特許第6557667号(P6557667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6557667媒体の少なくとも一つの性状を判定するための流量測定システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557667
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】媒体の少なくとも一つの性状を判定するための流量測定システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20060101AFI20190729BHJP
   G01F 1/84 20060101ALI20190729BHJP
   G01F 1/68 20060101ALI20190729BHJP
   G01N 25/18 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   G01F1/00 A
   G01F1/84
   G01F1/68
   G01N25/18 F
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-548185(P2016-548185)
(86)(22)【出願日】2015年1月23日
(65)【公表番号】特表2017-505439(P2017-505439A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】NL2015050040
(87)【国際公開番号】WO2015112009
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2017年12月1日
(31)【優先権主張番号】2012126
(32)【優先日】2014年1月23日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】596167974
【氏名又は名称】ベルキン ビーブイ
【氏名又は名称原語表記】BERKIN B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】レッタース,ヨースト コンラッド
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−189223(JP,A)
【文献】 特開2007−057452(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/114156(WO,A1)
【文献】 特開昭59−084145(JP,A)
【文献】 特開2013−033026(JP,A)
【文献】 特開2003−194606(JP,A)
【文献】 特開平02−042319(JP,A)
【文献】 特表2000−502453(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0123892(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00 −25/00
G01N 9/00
G01N 25/00
G01N 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コリオリ流量センサー、熱流量センサー、及びコリオリ流量センサー及び熱流量センサーに接続された処理ユニットを備え、媒体の流量を求めるための流量測定システムにおいて、上記処理ユニットは、コリオリ流量センサーと熱流量センサー両方の出力信号に基づいて、流量測定システム内の媒体の熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つが求まるよう構成されていることを特徴とする流量測定システム。
【請求項2】
流量測定システムは、さらに圧力センサーを備えていることとする請求項1に記載の流量測定システム。
【請求項3】
圧力センサーは、圧力差を測定するよう構成されていることとする請求項2に記載の流量測定システム。
【請求項4】
処理ユニットは、圧力センサーに接続されており、かつ、コリオリ流量センサー及び圧力センサー両方の出力信号に基づいて、流量測定システム内の媒体の粘度が求まるよう構成されていることとする請求項2又は請求項3に記載の流量測定システム。
【請求項5】
処理ユニットは、流量測定システム内の媒体の流れの特性値が求まるよう構成されていることとする請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1項に記載の流量測定システム。
【請求項6】
流量測定システム内の媒体の流れの特性値がレイノルズ数であることとする請求項5に記載の流量測定システム。
【請求項7】
流量測定システムは、処理ユニットに記憶された流量の参照特性値を備えており、処理ユニットは、求められた流量の特性値が流量の参照特性値を下回る場合には、比熱容量を求め、求められた流量の特性値が流量の参照特性値を超える場合には、熱伝導率を求めるよう構成されていることとする請求項5又は請求項6に記載の流量測定システム。
【請求項8】
流量測定システムは、試験流体の比熱容量の参照値を備えており、かつ、処理ユニットは、比熱容量の参照値を用いて、流量測定システム内の媒体の熱伝導率を求めるよう構成されていることとする請求項1ないし請求項のうちのいずれか1項に記載の流量測定システム。
【請求項9】
処理ユニットは、比熱容量、熱伝導率及び密度のうちの少なくとも一つについての求められた値に基づいて、流量測定システム内の媒体を特定するよう構成されていることとする請求項1ないし請求項のうちのいずれか1項に記載の流量測定システム。
【請求項10】
媒体は、二つの既知の成分を備えている混合物であり、処理ユニットは、混合物の比熱容量、熱伝導率及び密度のうちの少なくとも一つについての求められた値に基づいて、既知の成分のそれぞれの分率が求まるよう構成されていることとする請求項1ないし請求項のうちのいずれか1項に記載の流量測定システム。
【請求項11】
媒体の熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つを求める方法であって、次のステップ、すなわち、
・熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つを求めたい媒体を供給するステップ、
・コリオリ流量センサーの出力信号を得るためにコリオリ流量センサーに媒体を通すステップ、
・熱流量センサーの出力信号を得るために熱流量センサーに媒体を通すステップ、及び
・コリオリ流量センサー及び熱流量センサーの出力信号に基づいて、流量測定システム内の媒体の熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つを求めるステップ、を備えていることを特徴とする方法。
【請求項12】
媒体の圧力、圧力差を求めるステップをさらに備えることとする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コリオリ流量センサーの出力信号と求められた圧力とに基づいて、流量測定システム内の媒体の粘度を求めるステップをさらに備えることとする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
流量測定システム内の媒体の流量の特性値を求めるステップをさらに備えることとする請求項11ないし請求項13のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
流量測定システム内の媒体の流量の特性値がレイノルズ数であることとする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
求められた流れの特性値を流れの参照特性値と比較するステップをさらに備え、この比較に基づいて、
・求められた特性値が参照特性値を下回る場合には、比熱容量を求め、また、
・求められた特性値が、参照特性値を超える場合には、熱伝導率を求める、
こととする請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
試験流体の参照熱伝導率値を用いて流量測定システム内の媒体の熱伝導率を求めることとする請求項11ないし請求項16のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
コリオリ流量センサーと熱流量センサーのうちの一方の出力信号の期待値を、コリオリ流量センサーと熱流量センサーのうちの一方の測定値と比較するステップを備え、期待値の測定値に対する比を用いて、媒体の比熱容量を求めることとする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
比熱容量、熱伝導率及び密度のうちの少なくとも一つについての求められた値に基づいて、流量測定システム内の媒体を特定するステップを備えることとする請求項11ないし請求項18のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
媒体は、二つの既知の成分を備えている混合物であり、混合物の比熱容量、熱伝導率及び密度のうちの少なくとも一つについての求められた値に基づいて、既知の成分のそれぞれの分率を求めるステップを備えることとする請求項11ないし請求項19のうちのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体の性状を判定するための流量測定システムに関し、該システムは、流量センサーを備えている。
【0002】
本発明は、さらに、媒体の性状を判定するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの技術分野では、気体又は液体媒体の流量と組成両方についての知識が重要である。これは、例えば、特殊薬品の生産、医療用の気体の正確な混合物の生産、及び燃料気体のエネルギー含有量を求めるための組成の測定を行う際のフローケミストリーにおける事実である。
【0004】
医療用の輸液ポンプの場合、特に新生児学では、媒体の流量とその組成の両方を知ることが必須であるが、これは、新生児は、種類と量の両方について適切な薬品及び(又は)栄養物を受け取らねばならないからである。ここでの問題は、この例における流量が非常に小さく、したがって、測定値の正確さについて問題が生ずることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、媒体、特に気体及び(又は)液体媒体の流量及び少なくとも一つの物理的性状の測定ができる流量測定システムを提供することである。
【0006】
この目的のため、本発明は、媒体の流量を求めるための流量測定システムであって、コリオリ流量センサー、熱流量センサー、及びコリオリ流量センサー及び熱流量センサーに接続された処理ユニットを備える流量測定システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記処理ユニットは、コリオリ流量センサーと熱流量センサー両方の出力信号に基づいて、特にコリオリ流量センサーと熱流量センサー両方の出力信号の組合せに基づいて、流量測定システム内の媒体の熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つが求まるよう構成されている。
【0008】
上記流量測定システムでは、流量は、コリオリ流量センサー又は熱流量センサーのどちらか(又は両方)を用いて測定できる。コリオリ流量センサーと熱流量センサーとの組合せでは、以下に説明するように、流量測定システム内の媒体の熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つの評定が可能である。
【0009】
一般に、上記処理ユニットは、コリオリ流量センサーと熱流量センサー両方の出力信号を比較することによって、流量測定システム内の媒体の熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つが求まるよう構成されている。
【0010】
特に低流量では、熱流量センサーの出力信号とコリオリ流量センサーの出力信号とを比較することによって、媒体の比熱容量を算出することができる。熱流量センサーの出力信号をコリオリ流量センサーの出力信号に対してプロットした場合、曲線の傾きは、両センサー内に在る媒体の熱容量の尺度となることが判明した。結果として生じた曲線は、媒体とは無関係のセンサー定数を有する次の関数で表すことができる。
【数1】
【0011】
ここで、Sは、熱流量センサーの出力信号であり、yは、コリオリ流量センサーの出力信号である。Cは、参照媒体を用いて求めることができる媒体とは無関係のセンサー定数であり、参照媒体は、それによって流量測定システムの校正が実施できる媒体である。
【0012】
参照媒体以外の媒体がシステム内に存在する場合は、Sの特定の値について、式(1)を解くことができる。yについて解いた値とyについての測定値との比に参照媒体空気の比熱容量の値を掛ければ、実際の媒体の比熱容量の値が得られる。
【0013】
したがって、上述したように、コリオリ流量センサー及び熱流量センサー両方の出力信号を用いることによって、少なくとも比熱容量を求めることができることは明らかである。
【0014】
付加的に又は別法として、熱伝導率を求めることもできる。熱伝導率は、より高い流量での熱流量センサーとコリオリ流量センサーの出力信号を、比較することによって求めることができる。熱流量センサーの出力信号をコリオリ流量センサーの出力信号に対してプロットした場合、より高い流量における曲線の傾きは、両センサー内に在る媒体の熱伝導率の尺度となる。結果として生ずる曲線は、次の式により表すことができる。
【数2】
【0015】
ここで、Sは熱流量センサーの出力信号、yはコリオリ流量センサーの出力信号、λは熱伝導率、Xは媒体と無関係のセンサー定数である。熱伝導率は、熱流量センサーの出力信号及びコリオリ流量センサーの出力信号についての既知の(測定された)値と、センサー定数Xを用いて、式(2)をλについて解くことによって求めることができる。
【0016】
上述のように、媒体の流量、及び比熱容量及び熱伝導率のうちの少なくとも一つを求めることのできる流量測定システムが得られる。以上により、本発明の目的は、達成される。
【0017】
特に、上述したように、少なくとも二つの変数を有する式S = f(y,…)に基づいて、熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つを求めるための処理ユニットが構成でき、該少なくとも二つの変数は、コリオリ流量センサーの出力(y)及び熱流量センサーの出力(S)によって定義されることが分かる。処理ユニットは、出力信号に基づいて式を解くよう構成することができる。処理ユニットは、処理ユニット内又はそれに接続されたユニット内に記憶された参照表(ルックアップテーブル)により、出力信号を用いて前出の式を解くよう付加的に、又は別法として、構成することができる。
【0018】
ある特定の実施形態では、コリオリ流量センサーの出力信号と熱流量センサーの出力信号との間の関係を表すのに、式(1)を多項式関数により表すことができ、また、一実施形態では、式(1)を次の3次多項式関数により表すことができる。
【数3】
【0019】
ここで、C1〜C4は、校正の際に得られる媒体とは無関係のセンサー定数である。上述したように、式(3)は、Sのある値について解くことができる。yについて解いた値とyについての測定値との比に参照媒体空気の比熱容量の値を掛ければ、実際の媒体の比熱容量の値が得られる。この関数は、処理ユニットが、システムにより得られた測定値に基づいて式(3)を解くことができるよう、処理ユニット内に記憶させることができる。
【0020】
一実施形態では、流量測定システムは、試験流体の熱伝導率の参照値を備えている。参照値は、処理ユニット内に記憶させることができる。したがって、処理ユニットは、熱伝導率の参照値を用いて、流量測定システム内の媒体の熱伝導率が上述のごとく求められるよう構成することができる。
【0021】
一実施形態では、熱伝導率は、熱流量センサーの出力信号をコリオリ流量センサーの出力信号に対してプロットすることによって得られる曲線の傾きから得ることができる。式(2)によって指定された曲線は、次の式によってより詳細に表すことができることが判明した。
【数4】
【0022】
ここで、Sは熱流量センサーの出力信号、X〜Xは媒体とは無関係のセンサー定数、cは比熱容量、Φは質量流量、λは熱伝導率である。
【0023】
一実施形態では、熱伝導率λは、曲線のフィッティングにより、すなわち、いかなる直接的な分析関係もなしに、式(4)から求まる。
【0024】
好適な一実施形態では、流量測定システムは、さらに圧力センサーを備えている。コリオリ流量センサーと圧力センサーの出力信号同士を比較し、かつ、コリオリ流量センサーによって得られる密度を考慮することによって、媒体の粘度が算出できる。
【0025】
一実施形態では、圧力センサーは、入口と出口の間の圧力差を測定するよう構成された差圧センサーである。
【0026】
流量測定システムの一実施形態では、処理ユニットが圧力センサーに接続されており、かつ、コリオリ流量センサー及び圧力センサー両方の出力信号に基づいて、流量測定システム内の媒体の粘度が求まるよう構成されている。
【0027】
一実施形態では、次の式を用いて媒体の粘度を求めることができる。
【数5】
【0028】
媒体とは無関係の流体抵抗Rが、空気などの校正用媒体を参照媒体として用いることによって求められる。一実施形態では、質量流量Φm及び密度ρは、コリオリ流量センサーによって測定可能であり、圧力損失ΔPは、圧力センサーから得られる。
【0029】
気体の場合は、測定された密度は、気体の圧縮性についての補正ができる。
【0030】
処理ユニットは、流量測定システム内の媒体流れの特性値、特にレイノルズ数が求まるよう構成することができる。レイノルズ数は、圧力及び粘度に基づいており、これは、圧力センサー及びコリオリ流量センサーを用いて、上記の式(5)から得られる。この特性値は、後述のように利用することができる。
【0031】
一実施形態では、流量測定システムは、処理ユニットに記憶された流量の参照特性値を備えており、処理ユニットは、求められた流量の特性値が、それぞれ、流量の参照特性値を超える場合又は下回る場合に、比熱容量が求まり、かつ、求められた流量の特性値が、流量の参照特性値を下回る場合又は超える場合に、熱伝導率が求まるよう、構成されている。
【0032】
例えば、流量が低い場合には、熱伝導率を求めることができ、また、流量が比較的高い場合には、比熱容量を求めることができることが分かっている。流量測定システム内の媒体の流量の特性値、特にレイノルズ数は、流量測定システム内の媒体の流量が低いか高いかを判定するのに利用することができる。求められた特性値は、処理ユニットに記憶された参照値と比較し、それに基づいて、比熱容量及び熱伝導率の一方を求めることができる。レイノルズ数は、流量の特性値として利用することが可能である。その場合、比較的低いレイノルズ数は、比較的低い流量に属し、比較的高いレイノルズ数は、比較的高い流量に属する。レイノルズ数の逆数を用いることが可能であり、この場合には、より低い流量に対しては、より高い数となるであろう。その場合には、上述した記述に必要な変更を加えれば、上述した記述が当てはまることになる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、集積化コリオリ流量センサー、集積化熱流量センサー、及び好ましくは圧力センサーを備えた集積化マルチパラメータ流量測定システムが得られる。集積化された形態では、処理ユニットが同様に存在している。この集積化されたシステムでは、気体及び液体両方の流量及びいくつかの物理的性状のオンチップ測定、分析及び判定が可能である。このシステムでは、例えば水素、ヘリウム、窒素、空気、アルゴン、水及びIPAの流量、密度、粘度、比熱容量及び熱伝導率を測定することが可能である。
【0034】
一実施形態では、処理ユニットは、特に比熱容量、熱伝導率及び密度のうちの少なくとも一つについて求められた値に基づいて、流量測定システム内の媒体を特定するよう構成されている。この特定は、比熱容量及び(又は)熱伝導率及び(又は)密度の求められた値を、システムに記憶された値、例えば処理ユニットに記憶された値と比較することによって行うことができる。
【0035】
一実施形態では、媒体は、二つの既知の成分を備える混合物であり、処理ユニットは、特に混合物の比熱容量、熱伝導率及び密度のうちの少なくとも一つについて求められた値に基づいて、既知の成分のそれぞれの分率が求まるよう構成されている。この場合、各種の媒体の比熱容量、熱伝導率、及び(又は)密度の値を備え、処理ユニットに記憶させることができる参照表を使用することができる。
【0036】
一態様によれば、本発明は、媒体の熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つを求める方法であって、この方法は、次のステップ、すなわち、
・ 熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つを求めたい媒体を供給するステップ、
・ コリオリ流量センサーの出力信号を得るためにコリオリ流量センサーに媒体を通すステップ、
・ 熱流量センサーの出力信号を得るために熱流量センサーに媒体を通すステップ、及び
・ コリオリ流量センサーの出力信号と熱流量センサーの出力信号に基づいて、流量測定システム内の媒体の熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つを求めるステップ、
を備える方法を提供する。
【0037】
一実施形態によれば、この方法は、さらに媒体の圧力、特に圧力差が求まるステップを備えている。
【0038】
この方法は、コリオリ流量センサーの出力信号と求められた圧力とに基づいて、流量測定システム内の媒体の粘度を求めるステップを備えることができる。
【0039】
一実施形態では、この方法は、流量測定システム内の媒体の流れの特性値、特にレイノルズ数を求めるさらなるステップを備えている。
【0040】
一実施形態では、この方法は、求められた流れの特性値を流れの参照特性値と比較するステップをさらに備え、この比較に基づいて、
・ 求められた特性値が参照特性値を下回る場合には比熱容量を求め、また、
・ 求められた特性値が参照特性値を超える場合には、熱伝導率を求める。
【0041】
一実施形態では、試験流体の参照比熱容量値を用いて、流量測定システム内の媒体の比熱容量を求めることができる。
【0042】
一実施形態では、この方法は、コリオリ流量センサーと熱流量センサーのうちの一方の出力信号の期待値を、コリオリ流量センサーと熱流量センサーのうちの一方の測定値と比較するステップを備えることができ、期待値の測定値に対する比を用いて、媒体の比熱容量を求める。
【0043】
次に、本発明とその利点を、いくつかの典型的な、非限定的な実施形態について、以下の添付の図との組合せで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、本発明に係る流量測定システムを備える装置の概略回路図である。
図2図2は、媒体の比熱容量を求めるための、熱流量センサーの出力信号S対コリオリ流量センサーの出力信号y、及び測定値M対文献に記載の値Lの比較(挿入図)を示す線図である。
図3図3は、媒体の粘度を求めるための、コリオリ流量センサーの出力信号y対圧力センサーの出力信号p、及び測定値M対文献に記載の値Lの比較(挿入図)を示す線図である。
図4図4は、熱伝導率についての測定値M対文献に記載の値Lの比較図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る集積化マルチパラメータ流量測定システムの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、本発明の一実施形態に係る流量測定システム1を備える装置の概略回路図である。流量測定システム1は、媒体がそれを通して流れることができるフローチューブ11、12、13を備えている。チューブを通る流れの方向は、矢印A及びBで示してある。システム1は、コリオリ流量センサー4、及び熱流量センサー6を備えている。
【0046】
このようなコリオリ流量センサー4及び熱流量センサー6は、当業者には、それ自体既知のものであり、したがって、これらについては、ここではこれ以上説明しない。参考文献としては、例えば、コリオリ流量センサーの詳細が記述されているEP2397823A1及びEP2530438、及び熱流量センサーの詳細が記述されているEP1867962A1がある。本発明は、いかなる特定のタイプのコリオリ流量センサー又は熱流量センサーにも限定されない。
【0047】
図1に示した流量測定システム1は、圧力センサー8を備えており、これは、この場合、圧力差センサー8である。このセンサーは、センサー4、6の上流側でフローチューブ11に接続されていると共に、センサー4、6の下流側でフローチューブ13に接続されている。
【0048】
センサー4、6、8は、処理ユニット3に接続されている。図示の実施形態では、これらセンサーは、変換器要素14、16、18により、処理ユニット3のコンピュータ20に結合されており、変換器要素14、16、18は、センサー4、6、8によって生成される出力信号を初期的に処理するため、あるいは、例えば、センサー4、6、8の制御及び(又は)操作などの他の適当な目的に使用することができる。
【0049】
図1に示されているような実験的な装置では、該装置は、センサー4、6、8の上流側に配置された参照圧力コントローラ31、並びにセンサー4、6、8の下流側に配置された参照流量計を備えている。これらは、校正及び(又は)確認目的のために設けられている。
【0050】
図1における符号2で示される破線で囲まれた部分は、本発明の一実施形態に係る流量測定システムのセンサーユニット2を示す。該センサーユニットは、集積化コリオリ流量センサー4、及び集積化熱流量センサー6を備えている。好ましくは、センサーユニット2は、付加的に圧力センサー8を備えている。本発明に係るこの流量測定システムは、さらに処理ユニット3を備えている。このように、図1には、集積化マルチパラメータ流量測定システム1の基本的な構造が示されている。ここでは、システム1は、集積化コリオリ4及び熱流量センサー6、及び付加的な圧力差センサー8から成っている。図5に、システムチップ上の集積化流量測定システムの一例が示されており、同図では、ループ形のコリオリ流量センサー(右上)及び熱流量センサー(下左)が明瞭に示されている。このようなシステムチップは、システムの内容積を最大限に減らしているので、気体及び液体両方の正確な測定に使用することができる。これは、別個の装置からなるシステムに比べて有利である。
【0051】
さらに図1を参照して、動作原理を説明すると、流体の流れが入口でシステムに入り、コリオリ流量センサー及び熱流量センサーを通過して、出口からシステムを出る。入口と出口との間の圧力差が、圧力センサーによって測定される。
【0052】
気体の流量についての実験装置では、加圧容器を用いて空気、水素、ヘリウム、アルゴン及び窒素の流れを1〜20mln/min(基準ミリリットル/分)の範囲で生成した。液体の流れについては、シリンジポンプ・システムを用いて、水及びIPAの流れをシステム通過流量1〜35mg/hの範囲で生成した。システムには、1〜7バールの範囲で圧力を与えた。
【0053】
測定中、圧力センサーの出力信号、熱流量センサーの出力信号及びコリオリ流量センサーの出力信号を、処理ユニット3を用いて同時に記録すると共に、参照計器31、32の出力信号も記録した。
【0054】
熱流量センサー8の出力信号は、流量の尺度であり、圧力は、圧力センサー8によって測定した。コリオリ質量流量センサー4の出力信号は、媒体の質量流量及び密度についての情報の両方を与えるものである。
【0055】
上述したように、計算モデルを介した出力信号からは、他のパラメータが得られる。低流量における熱流量センサーとコリオリ流量センサーの出力信号同士を比較することによって、媒体の熱容量が算出できる(図2)。コリオリ流量センサーと圧力センサーの出力信号同士を比較し、かつ、密度を考慮することによって、媒体の粘度が算出できる(図3)。より高い流量における熱流量センサーとコリオリ流量センサーの出力信号同士を比較することによって、熱伝導率が求められる(図4)。
【0056】
図2では、熱流量センサーの出力S(Y軸)とコリオリ流量センサーの出力y(X軸)との間の関係が示されており、これは、媒体の熱容量の尺度である。ここで、次の媒体を用いた。すなわち、a)ヘリウム、b)アルゴン、c)窒素、d)空気、e)水素、f)水、g)IPAである。式(3)によって導出された熱容量は全て、文献に記載の値の5%以内であった。
【0057】
図3では、コリオリ流量センサーの出力と圧力センサーの出力との間の関係が示されており、これは、媒体の粘度の尺度である。式(5)によって導出された粘度は全て、文献に記載の値の10%以内であった。水素とヘリウムについては最大の偏差が生じたが、これは、システムをこれらの気体で満たすことが難しく、水素又はヘリウムと空気との混合物が生じやすいためである。
【0058】
図4には、測定された気体の熱伝導率の値が示されている。式(4)の曲線への当てはめによって見出された値は、ヘリウムの場合以外は、全て、文献に記載の値の10%以内であり、ヘリウムの場合は、文献に記載の値の20%以内であった。
【0059】
このシステムによれば、比熱容量及び熱伝導率の値を求めることが可能である。また、求めた値及び参照値に基づいて、媒体を特定することが付加的に可能である。また、システムに記憶された既知の成分の参照値を補間して、求めた値をマッチさせることにより、既知の成分を有する混合物の組成を特定することが付加的に可能である。
【0060】
要約すれば、本発明は、媒体の流量を求めるための流量測定システムに関し、それに接続されたコリオリ流量センサー、熱流量センサー及び処理ユニットを備えている。本発明によれば、処理ユニットは、流量測定システム内の媒体の熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つが、コリオリ流量センサー及び熱流量センサー両方の出力信号に基づいて求まるよう構成されている。
図1
図2
図3
図4
図5