【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記処理ユニットは、コリオリ流量センサーと熱流量センサー両方の出力信号に基づいて、特にコリオリ流量センサーと熱流量センサー両方の出力信号の組合せに基づいて、流量測定システム内の媒体の熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つが求まるよう構成されている。
【0008】
上記流量測定システムでは、流量は、コリオリ流量センサー又は熱流量センサーのどちらか(又は両方)を用いて測定できる。コリオリ流量センサーと熱流量センサーとの組合せでは、以下に説明するように、流量測定システム内の媒体の熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つの評定が可能である。
【0009】
一般に、上記処理ユニットは、コリオリ流量センサーと熱流量センサー両方の出力信号を比較することによって、流量測定システム内の媒体の熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つが求まるよう構成されている。
【0010】
特に低流量では、熱流量センサーの出力信号とコリオリ流量センサーの出力信号とを比較することによって、媒体の比熱容量を算出することができる。熱流量センサーの出力信号をコリオリ流量センサーの出力信号に対してプロットした場合、曲線の傾きは、両センサー内に在る媒体の熱容量の尺度となることが判明した。結果として生じた曲線は、媒体とは無関係のセンサー定数を有する次の関数で表すことができる。
【数1】
【0011】
ここで、Sは、熱流量センサーの出力信号であり、yは、コリオリ流量センサーの出力信号である。Cは、参照媒体を用いて求めることができる媒体とは無関係のセンサー定数であり、参照媒体は、それによって流量測定システムの校正が実施できる媒体である。
【0012】
参照媒体以外の媒体がシステム内に存在する場合は、Sの特定の値について、式(1)を解くことができる。yについて解いた値とyについての測定値との比に参照媒体空気の比熱容量の値を掛ければ、実際の媒体の比熱容量の値が得られる。
【0013】
したがって、上述したように、コリオリ流量センサー及び熱流量センサー両方の出力信号を用いることによって、少なくとも比熱容量を求めることができることは明らかである。
【0014】
付加的に又は別法として、熱伝導率を求めることもできる。熱伝導率は、より高い流量での熱流量センサーとコリオリ流量センサーの出力信号を、比較することによって求めることができる。熱流量センサーの出力信号をコリオリ流量センサーの出力信号に対してプロットした場合、より高い流量における曲線の傾きは、両センサー内に在る媒体の熱伝導率の尺度となる。結果として生ずる曲線は、次の式により表すことができる。
【数2】
【0015】
ここで、Sは熱流量センサーの出力信号、yはコリオリ流量センサーの出力信号、λは熱伝導率、Xは媒体と無関係のセンサー定数である。熱伝導率は、熱流量センサーの出力信号及びコリオリ流量センサーの出力信号についての既知の(測定された)値と、センサー定数Xを用いて、式(2)をλについて解くことによって求めることができる。
【0016】
上述のように、媒体の流量、及び比熱容量及び熱伝導率のうちの少なくとも一つを求めることのできる流量測定システムが得られる。以上により、本発明の目的は、達成される。
【0017】
特に、上述したように、少なくとも二つの変数を有する式S = f(y,…)に基づいて、熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つを求めるための処理ユニットが構成でき、該少なくとも二つの変数は、コリオリ流量センサーの出力(y)及び熱流量センサーの出力(S)によって定義されることが分かる。処理ユニットは、出力信号に基づいて式を解くよう構成することができる。処理ユニットは、処理ユニット内又はそれに接続されたユニット内に記憶された参照表(ルックアップテーブル)により、出力信号を用いて前出の式を解くよう付加的に、又は別法として、構成することができる。
【0018】
ある特定の実施形態では、コリオリ流量センサーの出力信号と熱流量センサーの出力信号との間の関係を表すのに、式(1)を多項式関数により表すことができ、また、一実施形態では、式(1)を次の3次多項式関数により表すことができる。
【数3】
【0019】
ここで、C1〜C4は、校正の際に得られる媒体とは無関係のセンサー定数である。上述したように、式(3)は、Sのある値について解くことができる。yについて解いた値とyについての測定値との比に参照媒体空気の比熱容量の値を掛ければ、実際の媒体の比熱容量の値が得られる。この関数は、処理ユニットが、システムにより得られた測定値に基づいて式(3)を解くことができるよう、処理ユニット内に記憶させることができる。
【0020】
一実施形態では、流量測定システムは、試験流体の熱伝導率の参照値を備えている。参照値は、処理ユニット内に記憶させることができる。したがって、処理ユニットは、熱伝導率の参照値を用いて、流量測定システム内の媒体の熱伝導率が上述のごとく求められるよう構成することができる。
【0021】
一実施形態では、熱伝導率は、熱流量センサーの出力信号をコリオリ流量センサーの出力信号に対してプロットすることによって得られる曲線の傾きから得ることができる。式(2)によって指定された曲線は、次の式によってより詳細に表すことができることが判明した。
【数4】
【0022】
ここで、Sは熱流量センサーの出力信号、X
0〜X
2は媒体とは無関係のセンサー定数、c
pは比熱容量、Φ
mは質量流量、λは熱伝導率である。
【0023】
一実施形態では、熱伝導率λは、曲線のフィッティングにより、すなわち、いかなる直接的な分析関係もなしに、式(4)から求まる。
【0024】
好適な一実施形態では、流量測定システムは、さらに圧力センサーを備えている。コリオリ流量センサーと圧力センサーの出力信号同士を比較し、かつ、コリオリ流量センサーによって得られる密度を考慮することによって、媒体の粘度が算出できる。
【0025】
一実施形態では、圧力センサーは、入口と出口の間の圧力差を測定するよう構成された差圧センサーである。
【0026】
流量測定システムの一実施形態では、処理ユニットが圧力センサーに接続されており、かつ、コリオリ流量センサー及び圧力センサー両方の出力信号に基づいて、流量測定システム内の媒体の粘度が求まるよう構成されている。
【0027】
一実施形態では、次の式を用いて媒体の粘度を求めることができる。
【数5】
【0028】
媒体とは無関係の流体抵抗R
0が、空気などの校正用媒体を参照媒体として用いることによって求められる。一実施形態では、質量流量Φ
m及び密度ρは、コリオリ流量センサーによって測定可能であり、圧力損失ΔPは、圧力センサーから得られる。
【0029】
気体の場合は、測定された密度は、気体の圧縮性についての補正ができる。
【0030】
処理ユニットは、流量測定システム内の媒体流れの特性値、特にレイノルズ数が求まるよう構成することができる。レイノルズ数は、圧力及び粘度に基づいており、これは、圧力センサー及びコリオリ流量センサーを用いて、上記の式(5)から得られる。この特性値は、後述のように利用することができる。
【0031】
一実施形態では、流量測定システムは、処理ユニットに記憶された流量の参照特性値を備えており、処理ユニットは、求められた流量の特性値が、それぞれ、流量の参照特性値を超える場合又は下回る場合に、比熱容量が求まり、かつ、求められた流量の特性値が、流量の参照特性値を下回る場合又は超える場合に、熱伝導率が求まるよう、構成されている。
【0032】
例えば、流量が低い場合には、熱伝導率を求めることができ、また、流量が比較的高い場合には、比熱容量を求めることができることが分かっている。流量測定システム内の媒体の流量の特性値、特にレイノルズ数は、流量測定システム内の媒体の流量が低いか高いかを判定するのに利用することができる。求められた特性値は、処理ユニットに記憶された参照値と比較し、それに基づいて、比熱容量及び熱伝導率の一方を求めることができる。レイノルズ数は、流量の特性値として利用することが可能である。その場合、比較的低いレイノルズ数は、比較的低い流量に属し、比較的高いレイノルズ数は、比較的高い流量に属する。レイノルズ数の逆数を用いることが可能であり、この場合には、より低い流量に対しては、より高い数となるであろう。その場合には、上述した記述に必要な変更を加えれば、上述した記述が当てはまることになる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、集積化コリオリ流量センサー、集積化熱流量センサー、及び好ましくは圧力センサーを備えた集積化マルチパラメータ流量測定システムが得られる。集積化された形態では、処理ユニットが同様に存在している。この集積化されたシステムでは、気体及び液体両方の流量及びいくつかの物理的性状のオンチップ測定、分析及び判定が可能である。このシステムでは、例えば水素、ヘリウム、窒素、空気、アルゴン、水及びIPAの流量、密度、粘度、比熱容量及び熱伝導率を測定することが可能である。
【0034】
一実施形態では、処理ユニットは、特に比熱容量、熱伝導率及び密度のうちの少なくとも一つについて求められた値に基づいて、流量測定システム内の媒体を特定するよう構成されている。この特定は、比熱容量及び(又は)熱伝導率及び(又は)密度の求められた値を、システムに記憶された値、例えば処理ユニットに記憶された値と比較することによって行うことができる。
【0035】
一実施形態では、媒体は、二つの既知の成分を備える混合物であり、処理ユニットは、特に混合物の比熱容量、熱伝導率及び密度のうちの少なくとも一つについて求められた値に基づいて、既知の成分のそれぞれの分率が求まるよう構成されている。この場合、各種の媒体の比熱容量、熱伝導率、及び(又は)密度の値を備え、処理ユニットに記憶させることができる参照表を使用することができる。
【0036】
一態様によれば、本発明は、媒体の熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つを求める方法であって、この方法は、次のステップ、すなわち、
・ 熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つを求めたい媒体を供給するステップ、
・ コリオリ流量センサーの出力信号を得るためにコリオリ流量センサーに媒体を通すステップ、
・ 熱流量センサーの出力信号を得るために熱流量センサーに媒体を通すステップ、及び
・ コリオリ流量センサーの出力信号と熱流量センサーの出力信号に基づいて、流量測定システム内の媒体の熱伝導率及び比熱容量のうちの少なくとも一つを求めるステップ、
を備える方法を提供する。
【0037】
一実施形態によれば、この方法は、さらに媒体の圧力、特に圧力差が求まるステップを備えている。
【0038】
この方法は、コリオリ流量センサーの出力信号と求められた圧力とに基づいて、流量測定システム内の媒体の粘度を求めるステップを備えることができる。
【0039】
一実施形態では、この方法は、流量測定システム内の媒体の流れの特性値、特にレイノルズ数を求めるさらなるステップを備えている。
【0040】
一実施形態では、この方法は、求められた流れの特性値を流れの参照特性値と比較するステップをさらに備え、この比較に基づいて、
・ 求められた特性値が参照特性値を下回る場合には比熱容量を求め、また、
・ 求められた特性値が参照特性値を超える場合には、熱伝導率を求める。
【0041】
一実施形態では、試験流体の参照比熱容量値を用いて、流量測定システム内の媒体の比熱容量を求めることができる。
【0042】
一実施形態では、この方法は、コリオリ流量センサーと熱流量センサーのうちの一方の出力信号の期待値を、コリオリ流量センサーと熱流量センサーのうちの一方の測定値と比較するステップを備えることができ、期待値の測定値に対する比を用いて、媒体の比熱容量を求める。
【0043】
次に、本発明とその利点を、いくつかの典型的な、非限定的な実施形態について、以下の添付の図との組合せで説明する。