【実施例】
【0041】
(実施例1)
Wnt3aは、高齢動物に由来する骨移植片に対して骨形成能を再確立する
加齢に伴う骨髄の脂肪変性は、老齢者における骨折治癒の遅延および骨粗鬆症関連骨折に寄与する。この脂肪変化の根底をなす機構は、高齢骨髄腔内のWntシグナル伝達レベルと関連する可能性がある。若齢では、長骨は、ヘムに富む骨髄で満たされているが、年齢と共に、脂肪性骨髄で置きかえられる。骨髄の加齢に伴う脂肪変性は、老齢者における骨格治癒の遅延および骨粗鬆症関連骨折と強く関連し、これは、生物医学的負荷の増大を構成する。結果として、骨髄の、主に脂肪性の組織への転換を理解しようと、多大な努力がなされている。この骨髄の脂肪変性は、骨形成潜在能の喪失と並行して生じ、これは、骨髄を、骨移植の目的で、臨床的に使用する場合に明らかとなる。
【0042】
患者自身の骨および骨髄は、「ゴールドスタンダード」と考えられているが、患者が老齢者である場合、これらの自家移植片は、多くの場合、不適切である。骨髄腔には、少なくとも複数の、顕著に異なる幹細胞集団/前駆細胞集団であって、間葉系幹細胞(MSC)を含む細胞集団が存在する。MSCは、in vitroで培養されると、軟骨細胞、骨細胞、脂肪細胞、および筋細胞を発生させうるが、骨髄腔内に存在するMSC自体は、骨形成または脂肪形成系統だけに分化し、ますます多くの証拠により、この脂肪形成−骨形成運命の決定は、ベータカテニン依存性のWntシグナル伝達により調節されることが示されている。例えば、Wnt LRP5受容体内の活性化変異により、Wntシグナル伝達を増強すると、ヒトにおいて、高骨量の表現型がもたらされる。in vitroでは、この同じ活性化変異は、ヒト間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化を抑圧する。他方、例えば、溶骨性疾患である多発性骨髄腫における、Wntシグナル伝達の低減は、侵襲性の骨喪失、および造血を犠牲にした、骨髄における脂肪形成の共時的な増大と関連する。まとめると、これらの観察は、Wntシグナル伝達が、骨形成の刺激および脂肪形成の阻害において、肯定的な役割を果たすという仮説を裏付ける。
【0043】
トランスジェニックマウスを、同系骨移植片モデルと共に使用して、生着に関与する細胞の運命を追跡した。免疫組織化学を、定量的アッセイと共に使用して、若齢マウスおよび高齢マウスに由来する骨移植片内のWntシグナル伝達ならびに脂肪形成遺伝子および骨形成遺伝子の発現を評価した。リポソームWnt3aタンパク質(L−Wnt3a)を、それが、マウスおよびウサギにより創出された臨界サイズ欠損モデルにおける高齢骨移植片に対して骨形成潜在能を回復させる能力について調べた。X線撮影、micro−CTの再構成、組織学、および組織形態計測による測定を使用して、L−Wnt3a処置または対照であるL−PBS処置から生じる骨治癒を定量化した。骨移植片の遺伝子発現プロファイリングにより、老化は、骨形成プロファイルから遠ざかり、脂肪形成プロファイルへと向かうシフトと関連することが裏付けられた。この加齢に伴う脂肪形成へのシフトには、高齢動物に由来する骨移植片内の、Wnt発現およびWnt活性の有意な低減(p<0.05)が随伴した。
【0044】
トランスジェニックマウスを、同系骨移植片モデルと共に使用して、生着に関与する細胞の運命を追跡した。免疫組織化学を、定量的アッセイと共に使用して、若齢マウスおよび高齢マウスに由来する骨移植片内のWntシグナル伝達ならびに脂肪形成遺伝子および骨形成遺伝子の発現を評価した。リポソームWnt3aタンパク質(L−Wnt3a)を、それが、マウスおよびウサギにより創出された臨界サイズ欠損モデルにおける高齢骨移植片に対して骨形成潜在能を回復させる能力について調べた。X線撮影、微量定量コンピュータ断層撮影(micro−CT)の再構成、組織学、および組織形態計測による測定を使用して、L−Wnt3a処置または対照物質(リポソームリン酸緩衝食塩液[L−PBS])から生じる骨治癒を定量化した。
【0045】
骨移植片内の細胞の遺伝子発現プロファイリングにより、年齢と共に、骨形成遺伝子プロファイルから遠ざかり、脂肪形成のものと向かうシフトが裏付けられた。この加齢に伴う脂肪形成へのシフトには、Wntシグナル伝達の有意な低減(p<0.05)および骨形成潜在能の喪失が随伴した。大型動物モデルおよび小型動物モデルのいずれにおいても、幹細胞因子であるWnt3aを伴う、短時間のインキュベーションにより、高齢骨移植片に対して骨形成能力を回復させた。加えて、リポソームWnt3aにより、骨移植片内の細胞死が有意に低減される結果として、対照と比較して有意により骨性の再生物がもたらされた。
【0046】
高齢患者に由来する骨移植片を再活性化するための、有効で、臨床的に適用可能な、再生医療ベースの戦略では、リポソームWnt3aにより、細胞の生存が増強され、高齢動物に由来する骨移植片の骨形成能が再確立される。
【0047】
材料と方法
動物:全ての手順は、Stanford Committee on Animal Researchにより承認された。Axin2
LacZ/+マウスについては、記載されている。ベータ−アクチン増強緑色蛍光タンパク質(ACTB−eGFP)トランスジェニックマウス(The Jackson Laboratory、Sacramento、California)は、骨内、骨髄内、および他の関与性の細胞集団内のGFPの頑健な発現レベルのために選択した。ACTB−eGFPトランスジェニックマウスを、Axin2
LacZ/+マウスと交配させて、Axin2
LacZ/+マウス、Axin2
LacZ/+/ACTB−eGFPマウス、ACTB−eGFPマウス、および野生型(WT)マウスを得;12〜16週齢のマウスを、若齢と考え、40週齢を超えるマウスは、高齢と考えた。高齢(8カ月齢)のニュージーランドホワイトウサギも使用した。ウサギ1匹を、骨移植片ドナーとして用い、ウサギ9匹を、実験動物として用いた。
【0048】
マウスにおける骨移植:ケタミン(80mg/kg)およびキシラジン(16mg/kg)の腹腔内注射により、宿主マウス(雄だけ)に麻酔をかけた。3mmの切開を施して、頭頂骨を露出させ、マイクロダイセクション用穿頭器を使用して、直径を2mmとする、環状の全層欠損を創出したが、硬膜は攪乱させなかった。骨移植片を、大腿骨および脛骨から採取し、プールし、アリコートへと分割した。20μLずつのアリコートを、37℃、リポソームリン酸緩衝食塩液(L−PBS)またはリポソームWnt3aタンパク質(L−Wnt3a)(有効濃度=0.15μg/mL)を含有する10%のウシ胎仔血清(FBS)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)10μL中でインキュベートする一方で、頭蓋冠欠損を調製した。骨移植片を、頭蓋冠欠損へと移植し、皮膚を閉止した。
【0049】
ウサギにおける骨移植:宿主ウサギに、グリコピロレート(0.02mg/kg)およびブプレノルフィン(0.05mg/kg)の皮下注射、ケタミン(35mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)の筋内注射、ならびにセファゾリン(20mg/kg)の静脈内注射で麻酔をかけ、1%〜3%のイソフルラン下で維持した。2.5cmの切開を施し、尺側縁を視覚化し、振動鋸(Stryker System 5、Kalamazoo、Michigan)により1.5cmの部分欠損を創出した。部分を、その骨膜組織と共に摘出した。骨移植片を、骨盤および大腿骨から採取し、プールし、アリコートへと分割した。およそ400mgずつのアリコートを、L−PBS(500μL)またはL−Wnt3a(有効濃度=0.5μg/mL)と組み合わせ、バックテーブル上の氷上で維持する一方で、宿主ウサギにおいて、尺骨欠損を創出した。骨移植片を、尺骨欠損へと移植し、筋肉および皮膚を閉止した。手順は、左右に実施した(すなわち、両側に、L−PBSまたはL−Wnt3aを施した)。この手法により、いかに遠隔なものであれ、骨移植片に、予期しない全身性の影響が及ぶ可能性を排した。
【0050】
ウサギ骨髄のin vitroでのWnt刺激:高齢ウサギに由来する骨髄を、L−PBSまたはL−Wnt3a(有効濃度=0.15μg/mL)と共に、37℃で12時間にわたりインキュベートした。全DNAについては、PicoGreen dsDNAキット(Life Technologies、Carlsbad、California)を使用することによりアッセイして、移植片が同等の細胞容量を有することを確認した。カスパーゼ活性については、標準的なキット(Roche Diagnostics、Indianapolis、Indiana)を使用することによりアッセイした。
【0051】
組織の調製:安楽死(各実験で指定された時点)の直後、筋肉、結合組織、および/または硬膜を含む、骨格の全要素を採取し、その表皮を除去し、4%のパラホルムアルデヒド中、4℃で12時間にわたり固定した。パラフィン中または最適切断温度(OCT)の化合物中に包埋する前に、試料を、19%EDTA(エチレンジアミン四酢酸)中で脱灰した。切片は、10μmの厚さとした。
【0052】
組織学解析、免疫組織化学解析、および組織形態計測解析:免疫組織化学は、既に記載されている通りに実施した。使用される抗体は、ウサギポリクローナル抗緑色蛍光タンパク質(抗GFP)(Cell Signaling Technology、Danvers、Massachusetts)、ウサギポリクローナル抗DLK1(EMD Millipore、Billerica、Massachusetts)、抗ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体−γ(抗PPAR−γ)(Millipore)、および抗Ki67(ThermoFisher Scientific、Waltham、Massachusetts)を含んだ。ブロモデオキシウリジン(BrdU)(Invitrogen、Camarillo、California)アッセイおよび末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼdUTPニック末端標識(TUNEL)(Roche Diagnostics)アッセイは、製造元の指示書に従い実施した。
【0053】
モバットペンタクローム染色、アニリンブルー染色、Xgal染色、およびアルカリホスファターゼ(ALP)染色は、既に記載されている通りに実施した。組織切片は、Leica DM5000Bデジタル画像化システム(Leica Microsystems、Wetzlar、Germany)を使用して写真撮影した。試料1例当たり最低5つずつの組織切片を、組織形態計測解析に使用した。
【0054】
微量定量コンピュータ断層撮影(micro−CT)解析:マウスに、2%のイソフルランで麻酔をかけ、40mmの分解能で、マルチモードポジトロン断層法−コンピュータ断層撮影データ収集システム(Inveon PET−CT;Siemens、Erlangen、Germany)を使用して走査した。データは、MicroViewソフトウェア(GE Healthcare、Chicago、Illinois)で解析した。三次元関心領域ツールを使用して、各試料について、構造および骨容量を割り当てた。
【0055】
再生骨容量画分(全骨容量を、再生骨容量で除することにより計算される百分率[BV/TV、%])の評価は、高分解能のmicro−CT(vivaCT 40;Scanco Medical、Bruettisellen、Switzerland)、ならびに70kVp、55μA、200ミリ秒の積分時間、および10.5μmのイソトロピックボクセルサイズを使用して実施した。関心領域は、2cmの長さであり、欠損の縁辺部の近位250μmから、欠損の反対側の縁辺部を越えた遠位250μmへと広がる(全直径を1.5cmとする)。骨は、1cm
3当たりのヒドロキシアパタイト275mgの閾値を使用して、軟組織から区分した。走査および解析は、公表されているガイドラインに準拠した。
【0056】
定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR):組織試料は、TRIzol溶液(Life Technologies)中でホモジナイズした。RNAを単離し(RNeasy;Qiagen、Germantown、Maryland)、逆転写は、既に記載されている通りに実施した(SuperScript III Platinum Two−Step qRT−PCR Kit、Life Technologies)。
【0057】
統計学的解析:結果は、平均+標準偏差として提示し、「n」は、解析される試料の数を意味する。データセット間の有意差は、両側スチューデントのt検定およびノンパラメトリックのウィルコクソン検定を使用して決定した。有意性は、p<0.05のときに達せられ、全ての統計学的解析は、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、California)により実施した。
【0058】
結果
骨髄移植片は、骨形成潜在能を有する:骨移植片材料の運命を追跡するために、本発明者らは、全骨髄を、ACTB−eGFPトランスジェニックマウスから採取し、等サイズのアリコートへと細分し(
図1−A)、次いで、同系宿主マウスの頭蓋冠内に創出された、非治癒性の、臨界サイズの骨格欠損へと移植した(
図1−B)。生存可能な移植細胞およびそれらの後代は、それらのGFP標識により、損傷部位内で同定可能であった(
図1−C)。ドナーと宿主とが遺伝子的に同一でない場合、移植細胞の大半は死滅したが、この理由で、同系であり、免疫学的に適合性のドナー−宿主の組合せだけを使用した。
【0059】
移植後1日目には、GFP陽性細胞は、GFP陽性ドナーに由来する間質組織と共に、損傷部位を占有した(
図1−C)。5日目には、BrdU染色により、欠損部位内の細胞の頑健な増殖を確認した(
図1−D)。7日目には、GFP免疫染色により、移植細胞またはそれらの後代が、欠損部位に存続していることを確認した(
図1−Eおよび1−F)。移植細胞および/またはそれらの後代は最終的に、骨芽細胞へと分化し、欠損を治癒させ(
図1−Hおよび1−J)、骨移植片の非存在下では、欠損は治癒しないであろう(
図1−Gおよび1−I)。
【0060】
高齢骨移植片は、脂肪変性を呈示する:老化と共に、ヒト骨髄は、脂肪変性および骨形成潜在能の喪失を経る。マウスにおいて、同等な加齢に伴う変化が観察され、ここでは、マウス骨髄の巨視的な外見は、若齢動物における、ヘムに富み、脂肪を含まない組織から、高齢動物における脂肪性骨髄へと変化する。骨移植片を構成する不均質な細胞集団についての定量的RT−PCR解析により、若齢動物に由来する試料と比べて、高齢動物に由来する試料は、脂肪形成遺伝子である、脂肪酸結合性タンパク質4(Fabp4)(p<0.01)およびペルオキシソーム増殖剤活性化受容体ガンマ(PPAR−γ)(p<0.01)の有意に高度な発現を示すことが示された。この脂肪形成へのシフトと同時に、高齢マウスに由来する骨移植片はまた、骨形成遺伝子である、ALP(p<0.05)、オステオカルシン(p<0.01)、およびosterix(p<0.05)の発現レベルの有意な低減も示した。したがって、ヒトにおいて観察される骨髄の脂肪変性は、マウスにおいても、巨視的な形態レベルおよび定量可能な分子レベルの両方で反復されている。
【0061】
脂肪変性は、骨移植片内の骨形成潜在能の低減と関連する:若齢動物に由来する移植片の骨形成能と比較して、高齢動物に由来する移植片が発生させる新たな骨は、有意に少なかった(
図2−Aおよび2−B;2−Cで定量化されている;p<0.05)。この、加齢に伴う骨形成潜在能の低減は、生着効率の差異には直接帰せられなかった。GFP免疫染色を使用して、移植細胞を同定したところ、GFP陽性細胞の分布および数は、若齢マウスに由来する骨移植片と、高齢マウスに由来する骨移植片との間でほぼ同等であった(
図2−Dおよび2−E;2−Fで定量化されている)。加齢に伴う骨形成潜在能の変化はまた、移植片の拡大の差異にも帰せられなかった:BrdU取込み(
図2−Gおよび2−H)および増殖細胞核内抗原(PCNA)についてのqRT−PCR(
図2−I)の両方を使用したところ、本発明者らは、若齢動物に由来する骨移植片と、高齢動物に由来する骨移植片とで、ほぼ同等レベルの細胞増殖を見出した。
【0062】
本発明者らは、骨髄細胞における19種の哺乳動物Wnt遺伝子の発現レベルを評価したところ、高齢骨移植片の脂肪変性および骨形成潜在能の喪失についての基礎に対する洞察を得た。Wnt遺伝子のサブセットは、高齢動物に由来する骨髄内では、若齢動物と比較して弱く発現した(p<0.05;
図3−A)。このWnt遺伝子発現の低減は、Wntの直接的な標的遺伝子である、Tcf4、Lef1、およびAxin2の発現の有意な減殺(p<0.05;
図3−B)により測定される通り、Wnt応答性の低減と匹敵した。これらの結果は、Wntシグナル伝達が、高齢骨髄内で低減されることを裏付ける。
【0063】
L−Wnt3aは、高齢マウスに由来する骨移植片の骨形成能を回復させる:精製される最初のWntタンパク質は、Wnt3aであった。Wnt3aは、「正準な」経路またはベータ−カテニン依存性経路を介して作用し、周知の骨形成刺激である。高齢骨髄内でWntシグナル伝達が低減されることを踏まえ、本発明者らは、外因性Wntタンパク質の添加で、高齢動物に由来する骨移植片の骨形成潜在能を再確立するのに十分であるのかどうかという疑問を呈した。
【0064】
全ての脊椎動物Wntタンパク質は、疎水性であり、担体なしでは、疎水性のWnt3aは、急速に変性し、不活性となる。本発明者らは、疎水性のWnt3aを、脂質粒子内に封入することにより、このin vivoにおける送達の問題を解決した。このヒトWnt3aタンパク質の処方物である、リポソームWnt3a(L−Wnt3a)は、in vivoにおいて安定であり、改変骨折モデルにおける頑健な骨再生を促進する。外因的に適用されるWnt3aは、治療用タンパク質としての大きな潜在的可能性を有するが、安全性は、依然として主要な懸念である。高濃度の強力な増殖因子の、骨格損傷部位への送達は、これに、患者に対する潜在的な腫瘍学の危険性も伴う。増殖因子への、長期にわたる、または無制御の曝露と関連した問題を回避するため、本発明者らは、L−Wnt3aを、ex vivoで送達した。これは、レシピエント部位を調製する一方で、高齢骨移植片を、採取の直後に、L−Wnt3a(n=30)と共にインキュベートすることにより達成した。対照の骨移植片を、L−PBS(n=30)へと、同じ持続時間にわたり曝露した。
【0065】
L−PBSで処置された高齢移植片(
図4−A)と比較して、L−Wnt3aで処置された高齢移植片は、新たな骨形成の劇的な増強を示した(
図4−B)。7日以内に、L−Wnt3aで処置された移植片を施された欠損部位には、L−PBSで処置された移植片を施された部位の2倍の新たな骨がもたらされた(
図4−C)。12日目までに、L−Wnt3aで処置された移植片は、L−PBSで処置された移植片と比較して、1.5倍の新たな骨をもたらした(
図4−Dおよび4−E;4−Cで定量化されている)。
【0066】
骨髄由来幹細胞は、Wnt応答性である:骨移植片内のどの細胞集団が、Wntによる刺激に応答したのかに対する洞察を得るために、本発明者らは、骨髄の異なる画分を、Wnt応答性についてアッセイした。全骨髄では、Wnt応答性は、検出可能なレベルを下回った。本発明者らは、全骨髄を、非接着集団へと分離したが、ここでもまた、Wnt応答性は、検出限界を下回った(
図4−F)。しかし、結合組織前駆細胞を含有する接着集団
53、54では、Wnt応答性が検出された(
図4−F)。次いで、本発明者らは、確立されたプロトコールを使用して、付着集団に由来する骨髄幹細胞および/または骨髄間質細胞についてさらに濃縮した。CD45(−)、CD73(+)、CD105(+)、およびStro1(+)についての免疫染色を使用して、本発明者らは、この集団が、骨髄由来幹細胞について濃縮されることを確認した(
図4−G)。PBSで処置されたCD45(−)、CD73(+)、CD105(+)、およびStro1(+)細胞と比べて、Wnt3aで処置された集団は、Wnt応答性の10倍の増大を示した(
図4−H)。
【0067】
本発明者らはまた、Axin2
LacZ/+マウスに由来する骨髄のXgal染色を活用して、骨移植片内のWnt応答性もモニタリングした。高齢骨移植片内で見出されるXgal
+ve細胞は、極めて少数であった(
図4−I)が、若齢骨移植片内のXgal
+ve細胞は、極めて多かった(
図4−K)。曝露後におけるXgal
+ve細胞の増大により示される(
図4−J)通り、高齢骨移植片は、L−Wnt3aによる刺激に応答することが可能であった。マウス骨髄腔内の幹細胞の存在度は極めて低度であるため、Wnt応答性集団は、CD45(−)、CD73(+)、CD105(+)、およびStro1(+)集団の細胞をより多く含んだ可能性が高い。
【0068】
L−Wnt3aは、骨移植片内のアポトーシスを防止する:L−Wnt3aの頑健な骨誘導能は、本発明者らの研究を、大型動物の長骨モデルへと拡張するように促した。ヒトにおける場合と同様に、高齢ウサギも、それらの骨髄の脂肪変性を経験する。本発明者らは、臨界サイズの尺骨欠損モデルを活用し、L−PBSまたはL−Wnt3aと共にインキュベートされた高齢骨移植片を、欠損へと移植した。本発明者らはまず、骨移植片を採取すると、凝集物全体にわたり、広範なプログラム細胞死が見られる(
図5−A)ことに注目した。L−Wnt3aを添加することにより、この移植片のアポトーシスが有意に低減された(p<0.05)(
図5−B)。本発明者らは、カスパーゼ活性を、細胞のアポトーシスの尺度として活用して、L−Wnt3aのこの生存促進効果を検証した。L−Wnt3aにより、骨移植片の細胞内のカスパーゼ活性が有意に低減された(p<0.05;
図5−C)。
【0069】
L−Wnt3aは、高齢骨移植片の骨形成能を強化する:L−Wnt3aおよびL−PBSで処置されたウサギ骨移植片を、臨界サイズの欠損へと導入し、複数の時点で再生を評価した。4週でのX線評価により、L−Wnt3aで処置された移植片を施された部位内では、架橋性の仮骨の存在が明らかにされた(
図5−E)が、これに対し、L−PBSで処置された骨移植片を施された部位で示された仮骨形成は最小限であった(
図5−D)。
【0070】
8週では、micro−CT解析により、L−PBS骨移植片で処置された部位内のギャップの存続が裏付けられた(
図5−F)のに対し、L−Wnt3a骨移植片で処置された部位は、頑健な骨形成を呈示した(
図5−G)。組織形態計測解析により、骨容量および全容量で除した骨容量のいずれでも、2群間の有意差が確認された(
図5−H)。
【0071】
本発明者らは、骨再生物の質を評価した。対照(
図6−A)と比較して、L−Wnt3aで処置された損傷部位は、新たな骨で満たされた(
図6−B)。宿主ウサギの骨髄は、脂肪変性を生じ(
図6−C)、同様の外見は、L−PBSで処置された再生物でも見られた(
図6−D)。L−Wnt3aで処置された試料(
図6−E)では、宿主の骨髄は、対照動物において見られるのと同様レベルの脂肪変性を示したが、L−Wnt3a骨移植片に由来する再生物は、網状骨(
図6−F)であり、部分欠損部位内のその位置およびその網状の外見のいずれにおいても、既存の層板骨から識別可能であった。偏光下では、ピクロシリウスレッド染色により、L−Wnt3aで処置された骨移植片内で見出される成熟類骨組織(
図6−H)が、L−PBSで処置された骨移植片の線維性組織(
図6−G)から識別された。
【0072】
骨移植片内の幹細胞集団および/または前駆細胞集団:哺乳動物の骨髄腔は、複数の幹細胞集団および/または前駆細胞集団を支持する、機能的なニッチである。天然では不均質である、骨髄由来の骨移植片は、いくつかの幹細胞および/または前駆細胞を含む、複数の集団を含有する。しかし、これらの幹細胞および/または前駆細胞の、骨性再生物への寄与について、依然として未知である。複数の骨髄由来幹細胞集団は、Wnt応答性であり、確立されたプロトコールを活用して、本発明者らは、骨髄内の、少なくともCD45(−)、CD73(+)、CD105(+)、およびStro1(+)である幹細胞集団および/または間質細胞集団がWnt応答性であることを確認した(
図4)。
【0073】
Wntシグナル伝達および骨髄の加齢に伴う脂肪変性:in vitroでは、Wntシグナル伝達の消滅は、間葉系幹細胞を、脂肪細胞へと分化させるが、Wntシグナル伝達の強化は、間葉系幹細胞を、骨芽細胞へと分化させる。これは、直接的な臨床的関与性を有する:年齢と共に、ヒト骨髄は、脂肪変性を生じ、その骨形成潜在能を喪失する。本発明者らのデータは、この高齢骨移植片による骨形成潜在能の喪失が、部分的に、Wntシグナル伝達レベルの低減によることを示す:若齢マウスに由来する骨移植片と比較して、高齢骨移植片は、Wnt遺伝子発現およびWnt応答性の劇的な低減を示す(
図3)。L−Wnt3aを、高齢骨髄へと添加することにより、その骨形成の能力が再確立される(
図4、5、および6)。
【0074】
また、床上安静の延長など、運動の減少と関連する状態、および骨粗鬆症も、骨髄の脂肪変性と関連する。いくつかのデータは、少なくとも実験では、脂肪変性が可逆性であることを示唆する。明らかに、この変性についての基礎(および骨格内の加齢に伴う変化が低減されうる程度)を理解することは、老齢患者における骨損傷のための新たな処置の案出において、多大な重要性を持ちうるであろう。
【0075】
増殖因子により増進する骨再生:安全第一:近年、骨格の治癒を増進させる増殖因子の使用をめぐり、安全性の懸念が持ち上がっている。増殖因子による刺激は大部分、損傷部位内に存在する細胞の増殖を誘導すると考えられているが、無制御の増殖は、発がん性の形質転換に特徴的であるため、この増殖性のバーストは、空間的にも時間的にも制御しなければならない。この理由で、本発明者らは、L−Wnt3aへの全身曝露を制限する手法をデザインした。標的化される細胞は、骨移植片自体の中の細胞であり、これを、L−Wnt3aと共に、ex vivoでインキュベートする。次いで、活性化細胞(増殖因子自体ではなく)を、欠損部位へと再導入する。このex vivo法により、L−Wnt3aによる刺激が、空間的に(宿主組織ではなく、移植片自体に)、かつ、時間的に(Wntによる刺激への曝露は、インキュベーション時間中でだけ生じる)制限される。このex vivo法は、臨床的使用に応じて調整され、第2の手順を必要としない。したがって、Wntタンパク質を、脂質粒子へと封入することにより、骨格の損傷、とりわけ、治癒潜在能が低下した個体における損傷を処置するための実現可能な戦略が構成される。
【0076】
(実施例2)
自家骨移植片の、幹細胞活性化剤であるWNT3Aによるリエンジニアリング
自家骨移植は、骨欠損を処置するのに、最も一般に使用される手順であるが、老齢患者では信頼できないと考えられている。自家移植片の有効性は、材料内に存在する多能性幹細胞に由来し得る。老化により、これらの幹細胞の生存可能性および機能が弱まることから、骨癒合率は一定でなくなる。本発明者らは、自家移植片の有効性における加齢に伴う変化には、材料内の内因性Wntシグナル伝達の喪失が随伴することを示す。本発明者らは、Wnt阻害剤であるDkk1を過剰発現させることにより、内因性Wntシグナル伝達のこの喪失を模倣し、Wntシグナル伝達が、自家移植片の骨分化に必要であることを見出した。本発明者らは、ex vivoの薬物送達系を開発し、そこで、自家移植片を、WNT3Aタンパク質の安定化処方物中でインキュベートし、次いで、これを、in vivoに導入した。生物工学的に操作された(bioengineered)自家移植片は、受容部位内の生存の著明な改善を示した。WNT活性化自家移植片では、有糸分裂活性および骨分化は、自家移植片単独と比較して、著明に増強された。脊椎固定モデルでは、L−WNT3Aで処置された高齢自家移植片は、自家移植片単独と比較して、優れた骨形成の能力を示した。したがって、L−WNT3A中の短時間のインキュベーションは、自家骨移植の有効性を確実に改善し、これは、老齢者における患者ケアを著明に改善する潜在的可能性を有する。
【0077】
非癒合、遅延した癒合および後部頸椎固定のための最も一般的な処置は、自家骨移植または自家移植である。自家移植片は、大多数の症例で奏効するが、それらの骨を形成する(骨形成)能力についての基礎が完全に明確なわけではない。自家移植片とは、骨髄血液産物、結合組織性間質、骨性細胞外マトリックス、ならびに様々な造血系幹細胞集団、脈管系幹細胞集団、および骨形成性幹細胞集団の不均質な集合体であり、これらは、骨誘導性、骨伝導性(osteoconductive)、および骨形成性として、様々に記載されている。しかし、これらの用語は、細胞過程だけについて記載するものであり、自家移植片の骨形成能についての基礎に対する洞察をもたらすものではない。
【0078】
老齢の患者では、自家移植片は、信頼できるものとはならず、この変性状態には、複数の寄与因子が存在する可能性が高い。いくつかのデータは、自家移植片の骨形成能が、骨移植片材料内に含有される、幹細胞または前駆細胞の存在に依存し、幹細胞数は、部分的には、最終的には細胞周期の停止およびアポトーシスを結果としてもたらす、DNA損傷の蓄積のために、年齢と共に低下すると考えられることを示唆する。他のデータからは、年齢と共にもたらされるのは、幹細胞数の減少よりも、それらの機能の劣化であることが論じられる。高齢幹細胞はまた、それらの環境内の、増殖因子による刺激に対する応答性も小さく、同様に、老齢者では、これらの増殖因子による刺激の局所レベルまたは全身レベルも低下しうる。加齢はまた、幹細胞の有糸分裂能にも影響を及ぼし、幹細胞の老化は、部分的には、テロメラーゼ活性の低減、およびその後におけるテロメアの短縮のために、年齢と共に増大する。幹細胞機能のこれらの低減は、腸および筋肉などの組織の、正常では頑健な再生応答を制約する。老化はまた、幹細胞の有糸分裂能にも影響を及ぼす。同様の機構は、自家移植片の骨形成能の喪失の一因ともなりうる。
【0079】
本実施例では、本発明者らは、自家移植片の骨形成潜在能が、移植片材料内の骨形成性幹細胞に帰せられ、老化は、これらの幹細胞集団/前駆細胞集団のWnt応答性状態に影響を及ぼし、WNTに媒介される幹細胞の活性化により、老齢動物に由来する自家移植片に対して骨を形成する潜在能を回復させうるという仮説について調べた。
【0080】
方法
動物のケア:全ての手順は、Stanford Committee on Animal Researchにより承認されたプロトコールに従った。ベータ−アクチン増強緑色蛍光タンパク質(ACTB−eGFP;The Jackson Laboratory、Sacramento、California)およびCD1野生型同系マウスを使用した。マウス<3カ月齢を若齢と考え、マウス>10カ月間を高齢と考えた。Axin2
CreERT/+;R26RmTmG/+マウスは、Jackson Labsから購入した。高齢野生型Lewisラット(Charles Rivers、MA製の「引退した種畜」)は、AAUCガイドラインおよびIUPACガイドライン(プロトコール:13146)に従う脊椎固定術のために活用した。
【0081】
齧歯動物モデルのための、骨移植片材料(BGM)の回収および処置:この研究では、ラットおよびマウスの両方を使用した。マウスモデルの使用により、広範なスペクトルにわたる分子解析が可能となるが、自家移植片は、これらの小型動物には高度に侵襲性であるため、本発明者らは、自家移植を実施する場合は、ラットを使用し(例えば、
図7および12)、先進的な分子的技法を使用する場合は、同系マウスを使用した(
図8〜11)。全ての例において、骨移植片材料(BGM)は、骨を長手方向に引き裂き、骨内膜面を、鋭利な器具で静かにこすり取り、骨髄内容物を、回収ディッシュへと潅流することにより、大腿骨、脛骨、および腸骨稜から採取した。この方法では、ヒトにおいて使用されるRIA法を模倣した。
【0082】
Axin2
CreERT/+;R26R
mTmG/+マウスにおける組換えを誘導する(
図8)ため、動物に、連続5日間にわたるIP注射または強制経口投与を介して、体重1g当たり160μgのタモキシフェンを施した。組織は、最初の処置の7日後に採取し、GFP免疫染色または蛍光法により解析した。
【0083】
SRCへの移植のためのBGMアリコートが、細胞含量に関して同等であることを確実にするため、3匹のマウス(同腹仔)に由来するBGMをプールし、次いで、移植アッセイにおける場合とまったく同様に、20μLのアリコートへと分割した。DNA内容物は、DNeasy Tissue Kit(QIAGEN)により抽出し、相対DNA濃度は、Quant−iT PicoGreen dsDNA Kit(Invitrogen)およびマイクロプレート蛍光リーダー(BERTHOLD、Bad Wildbad、Germany)を活用して測定した。DNA含量のパーセント変動は、<20%であった。BGM
ACTを得るために、採取されたばかりのBGMを、リン酸緩衝食塩水(L−PBS)またはWNT3A(L−WNT3A、L−WNT3Aの有効濃度=0.15μg/mL)のいずれかのリポソーム処方物を含有する、20μLの培養培地中に入れ、23℃で1時間にわたり維持した。
【0084】
定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR):組織試料は、TRIzol溶液(Invitrogen)中でホモジナイズした。既に記載されている通りに、RNAを単離し(RNeasy;Mini Kit;QIAGEN、MD、USA)、逆転写を実施した(SuperScript III First−Strand Synthesis Supermix for qRT−PCR、Invitrogen)。定量的リアルタイムPCRは、Prism 7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)およびPower SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)を活用して実行した。遺伝子発現のレベルは、CT法およびそれらのGAPDH値に対する正規化により決定した。全ての反応は、三連で実施し、平均および標準偏差を計算した。プライマー配列(5’から3’へ)は、以下:Axin2:[for−TCATTTTCCGAGAACCCACCGC]、[rev−GCTCCAGTTTCAGTTTCTCCAGCC];Lef1:[for−AGGAGCCCAAAAGACCTCAT]、[rev−CGTGCACTCAGCTATGACAT];GAPDH:[for−ACCCAGAAGACTGTGGATGG[rev−GGATGCAGGGATGATGTTCT];ALP[for−ACCTTGACTGTGGTTACTGC、[rev−CATATAGGATGGCCGTGAAGG];Osterix:[for−GGAGACCTTGCTCGTAGATTTC]、[rev−GGGATCTTAGTGACTGCCTAAC];オステオカルシン:[for−TGTGACGAGCTATCAAACCAG]、[rev−GAGGATCAAGTTCTGGAGAGC]の通りである。
【0085】
ウェスタン解析:BGMを、若齢(N=5)マウスおよび高齢(N=5)マウスから採取し、次いで、10%のウシ胎仔血清(FBS)、100U/mLのペニシリン、および100μg/mLのストレプトマイシンを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に入れ、5%のCO2中、37℃でインキュベートした。24時間後、非接着細胞を除去し、培地を置きかえ、接着細胞を、それらがコンフルエンスに達するまで継代培養した。培地は、3日ごとに交換した。一部の実験では、継代3代目の後の細胞を、L−PBSまたはL−WNT3A(有効濃度=0.03μg/mL)で処置した。これらの実験では、細胞を24時間後に回収し、RIPA緩衝液(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO、USA)を活用して溶解させた。ウェスタン解析のために、全タンパク質を抽出した。汎アクチンを、内部対照として使用して、タンパク質の完全性を確実にした。WNT3Aに対する抗体(R&D、Minneapolis、MN、USA)、非リン酸化β−カテニンに対する抗体(Cell Signaling、Danvers、MA、USA)、およびAxin2に対する抗体(Abcam、Cambridge、MA、USA)を使用した。積分強度は、ImageJ(National institute of Health、USA version 1.47v)により解析して、ウェスタンブロット法による結果を定量化した。
【0086】
腎被膜下移植術:場合によっては、腎被膜下アッセイ(SRCA)を使用して、その分化能についてアッセイした。同系宿主マウスに麻酔を吸入させた後、胸郭に対してすぐの尾側の左脇腹に皮膚切開を施した。腹腔を開いて、腎臓を露出させた。腎被膜に小さな切開を施し、軟性プラスチックチューブを活用して、BGMを、被膜下に、注意深く入れた。次いで、腎臓を、腹腔へと戻し、腹膜および皮膚を、縫合糸により閉止した。麻酔のためには、ブプレノルフィン(0.05mg/kg)を使用した。BGMを、Axin2
CreERT2;R26
mTmGドナーから採取する場合は、その後、宿主に、0日目に開始して5日間にわたる強制経口投与(10mg/mLで100μL)により、タモキシフェンを施した。SRC移植片は、表示の時点に採取した。2.6 Wntシグナル伝達のアデノウイルスに媒介される阻害、DKK1および陰性対照であるFcのアデノウイルス構築物については、既に記載された。アデノウイルス構築物を、293T細胞へとトランスフェクトした。2日後、細胞を回収し、溶解させ、遠心分離により沈殿させた。精製アデノウイルスをアリコートにし、−80℃で保存した。Wntの阻害は、in vitroにおける、BGMの、Ad−Dkk1および対照Ad−Fcとの、2時間にわたるインキュベーションにより達成し、次いで、BGMアリコートを、頭蓋冠欠損へと移植した。
【0087】
頭蓋冠の臨界サイズ欠損術:マウスに麻酔をかけ、3mmの切開を施して、頭頂骨を露出させた。マイクロダイセクション用穿頭器を使用して、直径を2mmとする、環状の全層欠損を創出したが、硬膜は攪乱させなかった。BGMアリコートを、Ad−Dkk1および対照Ad−Fcと共に、2時間にわたりインキュベートした。次いで、BGMアリコートを、頭蓋冠欠損へと移植し、縫合糸により皮膚を閉止した。手術からの回復後、麻酔のために、マウスにブプレノルフィンを施した。micro−コンピュータ断層撮影(micro−CT)解析は、既に記載されている通りに実施した。
【0088】
脊椎固定術:70〜100mg/kgのケタミンと、5〜10mg/kgのキシラジンとのカクテルを活用して、Lewisラットに麻酔をかけた。次いで、ラットの腰部領域を剃毛し、Betadineに浸漬したガーゼで消毒した。皮膚を切開する前に、ラットに、麻酔剤である0.02mg/kgのブプレノルフィンをSC/IP注射した。まず、骨移植片材料(BGM)を、腸骨稜から採取した。略述すると、左腸骨棘を触診し、垂直方向の皮膚切開を施し、腸骨棘の背側稜にアクセスし、ブラントダイセクションにより露出させた。付着した筋肉および骨膜を持ち上げ、0.3gのBGMを、骨鉗子で採取し、少量に分配した。次いで、BGMを、100μLのL−PBSまたは100μL[0.15μg/mL]のL−WNT3Aと共にインキュベートする一方で、横突起を露出させた。横突起を露出させるために、後側部のブラントダイセクションを実行し、反射した傍脊柱筋を、開創器により、その場に保持した。L4〜L5にわたる横突起から、骨膜を取り除き、高速バーで皮質を除去した。BGMを、L4〜L5の横突起の上および間に塗布した。傍脊柱筋を、吸収性縫合糸(4−0 Vicryl)で閉止し、皮膚を、結節非吸収性縫合糸(4−0 Nylon)で閉止した。手術部位を、抗生剤軟膏で処置した。10mg/kgのBaytrilを、皮下送達した。ブプレノルフィン(0.02mg/kg)を、手術後3日間にわたり投与し、その後の用量は、疼痛をコントロールする必要に応じて施した。
【0089】
試料の調製、組織の加工、組織学:組織は、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)中、4℃で一晩にわたり固定した。試料は、19%のEDTA中で、1日間にわたり脱灰した。検体は、昇順のエタノール系列により脱水してから、パラフィン包埋した。8ミクロンの厚さの長手方向の切片を切り出し、組織学のために、Superfrost−plusスライド上に回収した。サフラニンO染色、アニリンブルー染色、およびゴモリ染色は、既に記載されている通りに実施した。組織切片は、Leica DM5000Bデジタル画像化システム(Leica Micro−systems、Wetzlar、Germany)を活用して写真撮影した。
【0090】
ALP染色、TRAP染色、およびTUNEL染色:アルカリホスファターゼ(ALP)活性は、ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(NBT;Roche、Indianapolis、IN、USA)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート(BCIP;Roche)、およびNTM緩衝液(100mMのNaCl、100mMのトリスpH9.5、5mMのMgCl)中のインキュベーションにより検出した。酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)活性は、製造元の指示書に従って、白血球酸性ホスファターゼ染色キット(Sigma、St.Louis、MO、USA)を活用して観察した。発色の後、スライドを、エタノールの系列中で脱水し、Citrisolv(Fisher Scientific)中で清浄化し、Permount封入剤(Fisher Scientific)でカバースリップ処理した。TUNEL染色のために、0.1%のTriton X−100(Sigma)および0.1%のクエン酸ナトリウム(sigma)を活用して、切片を透過処理し、TUNEL反応混合物(In Situ Cell Death Detection Kit、Roche)と共にインキュベートした。切片は、DAPI封入剤(Vector Labs、Burlingame、CA、USA)で封入し、落射蛍光顕微鏡下で視覚化した。ブロモデオキシウリジン(BrdU)アッセイのために、マウスに、BrdU標識化試薬(Invitrogen、CA、USA)の腹腔内注射を施し、注射の4時間後に安楽死させた。BrdUの検出は、製造元の指示書に従って、BrdU Staining Kit(Invitrogen、CA、USA)を活用して実行した。
【0091】
免疫組織化学:組織切片を脱パラフィンし、PBS中で再び湿潤化させた。内因性ペルオキシダーゼ活性を、3%の過酸化水素により、5分間にわたりクェンチングし、次いで、PBS中で洗浄した。スライドを、5%のヤギ血清(Vector laboratories)により、室温で1時間にわたりブロッキングした。適切な一次抗体を添加し、4℃で一晩にわたりインキュベートした。次いで、試料を、適切なビオチン化二次抗体(Vector Laboratories)およびアビジン(advidin)/ビオチン化酵素複合体(Vector Laboratories)と共にインキュベートし、DAB基質キット(Vector Laboratories)で発色させた。使用される抗体は、GFP(cell signaling)、ならびにDLK1(Millipore)、Runx2(Santa Cruz)、Sox9(Abcam)、およびPPAR−γ(Cell Signaling)を含む。
【0092】
移植片成長についてのmicro−CT解析および定量化:走査および解析は、公表されているガイドラインに準拠した。マウスに、2%のイソフルランで麻酔をかけ、40mmの分解能で、マルチモードポジトロン断層法コンピュータ断層撮影データ収集システム(Inveon PET−CT;Siemens、Erlangen、Germany)を使用して走査した。各試料内で生じた移植片成長を画定するために、時点POD2およびPOD49の走査データを、Osirixソフトウェアversion5.8(Pixmeo、Bernex、Switzerland)へとエクスポートし、セグメンテーションのために、同じ配向性で登録した。形成された新たな骨を、移植された初期のBGM容量と比較した。データセット間の差異は、XLStatソフトウェアバージョン(Addinsoft、Paris、France)内のマン−ホイットニー検定を活用することにより決定した。p値<0.05を、統計学的に有意と考えた。
【0093】
定量化および統計学的解析:GFP染色、BrdU染色、TUNEL染色、DLK1染色、オステオカルシン染色、およびアニリンブルー染色を定量化した。Photoshop CS5(Adobe、version10.0.1)を使用して、損傷部位における関心領域(ROI)内のピクセル数を決定した。magic wandツールを使用して、ROI内の陽性ピクセルの面積を割り当てた。陽性シグナルピクセルの、ROIピクセルに対する比を、百分率として表した。損傷部位にわたり等間隔を置いた、少なくとも5つの切片を定量化して、各試料の平均値を決定した。各群に5例ずつの試料を組み入れた(n=5)。結果は、平均±SDとして提示する。本稿で記載される通り、スチューデントのt検定を使用して、差異を定量化した。P≦0.05を、有意と考えた。
【0094】
結果
骨移植片材料は、複数の幹細胞集団/前駆細胞集団を含有する:自家移植片を採取するのに最適な解剖学的部位は、ドナー部位の罹患状態および骨備蓄の利用可能性を含む、多数の因子に依存する。本発明者らは、改変リーマー潅流吸引(RIA:reamer−irrigator−aspirator)法を活用して、BGMを、3カ所の解剖学的部位から採取したところ、大腿骨、腸骨稜、および脛骨は、組織学的外見が顕著に異なるBGMをもたらすことに注目した。造血細胞に加えて、大腿骨のBGMは、若齢動物から採取する場合であってもなお、脂肪細胞を含有した(
図7A)。腸骨稜のBGMは大部分、緊密な接着細胞で覆われた骨梁断片を含んだ(
図7B)。脛骨に由来するBGMは、大量の線維性間質、および小型の無核細胞(
図7C)を含有した。本発明者らは、定量的RT−PCRを使用して、内因性骨形成遺伝子の発現を評価し、3つの供給源のうち、腸骨稜のBGMが、アルカリホスファターゼおよびオステオカルシンを、有意に高レベルで発現することを見出した(
図7D)。一般に、自家移植片の骨形成特性は、骨移植片材料(BGM)内の幹細胞集団/前駆細胞集団および骨芽細胞に帰せられると広く考えられる。本発明者らは、BGMを、腎被膜下(SRC)アッセイへと移植することにより、この仮説について直接調べた。SRCは、移植された組織へと血管供給を提供し、細胞の、複数の種類の組織であって、骨、皮膚、筋肉、歯、器官、および腫瘍を含む組織への分化を支援する。BGMを、腸骨稜から採取し、次いで、動物の腎臓被膜下へと移植し(
図7A)、7日間にわたり発生させた。BrdUの取込みにより、自家BGM内の細胞の高度な有糸分裂活性が裏付けられた(
図7B)。Runx2(
図7C)、Sox9(
図7D)、およびPPARγ(
図7E)についての免疫染色により、BGM内細胞のサブセットは、骨形成、軟骨形成、および脂肪形成への拘束と関連した遺伝子マーカーを発現することが裏付けられた。7日目には、BGM由来細胞の部分集団は、骨(
図7F)、軟骨(
図7G)、および脂肪(
図7H)へと分化していた。まとめると、これらのデータにより、BGMは、3つの系統全てへと分化することが可能な幹細胞/前駆細胞を含有することが裏付けられた。
【0095】
骨移植片材料内のWntシグナル伝達は、年齢と共に減衰する:Wntは、骨分化を誘導する分子シグナルのうちで、最もよく研究されている。Axin2
CreERT2;R26m
TmGレポーターマウスを使用して、本発明者らは、組換えを誘導し(「方法」を参照されたい)、次いで、骨膜(
図8A)内および骨内膜(
図8B)内のGFP
+ve前骨芽細胞を同定した。骨内膜内のGFP
+ve細胞の頻度は、約0.1%であった(
図8C)。GFP
+ve細胞はまた、採取されたばかりのBGM内でも同定された(
図8D)。したがって、不均質なBGM内の細胞のサブセットは、Wnt応答性である。本発明者らは、若齢(<3カ月齢)マウスに由来するBGMのWnt応答性状態と、高齢(>10カ月齢)マウスに由来するBGMのWnt応答性状態とを比較した。定量的絶対RT−PCRにより、高齢マウス(BGM
aged)から採取されたBGM内では、Wntの標的遺伝子である、Axin2およびLef1の発現は、若齢マウス(BGM
young;
図8F)と対比して、ほぼ2分の1であることが裏付けられた。ウェスタン解析により、BGM
aged内のWnt3a、リン酸化ベータカテニン、およびAxin2の発現は全て、BGM
youngと比較して、有意に低度であることが確認された(
図8G)。したがって、BGMの内因性Wnt応答性状態は、年齢と共に劣化する。
【0096】
骨分化能もまた、年齢と共に低下する:ヒトでは、骨治癒速度は、年齢と共に低下する。本発明者らは、BGMの骨形成能の、同様な加齢に伴う低下を見出した。採取されたばかりのBGM
agedは、骨形成遺伝子である、アルカリホスファターゼ、Osterix、およびオステオカルシンの、採取されたばかりのBGM
youngと比較して、有意に低い発現レベルを示した(
図9A)。骨形成遺伝子の発現の低減が、BGMの骨形成能に影響を及ぼすのかどうかについて調べるために、本発明者らは、SRCアッセイへと戻った。しかし、マウスにおいて自家移植を実施することは、過剰に外傷性である。自家移植を模倣するために、本発明者らは、同系のドナーおよび宿主を使用した。同系動物は、極めて近縁であるため、それらの組織は、免疫学的に適合性であり、組織の移植は、免疫応答を引き起こさない。ドナーとして用いられたACTB−eGFPマウスおよびBGMは、そのGFP蛍光により、SRC内でたやすく同定可能であった(
図9B、C)。
【0097】
移植の7日後、BGMを採取し、骨形成の証拠について解析した。アニリンブルー染色された類骨マトリックスは、BGM
young内では明らか(
図9D)であったが、BGM
aged内では見られなかった(
図9E;Fで定量化されている)。BGM
young内の類骨マトリックスは、ALP染色により示される(
図9G)通り、石灰化を生じつつあったが、BGM
agedは、ALP染色を示さなかった(
図9H;Iで定量化されている)。本発明者らは、BGM
agedと、BGM
youngとの生着効率により、骨分化の差異が説明されうるのかどうかという疑問を呈したが、GFP免疫染色により、BGM
young(
図9J)およびBGM
aged(
図9K)のいずれにおいても、生存ドナー細胞の数は同様であることが裏付けられた(
図9Lで定量化されている)。まとめると、これらのデータは、BGMの骨形成遺伝子の発現および骨形成能が、年齢と共に低下することを示す。
【0098】
Wntシグナル伝達は、BGMの骨形成能に必要である:BGMの内因性Wnt応答性および骨形成能は、年齢と共に減殺される。Wntシグナル伝達の低減が、この加齢に伴う骨形成潜在能の低下に寄与するのかどうかについて調べるために、本発明者らは、BGM内の内因性Wntシグナル伝達を遮断した。他の研究者らと本発明者らは、Wntの阻害剤であるDkk1の過剰発現を使用して、in vivoにおけるWntシグナル伝達を、一過性に消滅させた。本発明者らは、Ad−Dkk1またはAd−Fc(対照)を、若齢マウスの骨髄腔へと送達し、次いで、24時間後にBGM
youngを採取し、アリコートを、臨界サイズ(非治癒性)の骨格欠損へと移植した。対照BGM
youngが、ALP活性について強く陽性となった(
図10A)、7日後において、Ad−Dkk1で処置されたBGM
youngは、最小の活性を示した(
図10B)。代わりに、Ad−Dkk1で処置されたBGM
youngは、脂肪形成タンパク質であるPPAR−γ(
図10C、D)およびDlk1(
図10E、F)の広範な発現を示した。BGMについてのmicro−CT(
図10G、H;Iで定量化されている)および組織形態計測解析(
図10J、K;Lで定量化されている)により示される通り、骨形成は、Ad−Dkk1処置により抑圧された。したがって、BGMの骨形成能は、内因性Wntシグナルに依拠する。
【0099】
BGM
aged内の内因性Wntシグナルを増進させることにより、その骨形成能を回復させる:内因性Wntシグナル伝達は、BGMが、その骨形成能を呈示するのに必要である(
図10J〜L)。次に、本発明者らは、Wntによる刺激が、BGMの有効性を増強するのに十分であるのかどうかについて調べた。BGM
agedを採取し、L−WNT3AまたはリポソームPBS(L−PBS)で処置し、次いで、37℃でインキュベートした(
図11A)。絶対qRT−PCR解析により、Axin2発現のわずかではあるが有意な上昇が明らかにされた(
図11B)。Lef1は、L−WNT3Aに応答して、わずかに上昇した(
図11B)。ウェスタン解析は、ベータカテニンタンパク質およびAxin2タンパク質のいずれもが、L−WNT3Aに応答して上昇することを示した(
図11C)。BGM内の有糸分裂活性は、L−WNT3A処置により増大した。移植後4日目に、L−WNT3Aで処置されたBGM
agedでは、細胞増殖が、LPBSで処置されたBGM
agedと比較して有意に増大した(
図11D、E;Fで定量化されている)。細胞周期に対する影響は、一過性であった:移植後7日目までに、BrdUの取込みは、L−PBS試料とL−WNT3A試料との間で同等であった(
図11G、H;Iで定量化されている)。BGM
aged内の細胞分化について評価した。L−WNT3Aで処置されたBGM
aged内では、脂肪形成タンパク質であるDlk1の発現は低度であり(
図11J、K;Lで定量化されている)、骨形成タンパク質であるオステオカルシンの発現は高度であった(
図11M、N;Oで定量化されている)。新たな骨形成は、L−WNT3Aで処置されたBGM
aged内だけで見出された(
図11P、Q;Rで定量化されている)。LWNT3Aによる処置は、生着効率に影響を及ぼさなかったが、プログラム細胞死についての解析により、L−WNT3Aで処置されたBGM
agedが有するTUNEL
+ve細胞は、L−PBSで処置された試料より有意に少ないことが裏付けられた。アポトーシスの低減はまた、移植後7日目においても観察された。新たな骨形成は、破骨細胞に媒介される骨のリモデリングのための刺激として用いられ、本発明者らが、新たに形成された類骨マトリックスの近傍においてTRAP活性を観察したのは、L−WNT3Aで処置されたBGM
aged試料内だけであった。したがって本発明者らは、L−WNT3Aは、BGMの骨形成能を増強するのに十分であると結論する。
【0100】
L−WNT3Aは、BGMaged内の幹細胞を活性化し、脊椎固定モデルにおける骨の発生を改善する:本発明者らは、BGM内の細胞集団であって、L−WNT3Aに媒介される骨形成能の急な増大の一因となる集団を同定しようと試みた。本発明者らは、標準的な手順を活用して、3つの幹細胞集団を、BGMから単離し、次いで、LPBS(対照としての)またはL−WNT3Aを活用して、それらのWnt応答性について評価した。かつての実験では、本発明者らは、幹細胞集団内のAxin2発現を確実に活性化する、L−WNT3Aの用量を決定した。時間経過についての解析により、幹細胞の、L−WNT3A処置への応答が明らかにされた:L−WNT3Aへの曝露の15時間以内に、Axin2の4倍の活性化が観察され、36時間後には、最大のAxin2の活性化が達成された(
図12A)。60時間後の時点における、幹細胞内のAxin2発現の低下により示される通り、効果は一過性であった(
図12A)。
【0101】
本発明者らは、BGMから単離された第2の幹細胞集団を使用して、幹細胞がL−WNT3Aに応答することを検証した(
図12B)。BGMの活性化状態は、qRT−PCRにより示された。BGM
agedを採取し、L−WNT3AまたはL−PBSで処置し、次いで、Axin2発現およびLef1発現を活用して、そのWnt応答性状態について解析した(
図12C)。12時間以内に、Lef1の有意な上昇が検出可能となり、24時間以内に、Axin2およびLef1のいずれもが、有意に上昇した(
図12C)。これらの解析により、WNTに媒介されるBGMの活性化状態が確認されるが、本明細書の以下では、本発明者らは、この材料を、BGM
ACTと称する。本発明者らの次の実験では、ラット脊椎固定モデルにより、BGM
ACTの治療的可能性について調べた。第4腰椎および第5腰椎(例えば、L4〜5)の横突起から、皮質を除去し(
図12D)、この手順中に、腸骨稜に由来する自家BGM
agedを採取し、L−WNT3A(またはL−PBS)で、1時間にわたり処置した。次いで、結果として得られる材料であるBGM
ACT(またはBGM
aged)を、L4突起およびL5突起、ならびにL4突起〜L5突起の間へと移植した(
図12E)。手術後2日目に、micro−CTにより、BGMの容量について評価し、これらの解析により、BGM
aged(
図12F)およびBGM
ACT(
図12)が、当初は、同等量の石灰化組織を含有したことを確認した。手術後49日目に、新たな骨形成の容量について再評価した。micro−CTデータの三次元再構成により、BGM
agedで処置された部位内の骨再生は乏しく(グレー;
図12G)、脊椎固定を経る老齢患者に由来する同様のデータと符合することが裏付けられた。これに対し、BGM
ACTで処置された部位は、頑健な骨形成および横突起の融合の証拠を示した(青色;
図12H)。横突起間の新たな骨の容量を定量化したところ、BGM
agedと比較して、BGM
ACTは、有意に石灰化が高度なマトリックスをもたらした(
図12I)。したがって、L−WNT3A処置は、高齢動物に由来する自家移植片の骨形成能を改善する。
【0102】
毎年ほぼ50万件の骨移植手順が実施されており、自家移植片は、米国内で移植された2番目に多い組織となっている(AATBによる年次調査)。自家移植片は、同種移植片および合成代用骨を凌駕する著明な利点を有するが、老齢者および基礎骨疾患または基礎代謝疾患を伴う患者では禁忌されている。本実施例では、本発明者らは、本発明者らの取組みを、自家移植片の有効性に重要な因子の理解、および自家移植片の有効性を改善する方法の検証へと方向付けた。4つの主要な因子:第1に、自家移植片が採取される部位;第2に、自家移植片が採取の後でどのように操作されるのか;第3に、自家移植片の増殖因子構成;および第4に、自家移植片内の幹細胞の活性化状態が、自家移植片の骨形成能に影響を及ぼす。本実施例では、本発明者らは、WNTシグナルが、これらの4つの最重要変数のうちの3つに影響を及ぼしうるという証拠を提示する。
【0103】
自家移植片の採取および操作の最適化:自家移植片の骨形成能、したがって、自家移植片の有効性は、採取の部位および方法の影響を受ける。大半の、血管形成されていない自家移植片は、腸骨稜から採取されるが、リーマー/潅流/吸引(RIA)手法により、大腿骨髄腔および脛骨髄腔にもまた、アクセスすることができる。RIAにより回収された自家移植片の骨形成能と、従来の採取法により回収された自家移植片の骨形成能とは、同等である。シミュレートされたRIA手法を使用することにより、本発明者らは、腸骨稜、大腿骨、および脛骨から採取されたBGMの細胞構成の顕著に異なる差異を観察した。さらに、腸骨稜のBGMは、大腿骨または脛骨に由来するBGMと比較して、有意に高レベルの同化性の骨形成遺伝子の発現を示した(
図7)。しかし、これらのBGMアリコートの全ては、腎被膜下(SRC)アッセイ(
図7)において、骨を形成する潜在能を呈示した。自家移植片の有効性はまた、患者へと移植し戻す前の、材料の不適切な操作によっても損なわれる可能性がある。例えば、採取されたばかりのBGMを、室温で維持する場合であってもなお、著明な細胞のアポトーシスが見られる。BGMを、L−WNT3Aで処置することにより、細胞の生存が有意に改善される:例えば、BGM単独と比較して、BGM
ACTは、約50%少ないTUNEL陽性細胞を呈示する。BGM
ACT内ではまた、有糸分裂活性も、L−PBSで処置されたBGMと対比して有意に高度である(
図11D〜F)。まとめると、この細胞増殖の増大および共時的な細胞死の低減は、BGMの生存可能性の増大へと変換され、したがって、自家移植片の有効性の改善へと変換される。
【0104】
自家移植片内の増殖因子活性の最適化:自家移植片の有効性はまた、材料内の増殖因子の存在にも依存すると考えられる。採取されたばかりの自家移植片内では、形質転換増殖因子ベータ、骨形成性タンパク質、血管内皮増殖因子、および血小板由来増殖因子を含む、多種多様な増殖因子が同定されている。しかし、脱灰凍結乾燥同種移植片内では、これらの因子は、欠如するか、または測定可能な最小量で存在する。本発明者らの知る限りにおいて、自家移植片内または同種移植片内の内因性WNTシグナル伝達レベルについて報告する研究は見られない。しかし、多数の研究が、老齢者では、Wnt阻害剤の血清レベルが上昇し、これにより、おそらく、Wntシグナル伝達活性が減殺されることについて明確に裏付けている。これらの臨床的知見は、BGM内の内因性Wnt活性が年齢と共に低下することを示す、本発明者らのデータ(
図8)と符合する。結果として、WNT応答性を上昇させる手法は、自家移植片に対して骨形成能を回復させる。本発明者らは、L−WNT3Aによる処置が、BGM内のWntシグナル伝達を活性化し、これは、SRC(
図11)および脊椎固定モデル(
図12)における頑健な骨発生と相関することを裏付けた。
【0105】
自家移植片の幹細胞の、L−WNT3Aによる活性化:自家移植片の有効性の少なくとも一部は、材料内の幹細胞/間質細胞に由来し得る。骨髄腔では、骨形成性幹細胞/骨格幹細胞は、骨内膜面に接着するかまたは骨内膜面に埋め込まれている。結果として、吸引のみに依拠する採取法は、これらの接着幹細胞集団を回収できないことが典型的である。実際、現行の推定値では、骨髄吸引物中の幹細胞数は、有核細胞50,000個当たり1個とされており、老齢患者では、この数は、わずかに、有核細胞1,000,000個当たり1個まで低下する。RIA採取では、骨内膜面を意図的に摘出するので、骨形成性幹細胞集団を含有する可能性が高い。本発明者らは、Wnt応答性細胞が存在する骨内膜面を摘出する改変RIA手法を使用し(
図8)、次いで、この方式で回収されたBGMが、幹細胞集団/前駆細胞集団を含有し、頑健に骨形成性であり(
図7)、これは、具体的には、内因性Wntシグナルのためである(
図10)ことを裏付けた。
【0106】
自家移植片は、骨再構成のための古典的範例を表し続けているが、なお、自家移植片の有効性には、多大な改善の余地がある。本明細書で示したデータは、ex vivoにおけるL−WNT3Aへの曝露により、細胞の生存可能性が改善され、採取されたばかりの自家移植片内の幹細胞集団が活性化され、ついには、骨形成活性の増大がもたらされることを裏付ける。これらのデータは、とりわけ、その固有の骨形成の能力が、疾病、疾患、または老化により低減される危険性がある患者集団に由来する自家移植片のための直接的な臨床的適用をもたらす。