(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557607
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】有機性排水の処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20060101AFI20190729BHJP
C02F 3/10 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
C02F3/12 B
C02F3/10 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-6459(P2016-6459)
(22)【出願日】2016年1月15日
(65)【公開番号】特開2017-124387(P2017-124387A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 航介
(72)【発明者】
【氏名】丸野 紘史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直人
【審査官】
▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−018263(JP,A)
【文献】
特開2007−136363(JP,A)
【文献】
特開2007−275845(JP,A)
【文献】
特開2007−136365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/12
C02F 3/02−3/10
C02F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理水を排出するための処理水排出口を備えるとともに好気性グラニュール状汚泥を収容する槽に、有機性排水を導入する排水導入工程と、
導入した有機性排水を曝気する曝気工程と、
前記曝気を停止して前記好気性グラニュール状汚泥を含む固形物を沈降させる静置工程と、
前記静置工程の後に前記処理水排出口から処理水を排出する排出工程と、
を備え、
前記排出工程の後、前記排水導入工程に戻りこれら一連の工程を繰り返すことで有機性排水を処理する排水処理方法において、
前記槽内の複数の水位レベルまで、前記槽内の処理水を排出できるようにし、
前記一連の工程が繰り返されるのに伴い、前記排出工程において、一つ前の前記排出工程における最終の水位レベルよりも高い水位レベルで処理水の排出をとめるようにすることを特徴とする、排水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排水処理方法において、
前記槽の高さ方向に複数の前記処理水排出口を設け、
前記一連の工程が繰り返されるのに伴い、前記排出工程で選択する前記処理水排出口を、一つ前の前記排出工程で選択した前記処理水排出口よりも高い位置の前記処理水排出口とすることを特徴とする、排水処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排水処理方法において、
前記排出工程において、前記槽内の汚泥界面レベルと、一つ前の前記排出工程における最終の水位レベルとの差が、500mm以下となったら、一つ前の前記排出工程における最終の水位レベルよりも高い水位レベルで処理水の排出をとめるようにすることを特徴とする、排水処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の排水処理方法において、
前記排出工程において、一つ前の前記排出工程により排出された処理水のSSが、100mg/L以上となったら、一つ前の前記排出工程における最終の水位レベルよりも高い水位レベルで処理水の排出をとめるようにすることを特徴とする、排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水の処理方法に関し、特に、有機性排水の回分式処理において好適に用いられる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性排水の処理方法に関し、従来よりその高効率化が望まれている。高効率化に有効な手段として、槽内に保持する微生物汚泥の高濃度化という手段がある。高濃度化の方法には、ポリマー等で包括的に微生物を固定化する方法、担体に微生物を付着させる方法、微生物汚泥を自己固定化(粒状化=グラニュール化)させる方法などがある。これらの方法の中でも、固定化のための副資材が不要という観点から、微生物汚泥の自己固定化技術が注目されている。
【0003】
微生物汚泥の自己固定化に関する技術として、例えば特許文献1,2に記載の技術がある。特許文献1に記載の方法は、SS(Suspended solids)が後段へ流出しないようにすることなどを目的とする自己固定化技術であって、二個以上の処理水排出口を槽の高さ方向に高さを変えて設け、一連の工程が繰り返されていくに伴って、徐々に、より低い位置の処理水排出口から処理水を排出する、という方法である。この方法により、好気性処理の反応性を高めるとともに、ランニングコストを低減し、且つ、SSの後段への流出を防止できる、と文献中で称されている。
【0004】
特許文献2に記載の方法は、微生物汚泥の粒状化を促進するための原生動物及び糸状菌を、微生物汚泥を含む固形物が生成されて当該固形物が粒状化される初期段階において曝気槽に投入することを特徴とする方法である。この方法により、より早く粒状微生物汚泥を生成することができる、と文献中で称されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4975541号公報
【特許文献2】特許第4804888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1,2に記載の方法は、その目的は相互に異なるものの、いずれも、自己固定化した微生物汚泥、いわゆるグラニュール状汚泥(好気性グラニュール状汚泥)をつくるための方法である。
【0007】
グラニュール状汚泥をどのようにしてつくるかということも依然として重要な解決すべき課題ではあるが、つくられたグラニュール状汚泥を槽内において、いかにして高濃度で且つ安定に保持するかということも、有機性排水の処理の高効率化の達成にかかせない重要な解決すべき課題である。しかしながら、これら2つの課題のうち後半に記載の課題を解決しようとする技術文献は見当たらなかった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、好気性グラニュール状汚泥を高濃度で且つ安定に槽内で保持することができる工程を有する有機性排水の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、処理水を排出するための処理水排出口を備えるとともに好気性グラニュール状汚泥を収容する槽に、有機性排水を導入する排水導入工程と、導入した有機性排水を曝気する曝気工程と、前記曝気を停止して前記好気性グラニュール状汚泥を含む固形物を沈降させる静置工程と、前記静置工程の後に前記処理水排出口から処理水を排出する排出工程と、を備え、前記排出工程の後、前記排水導入工程に戻りこれら一連の工程を繰り返すことで有機性排水を処理する排水処理方法において、前記槽内の複数の水位レベルまで、前記槽内の処理水を排出できるようにし、前記一連の工程が繰り返されるのに伴い、前記排出工程において、
一つ前の前記排出工程における最終の水位レベルよりも高い水位レベルで処理水の排出をとめるようにすることを特徴とする。
【0010】
この構成によると、一連の工程(サイクル)が繰り返されるのにつれて、1サイクル当りの槽内への排水導入量が減少していく。これにより、好気性グラニュール状汚泥を含む槽内の汚泥へのBOD(Biochemical oxygen demand)負荷が小さくなっていき、且つ槽内におけるBOD負荷の変動幅が小さくなる。BOD負荷が小さくなり、且つその変動幅が小さくなることで、槽内において安定した好気性グラニュール状汚泥の維持が可能となる。また、好気性グラニュール状汚泥を含む槽内の汚泥量が増えていくので、槽内のMLSS(Mixed liquor suspended solids)は上昇していく。すなわち、好気性グラニュール状汚泥を高濃度で槽内に保持することができる。
【0011】
なお、1サイクル当りの排水処理量は減少するが、処理量減少に合わせて1サイクル当りの曝気時間を減少させることができるので、トータルの排水処理量は変わらないものとすることができる。また、槽内の汚泥が高濃度で保持されるため、余剰汚泥の発生量を抑制することができるという効果もある。
【0012】
また本発明において、前記槽の高さ方向に複数の前記処理水排出口を設け、前記一連の工程が繰り返されるのに伴い、前記排出工程で選択する前記処理水排出口を、
一つ前の前記排出工程で選択した前記処理水排出口よりも高い位置の前記処理水排出口とすることが好ましい。
【0013】
この構成によると、簡易な構成で、排出工程において、
一つ前の排出工程における最終の水位レベルよりも高い水位レベルまでしか処理水を排出しないようにすることができる。
【0014】
さらに本発明において、前記排出工程において、前記槽内の汚泥界面レベルと、一つ前の前記排出工程における最終の水位レベルとの差が、500mm以下となったら、一つ前の前記排出工程における最終の水位レベルよりも高い水位レベルで処理水の排出をとめるようにすることが好ましい。
【0015】
この構成によると、好気性グラニュール状汚泥の槽内濃度をより迅速に高めることができる。また、SS(Suspended solids)の後段への流出量を抑制することができるという効果もある。
【0016】
さらに本発明において、前記排出工程において、一つ前の前記排出工程により排出された処理水のSSが、100mg/L以上となったら、一つ前の前記排出工程における最終の水位レベルよりも高い水位レベルで処理水の排出をとめるようにすることが好ましい。
【0017】
この構成によると、SS(Suspended solids)の後段への流出量を抑制することができるとともに、SSの後段への流出量を監視することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、好気性グラニュール状汚泥を高濃度で且つ安定に槽内で保持することができる工程を有する有機性排水の処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の排水処理方法を実施するための排水処理設備の一実施形態を示す図である。
【
図2】
図1に示す排水処理設備の運転方法を説明するための図である。
【
図3】
図1に示す排水処理設備の運転方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明が処理対象とする有機性排水は、例えば、下水排水、食品工場などからの排水、汚泥処理における消化、濃縮、脱水などで生じる分離液からなる返流水である。
【0021】
(排水処理設備の構成)
図1に示す本発明の排水処理方法を実施するための一実施形態に係る排水処理設備101は、有機性排水を回分式(バッチ式)で処理する設備であって、回分式曝気槽1を備えている。この1つの槽(回分式曝気槽1)で、排水導入工程、曝気工程、静置工程、および排出工程で構成される一連の工程が繰り返される。回分式曝気槽1には、原水供給管11、処理水排出口としての計3本の処理水排出管12(12a,12b,12c)、および汚泥引抜管13が取り付けられている。また、回分式曝気槽1内の底部には、散気装置1aが設置されている。計3本の処理水排出管12のうちの第1処理水排出管12aは、回分式曝気槽1の側面であって、その高さ方向における槽の中央ぐらいのところに配置され、第1処理水排出管12aの上方に第2処理水排出管12bが、さらにその上方に第3処理水排出管12cが配置されている。汚泥引抜管13は、回分式曝気槽1の底部に配置されている。
【0022】
排出工程の際、計3本の処理水排出管12(12a,12b,12c)のうちの1本を用いて回分式曝気槽1を槽外部と連通させることにより、排出工程の終了時、回分式曝気槽1内の水位を、WL1、WL2、WL3(WL1<WL2<WL3)という3つの異なる水位のいずれかにすることができるようになっている。計3本の処理水排出管12(12a,12b,12c)には、例えば、それぞれにバルブ(不図示)が直接または間接的に取り付けられており、当該バルブを閉から開にすることで、対応する処理水排出管12(12a,12b,12c)のうちの1本を用いて回分式曝気槽1を槽外部と連通させる。
【0023】
回分式曝気槽1は、例えば直方体形状の槽であり、複数の散気装置1aは、例えば、回分式曝気槽1内の底部のうちの片側のみに配置される。これにより、散気装置1aから回分式曝気槽1内に空気が吹き込まれると、槽内に旋回流が発生する。
【0024】
処理水排出管12(12a,12b,12c)からの処理水の排出は、自然流下(水頭差)によりなされ、汚泥引抜管13からの余剰汚泥の引き抜き(送泥)はポンプによりなされる。
【0025】
(排水処理設備の運転方法(排水処理方法))
以下、
図2,3を参照しつつ回分式曝気槽1の運転方法(排水処理方法)について説明する。
【0026】
<排水導入工程>
図2中の排水導入工程と記載した部分を参照されたい。原水供給管11から回分式曝気槽1内に有機性排水(原水)を流入させる。このとき、散気装置1aは停止した状態であり、回分式曝気槽1内に空気(酸素)は供給されない。回分式曝気槽1内には好気性グラニュール状汚泥(粒状の好気性微生物汚泥)を含む微生物汚泥が存在しており(回分式曝気槽1内の下部のハッチング部分)、回分式曝気槽1内は無酸素状態となっている。有機性排水と微生物汚泥とを無酸素性状態で混合して、微生物汚泥の粒状化を促進させる。有機性排水(原水)の流入により発生する流れで、有機性排水と微生物汚泥とは混合される。なお、有機性排水と微生物汚泥とを混合する方法については特に限定されることはなく、有機性排水の導入による水流、撹拌翼を有する撹拌機、水中ポンプ式撹拌機、窒素等の不活性ガスによる間欠曝気等で、有機性排水と微生物汚泥とは撹拌・混合される。有機性排水を槽の底部から流入させる場合は有機性排水の導入により微生物汚泥と接触するため、撹拌機による攪拌や間欠曝気による混合等は必要ない。
【0027】
なお、上記した排水導入工程、ならびに後述する曝気工程、静置工程、および排出工程が回分式曝気槽1内で繰り返し実施されることで、好気性グラニュール状汚泥の生成およびその粒状化が進み、好気性グラニュール状汚泥の量が増えていく。これにより、回分式曝気槽1内の微生物汚泥中の好気性グラニュール状汚泥の比率が大きくなっていく。
【0028】
<曝気工程>
回分式曝気槽1内への原水の流入を止めるとともに散気装置1aを動作させて、当該散気装置1aからの空気により有機性排水と微生物汚泥との混合液を曝気する。好気性グラニュール状汚泥は、例えば旋回流によって攪拌され、これにより、好気性グラニュール状汚泥がさらに生成するとともに、その粒状化が促進される。
【0029】
<静置工程>
次に、
図2中の静置工程と記載した部分に示すように、所定の時間が経過したら散気装置1aによる曝気を停止して、回分式曝気槽1内の汚泥を沈める。
【0030】
<排出工程>
その後、当初は、計3本の処理水排出管12(12a,12b,12c)のうちの第1処理水排出管12aから処理水(有機物が除去された排水)を槽外部へ排出する。これにより、回分式曝気槽1内の水位は、WL1となり、その後、再び排水導入工程に戻る。なお、処理水は、例えば殺菌設備を経て放流される。処理水の一部は処理場内で利用されたりもする。
【0031】
ここで、排水導入工程、曝気工程、静置工程、および排出工程で構成される上記した一連の工程を繰り返していくと、槽内の汚泥の量が増加していき、槽内の汚泥界面レベルSLが徐々に上昇していく。
図3中の右側の図に符号を付して示すように、槽内の汚泥界面レベルSLと、第1処理水排出管12aの管底レベル、すなわち、
図2中の排出工程と記載した部分に示す一つ前の排出工程における最終の水位レベルWL1との差Δhが、例えば500mm以下となったら(または、500mmとなった時点で)、一つ前の排出工程における最終の水位レベルWL1よりも高い水位レベルWL2までしか処理水を排出しないように(水位レベルWL2で処理水の排出をとめるように)、排出工程で選択する処理水排出口(処理水排出管12)を、一段高い位置の第2処理水排出管12bとする。こうすると、
図3中の左側の図に示すように、排出工程後の水位はWL2(>WL1)となる。
【0032】
なお、上記した差Δhが、500mm以下とならない間は、第1処理水排出管12aを用いて処理水を排出する。
【0033】
また、図示を省略するが、槽内の汚泥界面レベルSLがさらに上昇して、当該汚泥界面レベルSLと、第2処理水排出管12bの管底レベル、すなわち、一つ前の排出工程における最終の水位レベルWL2との差が、例えば500mm以下となったら(または、500mmとなった時点で)、一つ前の排出工程における最終の水位レベルWL2よりも高い水位レベルWL3(
図1参照)までしか処理水を排出しないように(水位レベルWL3で処理水の排出をとめるように)、排出工程で選択する処理水排出口(処理水排出管12)を、さらに一段高い位置の第3処理水排出管12cとする。なお、汚泥界面レベルSLと第2処理水排出管12bの管底レベルとの差が、500mm以下とならない間は、第2処理水排出管12bを用いて処理水を排出する。
【0034】
その後は、例えば、槽内の汚泥界面レベルSLが、第3処理水排出管12cの管底レベルを超えないように、すなわち、排出工程において、選択されている第3処理水排出管12cから処理水とともに汚泥が流出しないように、汚泥引抜管13から汚泥を引き抜いて、槽内の汚泥量を調整する。なお、汚泥引抜管13から引き抜かれた汚泥は、余剰汚泥として濃縮設備、脱水設備などへ送られる。
【0035】
なお、槽内の汚泥界面レベルSLが、第2処理水排出管12bの管底レベルを超えないように、汚泥引抜管13から汚泥を引き抜いて、槽内の汚泥量を調整してもよい。
【0036】
上記した方法によると、一連の工程(サイクル)が繰り返されるのにつれて、好気性グラニュール状汚泥を含む槽内の汚泥量が増えていくので、曝気工程において槽内のMLSS(Mixed liquor suspended solids)は上昇していく。すなわち、好気性グラニュール状汚泥を含む槽内の汚泥濃度が高まっていく。また、一連の工程が繰り返されるのにつれて、槽内の水位(排出工程終了時の水位)が上がっていくので、1サイクル当りの槽内への排水導入量(排水導入工程で槽内に供給される排水(原水)の供給量)は減少していく。これにより、好気性グラニュール状汚泥を含む槽内の汚泥への1サイクル当りのBOD(Biochemical oxygen demand)負荷、およびその変動幅が従来よりも小さくなっていく。1サイクル当りのBOD負荷が小さくなり、且つその変動幅が小さくなることで、槽内において安定した好気性グラニュール状汚泥の維持が可能となる。好気性グラニュール状汚泥の維持が安定することで、糸状菌の発生を防止することができる。
【0037】
また、槽内のMLSSに対するBOD負荷が小さいと汚泥が発生しにくいということや、槽内の微生物汚泥中の好気性グラニュール状汚泥の比率が大きくなっていくことで、槽内の汚泥が高濃度で保持され、余剰汚泥の発生量を抑制することもできる。さらには、SS(Suspended solids)の後段への流出量を抑制することができるという効果もある。
【0038】
なお、1サイクル当りの排水処理量は減少するが、処理量減少に合わせて1サイクル当りの曝気時間を減少させることができるので、トータルの排水処理量は従来と変わらないものとすることができる。
【0039】
ここで、上記した、汚泥界面レベルSLと一つ前の排出工程における最終の水位レベルとの差Δhに基づいて、処理水排出口を選択することに加えて、またはこれに代えて、一つ前の排出工程により排出された処理水のSSが、200mg/L以上、望ましくは100mg/L以上となったら(または、200mg/Lあるいは100mg/Lとなった時点で)、一つ前の排出工程における最終の水位レベルよりも高い水位レベルで、次の排出工程において処理水の排出をとめるようにすることが好ましい。これによると、処理水のSSを測定するので、SSの後段への流出量を抑制することができるとともに、SSの後段への流出量を監視することができる。
【0040】
(変形例)
前記した実施形態では、汚泥界面レベルSLと、第1処理水排出管12aの管底レベル(または第2処理水排出管12bの管底レベル)、すなわち、一つ前の排出工程における最終の水位レベルとの差が、500mm以下となったら(または、500mmとなった時点で)、一段階、処理水の排出高さを上げたが、一段階、処理水の排出高さを上げる閾値である上記差は、500mmに限られることはない。
【0041】
前記した実施形態では、排出工程において、一つ前の排出工程により排出された処理水のSSが、200mg/L以上、望ましくは100mg/L以上となったら(または、200mg/Lあるいは100mg/Lとなった時点で)、一段階、処理水の排出高さを上げる例を示したが、一段階、処理水の排出高さを上げる閾値である上記SS濃度は、200mg/L、100mg/Lに限られることはない。
【0042】
回分式曝気槽1に関し、曝気工程において槽内に旋回流が発生する例を記載したが、全面曝気方式の回分式曝気槽であってもよい。
【0043】
前記した実施形態では、計3本の処理水排出管12(12a,12b,12c)としたが、処理水排出管は複数本であればよい。すなわち、処理水排出口は、3つではなく2つ以上であればよい。
【0044】
吸込口または吐出口の高さを変更することができる構造の処理水排出管であれば、処理水排出管は1本のみであってもよい。すなわち、処理水排出口を可変式とすれば、処理水排出口は1つだけであってもよい。
【0045】
処理水排出管を、処理水排出管12aの1本のみとし、ポンプによる動力で処理水を排出するようにしてもよい。水位WL2、WL3で処理水の排出をとめる場合は、その水位でポンプを停止させ、処理水排出管12aに直接または間接的に取り付けたバルブを開から閉にすれば、水位WL2、WL3で処理水の排出をとめることができる。処理水の排出は、水位計を設置して目標とする水位となるようにポンプやバルブを自動運転するようにしてもよく、また、手動運転としてもよい。
【0046】
処理水排出口として「管」を用いることに代えて、排出トラフなどの溝形状の流路を処理水排出口として用いてもよい。
【0047】
前記した実施形態では、1つの槽で排水導入工程、曝気工程、静置工程、排出工程を順に行う回分式処理としているが、これに代えて、排水導入工程を実施する槽、曝気工程を実施する槽、静置工程と排水工程を実施する槽を設けて各工程を同時並行で行う連続式処理としてもよい。この場合、静置工程と排水工程を実施する槽に複数の処理水排出口、または可変式の処理水排水口を設ける。
【0048】
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1:回分式曝気槽
1a:散気装置
11:原水供給管
12:処理水排出管(処理水排出口)
12a:第1処理水排出管(処理水排出口)
12b:第2処理水排出管(処理水排出口)
12c:第3処理水排出管(処理水排出口)
13:汚泥引抜管
101:排水処理設備