(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557719
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】過給内燃機関に導入される空気の量を調節する装置およびそのような装置を使用する方法
(51)【国際特許分類】
F02B 37/02 20060101AFI20190729BHJP
F02B 37/04 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
F02B37/02 H
F02B37/04 Z
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-504067(P2017-504067)
(86)(22)【出願日】2015年6月24日
(65)【公表番号】特表2017-521602(P2017-521602A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】EP2015064282
(87)【国際公開番号】WO2016012187
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2018年3月6日
(31)【優先権主張番号】1457141
(32)【優先日】2014年7月24日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】コリユー、 ティエリ
【審査官】
小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−086877(JP,A)
【文献】
特開昭55−125319(JP,A)
【文献】
特開平10−030446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00−41/10
F02D 13/00−28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給内燃機関の吸気口に導入される空気の量を調節し、前記過給内燃機関は、各々が少なくとも1つの気筒(121、122、123、124)のユニットの排気マニホールド(30、34)に連結された2つの排気ガス排気口(32、36)を有する装置であって、
前記2つの排気ガス排気口に連結された2つのタービン吸気口(46、48)を有するタービン(40)と外気圧縮機(44)とを備えたターボチャージャーを含む過給装置(38)と、圧縮空気を前記外気圧縮機から前記タービン吸気口に部分的に移送するダクト(64)とを有し、
前記部分的に移送するダクトは、前記タービン吸気口に連結され、各々が内部の圧縮空気の循環を制御する第1の弁規制手段(74、76)を保持する2つの分岐管(70、72)を有し、
前記分岐管の一方(70)は、連結配管(84)によって前記分岐管の他方(72)と連結されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記分岐管の各々は、逆止弁(80、82)をさらに保持することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記連結配管は、第2の弁規制手段(86)を保持することを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2の弁規制手段は、比例弁(86)を有することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の弁規制手段は、比例弁(74、76)を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記移送するダクト(64)は、内部を循環する圧縮空気を加熱する手段(88)を保持することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記加熱する手段(88)は、熱交換器を有することを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記熱交換器(88)は、前記ターボチャージャーの前記タービン(40)から流入する排気ガス用の吸気口(92)と、排気配管への排気ガス排気口(94)とを有することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
過給内燃機関の吸気口内の圧縮空気の量を調節する方法であって、
前記過給内燃機関は、各々が少なくとも1つの気筒(121、122、123、124)のユニットの排気マニホールド(30、34)に連結された2つの排気ガス排気口(32、36)を有し、
前記2つの排気ガス排気口に連結された2つのタービン吸気口(46、48)を有するタービン(40)と外気圧縮機(44)とを備えたターボチャージャーを含む過給装置(38)と、圧縮空気を前記外気圧縮機から前記タービン吸気口に部分的に移送するダクト(64)とを有し、
前記外気圧縮機から流出した圧縮空気の一部をタービン(40)の排気ガス吸気区間(46、48)に導入することを含み、
前記移送するダクト(64)を2つの分岐管(70、72)に分割することと、前記分岐管の各々における圧縮空気の循環を、弁規制手段(74、76)を用いて制御することを含み、
前記分岐管の一方を連結配管(84)によって前記分岐管の他方に連結することを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記移送するダクト内を循環する圧縮空気を前記タービンに導入される前に加熱することを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給内燃機関、特に定置エンジン、自動車用エンジンまたはトラック用エンジンの吸気口に導入される空気の量を調節する装置、およびそのようなエンジンの空気の量を調節する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広く知られているように、内燃機関によって伝達される動力は、このエンジンの燃焼室に導入される空気の量に依存し、その空気の量自体は、空気の密度に比例する。
【0003】
したがって、燃焼室に導入する前に、外気の圧縮により空気の量を増加させることが通例である。この工程は、過給と呼ばれ、ターボチャージャーまたは機械的に駆動される圧縮機(遠心式圧縮機であってもよいし、容積式圧縮機でもよい)のような任意の手段によって実行することができる。
【0004】
ターボチャージャーによる過給の場合、ターボチャージャーは、軸によって回転圧縮機に連結された単流回転タービンまたは複流回転タービンを有する。エンジンから流出した排気ガスがタービンを通過し、そしてタービンが回転駆動される。その後、この回転が圧縮機に伝達され、圧縮機自体が回転することによって、外気が燃焼室に導入される前に圧縮される。
【0005】
仏国特許出願公開第2478736号明細書で詳細に記載されているように、エンジン燃焼室内の圧縮空気の量を大幅に増大させるために、圧縮機による外気の圧縮を強化することが提案されている。
【0006】
これは、より具体的には、タービンの回転速度、つまり圧縮機の回転速度を高くすることによって実現される。
【0007】
このため、圧縮機から排出される圧縮空気の一部がタービンの吸気口に直接送られ、排気ガスと混合される。このタービンは、より多くの量の流体(圧縮空気と排気ガスの混合物)によって横断され、それによりタービンの回転速度、つまり圧縮機の回転速度を高くすることができる。したがって、この圧縮機の速度が高くなると、圧縮機内で圧縮され、その後エンジン燃焼室に導入される外気の圧力を高めることが可能になる。
【0008】
したがって、圧縮空気の密度が高くなり、それにより、燃焼室に収容される空気の量を増大させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この種の過給エンジンは、満足いくものであるが、それにもかかわらずいくつかの重大な欠点を有する。
【0010】
実際、タービンの吸気口に導入される圧縮空気の流量は、正しく調節されないため、エンジンに誤動作が生じる恐れがある。
【0011】
したがって、例えば、過度の量の圧縮空気がタービンの吸気口に送られた場合、タービンに入った排気ガスがこの空気によって過度に冷却され、過給性能が全体的に低下する恐れがある。
【0012】
本発明は、エンジンに対する動力要件の全てに対応することができる過給内燃機関の吸気口に導入される空気の量を調節する装置によって前述の欠点を是正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明は、過給内燃機関の吸気口に導入される空気の量を調節し、内燃機関が、各々が少なくとも1つの気筒のユニットの排気マニホールドに連結された2つの排気ガス排気口を有する装置であって、各排気ガス排気口に連結されたダブルインテークタービンと外気圧縮機とを備えたターボチャージャーを含む過給装置と、圧縮空気を圧縮機から各タービンの吸気口に部分的に移送するダクトとを有する装置において、部分的に移送するダクトが、各タービンの吸気口に連結され、各々が、内部の圧縮空気の循環を制御する弁規制手段を保持する2つの分岐管を有することを特徴とする装置に関する。
【0014】
有利なことに、分岐管の各々は逆止め弁をさらに保持する。
【0015】
分岐管の一方は、連結配管によって分岐管の他方と連結することができる。
【0016】
連結配管は、弁規制手段を保持することができる。
【0017】
弁規制手段は、比例弁を有することができる。
【0018】
移送ダクトは、内部を循環する圧縮空気を加熱する手段を保持することができる。
【0019】
加熱する手段は、熱交換器を有することができる。
【0020】
熱交換器は、ターボチャージャータービンから流入する排気ガス用の吸気口と、排気配管への排気ガス排気口とを有することができる。
【0021】
本発明は、過給内燃機関の吸気口内の圧縮空気の量を調節する方法であって、内燃機関が、各々が少なくとも1つの気筒のユニットの排気マニホールドに連結された2つの排気ガス排気口を有し、装置が、各排気ガス排気口に連結されたダブルインテークタービンと外気圧縮機とを有するターボチャージャーを含む過給装置と、圧縮空気を圧縮機から各タービン吸気口に部分的に移送するダクトとを有する方法において、圧縮機から流出した圧縮空気の一部をタービンの排気ガス吸気区間に導入することから成ることを特徴とする方法に関する。
【0022】
この方法は、移送ダクトを2つの分岐管に分割することと、分岐管の各々における圧縮空気の循環を、弁規制手段を用いて制御することを含んでもよい。
【0023】
この方法は、分岐管の一方を連結配管によって分岐管の他方に連結することから成ってもよい。
【0024】
この方法は、移送ダクト内を循環する圧縮空気をタービンに導入される前に加熱することから成ってもよい。
【0025】
本発明の他の特徴および利点は、単に例示を目的とした非制限的な以下の説明でより明確になる。この説明には、以下の図が添付されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による過給装置を有する内燃機関を示す図である。
【
図2】過給装置を有する内燃機関の変形実施形態を示す図である。
【
図3】
図1による過給装置を有する内燃機関の変形実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1において、内燃機関10は、少なくとも2本の気筒、ここでは図の左側から符号12
1〜12
4で示された4本の気筒を有する。
【0028】
このエンジンは、特にディーゼル式の直接噴射内燃機関であることが好ましいが、他の種類の内燃機関でもよい。
【0029】
各気筒は、少なくとも1つの吸気弁16、ここでは、各々が吸気管18を制御する2つの吸気弁を含む吸気手段14を有する。各吸気管18は、圧縮空気などの吸気が供給ダクト22によって供給される吸気マニホールド20で端部となる。
【0030】
この気筒は、少なくとも1つの排気弁26、ここでは、各々が排気チューブ28を制御する2つの弁を含む燃焼ガス排気手段24を有する。
【0031】
図示の例では、このエンジンは、1−3−4−2の点火順序に従って動作するように設けられている。この点火順序を考慮して、第1の気筒12
1および第2の気筒12
4のそれぞれの排気チューブは、少なくとも1本の気筒の第1のユニットを形成し、第1の排気ガス排気口32を含む第1の排気マニホールド30に連結されている。第3の気筒12
2および第4の気筒12
3の排気チューブは、少なくとも1本の気筒の第2のユニットを形成し、第2の排気ガス排気口36を有する第2の排気マニホールド34に連結されている。
【0032】
2つの排気ガス排気口は、空気を圧縮するターボチャージャー38に至り、より具体的には、このターボチャージャーの膨張タービン40に至る。
【0033】
図1に示されているように、ターボチャージャーは、「ツインスクロール」ターボチャージャーとしてより良く知られているダブルインテークターボチャージャーである。
【0034】
この種のターボチャージャーは、排気ガスによって掃引され、軸42によって圧縮機44と回転可能に連結された膨張タービン40を有する。
【0035】
タービンにおいて、排気ガス吸気口は、2つの区間、すなわち、第1のマニホールド30の第1の排気ガス排気口32に連結された第1の吸気区間46と、第2の排気マニホールド34の第2の排気ガス排気口36に連結された第2の吸気区間48とに分割される。
【0036】
タービン40のガス排出装置50は、慣習的にエンジンの排気配管52に連結されている。
【0037】
ターボチャージャー38の圧縮機44は、供給ダクト56から供給を受ける外気吸気口54を有する。この圧縮機の圧縮空気排気口58は、ダクト60によって吸気マニホールド20の供給ダクト22と連結されている。
【0038】
有利なことに、ダクト60上における圧縮機とダクト22との間に圧縮空気冷却機62を配置することができる。
【0039】
図1でより良く分かるように、移送ダクト64によって、圧縮機44から出た圧縮空気の一部をタービン吸気口46および48に循環させることができる。
【0040】
より厳密には、この部分移送ダクトは、ダクト60における圧縮機と冷却機62との間の交差点66から始まり、分岐点68で2つの分岐管70および72に分割される。分岐管70は、第1の排気ガス排気口32との連結部を介してタービン吸気口46に至り、分岐管72は、排気ガス排気口36との連結部を介してタービンの他方の吸気口48に至る。
【0041】
各分岐管は、比例弁のような制御手段78によって制御される弁規制手段74および76を保持している。制御手段78は、2つの弁規制手段に共通するものでもよい。したがって、この弁によって、分岐管内の圧縮空気の循環を制御することができる。
【0042】
また、有利なことに、各分岐管は、分岐管から圧縮機への圧縮空気の循環を防止し、かつ、2つの分岐管が連通することを防止する逆止め弁80および82を有する。
【0043】
したがって、この構成では、エンジンの動作時に、排気マニホールドにおいて間欠的に広がる低排気圧の領域を利用して圧縮空気をタービンに導入し、それにより、このタービンの流量、つまり圧縮機の流量を増大させることが可能である。これにより、低いエンジン速度に対してより効率的な過給を行うことが可能である。
【0044】
動作時には、気筒内で大量の空気が必要な場合、弁74および76が開かれ、圧縮機44からタービン40に圧縮空気が導入される。
【0045】
圧縮機44から流出した圧縮空気は、ダクト64内を循環し、その後、分岐管70および72内を循環してタービン40の排気ガス吸気口46および48に達し、余剰のガスをこのタービンに供給する。
【0046】
したがって、タービンは排気口32および36からの排気ガスによって掃引されるだけでなく、これらのガスに付加される圧縮空気によっても掃引される。このため、タービンの回転が増加して圧縮機の回転が増加し、その結果、この圧縮機から流出する圧縮空気の圧力が上昇する。
【0047】
当然ながら、弁74および76は、エンジンの過給要件を満たす量の圧縮空気をタービンに導入するように制御手段78にて制御される。
【0048】
図2の変形例は、連結ダクト84が2つの分岐管70および72の間に配置される点で
図1とは区別できる。また、ここでは、このダクトは、比例弁のような制御手段78によって制御される弁規制手段86を備えている。
【0049】
このダクトの両端部の一方は、弁74と排気ガス排気口32との間で分岐管70に連結され、他方は、弁76と排気ガス排気口46との間で連結されている。
【0050】
このダクトによって、タービンに到達する2つの分岐管間の流体の連通を制御することが可能になる。
【0051】
より厳密には、この連結ダクトによって、一方の分岐管内を循環する圧縮空気の一部を、向きを変えて他方の分岐管に導入し、タービン40の各吸気口において排気ガスと混合することが可能になる。
【0052】
さらに、連結ダクトによって、タービンの分岐管の一方において、エンジンの燃焼サイクルで角度がずれている他方の分岐管の排気ガス(または、脈動排気)の差圧を戻すことが可能である。
【0053】
基本的に
図1の要素と同じ要素を有する
図3の例では、圧縮機44から流出して移送ダクト64内を循環する圧縮空気は、タービン40に導入される前に加熱される。
【0054】
この目的のために、移送ダクト64は、このダクトによって構成される交差点66と分岐点68との間に配置された、圧縮空気を加熱する手段88、ここでは放熱機型の熱交換器を保持している。この放熱機は、エンジンの排気ガスによって掃引されながら、このダクト内を循環する圧縮空気に横断される。これらの排気ガスは、タービン排出装置50から流出し、ダクト90によって放熱機吸気口92に運ばれる。排気ガスは、この放熱機内を流れ、放熱機に含まれる熱を圧縮空気に伝達し、その後排気口94を通って再びこの放熱機から流出し、エンジン排気配管に送られる。
【0055】
したがって、排気ガスのエネルギーの一部は、吸気口46および48の一方または他方を通してタービンに導入される圧縮空気によって回収される。
【0056】
したがって、この加熱された圧縮空気によって、余分なエネルギーをタービンに供給することが可能であり、その結果、タービンがより高い速度で回転する。そして、この高い回転速度は、圧縮機に伝達され、圧縮機によって外気のより高い圧縮が行われる。