(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
開口径の大きさを変更可能な絞り部と、該絞り部を収容する固定筒部と、該固定筒部に回動可能に取り付けられて前記絞り部の開口径を調整可能に構成された絞り環と、を備えたレンズ鏡筒において、
前記固定筒部に対向する前記絞り環の部分又は前記絞り環に対向する前記固定筒部の部分を“第1対向部位”とし、該第1対向部位に対向する前記固定筒部の部分又は前記絞り環の部分を“第2対向部位”とした場合に、
前記絞り部から前記絞り環の側に付勢されるように該絞り部の周方向に沿った2箇所に配置された第1及び第2突起部と、
前記絞り環の回動位置に応じて該第1及び第2突起部が択一的に嵌まり込んで前記絞り環が前記絞り部と一体的に回動するように該絞り環の側に形成された嵌合部と、
該第1及び該第2突起部の前記嵌合部への嵌まり込みを解除して前記絞り環が前記絞り部と切り離された状態で回動するように構成された連結解除部と、
前記絞り環の回動にクリック感を付与するように前記第1対向部位及び前記第2対向部位に形成又は配置されたクリック機構と、
を備え、
前記クリック機構は、前記第1対向部位に取り付けられたクリック用バネ部材と、該クリック用バネ部材によって前記第2対向部位の側に付勢される係止部材と、該係止部材を係止するように前記第2対向部位の側に形成又は配置された被係止部と、を有し、
前記第2対向部位は、周方向に複数の前記被係止部が形成されてなる被係止面と、該被係止部を有しない略平坦面と、を有し、
前記第1突起部が前記嵌合部に嵌まり込んだ状態で前記絞り環を回動した場合には前記係止部材は前記被係止面を摺動し、前記第2突起部が前記嵌合部に嵌まり込んだ状態で前記絞り環を回動した場合には前記係止部材は前記略平坦面を摺動するように構成された、
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【背景技術】
【0002】
近年、動画でも静止画でも撮影できるように構成されたビデオカメラや一眼レフカメラやミラーレスカメラなど(以下、単に“カメラ”とする)が普及している。
【0003】
このようなカメラにおいては絞り値の変更(調整)はカメラ本体で行うのが一般的であるが、レンズ鏡筒に絞り環(絞りリング)を設けておいて該絞り環を回すことによって変更できるようにしたものもある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図7は、絞り調整機能付きのレンズ鏡筒の従来構成の一例を示す平面図であり、図中の符号100はレンズ鏡筒を示し、符号104は、回動自在に構成された絞り環を示し、符号105は、フォーカスリングを示している。この絞り環104にはクリック機構(不図示)が設けてあって、該絞り環104を所定の絞り値(F1.4,F2,F2.8,…などのF値)にて固定して自由回動を規制するように構成されていた。
【0005】
ところで、このようなカメラで静止画を撮影する場合は、被写体の明るさ等を考慮して絞り値を事前に設定することが行われるが、動画を撮影するような場合は、その撮影中に絞り値を固定せずに変化させたい場合がある。例えば、移動するヘリコプターや列車や自動車に乗って動画を撮影する場合や、カメラをラジコンヘリコプターに搭載して動画を撮影する場合などは、被写体の明るさが大きく変化することがあるので、該被写体の明るさに応じて撮影中に絞り値を順次変更するような場合である。しかし、このような場合においては、上述のクリック機構が前記絞り環104のスムーズな回動を阻害してしまうことになり、また、「カチッ」というクリック音をカメラのマイクが拾ってしまう等の問題があった。
【0006】
そこで、このような問題を解決するようにした構成のレンズ鏡筒が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
図8(a) は、絞り調整機能付きのレンズ鏡筒の従来構成の他の例を示す部分断面図であって、同図(b) は、その拡大断面図であり、図中の符号204は絞り環を示し、符号206はクリック機構を示し、符号206Aは、クリック機構206の構成要素であるバネを示し、符号206Bは、該バネ206Aによって付勢されるクリックボールを示す。また、符号206Cは、該クリックボール206Bが係合可能な被係合部を示し、符号207は、複数の該被係合部206Cが端面に形成された環状部材を示している。この環状部材207は回動自在に構成されていて、該環状部材207を180°回動させると、前記クリックボール206Bと前記被係合部206Cとの接触は無くなり、クリック機能が停止されるように構成されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、
図8に示す構造のものでは、クリック機能を停止させると共に絞り値を変更する場合には、環状部材207と絞り環204の2つの部材を回動させなければならず、その操作が煩雑になるという問題があった。
【0010】
本発明は、上述の問題を解消することのできるレンズ鏡筒、及び該レンズ鏡筒を備えたカメラを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点は、
図1乃至
図4及び
図9に例示するものであって、開口径の大きさを変更可能な絞り部(2,302)と、該絞り部(2,302)を収容する固定筒部(3,303)と、該固定筒部(3,303)に回動可能に取り付けられて前記絞り部(2,302)の開口径を調整可能に構成された絞り環(4,304)と、を備えたレンズ鏡筒(1,301)において、
前記固定筒部(3,303)に対向する前記絞り環(4,304)の部分又は前記絞り環(4,304)に対向する前記固定筒部(3,303)の部分を“第1対向部位(
図2(b) 及び
図9の符号P1参照)”とし、該第1対向部位(P1)に対向する前記固定筒部(3,303)の部分又は前記絞り環(4,304)の部分を“第2対向部位(同図の符号P2参照)”とした場合に、
前記絞り部(2,302)から前記絞り環(4,304)の側に付勢されるように該絞り部(2,302)の周方向(
図3及び
図4の矢印C参照)に沿った2箇所に配置された第1及び第2突起部(50A,50B、又は350A,350B)と、
前記絞り環(4,304)の回動位置に応じて該第1及び第2突起部(50A,50B、又は350A,350B)が択一的に嵌まり込んで前記絞り環(4,304)が前記絞り部(2,302)と一体的に回動するように該絞り環(4,304)の側に形成された嵌合部(51,351)と、
該第1及び該第2突起部(50A,50B、又は350A,350B)の前記嵌合部(51,351)への嵌まり込みを解除して前記絞り環(4,304)が前記絞り部(2,302)と切り離された状態で回動するように構成された連結解除部(52,352)と、
前記絞り環(4,304)の回動にクリック感を付与するように前記第1対向部位(P1)及び前記第2対向部位(P2)に形成又は配置されたクリック機構(6,306)と、
を備え、
前記クリック機構(6,306)は、前記第1対向部位(P1)に取り付けられたクリック用バネ部材(60,360)と、該クリック用バネ部材(60,360)によって前記第2対向部位(P2)の側に付勢される係止部材(61,361)と、該係止部材(61,361)を係止するように前記第2対向部位(P2)の側に形成又は配置された被係止部(62,362)と、を有し、
前記第2対向部位(P2)は、周方向(C)に複数の前記被係止部(62,362)が形成されてなる被係止面(
図3の符号P2a参照)と、該被係止部(62,362)を有しない略平坦面(
図3の符号P2b参照)と、を有し、
前記第1突起部(50A,350A)が前記嵌合部(51,351)に嵌まり込んだ状態で前記絞り環(4,304)を回動した場合には前記係止部材(61,361)は前記被係止面(P2a)を摺動し、前記第2突起部(50B,350B)が前記嵌合部(51,351)に嵌まり込んだ状態で前記絞り環(4,304)を回動した場合には前記係止部材(61,361)は前記略平坦面(P2b)を摺動するように構成されたことを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の観点は、前記レンズ鏡筒(1,301)の半径方向外方(Rout)を“鏡筒外方向”とし、該レンズ鏡筒(1,301)の半径方向内方(Rin)を“鏡筒内方向”とした場合に、
前記第1及び第2突起部(50A,50B、又は350A,350B)を該鏡筒外方向(Rout)に付勢するように前記絞り部(2,302)の側に取り付けられた第1及び第2バネ部材(53A,53B、又は353A,353B)、
を備え、
前記嵌合部(51,351)は前記絞り環(4,304)の内周面に形成され、
前記連結解除部(52,352)は、前記嵌合部(51,351)における前記第1及び第2突起部(50A,50B、又は350A,350B)が付勢される位置に配置されたアクチュエータ部(520,3520)と、該アクチュエータ部(520,3520)に連結されると共に前記絞り環(4,304)の外周面から前記鏡筒外方向(Rout)に突出するように配置された押しボタン部(521,3521)と、からなり、
該押しボタン部(521,3521)を前記鏡筒内方向(Rin)に押すことによって前記アクチュエータ部(520,3520)が前記第1又は第2突起部(50A,50B、又は350A,350B)を前記嵌合部(51,351)から該鏡筒内方向(Rin)に押し出して該第1又は該第2突起部(50A,50B、又は350A,350B)の前記嵌合部(51,351)への嵌まり込みを解除するように構成されたことを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の観点は、前記押しボタン部(521,3521)が、前記絞り環(4,304)に形成された貫通孔(不図示)に挿通されるように配置されたことを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の観点は、
図6(a) (b) に例示するように、前記固定筒部(3,303)には、前記絞り環(4,304)に近接する位置に指標(Q)が表示され、
該絞り環(4,304)には、前記嵌合部(51,351)に前記第1突起部(50A,350A)が嵌め込まれた状態で該絞り環(4,304)が回動された場合において前記指標(Q)に対向し得る周方向範囲に複数のF値(4A)が表示されると共に、前記嵌合部(51,351)に前記第2突起部(50B,350B)が嵌め込まれた状態で該絞り環(4,304)が回動された場合において前記指標(Q)に対向し得る周方向範囲に複数のT値(4B)が表示され、
前記絞り部(2,302)は、前記指標(Q)に対向するF値(4A)又はT値(4B)を実現する大きさの開口を形成するように構成されたことを特徴とする。
【0015】
本発明の第5の観点は、前記レンズ鏡筒(1,301)を備えたカメラについてのものである。
【0016】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1,4及び5の観点によれば、クリック機能の停止と絞り値の変更とを行うために回動させるものは前記絞り環のみであり、その操作が簡便となる。
【0018】
本発明の第2及び3の観点によれば、前記押しボタン部は前記絞り環の外周面から前記鏡筒外方向に突出するように配置されているため、該絞り環を握ったままで押し込むことができ、その操作が簡便となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1乃至
図6、
図9及び
図10に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
本発明に係るレンズ鏡筒は、
図1乃至
図4、
図9及び
図10に符号1,301で例示するものであって、
・ 開口径の大きさを変更可能な絞り部2,302と、
・ 該絞り部2,302を収容する固定筒部3,303と、
・ 該固定筒部3,303に回動可能に取り付けられて前記絞り部2,302の開口径を調整可能に構成された絞り環4,304と、
を備えている。
【0022】
このうちの絞り部2,302は、虹彩絞りであって、
図5に例示するようにカム軸20a,20bを有する複数枚の絞り羽根20と、該カム軸20a,20bが挿通される複数のカム孔(
図3及び
図4の符号21a、並びに
図10の符号321a参照)が形成された環状の操作部材(
図3及び
図4の符号21、並びに
図9及び
図10の符号321参照)と、により構成すると良い。また、図に例示する固定筒部3及び固定筒部303は、複数の筒状部材30,31又は複数の筒状部材330,331をネジによって連結したものであるが、一体成形されたものであっても良い。
【0023】
さらに、本発明に係るレンズ鏡筒1,301は、前記絞り部2,302と前記絞り環4,304とを接離可能に連結する連結部5,305を備えており、該連結部5,305は、
・ 前記絞り環4,304の側に(好ましくは、前記絞り部2,302から前記絞り環4,304の側に)付勢されるように該絞り部2,302の周方向(
図3、
図4及び
図10の矢印C参照)に沿った2箇所に配置された第1及び第2突起部50A,50B(又は第1及び第2突起部350A,350B)と、
・ 前記絞り環4,304の回動位置に応じて該第1及び第2突起部50A,50B(又は第1及び第2突起部350A,350B)が択一的に嵌まり込んで前記絞り環4,304が前記絞り部2,302と一体的に回動するように該絞り環4,304の側に形成された嵌合部51,351と、
・ 該第1及び該第2突起部50A,50B(又は第1及び第2突起部350A,350B)の前記嵌合部51,351への嵌まり込み(つまり、該嵌合部51,351に嵌まり込んでいるのが第1突起部50A,350Aである場合にはその第1突起部50A,350Aの嵌まり込みであり、該嵌合部51,351に嵌まり込んでいるのが第2突起部50B,350Bである場合にはその第2突起部50B,350Bの嵌まり込み)を解除して前記絞り環4,304が前記絞り部2,302と切り離された状態で回動するように構成された連結解除部52,352と、
により構成されている。本発明によれば、クリック機能の停止と絞り値の変更とを行うために回動させるものは前記絞り環4,304のみであり、その操作及び構成が簡便となる。
【0024】
なお、説明の便宜上、
図1,2と
図3,4とでは絞り環4における嵌合部51の周方向位置(つまり、該嵌合部51と後述する被係止部62との周方向の相対位置関係)を異ならせている。
【0025】
ここで、前記レンズ鏡筒1,301の半径方向外方Routを“鏡筒外方向”とし、該レンズ鏡筒1,301の半径方向内方Rinを“鏡筒内方向”とすると、
図1、
図2及び
図9に示す例では、前記第1及び第2突起部50A,50B(又は第1及び第2突起部350A,350B)は該鏡筒外方向Routに付勢されるように構成されているが、もちろんこれに限られるものではなく、前記絞り環4,304の側に付勢されるのであれば他の方向(例えば、光軸方向x)に付勢されていても良く、前記嵌合部51,351の位置も前記絞り環4,304の内周面以外の位置(前記第1及び第2突起部50A,50B又は第1及び第2突起部350A,350Bが付勢される位置)に適宜変更しても良い。例えば、
図1及び
図2(b) 中に符号61で示す部材(詳細は後述する)が配置されている箇所及び該箇所から周方向にずれた他の箇所(例えば、180°ずらした箇所)に前記第1突起部50Aや前記第2突起部50Bを配置し、符号60で示すバネ部材が配置されている箇所及び該箇所から周方向にずれた他の箇所(例えば、180°ずらした箇所)に第1及び第2バネ部材53A,53B(詳細は後述する)を配置して、それらの突起部50A,50Bが光軸方向(例えば、x方向とは逆の方向)に付勢されるようにしても良い。その場合、前記嵌合部51は、符号62で示す被係止部(詳細は後述する)が配置されている箇所などに形成すると良い。
【0026】
また、前記第1及び第2突起部50A,50B(又は第1及び第2突起部350A,350B)が前記鏡筒外方向Routに付勢するように構成した場合には、前記連結解除部52,352は、
図2(a) 及び
図9に詳示するように、
・ 前記嵌合部51,351における前記第1及び第2突起部50A,50B(又は第1及び第2突起部350A,350B)が付勢される位置に配置されたアクチュエータ部520,3520と、
・ 該アクチュエータ部520,3520に連結されると共に前記絞り環4,304の外周面4a,304aから前記鏡筒外方向Routに突出するように配置された押しボタン部521,3521と、
により構成し、該押しボタン部521,3521を前記鏡筒内方向Rinに押すことによって前記アクチュエータ部520,3520が前記第1又は第2突起部50A,50B(第1又は第2突起部350A,350B)を前記嵌合部51,351から該鏡筒内方向Rinに押し出して該第1又は該第2突起部50A,50B(第1又は第2突起部350A,350B)の前記嵌合部51,351への嵌まり込みを解除するように構成しておくと良い。この場合、前記絞り環4,304には貫通孔を形成しておき、前記押しボタン部521,3521は該貫通孔に挿通されるように配置すると良いが、そのような貫通孔を形成せずに、前記絞り環4,304に切欠部(不図示)や隙間(つまり、前記固定筒部31,331との間の隙間)を設けておいて前記鏡筒外方向Routに突出するように前記押しボタン部521,3521を配置しても良い。なお、この押しボタン部521,3521は、前記絞り環4,304を回動させる間押し続けるようにしても良いが、前記第1又は第2突起部50A,50B(第1又は第2突起部350A,350B)と前記嵌合部51,351との係合が外れた段階で押し続けなくても良い。本発明によれば、前記押しボタン部521,3521は前記絞り環4,304の外周面4a,304aから前記鏡筒外方向Routに突出するように配置されているため、該絞り環4,304を握ったままで押し込むことができ、その操作が簡便となる。
【0027】
一方、前記嵌合部51,351及び前記連結解除部52,352は、前記第1及び第2突起部50A,50B(又は第1及び第2突起部350A,350B)がそれぞれ同時に嵌まり込むように2箇所に配置しても良いが、1箇所だけに配置しておいて、
・ 前記第1突起部50A,350Aが前記嵌合部51,351に嵌まり込んだ状態では前記第2突起部50B,350Bは前記絞り環4,304には係合されず、
・ 前記第2突起部50B,350Bが前記嵌合部51,351に嵌まり込んだ状態では前記第1突起部50A,350Aは前記絞り環4,304には係合されない、
ようにすると良い。そのようにした場合には、1箇所に設けられた前記連結解除部52,352を操作するだけで前記絞り環4,304は自由回動状態となり、その連結解除の操作を簡便にすることができる。
【0028】
また、
図2(a) 及び
図9に例示する嵌合部51,351は、前記レンズ鏡筒1,301の光軸方向xに延設された溝状の形状であるが、もちろんこれに限られるものではなく、溝の概念に含まれない凹部であっても良い。さらに、該嵌合部51,351を溝や凹部ではなく凸部とし、前記突起部50A,50B(又は突起部350A,350B)の先端部に凹部や溝部を形成しておいて、該嵌合部と該突起部とが係止されるようにしても良い。またさらに、
図1及び
図9に示す例では、前記第1及び第2突起部50A,50B(又は第1及び第2突起部350A,350B)は、周方向Cに沿って180°離れた位置に配置されているが、もちろんこれに限られるものではなく、適当な位置に配置するようにしても良い。
【0029】
また一方、前記第1及び第2突起部50A,50B(又は第1及び第2突起部350A,350B)の前記鏡筒外方向Routへの付勢は、前記絞り部2,302の側に取り付けられた第1及び第2バネ部材53A,53B(又は第1及び第2バネ部材353A,353B)によって行うと良い。なお、
図2(a) (b) に符号54A,54Bで示す部材や
図10に符号354A,354Bで示す部材は、該第1及び第2バネ部材53A,53Bを絞り部2(正確には、操作部材21)に取り付けるための部材である。また、
図1乃至
図4、
図9及び
図10に例示する第1及び第2バネ部材53A,53B(又は第1及び第2バネ部材353A,353B)は、前記絞り部2,302と前記第1及び第2突起部50A,50B(又は第1及び第2突起部350A,350B)との間に介装されたコイルスプリングであるが、もちろんこれに限られるものではなく、他の形状であっても良い。
【0030】
ここで、前記固定筒部3,303に対向する前記絞り環4,304の部分又は前記絞り環4,304に対向する前記固定筒部3,303の部分のいずれか一方を“第1対向部位(
図2(b) 及び
図9の符号P1参照)”とし、該第1対向部位P1に対向する前記固定筒部3,303の部分又は前記絞り環4,304の部分を“第2対向部位(同図の符号P2参照)”とすると、本発明に係るレンズ鏡筒1,301は、該第1対向部位P1及び該第2対向部位P2に形成又は配置されたクリック機構6,306を備えていて、前記絞り環4,304の回動にクリック感を付与するように構成されている。なお、
図2(b) に例示する第1対向部位P1及び第2対向部位P2は、前記絞り環4及び前記固定筒部3の端面部分(つまり、光軸方向xの端面と、該端面の近傍部分)であるが、もちろんこれに限られるものではなく、該対向部位P1,P2が互いに対向している関係にあれば足り、
図9に例示するような前記絞り環304及び前記固定筒部303の周面部分(つまり、外周面及びその近傍部分と、内周面及びその近傍部分)や、それ以外の部分であっても良い。例えば、
図1及び
図2(b) にて前記第1突起部50Aや前記第2突起部50Bが配置されている位置に次述する係止部材61を配置し、前記第1バネ部材53Aや前記第2バネ部材53Bが配置されている位置に次述するクリック用バネ部材60を配置し、前記絞り環4の内周面(つまり、前記嵌合部51が形成されている位置)に次述する被係止部62を配置するようにしても良い。
【0031】
そして、前記クリック機構6,306は、
図2(b) 及び
図9に詳示するように、
・ 前記第1対向部位P1に取り付けられたクリック用バネ部材60,360と、
・ 該クリック用バネ部材60,360によって前記第2対向部位P2の側に付勢される係止部材61,361と、
・ 該係止部材61,361を係止するように前記第2対向部位P2の側に形成又は配置された被係止部62,362と、
を有しており、該第2対向部位P2は、
図3に例示するように、
・ 周方向Cに複数の前記被係止部62が形成されてなる被係止面P2aと、
・ 該被係止部62を有しない略平坦面P2bと、
を有している。
図9の第2対向部位P2も、同様に被係止面と略平坦面とを有している。その結果、
・ 前記第1突起部50A,350Aが前記嵌合部51,351に嵌まり込んだ状態で前記絞り環4,304を回動した場合には前記係止部材61,361は前記被係止面P2aを摺動し、
・ 前記第2突起部50B,350Bが前記嵌合部51,351に嵌まり込んだ状態で前記絞り環4,304を回動した場合には前記係止部材61,361は前記略平坦面P2bを摺動する
ように構成されている。なお、
図2(b) に示す例では、前記絞り環4に対向する前記固定筒部3(筒状部材31)の部分を第1対向部位P1として該固定筒部3の側に前記クリック用バネ部材60を配置し、前記絞り環4の部分を第2対向部位P2として該絞り環4の部分に被係止部62を形成しているが、その逆、つまり、該絞り環4の部分に前記クリック用バネ部材60を配置し、該固定筒部3の部分に前記被係止部62を形成しても良い。また、
図9に示す例では、前記絞り環304の部分を第1対向部位P1として該絞り環304の側に前記クリック用バネ部材360を配置し、前記絞り環304に対向する筒部333の部分を第2対向部位P2として該筒部333の部分に被係止部362を形成しているが、その逆、つまり、該筒部333の部分に前記クリック用バネ部材360を配置し、前記絞り環304の部分に前記被係止部362を形成しても良い。
【0032】
ところで、
図6(a) に例示するように、前記固定筒部3,303(環状部材32,332)には、前記絞り環4,304に近接する位置に指標Qを表示し、該絞り環4,304には、
・ 前記嵌合部51,351に前記第1突起部50A,350Aが嵌め込まれた状態で該絞り環4,304が回動された場合において前記指標Qに対向し得る周方向範囲に複数のF値4Aを表示すると共に、
・ 前記嵌合部51,351に前記第2突起部50B,350Bが嵌め込まれた状態で該絞り環4,304が回動された場合において前記指標Qに対向し得る周方向範囲に複数のT値(つまり、レンズの透過率を考慮した実効絞り値)4Bを表示する、
ようにしておくと良い。そして、前記絞り部2,302(及び、前記嵌合部51,351や前記第1,2突起部50A,50B(又は前記第1,2突起部350A,350B)の位置)は、前記指標Qに対向するF値4A又はT値4Bを実現する大きさの開口を形成するように構成しておくと良い。なお、F値とは、レンズの焦点距離を有効口径で割った値であり、レンズの透過率を100%と仮定した場合の明るさに対応するものである。また、T値とは、光学系の透過率を加味した実質的な明るさ(つまり、センサーに到達する実際の明るさ)を示す指標であり、F値との関係は下式によって表される。
【数1】
【0033】
従来、静止画像の撮影にはF値を使って絞りの調整が行われているが、動画の撮影にはT値を使って絞りの調整が行われている。本発明によれば、前記絞り環4,304にF値とT値の両方が表示されているので、静止画像及び動画のいずれの撮影においても適正な絞り調整を行うことができる。
【0034】
一方、請求項5に記載しているところの、本発明に係るカメラは、上述した構成のレンズ鏡筒1,301を備えている。なお、該レンズ鏡筒1,301は、交換可能なタイプであることが好ましいが、交換不可能なタイプ(つまり、カメラを構成する部品としてのレンズ鏡筒)を除外するものではない。