(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1]代表的な実施形態
(構成)
以下、
図1〜
図8を参照して、本発明に係る代表的な実施形態の構成について説明する。本実施形態は、本発明に係るバスバー接合構造を採用してコイルにバスバーを接合したリアクトルである。
【0014】
図1は本実施形態の斜視図である。
図1に示すように、リアクトル100には、ケース2と、ケース2を上から覆うカバー50とが設けられ、これらケース2とカバー50の内部に、リアクトル本体1が収納されている。リアクトル本体1には、樹脂製の被膜19(
図2、
図3及び
図6に示す)に被覆された連結コイル6a,6bが設けられている。連結コイル6a,6bの端部には被膜19が剥離される被膜剥離部11,12が設けられている。
図1〜
図4及び
図6に示すように、符号11が連結コイル6a,6bの巻き始めの端部における被膜剥離部、符号12が連結コイル6a,6bの巻き終わりの端部における被膜剥離部である。
【0015】
図1及び
図4に示すように、リアクトル本体1とケース2とは、各樹脂成型品に一体化された支持金具18と、ボルト23等の固定部材によって互いの相対位置が変化しないように定位置で固定されている。また、カバー50は、ケース2の開口部を覆う蓋状の部材であり、その周囲にはケース2の側壁に接する側壁を設けている。
【0016】
[バスバー]
図1、
図2及び
図4に示すように、カバー50には3本のバスバー611〜613が埋設されている。バスバー611〜613は、連結コイル6a,6bを外部電源等の外部機器(不図示)に接続するための板状の導電部材であり、例えば銅やアルミニウム等からなる。バスバー611〜613が、連結コイル6a,6bの端部に形成される被膜剥離部11,12と溶接されることで、両者が電気的に接続される。
【0017】
バスバー611〜613の配置構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図2は、カバー50と連結コイル6a,6bとバスバー611〜613との分解斜視図である。
図2に示すように、バスバー611は、連結コイル6bの巻き始めの被膜剥離部11とカバー50に形成された端子台641(
図1ではカバー50の上側左寄り、
図2ではカバー50の右側)とを結ぶ略直線状の部材であり、リアクトル本体1の長辺と平行に埋設されている。
【0018】
バスバー612は、連結コイル6aの巻き終わりの被膜剥離部12とカバー50に形成された端子台642(
図1ではカバー50の上側右寄り、
図2では端子台641の左隣)とを結ぶクランク状の部材であり、バスバー611に沿ってリアクトル本体1の長辺と平行に埋設されている。そのため、カバー50の表面部分では、バスバー611とバスバー612の埋設部分が盛り上がっている。
【0019】
バスバー613は、連結コイル6bの巻き終わりの被膜剥離部12と連結コイル6aの巻き始めの被膜剥離部11、及びカバー50に形成された端子台643(
図1では端子台642の左下、
図2では端子台642の左側)と端子台644(
図1ではカバー50の下側右寄り、
図2ではカバー50の左側)とを結ぶ部材であり、連結コイル6bの巻き終わりの被膜剥離部12と端子台644が近接していることから、全体として略T字形をした部材である。そのため、カバー50の表面は、バスバー613の形状に合わせてT字形に盛り上がっている。
【0020】
バスバー611,612において、長手方向に延びる部分の一方の端部には、連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12との接続部71が設けられ、長手方向に延びる部分の他方の端部には外部配線との接続部61bが設けられている。T字形のバスバー613において、T字の横棒部分の一方の端部から直角に曲げた辺部の端部及びT字の縦棒部分の端部には、連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12との接続部71が設けられている。また、T字形のバスバー613において、T字の横棒部分の一方の端部及びT字の縦棒部分の端部には外部配線との接続部61bが設けられている。つまり、バスバー613には接続部61bが2つ設けられており、バスバー611,612の接続部61bと合わせると、接続部61bは4つ設けられている。これら4つの接続部61bにはそれぞれ、バスバー611〜613と外部配線をねじ止めするための貫通孔61cが設けられている。各バスバー611〜613の貫通孔61cが、カバー50側の端子台641〜644に設置される。
【0021】
各バスバー611〜613における接続部71と接続部61bは、カバー50の表面に露出されており、バスバー611〜613における接続部71と接続部61b間の導体部分によって形成された回路パターンがカバー50内に埋設される。このようにして、3本のバスバー611〜613は、カバー50と一体的に設置されている。
【0022】
[バスバー接合構造]
図3は、本実施形態の要部拡大斜視図である。前記の
図2でも述べたように、バスバー611〜613の端部には、連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12と接続する接続部71が設けられている。
図3に示すように、接続部71は、連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12と向かい合っており、上縁部を含めて周囲部分が溶接されるようになっている。
図3に示す符号73が溶接部を示している。接続部71は、連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12と同じ幅寸法で向かい合うように配置されている。
【0023】
各バスバー611〜613には、接続部71に連続して形成され、接続部71から一体的に下方に延びる根元部72が設けられている。つまり根元部72は、接続部71をバスバー611〜613の先端側に保持するようになっている。根元部72には、接続部71と接する部分に、屈曲部72aが設けられており、この屈曲部72aがあることで、根元部72が接続部71に対して鋭角に角度を付けて設けられている。屈曲部72aは被膜剥離部11,12に近接して配置される。
【0024】
すなわち、根元部72は、接続部71側の端部を根元部72の先端部とし、根元部72の長手方向において先端部と反対側の端部を根元部72の基端部として、この基端部が、連結コイル6a,6bの端部の厚み方向で且つ連結コイル6a,6bの端部から遠くなる方向に離れて配置されることになる。これにより、根元部72は、接続部71側から根元部72の基端部方向に向かって、被膜剥離部11,12から離れるように傾斜するように構成される。
【0025】
このとき、根元部72の傾斜部分は、連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12から始まるようになっている。つまり、根元部72の屈曲部72aが被膜剥離部11,12に近接して配置されることで、根元部72の傾斜部分が被膜剥離部11,12と被膜19との境界に配置される。このような接続部71及び根元部72は、一体的に形成される板状の部材から構成される。
【0026】
[リアクトルの全体構成]
リアクトル100の全体的な構成を説明する。
図4は、リアクトル100の分解斜視図である。
図4では、リアクトル100を、大きく4つの部分、すなわちリアクトル本体1と、ケース2と、充填材3と、カバー50と分割した状態を示している。なお、バスバー611〜613は、本来、カバー50側に埋設される部材であるが、ここでは連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12との接合状態を示すためにリアクトル本体1側に配置している。
【0027】
[リアクトル本体]
リアクトル本体1は、2つの長辺と2つの短辺とを有する角丸長方形(角が丸くなっている長方形)をしており、ケース2もリアクトル本体1に合わせて上面が開口した直方体をしている。リアクトル本体1は、
図4に示す通り、θ状の環状コア9と、環状コア9の脚部に巻回された2つの連結コイル6a,6bとを備えている。
【0028】
[環状コア]
リアクトル本体1を構成する環状コア9について、
図5を用いて説明する。
図5に示すように、環状コア9は、2つのU字形コア4a,4bと2つのT字形コア5a,5bを組み合わせて成る。すなわち、環状コア9は、U字形コア4a,4bの両端部とT字形コア5a,5bの左右の端部を突き合わせ、その間に接着剤8を塗布して接着すると共に、対向するT字形コア5a,5bの中央突起部7a,7b間に所定のギャップ10が形成されるように組み合わせている。
【0029】
これにより、環状コア9には、対向する一対のヨーク部と、ヨーク部と平行に設けられた中央の中脚と、中脚の両側にそれぞれ設けられた一対のコイル6a,6b装着用の脚部(以下、外脚という)が形成されている。U字形コア4a,4b及びT字形コア5a,5bとしては、ダストコアを使用してもよい。
【0030】
また、U字形コア4a,4b及びT字形コア5a,5bとしては、その他フェライトコアやケイ素鋼を積層した積層コアを単独あるいは組み合わせて用いてもよい。さらに、接着剤8を塗布する部分にスペーサを設けてもよい。ギャップ10に関しても、エアギャップであっても良いし、スペーサを設けたギャップでも良い。
【0031】
[連結コイル]
リアクトル本体1を構成する連結コイル6a,6bについて、
図6を用いて説明する。
図6に示すように、各連結コイル6a,6bは、1本の導体を使用して2つのコイル6a−1,6a−2または6b−1,6b−2を形成している。コイル6a−1,6a−2または6b−1,6b−2の連結部63は、コイルの巻軸方向と垂直な面において、平角線が同一平面上で連結されている。このような連結コイル6a,6bが、U字形コア4a,4bの外脚を構成する部分に、中脚を挟んでその両側にそれぞれ装着される(前記
図4参照)。
【0032】
連結コイル6a,6bは、環状コア9に装着した状態では、1本の導体が一方の外脚の外周に巻回されて第1のコイル6a−1,6b−1を形成し、同じ導体が反対側の外脚に巻回されて第2のコイル6a−2,6b−2を形成している。そのため、
図4に示すように、1つのコイル6a,6bの巻き始めの被膜剥離部11と巻き終わりの被膜剥離部12が、中脚の両側に一つずつ設けられている。
【0033】
連結コイル6a,6bとしては、各種の導体を巻回したものを使用することができるが、本実施形態では、平角線の導体をエッジワイズ巻きしたエッジワイズコイルを使用する。各連結コイル6a,6bの巻き始めと巻き終わりの被膜剥離部11,12は、コイル6aのように中脚側に設けても良いし、コイル6bのようにヨーク部側に設けても良いものであって、2つのコイル6a,6bの両方を中脚側かヨーク部側のいずれかに設けても良い。
【0034】
連結コイル6a,6bは、そのコイル6a,6bから発生する直流磁束が互いに打ち消される方向で巻回されている。連結コイル6a,6bから発生する直流磁束が互いに打ち消される方向で巻回するため、本実施形態では、コイルに通電する電流の方向を同一とし、コイルの巻回方向を逆にしているが、コイルの巻回方向は同一とし、通電する電流の方向を反対にしても良い。連結コイル6a,6bは、樹脂成型品に埋設されたU字形コア4a,4bとT字形コア5a,5bをθ状に接着する際に、予め筒状に巻回した連結コイル6a,6bを外脚に嵌め込むことにより、コアに巻回されている。
【0035】
連結コイル6a,6bは、連結コイル6a,6bから発生する直流磁束が互いに打ち消される方向で巻回される。また、連結コイル6a,6bは、リアクトル本体1の外周における磁束密度が、リアクトル本体1の長辺方向において、リアクトル本体1を挟んで位置する2つの空間にて低くなるように、環状コア9に装着されている。すなわち、環状コア9には中脚が形成されていることから、リアクトル100の通電時には、環状コア9の短辺であるヨーク部の周辺において磁束密度が低くなっている。
【0036】
[樹脂成型品]
環状コア9において、U字形コア4a,4bとT字形コア5a,5bは、それぞれ専用の樹脂成型品内部に埋設されている。これらのコア4a,4b、5a,5bは、それぞれの樹脂成型品の金型内にセットされた状態で金型中に樹脂を注入・固化することにより、樹脂成型品と一体的に形成されている。
【0037】
樹脂成型品は、各コア4a,4b、5a,5bと連結コイル6a,6bとを絶縁する部材であると共に、リアクトル本体1をケース2に固定するための支持部材を固定した部材でもある。樹脂成型品の主材料としては、例えば、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、BMC(バルクモールディングコンパウンド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタラート)等を用いることができる。
【0038】
図7を用いて、U字形コア4a,4bを覆うU字形コア用の樹脂成型品13について説明する。
図7に示すU字形コア4a用の樹脂成型品13は、U字形コア4aの左右の脚部を覆うコイル装着部15と、U字形コア4aのヨーク部を覆うヨーク被覆部16とを備える。コイル装着部15におけるU字形コア4aとT字形コア5aとの接合面に相当する部分には、U字形コア4aの端面が露出する開口部が設けられ、この開口部の周囲にはT字形コア用の樹脂成型品14aの端部を挿入するためのリブ17が設けられている。
【0039】
ヨーク被覆部16の上部におけるリアクトル本体1の幅方向中央部には、リアクトル本体1をケース2に固定するための板状の支持金具18の基部が固定されている。板状の支持金具18の基部は、U字形コア4a用の樹脂成型品13の成型加工時に、U字形コア4aと共に金型内にセットされ、モールド成型される。なお、U字形コア4b用の樹脂成型品13も、以上の樹脂成型品13と同様の構成である。
【0040】
図8を用いて、T字形コア5a,5bを覆うT字形コア用の樹脂成型品14について説明する。
図8に示すように、T字形コア5b用の樹脂成型品14は、T字形コア5bの脚部を覆うコイル装着部19と、T字形コア5bの中央突起部7bを覆う中脚被覆部20とを備える。コイル装着部19におけるU字形コア4b側の端面は、内部のT字形コア5bの端面が露出する開口部になっている。この開口部の周囲には、U字形コア4b用の樹脂成型品13に設けたリブ17が嵌合する凹部21が形成されている。
【0041】
T字形コア5bの中央突起部7bの端面は、ギャップ10を介してT字形コア5aの中央突起部7aの端面と対向するため、中脚被覆部20のこの部分はT字形コア5bの端面全体を被覆している。ギャップ10の代わりにスペーサを用いてギャップを形成したり、全くギャップを形成しない場合には、中脚被覆部20に開口部を設けて中央突起部7bの端面を露出させても良い。
【0042】
T字形コア5b用の樹脂成型品14の中脚被覆部20の反対側には、リアクトル本体1をケース2に固定する際に、固定部材であるボルト23(
図1に図示)を挿入する筒状のカラー22が埋設されている。この筒状のカラー22は、U字形コア用の樹脂成型品13の成型加工時に、U字形コア4a,4bと共に金型内にセットされ、モールド成型される。T字形コア5a用の樹脂成型品14も、以上の樹脂成型品14と同様の構成である。
【0043】
U字形コア用の樹脂成型品13と、T字形コア用の樹脂成型品14とは、各コアの突き合わせ部分を除き各コアの周囲を被覆するものである。ただし、各コアや支持金具を金型内に位置決めするための治具を使用する必要がある。そのため、治具に相当する部分には、樹脂が存在しない開口部を形成しており、その部分には各コアの表面を露出している。
【0044】
[ケース]
ケース2は、熱伝導性の高い金属で形成され、リアクトル本体1を収容するとともにリアクトル本体1から発生する熱の放熱部材としての機能を有する。ケース2を形成する、熱伝導性の高い金属としては、アルミニウムやマグネシウムを用いることができる。また、ケース2は、必ずしも金属である必要はなく、熱伝導性に優れた樹脂や、樹脂の一部に金属製の放熱板を埋設したものを使用することも可能である。
【0045】
[充填材]
ケース2とリアクトル本体1との間には所定の大きさの隙間が設けられており、この隙間に、
図4に示す充填材3が、充填、固化される。充填材3としては、固化しても多少の弾力性を有する樹脂を使用することが望ましい。例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等の放熱用の材料を混入したエポキシ系、ポリアクリレート系、シリコーン系の樹脂製ポッティング剤をその硬化度を調整することで使用できる。
【0046】
(作用と効果)
以上のような本実施形態では、バスバー611〜613が、連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12を接続する接続部71と、この接続部71を保持し、且つ連結コイル6a,6bからバスバー611〜613が離れるように角度をつけた屈曲部72aを有する根元部72と、を備えたことにより、次のような作用と効果がある。
【0047】
[溶接強度の向上]
バスバー611〜613の根元部72は、屈曲部72aを設けることで、連結コイル6a,6bからバスバー611〜613が離れるように斜めに角度をつけている。そのため、連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12とバスバー611〜613の接続部71とを接触させる時、連結コイル6a,6bの被膜19に厚みがあったとしても、被膜19の厚みに関係なく、連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12とバスバー611〜613の接続部71とを強く密着させることができる。
【0048】
しかも、本実施形態では、連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12とバスバー611〜613の接続部71とは互いに傾斜させていないので、両者の接触面積を大きく取ることができ、溶接する範囲が「点」となることがない。このような本実施形態によれば、溶接部73は強い溶接強度を確保することができ、リアクトル100としての性能が安定する。
【0049】
[溶接作業の効率向上]
また、接続部71及び根元部72は、一体的に形成される板状の部材からなり、連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12と平行に配置している。また、バスバー611〜613では根元部72の屈曲部72aが、連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12と向かい合っている。このような配置構成では、根元部72の屈曲部72aから傾斜が始まる(
図3参照)。
【0050】
したがって、根元部72は、接続部71を連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12側へと押し付けるように働き、両者の密着性は高まる。その結果、連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12と接続部71とを強く締め付けるクランプ作業を省くことが可能となり、溶接作業の効率が向上する。
【0051】
[溶接熱によるダメージの回避]
本実施形態では、根元部72の屈曲部72aが、連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12から始まるので(
図3参照)、根元部72の屈曲部72aが被膜剥離部11,12に近接して配置され、根元部72の傾斜部分は被膜剥離部11,12と被膜19との境界に配置される。このような根元部72の傾斜部分が存在することで、連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12は、バスバー611〜613の根元部72から十分に離れることができる。
【0052】
したがって、被膜剥離部11,12と被膜19の境界に発生する被膜19の厚みにより被膜剥離部11,12とバスバー611〜613の密着性が阻害されることを、確実に防止することができる。その結果、連結コイル6a,6bの被膜19は、溶接による熱の影響を受け難くなり、被膜19が劣化する心配がない。これにより、バスバー611〜613は、溶接熱によるダメージを回避することが可能となり、信頼性が向上する。
【0053】
[連結コイルの被膜損傷防止]
バスバー611〜613の端部である接続部71は、垂直に立ち上げられているため、ケース2にカバー50を上から被せようとしたとき、バスバー611〜613の接続部71が連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12に当たり、連結コイル6a,6bの被膜19を削る等、傷つけてしまうおそれがある。
【0054】
しかし、本実施形態では、バスバー611〜613の根元部72に角度をつけたので、ケース2に対してカバー50を、斜め上から水平方向にスライドさせながら被せることができる。このため、バスバー611〜613の接続部71が連結コイル6a,6bの被膜剥離部11,12に当たることがない。したがって、連結コイル6a,6bの損傷を防ぐことができ、作業効率が向上する。
【0055】
[2]他の実施形態
本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。例えば、上記実施形態に開示された複数の構成要素を適宜組み合わせて、種々の実施形態を構成することが可能である。また、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0056】
例えば、バスバー611〜613の根元部72は、コイルから当該バスバー611〜613が離れるように角度をつけていればよく、その角度は適宜変更可能である。具体的には
図9に示すように、L字状であってもよい。このような実施形態でも、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
本発明のバスバーは、大電流用のものに限定されず、小電流用の可撓性の導体、細い単線や、より線も含むものとする。また、バスバーの端部ではなく、コイルの端部が、バスバーから離れるように角度をつけて配置するようにしてもよい。
【0058】
カバー50に設置されるバスバーの本数や形状は、図示のものに限定されない。バスバーの本数は、コイルの数によって適宜変更可能である。特に、本実施形態では、環状コアに装着するコイルとして、2つのコイルを1つの導体によって作製した連結コイル6a,6bを使用したので、コイル数に比較してその端部の数が少ないが、連結コイルを使用しない場合には、より多くのコイル端部が存在することになる。したがって、コイル端部同士を接続する必要があり、それに合わせてバスバーの数やその形状も適宜変更可能である。バスバーの導体部分を樹脂成型品内にすべて埋設することが好ましいが、一部のみ埋設しても良い。また、カバーを構成する樹脂成型品内に溝を形成しておき、そこにバスバーを嵌め込むことでカバー50に保持させるようにしてもよい。
【0059】
コアに巻回するコイル6a,6bの形状も適宜変更可能であり、θ状のコアの左右の脚部にそれぞれコイル6a,6bを巻回するものや、θ状のコアのヨーク部分にコイル6a,6bを巻回しても良い。円形あるいは角形のループ状のコアを使用した場合には、左右の脚部のそれぞれにコイル6a,6bを巻回しても良いし、2つの脚部の一方のみにコイル6a,6bを巻回しても良い。
【0060】
樹脂成型品としては、内部にコアをインサート成型するものの他に、中空になった筒状あるいは箱状の樹脂成型品のみを予め作製し、その内部にコアを嵌合するものや接着剤で固定するものも使用しても良い。また、分割コアの接合後において、環状になったコアを樹脂成型品内部にインサート成型したり、組み込むこともできる。
【0061】
ケース2とカバー50とを固定する部材としては、ボルトなどのねじ止めに限定されず、リベットやピンの圧入、カバー50またはケース2に設けた突起を相手方の孔や凹部に圧入するなど、種々の構成を採用しても良い。コイル被膜剥離部11,12とバスバーの接続も溶着に限らず、コネクタを使用したり、ボルト・ナットなどのねじ止めでも良い。バスバーと外部配線との接続も、ボルト・ナットに限定されない。コネクタや溶着によっても良い。
【0062】
図示の実施形態では、ケース2にカバー50を固定して、コイル端部とバスバーの溶接後に充填材を注入したが、ケース2にリアクトル本体1を収容した状態で充填材を注入・固化してから、カバー50の固定及びバスバーとコイル端部の溶着を行うこともできる。
【0063】
カバー50の材質は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)のように、環状コアを被覆する樹脂成型品と同一のものでも良いし、バスバーや周囲の温度で破損しない材料であれば他の樹脂を使用しても良い。カバー50を透明な樹脂から構成した場合には、内部のバスバーにより構成される回路パターンやリアクトル内部の状態を確認できる利点がある。
【0064】
図示の実施形態は、リアクトル本体1の収容部材としてケース2を使用したが、必ずしもリアクトル本体をケースに固定する場合にのみ限定されるものではない。リアクトル全体をカバーで覆い、設置面を設けてカバーと共に固定してもよい。また、板状あるいはブロック状の部材にリアクトル本体を固定して、全体をカバーで覆ってもよい。その場合、カバーに設けるバスバーにより構成される回路パターンはリアクトルの上面でなく、側面に設けてもよい。