特許第6557729号(P6557729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557729
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】燃焼機関のための燃料噴射バルブ
(51)【国際特許分類】
   F02M 47/00 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   F02M47/00 C
   F02M47/00 B
   F02M47/00 P
【請求項の数】18
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-534883(P2017-534883)
(86)(22)【出願日】2015年8月24日
(65)【公表番号】特表2017-532502(P2017-532502A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】EP2015069346
(87)【国際公開番号】WO2016041739
(87)【国際公開日】20160324
【審査請求日】2017年8月25日
(31)【優先権主張番号】1407/14
(32)【優先日】2014年9月17日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】505305444
【氏名又は名称】ガンサー−ハイドロマグ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】GANSER−HYDROMAG AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガンサー,マルコ
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−528480(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/088781(WO,A1)
【文献】 特開2011−169242(JP,A)
【文献】 特開2011−012670(JP,A)
【文献】 特開2011−202546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00−71/04,
F16K 31/06−31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室内への燃料の間欠噴射のための燃料噴射バルブであって、
ハウジング本体(14)及び噴射バルブシート(18)を備えるノズル本体(16)を有するハウジング(12)と、
ハウジング内に配置され、高圧燃料入口(24)から噴射バルブシート(18)まで延びる高圧空間(26)と、
ハウジング(12)内に移動可能に配置され、噴射バルブシート(18)と相互作用する噴射バルブ部材(56)と、
一方では、噴射バルブ部材(56)上に支持されて噴射バルブ部材に噴射バルブシート(18)に向かう閉鎖力を印加し、他方では、ハウジング(12)に対して固定されて支持される圧縮バネ(62)と、
噴射バルブ部材(56)の制御プランジャー(68)が滑り嵌めにより内部を案内される案内部(64)と、
案内部(64)及び制御プランジャー(68)とともに、制御空間(70)の境界を定める中間部分(66)と、
制御空間(70)内の圧力を変化させることによって噴射バルブ部材(56)の軸方向の移動を制御するための制御装置(72)と、を有しており、該制御装置(72)は、中間バルブ(83)、及び、中間部分(66)の案内通路(74)内を滑り嵌めにより案内されるステム部(76)及びヘッド部(80)を有するキノコ形の中間バルブ部材(78)を有し、ヘッド部のシール面(116)は、ステム部(76)の周りに半径方向の距離をおいて延び、中間バルブ部材(78)の閉鎖位置において、中間部分(66)に形成された環状の中間バルブシート(82)に載置され、それによって、環状のシール面(122)を構成し、
中間部分(66)、ステム部(76)、及びヘッド部(80)によって境界が定められ、ステム部(76)の周りに延びる環状空間(120)をさらに有しており、該環状空間(120)には、高圧燃料入口(24)に連結された高圧燃料供給部(6)が開口し、
中間バルブ(83)は、中間バルブ部材(78)の閉鎖位置において、高圧燃料供給部(86)及び環状空間(120)を制御空間(70)から分離し、中間バルブ部材(78)が閉鎖位置にないとき、環状空間(120)及び高圧燃料供給部(86)から制御空間(70)への連結を開放し、また、中間バルブ部材(78)は、リストリクタ通路(90)を除いて、制御空間(70)をバルブ空間(44)から連続的に分離し、
バルブ空間(44)を低圧燃料リターン(46)へ連結し、かつ低圧燃料リターン(46)からバルブ空間(44)を分離するための電動のアクチュエータ部(38)をさらに有しており、
環状空間(120)は、ステム部(76)の周りに延びる少なくとも近似的に中空円筒状の内側環状空間(108)と、該側環状空間(108)に隣接する環状の間隙空間(118)を有し、該間隙空間は、中間バルブ部材(78)の閉鎖位置において、中間部分(66)とヘッド部(80)の間の間隙によって構成され、高圧燃料供給部(86)は、内側環状空間(108)に開口する、ことを特徴とする燃料噴射バルブ。
【請求項2】
環状の間隙空間(118)は、中間バルブ部材(78)の閉鎖位置において少なくとも近似的に一定の間隙幅を有し、該間隙幅は、内側環状空間(108)よりも、好ましくは大きくとも5分の1であり、それぞれの寸法は、ステム部(76)の長手方向に沿って測定される、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射バルブ。
【請求項3】
高圧燃料供給部(86)の開口は、完全に内側環状空間(108)の領域内に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料噴射バルブ。
【請求項4】
環状のシール面(122)の幅は、半径方向に測定されたとき、0.1mmから1mm、好ましくは、0.2mmから0.5mmであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料噴射バルブ。
【請求項5】
環状の間隙空間(118)は、中間バルブ部材(78)の閉鎖位置において、長手方向に測定されたとき、0.04mmから0.4mmの厚さを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料噴射バルブ。
【請求項6】
環状の間隙空間(118)は、半径方向に測定されたとき、少なくとも0.2mmの幅を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料噴射バルブ。
【請求項7】
ヘッド部(80)の中間部分(66)に対面する側に、突出する環状のビードシール(112)が円形のリング状に形成され、該ビードシールの自由端面(114)は、シール面(116)を構成することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の燃料噴射バルブ。
【請求項8】
ビードシール(112)は、少なくとも近似的に正方形または四角形の断面を有することを特徴とする請求項7に記載の燃料噴射バルブ。
【請求項9】
ビードシール(112)は、少なくとも近似的に直角台形に対応する断面を有し、少なくとも近似的な直角は、半径方向内側に配置されており、ヘッド部(80)は、断面で見たときに、好ましくは、半径方向外側の縁部(124)まで、台形の半径方向外側の斜行側の直線状の延長部を構成することを特徴とする請求項7に記載の燃料噴射バルブ。
【請求項10】
中間部分(66)の制御空間(70)に対面し、中間バルブシート(82)を構成する端面は、平坦な形状を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の燃料噴射バルブ。
【請求項11】
ヘッド部(80)の中間部分(66)に対面する側には半径方向内側のアンダーカット部(128)が形成され、中間部分(66)には半径方向外側のアンダーカット部(130)が形成され、これらのアンダーカット部(128;130)は、環状のシール面(122)の境界を定めることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の燃料噴射バルブ。
【請求項12】
中間部分(66)のヘッド部(80)に対面する側には、環状のビードシール(112)が形成され、該ビードシールの自由端面(114)は、バルブシート(82)を構成し、該ビードシールは、少なくとも近似的に正方形または四角形の断面を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の燃料噴射バルブ。
【請求項13】
バルブ空間(44)は、別のリストリクタ通路(96)を介して高圧空間(26)に連続的に連結されることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の燃料噴射バルブ。
【請求項14】
平板状の中間要素(98)が、中間部分(66)の案内部(64)とは反対側に載置され、中間要素(98)は、ステム部(76)及び案内通路(74)に対して偏心させた出口通路(102)を有しており、該出口通路は、中間部分(66)及び中間バルブ部材(78)とともに、バルブ空間(44)の境界を定め、中間部分(66)とは反対側で、アクチュエータ部(38)のタペット(40)によって閉鎖及び開放可能であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の燃料噴射バルブ。
【請求項15】
案内部(64)は、案内スリーブ(64’)によって構成され、該案内スリーブ上に圧縮バネ(62)が支持されており、圧縮バネ(62)は、案内スリーブ(64’)を平板状の中間部分(66)に対してシールを形成するように押圧することを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の燃料噴射バルブ。
【請求項16】
内燃機関の燃焼室内への燃料の間欠噴射のための燃料噴射バルブであって、
ハウジング本体(14)及び噴射バルブシート(18)を備えるノズル本体(16)を有するハウジング(12)と、ハウジング内に配置され、高圧燃料入口(24)及び噴射バルブシート(18)に連結された高圧空間(26)と、ハウジング(12)内に長手方向に移動可能に配置され、噴射バルブシート(18)と相互作用する噴射バルブ部材(56)と、
一方では、噴射バルブ部材(56)上に支持されて噴射バルブ部材に噴射バルブシート(18)に向かう閉鎖力を印加し、他方では、ハウジング(12)に対して固定されて支持される圧縮バネ(62)と、噴射バルブ部材(56)の制御プランジャー(68)が滑り嵌めにより内部を案内される案内部(64)と、案内部(64)及び制御プランジャー(68)とともに、制御空間(70)の境界を定める中間部分(66)と、制御空間(70)内の圧力を変化させることによって、噴射バルブ部材(56)の軸方向の移動を制御するために、制御空間(70)を低圧燃料リターン(46)へ連結し、かつ低圧燃料リターン(46)から制御空間(70)を分離するための電動のアクチュエータ部(38)と、を有しており、中間部分(66)は、半径方向の外側が少なくとも近似的に円筒形を有し、ハウジング(12)の内側が少なくとも近似的に円筒形をなす部分(60)内に配置され、該中間部分は、中間部分とハウジング(12)との間に、高圧空間(26)の自由な部分(36)を残し、中間部分(66)の外径は、ハウジング(12)の前記部分(60)の内のり幅に少なくとも近似的に対応し、中間部分(66)には、高圧空間(26)の中間部分(66)及びハウジング(12)によって境界が定まる部分(36)を構成する軸方向に連続的な凹部(132)が形成される、ことを特徴とする燃料噴射バルブ
【請求項17】
前記凹部(132)は、扇形の断面を有することを特徴とする請求項16に記載の燃料噴射バルブ。
【請求項18】
ハウジング(12)の前記部分内に配置される少なくとも近似的に円筒形の中間要素(98)が、中間部分(66)の案内部(64)とは反対側に載置され、中間要素(98)の外径は、ハウジング(12)の前記部分(60)の内のり幅に少なくとも近似的に対応し、中間要素(98)には、中間部分(66)の凹部(132)と揃えられ、中間部分(66)及びハウジング(12)によって境界が定められた高圧空間(26)の部分(36)に連続する軸方向に連続的な凹部(132)が形成され、該凹部(132)は、好ましくは、扇形の断面を有することを特徴とする請求項16または17に記載の燃料噴射バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に従う、内燃機関の燃焼室内への燃料の間欠噴射のための燃料噴射バルブに関する。本発明は、さらに、請求項16の前段に従う燃料噴射バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃料噴射バルブは、例えば国際公開第2007/098621号により公知である。この種の燃料噴射バルブによって、噴射バルブ部材の開放動作の制御性と噴射バルブ部材の急速閉止プロセスの両方が、最小限の組立作業で可能となる。非常に短い間隔での多段噴射を実行することが可能である。制御空間とバルブ空間は、精密なリストリクタ通路のみを介して連続的に互いに連結されるが、一方、これらの2つの空間は、中間バルブによって連続的にお互いから分離される。噴射バルブの高圧空間に連結され、制御空間に通じる高圧供給部は、リストリクタ通路の断面と皮革して、大きな断面を有する。中間バルブによって制御される、バルブ空間からの出口の断面も、リストリクタ通路の断面よりも非常に大きくし得るため、噴射バルブ部材の開放動作は、実質的にリストリクタ通路のみに依存する。バルブ空間からの出口がアクチュエータ部によって閉鎖されているとき、中間バルブは迅速に開放され、高圧空間に連結された大きな断面の通路が顕在化する。これによって、噴射工程の迅速な終了が達成される。
【0003】
中間バルブの中間バルブ部材は、キノコ形であり、ステム部及びヘッド部を有している。ステム部は、中間部分の案内通路内を精密な滑り嵌めによって案内される。ヘッド部は、中間バルブ部材の閉鎖位置において、ステム部から半径方向に離れた位置においてステム部の周りに延びるシール面によって、中間部分に形成された環状の中間バルブシート上に載置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高圧供給部が完全に閉鎖されており、したがって、ヘッド部のシール面と中間バルブシートの間の接触が存在するとき、高い付着力が作用する場合があることが見出された。これによって、噴射工程を終了するために中間バルブを再び開放することが困難になる。特に、噴射工程の終了の正確なタイミングが損なわれる。
【0005】
この付着力の問題は、国際公開第2010/988781号において、既に議論されている。この問題を解決するため、中間バルブの閉鎖位置において、高圧供給部と中間部分のステム部の滑り嵌めとの間の制限された流体連結が提案されている。このため、ヘッド部のシール面及び中間バルブシートのシール面は、次のように、互いに傾斜するように形成される。すなわち、中間バルブの閉鎖位置において、これらは、半径方向外側で、シールを形成するように互いに載置される、半径方向内側では、高圧供給部をバルブ空間の方向に制限するために、軸方向に広がるリストリクタ間隙が形成される。したがって、目的は、中間バルブのバルブ部材とバルブシートとの間の環状線形のシールである。この解決方法のための、キノコ形の中間バルブ部材及びそれと相互作用する中間部分の極めて精密な製造は、極めて繊細かつ非常に高価である。
【0006】
さらに、この文献には、中間部分及び中間部分の案内部とは反対側に載置される中間要素が円形のディスク上である燃料噴射バルブの実施形態が開示されている。これらの中間部分及び中間要素は、ハウジングの内側が殆ど完全に円筒形の部分内に配置される。これらの構成要素、これらの構成要素とハウジングとの間に、高圧空間の自由な部分を残している。一方では、この部分は、噴射バルブシートに連結され、他方では、この部分は、高圧供給入口に連結される。高圧供給部への連結は、例えば、半径方向外側に延び、長手軸に対して、そうでない場合にはハウジングの円筒部に対して、斜行する凹部を形成することによって実現される。このような凹部は、この領域におけるハウジング、例えばノズル本体、の安定性を弱めるものであり、対応してハウジングの壁を厚くする必要がある。
【0007】
米国特許出願公開第2011/0233309号には、圧力制御バルブによって流出ポートとリターン路との間の連結が確立しているときに、流入ポートと圧力制御室との間の連結を遮断するために、圧力要素の圧力面で開いた壁面を押圧する燃料噴射装置が開示されている。圧力要素の圧力面は、流出ポートとリターン路との連結が圧力制御バルブによって遮断されているとき、開いた壁面内の流入ポートを圧力制御室に開放するために、開いた壁面に配置されるかまたは分離される。圧力要素の圧力面または制御ハウジングの開いた壁面には、互いに分離された窪んだ流入部及び窪んだ流出部が設けられる。窪んだ流入部の窪み寸法は、窪んだ流出部の窪み寸法よりも大きい。
【0008】
本発明は、この先行技術から開始して、既知の燃料噴射バルブを、製造において有利でありながら、中間バルブ部材と中間部分との間の付着力が最小化されるように発展させることを目的とする。
【0009】
本発明のさらなる目的は、燃料噴射バルブを、細形の構成が可能となるように発展させることである。これは、請求項1に記載の噴射バルブ及び請求項16に記載の噴射バルブによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従う内燃機関の燃焼室内への燃料の間欠噴射のための燃料噴射バルブは、少なくとも1つのハウジング本体及び噴射バルブシートを備える1つのノズル本体を有するハウジングを有する。ハウジングは、半径方向外側において、好ましくは、全長にわたって少なくとも近似的に円筒形をなし、任意選択で、段状の外径を備える。
【0011】
ハウジング内には、ハウジングの高圧燃料入口から噴射バルブシートまで延びる高高圧空間が存在する。
【0012】
好ましくは針状の噴射バルブ部材は、ハウジングの高圧空間内を長手軸の方向に移動可能なように配置され、噴射バルブシートと相互作用する。噴射バルブ部材は、燃料を燃焼室内に噴射するために噴射バルブシートから上昇され、噴射を終了するために、噴射バルブシートと接触するように戻される。
【0013】
圧縮バネも存在する。圧縮バネは、その一端が、噴射バルブ部材上に支持されて噴射バルブ部材に噴射バルブシートに向かう閉鎖力を印加し、他端は、ハウジングに対して、好ましくは案内部上に、固定されて支持される。案内部は、好ましくは、案内スリーブとして構成される。
【0014】
案内部は、噴射バルブ部材の制御プランジャーが、好ましくは精密な、滑り嵌めによりその内部を案内されるものである。さらに、案内部は、ハウジングの高圧空間内に配置される。
【0015】
ハウジングの高圧空間内には、さらに、好ましくは平板状の中間部分が存在する。中間部分は、案内部及び制御プランジャーとともに、高圧空間に対して制御空間の境界を定め、制御空間を高圧空間から分離する。
【0016】
燃料噴射バルブ内には、さらに、制御空間内の圧力を変化させることによって噴射バルブ部材の軸方向の移動を制御するための制御装置を有している。該制御装置は、中間バルブ、及び、中間部分の案内通路内を、好ましくは精密な、滑り嵌めにより案内されるステム部及びヘッド部を有するキノコ形の中間バルブ部材を有する。ヘッド部は制御空間に対面し、そのシール面は、ステム部の周りに半径方向の距離をおいて延び、中間バルブ部材の閉鎖位置において、中間部分に形成された環状の中間バルブシートに載置され、それによって、環状のシール面を構成する。環状のシール面は、ステムの(したがって、中間バルブ部材の)軸に対して直角に広がる平面内に位置する。
【0017】
中間部分に形成され、高圧入口に連続的の連結される高圧供給部は、環状空間へと開口する。環状空間は、中間部分、ステム部、及びヘッド部によって境界が定められ、ステム部の周りに延びる少なくとも近似的に中空の円筒形の内側環状空間を有する。
【0018】
中間バルブは、中間バルブ部材の閉鎖位置において、高圧供給部及び環状空間を制御空間から分離し、中間バルブ部材が閉鎖位置にないとき、環状空間及び高圧供給部から制御空間への連結を開放する。
【0019】
さらに、中間バルブは、精細なサイズのリストリクタ通路を除いて、ステム部によって制御空間をバルブ空間から連続的に分離する。ステム部は、中間部分を、好ましくは精密な、滑り嵌めにより案内される。リストリクタ通路は、好ましくは中間バルブ部材に形成され、制御空間をバルブ空間に連続的に連結する。
【0020】
燃料噴射バルブは、バルブ空間を低圧燃料リターンへ連結し、かつ低圧燃料リターンからバルブ空間を分離するための電動のアクチュエータ部を有する。
【0021】
環状空間は、さらに、内側環状空間に直接隣接する円環状の間隙空間を有する。間隙空間は、中間バルブ部材の閉鎖位置において、中間部分と中間バルブ部材のヘッド部の間の間隙によって構成される。環状の間隙空間の、中間バルブ部材の長手方向に沿って測定された間隙幅は、内側環状空間よりも小さく、好ましくは、大きくとも5分の1である。
【0022】
高圧供給部は、内側環状空間へ開口するため、国際公開第2010/088781号の教示とは異なり、環状の間隙空間は、高圧供給部と中間部分の中間バルブ部材のステム部の滑り嵌めとの間の制限された流体連結を構成しない。
【0023】
しかし、環状の間隙空間によって、環状のシール面が大きく低減し、それによって、付着力が低減するとともに、環状シール面の半径方向における最適な配置が可能となる。燃料噴射バルブの要件に応じて、環状のシール面は、半径方向のさらに外側または内側に位置するように選択することができる。中間バルブ部材は、複動プランジャーとして動作するため、これは、噴射バルブ部材の制御プランジャーの動作面のサイズを、所定の空間条件に対して調整可能とするための簡単な方法である。
【0024】
環状の間隙空間は、中間バルブ部材の閉鎖位置において、ステム部の(したがって中間バルブ部材の)長手方向に沿って測定されたときに、少なくとも近似的に一定の間隙幅を有する。
【0025】
高圧供給部の開口は、好ましくは、完全に内側環状空間の領域内に配置されている。これによって、高圧供給部を、半径方向に延びる穴部によって形成することが可能となる。さらに、これによって、開口が環状の間隙空間の領域内に部分的に配置される状況が回避され、これによって、環状のシール面を、ステム部からより短い距離に、すなわち半径方向においてより内側に、形成することが可能となる。
【0026】
環状のシール面は、半径方向に測定されたとき、好ましくは、0.1mmから1mmの幅を有する。この幅は、好ましくは、0.2mmから0.5mmである。環状のシール面が平坦な場合、これによって、一方では、良好なシールを形成することが可能となり、他方では、付着力を最小化することが可能となる。
【0027】
環状の間隙空間は、好ましくは、中間バルブ部材の閉鎖位置において長手方向に測定されたとき、好ましくは、0.04mmから0.4mmの間隙幅を有する。これは、一方では、空間節約型の環状の間隙空間であり、他方では、ステム部とシール面との間のヘッド部の表面が、過渡的な工程の間に最適な燃料の供給を提供するために十分に大きいものである。
【0028】
環状の間隙空間は、半径方向に測定されたとき、少なくとも0.2mmの幅を有する。これによって、一方では、ヘッド部のシール面を簡単に形成することが可能となり、他方では、中間バルブシートのシール面を簡単に形成することが可能となる。
【0029】
好ましくは、ヘッド部の中間部分に対面する側に、突出する円環状のビードシールが形成される。ビードシールの自由端面は、シール面を構成する。制御空間に対面する中間部分の端面は、好ましくは、平坦な形状を有している。これは、ヘッド部のシール面と相互作用する部分とともに、補助的なバルブシートを構成する。
【0030】
シール用フランジは、好ましくは、少なくとも近似的に正方形または四角形の断面を有する。ヘッド部の中間部分に対面する側は、好ましくは、半径方向外側でビードシールの周りに延びる円環状の表面を有し、この表面は、少なくとも近似的に、ステム部とビードシールとの間の環状の表面と同一の平面内に位置する。
【0031】
ビードシールは、好ましくは、少なくとも近似的に直角台形(2つの角が直角の台形)に対応する断面を有し、少なくとも近似的な直角は、半径方向内側に配置されている。台形の2つの互いに平行な辺の短い方は、中間バルブ部材のシール面内に位置し、斜辺は、半径方向外側に、中間部分から離れるように斜行する。ヘッド部は、好ましくは、断面で見たときに、半径方向外側の縁部まで、台形の半径方向外側の斜辺からなる直線状の延長部を有する。これによって、中間バルブ部材を簡単に形成することが可能となる。
【0032】
さらに好ましくは、ヘッド部の中間部分に対面する側に、半径方向内側のアンダーカット部が形成されるものであってもよい。また、中間部分には、半径方向外側のアンダーカット部が形成されるものであってもよい。これらのアンダーカット部は、中間バルブ部材のヘッド部が中間部分に載置されているとき、環状のシール面の境界を定めるものである。
【0033】
逆の構成、すなち、半径外側のアンダーカット部をヘッド部に形成し、半径方向内側のアンダーカット部を中間部分に形成した構成も可能である。これらのアンダーカット部は、環状の表面の境界を定めるものである。
【0034】
中間部分のヘッド部に対面する側には、好ましくは、円環状のシール用突出部が形成される。シール用突出部の自由端面は、バルブシートを構成する。シール用突出部は、少なくとも近似的に正方形または四角形の断面を有する。この場合、ヘッド部上のシール面は、ステム部と円環上のシール面との間の表面と同一の平面内に位置するものであってもよい。
【0035】
バルブ空間は、好ましくは、別のリストリクタ通路を介して高圧空間に連続的に連結される。この別のリストリクタ通路は、例えば、高圧供給部から開始するように、中間部分に形成されるものであってもよい。バルブ空間が、アクチュエータ部によって低圧燃料リターンから分離された場合、この別のリストリクタ通路によって、高圧がバルブ空間内により迅速に蓄積され、中間バルブ部材のより迅速な開放が達成される。これによって、噴射工程は、より迅速に終了する。
【0036】
好ましくは平板状の中間要素が、好ましくは、中間部分の案内部とは反対側に載置される。中間要素は、ステム部及び中間部分内の案内通路に対して偏心させた出口通路を有している。出口通路は、中間部分及び中間バルブ部材とともに、バルブ空間の境界を定め、また、中間要素の中間部分とは反対側で、アクチュエータ部のタペットによって閉鎖及び開放可能である。これによって、所望の容積を備えたバルブ空間を簡単な方法で形成することができる。さらに、中間要素の、アクチュエータ部に対面し、かつ、バルブ空間を低圧燃料リターンから分離するためにタペットが接触するする端面は、平坦な形状を有するものであってもよい。
【0037】
案内部は、好ましくは、案内スリーブによって構成される。案内スリーブは、円環状の断面を有しており、案内スリーブ上には、圧縮バネが支持される。この場合、圧縮バネは、案内スリーブを、好ましくは平板状の中間部分に対して、シールを形成するように押圧する。
【0038】
同様に、請求項16に記載された、内燃機関の燃焼室内への燃料の間欠噴射のための燃料噴射バルブは、ハウジング本体及び噴射バルブシートを備えるノズル本体を有するハウジングを有する。ハウジング内には高圧空間が存在する。高圧空間は、高圧燃料入口及び噴射バルブシートに連結される。ハウジング内に移動可能に配置された、好ましくは針状の噴射バルブ部材は、噴射バルブシートと相互作用する。圧縮バネは、一方では、噴射バルブ部材上に支持されて噴射バルブ部材に噴射バルブシートに向かう閉鎖力を印加し、他方では、ハウジングに対して固定されて支持される。ハウジング内には、中間部分も存在し、中間部分は、案内部及び制御プランジャーとともに、制御空間の境界を定める。ハウジング内には、制御空間内の圧力を変化させることによって、噴射バルブ部材の軸方向の移動を制御するために、制御空間を低圧燃料リターンへ連結し、かつ低圧燃料リターンから制御空間を分離するための電動のアクチュエータ部も存在する。中間部分は、半径方向の外側が少なくとも近似的に円筒形を有し、ハウジングの、内側が少なくとも近似的に円筒形をなす部分(以下、内部円筒部ともいう)内に配置される。中間部分は、中間部分とハウジングとの間に、高圧空間の自由な部分を残している。
【0039】
中間部分の外径は、ハウジングの内部円筒部の内のり幅に少なくとも近似的に対応する。中間部分には、高圧空間の、中間部分及びハウジングによって境界が定まる部分を構成する軸方向に連続的な凹部が形成される。
【0040】
したがって、ハウジングは、関連する部分において、高圧燃料入口から噴射バルブシートへと燃料を搬送するための凹部によって、弱められない。燃料を搬送するためのこの凹部は、中間部分のみに存在し、特に高圧負荷にはさらされない。
【0041】
案内要素は、好ましくは、案内スリーブによって構成される。案内スリーブは、円環形の断面を有している。案内スリーブ上には、圧縮バネが支持され、同時に、圧縮バネは、案内スリーブを、シールを形成するように、好ましくは平板状の中間部分に対して押圧する。
【0042】
制御装置は、好ましくは、中間バルブを有している。その中間バルブ部材は、その開放位置において。高圧供給部を制御空間へと開放し、その閉鎖位置において、高圧供給部を遮断し、制御空間をバルブ空間から連続的に分離する。制御空間とバルブ空間は、リストリクタ通路を介して互いに連続的に連結される。リストリクタ通路は、好ましくは、中間バルブ部材に形成される。この実施形態において、電動のアクチュエータ部は、その開放位置において、バルブ空間を低圧燃料リターンに連結し、その閉鎖位置において、バルブ空間を低圧燃料リターンから分離するように構成される。
【0043】
さらに、この燃料噴射バルブは、好ましくは、請求項1から15に定義されるように設計される。
【0044】
中間部分の凹部の断面は、好ましくは、扇形である、この凹部は、特に簡単に形成することができる。
【0045】
少なくとも近似的に円筒形の、好ましくは平板状の、中間要素が、ハウジングの内部円筒部内に配置され、好ましくは、中間部分の案内部とは反対側に載置される。中間要素の外径は、ハウジングの内部円筒部の内のり幅に少なくとも近似的に対応する。中間要素には、中間部分の凹部と揃えられた軸方向に連続的な凹部が、同様に形成される。この凹部は、中間部分及びハウジングによって境界が定められた高圧空間に連続し、好ましくは、同一の断面を有する。このため、この凹部は、好ましくは、扇形の断面を有するものである。
【0046】
本発明は、図示された実施形態によって更に詳細に説明される。図面は、純粋に模式的なものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、本発明に従う噴射バルブを示す長手断面図である。
図2図2は、図1の噴射バルブの符号“II”が付された四角形によって示される部分を、図1よりも拡大して示す図である。
図3図3は、図2の噴射バルブの符号“III”が付された四角形によって示される部分を、制御装置とともに、図2よりも拡大して示す図である。
図4図4は、図1の燃料噴射バルブの符号“II”が付された四角形によって示される部分を、図1の断面に対して直角に広がる平面における長手断面図として、図1よりも拡大して示す図である。
図5図5は、キノコ形の中間バルブ部材を示す透視図である。
図6図6は、図5に示すキノコ形の中間バルブ部材のための中間部分を示す透視図である。
図7図7は、中間部分上にシールを形成して載置されるように構成された中間要素を示す透視図である。
図8図8は、制御装置の第2の実施形態を、図3と同様の方法で示す図である。
図9図9は、制御装置の第3の実施形態を、図3及び図8と同様の方法で示す図である。
図10図10は、制御装置の第4の実施形態を、図3図8、及び図9と同様の方法で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図の説明において、対応する部分にはいずれの場合にも同じ参照符号が使用される。
【0049】
図1に示す燃料噴射バルブ10は、内燃機関の燃焼室内へ燃料を間欠噴射するためのものである。ここで、燃料には、例えば最大で200MPa(2000bar)またはそれを超える、非常に高い圧力がかけられている。
【0050】
燃料噴射バルブは、ハウジング本体14、ノズル本体16、及びアクチュエータ受入本体20を備えるハウジング12を有している。ノズル本体16には、噴射バルブシート18が形成される。アクチュエータ受入本体20は、ハウジング本体14とノズル本体16との間に配置される。ノズル本体16上に支持されるユニオンナット22は、アクチュエータ受入本体20を受け入れ、ハウジング本体14上にねじ込まれる。ハウジング本体14とアクチュエータ受入本体20の端面、及びアクチュエータ受入本体20とノズル本体16の端面は、互いに接触する。これらの本体は、ユニオンナット22によってシールを形成するように互いに押圧され、ハウジング軸Lの方向に沿って互いに揃えられる。
【0051】
ハウジング12の外形は、周知のように少なくとも近似的に円筒形である。ハウジング本体14のノズル本体16とは反対側の端面上には、高圧燃料入口24が配置されている。高圧燃料入口24から噴射バルブシート18まで、ハウジング12の内部に高圧空間26が延びている。高圧燃料入口24は、バルブ支持体によって構成され、バルブ支持体は、チェックバルブ0及び燃料内の異物を保持するためのバスケット状の穴開きフィルター32を支持する。チェックバルブ30のディスク状のバルブ部材は、バルブ支持体28に設けられたバルブシートと相互作用し、また、バイパス穴を有している。
【0052】
周知のように、チェックバルブ30は、供給ラインを介して供給された燃料を、事実上妨げることなくなく高圧空間26に流入させ、かつ、バイパスを除いて、燃料の高圧空間26から高圧供給ラインへの流出を防止することを可能とするものである。
【0053】
バルブ支持体28、チェックバルブ30、及び穴開きフィルター32含むカートリッジとして設計されたモジュールユニットの構築及び動作は、先願である国際出願番号PCT/EP2014/000447に詳細に開示されている。高圧燃料入口24、並びに、チェックバルブ30及び穴開きフィルター32を備えたバルブ支持体28も、国際公開第2013/117411に開示されるように設計することができる。高圧燃料入口24、チェックバルブ30、及び穴開きフィルター32の代わりのフィルターカートリッジの1つの可能な実施形態は、国際公開第2009/033304号から公知である。上述した特許出願及び出願公開の開示は、参照により本開示に援用される。
【0054】
高圧空間26は、バルブ支持体28に隣接して、別個の貯蔵室34を有している。貯蔵室34は、ハウジング14本体に形成されるが、高圧空間26の流路36によって噴射バルブシート18に連結される。
【0055】
別個の貯蔵室34の寸法及び動作は、チェックバルブ30及びバイパスと共に、国際公開第2007/009279号に詳細に開示されている。この開示も、参照により本開示に援用される。
【0056】
アクチュエータ受入本体20の凹部に、電動のアクチュエータ部38が周知の方法で収容されている。アクチュエータ部38は、そのタペット40によって、バルブ空間44を低圧燃料リターン46(図2及び図3参照)から分離するために低圧出口42を閉鎖し、また、バルブ空間44と低圧燃料リターン46を互いに連結するために低圧出口42を開放するように構成される。タペット40は、一方向にはバネ付勢されており、他の方向には、アクチュエータ部38の電磁石によって移動可能である。タペット40の(したがって、アクチュエータ部38の)長手軸48は、長手軸Lから偏心するとともに、長手軸Lと平行である。
【0057】
通路52には、アクチュエータ部38を制御するための電気制御線が収納される。通路52は、電極端子50からハウジング本体14を通ってアクチュエータ部38まで延びる。この通路は、ハウジング12の(したがって、燃料噴射バルブ10の)長手軸Lに対して偏心させて配置された別個の貯蔵室34に平行に延びている。
【0058】
図1を拡大した図2から明らかなように、ノズル本体16上に円錐形の噴射バルブシート18が形成されている。この噴射バルブシートは、流路36によって貯蔵室34に(したがって、高圧燃料入口24に)直接連結されている。
【0059】
噴射バルブシート18の、燃料の流動方向で見たときの下流には、周知の方法で、ノズル本体16の半球状の自由端領域に噴射口54が形成されている。噴射バルブ部材56が噴射バルブシート18から上昇したとき、この噴射口を通じて、高圧が印加された燃料が燃焼機関の燃焼室内へ噴射される。
【0060】
噴射バルブ部材56は、針状に形成されており、噴射バルブシート18と相互作用する。噴射バルブ部材56は、ノズル本体の案内穴57内を長手軸Lの方向に移動可能なように案内される。この案内穴は、長手軸Lと同心であり、高圧空間26に含まれる。噴射バルブ部材56の凹部によって、燃料の噴射バルブシート18及び噴射口54への低損失流が可能となる。この凹部は、長手方向に延び、半径方向外方に開いている。
【0061】
特に図2から分かるように、ノズル本体16の、高圧空間26に含まれる内部空間58は、案内穴57の上流において、アクチュエータ受入本体20に向かって2倍に広がるように構成されている。内部空間58のこの部分は、アクチュエータ受入本体20に対面する端部まで、ほぼノズル本体16の長手中心に沿って延び、これによって、ノズル本体16の(したがって、ハウジング12の)、一定の断面を備える内部円筒部60が形成される。
【0062】
噴射バルブ部材56上の、内部円筒部60と案内穴58との間には、支持リングが形成され、この支持リング上に、圧縮バネ62の一端が支持される。圧縮バネ62の他端は、案内部64を構成する案内スリーブ64’の端部に支持される。圧縮バネ62は、噴射バルブ部材56に対して、噴射バルブシート18の方向に作用する閉鎖力を印加する。一方、圧縮バネ62は、案内部64または案内スリーブ64’の圧縮バネ62とは反対側の端部を、それがディスク状構造の中間部分66に対してシールを形成して接触するように保持する。
【0063】
噴射バルブ部材56上に形成された制御プランジャー68は、案内スリーブ64’内を長手軸Lの方向に、約3μmから5μmの精細な滑り嵌めで移動可能なように案内される。制御プランジャー68、案内スリーブ64’、及び中間部分66は、高圧空間26に対する制御空間70の範囲を定めるものである。
【0064】
中間部分66は、制御装置72の一部であり、制御装置72も、図3を参照して説明される。
【0065】
特に図3に示すように、円筒形案内通路74は、制御空間70に対面する平坦な端面から制御空間70とは反対側の同様に平坦な端面まで、中間部分66を通じて延びている。キノコ形の中間バルブ部材78のステム部76は、約3μmから10μmの精細な滑り嵌めで、円筒形案内通路内を案内される。中間バルブ部材78のヘッド部80は、ステム部76と一体であり、制御空間70に配置され、中間部分66に対面する側によって案内部64と相互作用する。ヘッド部の平坦な端面は、環状の中間バルブシート82を構成する。
【0066】
中間バルブ部材78は、中間部分66上に形成された中間バルブシート82とともに、中間バルブを構成する。
【0067】
案内スリーブ64’上には、中間バルブ部材78の開放ストロークを制限する係止肩部84が、中間部分66から距離をおいて形成されている。燃料供給部86から制御空間70内への可能限り損失の少ない燃料の流れを可能とするために、外側のヘッド部80と案内スリーブ64’との間には半径方向に十分に大きな間隙が存在する。また、ヘッド部80は、係止肩部84に対面する側に4つのくさび状の流路溝88を有しており(図5も参照されたい)、これによって、中間バルブ部材78が開放位置にあり、ヘッド部80が係止肩部84に載置されているときでも、燃料が、上記間隙から制御プランジャー68に、殆ど損失が生じることなく流れることが可能となる。
【0068】
中間バルブ部材78状には、リストリクタ通路90が形成される。リストリクタ通路は、制御空間0に隣接し、他方の端部において、中間バルブ部材78に長手軸Lと同心に形成された止まり穴へと開口する。
【0069】
図1から図3に例示した実施形態において、燃料供給部86は、直径方向に対向する2つの穴部から構成され、これらの穴部は、中間部分66を半径方向に通過して案内通路74へと開口する。中間部分66は、図6にも図示されている。燃料供給部86は、高圧燃料入口24と連続的に連結されており、リストリクタ通路90と比較して何倍も大きな流路断面を有する。
【0070】
中間部分66は、制御空間70とは反対側の端部上に、窪み部94を有している。この窪み部は、平面視U字状であり、一方において、案内通路74へと開口し、他方において、中間部分66に形成された別のリストリクタ通路96を介して高圧空間26に(したがって、高圧燃料入口24)に連続的に流体連結されている。
【0071】
中間部分66の案内スリーブ64’の反対側には、中間要素98が、平坦にかつシールを形成するように載置されている。中間要素98は、図7にも図示されるように、同様にディスク状に構成される。案内通路74の領域内において、中間要素98と中間バルブ部材78のステム部の端部との間には、中間バルブ部材が閉鎖位置にあっても、常に流路間隙100が存在する。
【0072】
中間要素98を通じて長手軸48と同心に延びる出口穴部102が存在する。出口穴部は、段階的な先細り形状を有しており、一方において、流路間隙100及び窪み部94へと開口し、他方において、低圧出口42を構成する。
【0073】
ここで、説明の完全を期すため、この出口穴部102の流路断面積は、リストリクタ通路90の断面と別のリストリクタ通路96の断面積との和よりも、全ての地点において非常に大きいことに言及しておく。
【0074】
中間要素98は、同様にノズル本体16の内部円筒部60内に配置され、中間部分66とは反対側の平坦な端面によって、アクチュエータ受入本体20の対応する端面上にシールを形成するように載置される。
【0075】
中間要素98をアクチュエータ受入本体20に対して(したがって、アクチュエータ部3に対して)適正に配置するために、中間要素98とアクチュエータ受入本体20の両方は、互いに揃えられ、互いに対向する止まり穴の形の位置合わせ穴106を有している。位置合わせ穴106には、共通の位置合わせピン104が挿入される。
【0076】
中間部分66の中間要素98に対する位置を修正するために、2つの互いに対向する止まり穴の形の別の位置合わせ穴106’が、互いに一対に揃えられて、これらの構成要素のそれぞれに形成される。これらの位置合わせ穴にも、位置合わせピン104が挿入される。これらの位置合わせ穴106’は、図3に示す断面に対して直交する方向に広がる共通の平面内で、長手軸Lに対して偏心させて配置される。このため、位置合わせピン104は、この図において破線で示されている。
【0077】
図4には、上記共通の平面内における長手方向の断面図が示されている。図4において、2つの位置合わせピン104は、実線で示されている。別の位置合わせピン104’が、ノズル本体16及びアクチュエータ受入本体20の対応する位置合わせ穴に挿入されており、これによって、これらの2つの本体の互いに対する位置が定められる。
【0078】
中間部分66は、中間バルブ部材78のステム部76及びヘッド部80とともに、近似的に中空円筒状の内環状空間108を定める。この内環状空間は、ステム部76の周りに延びており、この空間へと高圧供給部86が連続的に開口する。
【0079】
これまで説明したように、燃料噴射バルブ10は、制御装置72の全ての実施形態において、この程度までは同一に設計されている。ここで、中間バルブ83は、中間バルブ部材78の閉鎖位置において高圧供給部86及び内環状空間108を制御空間70から分離する機能と、ヘッド部80が、中間部分66上に形成された中間バルブシート82から上昇しているとき、内環状空間108及び高圧供給部86から制御空間70への連結を開放する機能とを担うものである。
【0080】
特に図3から図5から明白なように、中間バルブ部材78のステム部76は、全周にわたる環状溝110を有している。この環状溝は、半径方向外側に開いており、ヘッド部80に直接隣接している。長手軸Lの方向に沿って見たとき、環状溝110は、中間バルブ部材78が開放位置にあり、係止肩部84上に載置されているときでも、高圧供給部86の開口部が常に完全に環状溝110の領域内に配置されるような寸法を有している。
【0081】
図示された実施形態において、環状溝110は、台形の断面を有している。その斜辺は、ヘッド部80から離れており、中間バルブ部材78が開放位置にあるとき、高圧供給部86の2つの穴部を通じた燃料の流れを、殆ど損失を生じさせることなく偏向させるように機能する。
【0082】
ヘッド部80上には、ステム部76に(したがって、中間部分66に)対面する側に、円形のリング状のビードシール112が形成されている。ビードシールは、ヘッド部80のこの面の残りの領域に対して突出し、ビードシール112の自由端面114は、中間バルブ部材78のシール面116を形成する。ヘッド部80は、中間部分66に対面する側において、シール面116の反対側の半径方向内側及び半径方向外側に、アンダーカット部118を有する。図示された実施形態において、これらのアンダーカット部118の表面は、長手軸Lに対して直角に広がる平面内に位置する。勿論、シール面116も、長手軸Lに対して直角に広がる平面内に位置する。中間部分66の、中間バルブシート82を構成する平坦な端面も、同様に、長手軸Lに対して直角に広がる平面内に位置する。
【0083】
案内通路74は、中間部分66の全体を通じて同じ断面を備えた円筒の形で延びている。ビードシール112は、案内通路74に対して約0.2mmから1.0mmだけ半径方向外方にずれているため、中間バルブ部材78の閉鎖位置において、ヘッド部80と中間部分66との間に環状の間隙空間118が残される。この間隙空間は、ビードシール112によって半径方向外側において境界が定められ、半径方向内側に、内側環状空間108とともに、環状空間120を形成する。環状空間120は、中間バルブ部材78及び中間部分66によって、境界が定められる。
【0084】
図示された実施形態において、環状のシール面122の、半径方向に測定された幅は、0.1mmと1.0mmの間である。図示された実施形態において、さらに、環状の間隙空間118は、約0.5mmの半径方向に測定された幅を有している。
【0085】
図3及び図5から分かるように、ビードシール112は、半径方向のさらに外側に設けることも可能である。これによって、中間バルブ83の所望の噴射特性に対する適合性を最適化することができる。複動プランジャーとして構成された中間バルブ部材78の動作領域が拡大された場合、中間バルブ83は、この動作領域がより小さくなるように選択されている場合、噴射工程を終了させるためにより迅速に開放されるものである。
【0086】
さらに、中間部分66と中間バルブ部材78との間の付着力は、シール面116によって構成される環状シール面112と中間バルブシート82が最小化されるため、最小化される。
【0087】
別のリストリクタ通路96も、中間バルブ部材78の動作を促進するものであるが、この要素は、特定の要求に応じて省略することも可能である。
【0088】
噴射のために中間バルブ83が閉鎖されてタペット40が低圧出口42から上昇された場合、噴射バルブ部材56の開放動作は、ほぼリストリクタ通路90のみによって決定される。
【0089】
ここで、説明の完全を期すため、バルブ空間44は、止まり穴92、流路間隙100、窪み部94、及び出口穴部102によって構成されることに言及しておく。
【0090】
図8に示す実施形態では、図3では近似的に四角形状であるビードシール112の断面のみが、台形をなすものであり、半径方向内側が直角であり、半径方向外側が斜行側である。斜行側は、ヘッド部80の半径方向外側の縁部124までの延長部を有する。延長部は、この断面で見たとき、直線状である。
【0091】
この変形例は、ビードシール112が、ヘッド部80上の半径方向に遠い外側に位置しているときに、特に適している。この実施形態において、環状のシール面122の(したがって、ビードシール112の自由端面114の)幅は、0.1mmから1mmであり、好ましくは、0.2mmから0.5mmである。
【0092】
図9に示す実施形態では、中間バルブ部材78のステム部76は、ヘッド部80まで一定の直径を備えた円筒形を有している。勿論、高い応力を避けるために、ステム部76からヘッド部80への遷移部分は丸められている。中間部分66には、ヘッド部80に対向する端面から、円筒形の環状凹部126が形成され、環状凹部126は、反対側の端部である高圧供給部86の開口まで延びている。環状凹部126のこの端部は、丸められた形状を有している。
【0093】
この円筒形の環状凹部126に関連して、中間バルブシート82は、図3及び図8に示す実施形態に従って、半径方向外側にずれている。しかし、これに対して、図9に示す実施形態において、円形リングの形のビードシール112は、中間部分66上に形成される。このビードシールは、近似的に四角形の断面形状を有し、ヘッド部80に対面する自由端面114’は、環状の中間バルブシート82を構成する。
【0094】
図9に示すように、ビードシール112は、中間部分66上のアンダーカット部によって形成されるものであってもよい。アンダーカット部は、ビートシールに対して半径方向内側及び半径方向外側に位置する。
【0095】
ヘッド部80の中間部分66に対面する側は、平坦な環状の面として形成されるものであってもよい。その環状部分は、シール面116を構成し、シール面は、中間バルブシート82と相互作用する。
【0096】
環状空間120の環状の間隙空間118は、内側環状空間108も有しており、半径方向内側に位置するアンダーカット部によって構成される。
【0097】
図10に示す実施形態において、ヘッド部80には、中間部分66に対面するのではなく、平坦な側に対して半径方向内側にアンダーカット部128が形成されている。
【0098】
図3及び図8に示す実施形態と同様に、案内通路74は、中間部分66を通じて一定の断面を備えて延びている。案内通路のヘッド部80に対面する端面は、別のアンダーカット部130を有している。このアンダーカット部は、アンダーカット部128に対して半径方向外側に位置する。したがって、環状のシール面120は、半径方向内側においてアンダーカット部128によって境界が定められ、半径方向外側において別のアンダーカット部130によって境界が定められる。半径方向に見たとき、2つのアンダーカット部128、130の間の距離は、0.lmmと1mmの間であり、好ましくは、0.2mmと0.5mmの間である。
【0099】
この実施形態でも、環状空間120が環状の間隙空間118によって形成され、内側環状空間108が、ステム部76上の環状溝110によって形成される。これについては、図3も参照されたい。
【0100】
この実施形態でも、ステム76をその全長にわたって円筒形に形成し、中間部分66上に環状凹部126を設けることは可能である。
【0101】
特に図2から図4並びに図8及び図9から明らかなように、中間部分66及び中間要素98は、内部円筒部60内に配置され、図示された実施形態において、内部円筒部は、ノズル本体16に形成される。図6及び図7もから明らかなように、これらは、平面視ディスク状に形成され、扇形の凹部132を除いて、半径方向外側の円形リングの形に形成される。円筒形の部分の外径は、実質的に内部円筒部60の内のり幅に対応する。
【0102】
組立状態において、中間部分66及び中間要素98は、内部円筒部60に挿入される。中間部分66の凹部132及び中間要素98は、互いに揃えられて、中間部分66の平坦な側と扇形の凹部132によって形成される中間要素98は、内部円筒部60内のハウジング12の内壁とともに、高圧空間26及び流路36の境界を定める。この部分によって、殆ど損失を生じさせることなく、高圧燃料入口24から噴射バルブシート18に燃料が流れることが可能となる。ハウジング12の関連する部分は必ずしも弱められず、その壁は、至る所で同じ厚さを有するものであってもよい。
【0103】
図6において、案内穴74、案内穴に対して半径方向に延びる高圧供給部86の2つの穴部86、別のリストリクタ通路96を備えた窪み部94、及び、2つの位置合わせ穴106’は、中間部分66上に示されている。中間部分66は、扇形の凹部132とは直径方向に対向する側に、軸方向に連続する溝形の流入凹部134を有する。この流入凹部は、半径方向外側に開いており、関連する高圧供給部86の穴部がこの流入凹部へと開口する。この流入凹部134によって、燃料がこの穴部を通じて案内通路74へ(したがって環状空間120へ)流れることが可能となる。
【0104】
図7には、低圧出口42に加えて、位置合わせ穴106及び扇形の凹部132も示されている。
【0105】
図示された中間バルブ83の閉鎖位置から開始すると、噴射のために、タペット40は、アクチュエータ部38の電磁石によって中間要素98から上昇し、それによって、低圧出口42が開放される。これは、単位時間当たりにリストリクタ通路90及び存在し得る任意の別のリストリクタ通路96を通じてバルブ空間に続いて流入し得る量よりも大量の燃料流が、バルブ空間44から低圧燃料リターン46に流出するという作用を有する。その結果、一方では、バルブ空間44の圧力が低下し、中間バルブ83が確実に閉鎖を維持するために、中間バルブ部材78が大きな力で中間部分66に対して押圧され、他方では、制御空間70の圧力が低下する。これは、噴射バルブ部材56が、複動制御プランジャー68の動作によって、圧縮バネ62の力に対抗して噴射バルブシート18から上昇し、それによって、燃焼機関の燃焼室への燃料の噴射が開示されるという作用を有する。
【0106】
この噴射が終了する場合、タペット40を中間要素98と接触させ、それによって、低圧出口42を閉鎖する。燃料がリストリクタ通路及び任意の存在し得る別のリストリクタ通路96通じて流れるため、バルブ空間44の圧力は上昇する。これによって、中間バルブ部材78は、中間バルブシート82から離れるように移動する。この移動は、さらに、本発明に従って実現される中間バルブ部材78の複動プランジャー作用によって補助される。中間バルブ部材78のこの開放動作に対抗する付着力は、最小化される。
【0107】
中間バルブ部材78のヘッド部80を中間要素98から上昇させると、環状空間120から制御空間70への大きな流路断面が迅速に開放される。これによって、噴射バルブ部材56が噴射バルブシート18に向かって迅速に移動し、噴射バルブシート上への載置に至るため、噴射工程の迅速な終了が達成される。
【0108】
上述した全ての実施形態において、中間部分66及び中間要素98は、それぞれに一体のものとして構成されている。中間部分66と中間要素98とを、単一の加工物として形成することも可能である。
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