(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0020】
≪実施の形態1≫
図1は、本発明の実施の形態1に係るタービン式の流量制御装置を用いた空調制御システムの構成を示す図である。
同図に示される空調制御システム1は、例えばビル等の建物内の制御対象空間2の温度を調節するシステムである。具体的に、空調制御システム1は、空調機3,空調制御装置4、外部電源5、流量制御装置100、および温度センサ6を含む。
【0021】
空調機(FCU)3は、制御対象空間2へ調和された空気を供給するための装置である。空調機3は熱交換器(冷温水コイル)31とファン32とを備えている。なお、空調機3の熱交換器31としては、1つのコイルで冷房時は冷水として熱交換し、暖房時は温水として熱交換するシングルコイルタイプのものと、2つのコイルで冷房時は冷水コイルにて熱交換し、暖房時は温水コイルにて熱交換するダブルコイルのタイプのものとがある。この例において、熱交換器31はシングルコイルタイプであるものとする。
【0022】
流量制御装置100は、空調機3の熱交換器31に供給する冷温水の供給通路(流路)に設けられ、上記冷温水の流量を制御するためのタービン式の流量制御装置である。
図1には、流量制御装置100を空調機3の熱交換器31から戻される冷温水の還水管路LRに設けた場合が例示されているが、熱交換器31に冷温水を供給する往水管路LSに設けてもよい。
【0023】
流量制御装置100は、流量制御装置100内部の発電機によって発電した電力により動作するが、発電した電力が不足するときには、外部電源5から電力が供給されて動作する。また、流量制御装置100内部の発電機によって発電した余剰電力は、商用電源に回生し、他のコントローラやセンサ等に供給される。なお、流量制御装置100の具体的な構成については後述する。
【0024】
制御対象空間2には、制御対象空間2内の温度を室内温度として計測する温度センサ6が設けられている。温度センサ6によって計測された室内温度の計測値tpvの情報は空調制御装置4に送信される。
【0025】
空調制御装置(コントローラ)4は、室内温度の計測値tpvと室内温度の設定値tspとの偏差がゼロとなるように、熱交換機31に供給される冷温水の設定流量Qspを算出し、算出した設定流量Qspの情報を流量制御装置100に与える。
【0026】
空調制御システム1によれば、空調制御装置4によって流量制御装置100を流れる冷温水の流量を制御することにより、空調機3の熱交換器31への冷温水の供給量が制御され、空調機3から制御対象空間2への調和空気の温度が調節される。
【0027】
次に、上記空調制御システム1に適用可能な、本発明の一実施の形態に係る流量制御装置100について具体的に説明する。
図2〜4は、実施の形態1に係る流量制御装置100の構成を示す図である。
図2には、流量制御装置100の内部構成を示すブロック図が示され、
図3には、流量制御装置100の外観の一部を示す斜視図が示され、
図4には、
図3に示した流量制御装置100の分解斜視図が示されている。
【0028】
流量制御装置100は、配管から流れ込む冷温水を静翼を介して発電機を構成するタービンに通水するとともに、静翼を構成する羽根の角度と発電機のトルクとを制御することによって、冷温水の流量を制御するタービン式の流量制御装置である。
【0029】
流量制御装置100は、静翼の羽根の角度を検出するための角度センサの異常の有無を判定し、異常がない場合には、角度センサの検出結果に基づいて流量を制御する通常モードで動作し、異常がある場合には、角度センサを用いずに羽根の角度を演算により推定し、その推定値を用いて流量を制御する角度センサレスモードで動作することを一つの特徴としている。
【0030】
図2に示されるように、流量制御装置100は、データ通信部11、システム制御部12、流量制御部13、インバータ制御部14、インバータ15、発電機16、静翼17、蓄電部18、電源部19、商用電源回生部20、位置センサ21、記憶部22、角度検出部23、静翼制御部24、駆動部25、角度推定部26、異常判定部27、および選択部28を備えており、空調制御装置4との間および外部電源5との間は有線で接続されている。
【0031】
上述のデータ通信部11、システム制御部12、流量制御部13、記憶部22、インバータ制御部14、静翼制御部24、角度推定部26、異常判定部27、選択部28、電源部19、商用電源回生部20等の流量制御装置100を構成する各機能部は、例えば、プロセッサ、クロック回路、通信回路、記憶装置、デジタル入出力回路、アナログ入出力回路、パワーエレクトロニクス回路などからなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現されている。
【0032】
流量制御装置100は、管路(
図1の例の場合、還水管路LR)から流れ込む冷温水を静翼17を介して発電機16を構成するタービン160に通水するとともに、発電機16のトルクと静翼17とを制御することによって、冷温水の流量を制御する。
【0033】
先ず、流量制御装置100内部の流路に配置される静翼17および発電機16について説明する。
図4に示されるように、発電機16のタービン160と静翼17とは、流量制御装置100内部の冷温水が通水する流路内に、それらの軸心と上記流路の軸心とが一致するように配置されている。
【0034】
発電機16は、冷温水の水流によって回転するタービンの回転によって発電する機能部である。
図4に示されるように、発電機16は、タービン(回転子)160と固定子161とを含む。タービン160は、流量制御装置100内部の流路の軸Pと同軸に配置されている。図示はしないが、タービン160は、例えば、永久磁石を組み込んだリングの内側に一体的に設けられた羽根車から構成されており、管路を流れる冷温水の水流を受けて上記リングと上記羽根車とが一体となって回転する。固定子161には、コイルが巻かれており、このコイルを固定子巻線として、タービン160の回転による電磁誘導により発電する。
【0035】
位置センサ21は、タービン160を構成する上記リングに組み込まれた永久磁石の磁極の位置をタービン160の磁極位置として検出する。位置センサ21としては、例えばホールIC、インクリメンタルエンコーダ、アブソリュートエンコーダ等を用いることができる。
【0036】
なお、本実施の形態では、位置センサ21を設ける場合を一例として示しているが、位置センサ21以外の別の手段によって、タービン160の磁極位置の検出とタービン160の角速度の算出を実現することができるのであれば、位置センサ21を設けなくてもよい。また、上記別の手段と位置センサ21とを組み合わせた構成としてもよい。なお、この場合の位置センサ21としては、上記と同様に、例えばホールIC、インクリメンタルエンコーダ、アブソリュートエンコーダ等を用いることができる。
【0037】
静翼17は、冷温水の水流を受けても回転しないように上記流路内に固定され、流体(冷温水)を整流する。具体的に、静翼17は、
図5に示されるように、タービンと同軸に配置された基体170と、基体170上に基体170の軸(軸P)と直交する方向に延在する複数の羽根171とを有する。
【0038】
複数の羽根171は、基体170上に基体170の軸(軸P)と直交する方向に延在するとともに、基体170の円周方向に例えば等間隔で並んで配置されている。
図6に示されるように、夫々の羽根171は、流体を受ける主面171bと基体170の軸(軸P)に直交する平面(X−Z面)とのなす角(以下、「ピッチ角度」と称する。)Agvが調節可能となっている。なお、以下の説明では、各羽根171のピッチ角度Agvを、「静翼17のピッチ角度Agv」と称することがある。
【0039】
本実施の形態では、一例として、
図6に示されるように、直線Bと直線Aとのなす角をピッチ角Agvとしている。ここで、直線Bは、静翼17をZ方向からみたときに、羽根171を基体170の外周面に支持するとともに羽根171を回動させる回動軸172と羽根171の端部171aとを結ぶ直線である。また、直線Aは、回動軸172を通り、且つ軸Pに直交する平面(X−Z面)と平行な直線である。
【0040】
図7〜10に静翼17のピッチ角度Agvの調節例を示す。
図7には、ピッチ角度Agv=0度のときのZ軸方向から見た静翼17の斜視図が示され、
図8には、ピッチ角度Agv=45度のときのZ軸方向から見た静翼17の斜視図が示されている。また、
図9には、ピッチ角度Agv=0度のときのY軸方向から見た静翼17の平面図が示され、
図10には、ピッチ角度Agv=45度のときのY軸方向から見た静翼17の平面図が示されている。
【0041】
図7〜10から理解されるように、静翼17のピッチ角度Agvを大きくすることにより、流量制御装置100内に流れ込む冷温水の流量を増やすことができる。
【0042】
次に、流量制御装置100におけるタービン160と静翼17とを制御するための周辺の機能部について
図2を用いて説明する。
【0043】
データ通信部11は、空調制御装置4との間で各種データの送受信を行う機能部である。データ通信部11は、例えば、冷温水の流量の設定値等のデータを空調制御装置4から受信するとともに、流量制御装置100の内部状態(動作状態等)に関するデータを空調制御装置4へ送信する。
【0044】
システム制御部12は、流量制御装置100のシステム全体を統括的に制御するための機能部である。システム制御部12は、例えば、データ通信部11によって受信した各種設定値等の受信データを入力し、流量制御装置100の内部状態等の送信データをデータ通信部11へ出力する。また、システム制御部12は、例えば、データ通信部11によって受信した受信データから冷温水の流量の目標値(以下、「流量目標値」と称する。)Q
refを取り出し、この取り出した流量設定値Q
refを流量制御部13へ出力する。
【0045】
流量制御部13は、インバータ制御部14およびインバータ15を介して発電機16のタービン160を制御するとともに、静翼制御部24および駆動部25を介して静翼17のピッチ角度を制御することにより、冷温水の流量を制御するための機能部である。具体的に、流量制御部13は、流量推定部131と、トルク目標値算出部132と、ピッチ角度目標値算出部133とを含む。
【0046】
流量推定部131は、タービン160の角速度ωと、発電機16のトルクTと、ピッチ角度Agvとに基づいて、流体の流量を推定する機能部である。以下、流量推定部131による流量推定値Q
Zの算出方法について詳細に説明する。
【0047】
従来から、タービン式の流量制御装置における無次元流量
πqと無次元トルク
πtは、流量,トルク目標値,角速度に着目してバッキンガムのπ定理に基づいて次元解析を行うことにより、式(1)および式(2)によって定義できることが知られている。
【0050】
ここで、ρ[kg/m3]は流体の密度、D[m]はタービン160の直径(流量制御装置100内部の流路の内径)、Qは流体(冷温水)の流量、ωはタービン160の角速度、T
refは発電機16のトルク目標値である。
【0051】
また、本願発明者らの検討によれば、タービン式の流量制御装置において、無次元流量
πqと、無次元トルク
πtと、ピッチ角度Agvとの関係は、
図11に示されるような一つの三次元曲面300によって表すことができる。
【0052】
また、無次元流量
πqと流量Qとの間には、上述の式(1)に示した関係が成り立つことから、流量制御装置100を流れる冷温水の流量推定値
Qzは、式(3)によって表すことができる。
【0054】
上述した、密度ρ、タービン160の直径D、式(2),(3)等の関係式、および3次元曲面を表す関係式等の流量制御の演算に必要な各種の情報は、関数情報221として記憶部22に予め記憶される。流量推定部131は、関数情報221を記憶部22から読み出して所定の演算を行うことにより、流量を推定する。
【0055】
具体的には、先ず、流量推定部131は、記憶部22に関数情報221として記憶された、密度ρ、直径D、および式(2)の関係式の情報を読み出して、式(2)を計算することにより、無次元トルク
πtを算出する。
【0056】
次に、流量推定部131は、算出した無次元トルク
πtの値と、ピッチ角度Agvと、記憶部22から読み出した3次元曲面を表す関係式の情報とに基づいて、無次元流量
πqを算出する。ここで、ピッチ角度Agvとしては、後述する角度検出部23によって検出されたピッチ角度の検出値Agv_r、または後述する角度推定部26によって算出されたピッチ角度の推定値Agv_eが用いられる。
【0057】
その後、流量推定部131は、算出した無次元流量
πqと記憶部22から読み出した式(3)の情報に基づいて、流量推定値Q
Zを算出する。以上の演算により、流量推定値Q
Zが求められる。
【0058】
トルク目標値算出部132は、流量推定部131によって推定された冷温水の流量(以下、「流量推定値」と称する。)Q
Zが流量設定値Q
refに一致するように発電機16のトルク目標値T
refを算出する機能部である。例えば、トルク目標値算出部132は、流量目標値Q
refと流量推定値Q
Zとの差分に基づくPI(Proportional−Integral)制御則によって、トルク目標値T
refを算出する。
【0059】
ピッチ角度目標値算出部133は、流量推定値Q
Zが流量設定値Q
refに一致するように静翼17のピッチ角度目標値Agv
refを算出する機能部である。例えば、ピッチ角度目標値算出部133は、流量目標値Q
refと流量推定値Q
Zとの差分に基づくPI制御則によって、ピッチ角度目標値Agv
refを算出する。
【0060】
記憶部22は、流量制御装置100における各種のデータ処理を実現するための各種のプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する記憶部である。例えば、記憶部22には、例えば、上述した流量の推定処理に用いられる関数情報221や、後述するピッチ角度の推定処理に用いられる駆動部25のモータに関する情報(以下、「モータ情報」と称する。)222等が格納されている。
【0061】
インバータ制御部14は、インバータ15を制御するための機能部である。具体的に、インバータ制御部14は、発電機16のトルクがトルク目標値T
refとなるようにトルク制御則によりインバータ15への相電圧設定値を演算する。また、インバータ制御部14は、位置センサ21によって検出されたタービン160の磁極位置からタービン160の現在の角速度ωを算出するとともに、インバータ15からの発電機16の固定子161の固定子巻線の現在の相電圧値および相電流値からタービン160の現在のトルクTを算出する。算出された角速度ωおよびトルクTは、流量推定部131による流量推定値Q
Zの算出に用いられる。インバータ15は、電源部19からの主電源を受けて動作する。インバータ制御部14によって算出された相電圧設定値に応じた相電圧を発電機16の固定子161の固定子巻線に印加するとともに、発電機16で発電された電力を蓄電部18に供給する。
【0062】
電源部19は、外部電源5からの電力と、蓄電部18に蓄積されている電力とを入力とし、流量制御装置100内の各機能部に電源を供給する。本実施の形態では、電源部19からインバータ15へ供給される電源を主電源とし、電源部19からデータ通信部11、システム制御部12、流量制御部13、インバータ制御部14、静翼制御部24、角度推定部26、および記憶部22等へ供給される電源を制御電源と称する。
【0063】
電源部19は、外部電源5からの電力と蓄電部18に蓄積されている電力とを合わせた電力を各機能部に分配するが、蓄電部18に蓄積されている電力を優先的に分配する。例えば、蓄電部18に蓄積されている電力で不足が生じる場合には、外部電源5から供給される電力と合わせた電力を各機能部に分配し、蓄電部18に蓄積されている電力が余る場合には、その余った電力を余剰電力として商用電源回生部20を介して商用電源(この例では、外部電源5)に回生し、他のコントローラおよびセンサ等に電力を供給する。
【0064】
駆動部25は、後述する静翼制御部24によって設定されたモータの操作量に基づいて静翼17の羽根171を駆動することにより、ピッチ角度を調節する機能部である。例えば、駆動部25は、静翼17の羽根171を回動せるモータ250と、静翼制御部24に設定されたモータ250の操作量に基づいて、モータ250を駆動するための駆動信号(例えば電気信号)を生成する駆動回路(図示せず)と、モータ250の回転運動を羽根171の回転運動に変換する動力伝達機構(図示せず)とから構成されている。
【0065】
モータ250は、例えばステッピングモータである。以下、モータ250をステッピングモータ250と表記する場合がある。上記動力伝達機構は、例えば、モータの回転運動を静翼17の回動軸172の回転運動に変換することにより、回動軸172に連結されている羽根171を回動させて、静翼17のピッチ角度Agvを変化させる。上記動力伝達機構としては、例えば、従来から知られているリンク機構等を適用することができる。
【0066】
なお、駆動部25の上記駆動回路および上記動力伝達機構は、ステッピングモータ250によって静翼17のピッチ角度を制御可能な構造を有していればよく、上記リンク機構に限定されるものではない。
【0067】
静翼制御部24は、駆動部25を制御することにより、静翼17のピッチ角度を制御するための機能部である。具体的に、静翼制御部24は、静翼17のピッチ角度がピッチ角度目標値Agv
refと一致するように、駆動部25のステッピングモータ250の操作量を算出し、その操作量を駆動部25に設定する。より具体的には、静翼制御部24は、静翼17のピッチ角度Agvがピッチ角度目標値Agv
refと一致するようにステッピングモータ250の操作量としてのパルス数Pstmを算出し、駆動部25に設定する。パルス数Pstmが設定された駆動部25は、上記駆動回路によってパルス数Pstmに応じたパルス信号を生成し、ステッピングモータ250に供給することにより、静翼17の羽根171を回動させる。
【0068】
角度検出部23は、静翼17のピッチ角度を検出する機能部である。角度検出部23は、例えば静翼17に取り付けられている。角度検出部23は、角度センサを有している。上記角度センサとしては、ポテンショメータ、ホールIC、インクリメンタルエンコーダ、およびアブソリュートエンコーダ等を例示することができる。また、角度検出部23は、上記角度センサによって検出した複数回分のピッチ角度の検出値Agv_rの情報を記憶することが可能なレジスタ等の記憶部(図示せず)を有している。
【0069】
角度推定部26は、ステッピングモータ250の回転角度に基づいてピッチ角度Agvを推定する。より具体的には、角度推定部26は、下記式(4)を計算することによってピッチ角度の推定値Agv_e(n)を算出する。
【0071】
ここで、Agv_e(n)は、ピッチ角度の推定値〔deg〕を示し、Agv_e(n−1)は直前に算出されたピッチ角度の推定値〔deg〕を示している。また、Astmは、ステッピングモータ250のステップ角度〔deg/Pstm〕であり、例えばモータ情報222として予め記憶部22に記憶されている。また、Pstmは、上述したように、ステッピングモータ250の操作量としてのパルス数であり、静翼制御部24によって算出された値である。
【0072】
例えば,ステッピングモータ250と静翼17の各羽根171との間の動力伝達機構に減速機構がない場合、式(4)に示すように、モータの回転角度を表す“Pstm×Astm”が静翼17のピッチ角度の変動量となる。このピッチ角度の変動量に、直前に算出したピッチ角度Agv_e(n−1)を加算することにより、ピッチ角度Agv_e(n)を求めることができる。
【0073】
異常判定部27は、角度検出部23に異常があるか否かを判定する機能部である。具体的に、異常判定部27は、ステッピングモータ250の回転角度に基づいてピッチ角度の値Agv_ckを算出し、算出したピッチ角度の値Agv_ckが角度検出部23によるピッチ角度の検出値Agv_rと一致する場合に、角度検出部23に異常がないと判定し、算出したピッチ角度の値Agv_ckが角度検出部23によるピッチ角度の検出値Agv_rと一致しない場合に、角度検出部23に異常があると判定する。
【0074】
より具体的には、異常判定部27は、下記式(5)を計算することによってピッチ角度Agv_ckを算出する。
【0076】
ここで、Agv_ck(n)はピッチ角度の推定値〔deg〕を示し、Agv_r(n−1)は直前に角度検出部23によって検出されたピッチ角度の検出値〔deg〕を示している。また、AstmおよびPstmは、上述の式(4)と同様であり、記憶部22にモータ情報222として記憶されている情報を用いる。
【0077】
式(5)に示すように、直前に角度検出部23によって検出されたピッチ角度の検出値Agv_r(n−1)に、ピッチ角度の変動量(モータの回転角度)を表す“Pstm×Astm”を加算することにより、角度検出部23の異常判定に用いるピッチ角度の値Agv_ck(n)が求まる。
【0078】
選択部28は、異常判定部27の判定結果に基づいて、角度検出部23によるピッチ角度の検出値Agv_r(n)、および角度推定部26によるピッチ角度の推定値Agv_e(n)の何れか一方を選択して、流量推定部131に与える。
【0079】
具体的に、選択部28は、異常判定部27によって異常がないと判定された場合には、角度検出部23によって検出されたピッチ角度の検出値Agv_r(n)を選択して流量推定部131に与える。流量推定部131は、入力されたピッチ角度の検出値Agv_r(n)をピッチ角度Agvとして、上述した手法により流量を推定する。
一方、選択部28は、異常判定部27によって異常があると判定された場合には、角度推定部26によって算出されたピッチ角度の推定値Agv_e(n)を選択して流量推定部131に与える。流量推定部131は、入力されたピッチ角度の推定値Agv_e(n)をピッチ角度Agvとして、上述した手法により流量を推定する。
【0080】
次に、実施の形態1に係る流量制御装置100による静翼の制御の流れについて説明する。
図12は、実施の形態1に係る流量制御装置100による静翼17の制御の流れを示すフロー図である。
例えば電源投入後の初期状態では、流量制御装置100は、通常モードに設定される(S1)。上述したように、通常モードでは、流量制御装置100は、角度検出部23による検出結果を用いて流量制御を行う。
【0081】
通常モードにおいて、流量制御部13(ピッチ角度目標値算出部133)によって算出されたピッチ角度目標値Agv
refが静翼制御部24に設定(入力)されると、ピッチ角度の調節が行われる(S2)。
【0082】
図13は、通常モードにおけるピッチ角度の調節の流れを示す図である。
図13に示すように、通常モードでは、静翼制御部24が、静翼17のピッチ角度がピッチ角度目標値Agv
refとなるパルス数Pstmを算出し、算出したパルス数Pstmをモータの操作量として駆動部25に設定する(S21)。パルス数Pstmの算出方法は、上述した式(4)と同等の関係式を用いて算出することができる。例えば、初期状態(Agv_r(n−1)=0)から初めてピッチ角度を変更する場合には、上記式(4)のAgv_e(n)に“Agv
ref”を代入し、Agv_e(n−1)に“0”を代入し、Astmとして記憶部22に記憶された値を代入して、Pstmについて解くことにより、ピッチ角度がピッチ角度目標値Agv
refとなるパルス数Pstmを算出ことができる。
このとき、静翼制御部24は、駆動部25に設定したパルス数Pstmの情報を異常判定部27にも設定(入力)する。
【0083】
駆動部25は、設定されたパルス数Pstmに基づいてステッピングモータ250を駆動する(S22)。これにより、静翼17のピッチ角度がピッチ角度目標値Agv
refと一致するように、羽根171が回動する。
【0084】
図12のステップS2の後、異常判定部27が、設定されたパルス数Pstmに基づいて角度検出部23の異常判定処理を開始する(S3)。
【0085】
図14は、ステップS3の異常判定処理の流れを示す図である。
図14に示すように、先ず、異常判定部27は、設定されたパルス数Pstmと、記憶部22から読み出したステップ角度Astmと、角度検出部23によって直前に検出されたピッチ角度の検出値Agv_r(n−1)とに基づいて、上述した式(5)を計算することにより、ピッチ角度の推定値Agv_ck(n)を算出する(S31)。
【0086】
次に、異常判定部27は、ステップS31で算出したピッチ角度の推定値Agv_ck(n)と、角度検出部23によって検出されたその時点でのピッチ角度の検出値Agv_r(n)とが一致するか否かを判定する(S32)。ピッチ角度の推定値Agv_ck(n)とピッチ角度の検出値Agv_r(n)とが一致する場合には、異常判定部27は、角度検出部23に異常はないと判定する(S33)。一方、ピッチ角度の推定値Agv_ck(n)とピッチ角度の検出値Agv_r(n)とが一致しない場合には、異常判定部27は、角度検出部23に異常があると判定する(S34)。
【0087】
ステップ
S3の異常判定処理において、“異常なし”と判定された場合には、
図12に示すように、静翼制御部24が、ピッチ角度目標値Agv
refが変更されたか否かを判定する(S4)。ピッチ角度目標値Agv
refが変更された場合には、ステップS2に戻り、ピッチ角度が変更されたピッチ角度目標値Agv
refとなるように、通常モードにおいて上述の処理(S2,S3)が実行される。ステップS4において、ピッチ角度目標値Agvrefが変更されていない場合には、ピッチ角度目標値Agv
refが変更されるまで、ピッチ角度を固定する。
【0088】
一方、ステップ
S3の異常判定処理において、“異常あり”と判定された場合には、
図12に示すように、流量制御装置100は、通常モードから角度センサレスモードに移行する(S5)。角度センサレスモードでは、流量制御装置100は、角度検出部23の検出結果を用いずに流量制御を行う。
【0089】
具体的には、流量制御装置100の動作モードが角度センサレスモードに移行した場合、先ず、静翼制御部24がステッピングモータ250を原点復帰させる(S6)。例えば、ステッピングモータ250が原点に来たことを検出するためのスイッチを別途設けておき、静翼制御部24がステッピングモータ250を動作させ、上記スイッチから検出信号が出力されたらステッピングモータ250の動作を停止する。
次に、角度推定部26が、ピッチ角度の推定値Agv_eの初期値を“0”に設定する(S7)。その後、ピッチ角度の調節が行われる(S8)。
【0090】
図15は、角度センサレスモードにおけるピッチ角度の調節の流れを示す図である。
図15に示すように、通常モードと同様に、静翼制御部24が、ピッチ角度がピッチ角度目標値
Agvrefとなるパルス数Pstmを算出して駆動部25に設定し(S81)、駆動部25が、設定されたパルス数Pstmに基づいてステッピングモータ250を駆動する(S82)。
このとき、静翼制御部24が、駆動部25に設定したパルス数Pstmの情報を角度推定部26にも設定(入力)する。
【0091】
次に、角度推定部26が、上述したように、設定されたパルス数Pstmに基づいて上記
式(4)を計算することにより、ピッチ角度の推定値Agv_e(n)を算出する(S83)。
【0092】
例えば、ステッピングモータ250を原点復帰させた直後の最初(1回目)に実行されるステップS83では、式(4)の“Agv_e(n−1)”として、ステップ
S7で設定されたピッチ角度の推定値Agv_eの初期値(=0)が代入され、ピッチ角度の推定値Agv_e(n)が算出される。一方、2回目以降に実行されるステップS83では、式(4)の“Agv_e(n−1)”として、直前のステップS83において算出したピッチ角度の推定値が代入されて、ピッチ角度の推定値Agv_e(n)が算出される。
【0093】
すなわち、角度推定部26は、モータを原点復帰させたときのピッチ角度の初期値(Agv_e=0)に対して、モータの操作量(例えばパルス数Pstm)に応じたモータの回転角度を累積加算または減算することにより、ピッチ角度の推定値Agv_e(n)を算出する。
【0094】
その後、ステップS8が完了すると、
図12に示すように、静翼制御部24がピッチ角度目標値Agv
refが変更されたか否かを判定する(S9)。ピッチ角度目標値Agv
refが変更された場合には、ステップS8に戻り、ピッチ角度が変更後のピッチ角度目標値Agv
refに一致するように上述の処理(S81〜S83)が実行される。一方、ステップS9において、ピッチ角度目標値Agv
refが変更されていない場合には、ピッチ角度目標値Agv
refが変更されるまで、ピッチ角度が固定される。
以上の手順により、静翼17の制御が行われる。
【0095】
最後に、流量制御装置100による全体的な動作の流れについて説明する。
先ず、流量制御装置100は、冷温水の供給先の負荷変動により、空調制御装置4からの冷温水の新たな流量目標値Q
refをデータ通信部11によって受信する。データ通信部11によって受信した流量目標値Q
refは、システム制御部12へ送られる。
【0096】
次に、システム制御部12は、流量目標値Q
refの情報を流量制御部13へ送る。流量制御部13では、先ず、流量推定部131が、インバータ制御部14によって算出されたタービン160の角速度ωおよびトルクTの情報と、ピッチ角度の情報とに基づいて上述した手法により流量推定値Q
Zを算出する。ここで、上記ピッチ角度の情報は、上述したように、通常モードの場合にはピッチ角度の検出値Agv_rであり、角度センサレスモードの場合には角度推定部26によって推定されたピッチ角度の推定値Agv_eである。
【0097】
その後、トルク目標値算出部132は、流量推定部131によって算出された流量推定値Q
Zが流量目標値Q
refに一致するようなトルク目標値T
refを上述した手法により算出し、インバータ制御部14に送る。また、ピッチ角度目標値算出部133は、流量推定部131によって算出された流量推定値Q
Zが流量目標値Q
refに一致するようなピッチ角度目標値Agv
refを上述した手法により算出し、静翼制御部24に送る。
【0098】
インバータ制御部14は、流量制御部13からのトルク目標値T
refを受けて、発電機16の発電機16のトルクTがトルク目標値T
refと一致するような相電圧設定値を算出してインバータ15へ送り、インバータ15は、インバータ制御部14からの相電圧設定値を受けて、発電機16の固定子161の固定子巻線に上記相電圧設定値に応じた相電圧を供給する。
【0099】
また、静翼制御部24は、ピッチ角度目標値算出部133からのピッチ角度目標値Agv
refを受けて、静翼17のピッチ角度がピッチ角度目標値Agv
refと一致するように、ステッピングモータ250を駆動する。このとき、静翼制御部24は、上述したように、異常判定部27による判定結果に応じて通常モードまたは角度センサレスモードの何れかのモードにおいて、ステッピングモータ250を駆動して静翼17の各羽根171を回動させることにより、静翼17のピッチ角度を調節する。
【0100】
以上の制御により、発電機16のトルクTがトルク目標値T
refに合わせ込まれるとともに、静翼17のピッチ角度がピッチ角度目標値Agv
refに合わせ込まれ、流量制御装置100内の流路を流れる冷温水の流量が流量目標値Q
refとなるように調節される。
【0101】
以上、本発明に係る流量制御装置によれば、静翼のピッチ角度を検出する角度検出部23に異常がない場合には、角度検出部23によるピッチ角度の検出値Agv_rを用いて流量制御を行い、角度検出部23に異常がある場合には、角度検出部23を用いずに、角度推定部26によるピッチ角度の推定値Agv_eを用いて流量制御を行うので、流量制御の精度を保ちつつ、流量制御装置の信頼性を向上させることが可能となる。すなわち、本流量制御装置が過酷な環境下に設置された場合であっても、角度センサを用いた高精度な流量制御を行うことができ、且つ角度センサが故障した場合であっても、演算によってピッチ角度を推定して流量制御を行うので、角度センサの信頼性に起因する流量制御装置の信頼性の低下を回避することができる。
【0102】
また、本発明に係る流量制御装置によれば、角度センサ(角度検出部23)が故障した場合であっても流量制御を継続することができるので、故障した角度センサを交換するまでの期間に流量制御装置を停止することを回避することができ、ユーザの利便性が増す。
【0103】
また、本流量制御装置によれば、モータの操作量(例えばパルス数Pstm)に応じたモータの回転角度(Pstm×Astm)に基づいて算出したピッチ角度の値(Agv_ck(n))とピッチ角度目標値Agv
refとを比較することにより、角度検出部23の異常の有無を判定するので、複雑な演算処理を用いることなく、高精度な角度検出部23の異常判定が可能となる。
【0104】
更に、静翼の羽根を回動させるモータとして、ステッピングモータを用いることにより、静翼のピッチ角度の高精度な制御が可能となるとともに、モータの回転角度(Pstm×Astm)の算出が容易となる。
【0105】
なお、実施の形態1に係る流量制御装置100では、通常モードおよび角度センサレスモードにおけるピッチ角度の調節に係る処理において、ピッチ角度目標値Agv
refから必要なステッピングモータ250の操作量(パルス数Pstm)を算出し、その操作量に基づいてステッピングモータ250を駆動する制御手法を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、静翼による流量制御には高速な応答が必要ないことから、例えばステッピングモータ250を単位ステップずつ回転させ、静翼17のピッチ角度がピッチ角度目標値Agv
refに一致したら、ステッピングモータ250の回転を止める制御手法を採用することも可能である。以下に、通常モードにおけるピッチ角度の調節に係る処理(ステップS2)の別の一例と、角度センサレスモードにおけるピッチ角度の調節に係る処理(ステップS8)の別の一例を夫々示す。
【0106】
図16は、通常モードにおけるピッチ角度の調整に係る処理(ステップS2)の別の一例を示すフロー図である。
上述した
図13の処理フローと同様に、算出されたピッチ角度目標値Agv
refが静翼制御部24に入力(設定)されると、静翼制御部24は、ピッチ角度の検出値Agv_rがピッチ角度目標値Agv
refに一致するまで、単位パルス数Pstm_0を駆動部25に繰り返し設定することにより、ステッピングモータを段階的に回転させる。
【0107】
具体的には、先ず、静翼制御部24は、単位パルス数Pstm_0を駆動部25に設定する(S24)。ここで、単位パルス数Pstm_0は、1以上の値であればよく、その値を特に限定されない。
【0108】
次に、駆動部25が、設定されたパルス数Pstm_0に基づいてステッピングモータ250を駆動する(S25)。次に、静翼制御部24が、角度検出部23によって検出されたピッチ角度の検出値Agv_r(n)とピッチ角度目標値Agv
refが一致するか否かを判定する(S26)。ピッチ角度の検出値Agv_r(n)とピッチ角度目標値Agv
refが一致しない場合には、再び、ステップS24に戻り、ピッチ角度の
検出値Agv_r(n)がピッチ角度目標値
Agvrefに一致するまで、駆動部25に設定するパルス数をPstm_0ずつ増加させてステッピングモータ250を段階的に回転させる(S24〜S26)。一方、ピッチ角度の検出値Agv_r(n)とピッチ角度目標値Agv
refが一致した場合には、ステッピングモータ250の回転を停止し、静翼17の回転を停止させる(S27)。
【0109】
図17は、角度センサレスモードにおけるピッチ角度の調節に係る処理(ステップS8)の別の一例を示すフロー図である。
上述した
図15の処理フローと同様に、ステッピングモータ250が原点復帰し(
S6)、ピッチ角度の推定値Agv_eの初期値が“0”に設定されると(S7)、静翼制御部24は、ピッチ角度の推定値Agv_eがピッチ角度目標値Agv
refに一致するまで、単位パルス数Pstm_0を駆動部25に繰り返し設定することにより、ステッピングモータを段階的に回転させる。
【0110】
具体的には、先ず、通常モードの場合と同様に(
図16参照)、静翼制御部24が単位パルス数Pstm_0を駆動部25に設定し(S24)、駆動部25が設定されたパルス数Pstm_0に基づいてステッピングモータ250を駆動する(S25)。
【0111】
次に、角度推定部26が、設定されたパルス数Pstm_0に基づいて、ピッチ角度の推定値Agv_e(n)を算出する(S86)。算出方法は、
図15の場合と同様である。
【0112】
次に、静翼制御部24が、ステップS86で算出したピッチ角度の推定値Agv_e(n)とピッチ角度目標値Agv
refが一致するか否かを判定する(S87)。ピッチ角度の推定値Agv_e(n)とピッチ角度目標値Agv
refとが一致しない場合には、再び、
図17のステップS24に戻り、ピッチ角度の推定値Agv_e(n)がピッチ角度目標値Agv
refに一致するまで、駆動部25に設定するパルス数をPstm_0ずつ増加させてステッピングモータ250を段階的に回転させる(S24〜S87)。一方、ピッチ角度の推定値Agv_e(n)とピッチ角度目標値Agv
refとが一致した場合には、ステッピングモータ250の回転を停止し、静翼17の回転を停止させる(S88)。
【0113】
以上の処理フローによれば、
図13および
図15に示した処理フローと同様に、ステッピングモータ250を用いた静翼17のピッチ角度の調節を実現することができる。
【0114】
≪実施の形態2≫
図18は、実施の形態2に係る流量制御装置の内部構成を示すブロック図である。
実施の形態2に係る流量制御装置101は、ステッピングモータの代わりに同期モータを有し、その同期モータの回転角度に基づいて静翼のピッチ角度を算出する点において、実施の形態1に係る流量制御装置100と相違し、その他の点においては実施の形態1に係る流量制御装置100と同様である。なお、以下では、実施の形態2に係る流量制御装置
101における実施の形態1に係る流量制御装置100と相違する点について詳細に説明し、実施の形態1に係る流量制御装置100と同一の内容については、詳細な説明を省略する。
【0115】
図18に示すように、流量制御装置101は、ステッピングモータ250の代わりに同期モータ350を有する。ここで、同期モータ350は、供給される交流電源(例えば50Hzまたは60Hzの商用電源)が生成する回転磁界によって回転するモータである。
【0116】
静翼制御部34は、静翼17のピッチ角度がピッチ角度目標値Agv
refと一致するように、駆動部35を構成する同期モータ350の操作量を算出し、その操作量に基づいて同期モータ350を駆動する。より具体的には、静翼制御部34は、静翼17のピッチ角度がピッチ角度目標値Agv
refと一致するように、同期モータ350の操作量として、モータに電力を供給する時間(以下、「駆動時間」という。)Tsmを算出し、駆動部35に設定する。駆動時間Tsmが設定された駆動部35は、駆動回路によって、駆動時間Tsmの期間だけ同期モータ350に対して交流電力を供給することにより、同期モータ350を駆動し、静翼17の羽根171を回動させる。
【0117】
角度推定部36は、駆動部35を構成する同期モータ350の回転角度に基づいてピッチ角度Agvを推定する。より具体的には、角度推定部36は、下記式(6)を計算することによってピッチ角度の推定値Agv_e(n)を算出する。
【0119】
ここで、Nは同期モータ350の同期回転数〔rpm〕、Gは同期モータ350と静翼17の羽根171との間の減速比である。同期回転数Nおよび減速比Gの情報は、例えばモータ情報222として予め記憶部22に記憶されている。また、Tsmは、上述したように同期モータ350の操作量としての駆動時間であり、静翼制御部34によって算出された値である。
【0120】
式(6)に示すように、同期モータ350の回転角度を表す“N×Tsm/60”に“360〔deg〕/Gを乗算したものが、静翼17のピッチ角度の変動量となる。このピッチ角度の変動量に、その直前に算出したピッチ角度Agv_e(n−1)を加算することにより、ピッチ角度Agv_e(n)を求めることができる。
【0121】
異常判定部37は、同期モータ350の回転角度に基づいてピッチ角度の値Agv_ckを算出し、算出したピッチ角度の値Agv_ckが角度検出部23によるピッチ角度の検出値Agv_rと一致する場合に、角度検出部23に異常がないと判定し、算出したピッチ角度の値Agv_ckが角度検出部23によるピッチ角度の検出値Agv_rと一致しない場合に、角度検出部23に異常があると判定する。
【0122】
具体的に、異常判定部37は、下記式(7)を計算することによって異常判定に用いるピッチ角度の値Agv_ckを算出する。
【0124】
ここで、Agv_ck(n)はピッチ角度の推定値〔deg〕を示し、Agv_r(n−1)は直前に角度検出部23によって検出されたピッチ角度の検出値〔deg〕を示している。また、NおよびTsmは、上述の式(6)と同様であり、記憶部22にモータ情報222として記憶されている情報を用いる。
【0125】
式(7)に示すように、直前に角度検出部23によって実際に検出されたピッチ角度の検出値Agv_r(n−1)に対して、同期モータ350の回転角度を表す“N×Tsm/60”に“360〔deg〕/Gを乗算することによって算出される静翼17のピッチ角度の変動量を加算することにより、異常判定に用いるピッチ角度Agv_ck(n)を求めることができる。
【0126】
次に、
図19〜
図22を用いて、実施の形態2に係る流量制御装置によるピッチ角度の調節に係る処理の流れを説明する。
図19に示すように、実施の形態2に係る流量制御装置による静翼の制御の全体的な処理の流れは、実施の形態1に係る流量制御装置による静翼の制御(
図12参照)と同様である一方、通常モード時のピッチ角度の調節に係る処理(ステップS12)、異常判定処理(ステップS13)、および角度センサレスモード時のピッチ角度の調節に係る処理(ステップS18)が相違する。以下、ステップS12、ステップS13、およびステップS18について、具体的に説明する。
【0127】
図20は、通常モードにおけるピッチ角度の調節に係る処理(ステップS12)の流れを示す図である。
図20に示すように、通常モードでは、静翼制御部34が、静翼17のピッチ角度がピッチ角度目標値Agv
refとなる駆動時間Tsmを算出し、算出した駆動時間Tsmをモータの操作量として駆動部35に設定する(S121)。例えば、角度検出部23によるピッチ角度の検出値がAgv(n−1)=0である場合には、上記式(6)のAgv_e(n)に“Agv
ref”を代入し、Agv_e(n−1)に“0”を代入し、NおよびGとして記憶部22に記憶された値を代入して、Tsmについて解くことにより、ピッチ角度がピッチ角度目標値
Agvrefと一致する駆動時間Tsmを算出することができる。このとき、駆動部35に設定された駆動時間Tsmの情報は、異常判定部37にも設定(入力)される。
【0128】
次に、駆動部35は、設定された駆動時間Tsmに基づいて同期モータ350を駆動する(S122)。これにより、静翼17のピッチ角度がピッチ角度目標値Agv
refと一致するように、羽根171が回動する。
【0129】
ステップS12の後、流量制御装置101は異常判定処理(S13)を実行する。
図21は、実施の形態2の異常判定処理(ステップS13)の流れを示す図である。
実施の形態2の異常判定処理では、先ず、異常判定部37が、設定された駆動時間Tsmと、記憶部22から読み出したNおよびGと、角度検出部23によって直前に検出されたピッチ角度の検出値Agv_r(n−1)とに基づいて、上述した式(7)を計算することにより、ピッチ角度の値Agv_ck(n)を算出する(S131)。
【0130】
次に、異常判定部37が、ステップS131で算出したピッチ角度の値Agv_ck(n)と、角度検出部23によって検出されたその時点でのピッチ角度の検出値Agv_r(n)とが一致するか否かを判定する(S132)。ピッチ角度の値Agv_ck(n)とピッチ角度の検出値Agv_r(n)とが一致する場合には、異常判定部37は、角度検出部23に異常はないと判定する(S133)。一方、ピッチ角度の値Agv_ck(n)とピッチ角度の検出値Agv_r(n)とが一致しない場合には、異常判定部37は、角度検出部23に異常があると判定する(S134)。
【0131】
ステップS13の異常判定処理において、角度検出部23に異常があると判定された場合には、流量制御装置101は角度センサレスモードに移行し、ピッチ角度の調節に係る処理(ステップS18)が実行される。
【0132】
図22は、
角度センサレスモードにおけるピッチ角度の調節に係る処理(ステップS18)の流れを示す図である。
図22に示すように、静翼制御部34が、通常モードの場合と同様に、ピッチ角度がピッチ角度目標値
Agvrefとなる駆動時間Tsmを算出して駆動部35に設定し(S181)、駆動部35が、設定された駆動時間Tsmに基づいて同期モータ350を駆動する(S182)。このとき、静翼制御部34は、駆動部35に設定した駆動時間Tsmの情報を角度推定部36にも設定(入力)する。
【0133】
次に、角度推定部36が、上述したように、設定された駆動時間Tsmに基づいて上記
式(6)を計算することにより、ピッチ角度の推定値Agv_e(n)を算出する(S183)。
【0134】
例えば、同期モータ350を原点復帰させた後の最初(1回目)に実行されるステップS183では、式(6)の“Agv_e(n−1)”として、ステップS7で設定されたピッチ角度の推定値Agv_eの初期値(=0)が代入され、ピッチ角度の推定値Agv_e(n)が算出される。一方、同期モータ350を原点復帰させた後の2回目以降に実行されるステップS183では、式(6)の“Agv_e(n−1)”として、直前のステップS183において算出したピッチ角度の推定値が代入され、ピッチ角度の推定値Agv_e(n)が算出される。
【0135】
すなわち、角度推定部36は、モータを原点復帰させたときのピッチ角度の初期値(Agv_e=0)に対して、モータの操作量(例えば駆動時間Tsm)に応じたモータの回転角度を累積加算または減算することにより、ピッチ角度の推定値Agv_e(n)を算出する。
【0136】
以上のステップS18の処理フローにより、静翼17のピッチ角度の調節とピッチ角度の推定が行われる。
【0137】
以上、実施の形態2に係る流量制御装置101によれば、実施の形態1に係る流量制御
装置100と同様に、直前に角度検出部23によって実際に検出されたピッチ角度の検出値Agv_r(n−1)に対して、同期モータ350の操作量(例えば駆動時間Tsm)に応じた同期モータ350の回転角度から求めたピッチ角度Agv_ck(n)とピッチ角度目標値Agv
refとを比較することによって、角度検出部23の異常の有無を判定するので、複雑な演算処理を用いることなく、高精度に角度検出部23の異常の有無を検出することが可能となる。
【0138】
また、静翼の羽根を回動させるモータとして、同期モータを用いることにより、ステッピングモータを用いる場合と同様に、静翼のピッチ角度の高精度な制御が可能となるとともに、モータの回転角度(N×Tsm/60)の算出が容易となる。
【0139】
なお、実施の形態2に係る流量制御装置101では、ピッチ角度目標値Agv_refから目標とする同期モータの操作量(駆動時間Tsm)を算出し、同期モータを駆動する制御手法を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、実施の形態1に係る流量制御装置100と同様に、同期モータを単位時間ずつ回転させ、静翼17のピッチ角度がピッチ角度目標値
Agvrefに一致したら同期モータの回転を止める制御手法を採用することも可能である。以下に、実施の形態2に係る流量制御装置101における、通常モードにおけるピッチ角度の調節に係る処理(ステップ
S12)の別の一例と、角度センサレスモードにおけるピッチ角度の調節に係る処理(ステップ
S18)の別の一例を夫々示す。
【0140】
図23は、実施の形態2に係る流量制御装置101の通常モードにおけるピッチ角度の調節に係る処理(ステップS12)の別の一例を示すフロー図である。
上述した
図20の処理フローと同様に、算出されたピッチ角度目標値Agv
refが静翼制御部34に設定されると、静翼制御部34は、ピッチ角度の検出値Agv_rがピッチ角度目標値Agv
refに一致するまで、単位駆動時間Tsm_0を駆動部35に繰り返し設定することにより、同期モータ350を段階的に回転させる。
【0141】
具体的には、先ず、静翼制御部34が、単位駆動時間Tsm_0を駆動部35に設定する(S124)。次に、駆動部35が、設定された単位駆動時間Tsm_0に基づいて同期モータ350を駆動する(S125)。次に、静翼制御部34が、角度検出部23によって検出されたピッチ角度の検出値Agv_r(n)とピッチ角度目標値Agv
refが一致するか否かを判定する(S126)。ピッチ角度の検出値Agv_r(n)とピッチ角度目標値Agv
refが一致しない場合には、再び、ステップS124に戻り、ピッチ角度の
検出値Agv_r(n)がピッチ角度目標値Agv
refに一致するまで、駆動部35に設定する駆動時間をTsm_0ずつ増加させて同期モータ350を段階的に回転させる(S124〜S126)。その後、ピッチ角度の検出値Agv_r(n)とピッチ角度目標値Agv
refが一致した場合には、同期モータ350の回転を停止し、静翼17の回転を停止させる(S127)。
【0142】
図24は、実施の形態2に係る流量制御装置101の角度センサレスモードにおけるピッチ角度の調節に係る処理(ステップS18)の別の一例を示すフロー図である。
【0143】
先ず、通常モードの場合と同様に(
図23参照)、静翼制御部34が単位駆動時間Tsm_0を駆動部35に設定し(S124)、駆動部35が設定された単位駆動時間Tsm_0に基づいて同期モータ350を駆動する(S125)。このとき、単位駆動時間Tsm_0の情報は、角度推定部36にも入力(設定)される。次に、角度推定部36が、設定された単位駆動時間Tsm_0に基づいて、ピッチ角度の推定値Agv_e(n)を算出する(S186)。算出方法は、
図15の場合と同様である。
【0144】
次に、静翼制御部34が、ステップS186で算出したピッチ角度の推定値Agv_e(n)とピッチ角度目標値Agv
refが一致するか否かを判定する(S187)。ピッチ角度の推定値Agv_e(n)とピッチ角度目標値Agv
refとが一致しない場合には、再び、
図24のステップS124に戻り、ピッチ角度の推定値Agv_e(n)がピッチ角度目標値Agv
refに一致するまで、駆動部35に設定する駆動時間をTsm_0ずつ増加させて同期モータ350を段階的に回転させる(S124〜S187)。一方、ピッチ角度の推定値Agv_e(n)とピッチ角度目標値Agv
refとが一致した場合には、同期モータ350の回転を停止し、静翼17の回転を停止させる(S188)。
【0145】
以上の処理フローによれば、
図20および
図22に示した処理フローと同様に、同期モータ350を用いた静翼17のピッチ角度の調節を実現することができる。
【0146】
≪実施の形態3≫
図25は、実施の形態3に係る流量制御装置102の構成を示す図である。
図25に示される流量制御装置102は、空調制御装置4との間および外部電源5との間を無線で接続する点において、実施の形態1に係る流量制御装置100と相違する一方、その他の点においては実施の形態1に係る流量制御装置100と同様である。
【0147】
流量制御装置102では、データ通信部11に代えてワイヤレスデータ通信部30を設け、アンテナ29を通して空調制御装置4との間のデータの送受信を無線で行う。また、流量制御装置102では、商用電源回生部20に代えてワイヤレス送受電部31を設け、外部電源5からの電力をアンテナ29を通して無線で受けて電源部19へ送るとともに、電源部19からの余剰電力をアンテナ29を通して無線で商用電源(この例では、外部電源5)に回生し、他のコントローラおよびセンサ等に電力を供給する。
【0148】
流量制御装置102によれば、空調制御装置4との間および外部電源5との間を無線で接続するようにしているので、流量制御装置102と外部機器との間の配線をなくすことが可能となる。これにより、配線材料の撤廃、施工性/メンテナンス性向上への貢献、配線個工数の撤廃、劣悪な環境での作業工数の低減、既設建物の追加計装および置き換えでの作業工数の低減など、ワイヤレス化による環境負荷低減への貢献が期待できる。
【0149】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0150】
例えば、上記実施の形態において、流量制御装置100,101,102を空調制御システム1に適用する場合を例示したが、これに限られず、各種の流量制御のアプリケーションに適用でき、更には一般産業機器までにも拡大して適用することが可能である。
【0151】
また、上記実施の形態において、流量制御装置100,101,102による制御対象の流体が冷温水である場合を例示したが、これに限れず、冷温水以外の液体でもよいし、ガス等の気体であってもよい。
【0152】
また、上記実施の形態において、静翼17は、ピッチ角度が可変な形状であればよく、
図5,6等に例示した形状に限定されない。
【0153】
また、実施の形態3において、空調制御装置4との間および外部電源5との間を無線で接続する流量制御装置102を例示したが、これに限られず、流量制御装置102において、空調制御装置4との間および外部電源5との間の何れか一方を無線とし、他方を実施の形態1に係る流量制御装置100と同様に有線としてもよい。
【0154】
また、実施の形態2に係る流量制御装置101も、実施の形態3に係る流量制御装置102と同様に無線化してもよい。例えば、
図26に示す流量制御装置103のように、空調制御装置4との間および外部電源5との間を無線で接続するようにしてもよいし、空調制御装置4との間および外部電源5との間の何れか一方を無線とし、他方を有線としてもよい。