工程において生じる侵入孔によって、初めて吸湿剤308の機能を発現させることにより、吸湿剤308が吸湿性を発揮する期間を長く保持することができる。さらに、吸湿剤の高さがアレイ基板201と対向基板202の間隔と同等以上となるように形成されており、吸湿剤は水分子との化学反応が完了した後、水分子等を透過しない材料に変化していることから、化学反応の完了後も外部から表示領域への水分子等の侵入を防止することができる。
【0048】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
100 表示装置、110 上フレーム、120 下フレーム、200 有機ELパネル、201 アレイ基板、202 対向基板、203 駆動IC、204 副画素、205 表示領域、301 下ガラス基板、302 TFT回路層、303 有機平坦化膜、304 アノード電極、305 有機バンク、306 有機膜、307 カソード電極、308 吸湿剤、309 封止膜、310 上ガラス基板、311 赤色カラーフィルタ層、312 緑色カラーフィルタ層、313 青色カラーフィルタ層、314 遮光層、315 フィル剤、316 ダム剤、317 ドレイン電極、318 画素トランジスタ、319 周辺領域。