特許第6557726号(P6557726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6557726スペースクラフトおよびランチャーの分離可能な要素のための分離システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557726
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】スペースクラフトおよびランチャーの分離可能な要素のための分離システム
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/64 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   B64G1/64 B
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-527789(P2017-527789)
(86)(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公表番号】特表2017-535476(P2017-535476A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】ES2014070865
(87)【国際公開番号】WO2016083627
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2017年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】517174522
【氏名又は名称】エアバス ディフェンス アンド スペース,エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リバス サンチェス,フランシスコ ハビエル
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−511319(JP,A)
【文献】 特表2006−500522(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0017337(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/64
F42B 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペースクラフトおよびランチャーの分離可能な要素のための分離システム(1)であって、上部リング(5)と、下部リング(6)と、複数のスライド可能なクランプ(4)を収容する内側チャネル(3)を備えたバンド(2)とを備え、前記クランプは、2つの前記分離可能な要素間にインターフェースを形成する前記上部リング(5)と前記下部リング(6)とに対して適用されるものであり、前記バンド(2)の両端を連結/分離するための装置(19)をさらに備え、前記上部リング(5)と前記下部リング(6)の両方は、前記クランプ(4)内に配置されるウェッジ部を備えた外側突出要素(7、8)を含んでおり、前記下部リング(6)、ウェッジ部と内側チャネル形状部(10)とを備えた前記外側突出要素(8)を含んだ外側部(11)も備える、分離システムにおいて前記上部リング(5)は、前記下部リング(6)の前記チャネル形状部(10)に整合するウェッジ部を備えた内側突出要素(9)をさらに含み、前記外側部(11)は前記下部リング(6)の本体(12)から突出し、前記本体(12)と隙間を開けて配置されて溝部(13)を形成し、前記外側部(11)はバネとして作用することができることを特徴とする分離システム(1)。
【請求項2】
前記下部リング(6)の前記外側部(11)は前記下部リング(6)の一体的部分である、請求項1記載のスペースクラフトおよびランチャーの分離可能な要素のための分離システム(1)。
【請求項3】
前記下部リング(6)の前記外側部(11)は、固定手段(15)によって前記下部リング(6)の前記本体(12)に取り付けられる別部品である、請求項1記載のスペースクラフトおよびランチャーの分離可能な要素のための分離システム(1)
【請求項4】
前記下部リング(6)の前記外側部(11)は、ネジまたは固定具によって前記下部リング(6)の前記本体(12)に取り付けられる少なくとも1つの別部品であるプレート(21)である、請求項3記載のスペースクラフトおよびランチャーの分離可能な要素のための分離システム(1)
【請求項5】
前記別部品は、前記下部リング(6)の前記本体(12)の対応する貫通孔(17)に対面する少なくとも1つの貫通孔(16)を含んでいる、請求項3または4記載のスペースクラフトおよびランチャーの分離可能な要素のための分離システム(1)
【請求項6】
前記下部リング(6)の上方に前記上部リング(5)を配置するステップと、
前記プレート(21)の貫通孔(16)と、前記下部リング(6)の前記本体(12)の貫通孔(17)とにネジ(18)を挿入するステップと、
前記下部リング(6)の残部に前記プレート(21)を接近させるように前記ネジ(18)を回し、ウェッジ部を備えた前記内側突出要素(9)を前記プレート(21)の前記チャネル形状部(10)内に配置させるステップと、
前記上部および前記下部リング(5、6)のウェッジ部を備えた前記外側突出要素(7、8)を前記クランプ(4)のギャップ(20)内に配置した状態で、クランプ−バンドアセンブリを作用位置に配置するステップと、
前記下部リング(6)の残部に前記プレート(21)を接近させるのに用いた前記ネジ(18)を外すステップと、
を含んでいる、請求項4から6のいずれか1項に記載のスペースクラフトおよびランチャーの分離可能な要素のための分離システム(1)の設置手順。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本願発明は、例えば、ランチャー(発射装置)からスペースクラフトを分離する等、飛行中に分離されなければならないスペースクラフトあるいはランチャーの要素のための分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
人工衛星(サテライト)やその発射ロケットなどのスペースクラフトの部分を、人工衛星が軌道に到達したときに分離するための手段を備えた様々なシステムは既に知られている。それら従来技術システムの1つは、EP0267279A1において説明されているスペースクラフトのためのクランプ(締付け)式接続アセンブリである。このクランプ構造体は、それぞれが周囲に溝を有したベベル(斜角)加工されたリム(縁部)を有しているスペースクラフトの2つの分離可能な部分をジョイントするものである。このクランプは、それら分離可能な部分のリムを整合させるように内部が設計形状化されており、テンションバンドの手段によってジョイントされている複数のリテーナを含んでおり、それぞれのリテーナは、そのリムの対応する溝内に係合し、スペースクラフトの2つの分離可能な部分間で直接的に荷重を伝搬するシャーピンを含んでいる。
【0003】
人工衛星の取り付けや分離を実行する別システムはEP0768241A1において解説されている。そのシステムは、発射ロケットのアダプタの上部リングに螺合される固定部品と、2部分構成金属バンドで成るテンションストリップ体と、数個のラグ(突出部)によって形成されている金属回転シャフトを下方部分に備えた薄壁円筒体を有しており、それを囲んでその上に押し付けている、人工衛星の下部リングに上部を介して当接する人工衛星を固定するための湾曲金属部品と、それぞれが2つの回転シャフトを有しており、1方がそれら金属部品のものと一致し、他方が固定部品と共用される複数のプレスカムとを含んでいる。このシステムの目的は単に、発射ロケットへの人工衛星の固定と軌道進入後の放出である。
【0004】
EP0905022A1は、内周囲に形成された導経路を有した開リングまたは金属バンドを含んでおり、そこでは顎形状部が不連続的に一体化されており、そのチャネル内をスライドすることができ、そのリングの両端に固定されている2つの端部品と、それら2つの端部品を連結するテンションボルトと、人工衛星のランチャーの構造体に固定されているリング保持用の3つのサポート部とをさらに含んでいる人工衛星の取り付けと分離を実行するシステムを説明している。
【0005】
EP1944237A1は、発射運搬体および人工衛星を接続/分離する装置に関係しており、複数のクランプ構造体をスライド式に収容する内導経路を備えたストリップ体を含んでおり、それは2つの運搬体間で接続インターフェースを形成するリングに対して適用される。この装置はさらに、ストリップ体とクランプ構造体を含んだアセンブリを放射方向に締め付けるための手段と、その両端を連結/分離する装置とを含んでおり、それはロックおよびアンロック(ロック解除)の手段と共に2段階機構、すなわち、リングとの接触が維持された状態で両端が移動し、摩擦手段によってストリップ体の締め付けに相応する弾性エネルギーを減衰させる第1段階と、駐停位置に到達するまでストリップ体がリングから分離する第2段階との2段階でストリップ体の制御された開動作を可能にする機構を含んでいる。
【0006】
これらシステムの弱点の1つは、荷重搬送能力が増加したとき、クランプのバンド内の張力が高い値に到達し、バンドの分離によって誘発される衝撃を増加させることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP0267279A1
【特許文献2】EP0768241A1
【特許文献3】EP0905022A1
【特許文献4】EP1944237A1
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本願発明の目的は、最小程度のバンド張力(バンドテンション)で高荷重(高負荷;high load)運搬能力を可能にし、結果的に誘引される解放の衝撃を低減させることができるスペースクラフトまたはランチャーの分離可能な要素のための分離システムを提供することである。
【0009】
本願発明の別目的は従来のクランプのバンドの作用不良モード(スライド)を回避することである。
【0010】
本願発明は、上部リング、下部リングおよび複数のスライド可能なクランプを収容する内側チャネル(内側導通路)を備えたバンドを含んだスペースクラフトとランチャーの分離可能な要素のための分離システムを提供するものであり、それらクランプは、それら2つの分離可能な要素間に接続インターフェース(接続部)を形成する上部リングと下部リングに対して適用され、バンドの両端を連結/分離するための装置をさらに含んでいる。上部リングと下部リングの両方は、クランプに配置されたウェッジ部(楔部、楔断面)をそれぞれ備えた外側突出要素を含んでおり、上部リングはさらに、下部リング内でチャネル形状部(チャネル形状断面)の部分と整合(一致)するウェッジ部を備えた内側突出要素を含んでいる。下部リングはまたウェッジ部と内側チャネル形状部とを備えた外側突出要素を含んだ外側部も含んでおり、その外側部は下部リングの本体から突出しており、本体と離れて配置され、溝部を形成している。
【0011】
本願発明の分離システムは、バンドが解放されたときに改善された性能が提供されるように設計されている。
【0012】
本願発明の別の利点は、高荷重用の大径を有したランチャー構造体でその利用を可能にし、破片(デブリ;debris)または衝撃を完全に排除することである。
【0013】
他の好適な実施態様は従属請求項で説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面を簡単な説明
本願発明のさらなる理解に供するため、添付図面に言及しながら以下で本願発明を詳細に説明する。
【0015】
図1図1は、本願発明の分離システムの断面図である。
図2図2は、クランプ−バンドアセンブリと、そのバンドの両端を連結/分離するための装置19の斜視図である。
図3図3は、本願発明の第1実施例を図示している。
図4図4は、本願発明の第2実施例の下部リングの詳細図である。
図5図5は、従来の分離システムと本願発明のシステムの荷重に対する張力の推移を示すグラフである。
図6図6は、本願発明の分離システムを備えた2つの分離可能な要素の放出プロセスを示す概略図である。
図7a-7f】図7aから図7fは、本願発明の装置の組み立てプロセスを示している。
【0016】
発明の詳細な説明
図1は関連した上部リング5と下部リング6を含んだ本願発明の分離システム1の断面図である。システム1は、スペースクラフトまたはランチャーの2つの分離可能な要素間に接続インターフェースを形成する上部リング5と下部リング6とに対して適用される複数のスライド可能なクランプ4を収容する内側チャネル3を備えたバンド2(クランプ−バンドアセンブリは図2に図示)も含んでおり、それにはバンド2の両端を連結/分離するための装置19(図2に図示)が提供されている。
【0017】
上部リング5と下部リング6の両方は、クランプ4のギャップ20内に配置されるウェッジ部を備えた外側突出要素7と8をそれぞれ含んでいる。
【0018】
上部リング5はさらに、下部リング6内でチャネル形状部(図4)に一致するウェッジ部を備えた内側突出要素9を含んでいる。下部リング6は、ウェッジ部とチャネル形状部10とを備えた外側突出要素8を含んだ外側部11(図4で固定)をさらに含んでいる。下部リング6の外側部11は下部リング6の本体12から離れており、これにより下部リング6の外側部11と本体12との間には溝部13が形成されている。図1に示すシステム1において、外側部11は下部リング6の本体12の基部14に固定されて示されている。この外側部は下部リング6に固定または一体的に加工することができる。
【0019】
図2は、バンド2の両端を連結/分離するための装置19を備えたクランプ−バンドアセンブリを示している。
【0020】
図3は、本願発明の第1実施例に対応しており、下部リング6の外側部11は下部リング6の一体的な部分であり、この図では中間溝部13が加工によって形成されている。
【0021】
図4は本願発明の別実施例の下部リング6に対応しており、下部リング6の外側部11は固定手段15によって下部リング6の本体12に取り付けられている別部品である。
【0022】
図4に図示するように、下部リング6の外側部11は、バネプレートとして機能する複数のプレート21で構成されており、ネジまたは固定具15の手段によって下部リング6の本体12に取り付けられている。
【0023】
図4は、プレート21が、下部リング6の本体12の対応する貫通孔17に対面する少なくとも1つの貫通孔16を含んでいることも図示する。これら貫通孔16、17の機能は図7に関する説明において解説する。
【0024】
図5は、従来の分離システムと本願発明の分離システム1のバンド、特にこの場合には4.8mの直径のバンドのための典型的な荷重(負荷)−張力の関係を示すグラフである。
【0025】
従来の分離システムでは、バンドが72kNで引っ張られると100N/mm未満で作用不良(故障)が発生することが示されている。このグラフは約80N/mmでのスライド(ギャップポイント)を示している。
【0026】
本願発明のシステム1は180N/mmに至る前には初期不安定性を示さず、250N/mmを超えてさえも作用不良を発生させない。従って、本願発明のシステム1はさらに大きい荷重にも耐え、バンド張力の大きな増加には導かず、作用不良は変形によるものとなるであろう。
【0027】
図6は、本願発明の分離システム1での2つの分離可能な要素の解放(解除)プロセスを概略的に示している。第1段階において、クランプ−バンドアセンブリは緩められ(装置19はバンド2の両端を分離するように作用する)、クランプ4のギャップ20内に前もって配置されている上部リング5と下部リング6のウェッジ部を備えた外側突出要素7、8を解放する。
【0028】
第2段階では、下部リング6の外側部11が解放され、外側部11はバネのエネルギーの効果によって下部リング6の本体12に対して開き、上部リング5のウェッジ部を備えた内側突出要素9を、それが配置されている、下部リング6の外側部11内でチャネル形状部10から自由状態にする。
【0029】
最後に第3段階で、上部リング5と下部リング6が完全に解放されたとき、両方のリング(例えば、ランチャーに属するリングと人工衛星に属するリング)の分離が可能になる。
【0030】
図7は、下部リング6の本体12の貫通孔17に対面する少なくとも1つの貫通孔16を備えたプレート21を含んでいる実施例である本願発明のシステム1の設置手順を示している。ステップ1の図には(図7a)、下部リング6のみが図示されている。ステップ2では(図7b)、上部リング5が下部リング6の上方に置かれる。ステップ3では(図7c)、ネジ18が下部リング6のプレート21と本体12の貫通孔16、17に挿入される。ステップ4では(図7d)、ネジ18が回転されてプレート21を下部リング6の本体12に接近させ、ウェッジ部を備えた内側突出要素9を下部リング6のプレート21のチャネル形状部10内に配置させる。ステップ5では(図7e)、上部リング5と下部リング6のウェッジ部を備えた外側突出要素7、8がクランプ4のギャップ20内に配置され、クランプ−バンドアセンブリが作用位置に配置される。ステップ6では(図7f)、ステップ4でプレート21を下部リング6の本体12に接近させるために使用されたネジ18が外される。
【0031】
本願発明は好適実施例に関連して十分に説明されているが、本願発明のスコープ内にて様々な改良が可能であることは明白であり、よって、それら実施例によって本願発明は限定されることはなく、以下の請求項によってのみ限定されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e
図7f