【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高圧供給部が完全に閉鎖されており、したがって、ヘッド部のシール面と中間バルブシートの間の接触が存在するとき、高い付着力が作用する場合があることが見出された。これによって、噴射工程を終了するために中間バルブを再び開放することが困難になる。特に、噴射工程の終了の正確なタイミングが損なわれる。
【0005】
この付着力の問題は、国際公開第2010/988781号において、既に議論されている。この問題を解決するため、中間バルブの閉鎖位置において、高圧供給部と中間部分のステム部の滑り嵌めとの間の制限された流体連結が提案されている。このため、ヘッド部のシール面及び中間バルブシートのシール面は、次のように、互いに傾斜するように形成される。すなわち、中間バルブの閉鎖位置において、これらは、半径方向外側で、シールを形成するように互いに載置される、半径方向内側では、高圧供給部をバルブ空間の方向に制限するために、軸方向に広がるリストリクタ間隙が形成される。したがって、目的は、中間バルブのバルブ部材とバルブシートとの間の環状線形のシールである。この解決方法のための、キノコ形の中間バルブ部材及びそれと相互作用する中間部分の極めて精密な製造は、極めて繊細かつ非常に高価である。
【0006】
さらに、この文献には、中間部分及び中間部分の案内部とは反対側に載置される中間要素が円形のディスク上である燃料噴射バルブの実施形態が開示されている。これらの中間部分及び中間要素は、ハウジングの内側が殆ど完全に円筒形の部分内に配置される。これらの構成要素、これらの構成要素とハウジングとの間に、高圧空間の自由な部分を残している。一方では、この部分は、噴射バルブシートに連結され、他方では、この部分は、高圧供給入口に連結される。高圧供給部への連結は、例えば、半径方向外側に延び、長手軸に対して、そうでない場合にはハウジングの円筒部に対して、斜行する凹部を形成することによって実現される。このような凹部は、この領域におけるハウジング、例えばノズル本体、の安定性を弱めるものであり、対応してハウジングの壁を厚くする必要がある。
【0007】
米国特許出願公開第2011/0233309号には、圧力制御バルブによって流出ポートとリターン路との間の連結が確立しているときに、流入ポートと圧力制御室との間の連結を遮断するために、圧力要素の圧力面で開いた壁面を押圧する燃料噴射装置が開示されている。圧力要素の圧力面は、流出ポートとリターン路との連結が圧力制御バルブによって遮断されているとき、開いた壁面内の流入ポートを圧力制御室に開放するために、開いた壁面に配置されるかまたは分離される。圧力要素の圧力面または制御ハウジングの開いた壁面には、互いに分離された窪んだ流入部及び窪んだ流出部が設けられる。窪んだ流入部の窪み寸法は、窪んだ流出部の窪み寸法よりも大きい。
【0008】
本発明は、この先行技術から開始して、既知の燃料噴射バルブを、製造において有利でありながら、中間バルブ部材と中間部分との間の付着力が最小化されるように発展させることを目的とする。
【0009】
本発明のさらなる目的は、燃料噴射バルブを、細形の構成が可能となるように発展させることである。これは、請求項1に記載の噴射バルブ及び請求項16に記載の噴射バルブによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従う内燃機関の燃焼室内への燃料の間欠噴射のための燃料噴射バルブは、少なくとも1つのハウジング本体及び噴射バルブシートを備える1つのノズル本体を有するハウジングを有する。ハウジングは、半径方向外側において、好ましくは、全長にわたって少なくとも近似的に円筒形をなし、任意選択で、段状の外径を備える。
【0011】
ハウジング内には、ハウジングの高圧燃料入口から噴射バルブシートまで延びる高高圧空間が存在する。
【0012】
好ましくは針状の噴射バルブ部材は、ハウジングの高圧空間内を長手軸の方向に移動可能なように配置され、噴射バルブシートと相互作用する。噴射バルブ部材は、燃料を燃焼室内に噴射するために噴射バルブシートから上昇され、噴射を終了するために、噴射バルブシートと接触するように戻される。
【0013】
圧縮バネも存在する。圧縮バネは、その一端が、噴射バルブ部材上に支持されて噴射バルブ部材に噴射バルブシートに向かう閉鎖力を印加し、他端は、ハウジングに対して、好ましくは案内部上に、固定されて支持される。案内部は、好ましくは、案内スリーブとして構成される。
【0014】
案内部は、噴射バルブ部材の制御プランジャーが、好ましくは精密な、滑り嵌めによりその内部を案内されるものである。さらに、案内部は、ハウジングの高圧空間内に配置される。
【0015】
ハウジングの高圧空間内には、さらに、好ましくは平板状の中間部分が存在する。中間部分は、案内部及び制御プランジャーとともに、高圧空間に対して制御空間の境界を定め、制御空間を高圧空間から分離する。
【0016】
燃料噴射バルブ内には、さらに、制御空間内の圧力を変化させることによって噴射バルブ部材の軸方向の移動を制御するための制御装置を有している。該制御装置は、中間バルブ、及び、中間部分の案内通路内を、好ましくは精密な、滑り嵌めにより案内されるステム部及びヘッド部を有するキノコ形の中間バルブ部材を有する。ヘッド部は制御空間に対面し、そのシール面は、ステム部の周りに半径方向の距離をおいて延び、中間バルブ部材の閉鎖位置において、中間部分に形成された環状の中間バルブシートに載置され、それによって、環状のシール面を構成する。環状のシール面は、ステムの(したがって、中間バルブ部材の)軸に対して直角に広がる平面内に位置する。
【0017】
中間部分に形成され、高圧入口に連続的の連結される高圧供給部は、環状空間へと開口する。環状空間は、中間部分、ステム部、及びヘッド部によって境界が定められ、ステム部の周りに延びる少なくとも近似的に中空の円筒形の内
側環状空間を有する。
【0018】
中間バルブは、中間バルブ部材の閉鎖位置において、高圧供給部
及び環状空間を
制御空間から分離し、中間バルブ部材が閉鎖位置にないとき、環状空間及び高圧供給部から制御空間への連結を開放する。
【0019】
さらに、中間バルブは、精細なサイズのリストリクタ通路を除いて、ステム部によって制御空間をバルブ空間から連続的に分離する。ステム部は、中間部分を、好ましくは精密な、滑り嵌めにより案内される。リストリクタ通路は、好ましくは中間バルブ部材に形成され、制御空間をバルブ空間に連続的に連結する。
【0020】
燃料噴射バルブは、バルブ空間を低圧燃料リターンへ連結し、かつ低圧燃料リターンからバルブ空間を分離するための電動のアクチュエータ部を有する。
【0021】
環状空間は、さらに、内
側環状空間に直接隣接する円環状の間隙空間を有する。間隙空間は、中間バルブ部材の閉鎖位置において、中間部分と中間バルブ部材のヘッド部の間の間隙によって構成される。環状の間隙空間の、中間バルブ部材の長手方向に沿って測定された間隙幅は、内
側環状空間よりも小さく、好ましくは、大きくとも5分の1である。
【0022】
高圧供給部は、内
側環状空間へ
と開口するため、国際公開第2010/088781号の教示とは異なり、環状の間隙空間は、高圧供給部と中間部分の中間バルブ部材のステム部の滑り嵌めとの間の制限された流体連結を構成しない。
【0023】
しかし、環状の間隙空間によって、環状のシール面が大きく低減し、それによって、付着力が低減するとともに、環状シール面の半径方向における最適な配置が可能となる。燃料噴射バルブの要件に応じて、環状のシール面は、半径方向のさらに外側または内側に位置するように選択することができる。中間バルブ部材は、複動プランジャーとして動作するため、これは、噴射バルブ部材の制御プランジャーの動作面のサイズを、所定の空間条件に対して調整可能とするための簡単な方法である。
【0024】
環状の間隙空間は、中間バルブ部材の閉鎖位置において、ステム部の(したがって中間バルブ部材の)長手方向に沿って測定されたときに、少なくとも近似的に一定の間隙幅を有する。
【0025】
高圧供給部の開口は、好ましくは、完全に内
側環状空間の領域内に配置されている。これによって、高圧供給部を、半径方向に延びる穴部によって形成することが可能となる。さらに、これによって、開口が環状の間隙空間の領域内に部分的に配置される状況が回避され、これによって、環状のシール面を、ステム部からより短い距離に、すなわち半径方向におい
てより内側に、形成することが可能となる。
【0026】
環状のシール面は、半径方向に測定されたとき、好ましくは、0.1mmから1mmの幅を有する。この幅は、好ましくは、0.2mmから0.5mmである。環状のシール面が平坦な場合、これによって、一方では、良好なシールを形成することが可能となり、他方では、付着力を最小化することが可能となる。
【0027】
環状の間隙空間は、好ましくは、中間バルブ部材の閉鎖位置において長手方向に測定されたとき、好ましくは、0.04mmから0.4mmの間隙幅を有する。これは、一方では、空間節約型の環状の間隙空間であり、他方では、ステム部とシール面との間のヘッド部の表面が、過渡的な工程の間に最適な燃料の供給を提供するために十分に大きいものである。
【0028】
環状の間隙空間は、半径方向に測定されたとき、少なくとも0.2mmの幅を有する。これによって、一方では、ヘッド部のシール面を簡単に形成することが可能となり、他方では、中間バルブシートのシール面を簡単に形成することが可能となる。
【0029】
好ましくは、ヘッド部の中間部分に対面する側に、突出する円環状のビードシールが形成される。ビードシールの自由端面は、シール面を構成する。制御空間に対面する中間部分の端面は、好ましくは、平坦な形状を有している。これは、ヘッド部のシール面と相互作用する部分とともに、補助的なバルブシートを構成する。
【0030】
シール用フランジは、好ましくは、少なくとも近似的に正方形または四角形の断面を有する。ヘッド部の中間部分に対面する側は、好ましくは、半径方向外側でビードシールの周りに延びる円環状の表面を有し、この表面は、少なくとも近似的に、ステム部とビードシールとの間の環状の表面と同一の平面内に位置する。
【0031】
ビードシールは、好ましくは、少なくとも近似的に直角台形(2つの角が直角の台形)に対応する断面を有し、少なくとも近似的な直角は、半径方向内側に配置されている。台形の2つの互いに平行な辺の短い方は、中間バルブ部材のシール面内に位置し、斜辺は、半径方向外側に、中間部分から離れるように斜行する。ヘッド部は、好ましくは、断面で見たときに、半径方向外側の縁部まで、台形の半径方向外側の斜辺からなる直線状の延長部を有する。これによって、中間バルブ部材を簡単に形成することが可能となる。
【0032】
さらに好ましくは、ヘッド部の中間部分に対面する側に、半径方向内側のアンダーカット部が形成されるものであってもよい。また、中間部分には、半径方向外側のアンダーカット部が形成されるものであってもよい。これらのアンダーカット部は、中間バルブ部材のヘッド部が中間部分に載置されているとき、環状のシール面の境界を定めるものである。
【0033】
逆の構成、すなち、半径外側のアンダーカット部をヘッド部に形成し、半径方向内側のアンダーカット部を中間部分に形成した構成も可能である。これらのアンダーカット部は、環状の表面の境界を定めるものである。
【0034】
中間部分のヘッド部に対面する側には、好ましくは、円環状のシール用突出部が形成される。シール用突出部の自由端面は、バルブシートを構成する。シール用突出部は、少なくとも近似的に正方形または四角形の断面を有する。この場合、ヘッド部上のシール面は、ステム部と円環上のシール面との間の表面と同一の平面内に位置するものであってもよい。
【0035】
バルブ空間は、好ましくは、別のリストリクタ通路を介して高圧空間に連続的に連結される。この別のリストリクタ通路は、例えば、高圧供給部から開始するように、中間部分に形成されるものであってもよい。バルブ空間が、アクチュエータ部によって低圧燃料リターンから分離された場合、この別のリストリクタ通路によって、高圧がバルブ空間内により迅速に蓄積され、中間バルブ部材のより迅速な開放が達成される。これによって、噴射工程は、より迅速に終了する。
【0036】
好ましくは平板状の中間要素が、好ましくは、中間部分の案内部とは反対側に載置される。中間要素は、ステム部及び中間部分内の案内通路に対して偏心させた出口通路を有している。出口通路は、中間部分及び中間バルブ部材とともに、バルブ空間の境界を定め、また、中間要素の中間部分とは反対側で、アクチュエータ部のタペットによって閉鎖及び開放可能である。これによって、所望の容積を備えたバルブ空間を簡単な方法で形成することができる。さらに、中間要素の、アクチュエータ部に対面し、かつ、バルブ空間を低圧燃料リターンから分離するためにタペットが接触するする端面は、平坦な形状を有するものであってもよい。
【0037】
案内部は、好ましくは、案内スリーブによって構成される。案内スリーブは、円環状の断面を有しており、案内スリーブ上には、圧縮バネが支持される。この場合、圧縮バネは、案内スリーブを、好ましくは平板状の中間部分に対して、シールを形成するように押圧する。
【0038】
同様に、請求項16に記載された、内燃機関の燃焼室内への燃料の間欠噴射のための燃料噴射バルブは、ハウジング本体及び噴射バルブシートを備えるノズル本体を有するハウジングを有する。ハウジング内には高圧空間が存在する。高圧空間は、高圧燃料入口及び噴射バルブシートに連結される。ハウジング内に移動可能に配置された、好ましくは針状の噴射バルブ部材は、噴射バルブシートと相互作用する。圧縮バネは、一方では、噴射バルブ部材上に支持されて噴射バルブ部材に噴射バルブシートに向かう閉鎖力を印加し、他方では、ハウジングに対して固定されて支持される。ハウジング内には、中間部分も存在し、中間部分は、案内部及び制御プランジャーとともに、制御空間の境界を定める。ハウジング内には、制御空間内の圧力を変化させることによって、噴射バルブ部材の軸方向の移動を制御するために、制御空間を低圧燃料リターンへ連結し、かつ低圧燃料リターンから制御空間を分離するための電動のアクチュエータ部も存在する。中間部分は、半径方向の外側が少なくとも近似的に円筒形を有し、ハウジングの、内側が少なくとも近似的に円筒形をなす部分(以下、内部円筒部ともいう)内に配置される。中間部分は、中間部分とハウジングとの間に、高圧空間の自由な部分を残している。
【0039】
中間部分の外径は、ハウジン
グの内部円筒部の内のり幅に少なくとも近似的に対応する。中間部分には、高圧空間の、中間部分及びハウジングによって境界が定まる部分を構成する軸方向に連続的な凹部が形成される。
【0040】
したがって、ハウジングは、関連する部分において、高圧燃料入口から噴射バルブシートへと燃料を搬送するための凹部によって、弱められない。燃料を搬送するためのこの凹部は、中間部分のみに存在し、特に高圧負荷にはさらされない。
【0041】
案内要素は、好ましくは、案内スリーブによって構成される。案内スリーブは、円環形の断面を有している。案内スリーブ上には、圧縮バネが支持され、同時に、圧縮バネは、案内スリーブを、シールを形成するように、好ましくは平板状の中間部分に対して押圧する。
【0042】
制御装置は、好ましくは、中間バルブを有している。その中間バルブ部材は、その開放位置において。高圧供給部を制御空間へと開放し、その閉鎖位置において、高圧供給部を遮断し、制御空間をバルブ空間から連続的に分離する。制御空間とバルブ空間は、リストリクタ通路を介して互いに連続的に連結される。リストリクタ通路は、好ましくは、中間バルブ部材に形成される。この実施形態において、電動のアクチュエータ部は、その開放位置において、バルブ空間を低圧燃料リターンに連結し、その閉鎖位置において、バルブ空間を低圧燃料リターンから分離するように構成される。
【0043】
さらに、この燃料噴射バルブは、好ましくは、請求項1から15に定義されるように設計される。
【0044】
中間部分の凹部の断面は、好ましくは、扇形である、この凹部は、特に簡単に形成することができる。
【0045】
少なくとも近似的に円筒形の、好ましくは平板状の、中間要素が、ハウジングの内部円筒部内に配置され、好ましくは、中間部分の案内部とは反対側に載置される。中間要素の外径は、ハウジングの内部円筒部の内のり幅に少なくとも近似的に対応する。中間要素には、中間部分の凹部と揃えられた軸方向に連続的な凹部が、同様に形成される。この凹部は、中間部分及びハウジングによって境界が定められた高圧空間に連続し、好ましくは、同一の断面を有する。このため、この凹部は、好ましくは、扇形の断面を有するものである。
【0046】
本発明は、図示された実施形態によって更に詳細に説明される。図面は、純粋に模式的なものである。