(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記記憶手段に記憶される前記情報は、前記材料の種類別に、対応する材料に応じて定めた、前記厚さと前記1パルス当たりのエネルギとの比例関係を規定したものであることを特徴とする請求項3記載のレーザ制御装置。
前記入力条件設定手段により設定された前記切断速度が所定速度より小さい場合に、前記切断対象物に照射するレーザ光をパルス発振によるレーザ光とし、前記切断速度が前記所定速度より大きい場合に、前記切断対象物に照射するレーザ光を連続発振によるレーザ光とするレーザ光切替手段を備え、
前記出力手段は、前記レーザ光切替手段により、前記切断対象物に照射するレーザ光が前記パルス発振によるレーザ光とされた場合に、前記演算手段により演算された前記レーザ光の周波数及びデューティに基づく信号をレーザ発振器へ出力することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレーザ制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、
図6を参照して、連続発振させたレーザ光により切断対象物を切断した場合の問題点を説明する。
図6は、レーザ発振器にて連続発振されたレーザ光により切断対象物を切断した場合のドロス高さと切断速度との関係を示した図である。この
図6では、レーザ発振器から加工ヘッド先端までレーザ光を伝送する光ファイバのコア径を0.2mm、レーザ光と同軸に切断対象物に向けて噴射するガスの圧力を1MPa、レーザ光の出力を2000Wとし、切断対象物の板厚を2mmとした。ここで、ドロスとは、レーザ光による切断によって溶けた物質が、レーザ光を照射した側とは反対側に残留物として切断対象物に付着したものであり、ドロス高さは、そのドロスの高さを示したものである。
【0006】
図6に示す通り、切断速度が高速であれば、ドロスの付着はほとんどない。しかしながら、この条件の場合、切断速度が約3m/分以下の低速となると、ドロス高さが高くなる傾向がある。加工ヘッドを多関節ロボットにより移動させて切断対象物を切断する場合、多関節ロボットの場合には、加工ヘッドの移動速度は、立ち上がりから設定速度に至るまでに時間を要するため、立ち上がりからしばらくの間は、切断速度が低速となり、ドロスの付着が問題となる。また、その加減の場合も、急激には設定速度まで低下せず、徐々に低下するように速度が一定でない状況が発生する。更に、多関節ロボットで小円を描く場合には、高速では精度良く小円を描くことができず、円の直径に依存するが、低速の条件下でないと精度の良い円は描けないことになる。したがって、多関節ロボットで小円を切断する場合の設定速度は、低速条件でプログラムを組むことが必要となる。
【0007】
そこで、少なくとも切断速度が低速となる範囲において、パルス発振させたレーザ光により切断対象物を切断する方法を採用することも考えられる。しかしながら、パルス発振させたレーザ光により切断対象物を切断する場合、従来のレーザ切断装置では、これまでの経験や実績、試験等によって得られた知見を基に、ドロスのない(ドロスフリーの)良好な切断結果が得られる切断条件、即ち、レーザ光の出力、周波数、デューティ及び切断速度等を規定した数多くの切断条件シート(例えば、特許文献1の加工条件テーブルが該当)を作成し、その切断条件シートの中から、適切な切断条件を選択する必要があった。しかも、この切断条件シートを作成するには、切断対象物の材料や板厚毎に、膨大な試験を行って、良好な切断試験が得られる切断条件を選定する必要がある。更に、先述の多関節ロボットにより加工ヘッドを移動させるものの場合、切断速度が時間をかけて変化するものであるため、各々の切断速度に対して、良好な切断結果が得られる切断条件を規定した切断条件シートが必要となる。
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、パルス発振されたレーザ光により切断対象物の切断を行う場合に、良好な切断結果が得られる切断条件を容易に設定できるレーザ制御装置及びレーザ切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために請求項1記載のレーザ制御装置は、パルス発振にて切断対象物に照射されるレーザ光を制御するものであって、前記切断対象物に照射されるレーザ光の固定された条件として、前記レーザ光のスポット径、オーバーラップ率及びピーク出力を設定する固定条件設定手段と、前記切断対象物に照射されるレーザ光に対する外部からの入力に基づく条件として、前記レーザ光の1パルス当たりのエネルギと、前記切断対象物の前記レーザ光による切断速度とを設定する入力条件設定手段と、前記固定条件設定手段により設定された前記スポット径、前記オーバーラップ率及び前記ピーク出力と、前記入力条件
設定手段により設定された前記1パルス当たりのエネルギ及び前記切断速度とに基づいて、前記レーザ光の周波数及びデューティを演算する演算手段と、その演算手段により演算された前記レーザ光の周波数及びデューティに基づく信号をレーザ発振器へ出力する出力手段と、を備える。
【0010】
請求項2記載のレーザ制御装置は、請求項1記載のレーザ制御装置において、前記切断対象物に対して照射される前記レーザ光の照射位置の実際の移動速度を受け付ける実速度受付手段を備え、前記入力条件設定手段は、前記実速度受付手段により受け付けられた前記移動速度を前記切断速度として設定する。ここで、実速度受付手段により受け付けられるレーザ光の照射位置の実際の移動速度は、演算装置により算出されたものを含み、実際の移動速度から所定の誤差を含むものであってもよい。
【0011】
請求項3記載のレーザ制御装置は、請求項1又は2記載のレーザ制御装置において、少なくとも前記切断対象物の材料の種類と、前記切断対象物の厚さとの入力を受け付ける入力受付手段と、前記材料の種類別に、対応する材料における前記厚さと、その厚さに対して設定すべき前記1パルス当たりのエネルギとの関係を規定した情報を記憶する記憶手段と、を備え、前記入力条件設定手段は、前記入力受付手段により受け付けられた前記材料の種類と前記切断対象物の厚さとから、前記記憶手段に記憶された前記情報に基づいて、前記1パルス当たりのエネルギを設定する。
【0012】
請求項4記載のレーザ制御装置は、請求項3記載のレーザ制御装置において、前記記憶手段に記憶される前記情報は、前記材料の種類別に、対応する材料に応じて定めた、前記厚さと前記1パルス当たりのエネルギとの比例関係を規定したものである。
【0013】
請求項5記載のレーザ制御装置は、請求項1から4のいずれかに記載のレーザ制御装置において、前記入力条件設定手段により設定された前記切断速度が所定速度より小さい場合に、前記切断対象物に照射するレーザ光をパルス発振によるレーザ光とし、前記切断速度が前記所定速度より大きい場合に、前記切断対象物に照射するレーザ光を連続発振によるレーザ光とするレーザ光切替手段を備え、前記出力手段は、前記レーザ光切替手段により、前記切断対象物に照射するレーザ光が前記パルス発振によるレーザ光とされた場合に、前記演算手段により演算された前記レーザ光の周波数及びデューティに基づく信号をレーザ発振器へ出力する。
【0014】
請求項6記載のレーザ切断装置は、請求項1から5のいずれかに記載のレーザ制御装置と、前記レーザ制御装置の出力手段より出力される信号に基づいて、レーザ光を発振するレーザ発振器と、そのレーザ発振器により発振されたレーザ光を集光して前記切断対象物へ向けて照射する加工ヘッドと、その加工ヘッド及び前記切断対象物の一方又は両方を移動させることにより、前記切断対象物に対して前記レーザ光の照射位置を移動させる移動手段と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載のレーザ制御装置によれば、パルス発振にて切断対象物に照射されるレーザ光を制御する場合に、固定条件設定手手段により、レーザ光のスポット径、オーバーラップ率及びピーク出力が、切断対象物に照射されるレーザ光の固定された条件として設定される。一方、入力条件設定手段により、レーザ光の1パルス当たりのエネルギと、切断対象物のレーザ光による切断速度とが、切断対象物にパルス発振されるレーザ光に対する外部からの入力に基づく条件として設定される。そして、固定された条件として設定された、スポット径、オーバーラップ率及びピーク出力と、外部からの入力に基づく条件として設定された1パルス当たりのエネルギ及び切断速度とに基づいて、レーザ光の周波数及びデューティが、演算手段により演算される。その演算されたレーザ光の周波数及びデューティに基づく信号が、出力手段によりレーザ発振器へ出力される。このように、レーザ光のスポット径、オーバーラップ率及びピーク出力の各条件が固定されているので、切断対象物の材料と厚さに適切な1パルス当たりのエネルギと、所望の又は実際の切断速度とを入力により設定するだけで、良好な切断結果が得られるレーザ光の周波数及びデューティを容易に求めることができる。また、固定された条件として、レーザ光のピーク出力が設定され、入力により設定された1パルス当たりのエネルギとなるようにデューティが調整される。これにより、周波数が高くなったとしても、デューティが調整されることで、レーザ光のピーク出力が高くなりすぎることを抑制できる。よって、パルス発振されたレーザ光による切断対象物の切断を行う場合に、良好な切断結果が得られる切断条件を容易に設定できるという効果がある。
【0016】
請求項2記載のレーザ制御装置によれば、請求項1記載のレーザ制御装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、切断対象物に対して照射されるレーザ光の照射位置の実際の移動速度が、実速度受付手段により受け付けられる。実速度受付手段により受け付けられた移動速度が、切断対象物にパルス発振されるレーザ光に対する外部からの入力に基づく条件である切断速度として、入力条件設定手段により設定される。これにより、レーザ光の照射位置の実際の移動速度に対して、良好な切断結果が得られるレーザ光の周波数及びデューティを容易に求めることができるという効果がある。
【0017】
請求項3記載のレーザ制御装置によれば、請求項1又は2記載のレーザ制御装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、切断対象物の材料の種類別に、対応する材料における切断対象物の厚さと、その厚さに対して設定すべき1パルス当たりのエネルギとの関係を規定した情報が、記憶手段に記憶される。そして、少なくとも切断対象物の材料の種類と、切断対象物の厚さとの入力が、入力受付手段によって受け付けられると、その受け付けられた材料の種類と切断対象物の厚さとから、記憶手段に記憶された情報に基づいて、1パルス当たりのエネルギが入力条件設定手段により設定される。これにより、切断対象物の材料とその厚さを入力するだけで、1パルス当たりのエネルギが設定され、その1パルス当たりのエネルギから、良好な切断結果が得られるレーザ光の周波数及びデューティを容易に求めることができるという効果がある。
【0018】
請求項4記載のレーザ制御装置によれば、請求項3記載のレーザ制御装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、記憶手段に記憶される情報には、切断対象物の材料の種類別に、対応する材料に応じて定めた、切断対象物の厚さと設定すべき1パルス当たりのエネルギとの比例関係が規定される。本発明の発明者は、切断対象物の材料毎に、切断対象物の厚さと、良好な切断結果が得られる1パルス当たりのエネルギとの間に、比例関係があることを見出した。よって、記憶手段にこの比例関係を規定するだけで、容易に、良好な切断結果が得られる1パルス当たりのエネルギを、切断対象物に照射されるレーザ光に対する外部からの入力に基づく条件の1つとして設定することができるという効果がある。
【0019】
請求項5記載のレーザ制御装置によれば、請求項1から4に記載のレーザ制御装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、入力条件設定手段により設定された切断速度が所定速度より小さい場合に、切断対象物に照射するレーザ光が、レーザ光切替手段によってパルス発振によるレーザ光とされ、入力条件設定手段により設定された切断速度が所定速度より大きい場合に、切断対象物に照射するレーザ光が、レーザ光切替手段によって連続発振によるレーザ光とされる。そして、レーザ光切替手段により、切断対象物に照射するレーザ光がパルス発振によるレーザ光とされた場合に、演算手段により演算されたレーザ光の周波数及びデューティに基づく信号が、出力手段によりレーザ発振器へ出力される。これにより、切断速度が大きい場合には、連続発振されたレーザ光により良好な切断結果が得られるよう制御しつつ、切断速度が小さい場合には、良好な切断結果が得られる切断条件を容易に設定しながら、パルス発振されたレーザ光により切断が行われるよう制御できるという効果がある。
【0020】
請求項6記載のレーザ切断装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載のレーザ制御装置によって、良好な切断結果が得られる切断条件が容易に設定され、その設定された切断条件に基づいて、レーザ発振器によりレーザ光が発振される。そして、その発振されたレーザ光が集光されて、加工ヘッドにより切断対象物へ向けて照射されつつ、移動手段により、加工ヘッド及び切断対象物の一方又は両方を移動させることにより、切断対象物に対して照射されるレーザ光の照射位置が移動され、切断が行われる。これにより、対応するレーザ制御装置により奏する効果を享受しながら、良好な切断結果を得ることができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態であるレーザ制御装置30を有するレーザ切断装置Sの概略について説明する。
図1は、そのレーザ切断装置Sの構成を概略的に示す概略図である。
【0023】
レーザ切断装置Sは、レーザ光により切断対象物(以下、単に「ワーク」と称す)Aを切断するものである。レーザ光は、加工ヘッド12の加工ヘッドノズル13よりワークAに向けて照射される。加工ヘッド12には、ガスボンベ50より所定のガスが供給されており、加工ヘッドノズル13は、ワークAに向けて所定の圧力でガスを噴射しながらレーザ光を照射する。噴射されたガスにより、レーザ光によって溶融されたワークAの材料を吹き飛ばすことができ、ワークAへのドロスの付着を抑制できる。所定のガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、エアーガス等が用いられる。
【0024】
レーザ光は、レーザ発振器40により生成され、光ファイバ45によって加工ヘッド12まで伝送される。レーザ発振器40には、レーザ制御装置30が接続されており、レーザ制御装置30からの信号に基づいて、レーザ光を発振する。
【0025】
レーザ制御装置30は、レーザ光の発振方式を指定する情報(パルス発振とするか、連続発振(CW)とするかを指示する情報)を含む信号をレーザ発振器40へ送信する。また、レーザ制御装置30は、レーザ光をパルス発振とする場合に、そのパルスのピーク出力、周波数及びデューティを指定する情報を含めて、信号をレーザ発振器40へ送信する。一方、レーザ制御装置30は、レーザ光を連続発振とする場合に、レーザ出力を指定する情報含めて、信号をレーザ発振器40へ送信する。
【0026】
ここで、
図2を参照して、パルス発振されるレーザ光で重要となる各種パラメータの定義を説明する。まず、
図2(a)は、パルス発振されたレーザ光におけるスポット径dと、そのスポット径dのオーバーラップ率oについて、その定義を説明する説明図である。
【0027】
スポット径dは、ワークAに対し、1回のパルスで照射されるレーザ光のスポット201の直径である。パルス発振されたレーザ光によるワークAの切断を行う場合、隣り合うパルス同士でレーザ光のスポット201が重なり合う(オーバーラップする)ように、ワークAに対するレーザ光の照射位置を移動させる。このオーバーラップ部202の長さをlとした場合に、オーバーラップ率oは、l/dで定義される。
【0028】
次いで、
図2(b)は、パルス発振されたレーザ光における周波数f、デューティD、ピーク出力W及び1パルス当たりのエネルギJについて、その定義を説明する説明図である。
図2(b)には、パルス発振されたレーザ光のエネルギを、矩形パルスにて示している。
【0029】
周波数Fは、1秒間に含まれる矩形パルスの個数である。換言すれば、オン/オフが繰り返されるレーザ光において、1秒間にオンされた回数が周波数Fである。この周波数Fに対し、1周期Tのパルス波形に対してレーザ光がオンされる時間Tonの比率Ton/Tが、デューティDである。また、矩形パルスにおいて、レーザ光の最大出力(つまり、矩形パルスの高さ)が、ピーク出力Wであり、そのピーク出力Wに、レーザ光がオンされる時間Tonを乗じたもの(W×Ton)が、1パルス当たりのエネルギJである。
【0030】
レーザ制御装置30は、レーザ光をパルス発振させる場合に、レーザ光のスポット径d、オーバーラップ率o及びピーク出力Wを固定条件として設定する一方、ワークAに照射すべきレーザ光の1パルス当たりのエネルギJと、ワークAの切断速度Vとを、後述のロボットコントローラ20から入力条件(可変条件)として受け付けて、パルス発振させるレーザ光の周波数F及びデューティDを算出する。そして、算出した周波数F及びデューティDと、固定条件としたピーク出力Wとを、レーザ光の出力条件としてレーザ発振器40に指定する。レーザ制御装置30の詳細については、
図3〜
図5を参照して後述する。
【0031】
図1に戻り、説明を続ける。加工ヘッド12は、多関節ロボット11に接続される。多関節ロボット11及び加工ヘッド12は、ロボットコントローラ20により制御される。
【0032】
ロボットコントローラ20は、加工ヘッド12の加工ヘッドノズル13からのレーザ光の照射の開始及び停止、並びに、同ノズル13からのガスの噴射の開始及び停止を制御する。また、ロボットコントローラ20は、多関節ロボット11を駆動することにより、加工ヘッド12を移動させる。加工ヘッド12が移動することにより、ワークAに照射されるレーザ光の位置が移動する。本実施形態においては、ワークAは切断中固定され、移動しない。よって、加工ヘッド12の移動速度が、ワークAの切断速度Vとなる。
【0033】
ロボットコントローラ20は、多関節ロボット11及び加工ヘッド12を制御するためのCPU(Central Processing Unit)(図示せず)を有するほか、多関節ロボット11の駆動により移動する加工ヘッド12の実際の移動速度(実速度)を検出する実速度検出CPU21が設けられている。
【0034】
実速度検出CPU21は、多関節ロボット11の実際の移動量から、加工ヘッド12の実速度を演算して検出する。レーザ切断装置Sに、加工ヘッド12の移動量を検出すセンサを設けて、そのセンサの出力から、実速度検出CPU21が、加工ヘッド12の実速度を演算して検出してもよい。実速度検出CPU21により検出した加工ヘッド12の実速度は、D/Aコンバータ22によってアナログ信号に変換され、レーザ制御装置30に入力される。
【0035】
なお、実速度検出CPU21により検出される加工ヘッド12の実速度は、実際の加工ヘッド12の移動速度から所定の誤差を含むものであってもよい。また、本実施形態のロボットコントローラ20は、多関節ロボット11及び加工ヘッド12を制御するためのCPUとは別に、実速度検出CPU21を設ける場合について説明するが、多関節ロボット11及び加工ヘッド12を制御するためのCPUにより、加工ヘッド12の実速度を演算して検出してもよい。また、ワークAを移動させながら切断を行う場合は、実速度検出CPU21は、加工ヘッド12の実速度と合わせてワークAの実施の移動速度を検出し、ワークAに対する加工ヘッド12の相対的な速度を算出して、その相対的な速度を、D/Aコンバータ22によってアナログ信号に変換して、レーザ制御装置30へ入力してもよい。この場合、ワークAに対する加工ヘッド12の相対的な速度が、ワークAの切断速度Vとなる。
【0036】
ロボットコントローラ20には、ロボットペンダント23が接続される。ロボットペンダント23は、ロボットコントローラ20に対して、多関節ロボット11の動作に関する設定や切断軌跡の教示等をするための入力手段としての役割を担うと共に、多関節ロボット11の運転状態を表示する表示手段としての役割を担うものである。ロボットコントローラ20は、ロボットペンダント23により教示された切断軌跡に従って、多関節ロボット11を駆動し、加工ヘッド12を移動させる。これにより、その切断軌跡に沿って、ワークAが切断される。
【0037】
また、ロボットペンダント23は、ワークAを切断するレーザ光の条件として、1パルス当たりのエネルギが使用者によって選択できるように構成されている。また、ロボットペンダント23は、1パルス当たりのエネルギに代えて、ワークAの材料及び板厚(厚さ)が使用者によって選択できるように構成されている。更に、一部のワークAの材料については、レーザ光の照射と合わせて噴射するガスの種類も選択できるようになっている。ロボットペンダント23により、1パルス当たりのエネルギ、又は、ワークAの材料(とガス)及び板厚が選択されると、その選択された情報が、ロボットコントローラ20を介して、レーザ制御装置30へ入力される。
【0038】
次いで、
図3を参照して、レーザ制御装置30の詳細について説明する。
図3は、レーザ制御装置30の電気的構成を示したブロック図である。レーザ制御装置30は、CPU31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、フラッシュメモリ34を有しており、それらはバスライン38を介して接続されている。また、バスライン38には、レーザ制御装置30に取り付けられた表示装置(ディスプレイ)36と、表示装置36を覆う形で設けられたタッチパネル37と、ロボットコントローラ20と、レーザ発振器40とが接続されている。
【0039】
CPU31は、ROM32に記憶されたプログラムに従って、レーザ発振器40によるレーザ発振を制御する演算装置である。ROM32は、CPU31によって実行されるプログラムを記憶するほか、固定値データ等を記憶するための書き換え不能な不揮発性のメモリである。なお、ROM32に記憶される各種データを、フラッシュメモリ34に記憶させておくことで、ROM32を省いてもよい。
【0040】
ROM32は、固定値データとして、例えば、1パルスエネルギマップ32aを記憶する。ここで、
図4を参照して、1パルスエネルギマップ32aについて説明する。
図4は、1パルスエネルギマップ32aを模式的に示した模式図である。
【0041】
1パルスエネルギマップ32aは、切断対象となるワークAとして使用され得る材料別に、そのワークAの板厚に対して、良好な切断結果を得るために必要となる1パルス当たりのエネルギJを規定したものである。
【0042】
図4に示す1パルスエネルギマップ32aの例では、ワークAとして使用され得る材料として、軟鋼、ステンレス鋼(SUS)、チタン(Ti)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)及びプラスチックの別に、板厚に対して必要な1パルス当たりのエネルギJが規定される。また、軟鋼については、切断時にレーザ光の照射と合わせて噴射されるガスの種類に応じて(エアーガス、窒素(N
2)ガス、アルゴン(Ar)ガスと、酸素ガスとに応じて)、異なるマップが規定される。
【0043】
ロボットペンダント23に対して、ワークAの材料と、材料が軟鋼の場合はレーザ光の照射と合わせて噴射されるガスの種類と、ワークAの板厚とが入力されると、その情報がロボットコントローラ20を介して、レーザ制御装置30に入力される。CPU31は、これら入力されたワークAの材料と、材料が軟鋼の場合はレーザ光の照射と合わせて噴射されるガスの種類と、ワークAの板厚との情報を受け付けると、これらの情報に基づいて、1パルスエネルギマップ32aから、良好な切断結果を得るために必要となる1パルス当たりのエネルギJを選定し、これをレーザ光の入力条件として設定する。
【0044】
ここで、本発明の発明者は、ワークAの材料(及び噴射されるガスの種類)毎に、ワークAの板厚と、良好な切断結果が得られる1パルス当たりのエネルギJとの間に、比例関係があることを見出した。よって、1パルスエネルギマップ32aには、材料(及びガスの種類)毎に、ワークAの板厚と、良好な切断結果が得られる1パルス当たりのエネルギJとの間の比例関係を規定するだけでよく、1パルスエネルギマップ32aに必要な記憶容量の増大を抑制できる。
【0045】
なお、ワークAの板厚と、良好な切断結果が得られる1パルス当たりのエネルギJとの間に、比例関係があることを利用して、1パルスエネルギマップ32aに代えて、ワークAの材料(及びガスの種類)毎に、板厚に対して必要な1パルス当たりのエネルギJを算出するための比例係数をROM32に記憶させてもよい。CPU31は、ロボットコントローラ20を介してロボットペンダント23より入力されたワークAの材料と、材料が軟鋼の場合はレーザ光の照射と合わせて噴射されるガスの種類と、ワークAの板厚との情報を受け付けると、そのワークAの材料及びガスの種類に対応する比例係数をROM23から読み出し、その比例係数にワークAの板厚を乗ずることで、良好な切断結果が得られる1パルス当たりのエネルギJを算出して、レーザ光の入力条件として設定する。これにより、容易に1パルス当たりのエネルギJをレーザ光の入力条件として設定できる。
【0046】
図3に戻り、説明を続ける。フラッシュメモリ34は、書き換え不能な不揮発性のメモリである。フラッシュメモリ34は、例えば、レーザ制御装置30を動作させるための各種設定値や、レーザ光をパルス発振させる場合の該レーザ光の固定条件として設定すべき各データを記憶する。フラッシュメモリ34には、CW/パルス切替設定速度データ34a、ピーク出力データ34b、オーバーラップ率データ34c、スポット径データ34dが少なくとも格納される。
【0047】
CW/パルス切替設定速度データ34aは、ワークAの切断速度Vに対して、レーザ光を連続発振(CW)とするか、パルス発振とするかを切り替える速度の閾値を設定するデータである。CPU31は、ワークAの切断速度Vが、CW/パルス切替設定速度データ34aにより示される速度よりも切断速度Vが早いか遅いかで、ワークAに照射するレーザ光を連続発振とするか、パルス発振とするかを決定する。即ち、切断速度Vが、CW/パルス切替設定速度データ34aにより示される速度よりも早い場合、レーザ光として連続発振が設定される。また、切断速度Vが、CW/パルス切替設定速度データ34aにより示される速度よりも遅い場合、レーザ光としてパルス発振が設定される。切断速度Vが遅い場合は、パルス発振されたレーザ光がワークAに照射されるので、ドロスの付着を抑制しながら、ワークAの切断を行うことができる。
【0048】
ピーク出力データ34bは、パルス発振されたレーザ光をワークAへ照射する場合の、そのレーザ光のピーク出力W(
図2(b)参照)を示すデータである。オーバーラップ率データ34cは、パルス発振されたレーザ光をワークAへ照射する場合の、オーバーラップ率o(
図2(a)参照)を示すデータである。スポット径データ34dは、パルス発振されたレーザ光をワークAへ照射する場合の、スポット径d(
図2(a)参照)を示すデータである。ピーク出力データ34b、オーバーラップ率データ34c及びスポット径データ34dにより示されるピーク出力W、オーバーラップ率o及びスポット径dは、それぞれ、ワークAへ照射するレーザ光をパルス発振とする場合に、そのレーザ光の固定条件として設定される。
【0049】
RAM33は、書き換え可能な揮発性のメモリであり、CPU51によるプログラムの実行時に各種のデータを一時的に記憶する。RAM33は、切断速度データ33a、材料データ33b、板厚データ33c、ガスデータ33d、1パルスエネルギデータ33e、周波数データ33f、デューティデータ33gを少なくとも記憶する。
【0050】
切断速度データ33aは、ワークAの切断速度Vを示すデータである。ワークAの切断速度Vは、多関節ロボット11により移動される加工ヘッド12の実際の移動速度(実速度)となる。この実速度は、上述した通り、ロボットコントローラ20の実速度検出CPU21により検出され、レーザ制御装置30に入力される。CPU31は、ロボットコントローラ20から入力された加工ヘッド12の実速度を、切断速度Vとして切断速度データ33aに記憶する。この切断速度データ33aに記憶された切断速度Vは、ワークAへ照射するレーザ光の発振方式の連続発振とパルス発振との切替の判断に使用される。また、ワークAへ照射するレーザ光がパルス発振とされた場合に、切断速度データ33aに記憶された切断速度Vが、レーザ光の入力条件として設定される。
【0051】
材料データ33bは、ロボットコントローラ20を介してロボットペンダント23より入力されたワークAの材料を示すデータである。板厚データ33cは、同ロボットペンダント23より入力されたワークAの板厚を示すデータである。ガスデータ33cは、同ロボットペンダント23より入力された、ワークAへのレーザ光の照射と合わせて噴射されるガスの種類を示すデータである。
【0052】
CPU31は、ロボットペンダント23より、ワークAの材料、板厚、噴射されるガスの種類が入力されると、各々、その情報を材料データ33b、板厚データ33c、及びガスデータ33dとして記憶する。ここに記憶された材料データ33b、板厚データ33c、及びガスデータ33dは、ワークAへ照射するレーザ光がパルス発振とされた場合に、そのパルス発振において、良好な切断結果を得るために必要な1パルス当たりのエネルギJを選定するために使用される。
【0053】
1パルスエネルギデータ33eは、ワークAへ照射するパルス発振されたレーザ光の1パルス当たりのエネルギJ(
図2(b)参照)を示すデータである。CPU31により、材料データ33b、板厚データ33c、及びガスデータ33dに基づいて、ワークAへ照射するレーザ光がパルス発振とされた場合に良好な切断結果を得るために必要な1パルス当たりのエネルギJが選定されると、その選定された1パルス当たりのエネルギJを示す情報が、1パルスエネルギデータ33eとして記憶される。また、ロボットペンダント23に対し使用者によって直接選択された1パルス当たりのエネルギJを示す情報が、そのロボットペンダント23からレーザ制御装置30へ入力された場合は、その入力された1パルス当たりのエネルギJを示す情報が、1パルスエネルギデータ33eとして記憶される。ワークAへ照射するレーザ光がパルス発振とされた場合に、1パルスエネルギデータ33eに記憶された1パルス当たりのエネルギJが、レーザ光の入力条件として設定される。
【0054】
周波数データ33fは、ワークAへ照射するレーザ光がパルス発振とされた場合の、そのレーザ光の周波数F(
図2(b)参照)を示すデータである。デューティデータ33gは、ワークAへ照射するレーザ光がパルス発振とされた場合の、そのレーザ光のデューティD(
図2(b)参照)を示すデータである。
【0055】
ワークAへ照射するレーザ光がパルス発振とされた場合、CPU31は、ピーク出力データ34bにより示されるピーク出力W、オーバーラップ率データ34cにより示されるオーバーラップ率o、スポット径データ34dにより示されるスポット径dを固定条件とし、切断速度データ33aにより示される切断速度V、1パルスエネルギデータ33eにより示される1パルス当たりのエネルギJを入力条件(可変条件)として、これらのデータから、レーザ光の周波数F及びデューティDを算出し、各々、周波数データ33f及びデューティデータ33gとして記憶する。そして、この算出した周波数F及びデューティDと、固定条件であるピーク出力Wとが、レーザ光の出力条件として、レーザ発振器40へ送信される。
【0056】
表示装置36は、レーザ制御装置30の各種状態を表示するディスプレイである。表示装置36の表示面には、その表示面を覆うようにタッチパネル37が設けられており、表示装置36に表示されたボタンと連動して、レーザ制御装置30に対し、使用者が種々の設定を行えるようにしている。例えば、フラッシュメモリ34に記憶される、CW/パルス切替速度データ34a、ピーク出力データ34b、オーバーラップ率データ34c及びスポット径データ34dは、それぞれ、使用者がタッチパネル37を操作することにより、変更できるように構成されている。なお、タッチパネル37に代えて、又は、タッチパネル37に加えて、キーボート等の入力手段をバスライン38に接続し、レーザ制御装置30に対して、各種情報を入力できるようにしてもよい。
【0057】
次いで、
図5を参照して、レーザ制御装置30及びレーザ切断装置Sの機能及び作用について説明する。
図5は、レーザ制御装置30及びレーザ切断装置Sの機能及び作用を説明するための機能ブロック図である。
【0058】
多関節ロボット11及びロボットコントローラ20により構成される駆動手段101によって、多関節ロボット11に接続された加工ヘッド12を移動させると、ワークAに照射されるレーザ光の照射位置が移動する。この加工ヘッド12の実際の移動速度(実速度)が、駆動手段101を構成する多関節ロボット11の移動量に基づいて、実速度検出CPU21により構成される実速度演算手段102により演算されて検出される。実速度演算手段102は、レーザ制御装置30の実速度受付手段103により受け付けられる。上述した通り、加工ヘッド12の実速度は、ワークAの切断速度Vとなる。実速度受付手段103は、実速度演算手段102により検出された加工ヘッド12の実速度を、ワークAの切断速度Vとして、切断速度データ33aに記憶する。切断速度データ33aは、レーザ制御装置30の入力条件設定手段105に入力される。
【0059】
一方、使用者によりロボットペンダント23が操作されて、ワークAの材料、ワークAの板厚及びレーザ光の照射と合わせて噴射されるガスの種類が選択されると、選択されたワークAの材料、ワークAの板厚及びガスの種類を示す情報が、ロボットコントローラ20を介してレーザ制御装置30へ入力され、入力受付手段104により受け付けられる。入力受付手段により受け付けられたワークAの材料、ワークAの板厚及びガスの種類を示す情報は、それぞれ、材料データ33b、板厚データ33c及びガスデータ33dとしてRAM33に記憶される。RAM33に記憶された材料データ33b、板厚データ33c及びガスデータ33dは、入力条件設定手段105に入力される。
【0060】
また、使用者によりロボットペンダント23が操作されて、ワークAを切断するレーザ光の条件として1パルス当たりのエネルギJが選択されると、選択された1パルス当たりのエネルギJを示す情報が、ロボットコントローラ20を介してレーザ制御装置30へ入力され、入力受付手段104により受け付けられる。入力受付手段により受け付けられた1パルス当たりのエネルギJは、1パルスエネルギデータ33eとしてRAM33に記憶される。RAM33に記憶された1パルスエネルギデータ33eは、入力条件設定手段105に入力される。
【0061】
入力受付手段104により、ワークAの材料、ワークAの板厚及びガスの種類を示す情報が受け付けられた場合は、RAM33に記憶された材料データ33b、板厚データ33c及びガスデータ33dにより示されるワークAの材料、ワークAの板厚及びガスの種類と、1パルスエネルギマップ32aとから、入力条件設定手段105によって、良好な切断結果が得られる1パルス当たりのエネルギJが選定される。そして、選定された1パルス当たりのエネルギJが、パルス発振する場合のレーザ光の入力条件(可変条件)の1つとして1パルスエネルギデータ33eに設定される。
【0062】
また、入力受付手段104により1パルス当たりのエネルギJを示す情報が受け付けられると、RAM33に記憶された1パルスエネルギデータ33eによって示される1パルス当たりのエネルギJが、そのままレーザ光の入力条件の1つとして設定される。
【0063】
また、入力条件設定手段105は、RAM33に記憶された切断速度データ33aによって示される切断速度Vが、レーザ光の入力条件のもう1つとして設定される。
【0064】
一方、レーザ制御装置30の固定条件設定手段106により、ピーク出力データ34bに記憶されたピーク出力Wと、オーバーラップ率データ34cに記憶されたオーバーラップ率oと、スポット径データ34dに記憶されたスポット径dが、パルス発振する場合のレーザ光の固定条件として設定される。
【0065】
レーザ制御装置30には、レーザ光切替手段107が設けられており、切替設定速度判定が、レーザ光切替手段107により行われる。切替設定速度判定では、入力条件設定手段105により設定された切断速度Vが、CW/パルス切替設定速度データ34aにて示される速度よりも速いか遅いかが判定される。
【0066】
レーザ光切替手段107により、切断速度Vが、CW/パルス切替設定速度データ34aにて示される速度よりも遅いと判定される場合は、ワークAへ照射するレーザ光として「パルス発振」が設定される。その場合、レーザ制御装置30の演算手段108により、入力条件設定手段105にてパルス発振のレーザ光の入力条件として設定された1パルス当たりのエネルギJ及び切断速度Vと、固定条件設定手段106にてパルス発振のレーザ光の固定条件として設定されたピーク出力W、オーバーラップ率o及びスポット径dとに基づいて、パルス発振されるレーザ光の周波数FとデューティDとが、次の式(1)及び(2)により算出される。
【0067】
F=V/(d×(1−o)) ・・・(1)
D=J×F/W ・・・(2)
一方、レーザ光切替手段107により、切断速度Vが、CW/パルス切替設定速度データ34aにて示される速度よりも遅いと判定される場合は、ワークAへ照射するレーザ光として「連続発振」が設定される。その場合、連続発振条件設定手段109により、連続発振させるレーザ光の出力条件が設定される。
【0068】
そして、レーザ光切替手段107によりレーザ光として「パルス発振」が設定された場合は、レーザ制御装置30の出力手段110により、レーザ光が「パルス発振」であることを示す信号と共に、レーザ光の出力条件として、演算手段108により演算された周波数F及びデューティDと、固定条件設定手段により固定条件として設定されたピーク出力Wとを示す信号が、レーザ発振器40へ出力される。
【0069】
一方、レーザ光切替手段107によりレーザ光として「連続発振」が設定された場合は、レーザ制御装置30の出力手段110により、レーザ光が「連続発振」であることを示す信号と共に、連続発振条件選定手段109にて設定されたレーザ光の出力条件を示す信号が、レーザ発振器40へ出力される。
【0070】
レーザ発振器40は、出力手段110より出力された信号により示される出力条件に従ってレーザ光を発振させる。レーザ発振器40により発振されたレーザ光は、光ファイバ45(
図1参照)により加工ノズル12へ伝搬され、加工ノズルヘッド13から、ワークAに向けて、伝搬されたレーザ光が照射される。
【0071】
なお、レーザ制御装置30に設けられた実速度受付手段103、入力受付手段104、入力条件設定手段105、固定条件設定手段106、レーザ光切替手段107、演算手段108、連続発振条件選定手段109及び出力手段110は、CPU31がROM32に格納されたプログラムを実行することによって構成される。
【0072】
以上説明した通り、本実施形態におけるレーザ制御装置30及びレーザ切断装置Sによれば、ワークAの切断に際してパルス発振したレーザ光を照射する場合に、固定条件設定手手段106により、レーザ光のピーク出力W、オーバーラップ率o及びスポット径dが、レーザ光の固定条件として設定される。一方、入力条件設定手段105により、レーザ光の1パルス当たりのエネルギJと、ワークAのレーザ光による切断速度Vとが、外部からの入力に基づく入力条件(可変条件)として設定される。
【0073】
そして、固定条件として設定されたピーク出力W、オーバーラップ率d及びスポット径dと、入力条件として設定された1パルス当たりのエネルギJ及び切断速度Vとに基づいて、パルス発振されるレーザ光の周波数F及びデューティDが、演算手段108により演算される。その演算されたレーザ光の周波数F及びデューティDを含む信号が、出力手段110によりレーザ発振器40へ出力される。
【0074】
このように、レーザ光のピーク出力W、オーバーラップ率o及びスポット径dの各条件が固定されているので、ワークAの材料と板厚に適切な1パルス当たりのエネルギJと、所望の又は実際の切断速度Vとを入力により設定するだけで、良好な切断結果が得られるレーザ光の周波数F及びデューティDを容易に求めることができる。また、固定された条件として、レーザ光のピーク出力Wが設定され、入力により設定された1パルス当たりのエネルギJとなるようにデューティDが調整される。これにより、周波数Fが高くなったとしても、デューティDが調整されることで、レーザ光のピーク出力Wが高くなりすぎることを抑制できる。よって、パルス発振されたレーザ光によるワークAの切断を行う場合に、良好な切断結果が得られる切断条件を容易に設定できる。
【0075】
また、多関節ロボット11が加工ヘッド12を移動させることにより移動する、ワークAにおけるレーザ光の照射位置の実際の移動速度が実速度演算手段102により算出され、実速度受付手段103により受け付けられる。実速度受付手段103により受け付けられた移動速度が、パルス発振されるレーザ光の入力条件の1つである切断速度Vとして、入力条件設定手段105により設定される。これにより、レーザ光の照射位置の実際の移動速度に対して、良好な切断結果が得られるパルス発振のレーザ光の周波数F及びデューティDを容易に求めることができる。
【0076】
特に、多関節ロボット11のように、加工ヘッド12の移動速度が設定した速度に達するまでに時間を要するようなもので、加工ヘッド12を移動させる場合には、切断開始直後、ワークAの切断速度Vが低速の範囲で徐々に変化していくことになる。また、その加減の場合も、急激には設定速度まで低下せず、徐々に低下するように速度が一定でない状況が発生する。更に、多関節ロボットで小円を描く場合には、低速の条件下でないと精度の良い円は描けない場合がある。したがって、多関節ロボットで小円を切断する場合の設定速度は、低速条件でプログラムを組むことが必要となることがある。このような場合であっても、レーザ光の照射位置の実際の移動速度に合わせて、良好な切断結果が得られるパルス発振のレーザ光の周波数F及びデューティDを容易に求めることができる。
【0077】
また、ワークAの材料の種類別、及び、少なくとも一部の材料についてはレーザ光の照射と合わせて噴射するガスの種類別に、対応する材料(及びガス)におけるワークAの板厚と、その板厚に対して良好な切断結果を得るために設定すべき1パルス当たりのエネルギJとの関係を規定した1パルスエネルギマップ32aが、ROM32に記憶される。そして、ワークAの材料の種類と、ワークAの板厚と、ワークAの材料の種類によっては、噴射するガスの種類との入力が、入力受付手段104によって受け付けられると、その受け付けられた材料の種類と切断対象物の厚さと、噴射するガスの種類とから、1パルスエネルギマップ32aに基づいて、良好な切断結果が得られる1パルス当たりのエネルギJが、入力条件設定手段105により設定される。これにより、ワークAの材料とその厚さ(及びガスの種類)を入力するだけで、1パルス当たりのエネルギJが設定され、その1パルス当たりのエネルギJから、良好な切断結果が得られるレーザ光の周波数F及びデューティDを容易に求めることができる。
【0078】
また、本発明の発明者は、ワークAの材料(及びガスの種類)毎に、ワークAの板厚と、良好な切断結果が得られる1パルス当たりのエネルギJとの間に、比例関係があることを見出した。よって、1パルスエネルギマップ32aには、ワークAの材料の種類(及びガスの種類)別に、対応する材料(及びガス)に応じて定めた、ワークAの厚さと設定すべき1パルス当たりのエネルギJとの比例関係を規定するだけでよい。また、1パルスエネルギマップ32aに代えて、ワークAの材料(及びガスの種類)毎に、板厚に対して必要な1パルス当たりのエネルギJを算出するための比例係数をROM32に記憶させてもよい。このように、ROM32にこの比例関係を規定するだけで、容易に、良好な切断結果が得られる1パルス当たりのエネルギJを、ワークAに照射されるパルス発振のレーザ光に対する入力条件の1つとして設定することができる。
【0079】
また、入力条件設定手段105により設定された切断速度Vが、CW/パルス切替設定速度データ34aにより示される速度より小さい場合に、ワークAに照射するレーザ光が、レーザ光切替手段107によってパルス発振によるレーザ光とされ、入力条件設定手段105により設定された切断速度Vが、CW/パルス切替設定速度データ34aにより示される速度より大きい場合に、ワークAに照射するレーザ光が、レーザ光切替手段107によって連続発振によるレーザ光とされる。そして、レーザ光切替手段107により、ワークAに照射するレーザ光がパルス発振によるレーザ光とされた場合に、演算手段108により演算されたレーザ光の周波数F及びデューティDに基づく信号が、出力手段110によりレーザ発振器40へ出力される。これにより、切断速度Vが大きい場合には、連続発振されたレーザ光により良好な切断結果が得られるよう制御しつつ、切断速度Vが小さい場合には、良好な切断結果が得られる切断条件を容易に設定しながら、パルス発振されたレーザ光により切断が行われるよう制御できる。
【0080】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、
図3に、本発明の一実施形態であるレーザ制御装置30及びレーザ光切断装置Sの電気的構成を示したが、
図5に示した機能を実現できるものであれば、その電気的構成は
図3に示したものに何ら限定されるものではない。
【0081】
上記実施形態では、ワークAに照射されるレーザ光の照射位置の移動速度を検出して、レーザ制御装置30に入力し、その移動速度が入力条件の1つである切断速度Vとして入力条件設定手段105により設定される場合について説明した。これに対し、使用者がタッチパネル37又はロボットペンダント23等の入力装置を操作して、予めワークAの切断速度Vを入力できるように構成しておき、その入力された切断速度Vが、パルス発振されるレーザ光の入力条件として、入力条件設定手段105により設定されるようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、本発明のレーザ制御装置を、多関節ロボットにて構成されるレーザ切断装置に搭載した場合について説明したが、多関節ロボット以外のロボットによるロボット加工機、X−Y−Z3軸制御加工機、又は、5軸制御加工機などのあらゆるレーザ切断装置に対して、本発明のレーザ制御装置を搭載可能である。