【実施例】
【0030】
次に実施例及び参考例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0031】
参考例
ヒト大腸癌株(KM20C)の培養細胞(1×10
7cells/マウス)を生後5〜6週齢のBALB/cA Jcl−nuマウスの腹腔内に移植し、各群の平均体重が均等になるように各群にマウスを割り付け、群分け(n=10)を実施した日をDay 0とした。
FID・TPI配合剤(FTDとTPIのモル比1:0.5の混合物)は、FTDとして75、100、150、300及び450mg/kg/dayとなるように調製した。薬剤の投与はDay3から開始し、FTD・TPI配合剤は5日間連日経口投与・2日間休薬を6週間行った。
抗腫瘍効果の指標として、各群のマウスの生存数を確認し、各群の生存期間を比較した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に記載のように、マウスでは、FTD・TPI配合剤は、FTDとして150mg/kg/dayの群で生存期間が長かったことから、マウスにおけるFTD・TPI配合剤の推奨投与量(RD)はFTDとして150mg/kg/dayである。一方、ヒトにおけるFTD・TPI配合剤のRDはFTDとして70mg/m
2/dayであることから、マウスにおける150mg/kg/dayは、ヒトにおける70mg/m
2/dayに相当する。
【0034】
また、ベバシズマブでは、ヒト乳癌細胞株MX−1を移植したヌードマウスを用いて、7日毎に3週間、1.25、5、20mg/kgの用量を腹腔内投与することより、最適な投与量を検討したところ、5mg/kgが最も腫瘍増殖阻害率が高く、それ以上の用量では効果が頭打ちであったとの報告から(ベバシズマブ インタビューフォーム)、マウスにおけるベバシズマブのRDは5mg/kg/dayである。一方、ヒトにおけるベバシズマブのRDは10mg/kg/dayであることから、マウスにおける5mg/kg/dayは、ヒトにおける10mg/kg/dayに相当する。
【0035】
また、セツキシマブでは、ヒト腎細胞癌細胞株SK−RC−29を移植したヌードマウスを用いて、3日毎に5週間、0.5、1mg/doseの用量を静注することにより、最適な投与量を検討したところ、1mg/dose(マウスの体重を25gとすると40mg/kgに相当)が最も腫瘍増殖阻害率が高かったとの報告から(Clinical cancer research (1998)4、2957−2966)、マウスにおけるセツキシマブのRDは40mg/kg/dayである。一方、ヒトにおけるセツキシマブのRDは400mg/m
2/dayであることから、マウスにおける40mg/kg/dayは、ヒトにおける400mg/m
2/dayに相当する。
【0036】
また、パニツムマブでは、ヒト大腸癌細胞株HT29を移植したヌードマウスを用いて、週2回5週間、20、200、500、1000μg/doseの用量を静注することにより、最適な投与量を検討したところ、200μg/dose(マウスの体重を25gとすると8mg/kgに相当)以上の用量では効果が頭打ちであったとの報告から(パニツムマブ インタビューフォーム)、マウスにおけるパニツムマブのRDは8mg/kgである。一方、ヒトにおけるパニツムマブのRDは6mg/kg/dayであることから、したがって、マウスにおける8mg/kg/dayは、ヒトにおける6mg/kg/dayに相当する。
【0037】
実施例1
ヒト大腸癌株(KM20C)を生後5〜6週齢のBALB/cA Jcl−nuマウスの右側胸部に移植した。腫瘍移植後に腫瘍の長径(mm)および短径(mm)を測定し、腫瘍体積(tumor volume:TV)を算出後、各群の平均TVが均等になるように各群にマウスを割り付け、群分け(n=6〜7)を実施した日をDay 0とした。
薬剤の投与容量は10mL/kgであり,FTD・TPI配合剤(FTDとTPIのモル比1:0.5の混合物)は、FTDの投与量として150mg/kg/dayとなるように調製した。ベバシズマブ(アバスチン注射液、中外製薬株式会社)は0.20,0.55,1.7及び5mg/kg/dayとなるように調製した。FTD・TPI配合剤はDay 1−14に連日経口投与し、ベバシズマブはDay1から週2回の頻度で腹腔内に2週投与した。併用投与群は、単剤投与群と同じ投与量及び投与スケジュールでFTD・TPI配合剤とベバシズマブを投与した。
【0038】
抗腫瘍効果の指標として、各群のTVを算出し、下式によりDay 0に対する相対腫瘍体積(relative tumor volume:RTV)を求めてプロットし、無処置群(control)、FTD・TPI配合剤投与群、ベバシズマブ投与群及びFTD・TPI配合剤とベバシズマブ併用投与群のRTVの経日的推移を比較した。また、毒性として体重減少を評価した。結果を表2及び
図1〜
図4に示す。
TV(mm
3)=(長径×短径
2)/2
RTV=(評価日におけるTV)/(Day 0におけるTV)
【0039】
【表2】
【0040】
次に、ヒト乳癌株(MC−2)を用いて同様に試験を行った。ただし、FTD・TPI配合剤(FTDとTPIのモル比1:0.5の混合物)はFTDの投与量として25及び50mg/kg/dayになるよう、ベバシズマブは1.5mg/kg/dayとなるように調製した。結果を表3及び
図5〜
図6に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
表2〜表3及び
図1〜
図6に示す通り、FTD・TPI配合剤がFTDとして25〜150mg/kg/day(ヒトにおける11〜70mg/m
2/day相当)、ベバシズマブが0.20〜5mg/kg/day(ヒトにおける0.40〜10mg/kg/day相当)のとき、顕著な抗腫瘍効果の増強が見られ、ベバシズマブが0.55〜5mg/kg/day(ヒトにおける1.10〜10mg/kg/day相当)のとき、統計上有意に相乗的な抗腫瘍効果が得られた。
【0043】
また、いずれの投与群も許容できる程度の体重減少であり、併用投与による副作用の増大は確認されなかった。KM20Cを用いた試験において、FTD・TPI配合剤投与群では−4.9%の体重減少が確認されたところ、FTD・TPI配合剤と1.7〜5mg/kg/dayのベバシズマブ併用投与群では−2.6〜−3.7%と体重減少が軽減していた。MC−2を用いた試験でも同様の結果であった。通常、抗腫瘍剤の併用投与では抗腫瘍効果の増強に伴い副作用が増大するところ、本発明では抗腫瘍効果が増強しつつ、且つ副作用が軽減しており、非常に驚くべき結果である。
【0044】
また、FTD・TPI配合剤を併用することによる腫瘍増殖遅延効果を確認した(Clin Cancer Res.2000;6(2):701−8.;J Radiat Res.2007;48(3):187−95.;Invest New Drugs.2008;26(1):1−5.;J Radiat Res.2011;52(5):646−54.)。腫瘍体積がDay0の時から2倍に大きくなる(即ち、RTVが2になる)までの期間を
図5〜6の単剤投与群から併用投与群の結果を予測した。表4に単剤投与群の「RTVが2に実際に到達した日数」をまとめた。「RTVが2に実際に到達した日数」は、RTVが最初に2を超えた測定日とその直前の測定日のRTVが一次関数に従って推移していると仮定して、算出した。
【0045】
【表4】
【0046】
表5に併用投与群のRTVが2に到達するのに「期待される日数」とRTVが2に到達した「実際の日数」をまとめた。
【0047】
【表5】
【0048】
特にFTD・TPI配合剤が50mg/kg/day、ベバシズマブが1.5mg/kg/dayの併用投与群では、それぞれの単剤投与群におけるRTVが2に到達した「実際の日数」は7.33日間と7.71日間であった。よって、FTD/TPI配合剤とベバシズマブの作用効果が拮抗しないと仮定した場合、併用投与群ではその期間の合計である15.05日間が、RTVが2に到達するのに「期待される日数」である。しかし、驚くべきことに、RTVが2に到達した「実際の日数」は26.25日間であった。これらの結果は、FTD・TPI配合剤によるベバシズマブの抗腫瘍効果の増強作用が相乗的であることを示すものである。
【0049】
実施例2
ヒト大腸癌株(Co−3)を生後5〜6週齢のBALB/cA Jcl−nuマウスの右側胸部に移植した。腫瘍移植後に腫瘍の長径(mm)および短径(mm)を測定し、腫瘍体積(tumor volume:TV)を算出後、各群の平均TVが均等になるように各群にマウスを割り付け、群分け(n=3〜7)を実施した日をDay 0とした。
薬剤の投与容量は10mL/kgであり、FTD・TPI配合剤(FTDとTPIのモル比1:0.5の混合物)は、FTDの投与量として75、150mg/kg/dayとなるように調製した。セツキシマブ(アービタックス注射液、メルクセローノ株式会社)は1.5、4.4、40mg/kg/dayとなるように調製した。FTD・TPI配合剤はDay 1−14に連日経口投与し、セツキシマブはDay1から週2回の頻度で腹腔内に2週投与した。併用投与群は、単剤投与群と同じ投与量及び投与スケジュールでFTD・TPI配合剤とセツキシマブを投与した。
【0050】
抗腫瘍効果の指標として、各群のDay 5、8、12、15のTVを算出し、実施例1の式によりDay 0に対する相対腫瘍体積(relative tumor volume:RTV)を求めてプロットし、無処置群(control)、FTD・TPI配合剤投与群、セツキシマブ投与群及びFTD・TPI配合剤とセツキシマブ併用投与群のRTVの経日的推移を比較した。また、毒性として体重減少を評価した。結果を表6〜表7及び
図7〜
図10に示す。
【0051】
【表6】
【0052】
【表7】
【0053】
次に、ヒト大腸癌株(SW48)を用いて同様に試験を行った。ただし、セツキシマブは4.4、20、40mg/kg/dayとなるように調製した。結果を表8〜表9及び
図11〜
図13に示す。
【0054】
【表8】
【0055】
【表9】
【0056】
表6〜表9及び
図7〜
図13に示す通り、FTD・TPI配合剤がFTDとして75〜150mg/kg/day(ヒトにおける35〜70mg/m
2/day相当)、セツキシマブが1.5〜40mg/kg/day(ヒトにおける15〜400mg/m
2/day相当)のとき、顕著な抗腫瘍効果の増強が見られ、セツキシマブが4.4〜40mg/kg/day(ヒトにおける44〜400mg/m
2/day相当)のとき、統計上有意に相乗的な抗腫瘍効果が得られた。
【0057】
また、いずれの投与群も許容できる程度の体重減少であり、併用投与による副作用の増大は確認されなかった。Co−3を用いた試験において、150mg/kg/dayのFTD・TPI配合剤投与群では−13.2%(又は−18.6%)の体重減少が確認されたところ、150mg/kg/dayのFTD・TPI配合剤と1.5〜40mg/kg/dayのセツキシマブ併用投与群では−5.0%(又は−9.4〜−14.9%)と体重減少が軽減していた。SW48を用いた試験でも同様の結果であった。通常、抗腫瘍剤の併用投与では抗腫瘍効果の増強に伴い副作用が増大するところ、本発明では抗腫瘍効果が増強しつつ、且つ副作用が軽減しており、非常に驚くべき結果である。
【0058】
また、FTD・TPI配合剤を併用することによる腫瘍増殖遅延効果を確認した(Clin Cancer Res.2000;6(2):701−8.;J Radiat Res.2007;48(3):187−95.;Invest New Drugs.2008;26(1):1−5.;J Radiat Res.2011;52(5):646−54.)。腫瘍体積がDay0の時から2倍に大きくなる(即ち、RTVが2になる)までの期間を
図11と13の単剤投与群から併用投与群の結果を予測した。表10に単剤投与群の「RTVが2に実際に到達した日数」をまとめた。「RTVが2に実際に到達した日数」は、RTVが最初に2を超えた測定日とその直前の測定日のRTVが一次関数に従って推移していると仮定して、算出した。
【0059】
【表10】
【0060】
表11に併用投与群のRTVが2に到達するのに「期待される日数」とRTVが2に到達した「実際の日数」をまとめた。
【0061】
【表11】
【0062】
FTD・TPI配合剤が150mg/kg/day、セツキシマブが4.4mg/kg/dayの併用投与群では、それぞれの単剤投与群におけるRTVが2に到達した「実際の日数」は3.62日間と4.32日間であった。よって、FTD/TPI配合剤とベバシズマブの作用効果が拮抗しないと仮定した場合、併用投与群ではその期間の合計である7.94日間が、RTVが2に到達するのに「期待される日数」である。しかし、驚くべきことに、RTVが2に到達した「実際の日数」は13.66日間であった。また、同様に
図12からFTD・TPI配合剤が150mg/kg/day、セツキシマブが20mg/kg/dayの併用投与群におけるRTVが2に到達するのに「期待される日数」を求めると8.50日間であったところ、RTVが2に到達した「実際の日数」は20.70日間であった。これら結果は、FTD・TPI配合剤によるベバシズマブの抗腫瘍効果の増強作用が相乗的であることを示すものである。
【0063】
実施例3
ヒト大腸癌株(Co−3)を生後5〜6週齢のBALB/cA Jcl−nuマウスの右側胸部に移植した。腫瘍移植後に腫瘍の長径(mm)および短径(mm)を測定し、腫瘍体積(tumor volume:TV)を算出後、各群の平均TVが均等になるように各群にマウスを割り付け、群分け(n=6)を実施した日をDay 0とした。
薬剤の投与容量は10mL/kgであり、FTD・TPI配合剤(FTDとTPIのモル比1:0.5の混合物)は、FTDの投与量として150mg/kg/dayとなるように調製した。パニツムマブ(ベクティビックス(登録商標)注射液、アムジェン社)は0.30、0.89、2.7、8mg/kg/dayとなるように調製した。FTD・TPI配合剤はDay 1−14に連日経口投与し、パニツムマブはDay1から週2回の頻度で腹腔内に2週投与した。併用投与群は、単剤投与群と同じ投与量及び投与スケジュールでFTD・TPI配合剤とパニツムマブを投与した。
【0064】
抗腫瘍効果の指標として、各群のDay 5、8、12、15のTVを算出し、実施例1の式によりDay 0に対する相対腫瘍体積(relative tumor volume:RTV)を求めてプロットし、無処置群(control)、FTD・TPI配合剤投与群、パニツムマブ投与群及びFTD・TPI配合剤とパニツムマブ併用投与群のRTVの経日的推移を比較した。また、毒性として体重減少を評価した。結果を表12及び
図14〜
図17に示す。
【0065】
【表12】
【0066】
表12及び
図14〜
図17に示す通り、FTD・TPI配合剤がFTDとして150mg/kg/day(ヒトにおける70mg/m
2/day相当)、パニツムマブが0.3〜8mg/kg/day(ヒトにおける0.23〜6mg/kg/day相当)のとき、顕著な抗腫瘍効果の増強が見られ、パニツムマブが0.89〜8mg/kg/day(ヒトにおける0.67〜6mg/kg/day相当)のとき、統計上有意に相乗的な抗腫瘍効果が得られた。
【0067】
また、いずれの投与群も許容できる程度の体重減少であり、併用投与による副作用の増大は確認されなかった。FTD・TPI配合剤投与群では−16.2%の体重減少が確認されたところ、FTD・TPI配合剤と0.89〜8mg/kg/dayのパニツムマブ併用投与群では8.7〜10.6%と体重減少が軽減していた。通常、抗腫瘍剤の併用投与では抗腫瘍効果の増強に伴い副作用が増大するところ、本発明では抗腫瘍効果が増強しつつ、且つ副作用が軽減しており、非常に驚くべき結果である。
【0068】
以上から、FTD・TPI配合剤が、副作用の発症を抑えつつ、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブの抗腫瘍効果を顕著に増大することが明らかになった。