特許第6557605号(P6557605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557605
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】乳酸菌を含む腸管バリア機能亢進剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20190729BHJP
   A61K 35/747 20150101ALN20190729BHJP
   A61P 1/04 20060101ALN20190729BHJP
   A61P 3/10 20060101ALN20190729BHJP
   A61P 9/12 20060101ALN20190729BHJP
   A61P 3/06 20060101ALN20190729BHJP
   A61P 3/04 20060101ALN20190729BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20190729BHJP
【FI】
   A23L33/135ZNA
   !A61K35/747
   !A61P1/04
   !A61P3/10
   !A61P9/12
   !A61P3/06
   !A61P3/04
   !C12N1/20 E
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-546700(P2015-546700)
(86)(22)【出願日】2014年11月7日
(86)【国際出願番号】JP2014079598
(87)【国際公開番号】WO2015068809
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2017年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-231140(P2013-231140)
(32)【優先日】2013年11月7日
(33)【優先権主張国】JP
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-01721
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-01722
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-01723
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(72)【発明者】
【氏名】星子 浩之
【審査官】 布川 莉奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−132188(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0201796(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2007−0107623(KR,A)
【文献】 J. Microbiol. Biotechnol.,2012年,22(8),pp. 1101-1106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/40− 5/49
A23L 31/00−33/21
A61K 35/00−35/768
A61K 36/06−36/068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物を含む、腸管バリア機能亢進作用を有する飲食品であって、Lactobacillus crustorumが受託番号NITE BP-01721として寄託されたLactobacillus crustorum SAM2695株、受託番号NITE BP-01722として寄託されたLactobacillus crustorum SAM2697株、受託番号NITE BP-01723として寄託されたLactobacillus crustorum SAM2698株、または2以上のこれらの組み合わせである、前記飲食品。
【請求項2】
前記Lactobacillus crustorumの生菌体を含む、請求項1記載の飲食品。
【請求項3】
糖尿病、高血圧、高脂血症、および肥満からなる群より選択される1以上の状態もしくは疾患の予防または治療用である、請求項1または2記載の飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌を含む飲食品及び腸管バリア機能亢進剤、ならびに腸管バリア機能亢進剤を含む医薬組成物および飲食品に関する。より詳細には、Lactobacillus crustorumを含む飲食品及び腸管バリア機能亢進剤、ならびに腸管バリア機能亢進剤を含む医薬組成物および飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病、高血圧、高脂血症等の生活習慣病と呼ばれる疾患は、内臓脂肪型肥満と密接に関連している。内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、高脂血症のうちいずれか2つ以上をあわせもった状態はメタボリックシンドローム(代謝症候群または内臓脂肪症候群)と呼ばれる。特に飽食状態にある先進国ではメタボリックシンドローム患者数が増加傾向にあり、医療費が増大する懸念もあることから、メタボリックシンドロームの対策が急務となっている。
【0003】
メタボリックシンドロームの共通の基盤病態として、生体における軽度の慢性的な炎症が指摘されている(非特許文献2、3)。炎症を誘発する物質としては、飽和脂肪酸、アルコール、および歯周病菌等が知られている。
【0004】
近年、腸内細菌や腸内環境と、慢性的な炎症を伴う肥満との関係も指摘されている(非特許文献4)。ヒトの腸内には一人あたり100種類以上、100兆個以上の腸内細菌が腸内フローラ(腸内微生物叢)を形成している。腸内細菌のうちのあるものは生体内で炎症反応を引き起こしうる。たとえば、マウスやヒトにおいて、腸内のグラム陰性細菌の細胞壁成分であるリポ多糖(lipopolysaccharide, LPS)が炎症性サイトカインの放出を促すことが示されている(非特許文献4)。
【0005】
腸管上皮細胞の下には、マクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞のような免疫系の細胞が多数存在している。通常、腸管上皮細胞はタイトジャンクション構造によって互いに強固に接着されており、高分子量物質は細胞間隙を透過しないよう厳密に制御されている。また、腸管上皮細胞には疎水性の異物を細胞から排出するためのトランスポーターも存在する。これらのタイトジャンクション構造やトランスポーターなどが、異物の侵入を防ぐ腸管バリア機能を担っている。しかし、飽和脂肪酸やアルコール等の原因によって腸管バリアが傷害されて腸管透過性が上昇すると、腸管内に存在する腸内細菌やその菌体成分等の高分子量物質が、細胞間隙を介して生体内へ移行し、免疫系細胞を刺激するなどして炎症性サイトカインの放出を促し、炎症を誘発する。
【0006】
腸管バリア機能を亢進して慢性的な炎症を防ぎ、それによってメタボリックシンドロームを予防または治療することができる手段が望まれている。
【0007】
乳酸を産生する細菌である乳酸菌は、腸内フローラのバランスを整え、健康な腸内環境を維持するために重要な役割を果たしていることが知られている。腸管バリア機能に対する乳酸菌の影響を検討した例としては、腸細胞に付着することができるラクトバチルス菌がカルシウム等のミネラルの腸管透過性を向上させることが報告されている(特許文献1)。また、Lactobacillus rhamnosus OLL2838、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus MEP190901、Lactobacillus gasseri MEP190903、およびLactobacillus gasseri MEP190903、ならびにそれらの菌体成分であるリポテイコ酸に腸管透過性の上昇を抑制する作用があることが報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2002-507997
【特許文献2】特開2008−212006
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】平成23年 国民健康・栄養調査
【非特許文献2】FEBS Lett., 582, 97-105 (2008)
【非特許文献3】J. Clin. Invest., 116, 1793-1801 (2006)
【非特許文献4】腸内細菌学雑誌, 24, 193-201 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、腸管バリア機能を亢進することができ、それによってメタボリックシンドロームを予防または治療することができる腸管バリア機能亢進剤、ならびにそれを含む医薬品および飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、Lactobacillus crustorumが培養ヒト腸管上皮細胞において腸管バリア機能の指標である経上皮膜抵抗値を上昇させることを見出した。また、Lactobacillus crustorumが、培養ヒト腸管上皮細胞およびマウス小腸上皮においてタイトジャンクション関連遺伝子の発現を誘導することも見出した。さらに、高脂肪食を摂取させたマウスにLactobacillus crustorumを投与すると、糖代謝異常抑制効果が示されることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、これらに限定されるわけではないが以下を包含する。
[1] Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物を含む、飲食品。
[2] Lactobacillus crustorumがLactobacillus crustorum SAM2695株、Lactobacillus crustorum SAM2697株、Lactobacillus crustorum SAM2698株、Lactobacillus crustorum JCM 15951T株、または2以上のこれらの組み合わせである、請求項1に記載の飲食品。
[3] Lactobacillus crustorumの生菌体を含む、[1]または[2]に記載の飲食品。
[4] Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物を含む、腸管バリア機能亢進剤。
[5] Lactobacillus crustorumがLactobacillus crustorum SAM2695株、Lactobacillus crustorum SAM2697株、Lactobacillus crustorum SAM2698株、Lactobacillus crustorum JCM 15951T株、または2以上のこれらの組み合わせである、請求項4に記載の腸管バリア機能亢進剤。
[6] Lactobacillus crustorumの生菌体を含む、[4]または[5]に記載の腸管バリア機能亢進剤。
[7] [4]〜[6]のいずれかに記載の腸管バリア機能亢進剤を含む、糖尿病、高血圧、高脂血症、および肥満からなる群より選択される1以上の状態もしくは疾患の予防または治療のための医薬組成物。
[8] [4]〜[6]のいずれかに記載の腸管バリア機能亢進剤を含む飲食品。
[9] 糖尿病、高血圧、高脂血症、および肥満からなる群より選択される1以上の状態もしくは疾患の予防または治療のための、[8]に記載の飲食品。
[10] 状態または疾患が糖尿病である、[7]に記載の医薬組成物または[9]に記載の飲食品。
[11] 状態または疾患が肥満と、糖尿病、高血圧および高脂血症からなる群より選択される1以上の疾患との組み合わせである、[7]に記載の医薬組成物または[9]に記載の飲食品。
[12] 糖尿病が2型糖尿病である、[7]〜[11]のいずれかに記載の医薬組成物または飲食品。
[13] [4]〜[6]のいずれかに記載の腸管バリア機能亢進剤を配合する工程を含むことを特徴とする、医薬組成物または飲食品の製造方法。
[14] 医薬組成物または飲食品が糖尿病、高血圧、高脂血症、および肥満からなる群より選択される1以上の状態もしくは疾患の予防または治療のためのものである、[13]に記載の製造方法。
[15] 状態または疾患が糖尿病である、[14]に記載の製造方法。
[16] 状態または疾患が肥満と、糖尿病、高血圧および高脂血症からなる群より選択される1以上の疾患との組み合わせである、[14]に記載の製造方法。
[17] 糖尿病が2型糖尿病である、[13]〜[16]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の腸管バリア機能亢進剤は、Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物を含むことにより、腸管バリア機能を亢進させることができる。また、本発明の腸管バリア機能亢進剤は、糖尿病、高血圧、高脂血症、および肥満、ならびにメタボリックシンドローム等の腸管バリア機能の障害に起因する状態もしくは疾患の予防又は治療のための医薬組成物または飲食品のために効果的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、ヒト腸管上皮細胞Caco2を用いたLactobacillus crustorumの腸管バリア機能亢進の評価結果を示す。
図2図2は、Lactobacillus crustorumと共培養した腸管上皮細胞Caco2におけるマイクロアレイ解析結果を示す。
図3図3は、Lactobacillus crustorumを投与したマウスにおける小腸上皮組織のクラウディン1(CLDN1)遺伝子発現の変化を示す。
図4図4は、高脂肪食負荷モデルマウスに対するLactobacillus crustorumの糖代謝異常抑制効果を示す。
図5図5は、高脂肪食負荷モデルマウスに対するLactobacillus crustorumの糖代謝異常抑制効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<Lactobacillus crustorum>
Lactobacillus crustorumはラクトバチルス属に属する乳酸菌の一種で、小麦サワードウから分離され、新規な種として分類することが提唱されたものである(International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (2007), 57, 146101467)。サワードウとは、乳酸菌および酵母を含む複数の微生物を用いて、小麦粉やライ麦粉と水を混ぜた生地を発酵させたパン種をいう。
【0016】
Lactobacillus crustorumは以下の菌学的性質を有する。
形態的性質
(1)桿菌、2−15μmの長さ、0.5−1μmの幅
(2)運動性:なし
(3)胞子形成:なし
培養的性質
(1)液体または固体MRS培地中、嫌気的条件又は好気的条件においてよく生育する
(2)15℃での生育:5、6、および7%食塩の存在下で生育する
(3)45℃での生育:5、6、および7%食塩の存在下で生育する
生理学的性質
(1)グラム染色:陽性
(2)カタラーゼ試験:
(3)発酵形式:ホモ乳酸発酵
(4)アンモニウム産生(アルギニンから):なし
(5)ガス産生(グルコースまたはグルコン酸塩):なし
(6)酸の産生の有無(LMG 23699株、LMG 23701株、LMG 23702株、R-30103株について):
ガラクトース、グルコース、フルクトース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、エスクリンおよびサリシン:あり
グリセロール、エリスリトール、D−アラビノース、L−アラビノース、リボース、D−キシロース、L−キシロース、アドニトール、β−メチル−D−キシロシド、ソルボース、ダルシトール、イノシトール、マンニトール、ソルビトール、α−メチル−D−マンノシド、α−メチル−D−グルコシド、メリビオース、ショ糖、イヌリン、メレジトース、ラフィノース、スターチ、グリコーゲン、キシリトール、D−ツラノース、D−リキソース、D−フコース、L−フコース、D−アラビトール、L−アラビトール、グルコネート、2−ケトグルコネート、および5−ケトグルコネート:なし。
【0017】
本発明には、上記の菌学的性質を有するLactobacillus crustorumに分類される細菌であればどのような株を用いてもよい。たとえば、東京農業大学で分離されたSAM2695株、SAM2697株、SAM2698株等を例示することができる。SAM2695株は受託番号NITE BP-01721として、SAM2697株は受託番号NITE BP-01722として、およびSAM2698株は受託番号NITE BP-01723として、いずれも平成25年10月17日付けで独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)寄託されている。また、タイプカルチャーであり、ベルギー微生物共同コレクション(Belgian Co-ordinated Collections of Micro-organisms)から入手することができるLactobacillus crustorum LMG 23699Tも用いることができる。Lactobacillus crustorum LMG 23699Tは、JCM 15951Tとして独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室(Japan Collection of Microorganisms)からも入手することができる。本発明においては、これらの菌株のうちの1種類を用いてもよいし、また、2種類以上の菌株の組み合わせを用いてもよい。たとえば、本発明の腸管バリア機能亢進剤は、1種類のLactobacillus crustorumの菌株を含んでいてもよいし、2種類以上のLactobacillus crustorumの菌株を含んでいてもよい。
【0018】
本発明のために用いるLactobacillus crustorumは、乳酸菌を培養することのできる液体培地または固体培地であればいかなるものを用いても培養することができる。培地の例としては、MRS培地(MRSブイヨン)およびMRS寒天培地が挙げられる(Sharpe M., et al, "Identification of the Lactic Acid Bacteria" in "Identification Method for Microbiologists Part A" London and New York, Academic Press, pages 65-79, 1966)。MRS培地およびMRS寒天培地は、定法に従って調製してもよいし、たとえば関東化学株式会社等から市販されているものを用いてもよい。また、ウシ、ウマ、ヒツジ等の哺乳類の乳を培地として用いることもできる。Lactobacillus crustorumの培養温度は15〜45℃の間で適宜設定することができるが、30℃が好ましい。Lactobacillus crustorumの培養条件は、嫌気培養および好気培養のいずれをも用いることができる。
【0019】
<腸管バリア機能亢進剤>
本発明の腸管バリア機能亢進剤は、Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物を含み、腸管バリア機能亢進作用を有する。
【0020】
本発明において、腸管バリア機能とは、腸管上皮細胞外(腸管内)から体内への物質の侵入を防ぐ機能をいう。正常な状態と比べて腸管上皮細胞外から体内への物質の侵入が促進されている状態を、腸管上皮細胞における透過性が上昇した状態と呼ぶ。腸管バリア機能の亢進とは、腸管上皮細胞における透過性の上昇を抑制すること、および腸管上皮細胞における透過性を低下させることのいずれをも意味する。たとえば、腸管上皮細胞を互いに接着するタイトジャンクション構造を正常化または強化することや、腸管上皮細胞に存在して異物を細胞から排出するトランスポーターの機能を正常化または強化することによって、腸管バリア機能が亢進される。
【0021】
腸管バリア機能亢進効果は、たとえば、腸管上皮細胞の腸管側から体内側へ移動する物質の量が減少することや、腸管上皮細胞の電気抵抗値(経上皮膜抵抗値(transepithelial electric resistance: TER))が上昇することによって示される。当業者は目的に応じて腸管バリア機能亢進効果の具体的な評価方法を選択することができるが、たとえば後述する実施例に示したように、ヒト腸管上皮細胞(Caco2細胞)におけるTERを測定する方法を好適に用いることができる。具体的には、Caco2単層培養細胞に被検物質を添加し、コントロール細胞とくらべてTERの上昇が示されれば、その被検物質には腸管バリア機能亢進効果があると評価することができる。
【0022】
本発明の腸管バリア機能亢進剤は、Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物を含む。本明細書では、生菌体と死菌体のいずれをも意味する用語として「菌体」を用いる。菌体は培養上清を除いて精製したものでも、固体培地や液体培地等の夾雑物が含まれるものでもよい。また、本発明の腸管バリア機能亢進剤に含まれる菌体は、湿潤な状態または乾燥した状態のいずれの状態でもよい。湿潤な状態の菌体は、たとえばLactobacillus crustorumの菌体と固体培地または液体培地とを含む培養物をそのまま、あるいは培養物を濃縮した濃縮物を本発明の腸管バリア機能亢進剤に含ませることができる。乾燥した状態の菌体は、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥等の方法によって乾燥した菌体をそのまま、あるいは粉末化、顆粒化したものを本発明の腸管バリア機能亢進剤に含ませることができる。死菌体は、Lactobacillus crustorumの培養物、培養物の濃縮物、精製した菌体、または乾燥した菌体を加熱処理や放射線処理等によって殺菌処理して得られる。また、本発明の腸管バリア機能亢進剤は、Lactobacillus crustorum菌体処理物を含むこともできる。菌体処理物とは、超音波破砕や物理破砕等の破砕処理または粉砕処理によって得られる菌体破砕物や菌体粉砕物、細胞壁分解酵素等の酵素処理によって得られる菌体溶解物、菌体を固体担体やマイクロカプセル等に固定化した固定化菌体等や菌体培養液上清のように菌体を除去した後の培養物を意味する。
【0023】
本発明では、Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物をそのまま腸管バリア機能亢進剤として用いることができる。また、Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物に、薬理学的に許容可能な担体や賦形剤を添加したものを、腸管バリア機能亢進剤として用いることもできる。担体の例としては、培地、水、生理食塩水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。賦形剤の例としては、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、デキストリン、シクロデキストリン、キサンタンガム、グァーガム、アラビアガム、トラガントガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、寒天等が挙げられる。また、製剤化において一般的に使用される乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤等を適宜配合することもできる。
【0024】
本発明の腸管バリア機能亢進剤の有効成分であるLactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物の含量は、効果面を考慮して任意に決定することができる。たとえば、有効成分としてLactobacillus crustorumの菌体を用いる場合は、菌体の乾燥重量として腸管バリア機能亢進剤中に0.00001〜99.9重量%含まれることが好ましく、0.0005〜50重量%含まれることがより好ましく、0.0001〜10重量%含まれることがさらに好ましい。あるいは、菌体数として、1.0×10〜1.0×1012個/gの範囲内であることが好ましく、1.0×10〜1.0×1012個/gの範囲内であることがより好ましい。また、有効成分としてLactobacillus crustorumの菌体処理物を用いる場合は、固形成分重量として腸管バリア機能亢進剤中に0.00001〜99.9重量%含まれることが好ましく、0.0005〜50重量%含まれることがより好ましく、0.0001〜10重量%含まれることがさらに好ましい。また、有効成分としてLactobacillus crustorumの菌体と菌体処理物とを組み合わせて用いる場合は、菌体の乾燥重量と菌体処理物の固形成分重量とを合わせて、腸管バリア機能亢進剤中に0.00001〜99.9重量%含まれることが好ましく、0.0005〜50重量%含まれることがより好ましく、0.0001〜10重量%含まれることがさらに好ましい。
【0025】
<腸管バリア機能亢進剤を含む医薬組成物>
本発明は、上記腸管バリア機能亢進剤を含む医薬組成物も提供する。
【0026】
本発明の医薬組成物は、腸管バリア機能亢進剤を含むため、腸管バリア機能の異常が関連する状態または疾患の予防および治療のためにも有効である。腸管バリア機能の異常が関連する状態または疾患には、制限されないが、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症、炎症性腸疾患、食物アレルギー等が含まれる。ここで肥満の状態とは、脂肪細胞の数が増加したり、脂肪細胞に脂肪滴が過剰に蓄積されることによって、身長に比べて体重の割合が大きくなっている状態をいう。肥満の状態は、疾患としての肥満症(肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測される病態)には至らない状態をも含む。肥満に加え、糖尿病、高血圧および高脂血症からなる群より選択される1以上の疾患とが併発している状態は、メタボリックシンドロームの前段階と位置づけることができる。また、肥満に加え、糖尿病、高血圧および高脂血症からなる群より選択される2以上の疾患とが併発している状態は、メタボリックシンドロームとも呼ばれる。
【0027】
本明細書で「状態または疾患の予防」というときは、状態又は疾患に対する対象の抵抗性を高めること、状態または疾患の発症を防止することを指す。また、本明細書で「状態または疾患の治療」というときは、対象を状態または疾患から回復させること、状態または疾患の重篤度を改善すること、状態または疾患の進行を防止することを指す。
【0028】
本発明の医薬組成物は、薬理学的に許容される担体や賦形剤等と共に、一般的な方法により目的に応じて製剤化することができる。担体の例としては、培地、水、生理食塩水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。賦形剤の例としては、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、デキストリン、シクロデキストリン、キサンタンガム、グァーガム、アラビアガム、トラガントガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、寒天等が挙げられる。また、製剤化において一般的に使用される乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤等を適宜配合することもできる。
【0029】
本発明の医薬組成物には、Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物の腸管バリア機能亢進効果を損なわない、すなわち、Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物との配合により好ましくない相互作用を生じない限り、必要に応じて、ミネラル;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA等のビタミン類;栄養成分;香料;色素などの他の添加物を混合することができる。これらの添加物はいずれも医薬品に一般的に用いられるものが使用できる。また、本発明の医薬組成物には、Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物の腸管バリア機能亢進効果を損なわない限り、1以上の他の生理活性成分を混合することもできる。
【0030】
本発明の医薬組成物は、他の薬剤と組み合わせて用いてもよい。本発明の医薬組成物を他の薬剤との組み合わせで用いる場合は、本発明の医薬組成物と他の薬剤を合わせた1つの組成物として用いてもよく、本発明の医薬組成物と他の薬剤とがそれぞれ別個の配合物中に含まれる併用投与に用いてもよい。併用投与の場合は、本発明の医薬組成物の投与が他の薬剤の投与の前に、それと同時に、またはその後に行われてよい。
【0031】
他の薬剤の例としては、たとえばマジンドール、オルリスタット等の抗肥満薬、トルブタミド、ナテグリニド、アカルボース、メトホルミン、ピオグリタゾン、シタグリプチン、エパルレスタット等の抗糖尿病薬、クロルタリドン、ヒドロクロロチアジド、インダパミド、フロセミド、トラセミド、スピロノラクトン等の利尿薬、ニフェジピン、アムロジピン、ジルチアゼム等のカルシウム拮抗薬、イミダプリル、ベナゼプリル等のアンジオテンシン変換酵素阻害薬、ロサルタン、バルサルタン等のアンジオテンシン受容体拮抗薬、アリスキレン等の直接的レニン阻害薬、フェントラミン、プラゾシン等のα受容体遮断薬、アテノロール、セリプロロール等のβ受容体遮断薬、カルベジロール等のαβ遮断薬、クロニジン等のα受容体刺激薬、メバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチン等のスタチン系脂質降下薬、ベザフィブラート、フェノフィブラート等のフィブラート系脂質降下薬、コレスチミド等のレジン(胆汁酸結合薬)、プロブコール、エゼチミブ等のその他の脂質降下薬などが挙げられる。
【0032】
本発明の医薬組成物は、その形態は特に制限されるものではなく、例えば、粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体状;溶液状、乳液状、分散液状等の液状;またはペースト状等の半固体状等の、任意の形態に調製することができる。具体的な剤形としては、散剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、丸剤、トローチ剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤を含む)、チュアブル剤、溶液剤などが例示できる。
【0033】
一態様として、本発明の医薬組成物は、Lactobacillus crustorumの菌体を、菌体の乾燥重量として、好ましくは0.00001〜99.9重量%、より好ましくは0.0001〜10重量%の量で含有する。また、一態様として、本発明の医薬組成物は、Lactobacillus crustorumの菌体処理物を、固形成分重量として好ましくは0.00001〜99.9重量%、より好ましくは0.0001〜10重量%の量で含有する。また、一態様として、本発明の医薬組成物は、Lactobacillus crustorumの菌体および菌体処理物を、菌体の乾燥重量と菌体処理物の固形成分重量とを合わせた量として、好ましくは0.00001〜99.9%重量%、より好ましくは0.0001〜10重量%の量で含有する。
【0034】
本発明の医薬組成物の投与量や投与形態は、対象、病態やその進行状況、その他の条件によって適宜選択すればよい。たとえば、Lactobacillus crustorumの菌体を用いる場合は、例えば、ヒト(成人)を対象に腸管バリア機能亢進効果を得ることを目的として経口 摂取する場合には、Lactobacillus crustorumの菌体を1日当たり0.01〜1000 mg、好ましくは0.1〜200 mg、さらに好ましくは0.3〜2mg程度となるように、1日に1〜3回程度に分けて経口摂取するとよい。あるいは、菌体数として、一日当たり1.0×106個以上/kg体重、好ましくは1.0×10個以上/kg体重、更に好ましくは、1.0×10個以上/kg体重となる量を、1〜数回に分けて経口摂取するとよい。Lactobacillus crustorumの菌体処理物を用いる場合は、例えば、ヒト(成人)を対象に腸管バリア機能亢進効果を得ることを目的として経口投与する場合には、Lactobacillus crustorumの菌体処理物を、固形成分重量として1日当たり0.01〜1000 mg、好ましくは0.1〜200mg、さらに好ましくは0.3〜2mg程度となるように、1日に1〜3回程度連続投与するとよい。Lactobacillus crustorumの菌体および菌体処理物を合わせて用いる場合は、例えば、ヒト(成人)を対象に腸管バリア機能亢進効果を得ることを目的として経口投与する場合には、Lactobacillus crustorumの菌体および菌体処理物を、菌体の乾燥重量と菌体処理物の固形成分重量とを合わせた量として1日当たり0.01〜1000 mg、好ましくは0.1〜200 mg、さらに好ましくは0.3〜2mg程度となるように、1日に1〜3回程度連続投与するとよい。
【0035】
<飲食品>
本発明は、上記腸管バリア機能亢進剤を含む飲食品も提供する。
【0036】
本発明の飲食品は、腸管バリア機能亢進剤を含むため、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症、炎症性腸疾患、食物アレルギーのような、腸管バリア機能の異常が関連する状態または疾患の予防および治療のためにも有効である。
【0037】
本発明の飲食品は、いかなる形態であってもよく、たとえばジュース、牛乳、乳飲料、清涼飲料、茶飲料、ドリンク剤等の飲料、スープ、シチュー等の液状食品、ジャム、ヨーグルト等のペースト状食品、ゼリー、グミ等の半固形状食品、パン、ケーキ、飴、クッキー、ガム等の固形状食品、ドレッシング、マヨネーズ等の油脂含有食品、カプセル、タブレット、トローチ等の医薬製剤の形態等とすることができる。
【0038】
本発明の飲食品のさらなる例としては、栄養補助食品、健康食品、機能性食品、幼児用食品、乳児用調製乳、未熟児用調製乳、老人用食品、飲料等があげられるが、これらに限定されない。
【0039】
栄養補助食品とは、特定の栄養成分が強化されている食品をいう。健康食品とは、健康的な又は健康によいとされる食品をいい、栄養補助食品(サプリメント)、自然食品、ダイエット食品等が含まれる。機能性食品とは、体の調節機能を果たす栄養成分を補給するための食品をいい、特定保険保健用途食品と同義である。幼児用食品とは、約6歳までの子供に与えるための食品をいう。老人用食品とは、無処理の食品と比較して消化及び吸収が容易であるように処理された食品をいう。乳児用調製乳とは、約1歳までの子供に与えるための調製乳をいう。未熟児用調製乳とは、未熟児が生後約6ヶ月になるまで与えるための調製乳をいう。
【0040】
本発明の飲食品の形態は特に制限されるものではなく、例えば、粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体状;溶液状、乳液状、分散液状等の液状;またはペースト状等の半固体状等の、任意の形態に調製することができる。具体的な剤形としては、散剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、丸剤、トローチ剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤を含む)、チュアブル剤、溶液剤などが例示できる。
【0041】
本発明の飲食品には、Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物の腸管バリア機能亢進効果を損なわない、すなわち、Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物との配合により好ましくない相互作用を生じない限り、必要に応じて、ミネラル;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA等のビタミン類;栄養成分;香料;色素などの他の添加物を混合することができる。これらの添加物はいずれも飲食品に一般的に用いられるものが使用できる。
【0042】
また、本発明の飲食品には、Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物の腸管バリア機能亢進効果を損なわない限り、1以上の他の生理活性成分を混合することもできる。
【0043】
一態様として、本発明の飲食品は、Lactobacillus crustorumの菌体を、菌体の乾燥重量として、好ましくは0.00001〜99.9重量%、より好ましくは0.0001〜10重量%の量で含有する。また、一態様として、本発明の飲食品は、Lactobacillus crustorumの菌体処理物を、菌体処理物の固形成分重量として好ましくは0.00001〜99.9重量%、より好ましくは0.0001〜10重量%の量で含有する。また、一態様として、本発明の飲食品は、Lactobacillus crustorumの菌体および菌体処理物を、菌体の乾燥重量と菌体処理物の固形成分重量とを合わせた量として、好ましくは0.00001〜99.9%重量%、より好ましくは0.0001〜10重量%の量で含有する。
【0044】
<医薬組成物または飲食品の製造方法>
本発明の時計遺伝子の腸管バリア機能亢進剤は、有効成分として、Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物を含むことにより、腸管バリア機能を亢進し、腸管バリア機能の異常に基づく状態もしくは疾患を予防または治療することができる。そして、医薬組成物または飲食品として提供することができる。
【0045】
すなわち、本発明は別の観点からは、Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物を含む腸管バリア機能亢進剤を配合する工程を含む医薬組成物または飲食品の製造方法である。
【0046】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0047】
ヒト腸管上皮細胞Caco2を用いたLactobacillus crustorumの腸管バリア機能亢進の評価
【0048】
<材料>
Lactobacillus crustorumとして、Lactobacillus crustorum SAM2695株、Lactobacillus crustorum SAM2697株、Lactobacillus crustorum SAM2698株、およびタイプカルチャーであるLactobacillus crustorum JCM 15951Tを用いた。
【0049】
腸管バリア機能亢進の評価には、ヒト腸管上皮細胞Caco2を用いた。この細胞はヒト大腸癌由来でin vitro小腸モデルとして広く用いられており、細胞のバリア機能と経上皮膜抵抗値(transepithelial electric resistance: TER)に高い相関関係が見られることが知られている。Lactobacillus crustorumとCaco2を共培養したことによるTER値の正への変化を腸管バリア機能亢進の指標として評価した。
【0050】
<方法>
菌の調製
前培養では、各菌株の保存バイアルから100 μlを10 mlのMRS培地に接種し、24時間、30 ℃で培養した。次に、本培養では1リットルのMRS培地に前培養液10 mlを接種し、24時間、30 ℃で培養した。24時間の培養後、培養液を8000 rpmで10分間遠心分離し、上清を除いた。滅菌水を加えて洗浄し、同条件で遠心分離した。上清を除き、更に1回洗浄し、最後に滅菌水で縣濁した。
【0051】
Caco2細胞の調製
ミリセル24ウェルセルカルチャープレート(MERCK MILLIPORE)に0.7×105 細胞/wellの条件でアピカルウェルにCaco2を播種し、37 ℃、5% CO2の条件下で2週間培養した。培地はDulbecco's Modified Eagle Medium(DMEM)(Sigma-Aldrich, D6429)、Fetal Bovine Serum(FBS)(Equiteck Bio, Inc)および抗生物質としてAntibiotic‐Antimycotic Mixed Stock Solution(100x)(ナカライテスク株式会社)を用いた。培地は、500 mlのDMEMに50 mlのFBSおよび5 mlの抗生物質を添加して調製した。培地は、アピカルウェルに400 μl、バソラテラルウェルに800 μl添加した。培地は2〜3日おきに交換した。
【0052】
Lactobacillus crustorum添加前の膜抵抗値が300 Ω・cm2以上を示したCaco2単層細胞を、十分にタイトジャンクションが形成されているものとしてアッセイに使用した。
【0053】
実験方法
2週間培養したCaco2細胞に、1×109 細胞/mlに調整した菌縣濁液を40 μl(コントロールは培地)添加し、37 ℃、5 % CO2の条件下で2時間共培養した。膜抵抗値の測定には、ミリセルERS-2電圧抵抗計(MERCK MILLIPORE)を用い、Lactobacillus crustorumの添加前および添加24時間後の膜抵抗値を測定した。実験は各n=6で実施した。
【0054】
<結果>
結果を図1に示す。
【0055】
Lactobacillus crustorum JCM 15951T, SAM 2695およびSAM 2698において、コントロールと比較して有意なTERの上昇を示した。SAM 2697はTER上昇の傾向を示した。
【実施例2】
【0056】
Lactobacillus crustorumと共培養した腸管上皮細胞Caco2におけるマイクロアレイ解析
Caco2とLactobacillus crustorum SAM 2698株を共培養し、腸管バリア関連遺伝子の発現を調べた。
【0057】
<材料>
菌の調製
Lactobacillus crustorumとして、Lactobacillus crustorum SAM 2698株を用いた。
【0058】
前培養は、菌株の保存バイアルから100 μl を10 mlのMRS培地に接種し、24時間、30 ℃で培養した。その後、1リットルの MRS培地に前培養液10 mlを接種し、24 時間、30 ℃で培養した。次に、培養液を8000rpmで10分間遠心分離し、上清を除いた。滅菌水を加えて洗浄し、同条件で遠心分離した。上清を除き、更に1回洗浄し、最後に滅菌水で縣濁した。
【0059】
Caco2細胞の調製
12ウェルセルカルチャープレート(BD Falcon)に0.63×105 細胞/ 2 ml / ウェルの条件でCaco2細胞を播種し、37 ℃、5 % CO2の条件下で2週間培養した。培地はDulbecco's Modified Eagle Medium(DMEM)(Sigma-Aldrich, D6429)、Fetal Bovine Serum(FBS)( Equiteck Bio, Inc)および抗生物質としてAntibiotic‐Antimycotic Mixed Stock Solution(100x)(ナカライテスク株式会社)を用いた。培地は、500mlのDMEMに50mlのFBSおよび5mlの抗生物質を添加して調製した。培地は2〜3日おきに交換した。
【0060】
<方法>
実験方法
2週間培養したCaco2細胞に、DMEMで縣濁したLactobacillus crustorumを1×109細胞/2ml/well添加し、5時間共培養した。実験は全てn数を3で実施した。5時間後、上清を除き、PBS(-)で洗浄後した。回収した細胞から、RNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いてRNAを調製した。
【0061】
マイクロアレイ解析
タカラバイオ株式会社にAgilent Expression Array解析を依頼し、Human SurePrint G3 (8×60k) ver2.0を実施した。
【0062】
マイクロアレイ解析結果
タイトジャンクション関連遺伝子クラウディンに着目して解析した結果を図2に示す。コントロールと比較すると、Lactobacillus crustorum SAM 2698と共培養したCaco2細胞ではクラウディン1 (CLDN 1)の発現量が増加した(約1.1倍)。また、CLDN 3およびCLDN4の発現量も有意に増加した(各約1.6倍)。
【実施例3】
【0063】
Lactobacillus crustorumを投与したマウスにおける小腸上皮組織のCLDN1発現変化
Lactobacillus crustorum SAM 2698 生菌をマウスに投与し、小腸上皮組織におけるCLDN1の発現変化を調べた。
【0064】
<材料>
Lactobacillus crustorumとして、Lactobacillus crustorum SAM 2698株を用いた。
【0065】
試験動物にはC57BL/6Jマウス、雄、7週齢を用いた。試験群は、滅菌投与およびLactobacillus crustorum SAM 2698 生菌を投与した群を設定した。各群のn数は6匹とした。
【0066】
<方法>
実験方法
生菌は120億細胞/mlの縣濁液250 μl (30億cells/mouse) を単回経口投与した。投与5時間後に小腸上皮組織を採取した。
【0067】
小腸上皮組織からのRNA抽出
小腸上皮組織に150-212 μmのグラスビーズ(SIGMA社製)を添加し、マルチビーズショッカー(YASUI KIKAI社製)を用いて3000rpm, 3分間処理した。その後、RNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用い、プロトコルに従ってRNAを調製した。
【0068】
プライマーの設計
マウスのCLDN1遺伝子のためのプライマー配列は、公開されている遺伝子配列情報をもとに設計した。配列は以下の通りである。マウスCLDN1フォワードプライマー : CCTATGCTGGGGACAACATC/マウスCLDN1リバースプライマー : TGCACCTCATCATCTTCCAG。発現解析はGAPDH遺伝子発現をコントロールとした。GAPDH遺伝子のためのプライマー配列は、ShineGene Molecular Biotech, Incが公開しているHousekeeping Gene Primers for RT-PCRを参考にして設計した。配列は以下の通りである。Mouse GAPDH F49 : GGTGAAGGTCGGTGTGAACG/R281 : CTCGCTCCTGGAAGATGGTG。
【0069】
リアルタイムPCR条件
発現解析はリアルタイムPCR (Step One Plus, Applied Biosystems社製)を用いて実施した。
【0070】
抽出したRNAはRNase Free水で100 ng/μlに調整し、10 μMの各プライマーを含む反応溶液18 μlにRNA溶液を2 μl加えてリアルタイムPCRを実施した。リアルタイムPCRはPower SYBR(登録商標)Green RNA-to-CTTM 1-Step Kit (Applied Biosystems社製)を用い、キットのプロトコルに従った。
【0071】
<結果>
タイトジャンクション関連遺伝子CLDN1に着目して解析した結果を図3に示す。滅菌水投与群と比較してLactobacillus crustorum SAM 2698を投与したマウスの小腸上皮において、クラウディン1 (CLDN 1)の発現が有意に増加した。
【実施例4】
【0072】
高脂肪食負荷モデルマウスに対するLactobacillus crustorumの糖代謝異常抑制効果
【0073】
<材料>
Lactobacillus crustorumとして、Lactobacillus crustorum SAM2695株、Lactobacillus crustorum SAM2698株、およびタイプカルチャーであるLactobacillus crustorum JCM 15951Tを用いた。
【0074】
試験動物にはC57BL/6Jマウス、雄、7週齢を用いた。試験群は、正常食群、60%高脂肪食群、60%高脂肪食に各Lactobacillus crustorum生菌を投与した群を設定した。各群のn数は10匹とした。
【0075】
<方法>
実験方法
試験期間は25日間で、生菌は120億細胞/mlの縣濁液250 μl (30億細胞/日/匹) を経口投与した。
【0076】
動物実験飼料
正常食および60%高脂肪食はリサーチダイエット社の精製飼料10kcal%の脂肪(ラード)および精製飼料60kcal%の脂肪(ラード)を用いた。
【0077】
糖代謝異常抑制試験 (糖負荷試験)
試験25日目に糖負荷試験を実施した。20%グルコース溶液を1g/kg(5ml/kg)の条件で経口投与し、投与前、投与後15、30、60及び90分後に尾静脈より採血した。血糖はグルテストneoスーパー(株式会社三和化学研究所)で測定した。
【0078】
糖代謝異常抑制試験結果 (糖負荷試験)
結果を図4および図5に示す。
【0079】
各群の糖負荷後の血中糖濃度を測定した結果、正常食摂取群と比較して、60%高脂肪食摂取群における15、30、60及び90分で有意に高値を示した。一方、60%高脂肪食にLactobacillus crustorum JCM 15951Tを投与した群において、60%高脂肪食摂取群と比較して15分で有意な血糖上昇抑制、30分で血糖上昇抑制の傾向を示した。60%高脂肪食にLactobacillus crustorum SAM 2695を投与した群において、60%高脂肪食摂取群と比較して30分および60分で有意な血糖の上昇抑制を示した。15分から90分のAUCにおいては、60%高脂肪食摂取群と比較して有意な血糖低下が認められた。次に、60%高脂肪食にLactobacillus crustorum SAM 2698を投与した群において、30、60および90分で有意な血糖の上昇抑制を示した。15分から90分のAUCにおいては、60%高脂肪食摂取群と比較して有意な血糖低下が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の腸管バリア機能亢進剤は、Lactobacillus crustorumの菌体または菌体処理物を含むことにより、腸管バリア機能を亢進させることができる。本発明の腸管バリア機能亢進剤は、糖尿病、高血圧、高脂血症、および肥満、ならびにメタボリックシンドローム等の腸管バリア機能の障害に起因する状態もしくは疾患の予防又は治療のための医薬組成物または飲食品のために有効に利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]