特許第6557614号(P6557614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557614
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/14 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   E06B7/14
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-27128(P2016-27128)
(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公開番号】特開2017-145589(P2017-145589A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 猛
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0118101(US,A1)
【文献】 特許第3404308(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/36
E06B 3/42−3/46
E06B 3/66
E06B 7/12−7/14
E06B 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠、下枠および左右の縦枠を枠組みして構成される窓枠と、
前記窓枠内に配置される室内側面材および室外側面材とを備え、
前記室内側面材および前記室外側面材の少なくとも一方は前記上枠および前記下枠に沿って移動可能に設けられた建具であって、
前記下枠は、
室外側壁部、室内側壁部および底面部を備えて構成されて水溜空間を区画する水溜形成部
前記下枠の室外側空間に連通する開口を有する中空部とを備え、
前記水溜形成部には、前記水溜空間および前記中空部を連通する排水口が形成され、
前記排水口には、排水装置が取り付けられ、
前記排水装置は、
排水通路と、
前記水溜空間内の水を前記排水通路に排水する第1排水弁と、
前記排水通路内の水を前記下枠の室外側空間に排水する第2排水弁とを備え
前記第1排水弁は、前記排水通路を閉鎖する閉鎖位置から前記水溜空間側に回動して前記排水通路を開く第1弁体を備え、
前記第2排水弁は、前記排水通路を閉鎖する閉鎖位置から前記下枠の室外側に回動して前記排水通路を開く第2弁体を備える
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具において、
前記第1弁体は、前記水溜空間内に配置され、前記水溜空間に水が溜まった場合に生じる浮力によって浮くことで前記排水通路を開く
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項2に記載の建具において、
前記第1弁体は、水よりも比重が小さい材料で構成されている
ことを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項2に記載の建具において、
前記第1弁体は、前記第1弁体を浮かすことが可能な体積を有する空気溜まり部を備える
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片引き窓や引違い窓などのスライドする障子を備える建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上枠、下枠および左右の縦枠を枠組みした枠体と、この枠体内に組み込まれた室内側の内障子および室外側の外障子とを備えた引違いサッシが知られている(特許文献1参照)。
下枠には、上方に突設した外レールおよび内レールが設けられており、これらのレールは内外の障子を左右方向に移動可能に案内支持している。下枠には、外レールおよび内レール間に浸入した水を下枠の内部(中空部)に排水する排水弁を有する室内側排水装置(室内側排水弁)と、下枠の内部から室外側に排水する排水弁を有する室外側排水装置(室外側排水弁)とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3404308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の引違いサッシでは、室内側排水装置および室外側排水装置の各排水弁は、それぞれ自重で垂下された状態で開口を塞ぎ、排水時には室外側に開くように構成されている。
このため、引違いサッシに対して、室外側から風が吹き付けて正圧が加わった場合には、各排水弁は前記正圧によって開口を塞ぐため、外気等の侵入を防止できる。
一方で、引違いサッシに負圧が加わった場合には、各排水弁は室外側に開いてしまい、引違いサッシの室内側から排水弁を介して室外側に気流が生じ、引違いサッシの気密性が低下するおそれがある。
このような課題は、引違いサッシに限定されず、固定窓と可動障子とを備える片引き窓や両引き窓などの建具においても共通するものである。
【0005】
本発明の目的は、建具の排水弁に正圧および負圧のいずれの風圧力が加わった場合でも気密性を維持できる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建具は、上枠、下枠および左右の縦枠を枠組みして構成される窓枠と、前記窓枠内に配置される室内側面材および室外側面材とを備え、前記室内側面材および前記室外側面材の少なくとも一方は前記上枠および前記下枠に沿って移動可能に設けられた建具であって、前記下枠は、室外側壁部、室内側壁部および底面部を備えて構成されて水溜空間を区画する水溜形成部前記下枠の室外側空間に連通する開口を有する中空部とを備え、前記水溜形成部には、前記水溜空間および前記中空部を連通する排水口が形成され、前記排水口には、排水装置が取り付けられ、前記排水装置は、排水通路と、前記水溜空間内の水を前記排水通路に排水する第1排水弁と、前記排水通路内の水を前記下枠の室外側空間に排水する第2排水弁とを備え、前記第1排水弁は、前記排水通路を閉鎖する閉鎖位置から前記水溜空間側に回動して前記排水通路を開く第1弁体を備え、前記第2排水弁は、前記排水通路を閉鎖する閉鎖位置から前記下枠の室外側に回動して前記排水通路を開く第2弁体を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の建具によれば、水溜空間は、第1排水弁、排水通路、第2排水弁を介して室外側空間に連通されている。ここで、第1排水弁の第1弁体は、排水通路を閉鎖する閉鎖位置から水溜空間側に回動して排水通路を開くため、第1排水弁に正圧が加わった際に開き、負圧が加わった際に閉じる弁である。第2排水弁の第2弁体は、第1弁体とは逆に、排水通路を閉鎖する閉鎖位置から室外側に回動して排水通路を開くため、第2排水弁に正圧が加わった際に閉じ、負圧が加わった際に開く弁である。
このため、建具に正圧が加わった場合は第2排水弁が閉じ、負圧が加わって第2排水弁が開いても第1排水弁が閉じるため、建具に正圧および負圧のいずれの風圧力が加わった場合でも、一方の排水弁を必ず閉じることができる。したがって、建具の室内空間および室外空間の間で気流が生じることを防止でき、気密性を維持することができる。
また、本発明の建具によれば、排水装置に第1排水弁および第2排水弁が組み込まれているため、第1排水弁および第2排水弁を別々の装置で構成する場合に比べて、部品数を少なくできてコストも低減できる。
【0008】
本発明の建具において、前記第1弁体は、前記水溜空間内に配置され、前記水溜空間に水が溜まった場合に生じる浮力によって浮くことで前記排水通路を開くことが好ましい。
本発明の建具によれば、水溜空間内に水が溜まると、前記第1排水弁の第1弁体が浮力で浮いて第1排水弁が開くため、水溜空間内の水を第1排水弁から排水通路に排水することができる。そして、第2排水弁は、室外側に開く弁であるため、排水通路に排水された水の水圧によって容易に開き、排水通路内の水は第2排水弁を介して室外側空間に排出できる。
【0011】
本発明の建具において、前記第1弁体は、水よりも比重が小さい材料で構成されていることが好ましい。
第1弁体を、ポリプロピレンなどの水よりも比重が小さい材料で構成すれば、水溜空間内に配置された第1弁体を浮かして第1排水弁を確実に開くことができる。また、第1弁体に空気溜まり部を設ける必要が無いため、第1弁体の形状などの自由度を高めることができ、製造コストも低減できる。
【0012】
本発明の建具において、前記第1弁体は、前記第1弁体を浮かすことが可能な体積を有する空気溜まり部を備えることが好ましい。
第1弁体に空気溜まり部を設け、この空気溜まり部の体積を、前記水溜空間に水が溜まった場合に前記第1弁体を浮かすことが可能な体積に設定しているので、水溜空間内に配置された第1弁体を浮かして第1排水弁を確実に開くことができる。また、空気溜まり部を有する第1弁体の材料は、水よりも比重が小さい材料に限定されないため、材料の選択肢を増やすことができ、耐候性等の建具として求める性能に応じた材料を選択できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、建具の排水弁に正圧および負圧のいずれの風圧力が加わった場合でも気密性を維持できる建具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る片引き窓を示す外観姿図。
図2】第1実施形態に係る片引き窓を示す縦断面図。
図3】第1実施形態に係る片引き窓を示す横断面図。
図4】第1実施形態に係る片引き窓の下枠を拡大して示す縦断面図。
図5】第1実施形態に係る片引き窓の排水装置の取付構造を示す斜視図。
図6】第1実施形態に係る排水装置を示す斜視図。
図7】第1実施形態に係る排水装置を示す斜視図。
図8】第1実施形態に係る片引き窓の下枠を拡大して示す縦断面図。
図9】第1実施形態に係る片引き窓の下枠を拡大して示す縦断面図。
図10】本発明の第2実施形態に係る片引き窓の下枠を拡大して示す縦断面図。
図11】第2実施形態に係る片引き窓の下枠を拡大して示す縦断面図。
図12】第2実施形態に係る片引き窓の下枠を拡大して示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態の構成]
以下、本発明の第1実施形態を図1〜9に基づいて説明する。
図1〜3において、第1実施形態に係る建具である片引き窓1は、建物躯体の開口部に設置されるものである。片引き窓1は、窓枠2と、図1に示す窓枠2の右半分側に構成される固定窓3と、窓枠2内に左右方向に移動可能に配置された障子4(内障子)とを備えている。
【0016】
[窓枠]
窓枠2は、上枠21、下枠22および左右の縦枠23,24を枠組みし、かつ縦枠23,24間に中骨25(縦骨)を設けて構成されている。上枠21、下枠22、左右の縦枠23,24および中骨25は、樹脂製の押出形材によって形成された樹脂枠材である。上枠21、下枠22および左右の縦枠23,24は、それぞれ互いに同一断面形状に形成されている。図1において左側に示す縦枠23は、障子4に対して戸先側に位置している。図1において右側に示す縦枠24は、障子4に対して戸尻側に位置している。
【0017】
[固定窓]
固定窓3は、上枠21、下枠22、縦枠24および中骨25によって構成される固定枠20と、この固定枠20内に配置される複層ガラス等からなる面材31とを備えている。固定枠20には、気密材11と押縁12とが装着されている。気密材11は面材31の外周部の室外面に当接し、押縁12は面材31の外周部の室内面に当接している。従って、面材31は、気密材11および押縁12で挟持されている。
【0018】
[障子]
障子4は、上框41、下框42、左右の縦框43,44および複層ガラス等からなる面材45を框組みして構成されている。上框41、下框42および左右の縦框43,44は、樹脂製の押出形材によって形成された樹脂框材である。図3において右側に示す縦框43は戸先側の縦框であり、図3において左側に示す縦框44は召合せ側の縦框である。
上框41、下框42、左右の縦框43,44には、気密材47と押縁48とが装着されている。気密材47は面材45の外周部の室外面に当接し、押縁48は面材45の外周部の室内面に当接している。従って、面材45は、気密材47および押縁48で挟持されている。また、下框42には戸車46が設置されている。
【0019】
[室内側面材および室外側面材]
なお、本実施形態では、固定窓3の面材31によって、窓枠2の一部である固定枠20内に配置された室外側面材が構成され、障子4によって室内側面材が構成されている。すなわち、室外側面材および室内側面材は、窓枠内に組み込まれる面材部分であり、窓枠内に可動障子あるいは固定障子が組み込まれている場合には、これらの障子が室外側面材や室内側面材となる。また、本実施形態の固定窓3のように、窓枠2内に面材31が直接固定されている場合は、その面材が室外側面材や室内側面材となる。
【0020】
[下枠]
下枠22は、図4に示すように、枠本体部26と、面材31を保持する保持部27と、障子4を左右方向に案内するレール部28(レール)とを有している。
[枠本体部]
枠本体部26は、第一室外見付け片部261と、外側見込み片部262と、内側見込み片部263と、室内見付け片部264とを有している。第一室外見付け片部261には、外側見込み片部262が連続している。外側見込み片部262よりも窓枠2の内側(上面側)には、内側見込み片部263が配置されている。すなわち、外側見込み片部262は、内側見込み片部263よりも窓枠2の外側(外周側)に配置され、内側見込み片部263は外側見込み片部262よりも窓枠2の内側(内周側)に配置されている。したがって、下枠22では、外側見込み片部262は下面側に配置され、内側見込み片部263は上面側に配置される。
外側見込み片部262および内側見込み片部263には、室内見付け片部264が連続している。
【0021】
外側見込み片部262と内側見込み片部263との間には、第1仕切り片部265および第2仕切り片部266が設けられている。これらの仕切り片部265,266によって外側見込み片部262および内側見込み片部263間の空間が仕切られることで、3つの中空部267,268,269が形成されている。
中空部267は、第1仕切り片部265および室内見付け片部264間に形成されている。中空部268は、中空部267の室外側に形成され、中空部269は、中空部268の室外側に形成されている。なお、中空部268には、金属製の補強材をねじ止めしてもよい。
レール部28は、内側見込み片部263から下枠22の見付け方向(上方)に突設されている。レール部28は、内側見込み片部263から上方に突出された室内側突出片281および室外側突出片282と、室内側突出片281および室外側突出片282を連結する上面連結部283とを備えている。上面連結部283の上面には、金属製のレール部材284が取り付けられ、このレール部材284上を戸車46が移動するように構成されている。室内側突出片281は、第1仕切り片部265の上方に位置しており、レール部28に加わる障子4の荷重を、室内側突出片281から第1仕切り片部265に伝えて支持できるように構成されている。
【0022】
[保持部]
保持部27は、下片部271と、第二室外見付け片部272と、見込み片部273と、レール対向片部274とを有している。
下片部271は、第一室外見付け片部261の上端に連続しており、当該第一室外見付け片部261から室外側に向かって斜め上向きに突き出ている。第二室外見付け片部272は、下片部271の室外端に連続しており、その先端部分には気密材11が装着されている。第二室外見付け片部272は、第一室外見付け片部261よりも室外側に位置している。見込み片部273は、第二室外見付け片部272に連続している。レール対向片部274は、見込み片部273および内側見込み片部263に連続しており、レール部28に対して間隔を隔てて対向して配置されている。
見込み片部273には、上方に向かって突出する溝形成部273Aが形成され、この溝形成部273Aとレール対向片部274との間に形成された係合溝に押縁12が係合している。
面材31は、下枠22の見込み片部273上に載置されたセッティングブロック36上に載置されている。
【0023】
保持部27には、下片部271およびレール対向片部274のそれぞれの下端に連続する略水平方向に沿って設けられた仕切り片部275と、下片部271および見込み片部273に連続する略垂直方向に沿って設けられた仕切り片部276とが設けられている。
下片部271、第二室外見付け片部272、見込み片部273および仕切り片部276によって中空部277が形成されている。見込み片部273、レール対向片部274および仕切り片部275,276によって中空部278が形成されている。
また、前記中空部269は、第一室外見付け片部261、外側見込み片部262、第2仕切り片部266、内側見込み片部263および仕切り片部275によって区画形成されている。
中空部277、278を仕切る仕切り片部276は、見込み方向の位置が面材31の見込み寸法内に設定されている。
中空部277は、中空部278よりも室外側に位置している。中空部269は、中空部278の下方に位置している。
【0024】
[水溜形成部]
下枠22には、図4に示すように、レール部28の室外側突出片282、内側見込み片部263およびレール対向片部274によって水溜形成部221が形成され、この水溜形成部221によって水溜空間5が区画形成されている。水溜形成部221において、レール対向片部274が室外側壁部であり、室外側突出片282が室内側壁部であり、内側見込み片部263が底面部である。
また、水溜空間5の下枠22に沿った方向の両端部は、縦枠24と、後述する下枠風止め板7とで区画されている。
【0025】
[排水経路]
下枠22には、水溜空間5に溜まった雨水等を下枠22の室外側空間に排水する排水経路50が構成されている。なお、固定枠20および面材31間の空間に浸入した雨水等の水を室外側に排水する図示しない排水経路を別途設けてもよい。
排水経路50は、下枠22の内側見込み片部263(水溜空間5の底面部)に形成された排水口51と、下枠22の第一室外見付け片部261に形成された排水口52とを備えて構成されている。排水口51には、排水装置70が装着されている。
排水口51は、図3,5に示すように、下枠22の長手方向に沿った長穴状に形成され、下枠22の長手方向に沿って所定間隔を隔てて複数配置されている。また、排水口52は、下枠22の長手方向に沿って所定間隔を隔てて複数配置されている。図3に示すように、下枠22の長手方向(窓枠2の左右方向)における排水口51および排水口52の位置は、一致するように設定されている。
排水口51は水溜空間5と中空部269とを連通している。排水口52は中空部269と室外側空間とを連通している。これにより、排水経路50は、水溜空間5から中空部269を通じて室外側空間につながる経路として構成されている。
【0026】
[排水装置]
排水装置70は、図5に示すように、排水口51に垂直方向から挿入されて取り付けられる。排水装置70は、図6,7にも示すように、排水弁ケース71と、第1弁体770と、第2弁体790とを備えている。排水弁ケース71、第1弁体770、第2弁体790は、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合体)で構成される。
【0027】
[排水弁ケース]
排水弁ケース71は、略矩形ボックス状に形成された挿入部72と、挿入部72の上端に設けられたフランジ部73と、フランジ部73から上方に突設された一対の支持壁部74と、支持壁部74間に渡って形成された連結板部75とを備えている。一対の支持壁部74の外側には、補強リブ76が形成されている。
前記挿入部72の側面721には、一対のフック部722が形成されている。フック部722は、挿入部72の側面721から斜め上方に向かって突出されている。このため、フック部722は、排水口51に排水装置70の挿入部72を挿入した際には、排水口51の内周面に当接して挿入部72の側面721側に撓み、排水口51を通過すると左右に広がって、排水口51の周囲において内側見込み片部263の下面に当接する。これにより、排水装置70は、フランジ部73が内側見込み片部263の上面に当接する位置に取り付けられる。したがって、排水弁ケース71は、排水口51に挿入部72を押し込むだけで取り付けることができる。
前記挿入部72の上面には第1開口725が形成され、挿入部72の室外面724の下部には第2開口727が形成され、挿入部72内には第1開口725および第2開口727をつなぐ排水通路729が形成されている。
【0028】
[第1弁体]
排水弁ケース71の支持壁部74には、第1弁体770が回動可能に軸支されている。すなわち、第1弁体770は、第1弁体770の両側に突出された支軸771を、支持壁部74の軸受穴741に挿入することで、回転可能に軸支されている。
第1弁体770は、端部に前記支軸771が形成された基端部772と、基端部772から連続して形成された空気溜まり部773と、空気溜まり部773の先端部に形成されてフランジ部73に当接可能な当接部779とを備えている。
空気溜まり部773は、基端部772に連続する第1面部774と、第1面部774から連続する第2面部775と、第2面部775から連続する第3面部776と、第3面部776から連続する第4面部777と、空気溜まり部773の側面を塞ぐ一対の側面部778とを備えて構成されている。前記当接部779は第4面部777の端縁部分で構成されている。
ここで、空気溜まり部773は、第1弁体770が水溜空間5内で水没した際に、空気溜まり部773で区画される空間内部に空気を溜めることができる。そして、空気溜まり部773の空間の体積は、溜められた空気で第1弁体770を水中で浮かすことができる体積に設定されている。
第1弁体770の当接部779がフランジ部73に当接して第1開口725を閉じた状態では、第1面部774は略水平に配置され、第3面部776は略垂直に配置されている。また、基端部772から当接部779を結ぶ側面部778の端面と、第2面部775とは略平行に配置されている。さらに、側面部778の端面と、第4面部777とは略直交するように配置されている。
【0029】
[第2弁体]
排水弁ケース71の挿入部72の側面721には、第2弁体790が回動可能に軸支されている。すなわち、第2弁体790は、第2弁体790の両側に突出された支軸791を、側面721の軸受穴723に挿入することで、回転可能に軸支されている。
第2弁体790は、第2開口727の周囲の室外面724に当接することで第2開口727を閉鎖する。また、第2弁体790の下部側が室外面724から室外側に移動することで、第2開口727を開くことができる。
【0030】
[第1排水弁と第2排水弁]
排水装置70においては、第1弁体770と、フランジ部73と、支持壁部74と、連結板部75とで、第1開口725を開閉する第1排水弁77が構成される。
排水装置70においては、第2弁体790と、室外面724とで、第2開口727を開閉する第2排水弁79が構成される。
【0031】
[上枠、縦枠]
上枠21、左右の縦枠23,24は、下枠22と同様の断面形状に形成されているので、下枠22の各構成と適宜同符号を付す。ただし、左右の縦枠23,24には、排水経路50は構成されていない。つまり、上枠21、左右の縦枠23,24には、排水口51,52は形成されておらず、排水装置70も取り付けられていない。
上枠21の保持部27は、図2に示すように面材31の上縁部を保持している。図3に示すように、縦枠24の保持部27は、面材31の左側の縦縁部を保持している。また、縦枠23の保持部27には、面材31が保持されないため、カバー材14が装着されている。
【0032】
[中骨]
中骨25は、図3に示すように、面材31の縦縁部を保持する保持部255を有している。保持部255は縦枠24の保持部27と同様に形成されており、当該縦枠24と同様に面材31を保持している。
中骨25は、障子4の閉鎖状態で縦框44と引き合うように係合可能に構成されている。また、障子4の閉鎖状態で、中骨25と縦框44との隙間はタイト材256、446によって閉塞される。
【0033】
図2,3に示すように、上框41、下框42および縦框43には、上枠21、下枠22および縦枠23のレール部28の室外側面に摺動可能に当接する水密材13が装着されている。
また、中骨25および縦框44が係合する召合せ部の上方および下方の位置には、上枠風止め板6および下枠風止め板7が配置されている。上枠風止め板6は、上枠21と中骨25および縦框44の上面との間の空間を塞ぎ、下枠風止め板7は、下枠22と、中骨25および縦框44の下面との間の空間を塞いでいる。この風止め板6、7は、中骨25および縦框44の上方および下方部分において室内外間に風が吹きぬけることを防止している。
したがって、片引き窓1の障子4を閉じると、片引き窓1の室外側と室内側とは、固定窓3の面材31および障子4によって室外空間と室内空間とに区画される。このため、固定窓3の室内側に位置する水溜空間5、すなわち、下枠風止め板7と、縦枠24との間に形成される水溜空間5は、片引き窓1の室内空間に位置する。
なお、図3に示すように、閉鎖位置にある障子4の室外側にも、下枠22の水溜形成部221と、下枠風止め板7と、縦枠23とで区画される水溜空間8が形成される。
【0034】
[排水装置の動作]
片引き窓1における排水装置70の動作について説明する。
排水装置70の上部側に位置する第1弁体770(第1排水弁77)は、水溜空間5内に配置されている。また、排水装置70の下部側に位置する第2弁体790(第2排水弁79)は、水溜空間5の下側に位置する中空部269に配置されている。中空部269は、排水口52によって室外側空間に連通しているため、外気が流入し、外気と等圧の空間とされている。
【0035】
[正圧時の動作]
片引き窓1に風が吹き付けて正圧が加わっている場合には、図4に示すように、中空部269内に配置される第2弁体790にも正圧が加わり、第2弁体790は室外面724に押し付けられて第2開口727を閉鎖する。第2開口727が第2弁体790で閉鎖されている場合は、第1弁体770には風圧力(正圧)が加わらないため、第1弁体770は自重によってフランジ部73に当接して第1開口725を閉鎖している。
【0036】
[負圧時の動作]
片引き窓1に負圧が加わっている場合は、図8に示すように、第2弁体790は室外側に回動し、第2開口727は開かれる。この場合、排水通路729を介して第1弁体770にも負圧が加わるが、第1弁体770は負圧によってフランジ部73に当接し、第1開口725は第1弁体770で閉じられた状態を維持する。
したがって、水溜空間5に水が溜まっていない場合には、片引き窓1に正圧、負圧のいずれが加わっても、第1弁体770または第2弁体790のいずれか一方は必ず第1開口725または第2開口727を閉鎖するため、水溜空間5および中空部269間つまり片引き窓1の室内外空間の間で気流が生じることがなく、気密性が確保される。
【0037】
[排水動作]
図9に示すように、中骨25と縦框44との召合せ部や、上枠風止め板6、下枠風止め板7で塞がれた部分から水溜空間5内に雨水が浸入し、水溜空間5内の水の高さレベルが所定高さ以上となった場合には、第1弁体770が水に浮いて当接部779がフランジ部73から離れる方向に回動し、第1開口725を開く。すなわち、第1弁体770が第1開口725を閉じている場合、空気溜まり部773には空気が溜められている。このため、第1弁体770が水溜空間5の水に水没すると、空気溜まり部773に溜められた空気の浮力によって、第1弁体770は浮き上がり、支軸771を中心に回動する。このため、第1弁体770がフランジ部73から離れ、第1開口725が開く。この際、第1弁体770の空気溜まり部773は、下側が開口されているので、空気溜まり部773の空気は保持される。なお、第1弁体770は、空気溜まり部773の開口面が水平な状態までしか回動できないように、回動を規制する突起を支持壁部74に設けてもよい。
【0038】
第1弁体770が開くと、水溜空間5内の水は、第1開口725から排水通路729に流れ、その水の圧力で第2弁体790を室外側に開き、中空部269に排出される。中空部269内に排出された水は、排水口52から室外側空間に排水される。
なお、第2弁体790に正圧が加わっている場合であり、水溜空間5および排水通路729に溜まる水の水頭圧が、前記第2弁体790の室外側に加わる風圧力(正圧)よりも小さい場合は、第2弁体790は閉じた状態となり、水溜空間5および排水通路729内の水を中空部269に排出できない。この場合、水溜空間5内の水位が高くなり、第2弁体790に加わる水頭圧も大きくなる。
したがって、水溜空間5および排水通路729に溜まる水によって第2弁体790に加わる水頭圧が、前記第2弁体790の室外側に加わる風圧力(正圧)よりも大きくなると、第2弁体790は開くため、水溜空間5および排水通路729内の水を中空部269に排出できる。中空部269内に排出された水は、排水口52を介して下枠22の室外側空間に排出される。
【0039】
なお、水溜空間5の高さ寸法を大きくすれば、前記第2弁体790に大きな正圧が加わっても第2弁体790を開くことができ、水溜空間5の高さ寸法を小さくすると、前記第2弁体790に加わる正圧が小さくないと第2弁体790を開くことができない。したがって、水溜空間5の高さ寸法は、第2弁体790を開くことができる風圧力の上限値の設定に応じて設計すれば良い。
【0040】
第2弁体790が開いて水溜空間5内の水が排水されて水位が下がると、第1弁体770の浮力も低下し、第1弁体770が閉じられる。水溜空間5内には僅かな水が残る場合もあるが、第1弁体770の当接部779はフランジ部73に当接しているだけであり、第2弁体790も室外面724に当接しているだけであるため、その当接部分の微少な隙間などから、水溜空間5の水を少しずつ排出して除去できる。
【0041】
なお、図3に示すように、閉鎖位置にある障子4の室外側に形成された水溜空間8は、室外側に面しており、直接、雨水が吹き込むため、水溜空間5に比べても水が溜まりやすい。この水溜空間8にも、排水口51および排水装置70が設けられているため、水溜空間5の場合と同様に、排水できる。
また、水溜空間8の室内側には、障子4が配置されており、障子4の下框42に設けられた水密材13が、下枠22のレール部28に当接してシールしているので、水溜空間8内の水位が障子4の下框42よりも高くなっても、水溜空間8の水がレール部28を超えて室内側に流入することはない。
【0042】
[第1実施形態の効果]
(1)第1実施形態では、固定窓3および障子4で区画された室内空間に位置する水溜空間5を、排水装置70の第1排水弁77、排水通路729、第2排水弁79を介して、中空部269、つまり室外側空間に連通している。そして、第1排水弁77は水溜空間5側つまり室内側に開閉する第1弁体770を備えて構成し、第2排水弁79は中空部269側つまり室外側に開閉する第2弁体790を備えて構成したので、片引き窓1に正圧および負圧のいずれの圧力が加わっても、第1排水弁77または第2排水弁79の少なくとも一方は閉鎖状態となるため、片引き窓1の室内空間および室外空間の間で気流が生じることを防止でき、気密性を維持することができる。
(2)また、水溜空間5内に溜まった水の水位が所定レベル以上になると、第1排水弁77の第1弁体770が水に浸かって浮力が生じる。そして、この浮力によって第1弁体770が浮くと、第1開口725が開かれるため、水溜空間5内の水を、第1開口725を介して排水通路729に流すことができる。
さらに、排水通路729および水溜空間5に溜まった水の水頭圧が、第2排水弁79の第2弁体790に加わる風圧力よりも大きくなれば、第2弁体790が室外側に開くため、排水通路729から第2開口727を介して中空部269に水を排水できる。中空部269に排出された水は、排水口52から下枠22の室外側に排水できる。
したがって、それぞれ別方向に開く2つの第1弁体770および第2弁体790を設けることで、気密性を維持しつつ、水溜空間5に溜まった水を確実に排出することができる。
【0043】
(3)第1排水弁77および第2排水弁79を、排水装置70に組み込んで構成したので、第1排水弁および第2排水弁を、別々の装置で構成する場合に比べて、部品数を少なくできて製造コストも低減できる。
また、下枠22には、排水装置70を取り付ければよいため、第1排水弁77および第2排水弁79を別々に取り付ける場合に比べて、組立性を向上できる。
さらに、排水装置70は、フック部722を形成したので、排水口51に垂直方向上側から排水装置70の挿入部72を差し込むだけで下枠22に取り付けることができる。このため、排水装置70をねじ止めなどで固定する場合に比べて、取付時の作業性を向上できる。
【0044】
(4)第1排水弁77の第1弁体770に空気溜まり部773を形成し、この空気溜まり部773に溜められる空気によって、第1弁体770の浮力を増加して、第1弁体770を浮かすように構成しているので、第1弁体770の材料としては、水よりも比重が小さい材料に限定されない。このため、第1弁体770の材料の選択肢を増やすことができ、例えば、排水弁ケース71、第2弁体790、第1弁体770をすべて耐候性に優れたABS樹脂で製造することもできる。このため、排水装置70に要求される性能を容易に確保できる。
【0045】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を、図10〜12に基づいて説明する。第2実施形態の片引き窓1Aは、2つの排水装置80,90を用いる点で、1つの排水装置70を用いていた第1実施形態と異なるものである。なお、第2実施形態において、前記第1実施形態と同一または同様の構成には同一符号を付し、説明を省略または簡略する。
【0046】
[下枠]
第2実施形態の下枠22Aは、前記第1実施形態の下枠22に対し、レール対向片部274Aと、仕切り片部275Aと、内側見込み片部263Aとの構成が相違する。下枠22Aのその他の構成は、下枠22と同一である。
レール対向片部274Aは、下端部の高さ位置が、第1実施形態のレール対向片部274よりも高い位置とされている。このため、仕切り片部275Aの室内側端部は、斜め上方に折曲されてレール対向片部274Aに連続している。
内側見込み片部263Aは、第2仕切り片部266の室外側の位置から上方に折曲された垂直部分と、この垂直部分から室外方向に延長されてレール対向片部274Aに連続する水平部分とを有している。このため、第1実施形態では、排水口51は、内側見込み片部263の水平面部分に形成されていたが、第2実施形態の排水口51Aは、内側見込み片部263の垂直部分に形成されている。すなわち、排水口51は、内側見込み片部263を垂直方向に貫通する穴であったが、排水口51Aは、内側見込み片部263Aを水平方向に貫通する穴である。
【0047】
[排水装置]
第1実施形態では、第1排水弁77および第2排水弁79を有する1つの排水装置70を用いていたが、第2実施形態では、第1排水弁である室内側排水装置80と、第2排水弁である室外側排水装置90との2つの排水装置(排水弁)を用いている。
【0048】
[室内側排水装置]
室内側排水装置80は、前記排水口51Aに取り付けられる排水弁ケース81と、排水弁ケース81に対して開閉自在に軸支された第1弁体82とを備える。第1弁体82は、第1弁体770と同様に、空気溜まり部823を備え、水溜空間5つまり室内側に回動する。
排水弁ケース81には、水溜空間5と、中空部269とを連通する排水通路83が形成されている。この排水通路83は、前記第1弁体82が風圧(正圧)や浮力で室内側に回動することで開かれ、第1弁体82が自重や風圧(負圧)で室外側に回動して排水弁ケース81に当接することで閉じられる。具体的には、排水弁ケース81の両側面には排水通路83側に突出する段部811が設けられ、この段部811に第1弁体82が当接することで排水通路83が閉じられる。
【0049】
[室外側排水装置]
室外側排水装置90は、第一室外見付け片部261に形成された排水口52に取り付けられる排水弁ケース91と、排水弁ケース91に対して開閉自在に軸支された第2弁体92とを備える。第2弁体92は、第2弁体790と同様に室外側に回動する。
排水弁ケース91には、中空部269と、下枠22の室外側空間とを連通する排水通路93が形成されている。この排水通路93は、前記第2弁体92が風圧(負圧)や水圧で室外側に回動することで開かれ、第2弁体92が自重や風圧(正圧)で室内側に回動して排水弁ケース91に当接することで閉じられる。
【0050】
[排水装置の動作]
次に、第2実施形態の室内側排水装置80、室外側排水装置90の動作について説明する。
[正圧時の動作]
片引き窓1Aに風が吹き付けて正圧が加わっている場合には、図10に示すように、下枠22Aの室外側に配置されている第2弁体92にも正圧が加わり、第2弁体92は室内側に回動して排水弁ケース91に押し付けられて排水通路93を閉鎖する。排水通路93が第2弁体92閉鎖されている場合は、中空部269や第1弁体82には風圧力(正圧)が加わらないため、室内側排水装置80の第1弁体82は自重によって排水弁ケース81に当接して排水通路83を閉鎖している。
【0051】
[負圧時の動作]
片引き窓1に負圧が加わっている場合は、図11に示すように、第2弁体92は室外側に回動し、排水通路93は開かれる。この場合、排水通路93、中空部269を介して第1弁体82にも負圧が加わるが、第1弁体82は負圧によって排水弁ケース81に当接し、排水通路83は第1弁体82で閉じられた状態を維持する。
したがって、水溜空間5に水が溜まっていない場合には、片引き窓1に正圧、負圧のいずれが加わっても、第1弁体82または第2弁体92のいずれか一方は必ず室内側排水装置80の排水通路83または室外側排水装置90の排水通路93を閉鎖するため、水溜空間5および中空部269と、片引き窓1Aの室外側空間との間で気流が生じることがなく、気密性が確保される。
【0052】
[排水動作]
図12に示すように、水溜空間5内の水の高さレベルが所定高さ以上となった場合、第1弁体82は、空気溜まり部823に溜められた空気の浮力により、水に浮いて排水通路83が開かれる。
第1弁体82が開くと、水溜空間5内の水は、排水通路83を介して中空部269に流れて溜められる。中空部269の水の圧力で第2弁体92が室外側に開くと、中空部269内の水は排水通路93から室外側空間に排出される。
なお、第2弁体92に正圧が加わっている場合は、中空部269に溜まる水の水頭圧が、前記第2弁体92の室外側に加わる風圧力(正圧)よりも小さい場合は、第2弁体92は閉じた状態となり、中空部269内の水を下枠22Aの室外側に排出できない。この場合、中空部269内の水位が高くなり、第2弁体92に加わる水頭圧も大きくなる。
したがって、中空部269内に溜まる水によって第2弁体92に加わる水頭圧が、前記第2弁体92の室外側に加わる風圧力(正圧)よりも大きくなると、第2弁体92は開くため、中空部269内の水を室外側空間に排出できる。
【0053】
なお、中空部269内の水位が室内側排水装置80部分に達して、中空部269から水溜空間5まで水が溜まった場合には、中空部269から水溜空間5までの高さの水頭圧が第2弁体92に加わることになる。したがって、水溜空間5の高さ寸法は、第2弁体92を開くことができる正圧の上限値の設定に応じて設計すれば良い。
【0054】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態の片引き窓1Aにおいても、前記第1実施形態と同様に、水溜空間5側つまり室内側に開閉する第1弁体82を備える室内側排水装置80と、室外側に開閉する第2弁体92を備える室外側排水装置90とを設けたので、片引き窓1Aに正圧および負圧のいずれの圧力が加わっても、第1排水弁である室内側排水装置80または第2排水弁である室外側排水装置90の少なくとも一方は閉鎖状態となるため、片引き窓1Aの室内空間および室外空の間で気流が生じることを防止でき、気密性を維持することができる。
また、水溜空間5内に溜まった水の水位が所定レベル以上になると、室内側排水装置80の第1弁体82が水に浸かって浮力が生じて浮くため、排水通路83が開かれて、水溜空間5内の水を中空部269に流すことができる。
さらに、中空部269に溜まった水の水頭圧が、室外側排水装置90の第2弁体92に加わる風圧力よりも大きくなれば、第2弁体92が室外側に開くため、中空部269から室外側に水を排水できる。
したがって、それぞれ別方向に開く2つの第1弁体82および第2弁体92を設けることで、気密性を維持しつつ、水溜空間5に溜まった水を確実に排出することができる。
【0055】
第2弁体92を有する室外側排水装置90を、第一室外見付け片部261の排水口52に取り付けたので、排水口52を室外側排水装置90で隠すことができる。このため、排水口52が開口のまま露出する第1実施形態の片引き窓1に比べて、片引き窓1Aの外観を向上できる。
【0056】
[変形例]
本発明は、以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、第1実施形態では、水溜空間8の排水口51にも排水装置70を取り付けていたが、水溜空間8の排水口51に連通する中空部269は排水口52によって外気と等圧の空間となっているので、水溜空間8の排水口51には排水装置70を設けずに、水溜空間5の排水口51のみに排水装置70を設けてもよい。この場合、片引き窓1に取り付ける排水装置70の数を少なくでき、組立作業性を向上でき、コストも低減できる。
なお、第2実施形態では、中空部269は、室外側排水装置90で室外側空間と区画された空間であるため、水溜空間8の排水口51には室内側排水装置80を取り付け、水溜空間8の排水口51に対応する排水口52にも室外側排水装置90を取り付ける必要がある。
【0057】
水溜空間5内に配置される第1弁体770、82としては、ポリプロピレンなどの比重が水よりも小さい材料で製造することで、水に浮くように構成してもよい。この場合、第1弁体に空気溜まり部を設ける必要が無く、第1弁体の構造を簡略化できる利点がある。
【0058】
固定窓3は、前記実施形態の構成に限らず、例えば、障子4と同様に構成した固定障子を、上枠、下枠、左右の縦枠を枠組みした窓枠内に固定して片引き窓を構成してもよい。この場合、固定障子が室外側面材となる。
また、片引き窓としては、障子4が固定窓3の室内側に配置される内動タイプの片引き窓に限定されず、障子4が固定窓3の室外側に配置される外動タイプの片引き窓でもよい。
さらに、本発明の建具は、片引き窓に限定されず、固定窓に対して左右に移動する障子を有する両引き窓や、室内外の各障子が移動する引違い窓にも適用できる。引違い窓の場合、外障子が室外側面材となり、内障子が室内側面材となる。
すなわち、本発明の建具は、窓枠内に配置される室内側面材および室外側面材を備え、室内側面材および室外側面材の少なくとも一方は、窓枠の上枠および下枠に沿って移動可能に設けられたものであればよい。
【0059】
前記実施形態では、上枠21、下枠22、左右の縦枠23,24および中骨25は樹脂製枠材によって形成されているが、これに限られず、アルミ押出形材などの金属製枠材によって形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1、1A…片引き窓(建具)、2…窓枠、3…固定窓、4…障子(室内側面材)、5、8…水溜空間、7…下枠風止め板、11…気密材、12…押縁、13…水密材、20…固定枠、21…上枠、22,22A…下枠、221…水溜形成部、23,24…縦枠、25…中骨、26…枠本体部、261…第一室外見付け片部、263、263A…内側見込み片部、269…中空部、27…保持部、272…第二室外見付け片部、273、273A…溝形成部、274、274A…レール対向片部、28…レール部、31…面材(室外側面材)、41…上框、42…下框、43,44…縦框、45…面材、50…排水経路、51,52,51A…排水口、70…排水装置、71…排水弁ケース、77…第1排水弁、770…第1弁体、79…第2排水弁、790…第2弁体、80…室内側排水装置、81…排水弁ケース、82…第1弁体、83…排水通路、90…室外側排水装置、91…排水弁ケース、92…第2弁体、93…排水通路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12