特許第6557735号(P6557735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6557735カーテンエアバッグ装置及び車両への取付け構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557735
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】カーテンエアバッグ装置及び車両への取付け構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/237 20060101AFI20190729BHJP
   B60R 21/213 20110101ALI20190729BHJP
   B60R 21/232 20110101ALI20190729BHJP
【FI】
   B60R21/237
   B60R21/213
   B60R21/232
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-561531(P2017-561531)
(86)(22)【出願日】2016年11月25日
(86)【国際出願番号】JP2016085057
(87)【国際公開番号】WO2017122435
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2018年5月28日
(31)【優先権主張番号】特願2016-6177(P2016-6177)
(32)【優先日】2016年1月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(74)【代理人】
【識別番号】100204021
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】岩田 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】石原 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】川田 晃洋
【審査官】 小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−246078(JP,A)
【文献】 特開2006−335135(JP,A)
【文献】 特開2009−126476(JP,A)
【文献】 特開2013−208978(JP,A)
【文献】 特開2006−103478(JP,A)
【文献】 特開2010−006101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフサイドレールに沿って車両の前後方向に取付けることで車両に格納可能で、緊急時、インフレータで発生させたガスにより、エアバッグがサイドウインドウに沿って車室内をカーテン状に展開するカーテンエアバッグ装置であって、
折り畳まれた前記エアバッグは、当該エアバッグの長手方向に延びる外周の少なくとも一部に巻き付けて覆うカバー布を備え、
前記カバー布は、折り畳まれた前記エアバッグの長手方向と直交する断面の外周の周方向における一方端部側を折り返した第1折り返し部を有し、
前記エアバッグは、折り畳まれた前記エアバッグの前記外周の端部を本体部分とは逆向きに折り返し、当該エアバッグの展開時に最初に展開を始める第2折り返し部を有し、
前記第2折り返し部が、前記カバー布の前記第1折り返し部と他方端部側で挟み込まれる一方、当該第1折り返し部が、前記エアバッグの前記第2折り返し部と前記エアバッグの本体部分に挟まれた構成であり、
前記挟み込まれているカバー布の第1折り返し部は、エアバッグには結合されておらず、前記エアバッグの展開により、前記エアバッグの外周に位置する前記第2折り返し部が展開して前記カバー布の第1折り返し部が解け、
当該カバー布の前記第1折り返し部の端部は、ガーニッシュを押し開く際に、当該ガーニッシュの下端から延長するように展開し、前記エアバッグの展開が進むと当該端部は下方に垂れ下がり、前記ガーニッシュの下端の出っ張りを無くすように変形しながらなめらかに当該下端を覆うように構成されたことを特徴とするカーテンエアバッグ装置。
【請求項2】
車両のルーフサイドレールに沿って車両の前後方向に取付けることで車両に格納可能で、緊急時、インフレータで発生させたガスにより、エアバッグがサイドウインドウに沿って車室内をカーテン状に展開するカーテンエアバッグ装置であって、
折り畳まれた前記エアバッグは、当該エアバッグの長手方向に延びる外周の少なくとも一部に巻き付けて覆うカバー布を備え、
前記カバー布は、折り畳まれた前記エアバッグの長手方向に直交する断面の外周の周方向における一方端部側を折り返した第1折り返し部を有し、
前記エアバッグは、折り畳まれた前記エアバッグの前記外周の端部を本体部分とは逆向きに折り返し、当該エアバッグの展開時に最初に展開を始める第2折り返し部を有し、
前記第1折り返し部は、折り畳まれた前記エアバッグの前記外周の端部から前記エアバッグの本体部分の当該折り畳みの間に挿入され、
前記カバー布の第1折り返し部は、エアバッグには結合されておらず、前記エアバッグの展開により、前記エアバッグの外周に位置する前記第2折り返し部が展開して前記カバー布が挿入されている前記第1折り返し部が解けるように構成したことを特徴とするカーテンエアバッグ装置。
【請求項3】
折り畳まれた前記エアバッグの形状は、ロール形状に巻かれることにより構成されていることを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項4】
ロール形状に巻かれた前記エアバッグは、当該エアバッグの外周側の一部を覆うように、該ロール形状の外周の前記端部から当該ロール形状の巻き方向とは逆向きに折り返した第2折り返し部を有し、
前記カバー布の前記第1折り返し部を、前記ロール形状に巻いた前記エアバッグの本体部分と前記第2折り返し部の間に挿入したことを特徴とする請求の範囲第3項に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項5】
折り畳まれた前記エアバッグの形状は、蛇腹形状に折り畳まれることにより構成されていることを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項6】
蛇腹形状に折り畳まれた前記エアバッグは、当該蛇腹形状の一方の端部に、折り畳まれた前記エアバッグの外側の一部を覆うように折り返した第3折り返し部を有し、
前記カバー布の前記第1折り返し部を、前記蛇腹形状に折り畳んだ前記エアバッグの本体部分と前記第3折り返し部の間に挿入したことを特徴とする請求の範囲第5項に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項7】
前記カバー布は、前記エアバッグを形成する基布よりも厚みの厚い布地であることを特徴とする請求の範囲第1〜6項の何れかに記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項8】
前記カバー布は、前記エアバッグを形成する基布よりも硬い布地であることを特徴とする請求の範囲第1〜6項の何れかに記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項9】
請求の範囲第1〜8項の何れかに記載のカーテンエアバッグ装置の車両への取付け構造であって、
前記エアバッグを形成する基布に取付けたタブを用いて、車両のルーフサイドレール及びピラーに、車両の前後方向に延在するように取付ける際、
前記カバー布の取付け位置では、前記カバー布及び前記エアバッグの前記基布と一体に取付けたタブを使用して取付けることを特徴とするカーテンエアバッグ装置の車両への取付け構造。
【請求項10】
前記ピラーはフロントピラーであることを特徴とする請求の範囲第9項に記載のカーテンエアバッグ装置の車両への取付け構造。
【請求項11】
前記ピラーはリアピラーであることを特徴とする請求の範囲第9項に記載のカーテンエアバッグ装置の車両への取付け構造。
【請求項12】
前記ピラーはフロントピラー及びリアピラーであることを特徴とする請求の範囲第9項に記載のカーテンエアバッグ装置の車両への取付け構造。
【請求項13】
前記カバー布の少なくとも一部分が、前記ピラーのピラーガーニッシュにおける前記ルーフサイドレールのルーフガーニッシュ側の端部とオーバーラップするように設置することを特徴とする請求の範囲第9〜12項の何れかに記載のカーテンエアバッグ装置の車両への取付け構造。
【請求項14】
前記カバー布は、前記ピラーのピラーガーニッシュと前記ルーフサイドレールのルーフガーニッシュとの継ぎ目部に設置することを特徴とする請求の範囲第9〜12項の何れかに記載のカーテンエアバッグ装置の車両への取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突時又は横転時、サイドウインドウに沿ってエアバッグがカーテン状に展開し、乗員の頭部の保護と車外への放出を防止するカーテンエアバッグ装置、及び当該装置の車両への取付け構造に関するものである。特にエアバッグの展開時に、ピラーガーニッシュの端部が割れて飛び散ることを防止するものである。
【0002】
以下、本願において「上」「上方」とは自動車の天井側を、「下」「下方」とは自動車の床側を意味する。また、「前」「前方」とは自動車の前進方向側を、「後」「後方」とは自動車の後退方向側を意味する。
【背景技術】
【0003】
カーテンエアバッグ装置は、側面衝突時又は横転時のように自動車の側方に高荷重が作用した時に、インフレータを作動してガスを発生させ、車室内で、サイドウインドウに沿わせてエアバッグを鉛直下方にカーテン状に展開させるものである。
【0004】
このカーテンエアバッグ装置1は、図9に示すように、クリップ2及びブラケット3を用いて、例えばルーフサイドレールRSRからフロントピラーFPに亘って取付けられる。
【0005】
このような取付け状態のカーテンエアバッグ装置1は、車室内側のフロントピラーガーニッシュやルームヘッドライニング(ルーフガーニッシュ)に覆われ、これらガーニッシュに対して車室の外側に格納される。
【0006】
そして、側面衝突時又は横転時には、インフレータ4で発生したガスによって、例えばロール形状に巻かれたエアバッグ5が展開する。その結果、フロントピラーガーニッシュやルームヘッドライニングが車室内側に押され、車体のフロントピラーFPやルーフサイドレールRSRとの係合が外れる。
【0007】
係合が外れた後は、フロントピラーガーニッシュやルームヘッドライニングの前記係合が外れた先端側が車室内側に押し広げられ、この押し広げられてできた開口からエアバッグが車室内にカーテン状に展開する。
【0008】
ところで、例えばロール形状に巻かれたエアバッグは、展開方向を規制するカバー布で長手方向の所定位置を覆われる場合がある。この形態では、エアバッグの展開時、カバー布を固定するテープが破断してカバー布が解けることで、エアバッグが所定の方向に展開する。
【0009】
しかしながら、カバー布がエアバッグを覆う形態によっては、エアバッグの展開時、カバー布がうまく解けない場合がある。その場合、エアバッグの展開方向が変化してフロントピラーガーニッシュの内部に引っ掛かることがある。当該状態で展開が続いた場合、フロントピラーガーニッシュが破損するおそれがある(特許文献1の段落0008参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2014−65329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする問題点は、エアバッグが、ガーニッシュ特にフロントピラーガーニッシュ、リアピラーガーニッシュの内部に引っ掛かった状態で展開する場合は、当該ガーニッシュが破損するおそれがあるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、エアバッグの展開時、ガーニッシュ特にフロントピラーガーニッシュ、リアピラーガーニッシュの端部が割れて飛び散らないようにすることを目的とするものである。
【0013】
本発明は、車両のルーフサイドレールに沿って車両の前後方向に取付けることで車両に格納可能で、緊急時、インフレータで発生させたガスにより、エアバッグがサイドウインドウに沿って車室内をカーテン状に展開するカーテンエアバッグ装置である。
【0014】
そして、上記目的を達成するために、
本発明は、
折り畳まれた前記エアバッグは、当該エアバッグの長手方向に延びる外周の少なくとも一部に巻き付けて覆うカバー布を備え、
前記カバー布は、折り畳まれた前記エアバッグの長手方向と直交する断面の外周の周方向における一方端部側を折り返した第1折り返し部を有し、
前記エアバッグは、折り畳まれた前記エアバッグの前記外周の端部を本体部分とは逆向きに折り返し、当該エアバッグの展開時に最初に展開を始める第2折り返し部を有し、
前記第2折り返し部が、前記カバー布の前記第1折り返し部と他方端部側で挟み込まれる一方、当該第1折り返し部が、前記エアバッグの前記第2折り返し部と前記エアバッグの本体部分に挟まれた構成であり、
前記挟み込まれているカバー布の第1折り返し部は、エアバッグには結合されておらず、前記エアバッグの展開により、前記エアバッグの外周に位置する前記第2折り返し部が展開して前記カバー布の第1折り返し部が解け、
当該カバー布の前記第1折り返し部の端部は、ガーニッシュを押し開く際に、当該ガーニッシュの下端から延長するように展開し、前記エアバッグの展開が進むと当該端部は下方に垂れ下がり、前記ガーニッシュの下端の出っ張りを無くすように変形しながらなめらかに当該下端を覆うように構成されたことを最も主要な特徴としている。
【0015】
言い換えれば、
前記第1折り返し部を、折り畳まれた前記エアバッグの前記外周の端部から前記エアバッグの本体部分の当該折り畳みの間に挿入したことを最も主要な特徴としている。
【0016】
本発明においては、エアバッグの折り畳み形態は、ロール形状に巻かれたものでも、蛇腹形状に折り畳まれたものでもよい。
【0017】
ロール形状に巻かれたエアバッグの場合、当該エアバッグの外周側の一部を覆うように、ロール形状の外周の前記端部から当該ロール形状の巻き方向とは逆向きに折り返した第2折り返し部を設けることが望ましい。この場合、カバー布の第1折り返し部を、ロール形状に巻いたエアバッグの本体部分と第2折り返し部の間に挿入する。
【0018】
また、蛇腹形状に折り畳まれたエアバッグの場合、当該蛇腹形状の一方の端部に、折り畳まれたエアバッグの外側の一部を覆うように折り返した第3折り返し部を設けることが望ましい。この場合、カバー布の第1折り返し部を、蛇腹形状に折り畳んだエアバッグの本体部分と第3折り返し部の間に挿入する。
【0019】
また、本発明では、車両へのエアバッグ取付け状態を確実に保持し、エアバッグの展開時にガーニッシュを割れ等から保護する観点から、カバー布は、エアバッグを形成する基布よりも厚みの厚い布地、或いは、硬い布地であることが望ましい。
【0020】
カバー布を適度な硬さを有するものとすることで、エアバッグの展開時、クッション基布がガーニッシュの端に引っ掛かりにくくなって、エアバッグがスムーズに展開する。また、ガーニッシュ端部へのダメージも小さくなって、ガーニッシュ自身の割れも防止できる。
【0021】
布の硬さは、カンチレバー法による剛軟度の測定によって測定する(規格:ISO9073−7,ASTM D−5732,GB/T18318−2001,JIS L−1906,JIS L−1912,JIS L−1913,JIS L−1096,JIS L−1018)。
【0022】
剛軟度は、布を曲げたときの、硬さ、柔らかさを表す性質で、カンチレバー試験器によって測定可能である。カンチレバー試験器は、一般織物の場合45度、不織布の場合は41.5度の傾斜面を持ち、当該傾斜面の上縁に、試験器設置時に水平となる滑らかな平面を連続して設けた試験台である。
【0023】
この水平な平面に、試験片である布を、布の一端が傾斜面との境界に合致するように置き、布の上から平坦な金属板でその布を押さえて静かに傾斜面方向にすべらせ、試験片の先端中央が斜面に接したときの目盛り(長さ)を読み取る。
【0024】
剛軟度は、押し出された長さで表され、長さが長い方が、布が硬いことを示している。通常のエアバッグの布に比べて、例えば車両用のシートベルトに用いるウエビングは剛軟度が高く(測定値が長い)、硬くて好ましい態様である。一方、同じ材質・布地であれば、厚みが厚い布地の方が剛軟度は高く(測定値が長く)、硬くて好ましい態様である。
【0025】
上記本発明のカーテンエアバッグ装置の車両への取付けは、
前記エアバッグを形成する基布に取付けたタブを用いて、車両のルーフサイドレール及びピラーに、車両の前後方向に延在するように取付ける際、
前記カバー布の取付け位置では、前記カバー布及び前記エアバッグの前記基布と一体に取付けたタブを使用して取付ける。これが本発明のカーテンエアバッグ装置の車両への取付け構造である。
【0026】
本発明のカーテンエアバッグ装置の車両への取付け構造におけるピラーは、フロントピラー及び/又はリアピラーである。
【0027】
当該取付け構造では、前記カバー布の少なくとも一部分が、当該ピラーのピラーガーニッシュのルーフガーニッシュ側の端部とオーバーラップするように設置することが好ましい。或いは、前記カバー布は、前記ピラーガーニッシュとルーフガーニッシュとの継ぎ目部に設置することが好ましい。
【0028】
これらの構造により、エアバッグの展開時、ガーニッシュの端部に作用する直接的なダメージを小さくすることが可能となり、ガーニッシュの割れを防止することができる。
【0029】
本発明は、エアバッグの外周を覆うカバー布の、折り畳まれたエアバッグの長手方向と直交する断面の外周の周方向における一方端部に設けた第1折り返し部と他方端部側で、折り畳まれたエアバッグの外周の端部を挟み込んだだけである。言い換えれば、カバー布の第1折り返し部を、折り畳まれたエアバッグの外周の端部から当該折り畳みの間に挿入しただけである。
【0030】
従って、エアバッグの展開時には、確実にカバー布が解けて、エアバッグが所期の展開方向にスムーズに展開し、フロントピラーガーニッシュ、リアピラーガーニッシュの端部が割れて飛び散ることがない。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、カバー布の、折り畳まれたエアバッグの長手方向と直交する断面の外周の周方向における一方端部に設けた第1折り返し部と他方端部側で、折り畳まれたエアバッグの外周の端部を挟み込んだだけである。言い換えれば、カバー布の第1折り返し部を、折り畳まれたエアバッグの外周の端部から当該折り畳みの間に挿入しただけである。
【0032】
従って、エアバッグの展開時には、確実にカバー布が解けて、エアバッグの展開性能が悪化することがなく、カバー布の展開に伴って、カバー布がガーニッシュを押し出し、エアバッグの出口(開口)でガーニッシュの縁を覆う。これにより、カバー布は、ガーニッシュの縁でのバッグの引っ掛かりを防ぎ、エアバッグのスムーズな展開を助ける。よって、フロントピラーガーニッシュ、リアピラーガーニッシュの端部が割れて飛び散ることがなく、乗員の安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1の本発明のカーテンエアバッグ装置の要部を説明する図であり、(a)はカバー布の第1折り返し部の挿入長さが最大で、カバー布の折り返し位置とエアバッグの折り返し位置の間隔が最小の場合、(b)はカバー布の第1折り返し部の挿入長さが最小で、カバー布の折り返し位置とエアバッグの折り返し位置の間隔が最大の場合、(c)は(a)と(b)の中間の場合を示す。
図2】第1の本発明のカーテンエアバッグ装置の展開状態を、(a)(b)(c)(d)の順に説明する図である。
図3】第1の本発明のカーテンエアバッグ装置の要部の車両への取付け部を説明する図である。
図4】第1の本発明のカーテンエアバッグ装置の要部の車両への取付け態様を、(a)(b)(c)の順に説明する図である。
図5】第1の本発明のカーテンエアバッグ装置の要部の車両への取付け態様の他の例を説明する図である。
図6】第2の本発明のカーテンエアバッグ装置の要部を説明する図である。
図7】(a)は第3の本発明のカーテンエアバッグ装置の要部を説明する図、(b)は第4の本発明のカーテンエアバッグ装置の要部を説明する図である。
図8】カーテンエアバッグ装置の車両への取り付け状態の他の例を車両の側方から見た図である。
図9】カーテンエアバッグ装置の車両への取り付け状態を車両の側方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、エアバッグの展開時、ガーニッシュ、特にフロントピラーガーニッシュ、リアピラーガーニッシュの端部が割れて飛び散らないようにすることを目的とするものである。
【0035】
前記目的を、カバー布の一方端部に設けた第1折り返し部と他方端部側で、折り畳まれたエアバッグの外周の端部を挟み込むことで実現した。言い換えれば、カバー布の第1折り返し部を、折り畳まれたエアバッグの外周の端部から当該折り畳みの間に挿入してエアバッグの外周を覆うことで実現した。
【実施例】
【0036】
以下、第1の本発明のカーテンエアバッグ装置と当該本発明のカーテンエアバッグ装置の車両への取付け構造を、図1図5を用いて説明する。
【0037】
本発明のカーテンエアバッグ装置1は、インフレータ4(図9参照)から噴出するガスにより、サイドウインドウ6(図9参照)に沿ってカーテン状に展開するエアバッグ5を備えている。そして、エアバッグ5の展開により、着座した乗員の頭部を保護し、かつ、乗員が車外に放出されるのを防止する。
【0038】
前記エアバッグ5は、略上下方向に例えばロール形状に巻かれた長尺状態となされている。そして、ロール形状に巻かれた本体部分5aの外周側の端部に本体部分5aの巻き方向とは逆向きに折り返した第2折り返し部5bを設け、前記本体部分5aの外周側の一部を覆っている。
【0039】
7は前記ロール形状に巻かれた長尺状態のエアバッグ5のフロントピラーFP(図9参照)部分に配置するカバー布である。このカバー布7は、例えば自動車用のシートベルトに用いられるウエビング、もしくは、エアバッグ5を形成する基布5dよりも厚みの厚い布地で形成されている。
【0040】
前記カバー布7は、ロール形状に巻かれたエアバッグ5の本体部分5aの外周を周回することが可能な長さを有し(図3参照)、前記エアバッグ5の長手方向と直交する断面の外周の周方向における一方端部側を折り返した第1折り返し部7aとしている。そして、当該第1折り返し部7aを、エアバッグ5の第2折り返し部5bの折り返し位置5cから本体部分5aと第2折り返し部5bの間に挿入する。これにより、カバー布7の他方端部側7bと前記第1折り返し部7aとで前記折り返し位置5cを挟み込み、エアバッグ5の本体部分5aの外周に巻き付ける。その後は、テープ8で固定する(図4(a)(b)参照)。
【0041】
前記カバー布7の第1折り返し部7aの挿入長さL、及び、前記カバー布7の折り返し位置7cと前記エアバッグ5の折り返し位置5cの間隔dは、図1(a)〜(c)に示す範囲であれば、特に限定されない。
【0042】
すなわち、図1(a)はカバー布7の第1折り返し部7aの挿入長さLが最大で、カバー布7の折り返し位置7cとエアバッグ5の折り返し位置5cの間隔dが最小の場合を示している。
【0043】
また、図1(b)はカバー布7の第1折り返し部7aの挿入長さLが最小で、カバー布7の折り返し位置7cとエアバッグ5の折り返し位置5cの間隔dが最大の場合を示している。
【0044】
また、図1(c)はカバー布7の第1折り返し部7aの挿入長さL、カバー布7の折り返し位置7cとエアバッグ5の折り返し位置5cの間隔dが図1(a)と(b)の中間の場合を示している。
【0045】
また、前記カバー布7は、他方端部側7bをエアバッグ5の上端部に位置する基布5dに例えば縫製して取付けている。そして、この基布5dに取付けたカバー布7の例えば長手方向の中央部に、基布5d及びカバー布7と一体にタブ9を縫製している(図3参照)。なお、図3中の10は基布5dとカバー布7とタブ9を一体に縫製した縫製部、5aaはエアバッグ5のロール形状に巻かれた本体部分5aの上端縁を示す。
【0046】
上記カーテンエアバッグ装置1は、エアバッグ5の上端部に位置する基布5dに取付けたタブ9を用いて、前記インフレータ4と共に、例えば車室のフロントピラーFP及びルーフサイドレールRSRに、車両の前後方向に延在するように取付ける(図9参照)。その際、カバー布7の取付け位置では、前記タブ9に取付けたブラケット3を用いてフロントピラーFPに取付ける。
【0047】
このカーテンエアバッグ装置1の取付け構造では、カバー布7の少なくとも一部分が、フロントピラーガーニッシュFPGのルーフガーニッシュRG側の端部とオーバーラップするように設置している(図4(c)参照)。図4(c)に示した例ではカバー布7の全部がフロントピラーガーニッシュFPGのルーフガーニッシュRG側の端部とオーバーラップしている。
【0048】
カバー布7は、ガーニッシュに比べるとはるかに柔らかく変形しやすいので、フロントピラーガーニッシュFPGを押し開く際に、前記カバー布7がフロントピラーガーニッシュFPGの下端をなめらかに覆う。従って、カバー布7はフロントピラーガーニッシュFPGの下端から延長するように展開し、エアバッグ5のスムーズな展開を助ける。
【0049】
また、このカーテンエアバッグ装置1の取付け構造では、図5に示すように、フロントピラーガーニッシュFPGとルーフサイドレール側のルーフガーニッシュRGとの継ぎ目部Sを跨ぐようにカバー布7を設置してもよい。
【0050】
この継ぎ目部Sを跨ぐようにカバー布7を設けた場合、エアバッグ5の展開時に開き方が異なるフロントピラーガーニッシュFPGとルーフガーニッシュRGの継ぎ目の開口下端部をカバー布7がなめらかに覆うことになる。従って、前記開口下端位置において生じる段差が無くなって、エアバッグ5の引っ掛かりを防止することが可能となる。
【0051】
これらの取付け構造により、エアバッグ5の展開時、フロントピラーガーニッシュFPGのルーフガーニッシュRG側の端部に加えられる直接的なダメージを小さくすることができ、フロントピラーガーニッシュFPGの割れを防止できる。
【0052】
上記本発明では、側面衝突や横転によって車体側部に所定値以上の高荷重が作用した場合、センサからの信号を受け、インフレータ4から噴出したガスがダクトを通ってチャンバーに供給され、エアバッグ5がカーテン状に展開する。
【0053】
このエアバッグ5の展開時、図2(a)に示した格納状態から、図2(b)〜(d)に示す順に第2折り返し部5bが展開する。この第2折り返し部5bの展開により、エアバッグ5の本体部分5aと第2折り返し部5bの間に挿入したカバー布7の第1折り返し部7aが確実に解けることになる。
【0054】
図2(a)は、エアバッグ5がフロントピラーFP内に格納されている状態を示す。インフレータが作動してエアバッグ5が展開を始めると、エアバッグ5の車内側に配置されている第2折り返し部5bが展開を始め、フロントピラーガーニッシュFPGを車内側に押し始める(図2(b))。
【0055】
膨張展開が進むと、フロントピラーFPとフロントピラーガーニッシュFPGの間に形成される開口部Oが、押し広げられる。カバー布7の下端付近は、開口部Oが広がっても、まだフロントピラーガーニッシュFPGの下端部から更にフロントピラー方向に延びて開口部内に残っている(図2(c))。
【0056】
開口部Oが完全に開いて、エアバッグ5の本体部分5aがフロントピラーガーニッシュFPGから出てくる状態でも、カバー布7の下端付近は、フロントピラーガーニッシュFPGの下端部を覆っている(図2(d))。
【0057】
この後、エアバッグ5の展開が進むと、カバー布7の第1折り返し部7aの端部7aaが下方に垂れ下がり、フロントピラーガーニッシュFPGの下端部の出っ張りを無くすように変形する。従って、エアバッグ5がフロントピラーガーニッシュFPGの下端で引っ掛かることがなくなり、展開がスムーズに行われる。
【0058】
上記本発明では、エアバッグ5は所期の展開方向に展開し、フロントピラーガーニッシュFPGの端部が割れて飛び散ることがない。
【0059】
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇に含まれるものであれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0060】
すなわち、図1図5で説明した実施例は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定する主旨の記載がない限り、本発明は添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨のない限り、それに限定されるものではない。
【0061】
例えば、図1図5の実施例では、ロール形状に折り畳んだエアバッグ5を示している。しかしながら、図6に示したように、エアバッグ5を蛇腹形状に折り畳み、エアバッグ5の一方の端部を折り返した第3折り返し部5eで、前記エアバッグ5の外側の一部を覆うようにしたものでも良い。
【0062】
また、ロール形状に折り畳んだエアバッグ5の場合、図7(a)に示したような第2折り返し部5bを設けないものでも良い。また、蛇腹形状に折り畳んだエアバッグ5の場合、図7(b)に示したような第3折り返し部5eを設けないものでも良い。
【0063】
また、上記の実施例は、フロントピラーガーニッシュFPGの破損防止について説明した。しかしながら、図8に示すように、リアピラーRPにまでエアバッグ5が配置されている場合は、リアピラーガーニッシュについても同様の構成を採用することでエアバッグ5の展開時における破損を防止することができる。
【0064】
また、上記の実施例は、エアバッグ5を形成する基布5dよりも厚みの厚い布地もしくはウエビング等の硬い布地でカバー布7を形成したものについて説明した。しかしながら、カバー布7の素材は、エアバッグ5を形成する基布5dよりも硬くかつガーニッシュよりも柔軟な素材であれば、どのような素材を使用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 カーテンエアバッグ装置
4 インフレータ
5 エアバッグ
5a 本体部分
5b 第2折り返し部
5d 基布
5e 第3折り返し部
6 サイドウインドウ
7 カバー布
7a 第1折り返し部
7aa 端部
7b 他方端部側
9 タブ
FP フロントピラー
FPG フロントピラーガーニッシュ
RSR ルーフサイドレール
RG ルーフガーニッシュ
RP リアピラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9