特許第6557721号(P6557721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本触媒の特許一覧

<>
  • 特許6557721-粒子状吸水剤 図000006
  • 特許6557721-粒子状吸水剤 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557721
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】粒子状吸水剤
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20190729BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20190729BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   B01J20/26 D
   B01J20/28 Z
   C08F220/06
【請求項の数】10
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-510039(P2017-510039)
(86)(22)【出願日】2016年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2016060179
(87)【国際公開番号】WO2016158976
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2017年9月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-70173(P2015-70173)
(32)【優先日】2015年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸弥
(72)【発明者】
【氏名】大森 康平
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 一司
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−531467(JP,A)
【文献】 特開平04−175319(JP,A)
【文献】 特開平05−112654(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/040530(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/102407(WO,A1)
【文献】 特表2014−512440(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0211699(US,A1)
【文献】 特表2011−513040(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/126079(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/34
A41B 13/04
C08J 3/24
C08L 33/02
C08F 220/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、以下の(a)〜(d)を満たすことを特徴とする、粒子状吸水剤:
(a)下記式(1)
EXI=遠心分離機保持容量/Ln(水可溶分量) (1)
で表されるEXIが11.5以上である;
(b)水可溶分の、下記式(2)
分子量分布=重量平均分子量/数平均分子量 (2)
で表される分子量分布が1.0〜4.8である;
(c)加水分解処理後の重量平均分子量が450,000〜1,800,000Daである;
(d)加水分解処理後の分岐密度が0.100以下である
(e)遠心分離機保持容量が23g/g〜34g/gである
(ここで、上記加水分解処理は、上記粒子状吸水剤を0.9重量%塩化ナトリウム水溶液で膨潤させて更に水可溶分を除去したゲル600mgを、10mLの0.1N水酸化ナトリウム水溶液中で80℃条件下3週間静置する処理である)。
【請求項2】
上記水可溶分の重量平均分子量が200,000〜1,000,000Daであることを特徴とする請求項1に記載の粒子状吸水剤。
【請求項3】
加圧下吸水倍率が20g/g以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子状吸水剤。
【請求項4】
食塩水流れ誘導性が10×10−7・cm・s・g−1以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項5】
吸水時間が42秒以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項6】
自由膨潤速度が0.28g/(g・s)以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項7】
上記加水分解処理後の分岐度が2.5以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項8】
共有結合性表面架橋剤によって表面架橋されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項9】
多価金属塩を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項10】
粒子径が150μm未満である粒子の割合が5重量%以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状吸水剤に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂(SAP/Super Absorbent Polymer)は、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤であり、紙オムツ及び生理用ナプキン等の吸収性物品、農園芸用の保水剤、並びに工業用の止水材等として、主に使い捨て用途に多用されている。このような吸水性樹脂の中でも特に、アクリル酸及び/又はその塩を単量体として用いたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、その吸水性能が高いという観点から工業的に最も多く用いられている。
【0003】
上記吸水性樹脂の主用途である紙オムツの高性能化に伴い、吸水性樹脂に対して多くの機能(物性)が要求されている。吸水性樹脂の物性の具体的な例としては、遠心分離機保持容量、食塩水流れ誘導性、加圧下での吸収力及び水可溶分量等の物性が挙げられる。そのため、多くの表面架橋技術、添加剤及び製造工程の変更等、数多くの提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、アクリル酸及び/又はその塩を90モル%以上含む水溶性不飽和単量体を主鎖の繰り返し単位とし、内部に架橋構造を有する吸水性樹脂であって、特定の処理後の、重量平均分子量Log(Mw)=6.10における固有粘度(IV)が7.3(dL/g)以下の吸水性樹脂が開示されている。
【0005】
更に紙オムツの実使用においては、長時間、吸収性能が低下しないことが要求されており、吸水剤の劣化防止に対する改善技術(耐尿性向上)が提案されている。例えば、吸水性樹脂の製造方法において金属キレートを添加する技術(特許文献2〜5)、ホスフィン酸基又はホスホン酸基を有するアミン化合物又はその塩で吸水性樹脂を処理する技術(特許文献6)、含酸素還元性無機塩で吸水性樹脂を処理する技術(特許文献7)及びアミノカルボン酸(塩)等のイオン封鎖剤で吸水性樹脂を処理する技術(特許文献8)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国公表特許公報「特表2009−531467号(2009年9月3日公表)」
【特許文献2】日本国公開特許公報「特開2003−206305号(2003年7月22日公開)」
【特許文献3】日本国公開特許公報「特開2003−206381号(2003年7月22日公開)」
【特許文献4】米国特許第5610208号明細書(1997年3月11日登録)
【特許文献5】国際公開第2005/92956号パンフレット(2005年10月6日公開)
【特許文献6】日本国公開特許公報「特開平1−275661号(1989年11月6日公開)」
【特許文献7】日本国公開特許公報「特開昭63−118375号(1988年5月23日公開)」
【特許文献8】日本国公開特許公報「特開平11−315148号(1999年11月16日公開)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、吸水性樹脂(粒子状吸水剤)においては、更なる物性の向上が求められている。例えば、上述のような従来技術は、吸水剤の劣化防止(耐尿性向上)には優れているものの、吸水性能または取り扱い性に問題を有していた。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、その目的は加圧下吸水倍率及び通液性に優れた吸水性樹脂(粒子状吸水剤)であって、紙オムツで使用した際に吸収性能の低下が少ない好適な粒子状吸水剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、遠心分離機保持容量に比して水可溶分量が少なく、水可溶分の分子量分布が狭く、架橋構造の主鎖を構成しているポリマー鎖の分子量が一定の範囲内にあり、更にそのポリマー鎖の分岐密度が小さい吸水性樹脂(粒子状吸水剤)が、特に優れた加圧下吸水倍率、通液性及び吸水速度等を有し、かつ耐尿性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の構成からなるものである。
【0011】
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、以下の(a)〜(d)を満たすことを特徴とする粒子状吸水剤:
(a)下記式(1)
EXI=遠心分離機保持容量/Ln(水可溶分量) (1)
で表されるEXIが11.5以上である;
(b)水可溶分の、下記式(2)
分子量分布=重量平均分子量/数平均分子量 (2)
で表される分子量分布が1.0〜4.8である;
(c)加水分解処理後の重量平均分子量が450,000〜1,800,000Daである;
(d)加水分解処理後の分岐密度が0.100以下である
(ここで、上記加水分解処理は、上記粒子状吸水剤を0.9重量%塩化ナトリウム水溶液で膨潤させて更に水可溶分を除去したゲル600mgを、10mLの0.1N水酸化ナトリウム水溶液中で80℃条件下3週間静置する処理である)。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る粒子状吸収剤は、吸水性能に優れるだけでなく、尿を吸収した際の耐尿性にも優れるため、特に紙オムツ等の衛生用品に適用した場合、劣化を抑制することで実使用時のゲルの形状が崩れにくくなり、長時間に渡り良好な吸水性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】拡散吸収時間の測定に用いる測定装置の構造を示す概略図である。
図2】拡散吸収時間の測定に用いる測定装置の上蓋及びトレーの外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る粒子状吸水剤について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更及び実施することができる。
【0015】
具体的には、本発明は下記各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲において種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0016】
〔1〕用語の定義
〔1−1〕「吸水性樹脂」
本明細書において、「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を指し、以下の物性を満たすものを意味する。即ち、「水膨潤性」として、ERT441.2−02で規定されるCRC(遠心分離機保持容量)が5g/g以上、かつ、「水不溶性」として、ERT470.2−02で規定されるExt(水可溶分)が50重量%以下であることをいう。
【0017】
上記吸水性樹脂は、その用途に応じて適宜設計可能であり、特に限定されないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた親水性架橋重合体であることが好ましい。また、全量(100重量%)が重合体である形態に限定されず、上記物性(CRC及びExt)を満足する範囲内において、表面架橋されたもの及び/又は添加剤等を含んでいる組成物であってもよい。更に、各工程で得られる形状が異なる吸水性樹脂(形状として、例えば、シート状、繊維状、フィルム状及びゲル状等が挙げられる)であっても、添加剤等を含有した吸水性樹脂組成物であってもよい。
【0018】
更に、本明細書における吸水性樹脂は、最終製品に限らず、吸水性樹脂の製造工程における中間体(例えば、重合後の含水ゲル状架橋重合体、乾燥後の乾燥重合体、又は表面架橋前の吸水性樹脂粉末等)を指す場合もあり、上記吸水性樹脂組成物と合わせて、これら全てを包括して「吸水性樹脂」と総称する。
【0019】
〔1−2〕「ポリアクリル酸(塩)」
本明細書において、「ポリアクリル酸(塩)」とは、ポリアクリル酸及び/又はその塩を指し、主成分として、アクリル酸及び/又はその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)を繰り返し単位として含み、任意成分としてグラフト成分を含む重合体を指す。
【0020】
なお、上記「主成分」とは、重合に用いられる総単量体(内部架橋剤を除く)に対して、アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が通常50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、更に好ましくは実質100モル%であることをいう。
【0021】
〔1−3〕「EDANA」及び「ERT」
「EDANA」とは、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称であり、「ERT」とは、欧州標準(ほぼ世界標準)である吸水性樹脂の測定方法(EDANA Recommended Test Methods)の略称である。なお、本発明においては、特に断りのない限り、ERT原本(公知文献:2002年改定)に準拠して測定を行う。
【0022】
(a)「CRC」
「CRC」は、ERT441.2−02で規定されるCentrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)を意味する。CRCは、無加圧下吸水倍率とも呼ばれる。上記CRCは、具体的には、吸水性樹脂0.200gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)を用いて水切りした後の吸水性樹脂の吸水倍率(単位;g/g)を意味する。
【0023】
(b)「AAP」
「AAP」は、ERT442.2−02で規定されるAbsorption Against Pressure(加圧下吸水倍率)を意味する。上記AAPは、具体的には、吸水性樹脂0.900gを大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して、1時間、4.83kPa(0.7psi)荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位;g/g)を意味する。なお、ERT442.2−02では、Absorption Under Pressureと表記されているが、実質的に同一内容である。
【0024】
(c)「Ext」
「Ext」は、ERT470.2−02で規定されるExtractables(水可溶分)を意味し、吸水性樹脂に含まれる、水に可溶な成分を表す。上記Extは、吸水性樹脂1.0gを0.9重量%塩化ナトリウム水溶液184.3gに添加し、500rpmで16時間攪拌した後、溶解したポリマー量をpH滴定で測定した値(単位;重量%)を意味する。なお、Extは、水可溶成分量とも称する。
【0025】
〔1−4〕「FSR」
本明細書において、「FSR」とは、Free Swell Rate(自由膨潤速度)を指し、吸水性樹脂1gが0.9重量%塩化ナトリウム水溶液20gを吸水するときの速度(単位;g/(g・s))を意味する。
【0026】
〔1−5〕「SFC」
本明細書において、「SFC」とは、Saline Flow Conductivity(食塩水流れ誘導性)を指し、荷重2.07kPaにおける吸水性樹脂に対する0.69重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性を意味する(単位;×10−7・cm・s・g−1)。SFCの値が大きいほど、吸水性樹脂は、高い液透過性を有することとなる。SFCは、米国特許第5669894号明細書に記載されたSFC試験方法に準じて測定される。
【0027】
〔1−6〕その他
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、「X以上、Y以下」であることを意味する。特に注釈のない限り、「ppm」は「重量ppm」を意味する。「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」、「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。更に、「〜酸(塩)」は「〜酸及び/又はその塩」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0028】
また、本明細書において「耐尿性」とは、尿を吸収した場合に吸水性能の劣化が少ないことを意図する。例えば、実施例に記載の方法によって測定した拡散吸収時間と劣化拡散吸収時間との差が小さいことをもって、耐尿性を有すると判断することができる。拡散吸収時間と劣化拡散吸収時間との差は、各回の測定について10秒以下であることが好ましく、3回の測定による合計時間の差が25秒以下であることが好ましく、20秒以下であることがより好ましく、15秒以下であることが更に好ましい。上記範囲であれば、長時間に渡って良好な吸水性能を維持することができるため、好ましい。
【0029】
〔2〕粒子状吸水剤の物性
本発明に係る粒子状吸水剤は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、以下の(a)〜(d)を満たすことを特徴とする。
【0030】
(a)下記式(1)
EXI=遠心分離機保持容量/Ln(水可溶分量) (1)
で表されるEXIが11.5以上である;
(b)水可溶分の、下記式(2)
分子量分布=重量平均分子量/数平均分子量 (2)
で表される分子量分布が1.0〜4.8である;
(c)加水分解処理後の重量平均分子量が450,000〜1,800,000Daである;
(d)加水分解処理後の分岐密度が0.100以下である。
【0031】
以下、本発明に係る粒子状吸水剤の物性について、詳細に説明する。
【0032】
〔2−1〕遠心分離機保持容量(CRC)
本発明に係る粒子状吸水剤のCRCは、好ましくは23g/g以上、より好ましくは25g/g以上、更に好ましくは26g/g以上である。上限値は、高値ほど好ましく特に限定されないが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは34g/g以下、より好ましくは33g/g以下である。該CRCを23g/g以上とすることで、吸収量が多くなり、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体として好適となる。また、該CRCを34g/g以下とすることで、尿及び血液等の体液等を吸収する速度が速くなるため、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に好適となる。なお、CRCは、内部架橋剤及び/又は表面架橋剤等で制御することができる。
【0033】
〔2−2〕加圧下吸水倍率(AAP)
本発明に係る粒子状吸水剤のAAPは、好ましくは20g/g以上、より好ましくは21g/g以上、更に好ましくは22g/g以上、特に好ましくは23g/g以上である。上限値は、高値ほど好ましく特に限定されないが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは30g/g以下である。該AAPが20g/g以上であれば、粒子状吸水剤に圧力が加わった際の液の戻り(通称リウェット:Re−Wet)が少なくなるため、好ましい。なお、AAPは、粒度及び/又は表面架橋剤等で制御することができる。
【0034】
〔2−3〕自由膨潤速度(FSR)
本発明に係る粒子状吸水剤のFSRは、好ましくは0.28g/(g・s)以上、より好ましくは0.30g/(g・s)以上、更に好ましくは0.35g/(g・s)以上である。該FSRが0.28g/(g・s)以上であれば、粒子状吸水剤を吸収体に使用する場合、液がより十分に吸収され液漏れを生じないため、好ましい。
【0035】
〔2−4〕吸水時間(Vortex)
本発明に係る粒子状吸水剤のVortexは、好ましくは42秒以下、より好ましくは40秒以下、更に好ましくは35秒以下である。該Vortexが42秒以下であれば、粒子状吸水剤を吸収体に使用する場合、液がより十分に吸収され液漏れを生じないため、好ましい。なお、本明細書において、「吸水時間(Vortex)」は、JIS K7224に記載の「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」に準じて求めた吸水時間であり、2gの粒子状吸水剤が50gの生理食塩水を吸水する時間のことをいう。
【0036】
〔2−5〕食塩水流れ誘導性(SFC)
本発明に係る粒子状吸水剤のSFCは、好ましくは10×10−7cm・s・g−1以上、より好ましくは20×10−7cm・s・g−1以上、更に好ましくは30×10−7cm・s・g−1以上、更により好ましくは50×10−7cm・s・g−1以上、特に好ましくは70×10−7cm・s・g−1以上、最も好ましくは90×10−7cm・s・g−1以上である。該SFCが10×10−7cm・s・g−1以上であれば、通液性が高く、吸収体に利用された場合、液の取り込み速度がより優れた粒子状吸水剤を得ることができるため、好ましい。
【0037】
〔2−6〕水可溶分量(Ext)
本発明に係る粒子状吸水剤のExtは、通常50重量%以下であり、好ましくは35重量%以下、より好ましくは25重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。下限値については特に限定されないが、好ましくは0重量%、より好ましくは0.1重量%程度である。該Extが50重量%以下であれば、ゲル強度が強く、液透過性に優れたものとなる。また、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体に使用された場合、吸収体に圧力が加わった際の液の戻り(通称リウェット:Re−Wet)が少ない粒子状吸水剤となる。なお、Extは、内部架橋剤等で制御することができる。
【0038】
〔2−7〕EXI
本明細書において「EXI」とは、Extractable Indexの略称であり、以下の式(1)により求められる値を意味する。
【0039】
EXI=遠心分離機保持容量/Ln(水可溶分量) (1)
ここで、遠心分離機保持容量は上述のようにERT441.2−02に規定されるCRCを意味し、Ln(水可溶分量)は水可溶分量の自然対数を意味する。
【0040】
本発明に係る粒子状吸水剤においては、遠心分離機保持容量(CRC)に対して水可溶分量が少ないことが好ましく、EXIによってこれを評価することができる。EXIが大きい場合は、CRCに対して水可溶分量が少ないことを表し、EXIが小さい場合は、CRCに対して水可溶分量が多いことを表す。水可溶分量が多いと、加圧下吸水倍率及び通液性の低下を引き起こし得る。また、水可溶分量が多いと、膨潤時に水可溶分が溶出することにより、通液の阻害又はべたつきの原因になり得る。
【0041】
本発明に係る粒子状吸水剤のEXIは、11.5以上であり、好ましくは11.7以上、より好ましくは12.0以上である。該EXIが11.5以上であれば、上述した加圧下吸水倍率及び通液性の低下、並びに通液の阻害及びべたつきの発生を防ぐことができる。
【0042】
〔2−8〕水可溶分の分子量分布
本明細書において、「水可溶分の分子量分布」とは、以下の式(2)により求められる値を意味する。
【0043】
分子量分布=重量平均分子量/数平均分子量 (2)
ここで本明細書では、重量平均分子量をMw、数平均分子量をMn、分子量分布をMw/Mnとも称する。
【0044】
本発明に係る粒子状吸水剤の水可溶分の分子量分布は、1.0〜4.8であり、好ましくは2.0〜4.6、より好ましくは2.5〜4.3、更に好ましくは3.0〜4.0である。また、該分子量分布は、2.0〜4.8であってもよく、2.0〜4.6であってもよく、2.0〜4.3であってもよく、2.0〜4.0であってもよい。該分子量分布は小さい方が好ましい(理論的には1.0)が、ある程度までであれば本発明の効果を得られることから、上記範囲であればよい。
【0045】
具体的に、水可溶分量及びその重量平均分子量は等しいが分子量分布の異なる粒子状吸収剤を用いた紙おむつを比較した場合を例示して説明する。この場合、分子量分布の大きい粒子状吸収剤の方が、膨潤時に短時間で水可溶分が溶出し易い分子量の小さな水可溶分がより多く含まれ、それゆえ、使用中に物性が低下しやすい。そのため、分子量分布は小さい方が好ましい。
【0046】
また、本発明に係る粒子状吸水剤の水可溶分の重量平均分子量は、好ましくは200,000〜1,000,000Da、より好ましくは250,000〜1,000,000Da、更に好ましくは300,000〜1,000,000Daの範囲である。該水可溶分の重量平均分子量が200,000Da以上であれば、紙おむつに用いた粒子状吸水剤からの短時間の水可溶分の溶出が少ないため、好ましい。
【0047】
〔2−9〕加水分解処理後の重量平均分子量
架橋構造を有する主鎖を構成しているポリマー鎖の分子量をそのまま測定するのは、技術的に困難な場合が多いため、本発明では加水分解処理により架橋構造を分解してから測定する方法で、重量平均分子量を定義する。
【0048】
本明細書において、「加水分解処理後の重量平均分子量」とは、上記粒子状吸水剤を0.9重量%塩化ナトリウム水溶液で膨潤させて更に水可溶分を除去したゲル600mgを10mLの0.1N水酸化ナトリウム水溶液中で、80℃条件下3週間静置処理して得られた水溶液に含まれる高分子の重量平均分子量を意味する。
【0049】
本発明に係る粒子状吸水剤の加水分解処理後の重量平均分子量は、450,000〜1,800,000Daであり、好ましくは500,000〜1,800,000Da、より好ましくは550,000〜1,800,000Da、更に好ましくは600,000〜1,800,000Da、特に好ましくは650,000〜1,800,000Daの範囲である。該加水分解処理後の重量平均分子量が450,000Da以上であれば、主鎖を構成しているポリマー鎖に架橋構造が複数箇所導入され、加圧下吸収倍率が向上するため、好ましい。該加水分解処理後の重量平均分子量が1,800,000Da以下であれば、分子鎖の絡み合いによる加圧下吸水倍率及び通液性の低下を防ぐことができるため、好ましい。
【0050】
〔2−10〕加水分解処理後の分岐密度
本明細書において、「分岐密度」とは、Viscotek OmniSEC4.6.2(登録商標)ソフトウェアによって分岐密度(Branching Freq.)として測定された値を意味し、単位分子量あたりの分岐を表している。また、本明細書において、「加水分解処理後の分岐密度」とは、上記粒子状吸水剤を0.9重量%塩化ナトリウム水溶液で膨潤させて更に水可溶分を除去したゲル600mgを10mLの0.1N水酸化ナトリウム水溶液中で、80℃条件下3週間静置処理して得られた水溶液に含まれる高分子の分岐密度を意味する。該加水分解処理後の分岐密度は、上記水可溶分を除いたネットワークを形成しているポリマーにおける、加水分解処理により架橋が切断された後の分岐密度を表している。
【0051】
本発明に係る粒子状吸水剤の加水分解処理後の分岐密度は0.100以下であり、好ましくは0.080以下、より好ましくは0.060以下、更に好ましくは0.050以下、特に好ましくは0.045である。該分岐密度は0.090以下であってもよい。該加水分解処理後の分岐密度が0.100以下であれば、単位分子量あたりの分岐が少なく、これにより加圧下吸水倍率及び通液性の高い粒子状吸水剤を得ることができる。なお、吸水性樹脂の重合を均一にすることにより、架橋ポリマー中の分岐を少なくすることができる。
【0052】
〔2−11〕加水分解処理後の分岐度
本明細書において、「加水分解後の分岐度」とは、上記粒子状吸水剤を0.9重量%塩化ナトリウム水溶液で膨潤させて更に水可溶分を除去したゲル600mgを10mLの0.1N水酸化ナトリウム水溶液中で、80℃条件下3週間静置処理して得られた水溶液に含まれる高分子の分岐度を意味する。該加水分解処理後の分岐度は、上記水可溶分を除いたネットワークを形成しているポリマーにおける、加水分解処理により架橋が切断された後の分岐度を表している。
【0053】
また、加水分解処理後の分岐度は、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.8以下、更により好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.3以下、最も好ましくは1.0以下である。なお、本明細書において、「分岐度」とは、Viscotek OmniSEC4.6.2(登録商標)ソフトウェアによって分岐度(Branches)として測定された値を意味する。
【0054】
〔2−12〕拡散吸収時間
本明細書において「拡散吸収時間」とは、粒子状吸水剤に対して0.9重量%塩化ナトリウム水溶液を複数回投入した場合に粒子状吸水剤が当該水溶液を全て吸収するまでにかかった時間の合計をいう。
【0055】
例えば、図1に外観の概略を示す拡散吸収時間測定装置を用いて測定することが出来る。図1は、拡散吸収時間の測定に用いる測定装置の構造を示す概略図である。
【0056】
内寸が横401mm、縦151mm、高さ30mm、外寸が横411mm、縦161mm、高さ35mmのアクリル樹脂製トレー1の中央部に、両端からそれぞれ50mmあけて、幅10mm、長さ300mmの両面テープ(ニチバン株式会社製、両面テープ ナイスタックNW−10)2を横方向のそれぞれの内壁に沿って貼り付けてある。これらの両面テープ2上には、厚み0.1mm、横300mm、縦150mmのティッシュペーパー3を皺のないように貼り付けてある。ティッシュペーパー3上で、アクリル樹脂製トレー1の横方向のそれぞれの内壁から15mm内側の部分、横300mm、縦120mmの範囲に粒子状吸水剤4を13.5g、均一に散布する(坪量375g/m)。なお、散布前には静電気が発生しないようにアクリル樹脂製トレー1の壁面に静電気防止処置を行ってもよい。
【0057】
尚、上記ティッシュペーパーはパルプ製の薄い不織布であればよく、日本製紙クレシア製のキムワイプ等がある。
【0058】
粒子状吸水剤4の上にトップシート5を載置する。トップシート5の位置は、アクリル樹脂製トレー1の内壁からの距離が横方向で左右同等、縦方向で上下同等になるように配置する。
【0059】
トップシート5は、紙オムツ等の吸収体において最も着用者側に配置される、不織布及び紙を含有するシートであり、従来公知のものから回収したものを利用することができる。実施例では、ユニチャーム株式会社製、商品名マミーポコテープタイプ、Lサイズ(2014年6月に日本にて購入、パッケージ底面の番号:404088043)から取り出したシートを使用している。実施例で取り出したシートのサイズは縦14cm、横39cm、重さは3.3g〜3.6gであり、接着剤によって接着されたオムツ中のパルプなどを十分に除去してから使用している。
【0060】
トップシート5の上に、横390mm、縦90mm、厚み0.63mmのサイズの金網6(JIS金網、ステンレス製、20メッシュ)を載置する。この金網6の上にさらに、中央部に内径30mmの円筒形の投入孔7を有するアクリル樹脂製の上蓋8(横400mm、縦150mm、厚み20mm、円筒部の高さ100mm)を載置する。
【0061】
図2は拡散吸収時間の測定に用いる測定装置の上蓋及びトレーの外観を示す図であり、(a)は上蓋の上面図であり、(b)は上蓋の側面図であり、(c)はトレーの上面図であり、(d)はトレーの側面図である。
【0062】
図2の(a)において、aは投入孔7の内径、b及びcはそれぞれ上蓋8の横及び縦の寸法を表す。図2の(b)において、dは投入孔7の円筒部の高さ、eは上蓋8の厚みに対応する。
【0063】
図2の(c)は、アクリル樹脂製トレー1におけるティッシュペーパー3の位置関係を示している。図2の(c)において、f及びgはティッシュペーパー3が縦方向のそれぞれの内壁から50.5mm内側の部分に位置することを示し、hはティッシュペーパー3の横の寸法(300mm)を示している。iはアクリル樹脂製トレー1の横の内寸(401mm)、jはアクリル樹脂製トレー1の縦の内寸及びティッシュペーパー3の縦の寸法(151mm)を示している。kはアクリル樹脂製トレー1の横方向における内寸と外寸との差(5mm)を示している。lはアクリル樹脂製トレー1の縦方向における内寸と外寸との差(5mm)を示している。
【0064】
また、図2の(d)において、mはアクリル樹脂製トレー1の横の外寸(411mm)を示し、nはアクリル樹脂製トレー1の高さ(35mm)を示す。
【0065】
この上蓋8の上にさらに、粒子状吸水剤4に均等に荷重がかかるように錘9(材質:ステンレス)を載置する。この際、上記金網6、アクリル樹脂製の上蓋8及び錘9の総重量が7578gになるように錘9の重さなどを調整する(荷重の圧力は粒子状吸水剤の散布面積に対しては2.07kPaとなる)。
【0066】
拡散吸収時間測定装置の投入孔7から37±0.5℃に温度を調整した0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液(好ましくは、1000gに対して0.04gの青色1号で着色しても良い)を以下の式(3)で求められる量を5秒間で投入する。
【0067】
(散布する粒子状吸水剤の重量×AAP×(70±3%))/3 (3)
投入された塩化ナトリウム水溶液は金網6を透過しながら金網6上を拡散し、粒子状吸水剤4によって吸収され、メッシュの目開きの間に保持された液がすべて吸収された時間を1回目の拡散吸収時間[sec]とする。
【0068】
続いて、拡散吸収時間測定装置を37℃に調温した乾燥機に入れて保温し、保温開始から1時間後に、2回目の上記水溶液の投入を行い、金網6上のメッシュの目開きの間に保持された水溶液が全て吸収された時間を2回目の拡散吸収時間[sec]とする。続いて拡散吸収時間測定装置を37℃に調温した乾燥機に入れて保温し、保温開始から1時間後に、3回目の上記水溶液の投入を行い、金網6上のメッシュの目開きの間に保持された水溶液が全て吸収された時間を3回目の拡散吸収時間[sec]とする。
【0069】
〔2−13〕劣化拡散吸収時間
上記の拡散吸収時間の測定において、0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液(好ましくは、1000gに対して0.04gの青色1号で着色しても良い)999.5gにL−アスコルビン酸0.5gを溶解させた水溶液を用いることで、劣化拡散吸収時間を測定することができる。
【0070】
〔3〕粒子状吸水剤の製造方法
本粒子状吸水剤の製造方法は、上記粒子状吸水剤が得られる方法であれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸(塩)を主成分とする水溶液を重合して、含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程を含む粒子状吸水剤の製造方法であって、上記重合工程において含水ゲル状架橋重合体の分岐密度を制御する粒子状吸水剤の製造方法であることが好ましい。該製造方法であれば、上述の物性を有する粒子状吸水剤を効率良く得ることができる。
【0071】
〔3−1〕単量体水溶液の調製工程
本工程は、アクリル酸(塩)を主成分として含む水溶液(以下、「単量体水溶液」と称する)を調製する工程である。なお、得られる粒子状吸水剤の吸水性能が低下しない範囲で、単量体のスラリー液を使用することもできるが、本項では便宜上、単量体水溶液について説明する。
【0072】
また、上記「主成分」とは、アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、重合反応に供される単量体(内部架橋剤は除く)全体に対して、通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上(上限は100モル%)であることをいう。
【0073】
本発明では、得られる粒子状吸水剤の物性及び生産性の観点から、単量体としてアクリル酸及び/又はアクリル酸塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)が用いられる。
【0074】
上記「アクリル酸」は、公知のアクリル酸を使用することができ、重合禁止剤として好ましくはメトキシフェノール類、より好ましくはp−メトキシフェノールを、アクリル酸の重合性及び粒子状吸水剤の色調の観点から、好ましくは200ppm以下、より好ましくは10〜160ppm、更に好ましくは20〜100ppmの範囲で含んでいればよい。また、アクリル酸中の不純物については、米国特許出願公開第2008/0161512号に記載された化合物を本発明に適用することができる。
【0075】
上記「アクリル酸塩」は、上記アクリル酸を下記塩基性組成物で中和したものであるが、該アクリル酸塩としては、市販のアクリル酸塩(例えば、アクリル酸ナトリウム)でもよいし、粒子状吸水剤の製造プラント内で中和して得られたものでもよい。
【0076】
本発明において、「塩基性組成物」とは、塩基性化合物を含有する組成物を指し、例えば、市販の水酸化ナトリウム水溶液等が該当する。
【0077】
上記塩基性化合物として、具体的には、アルカリ金属の炭酸塩及び炭酸水素塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、並びに有機アミン等が挙げられる。これらの中でも、得られる粒子状吸水剤の物性の観点から、上記塩基性化合物は、強塩基性であることが望まれる。即ち、上記塩基性化合物は、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、より好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0078】
本発明における中和として、アクリル酸に対する中和(重合前)又はアクリル酸を架橋重合して得られる含水ゲル状架橋重合体に対する中和(重合後)(以下、「後中和」と称する)の何れかを選択又は併用することができる。また、これらの中和は、連続式でもバッチ式でもよく特に限定されないが、生産効率等の観点から連続式が好ましい。
【0079】
また、中和時の温度としては特に限定されないが、好ましくは10〜100℃、より好ましくは30〜90℃の範囲である。なお、中和を行う装置及び滞留時間等の条件については、欧州特許第574260号に開示された条件が本発明にも適用される。
【0080】
本発明における中和率は、単量体の酸基に対して、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは30〜95モル%、更に好ましくは45〜90モル%、特に好ましくは60〜80モル%の範囲である。該中和率が10モル%以上であれば、吸水倍率の著しい低下を防ぐことができる。一方、該中和率が90モル%以下であれば、加圧下吸水倍率の高い粒子状吸水剤を得ることができる。該中和率は、後中和の場合でも同様である。また、最終製品としての粒子状吸水剤の中和率についても、該中和率が適用される。
【0081】
本発明においては、上記アクリル酸(塩)以外の単量体(以下、「他の単量体」と称する)を、必要に応じて、アクリル酸(塩)と併用して粒子状吸水剤を製造することができる。
【0082】
上記他の単量体として、水溶性又は疎水性の不飽和単量体が挙げられる。具体的には、米国特許出願公開第2005/0215734号に記載された化合物(但し、アクリル酸は除く)を本発明に適用することができる。なお、上記他の単量体を併用する場合、その使用量は、単量体全体に対して、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
【0083】
本発明で使用される内部架橋剤として、米国特許第6241928号に記載された化合物を本発明に適用することができる。これらの中から反応性を考慮して1種又は2種以上の化合物が選択される。
【0084】
また、得られる粒子状吸水剤の吸水性能等の観点から、好ましくは重合性不飽和基を2個有する化合物、より好ましくは(ポリ)アルキレングリコール構造単位を有し、重合性不飽和基を2個有する化合物が、内部架橋剤として用いられる。
【0085】
(ポリ)アルキレングリコール構造単位を有し、重合性不飽和基を2個有する内部架橋剤は、疎水基の増加による水溶性の低下が生じないため、均一なポリマーネットワークが形成され、それゆえ、物性の向上が望まれる。
【0086】
上記重合性不飽和基として、好ましくはアリル基又は(メタ)アクリレート基、より好ましくは(メタ)アクリレート基が挙げられる。また、上記(ポリ)アルキレングリコール構造単位としてポリエチレングリコールが好ましく、n数として好ましくは2〜100、より好ましくは6〜50の範囲である。
【0087】
したがって、本発明では、好ましくは(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート又は(ポリ)アルキレングリコールトリ(メタ)アクリレート、より好ましくは(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが用いられる。
【0088】
また、上記内部架橋剤は、水溶性であることが好ましく、溶解度として、25℃の水100gに対して、好ましくは0.1g以上、より好ましくは1g以上溶解するものが好ましい。
【0089】
上記内部架橋剤の使用量は、単量体全体に対して、好ましくは0.001〜5モル%、より好ましくは0.002〜2モル%、更に好ましくは0.04〜1モル%、特に好ましくは0.06〜0.5モル%、最も好ましくは0.07〜0.2モル%の範囲である。該使用量を上記範囲内とすることで所望する粒子状吸水剤が得られる。なお、該使用量が少なすぎる場合、ゲル強度が低下し水可溶分が増加する傾向にあり、該使用量が多すぎる場合、吸水倍率が低下する傾向にあるため、好ましくない。
【0090】
本発明では、所定量の内部架橋剤を予め単量体水溶液に添加しておき、重合と同時に架橋反応する方法が好ましく適用される。一方、該手法以外に、重合中若しくは重合後に内部架橋剤を添加して後架橋する方法や、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル架橋する方法、又は電子線若しくは紫外線等の活性エネルギー線を用いた放射線架橋する方法等を採用することもできる。また、これらの方法を併用することもできる。
【0091】
本発明において、得られる粒子状吸水剤の物性向上の観点から、下記の物質を単量体水溶液の調製時に添加することもできる。
【0092】
具体的には、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)及び/又はポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子を、好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下(下限は0重量%)で添加したり、炭酸塩、アゾ化合物、気泡等の発泡剤、界面活性剤、キレート剤及び/又は連鎖移動剤等を、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下(下限は0重量%)で添加したりすることができる。
【0093】
また、上記物質は、単量体水溶液に添加される形態のみならず、重合途中で添加される形態でもよいし、これらの形態を併用することもできる。
【0094】
なお、親水性高分子として水溶性樹脂又は吸水性樹脂を使用する場合には、グラフト重合体又は吸水性樹脂組成物(例えば、澱粉−アクリル酸重合体、又はPVA−アクリル酸重合体等)が得られる。これらの重合体及び吸水性樹脂組成物も本発明の範疇である。
【0095】
本工程において、単量体水溶液を調製する際に、上記の各物質が添加される。該単量体水溶液中の単量体成分の濃度としては特に限定されないが、粒子状吸水剤の物性の観点から、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜80重量%、更に好ましくは30〜70重量%、特に好ましくは40〜60重量%の範囲である。
【0096】
また、重合形態として、水溶液重合又は逆相懸濁重合を採用する場合、水以外の溶媒を必要に応じて併用することもできる。この場合、溶媒の種類は特に限定されない。
【0097】
なお、上記「単量体成分の濃度」とは、下記式(4)で求められる値であり、単量体水溶液の重量には、グラフト成分及び吸水性樹脂、並びに逆相懸濁重合における疎水性溶媒の重量は含めない。
【0098】
単量体成分の濃度(重量%)
=(単量体成分の重量)/(単量体水溶液の重量)×100 (4)。
【0099】
〔3−2〕重合工程
本工程は、アクリル酸(塩)を主成分とする水溶液を重合して、含水ゲル状架橋重合体(本明細書中において「含水ゲル」と称することがある)を得る工程である。
【0100】
上記重合工程を行うにあたり、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素若しくは2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤、又は紫外線若しくは電子線等の活性エネルギー線等を用いることができる。
【0101】
また、ラジカル重合開始剤を用いる場合、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、又はL−アスコルビン酸等の還元剤を併用してレドックス重合としても良いが、好ましくは、アゾ化合物又は過酸化物から選ばれる熱分解性ラジカル開始剤が使用され、水溶性(25℃の水100gに対して、好ましくは1g以上、より好ましくは10g以上溶解するもの)の重合開始剤が使用される。
【0102】
上記ラジカル開始剤は、重合工程の反応系に添加されることが好ましい。上記「重合工程の反応系」は、水溶性不飽和単量体の重合が起こりうる反応系であって、含水ゲルを生じることができる反応系を意味する。それゆえ「重合工程の反応系」の構成としては、水溶性不飽和単量体を含んでいれば、特に限定されず、内部架橋剤、連鎖移動剤、又はα−ヒドロキシカルボン酸(塩)等を含んでいても良い。
【0103】
上記ラジカル重合開始剤を添加する時期としては、上記重合工程前及び/又は重合工程途中であり、重合工程後は含まれない。
【0104】
なお、本明細書中において、「重合工程前」とは、単量体の重合が開始される前を意味する。また、「重合工程途中」とは、単量体の重合が開始されてから終了するまでの期間を意味する。また、「重合工程後」とは、単量体の重合が終了した時以降を意味する。
【0105】
単量体の重合が開始したかどうかは、重合によって生じる重合体の温度上昇から判断することができる。具体的には、温度上昇が、3℃以上(好ましくは5℃以上)であれば単量体の重合が開始したと判断することができる。
【0106】
また、単量体の重合が終了したかどうかは、重合時の温度上昇がピークに到達すること、及び残存単量体の量が5重量%以下になること等から判断することができる。
【0107】
これらのラジカル重合開始剤の使用量(特に熱分解性ラジカル開始剤)は、全単量体に対して、0.051〜1.000モル%が好ましく、より好ましくは0.054〜0.2000モル%であり、最も好ましくは0.058〜0.1000モル%である。
【0108】
また、上記重合工程では、バルク重合、逆相懸濁重合、又は沈澱重合を行うことも可能であるが、性能面及び重合の制御の容易さから、単量体の水溶液又は水分散液を用いて水溶液重合を行うことが好ましい。かかる重合方法は、例えば、米国特許第4625001号明細書、米国特許第4769427号明細書、米国特許第4873299号明細書、米国特許第4093776号明細書、米国特許第4367323号明細書、米国特許第4446261号明細書、米国特許第4683274号明細書、米国特許第4690996号明細書、米国特許第4721647号明細書、米国特許第4738867号明細書、米国特許第4748076号明細書及び米国特許出願公開2002/40095号明細書等に記載されている。
【0109】
上述のように、重合工程では、含水ゲル状架橋重合体の分岐密度を制御することが好ましい。含水ゲル状架橋重合体の分岐密度を制御する方法としては、特に限定されず、例えば、高濃度の単量体を含む単量体水溶液を用いて薄層静置重合を行う方法(方法1)及び減圧下にて発泡重合を行う方法(方法2)が挙げられる。
【0110】
方法1について、高濃度の単量体水溶液を用いて薄層静置重合を行えば、温度を制御しやすく、その結果、含水ゲル状架橋重合体の分子量を均一にしやすく、上述の物性を有する粒子状吸水剤をより効率良く得ることができる。上記単量体水溶液における単量体の濃度は、30重量%〜60重量%であることが好ましく、35重量%〜55重量%であることがより好ましく、40重量%〜50重量%であることが更に好ましい。
【0111】
また、薄層静置重合を行う方法としては、単量体水溶液をガラス板で挟んで重合を行う方法が挙げられる。この場合のガラス板同士の距離(即ち、単量体水溶液の層の厚さ)は1〜10mmであることが好ましく、1〜7mmであることがより好ましく、1〜3mmであることが更に好ましい。また、重合を行う際の温度は40〜70℃であることが好ましく、50〜60℃であることがより好ましい。
【0112】
方法2について、単量体水溶液の重合工程を減圧下で行えば、重合時の除熱が行いやすく、その結果、ポリマーの分子量を均一にしやすく、上述の物性を有する吸水性樹脂粉末をより効率良く得ることができる。この場合、重合工程は、密閉された容器内で行われることが好ましい。また、該密閉された容器内の圧力は、95kPa以下であることが好ましく、90kPa以下であることがより好ましく、85kPa以下であることが更に好ましく、80kPa以下であることが特に好ましい。該圧力の下限については特に定めていないが、50kPa以上が好ましい。上記単量体水溶液における単量体の濃度は、30重量%〜60重量%であることが好ましく、35重量%〜55重量%であることがより好ましく、40重量%〜50重量%であることが更に好ましい。
【0113】
また、本製造方法は、更に下記の工程を含んでいることが好ましい。
【0114】
〔3−3〕ゲル粉砕工程
本工程は、上述した重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)をゲル粉砕する工程である。上記含水ゲルをゲル粉砕することで、吸水速度と通液性との両立が図れる。
【0115】
本工程で使用することができるゲル粉砕装置としては、特に限定されず、バッチ型又は連続型の双腕型ニーダー等、複数の回転撹拌翼を備えたゲル粉砕機、1軸押出機、2軸押出機及びミートチョッパー等を挙げることができる。中でも、先端に多孔板を有するスクリュー型押出機が好ましく、例えば、日本国公開特許公報「特開2000−63527号公報」に開示されたスクリュー型押出機が挙げられる。
【0116】
〔3−4〕乾燥工程
本工程はゲル粉砕工程によって得られた粒子状含水ゲルを乾燥し、乾燥重合体を得る工程である。
【0117】
乾燥工程における乾燥方法としては、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水乾燥、又は高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等の種々の乾燥方法が採用されるが、中でも熱風乾燥が好ましい。乾燥風量は、好ましくは0.01〜10m/sec、より好ましくは0.1〜5m/secの範囲である。
【0118】
乾燥工程での乾燥温度は、好ましくは100〜250℃であり、より好ましくは130〜220℃であり、更に好ましくは150〜200℃である。100℃以上の温度であれば、吸水性樹脂の内部のポリマー鎖を十分に変化させることができ、そのため諸物性の向上効果をより大きくすることができる。また、250℃以下であれば、吸水性樹脂へのダメージを防ぐことができ、この結果、水可溶分量の上昇を抑えることができ、諸物性の向上効果をより大きくすることができる。なお、乾燥温度は熱媒温度で規定するが、マイクロ波等、熱媒温度で規定できない場合、材料温度で規定する。乾燥温度は、上記温度内であれば一定温度でもよく変化させてもよい。
【0119】
乾燥時間は、重合体の表面積、含水率及び乾燥機の種類に依存し、目的とする含水率になるよう選択される。乾燥時間は、好ましくは10〜120分、より好ましくは20〜90分、更に好ましくは30〜60分である。10分以上の時間であれば、吸水性樹脂の内部のポリマー鎖を十分に変化させることができ、そのため諸物性の向上効果をより大きくすることができる。また、120分以下であれば、吸水性樹脂へのダメージを防ぐことができ、この結果、水可溶分量の上昇を抑えることができ、諸物性の向上効果をより大きくすることができる。
【0120】
本工程では、乾燥後の吸水性樹脂(乾燥重合体)の固形分(後述の測定方法で測定される)は好ましくは90重量%以上であり、より好ましくは95重量%以上である。固形分が少なくなってしまうと、流動性が悪くなり製造に支障をきたすばかりか、吸水性樹脂が粉砕できなくなったり、特定の粒度分布に制御できなくなったりしてしまうおそれがある。そのため諸物性の向上効果を得ることができないおそれがある。
【0121】
〔3−5〕粉砕工程及び分級工程
本工程は、乾燥重合体を粉砕及び分級して、吸水性樹脂粉末を得る工程である。なお、本工程は、粉砕対象物が乾燥工程を経ている点で、上記〔3−2〕ゲル粉砕工程と異なる。本工程によれば、物性向上のために、吸水性樹脂粉末の粒度を、特定の粒度に制御することができる。
【0122】
粉砕工程において用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、ロールミルのようなロール式粉砕機、ハンマーミルのようなハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、カッターミル、ターボグラインダー、ボールミル、又はフラッシュミル等が用いられる。この中でも、粒度分布を制御するためにはロールミルが好ましい。
【0123】
分級工程では、各種の篩又は分級機を用いることができ、特に限定されないが、例えば、振動篩(アンバランスウェイト駆動式、共振式、振動モータ式、電磁式、又は円型振動式等)、面内運動篩(水平運動式、水平円−直線運動式、又は3次元円運動式等)、可動網式篩、強制攪拌式篩、網面振動式篩、風力篩、又は音波篩等が用いられ、好ましくは振動篩、又は面内運動篩が用いられる。篩の目開きは、好ましくは1000μm〜300μm、より好ましくは900μm〜400μm、更に好ましくは710μm〜450μmの範囲である。これらの範囲内であれば、物性向上のためにより好ましい粒度分布を得ることができる。
【0124】
得られた吸水性樹脂粉末の形状は、一般には、不定形破砕状、球状、繊維状、棒状、略球状、偏平状等の一次粒子(single particle)又は造粒粒子であるが、不定形破砕状であれば、例えば、吸収体に使用した際に容易に固定化できるため好ましい。
【0125】
本工程で得られる吸水性樹脂粉末は、粒子径が150μm以下である粒子の割合が、好ましくは5重量%以下、より好ましくは4重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。なお、本明細書において、粒子径は、JIS標準篩(JIS Z8801−1(2000))を用いて規定される。また、「粒子径が150μm以下である粒子」とは、目開き150μmのJIS標準篩を通過することができる吸水性樹脂粉末を指す。
【0126】
粒子径が150μm以下である粒子の割合が5重量%以下であれば、吸水性樹脂粉末の製造の際に、吸水性樹脂粉末に含まれる微粒子の飛散による安全衛生上の問題をより確実に防止でき、更に得られる粒子状吸水剤の物性が低下することを抑制することができる。
【0127】
上記吸水性樹脂粉末は、物性の向上の観点から、重量平均粒子径(D50)が好ましくは200〜600μm、より好ましくは300μm〜500μm、更に好ましくは320μm〜480μm、特に好ましくは340μm〜460μmの範囲である。重量平均粒子径が200〜600μmであれば、通液性及び吸収速度に優れた吸水性樹脂粉末を得ることができる。このような吸水性樹脂を、例えば、オムツに用いた場合、液の漏れ等をより抑えることができる。
【0128】
また、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20〜0.50、より好ましくは0.25〜0.45、更に好ましくは0.27〜0.43、特に好ましくは0.29〜0.41の範囲である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20〜0.50であれば、通液性及び吸収体への液の取り込み速度に優れた吸水性樹脂粉末を得ることができる。
【0129】
なお、上述した粒度は、上記の吸水樹脂粉末に限らず、表面架橋後の吸水性樹脂(以下、「吸水性樹脂粒子」と称する)及び最終製品としての粒子状吸水剤についても適用される。そのため、上述した粒度を維持するように表面架橋することが好ましく、表面架橋工程以降に分級工程を設けて粒度調整することがより好ましい。
【0130】
〔3−6〕表面架橋工程
本工程は、上述した工程を経て得られる吸水性樹脂粉末の表面層(吸水性樹脂粉末の表面から数10μmの部分)に、更に架橋密度の高い部分を形成する工程であり、混合工程、加熱処理工程及び冷却工程から構成されている。
【0131】
吸水性樹脂はその表面近傍が、表面架橋剤によって架橋されていることで、膨潤した吸水性樹脂に圧力をかけた際に生じる液の戻り量を減少させることができる。そのため、AAP及びSFCを高めることができる。その結果として、吸水性樹脂が吸収体に使用された際、圧力が加わった際の液の戻り(通称リウェット:Re−Wet)が少なく、また吸収体への液の取り込み速度に優れる吸収体を得ることが出来る。
【0132】
(共有結合性表面架橋剤)
本発明で使用される表面架橋剤としては、特に限定されないが、有機又は無機の表面架橋剤を例示することができる。中でも、粒子状吸水剤の物性及び表面架橋剤の取扱性の観点から、カルボキシル基と反応する有機表面架橋剤が好ましい。具体的には、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物又はそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、(モノ、ジ、又はポリ)オキサゾリジノン化合物及びアルキレンカーボネート化合物が挙げられる。中でも、高温での反応が必要な、多価アルコール化合物、アルキレンカーボネート化合物、又はオキサゾリジノン化合物からなる脱水反応性架橋剤が好ましく使用することができる。
【0133】
一方、脱水反応性架橋剤を使用しない場合、より具体的には、米国特許第6228930号、同第6071976号及び同第6254990号等に例示されている化合物を挙げることができる。例えば、モノ,ジ,トリ又はテトラプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及びソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル及びグリシドール等のエポキシ化合物;エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート化合物;オキセタン化合物;2−イミダゾリジノン等の環状尿素化合物等が挙げられる。
【0134】
上記表面架橋剤の使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部の範囲内で適宜決定される。表面架橋剤に合わせて、水が好ましく使用される。使用される水の量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部の範囲である。無機表面架橋剤と有機表面架橋剤とを併用する場合も、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、それぞれ、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部の範囲で併用される。
【0135】
表面架橋剤又はその水溶液と吸水性樹脂粉末とを混合する際には、親水性有機溶媒等を用いてもよい。親水性有機溶媒を用いる場合には、例えば、メチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;エチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。
【0136】
親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0〜10重量部、より好ましくは0〜5重量部の範囲である。また、吸水性樹脂粉末への架橋剤溶液の混合時に、本発明の効果を妨げない範囲、例えば、好ましくは0〜10重量部、より好ましくは0〜5重量部、更に好ましくは0〜1重量部で、水不溶性微粒子粉体及び/又は界面活性剤を共存させてもよい。用いられる界面活性剤又はその使用量は、米国特許7473739号等に例示されている。
【0137】
上記吸水性樹脂粉末と表面架橋剤とを混合する混合方法は特に限定されないが、例えば、吸水性樹脂粉末を親水性有機溶媒に浸漬し、必要に応じて水及び/又は親水性有機溶媒に溶解させた表面架橋剤を混合する方法、吸水性樹脂粉末に直接、水及び/又は親水性有機溶媒に溶解させた表面架橋剤を噴霧若しくは滴下して混合する方法等が例示できる。
【0138】
上記表面架橋剤の混合には、縦型又は横型の高速回転攪拌型の混合機が好適に使用される。該混合機の回転数は、好ましくは100〜10,000rpm、より好ましくは300〜2,000rpmである。また、装置内における吸水性樹脂粉末の滞留時間は、好ましくは180秒以内、より好ましくは0.1〜60秒、更に好ましくは1〜30秒の範囲である。
【0139】
上記吸水性樹脂粉末と表面架橋剤とを混合した後、通常、加熱処理を行い、架橋反応を遂行させることが好ましい。上記加熱処理温度(熱媒温度)は、用いる表面架橋剤にもよるが、好ましくは40℃以上250℃以下、より好ましくは150℃以上250℃以下の範囲である。加熱処理温度が40℃以上であれば、AAP及びSFC等の吸収特性をより改善することができる。加熱処理温度が250℃以下であれば、吸水性樹脂粉末の劣化及びそれに伴う各種物性の低下を防ぐことができる。加熱処理時間は、好ましくは1分以上2時間以下、より好ましくは5分以上1時間以下の範囲である。
【0140】
上記の表面架橋剤を用いる表面架橋に代わって、ラジカル重合開始剤を用いる表面架橋方法(米国特許第4783510号及び国際公開第2006/062258号)、又は吸水性樹脂の表面で単量体を重合する表面架橋方法(米国出願公開第2005/048221号、同第2009/0239966号及び国際公開第2009/048160号)を用いることもできる。
【0141】
〔3−7〕多価金属塩添加工程
本工程は、上記表面架橋工程を経て得られた吸水性樹脂粒子に、多価金属塩を添加する工程である。特に表面架橋時又は表面架橋後に本工程を行うことが好ましい。多価金属塩(好ましくは3価の水溶性多価金属塩)を添加することで、粒子状吸水剤のAAPを大きく低下させることなく、SFCを向上させることができる。
【0142】
上記多価金属塩を混合する際には、水溶液として混合することが好ましい。多価金属塩を含む水溶液中における水溶性多価金属塩の濃度は、吸水性樹脂内部への浸透及び拡散を防ぐために、飽和濃度に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上である。もちろん、飽和濃度で用いてもよい。また、少なくとも多価金属塩を含む水溶液中に上記の親水性有機溶媒及び/又は乳酸(又はその塩)等の有機酸(又はその塩)を共存させても良い。この場合、少なくとも多価金属塩の吸水性樹脂内部への浸透及び拡散が抑制され、混合性も向上するためより好ましい。
【0143】
本工程で用いられる多価金属塩の具体例としては、例えば、Zn、Be、Mg、Ca、Sr、Al、Fe、Mn、Ti、Zr、Ce、Ru、Y及びCr等から選ばれる金属の硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、有機酸塩及びハロゲン化物(塩化物等)等を挙げることができ、更に、特開2005−11317号公報に記載されている多価金属塩等も挙げることができる。
【0144】
また、多価金属塩の中でも3価の水溶性金属塩を用いることが最も好ましい。3価の水溶性多価金属塩の具体例としては、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、アルミン酸ナトリウム、塩化鉄(III)、塩化セリウム(III)、塩化ルテニウム(III)、塩化イットリウム(III)及び塩化クロム(III)等を例示することができる。
【0145】
また、尿等の吸収液の溶解性の点からもこれらの結晶水を有する塩を使用することが好ましい。特に好ましいのは、アルミニウム化合物、中でも、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、ビス硫酸カリウムアルミニウム、ビス硫酸ナトリウムアルミニウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、又はアルミン酸ナトリウムが好ましく、硫酸アルミニウムが特に好ましく、硫酸アルミニウムの水溶液(好ましくは、硫酸アルミニウム濃度が飽和濃度の90%以上の濃度の溶液)は最も好適に使用することが出来る。これらの多価金属塩は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0146】
多価金属塩の添加量は、吸水性樹脂粒子に対し、好ましくは0.001質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以上1質量%以下である。
【0147】
〔4〕粒子状吸水剤の用途
本発明に係る粒子状吸水剤は、優れた吸水特性を有しているため、種々の用途の吸水保水剤として使用できる。例えば、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド及び医療用パッド等の吸収性物品用の吸水保水剤;水苔代替、土壌改質改良剤、保水剤及び農薬効力持続剤等の農園芸用保水剤;内装壁材用結露防止剤及びセメント添加剤等の建築用保水剤;リリースコントロール剤、保冷剤、使い捨てカイロ、汚泥凝固剤、食品用鮮度保持剤、イオン交換カラム材料、スラッジ若しくはオイルの脱水剤、乾燥剤、又は湿度調整材料等で使用できる。また、上記粒子状吸水剤は、紙オムツ又は生理用ナプキン等の、糞、尿又は血液の吸収用衛生材料に特に好適に用いられる。
【0148】
また、上記粒子状吸水剤は、該粒子状吸水剤を含む吸収体として使用されてもよい。上記吸収体を適当な素材と組み合わせることにより、たとえば、衛生材料の吸収層として好適な吸収体とすることができる。上記粒子状吸水剤は、吸収体に使用された場合、諸物性に優れるため、液の取り込みが早く、また、吸収体表層の液の残存量が少ない、非常に優れた吸収体が得られる。
【0149】
吸収体とは、血液、体液、又は尿等を吸収する、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド、又は医療用パッド等の吸収性物品に用いられる、粒子状吸水剤とその他の素材とからなる成形された組成物のことである。用いられる素材の例としては、セルロース繊維が挙げられる。セルロース繊維の具体例としては、木材からのメカニカルパルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ及び溶解パルプ等の木材パルプ繊維、並びにレーヨン及びアセテート等の人工セルロース繊維等を例示できる。好ましいセルロース繊維は木材パルプ繊維である。これらセルロース繊維はナイロン及び/又はポリエステル等の合成繊維を一部含有していてもよい。上記粒子状吸水剤を吸収体の一部として使用する際には、吸収体中に含まれる上記粒子状吸水剤の重量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、特に好ましくは60重量%以上である。吸収体中に含まれる本発明における粒子状吸水剤の重量が、20重量%以上であれば、より十分な効果が得られるため、好ましい。
【0150】
上記粒子状吸水剤とセルロース繊維とから吸収体を得るには、例えば、セルロース繊維からなる紙若しくはマットに上記粒子状吸水剤を散布し、必要によりこれらで挟持する方法、又はセルロース繊維と粒子状吸水剤とを均一にブレンドする方法等、吸収体を得るための公知の手段を適宜選択できる。好ましくは、粒子状吸水剤とセルロース繊維とを乾式混含した後、圧縮する方法である。この方法により、セルロース繊維からの粒子状吸水剤の脱落を著しく抑えることが可能である。圧縮は加熱下に行うことが好ましく、その温度範囲は、たとえば50℃以上200℃以下である。
【0151】
吸収体は、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド、又は医療用パッド等の衛生材料に用いられる場合、(a)着用者の体に隣接して配置される液体透過性のトップシート、(b)着用者の身体から遠くに、着用者の衣類に隣接して配置される、液体に対して不透過性のバックシート及び(c)トップシートとバックシートとの間に配置された吸収体、を含んでなる構成で使用されることが好ましい。吸収体は二層以上であっても良いし、パルプ層等とともに用いても良い。
【0152】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【0153】
本発明は、以下のように構成することも可能である。
【0154】
本発明に係る粒子状吸水剤は、上記水可溶分の重量平均分子量が200,000〜1,000,000Daであってもよい。
【0155】
本発明に係る粒子状吸水剤は、加圧下吸水倍率が20g/g以上であってもよい。
【0156】
本発明に係る粒子状吸水剤は、食塩水流れ誘導性が10×10−7・cm・s・g−1以上であってもよい。
【0157】
本発明に係る粒子状吸水剤は、吸水時間が42秒以下であってもよい。
【0158】
本発明に係る粒子状吸水剤は、自由膨潤速度が0.28g/(g・s)以上であってもよい。
【0159】
本発明に係る粒子状吸水剤は、上記加水分解処理後の分岐度が2.5以下であってもよい。
【0160】
本発明に係る粒子状吸水剤は、共有結合性表面架橋剤によって表面架橋されていてもよい。
【0161】
本発明に係る粒子状吸水剤は、多価金属塩を含んでいてもよい。
【0162】
本発明に係る粒子状吸水剤は、粒子径が150μm未満である粒子の割合が5重量%以下であってもよい。
【実施例】
【0163】
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0164】
粒子状吸水剤の諸性能は、以下の方法で測定した。特に記載が無い限り下記の測定は室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で行われたものとする。なお、測定対象物が粒子状吸水剤以外である場合には、特に断りのない限り、粒子状吸水剤を対象物に読み替えて適用する。
【0165】
<遠心分離機保持容量(CRC)>
本発明に係る粒子状吸水剤のCRCは、EDANA法(ERT441.2−02)に準拠して測定した。
【0166】
<加圧下吸水倍率(AAP)>
本発明に係る粒子状吸水剤のAAPは、EDANA法(ERT442.2−02)に準拠して測定した。なお、荷重条件を4.83kPa(0.7psi)に変更した。
【0167】
<食塩水流れ誘導性(SFC)>
本発明に係る粒子状吸水剤のSFCは、米国特許第5669894号に記載された測定方法に準拠して測定した。
【0168】
<重量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)>
本発明に係る粒子状吸水剤の重量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、国際公開第2004/69915号に記載された測定方法に準拠して測定した。
【0169】
<粒子径が150μm未満である粒子の割合>
本発明に係る粒子状吸水剤の粒子径が150μm未満である粒子の割合は、上記重量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)の測定方法と同様の分級操作を行い、目開き150μmの篩を通過した量から目開き150μmの篩を通過できる大きさの粒子の割合(重量%)を求めた。
【0170】
<水可溶分量(Ext)>
本発明に係る粒子状吸水剤のExtは、EDANA法(ERT470.2−02)に準拠して測定した。
【0171】
<加水分解処理後の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、分岐度及び分岐密度>
(試料調製)
250mL容量の蓋付きプラスチック容器に0.90重量%塩化ナトリウム水溶液200.0gをはかり取り、その水溶液中に粒子状吸水剤1.00gを加え16時間、スターラーを回転させ攪拌することにより膨潤ゲルを得た。この膨潤ゲルを濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて吸引濾過し、ろ紙上で0.90重量%塩化ナトリウム水溶液100.0gを注いで洗浄した。膨潤ゲルを250mL容量の蓋付きプラスチック容器に回収し、0.90重量%塩化ナトリウム水溶液200.0gをはかり取り、2時間、スターラーを回転させ攪拌することにより膨潤ゲルに含まれる水溶性成分を除去した。
【0172】
(膨潤ゲルの加水分解)
ポリプロピレン製の試験管(内径1.8cm、長さ15〜18cm)に上記方法により洗浄した膨潤ゲル600mg及び0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬社製、容量分析用)10gを入れ、ポリプロピレン製の栓をした。この試験管を遮光し、80℃で3週間静置するという処理を行った。3週間後、吸水性樹脂は加水分解され溶液状になっていた。また、加水分解後の吸水性樹脂の不溶成分は通常5重量%以下であり、好ましくは3重量%以下であり、より好ましくは0重量%である。なお、不溶成分が5重量%を超える場合、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の追加、加水分解の期間延長または静置温度の高温化により加水分解後の吸水性樹脂の不溶成分を所望する範囲とすることができる。
【0173】
こうして得られた溶液を以下の溶媒で4倍に希釈し、フィルター(ジーエルサイエンス社製、GLクロマトディスク、水系25A、孔径0.2μm)を通過させた。この溶液について以下の測定条件で測定を行った。
【0174】
(GPC測定条件)
ビスコテック社製TDA302(登録商標)を用いて、測定を行った。装置構成としては、サイズ排除クロマトグラフィー、屈折率検出器、光散乱検出器及びキャピラリー粘度計を搭載した装置である。
【0175】
測定装置及び測定条件は以下の通りとした。
【0176】
ポンプ・オートサンプラー:ビスコテック社製GPCmax
ガードカラム:OHpak SB−G(昭和電工株式会社製)
カラム:OHpak SB−806MHQ(昭和電工株式会社製)を2本直列につないで使用
検出器:ビスコテック社製TDA302(系内温度は30℃で保持)
溶媒:リン酸2水素ナトリウム2水和物60mM・リン酸水素2ナトリウム12水和物20mM・アジ化ナトリウム400ppm水溶液(pH6.35〜6.38)
流速:0.5mL/min
注入量:100μL
本測定に使用する純水は、十分に不純物を取り除いたものが使用される。また、測定は十分な量の溶媒を装置に流し、検出値のベースラインが安定した状態で行う。特に、光散乱検出器でのノイズピークが無い状態で測定を行う。
【0177】
装置校正はポリオキシエチレングリコール(重量平均分子量(Mw)21966、分子量分布(Mw/Mn=1.0)、示差屈折率(dn/dc)=0.132、溶媒屈折率1.33)を標準サンプルとして用いて行った。
【0178】
粒子状吸水剤がアクリル酸及び/又はその塩を99モル%以上含む単量体を重合して得られたものである場合には、分析対象となるポリマーの示差屈折率(dn/dc)は0.12、溶媒屈折率は1.33として測定を行った。また、アクリル酸及び/又はその塩以外の単量体が1モル%よりも多く共重合された粒子状吸水剤の場合には、その高分子に固有の上記溶媒中での示差屈折率(dn/dc)を測定し、その数値を用いることができる。
【0179】
測定結果のチャートを確認し、光散乱強度測定結果のピークにノイズが多く含まれる場合には、再度測定を行った。
【0180】
屈折率、光散乱強度、粘度のデータ収集及び解析は、Viscotek OmniSEC4.6.2(登録商標)ソフトウェアで行った。屈折率(RI)及び光散乱強度(角度7°)LALS、粘度計(DP)から得られたデータより、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、分岐度(Branches)及び分岐密度(Branch Freq.)を計算した。なお、分岐度及び分岐密度の測定には以下の値及び計算方法を該ソフトウェアのBranching Parametersに適用し、計算する分子量の上限及び下限は限定していない。
【0181】
MH Exponent(a) :0.8741
MH Intercept(logK):−4.4152 g/mol
Structure Factor:0.75
Repeat Factor:100000
Branching Calculation:Random,polydisperse(tri−functional)。
【0182】
<水可溶分の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)>
(試料調製)
上記<水可溶分量(Ext)>で得られた濾液を用いた。試料濃度が高い場合はポリマー成分の濃度が、0.5mg/mL程度となるように適宜GPC溶液を用いて希釈した。
【0183】
(測定条件)
上記GPC測定条件と同様の条件で測定を行った。
【0184】
<自由膨潤速度(FSR)>
粒子状吸水剤1.00gを25mLガラス製ビーカー(直径32〜34mm、高さ50mm)に入れた。この際、ビーカーに入れた粒子状吸水剤の上面が水平となるようにした(必要により、慎重にビーカーをたたく等の処置を行うことで粒子状吸水剤表面を水平にしてもよい)。
【0185】
次に、23℃±0.2℃に調温した0.90重量%塩化ナトリウム水溶液20gを50mLのガラス製ビーカーに量り取り、上記塩化ナトリウム水溶液とガラス製ビーカーとの合計重さ(重量W6[g])を測定した。量り取った塩化ナトリウムを、粒子状吸水剤の入った25mLビーカーに丁寧に素早く注いだ。注ぎ込んだ塩化ナトリウム水溶液が粒子状吸水剤と接触したと同時に時間測定を開始した。そして、塩化ナトリウム水溶液を注ぎ込んだビーカー中の塩化ナトリウム水溶液上面を約20゜の角度で目視した際、始め塩化ナトリウム水溶液表面であった上面が、粒子状吸水剤が塩化ナトリウム水溶液を吸収することにより、塩化ナトリウム水溶液を吸収した粒子状吸水剤表面に置き換わる時点で、時間測定を終了した(時間ts[s])。
【0186】
次に、塩化ナトリウム水溶液を注ぎ込んだ後の50mLガラス製ビーカーの重さ(重量W7[g])を測定した。注ぎ込んだ塩化ナトリウム水溶液の重さ(重量W8[g])を式(5)から求め、式(6)によりFSRを求めた。
【0187】
W8[g]=W6−W7 (5)
FSR[g/(g・s)]
=W8/(ts×粒子状吸水剤の重量[g]) (6)。
【0188】
<吸水時間(Vortex)>
予め調製しておいた0.90重量%塩化ナトリウム水溶液1,000重量部に、食品添加物である食用青色1号0.02重量部を添加した溶液を調製し、液温を30℃(±0.5℃)に調整した。上記溶液50mLを100mL容のビーカーに計り取り、テフロン(登録商標)でコーティングされた円筒型攪拌子(長さ40mm、太さ8mm)が600rpmで攪拌する中に、後述する実施例又は比較例で得られた粒子状吸水剤2.0gを投入し、吸水時間(秒)を測定した。
【0189】
吸水時間の始点及び終点は、JIS K 7224(1996年度)「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法 解説」に記載されている基準に準じる。吸水性樹脂が生理食塩水を吸液して、ゲル化中の生理食塩水が回転するスターラーチップを覆うまでの時間(断面から見るとV字で覆われる)を測定し、吸水時間(秒)として評価した。
【0190】
<吸水性樹脂粉末の固形分>
吸水性樹脂粉末の固形分とは、吸水性樹脂粉末において、180℃で揮発しない成分が占める割合を表す。含水率との関係は以下の式(7)の様になる。
【0191】
固形分[重量%]=100−含水率[重量%] (7)
固形分の測定方法は、以下のように行った。
【0192】
底面の直径が約5cmのアルミカップ(重量W)に、約1gの吸水性樹脂粉末を量り取り(重量W)、180℃の無風乾燥機中において3時間静置し、乾燥させる。乾燥後のアルミカップ+吸水性樹脂粉末の重量(W)を測定し、以下の式(8)より固形分を求めた。
【0193】
固形分[重量%]=((W−W)/W)×100 (8)。
【0194】
<拡散吸収時間>
以下に記載する方法によって、拡散吸収時間[sec]を測定した。測定には、図1に外観の概略を示す拡散吸収時間測定装置を用いた。図1は、拡散吸収時間の測定に用いる測定装置の構造を示す概略図である。
【0195】
まず、内寸が横401mm、縦151mm、高さ30mm、外寸が横411mm、縦161mm、高さ35mmのアクリル樹脂製トレー1の中央部に、両端からそれぞれ50mmあけて、幅10mm、長さ300mmの両面テープ(ニチバン株式会社製、両面テープ ナイスタックNW−10)2を横方向のそれぞれの内壁に沿って貼り付けた。これらの両面テープ2上に、厚み0.1mm、横300mm、縦150mmのティッシュペーパー(日本製紙クレシア製 キムワイプ L−100を上記寸法に切断した物)3を皺のないように貼り付けた。ティッシュペーパー3上で、アクリル樹脂製トレー1の横方向のそれぞれの内壁から15mm内側の部分、横300mm、縦120mmの範囲に粒子状吸水剤4を13.5g、均一に散布した(坪量375g/m)。なお、散布前には静電気が発生しないようにアクリル樹脂製トレー1の壁面に静電気防止処置を行った。
【0196】
散布した粒子状吸水剤4の上にトップシート5を載置した。トップシート5の位置は、アクリル樹脂製トレー1の内壁からの距離が横方向で左右同等、縦方向で上下同等になるように配置した。
【0197】
トップシート5には、ユニチャーム株式会社製、商品名マミーポコテープタイプ、Lサイズ(2014年6月に日本にて購入、パッケージ底面の番号:404088043)から取り出したシートを使用した。取り出したシートのサイズは縦14cm、横39cm、重さは3.3g〜3.6gであった。接着剤によって、オムツ中のパルプなどが付着しているため、十分に除去してから使用した。
【0198】
トップシート5の上に、横390mm、縦90mm、厚み0.63mmのサイズの金網6(JIS金網、ステンレス製、20メッシュ)を載置した。この金網6の上にさらに、中央部に内径30mmの円筒形の投入孔7を有するアクリル樹脂製の上蓋8(横400mm、縦150mm、厚み20mm、円筒部の高さ100mm)を載置した。
【0199】
図2は拡散吸収時間の測定に用いる測定装置の上蓋及びトレーの外観を示す図であり、(a)は上蓋の上面図であり、(b)は上蓋の側面図であり、(c)はトレーの上面図であり、(d)はトレーの側面図である。
【0200】
図2の(a)において、aは投入孔7の内径、b及びcはそれぞれ上蓋8の横及び縦の寸法を表す。図2の(b)において、dは投入孔7の円筒部の高さ、eは上蓋8の厚みに対応する。
【0201】
図2の(c)は、アクリル樹脂製トレー1におけるティッシュペーパー3の位置関係を示している。図2の(c)において、f及びgはティッシュペーパー3が縦方向のそれぞれの内壁から50.5mm内側の部分に位置することを示し、hはティッシュペーパー3の横の寸法(300mm)を示している。iはアクリル樹脂製トレー1の横の内寸(401mm)、jはアクリル樹脂製トレー1の縦の内寸及びティッシュペーパー3の縦の寸法(151mm)を示している。kはアクリル樹脂製トレー1の横方向における内寸と外寸との差(5mm)を示している。lはアクリル樹脂製トレー1の縦方向における内寸と外寸との差(5mm)を示している。
【0202】
また、図2の(d)において、mはアクリル樹脂製トレー1の横の外寸(411mm)を示し、nはアクリル樹脂製トレー1の高さ(35mm)を示す。
【0203】
この上蓋8の上にさらに、粒子状吸水剤4に均等に荷重がかかるように錘9(材質:ステンレス)を載置した。この際、上記金網6、アクリル樹脂製の上蓋8及び錘9の総重量が7578gになるように錘9の重さなどを調整した(荷重の圧力は粒子状吸水剤の散布面積に対しては2.07kPaとなる)。
【0204】
拡散吸収時間測定装置の投入孔7から37±0.5℃に温度を調整した0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液(好ましくは、1000gに対して0.04gの青色1号で着色しても良い)75gを5秒間で投入した。投入された塩化ナトリウム水溶液は金網6を透過しながら金網6上を拡散し、粒子状吸水剤4によって吸収された。メッシュの目開きの間に保持された液がすべて吸収された時間を1回目の拡散吸収時間[sec]とした。
【0205】
続いて、拡散吸収時間測定装置を37℃に調温した乾燥機に入れて保温し、保温開始から1時間後に、2回目の上記水溶液の投入を行い、金網6上のメッシュの目開きの間に保持された水溶液が全て吸収された時間を2回目の拡散吸収時間[sec]とした。続いて拡散吸収時間測定装置を37℃に調温した乾燥機に入れて保温し、保温開始から1時間後に、3回目の上記水溶液の投入を行い、金網6上のメッシュの目開きの間に保持された水溶液が全て吸収された時間を3回目の拡散吸収時間[sec]とした。
【0206】
<劣化拡散吸収時間>
上記の拡散吸収時間の測定において、0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液(好ましくは、1000gに対して0.04gの青色1号で着色しても良い)999.5gにL−アスコルビン酸0.5gを溶解させた水溶液を用いて、同様の操作を行った。
【0207】
〔実施例1〕
内径50mm、容量120mLのポリプロピレン製容器にアクリル酸23.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量(Mw)523Da)0.135g(アクリル酸に対して0.080モル%)、2.0重量%のジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液0.071g、イオン交換水22.2g及び48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液9.6gを混合し、溶液(A)を調製した。
【0208】
マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、45℃に調温した上記溶液(A)に48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液9.8gを開放系で約5秒間かけて加えて混合し単量体水溶液(1)を調製した。なお、該混合の過程で発生した中和熱及び溶解熱によって、該単量体水溶液(1)の液温が約80℃まで上昇した。
【0209】
その後、得られた単量体水溶液(1)の温度が78℃になった時点で、4.5重量%の過硫酸ナトリウム水溶液1.01gを加え、約3秒間攪拌した。その後、得られた反応液(1)をステンレス製シャーレ内に開放系で注いだ。
【0210】
上記ステンレス製シャーレのサイズは、内径88mm及び高さ20mmであった。なお、上記ステンレス製シャーレの表面温度を、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000、(株)井内盛栄堂製)を用いて、予め50℃まで加熱した。
【0211】
上記反応液(1)の供給後、速やかに、排気口を有するガラス製容器でステンレス製シャーレを覆い、ケース内の圧力が85kPaになるように真空ポンプで吸引した。なお、ケース外の圧力は101.3kPa(常圧)であった。
【0212】
上記反応液(1)が上記ステンレス製シャーレに注がれた後、しばらくして重合が開始された。該重合は、水蒸気を発生しながら上方に向かって四方八方に膨張発泡しながら進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了した。重合容器(すなわち、ガラス製容器でステンレス製シャーレを覆ったもの)内に3分間保持した後、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)(1)を取り出した。
【0213】
得られた含水ゲル(1)を、以下の仕様を有するスクリュー押出機(ミートチョッパー)でゲル粉砕した。上記スクリュー押出機は、その先端部に多孔板を備え、該多孔板の直径は82mm、孔径8.0mm、孔数33個、厚み9.5mmであった。またゲル粉砕の条件として、含水ゲル(1)の投入量は約360g/分、ゲル投入と並行して90℃の脱イオン水を50g/分で添加しながら、ゲル粉砕を行った。
【0214】
上記ゲル粉砕された含水ゲル(1)を目開き850μmのステンレス製金網上に広げ、190℃で30分間熱風乾燥を行った。続いて、該乾燥操作で得られた乾燥重合体(1)をロールミル(有限会社井ノ口技研社製、WML型ロール粉砕機)で粉砕した後、目開き710μm及び目開き175μmのJIS標準篩を用いて分級した。
【0215】
上記の一連の操作により、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(1)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(1)の諸物性を表1に示した。
【0216】
続いて、得られた吸水性樹脂粉末(1)100gに対して、エチレンカーボネート0.4g、プロピレングリコール0.6g、脱イオン水2.6g及びポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)0.001g(吸水性樹脂に対して10ppm)からなる表面架橋剤溶液を均一に混合した後、得られた混合物(1)を212℃で35分間、加熱処理した。加熱処理後、60℃まで強制冷却し、更に、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕することで、表面架橋された吸水性樹脂粉末(以下、「吸水性樹脂粒子」と称する)(1)を得た。なお、上記加熱処理は、吸水性樹脂粒子(1)のCRCが26.7〜27.7g/gの範囲内となるように実施された。
【0217】
続いて、上記吸水性樹脂粒子(1)100gに対して、27重量%の硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)1重量部、60重量%の乳酸ナトリウム水溶液0.3重量部及び1,2−プロピレングリコール0.025重量部からなる混合液1.2gを添加した。添加後、無風条件下、60℃で30分間、乾燥した。その後、得られた粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、解砕された粒子30gを直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に加え、直径6mmのガラスビーズ10gを加えペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488、装置詳細は特開平9−235378号公報に開示されている)に取り付け、800cycle/min(CPM)で10分間、振盪した。
【0218】
10分間の振盪後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、粒子状吸水剤(1)を得た。
【0219】
上記操作で得られた粒子状吸水剤(1)について、CRC、AAP、FSR、Vortex、SFC、水可溶分量、水可溶分の重量平均分子量、水可溶分の分子量分布、加水分解処理後の重量平均分子量、加水分解処理後の分子量分布及び加水分解処理後の分岐密度を測定し、更に、EXI(=CRC/Ln(水可溶分量))を算出した。結果を表2及び3に示した。
【0220】
〔実施例2〕
実施例1において、4.5重量%の過硫酸ナトリウム水溶液を加える際の単量体水溶液の温度を79℃に、ケース内の圧力を70kPaに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(2)及び粒子状吸水剤(2)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(2)の諸物性を表1に、粒子状吸水剤(2)の諸物性を表2及び表3に、それぞれ示した。
【0221】
〔実施例3〕
実施例1において、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加える際の溶液(A)の温度を50℃に、4.5重量%の過硫酸ナトリウム水溶液を加える際の単量体水溶液の温度を81.5℃に、ケース内の圧力を80kPaに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(3)及び粒子状吸水剤(3)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(3)の諸物性を表1に、粒子状吸水剤(3)の諸物性を表2及び表3に、それぞれ示した。
【0222】
〔実施例4〕
実施例1において、4.5重量%の過硫酸ナトリウム水溶液を加える際の単量体水溶液の温度を78.5℃に、ケース内の圧力を90kPaに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(4)及び粒子状吸水剤(4)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(4)の諸物性を表1に、粒子状吸水剤(4)の諸物性を表2及び表3に、それぞれ示した。
【0223】
〔実施例5〕
実施例1において、4.5重量%の過硫酸ナトリウム水溶液を加える際の単量体水溶液の温度を78.5℃に、ケース内の圧力を72kPaに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(5)及び粒子状吸水剤(5)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(5)の諸物性を表1に、粒子状吸水剤(5)の諸物性を表2及び表3に、それぞれ示した。
【0224】
〔比較例1〕
実施例1において、ケース内の圧力を常圧(101.3kPa)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、不定形破砕状の比較吸水性樹脂粉末(1)及び比較粒子状吸水剤(1)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(1)の諸物性を表1に、比較粒子状吸水剤(1)の諸物性を表2及び表3に、それぞれ示した。
【0225】
〔比較例2〕
比較例1において、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加える際の溶液(A)の温度を50℃に、4.5重量%の過硫酸ナトリウム水溶液を加える際の単量体水溶液の温度を84.5℃に、それぞれ変更した以外は比較例1と同様の操作を行って、不定形破砕状の比較吸水性樹脂粉末(2)及び比較粒子状吸水剤(2)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(2)の諸物性を表1に、比較粒子状吸水剤(2)の諸物性を表2及び表3に、それぞれ示した。
【0226】
〔比較例3〕
比較例1において、4.5重量%の過硫酸ナトリウム水溶液を加える際の単量体水溶液の温度を73℃に変更した以外は比較例1と同様の操作を行って、不定形破砕状の比較吸水性樹脂粉末(3)及び比較粒子状吸水剤(3)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(3)の諸物性を表1に、比較粒子状吸水剤(3)の諸物性を表2及び表3に、それぞれ示した。
【0227】
〔比較例4〕
2012年12月にタイで購入した紙オムツ(DSG社製:商品名「BabyLove PlayPants」)から取り出した吸水性樹脂を、比較粒子状吸水剤(4)とした。該比較粒子状吸水剤(4)の諸物性を表2及び表3に、それぞれ示した。
【0228】
〔比較例5〕
2013年11月にタイで購入した紙オムツ(SCA社製:商品名「Drypers DRYPantz」)から取り出した吸水性樹脂を、比較粒子状吸水剤(5)とした。該比較粒子状吸水剤(5)の諸物性を表2及び表3に、それぞれ示した。
【0229】
〔実施例6〕
イオン交換水10gと48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液13.23gとを十分に混合し、溶液(B)を調製した。アクリル酸15.84gとポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量(Mw)523Da)0.092g(0.080モル%)とを十分に混合し、溶液(C)を調製した。過硫酸カリウム0.0594gとイオン交換水5.76gとを十分に混合し、溶液(D)を調製した。
【0230】
内径50mm、容量120mLのポリプロピレン製容器に溶液(B)を入れ、マグネチックスターラーを用いて撹拌、及び水浴で冷却しながら溶液(C)を少量ずつ加え、さらに溶液(D)を加えることで単量体水溶液(2)を得た。当該作業中、溶液温度は30℃を超えないように冷却温度を調製した。単量体水溶液(2)に気孔20μm、球径10mmの脱気球を用いて、2L/分の流量で15分間窒素ガスを導入した。その後、窒素ガス導入後の単量体水溶液(2)にテトラメチルエチレンジアミン0.0128gを加え、10秒間撹拌することで反応液(2)を得た。
【0231】
厚さ1mm、縦26cm、横26cmのシリコンシートの中央から、縦25cm、横25cmの大きさを切り取って作製した型枠を厚さ5mm、縦30cm、横30cmのガラス板2枚で挟み、四辺をクランプで固定することで、内部に幅1mm、縦25cm、横25cmの空間を有する重合装置を作製した。当該装置内部を窒素ガスで満たし、その後、反応液(2)を注入した。その後、温度60℃の乾燥機内に重合装置の厚み方向が水平方向となるように立てて静置し、加熱を開始した。この時の反応液(2)の厚みは1mmであった。乾燥機内に静置してから約1時間後に反応液(2)の流動性が低下し、反応が進行していることを確認した。加熱開始から6時間後に重合装置を取り出し、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)(2)を取り出した。
【0232】
得られた含水ゲル(2)を、以下の仕様を有するスクリュー押出機(ミートチョッパー)でゲル粉砕した。上記スクリュー押出機は、その先端部に多孔板を備え、該多孔板の直径は82mm、孔径8.0mm、孔数33個、厚み9.5mmであった。またゲル粉砕の条件として、含水ゲル(2)の投入量は約360g/分、ゲル投入と並行して90℃の脱イオン水を50g/分で添加しながら、ゲル粉砕を行った。
【0233】
上記ゲル粉砕された含水ゲル(2)を目開き850μmのステンレス製金網上に広げ、190℃で30分間熱風乾燥を行った。続いて、該乾燥操作で得られた乾燥重合体(2)をロールミル(有限会社井ノ口技研社製、WML型ロール粉砕機)で粉砕した後、目開き710μm及び目開き175μmのJIS標準篩を用いて分級した。
【0234】
上記の一連の操作により、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(6)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(6)の諸物性を表1に示した。
【0235】
続いて、得られた吸水性樹脂粉末(6)100gに対して、エチレンカーボネート0.4g、プロピレングリコール0.6g、脱イオン水2.6g及びポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)0.001g(吸水性樹脂に対して10ppm)からなる表面架橋剤溶液を均一に混合した後、得られた混合物を212℃で35分間、加熱処理した。加熱処理後、60℃まで強制冷却し、更に、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕することで、表面架橋された吸水性樹脂粉末(以下、「吸水性樹脂粒子」と称する)(6)を得た。なお、上記加熱処理は、吸水性樹脂粒子(6)のCRCが26.7〜27.7g/gの範囲内となるように実施された。
【0236】
続いて、上記吸水性樹脂粒子(6)100gに対して、27重量%の硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)1重量部、60重量%の乳酸ナトリウム水溶液0.3重量部及び1,2−プロピレングリコール0.025重量部からなる混合液1.2gを添加した。添加後、無風条件下、60℃で30分間、乾燥した。その後、得られた粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、解砕された粒子30gを直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に加え、直径6mmのガラスビーズ10gを加えペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488、装置詳細は特開平9−235378号公報に開示されている)に取り付け、800cycle/min(CPM)で10分間、振盪した。
【0237】
10分間の振盪後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、粒子状吸水剤(6)を得た。
【0238】
上記操作で得られた粒子状吸水剤(6)について、CRC、AAP、FSR、Vortex、SFC、水可溶分量、水可溶分の重量平均分子量、水可溶分の分子量分布、加水分解処理後の重量平均分子量、加水分解処理後の分子量分布、加水分解処理後の分岐密度を測定し、更に、EXI(=CRC/Ln(水可溶分量))を算出した。結果を表2及び3に示した。
【0239】
〔実施例7〕
実施例1のポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量(Mw)523Da)をトリメチロールプロパントリアクリレート0.0667g(アクリル酸に対して0.070モル%)にした以外は実施例1と同様の操作を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(7)及び粒子状吸水剤(7)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(7)の諸物性を表1に、粒子状吸水剤(7)の諸物性を表2及び表3に、それぞれ示した。
【0240】
〔比較例6〕
実施例6の重合装置の型枠の厚みを8mmにした以外は実施例6と同様の操作を行って、不定形破砕状の比較吸水性樹脂粉末(6)及び比較粒子状吸水剤(6)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(6)の諸物性を表1に、比較粒子状吸水剤(6)の諸物性を表2及び表3に、それぞれ示した。
【0241】
〔実施例8〕
実施例1で得られた粒子状吸収剤(1)を用いて拡散吸収時間及び劣化拡散吸収時間を測定した。測定後にトップシートを触ったところ、滑りは無く、トップシートを取り除いて内部を観察したところ、吸水性樹脂はゲルの形状を維持していた。測定結果を表4に示した。
【0242】
〔比較例7〕
比較例1で得られた比較粒子状吸収剤(1)を用いて拡散吸収時間及び劣化拡散吸収時間を測定した。測定後にトップシートを触ったところ、滑りが有り、トップシートを取り除いて内部を観察したところ、吸水性樹脂が劣化し、形状を維持していない箇所が見られた。測定結果を表4に示した。
【0243】
【表1】
【0244】
【表2】
【0245】
【表3】
【0246】
【表4】
(まとめ)
表3に示すように、実施例1〜7で得られた粒子状吸水剤(1)〜(7)は、EXI、水可溶分の分子量分布、加水分解処理後の重量平均分子量及び加水分解処理後の分岐密度がいずれも本発明の範囲内である。これに対し、比較例1で得られた比較粒子状吸水剤(1)は、EXI、水可溶分の分子量分布、加水分解処理後の重量平均分子量及び加水分解処理後の分岐密度がいずれも本発明の範囲外である。比較例2で得られた比較粒子状吸水剤(2)は、水可溶分の分子量分布及び加水分解処理後の重量平均分子量が本発明の範囲外である。比較例3で得られた比較粒子状吸水剤(3)は、EXI、水可溶分の分子量分布及び加水分解処理後の分岐密度が本発明の範囲外である。比較例4で得られた比較粒子状吸水剤(4)は、加水分解処理後の分岐密度が本発明の範囲外である。比較例5で得られた比較粒子状吸水剤(5)は、水可溶分の分子量分布が本発明の範囲外である。比較例6で得られた比較粒子状吸水剤(6)は、加水分解処理後の重量平均分子量が本発明の範囲外である。
【0247】
すなわち、粒子状吸水剤が、EXIが11.5以上であり、水可溶分の分子量分布が1.0〜4.8であり、かつ、粒子状吸水剤を0.9重量%塩化ナトリウム水溶液で膨潤させたゲル600mgを10mLの0.1N水酸化ナトリウム水溶液中で、80℃条件下3週間静置処理した後の重量平均分子量が450,000〜1,800,000Daであり、同処理後の分岐密度が0.100以下であるという条件を全て満たす場合に、諸物性に優れた粒子状吸水剤を提供することができる。
【0248】
また、実施例8及び比較例7より、上記条件を全て満たす粒子状吸水剤を吸収体に使用した場合、劣化に強く、安定した吸水性能を示すこと(すなわち、耐尿性に優れること)が分かる。
【0249】
これにより、本発明の粒子状吸水剤が吸収体に使用された場合、液の取込み性に優れ、高性能な吸収体を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0250】
本発明は、種々の用途の吸水剤又は保水剤に利用することができる。特に、本発明は、紙オムツ及び生理用ナプキン等の吸収性物品に好適に用いられる。
図1
図2