特許第6557763号(P6557763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6557763
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】空気分離装置
(51)【国際特許分類】
   F25J 3/04 20060101AFI20190729BHJP
   C01B 23/00 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   F25J3/04 104
   C01B23/00 G
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-150435(P2018-150435)
(22)【出願日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年1月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 献児
【審査官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−227462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 3/00−3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その塔頂部(113)の斜め上方に配置される第一凝縮器(121)を備える第一精留塔(11)と、
前記第一精留塔(11)よりも低圧の精留塔であって、前記第一精留塔(11)に隣接配置される第二精留塔(21)と、
前記第一精留塔(11)の塔頂部(113)の上方に配置される、少なくとも粗アルゴン精留塔の一部または粗アルゴン精留塔の全部と、を備え、
前記粗アルゴン精留塔の一部が前記塔頂部(113)の上方に配置される場合に、
前記粗アルゴン精留塔は、前記塔頂部(113)の上方に配置される下部精留塔(31)と、前記第二精留塔(21)および/または前記第一精留塔(11)に隣接配置され、第二凝縮器(324)をその塔頂部(323)内あるいはその上方に備える上部精留塔(32)とを有し、または、
前記粗アルゴン精留塔の全部が前記塔頂部(113)の上方に配置される場合に、前記粗アルゴン精留塔は、第二凝縮器(324)をその塔頂部(323)内あるいはその上方に備え、前記塔頂部(113)の上方にのみ配置される、空気分離装置。
【請求項2】
第一精留塔(11)と、
前記第一精留塔(11)よりも低圧の精留塔であって、前記第一精留塔(11)に隣接配置される第二精留塔(21)と、
前記第二精留塔(21)の下部あるいは底部(211)に配置される第一凝縮器(122)と、
前記第一精留塔(11)の塔頂部(113)の上方に配置される、少なくとも粗アルゴン精留塔の一部または粗アルゴン精留塔の全部と、を備え、
前記粗アルゴン精留塔の一部が前記塔頂部(113)の上方に配置される場合に、
前記粗アルゴン精留塔は、前記塔頂部(113)の上方に配置される下部精留塔(31)と、前記第二精留塔(21)および/または前記第一精留塔(11)に隣接配置され、第二凝縮器(324)をその塔頂部(323)内あるいはその上方に備える上部精留塔(32)とを有し、または、
前記粗アルゴン精留塔の全部が前記塔頂部(113)の上方に配置される場合に、前記粗アルゴン精留塔は、第二凝縮器(324)をその塔頂部(323)内あるいはその上方に備え、前記塔頂部(113)の上方にのみ配置される、空気分離装置。
【請求項3】
前記第一精留塔(11)は第一コールドボックス(10a)内に配置され、前記第一凝縮器(121、122)は第一サブコールドボックス(10b)内に配置される、請求項1または2に記載の空気分離装置。
【請求項4】
前記第一精留塔(11)および前記少なくとも粗アルゴン精留塔の一部または粗アルゴン精留塔の全部が、第一コールドボックス(10a)内に配置される、または、
前記第一精留塔(11)が、第一コールドボックス(10a)内に配置され、かつ前記少なくとも粗アルゴン精留塔の一部または粗アルゴン精留塔の全部が、前記第一コールドボックス(10a)とは別のコールドボックス内に配置される、請求項1または2に記載の空気分離装置。
【請求項5】
前記第一精留塔(11)、前記第二精留塔(21)、前記粗アルゴン精留塔の内一つまたは二つ以上に隣接配置される、純アルゴン精留塔を、さらに備える請求項1〜のいずれか1項に記載の空気分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気分離装置、特に設置面積及び高さを抑えることができる建造構成に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、酸素、窒素およびアルゴンなどの製品を製造する空気分離装置を開示する。空気分離装置は、これらの製品を効率的に製造するために、高圧精留塔、低圧精留塔、粗アルゴン精留塔など複数の精留塔から構成される。これらの精留塔は、建造の観点から様々な配置構成をとりうるが、設置面積および設置高さをそれぞれ小さくし建造の最適化を図ることが望まれる。
【0003】
特許文献2は、高圧精留塔の上部に粗アルゴン精留塔を設置することを開示する。しかしながら、この方法では高圧精留塔頂部に設置される凝縮器が粗アルゴン精留塔との中間部に設置する必要があるので、全体的な設置高さが非常に高くなる。
【0004】
特許文献3は、粗アルゴン精留塔を低圧精留塔の上方または側方に設置することを開示する。しかしながら、上方設置では高さが非常に高くなり、側方設置では設置面積が大きくなってしまう。また、低圧精留塔を分割する場合には、高圧容器のエンドプレートやディストリビュータの増加、複雑な設置が必要となり、設備コストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】仏国特許第2964451号公報
【特許文献2】国際特許公開第88/01037公報
【特許文献3】特許第6257656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実情に鑑みて、本発明は、従来の空気分離装置と比較して製品製造効率を低下させることなく、設置面積を大きくすることなく、かつ低圧精留塔を分割することなく、高圧精留塔の頂部に設置される凝縮器に係る高さ分を低くすることができる、空気分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の空気分離装置は、
その塔頂部(113)の上方から離された位置にある第一凝縮器(121、122)を備える第一精留塔(11)と、
前記第一精留塔(11)よりも低圧の精留塔であって、前記第一精留塔(11)に隣接配置される第二精留塔(21)と、
前記第一精留塔(11)の塔頂部(113)の上方に配置される、少なくとも粗アルゴン精留塔の一部(31)または粗アルゴン精留塔の全部(30)と、を備える。
【0008】
上記発明において、
前記粗アルゴン精留塔の一部が前記塔頂部(113)の上方に配置される場合に、
前記粗アルゴン精留塔は、前記塔頂部(113)の上方に配置される下部精留塔(31)と、前記第二精留塔(21)および/または前記第一精留塔(11)に隣接配置され、第二凝縮器(324)をその塔頂部(323)内あるいはその上方に備える上部精留塔(32)とを有してもよい。
上記発明において、
前記粗アルゴン精留塔の全部が前記塔頂部(113)の上方に配置される場合に、前記粗アルゴン精留塔は、第二凝縮器(324)をその塔頂部(323)内あるいはその上方に備え、前記塔頂部(113)の上方にのみ配置されてもよい。
【0009】
上記発明において、
前記第一凝縮器(121)は、前記塔頂部(113)の斜め上方に配置されてもよい。
【0010】
上記発明において、
前記第一凝縮器(122)は、前記第二精留塔(21)の下部あるいは底部(211)に配置されてもよい。
【0011】
上記発明において、
前記第一精留塔(11)は、前記第一凝縮器(121)を含みあるいは含まず、第一コールドボックス(10a)内に配置されてもよい。
【0012】
上記発明において、
前記第一精留塔(11)および前記少なくとも粗アルゴン精留塔の一部または粗アルゴン精留塔の全部が、第一コールドボックス(10)内に配置されてもよく、または、
前記第一精留塔(11)が、第一コールドボックス(10)内に配置され、かつ前記少なくとも粗アルゴン精留塔の一部または粗アルゴン精留塔の全部が、前記第一コールドボックス(10)とは別のコールドボックス内に配置されてもよい。
【0013】
上記発明において、
前記第一精留塔(11)、前記第二精留塔(21)、前記粗アルゴン精留塔の内一つまたは二つ以上に隣接配置される、純アルゴン精留塔を、さらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記発明によれば、従来の空気分離装置と比較して製品製造効率を低下させることなく、設置面積を大きくすることなく、かつ低圧精留塔を分割することなく、高圧精留塔の頂部に設置される凝縮器に係る高さ分を低くすることができる。この削減高さは、例えば5〜10mとなることがあり、高純度ガスを製造するような非常に高い精留塔の設置の際に、大規模なクレーンの利用などで発生する設置コストを大幅に削減できる。
【0015】
本発明の第一実施形態の空気分離装置(1)は、
第一コールドボックス(10a)内に配置され、かつ第一凝縮器(121)をその塔頂部(113)の斜め上方に備える第一精留塔(11)と、
第二コールドボックス(20)内に配置され、かつ前記第一精留塔(11)よりも低圧の精留塔であって、前記第一精留塔(11)に隣接配置される第二精留塔(21)と、
第一コールドボックス(10a)内または第三コールドボックス(30a)内に配置され、かつ前記第一精留塔(11)の塔頂部(113)の上方(好ましくは垂直上方)に設置される下部精留塔(31)と、第四コールドボックス(30b)内に配置され、かつ前記第二精留塔(21)および/または前記第一精留塔(11)に隣接配置され、第二凝縮器(324)をその塔頂部(323)内あるいはその上方に備える上部精留塔(32)とを有する粗アルゴン精留塔(31、32)と、を備える。
第一実施形態の空気分離装置(1)は、前記第四コールドボックス(30b)内に配置され、かつ前記上部精留塔(32)に隣接配置される純アルゴン精留塔(36)を、さらに備えていてもよい。
第一実施形態の空気分離装置(1)は、前記第一凝縮器(121)から前記第二精留塔(21)の底部(211)へ第一酸素富化ガスが送られる第一酸素富化ガス送りライン(L1)と、
前記第二精留塔(21)の底部(211)から前記第一凝縮器(121)へ第一酸素富化液が第一液送ポンプ(5)で送られる第一酸素富化液送りライン(L2)と、
前記第二精留塔(21)のカラム中間部(213)(あるいは中間よりも下方のカラム(212)位置)から前記下部精留塔(31)の底部(311)へ第二酸素富化ガスを送る第二酸素富化ガス送りライン(L3)と、
前記下部精留塔(31)の底部(311)から前記第二精留塔(21)のカラム中間部(213)(あるいは中間よりも下方のカラム(212)位置)へ第二酸素富化液を送る第二酸素富化液送りライン(L4)と、
前記下部精留塔(31)の塔頂部(313)から前記上部精留塔(32)の底部(321)へ第一アルゴン富化ガスが送られる第一アルゴン富化ガス送りライン(L5)と、
前記上部精留塔(32)の底部(321)から前記下部精留塔(31)の塔頂部(313)へ第一アルゴン富化液が第二液送ポンプ(6)で送られる第一アルゴン富化液送りライン(L6)と、をさらに備えていてもよい。
【0016】
第一実施形態の空気分離装置(1)によれば、前記下部精留塔(31)の底部(311)は、前記第二精留塔(21)のカラム中間部(213)よりも高い位置となるように構成する。これにより、ポンプを用いずに第二酸素富化液をその高低差を利用して送ることができる。
また、第一精留塔(高圧塔)、第二精留塔(低圧塔)と、空間的に分離された1つ以上の部分(少なくともそれぞれにカラムを含む、上部精留塔、下部精留塔など)から構成された粗アルゴン精留塔を有し、第二精留塔(低圧塔)は第一精留塔(高圧塔)の少なくとも高さ方向の部分的な位置で隣接配置され、粗アルゴン精留塔の下部精留塔(底部)は少なくとも第一精留塔(高圧塔)の上方に配置される。これによって、空気分離装置の高さを低くできる。
また、第一精留塔(高圧塔)の斜め上方に凝縮器を設置する場合は、つまり、第一精留塔の塔頂部に設置される第一凝縮器に係る高さ分を低くすることができる。
また、例えば第二精留塔(低圧塔)や原料空気を冷却するための主熱交換器(不図示)を収めた第五コールドボックス(50)の一部を支持サポートとして使用することによって、新たな支持脚を接地することがなく、第一精留塔(高圧塔)の斜め上方に第一凝縮器を設置することができる。
また、粗アルゴン精留塔の下部精留塔の底部から第二精留部(低圧塔)の中間部に酸素富化液体が供給されるラインと、第二精留部(低圧塔)の中間部から粗アルゴン精留塔の下部精留塔の下部に酸素富化ガスが供給されるラインが設けられる。つまり、粗アルゴン精留塔の下部精留塔が第一精留塔(高圧塔)の上部に設置されることにより、第二精留塔(低圧塔)の返送点に対して液ヘッドで液返送することが可能となり、特許文献3の構成におけるポンプで2分割された低圧塔下部に返送するような複雑で高価な工程を必要としなくて済む。
また、第一凝縮器(121)は、第一精留塔(高圧塔)の頂部ガスを、第二精留塔(低圧塔)の底部液を冷熱源として使用することで凝縮するように構成される。第二精留塔(低圧塔)の底部液は、例えばポンプ(5)によって第二精留塔(低圧塔)の底部(下部)から第一凝縮器(121)に送られる。
【0017】
本発明の第二実施形態の空気分離装置(1)は、
第一コールドボックス(10a)内に配置され、かつ第一凝縮器(121)をその塔頂部(113)の斜め上方に備える第一精留塔(11)と、
第二コールドボックス(20)内に配置され、かつ前記第一精留塔(11)よりも低圧の精留塔であって、前記第一精留塔(11)に隣接配置される第二精留塔(21)と、
第一コールドボックス(10a)内または第三コールドボックス内に配置され、第二凝縮器(304)をその塔頂部(303)内あるいはその上方に備える粗アルゴン精留塔(30)と、を備える。
第二実施形態の空気分離装置(1)は、粗アルゴン精留塔(30)に隣接配置される純アルゴン精留塔を、さらに備えていてもよい。
第二実施形態の空気分離装置(1)は、前記第一凝縮器(121)から前記第二精留塔(21)の底部(211)へ第一酸素富化ガスが送られる第一酸素富化ガス送りライン(L1)と、
前記第二精留塔(21)の底部(211)から前記第一凝縮器(121)へ第一酸素富化液が第一液送ポンプ(5)で送られる第一酸素富化液送りライン(L2)と、
前記第二精留塔(21)のカラム中間部(213)(あるいは中間よりも下方のカラム(212)位置)から前記粗アルゴン精留塔(30)の底部(301)へ第二酸素富化ガスを送る第二酸素富化ガス送りライン(L3)と、
前記粗アルゴン精留塔(30)の底部(301)から前記第二精留塔(21)のカラム中間部(213)(あるいは中間よりも下方のカラム(212)位置)へ第二酸素富化液を送る第二酸素富化液送りライン(L4)と、をさらに備えていてもよい。
第三実施形態では、粗アルゴン精留塔が分割されておらず、第一精留塔の上方にそのまま配置されているので、高さ方向のサイズが大きくなるが設置面積は小さくできる。
【0018】
第三実施形態の空気分離装置(1)は、
第一コールドボックス(10a)内に配置される第一精留塔(11)と、
第二コールドボックス(20)内に配置され、かつ前記第一精留塔(11)よりも低圧の精留塔であって、前記第一精留塔(11)に隣接配置され、かつ前記第一精留塔(11)の塔頂部(113)と配管を介して接続される第一凝縮器(122)をその下部あるいは底部(211)に備える第二精留塔(21)と、
第一コールドボックス(10a)内または第三コールドボックス(30a)内に配置され 、かつ前記第一精留塔(11)の塔頂部(113)の上方に設置される下部精留塔(31)と、第四コールドボックス(30b)内に配置され、かつ前記第二精留塔(21)および/または前記第一精留塔(11)に隣接配置され、第二凝縮器(324)をその塔頂部(323)内あるいはその上方に備える上部精留塔(32)とを有する粗アルゴン精留塔(31、32)と 、を備える。
第三実施形態の空気分離装置(1)は、前記第四コールドボックス(30b)内に配置され、かつ前記上部精留塔(32)に隣接配置される純アルゴン精留塔(36)をさらに備えていてもよい。
第三実施形態の空気分離装置(1)は、前記第一精留塔(11)の塔頂部(113)から前記第一凝縮器(122)へ第一窒素富化ガスが送られる第一窒素富化ガス送りライン(L11)と、
前記第一凝縮器(122)から前記第一精留塔(11)の塔頂部(113)へ第一窒素富化液が第一液送ポンプ(5)で送られる第一窒素富化液送りライン(L21)と、
前記第二精留塔(21)のカラム中間部(213)から前記下部精留塔(31)の底部(311)へ第一酸素富化ガスを送る第一酸素富化ガス送りライン(L3)と、
前記下部精留塔(31)の底部(311)から前記第二精留塔(21)のカラム中間部(213)へ第一酸素富化液を送る第一酸素富化液送りライン(L4)と、
前記下部精留塔(31)の塔頂部(313)から前記上部精留塔(32)の底部(321)へ第一アルゴン富化ガスが送られる第一アルゴン富化ガス送りライン(L5)と、
前記上部精留塔(32)の底部(321)から前記下部精留塔(31)の塔頂部(313)へ第一アルゴン富化液が第二液送ポンプ(6)で送られる第一アルゴン富化液送りライン(L6)と、をさらに備えていてもよい。
【0019】
第三実施形態の空気分離装置(1)によれば、前記下部精留塔(31)の底部(311)は、前記第二精留塔(21)のカラム中間部(213)よりも高い位置となるように構成する。これにより、ポンプを用いずに第二酸素富化液をその高低差を利用して送ることができる。
また、第一精留塔(高圧塔)、第二精留塔(低圧塔)と、空間的に分離された1つ以上の部分(少なくともそれぞれにカラムを含む、上部精留塔、下部精留塔など)から構成された粗アルゴン精留塔を有し、第二精留塔(低圧塔)は第一精留塔(高圧塔)の少なくとも高さ方向の部分的な位置で隣接配置され、粗アルゴン精留塔の下部精留塔(底部)は少なくとも第一精留塔(高圧塔)の上方に配置される。これによって、空気分離装置の高さを低くできる。
また、第一凝縮器(122)は第二精留塔(21)の下部に設置される。つまり、第一精留塔の塔頂部に設置される第一凝縮器に係る高さ分を低くすることができる。
第一凝縮器(122)は、第一精留塔(11)の塔頂部ガスを、第二精留塔(21)の底部液を冷熱源として使用することで凝縮するように構成される。
第一凝縮器(122)で液化された第一精留塔(11)の塔頂部ガス液は、例えば、ポンプ(5)によって第一精留塔(11)の塔頂部(113)に還流液として送られる。
【0020】
本発明の第四実施形態の空気分離装置(1)は、
第一コールドボックス(10a)内に配置される第一精留塔(11)と、
第二コールドボックス(20)内に配置され、かつ前記第一精留塔(11)よりも低圧の精留塔であって、前記第一精留塔(11)に隣接配置され、かつ前記第一精留塔(11)の塔頂部(113)と配管を介して接続される第一凝縮器(122)をその下部あるいは底部(211)に備える第二精留塔(21)と、
第一コールドボックス(10a)内または第三コールドボックス内に配置され 、第二凝縮器(304)をその塔頂部(303)内あるいはその上方に備える粗アルゴン精留塔(30)と、を備える。
第四実施形態の空気分離装置(1)は、粗アルゴン精留塔(30)に隣接配置される純アルゴン精留塔を、さらに備えていてもよい。
第四実施形態の空気分離装置(1)は、前記第一精留塔(11)の塔頂部(113)から前記第一凝縮器(122)へ第一窒素富化ガスが送られる第一窒素富化ガス送りライン(L11)と、
前記第一凝縮器(122)から前記第一精留塔(11)の塔頂部(113)へ第一窒素富化液が第一液送ポンプ(5)で送られる第一窒素富化液送りライン(L21)と、
前記第二精留塔(21)のカラム中間部(213)から前記下部精留塔(31)の底部(311)へ第一酸素富化ガスを送る第一酸素富化ガス送りライン(L3)と、
前記下部精留塔(31)の底部(311)から前記第二精留塔(21)のカラム中間部(213)へ第一酸素富化液を送る第一酸素富化液送りライン(L4)と、をさらに備えていてもよい。
第四実施形態では、粗アルゴン精留塔が分割されておらず、第一精留塔の上方にそのまま配置されているので、高さ方向のサイズが大きくなるが設置面積は小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】実施形態1の空気分離装置を示す図である。
図1B】実施形態2の空気分離装置を示す図である。
図2A】実施形態3の空気分離装置を示す図である。
図2B】実施形態4の空気分離装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0023】
(実施形態1)
実施形態1の空気分離装置1について図1Aを用いて説明する。
空気分離装置1は、第一精留塔(高圧塔)、第二精留塔(低圧塔)と、空間的に分離された1つ以上の部分(少なくともそれぞれにカラムを含む、上部精留塔、下部精留塔など)から構成された粗アルゴン精留塔を有する。第二精留塔(低圧塔)は第一精留塔(高圧塔)の少なくとも高さ方向の部分的な位置で隣接配置され、粗アルゴン精留塔の下部精留塔(底部)は少なくとも第一精留塔(高圧塔)の上方に配置される。これによって、空気分離装置の高さを低くできる。
【0024】
第一精留塔11は、第一コールドボックス10a内に配置され、かつ第一凝縮器121をその塔頂部113の斜め上方に備える(設置時に鉛直方向で重ならないように配置される)。
第一凝縮器121は、第一サブコールドボックス10bに収納される。第一凝縮器121は、第二精留塔21や原料空気を冷却するための主熱交換器を収納した第五コールドボックス50の一部を支持サポートとして使用されて設置される。第一凝縮器121の高さが、塔頂部113より高い位置で、ポンプを用いずに液流れするように構成される。
第二精留塔21は、第二コールドボックス20内に配置され、かつ第一精留塔11よりも低圧の精留塔であって、第一精留塔11に隣接配置される。
【0025】
粗アルゴン精留塔は、空間的に分離された下部精留塔31と上部精留塔32とで構成される。
下部精留塔31は、第三コールドボックス30a内に配置され、かつ第一精留塔11の塔頂部113の垂直上方に設置される。なお、別実施形態として、下部精留塔31は、第一コールドボックス10a内に配置されてもよい。
上部精留塔32は、第四コールドボックス30b内に配置され、かつ第二精留塔21に隣接配置され、第二凝縮器324をその塔頂部323の上方に備える。
純アルゴン精留塔36は、第四コールドボックス30b内に配置され、かつ上部精留塔32に隣接配置される。
なお、純アルゴン精留塔36は、空気分離装置1で必須ではなく省略されていてもよい。
【0026】
第一酸素富化ガス送りラインL1は、第一凝縮器12から第二精留塔21の底部211へ第一酸素富化ガスが送られるラインである。第一酸素富化ガス送りラインL1は、配管と弁(不図示)で構成される。
第一酸素富化液送りラインL2は、第二精留塔21の底部211から第一凝縮器12へ第一酸素富化液が第一液送ポンプ5で送られるラインである。第一酸素富化液送りラインL2は、配管と弁(不図示)で構成される。
【0027】
第二酸素富化ガス送りラインL3は、第二精留塔21のカラム中間部213から下部精留塔31の底部311へ第二酸素富化ガスを送るラインである。第二酸素富化ガス送りラインL3は、配管と弁(不図示)で構成される。
第二酸素富化液送りラインL4は、下部精留塔31の底部311から第二精留塔21のカラム中間部213へ第二酸素富化液を送るラインである。第二酸素富化液送りラインL4は、配管と弁(不図示)で構成される。
下部精留塔31の底部311は、第二精留塔21のカラム中間部213よりも高い位置であり、ポンプを用いずに第二酸素富化液をその高低差を利用して送る。
【0028】
第一アルゴン富化ガス送りラインL5は、下部精留塔31の塔頂部313から上部精留塔32の底部321へ第一アルゴン富化ガスが送られるラインである。第一アルゴン富化ガス送りラインL5は、配管と弁(不図示)で構成される。
第一アルゴン富化液送りラインL6は、上部精留塔32の底部321から下部精留塔31の塔頂部313へ第一アルゴン富化液が第二液送ポンプ6で送られるラインである。第一アルゴン富化液送りラインL6は、配管と弁(不図示)で構成される。
【0029】
実施形態1において、図1Aでは、第二精留塔(低圧塔)や原料空気を冷却するための主熱交換器、原料空気を圧縮する圧縮機、膨張タービンなどが省略されているが、不必要ということではない。本実施形態1(以下の実施形態でも同様である)においてもそれら構成要素も当然に空気分離装置1の構成要素の一部である。
【0030】
(実施形態2)
実施形態2の空気分離装置1を図1Bを用いて説明する。実施形態1と異なる構成について説明し、同じ構成については説明を省略または簡単にする。
粗アルゴン精留塔30は、第一コールドボックス10a内に配置され、第二凝縮器304をその塔頂部303内あるいはその上方に備える。なお、粗アルゴン精留塔30は、第一コールドボックス10aとは別のコールドボックス内に配置されていてもよい。
なお、実施形態2において、純アルゴン精留塔は必須であってもよく省略されていてもよい。
実施形態2では、粗アルゴン精留塔が分割されておらず、第一精留塔の上方にそのまま配置されているので、高さ方向のサイズが大きくなるが設置面積は小さくできる。
【0031】
(実施形態3)
実施形態3の空気分離装置1を図2Aを用いて説明する。
空気分離装置1は、第一精留塔(高圧塔)、第二精留塔(低圧塔)と、空間的に分離された1つ以上の部分(少なくともそれぞれにカラムを含む、上部精留塔、下部精留塔など)から構成された粗アルゴン精留塔を有する。第二精留塔(低圧塔)は第一精留塔(高圧塔)の少なくとも高さ方向の部分的な位置で隣接配置され、粗アルゴン精留塔の下部精留塔(底部)は少なくとも第一精留塔(高圧塔)の上方に配置される。これによって、空気分離装置の高さを低くできる。
【0032】
第一精留塔11は、第一コールドボックス10a内に配置される。
第二精留塔21は、第二コールドボックス20内に配置され、かつ第一精留塔11よりも低圧の精留塔であって、第一精留塔11に隣接配置され、かつ第一精留塔11の塔頂部113と配管を介して接続される第一凝縮器122をその底部211に備える。
【0033】
粗アルゴン精留塔は、第三コールドボックス30a内に配置され、かつ第一精留塔11の塔頂部113の垂直上方に設置される下部精留塔31と、第四コールドボックス30b内に配置され、かつ第二精留塔21に隣接配置され、第二凝縮器324をその塔頂部323の上方に備える上部精留塔32とを有する。
純アルゴン精留塔36は、第四コールドボックス30b内に配置され、かつ上部精留塔32に隣接配置される。
なお、純アルゴン精留塔36は、空気分離装置1で必須ではなく省略されていてもよい。
【0034】
第一窒素富化ガス送りラインL11は、第一精留塔11の塔頂部113から第一凝縮器122へ第一窒素富化ガスが送られるラインである。第一窒素富化ガス送りラインL11は、配管と弁(不図示)で構成される。
第一窒素富化液送りラインL21は、第一凝縮器122から第一精留塔11の塔頂部113へ第一窒素富化液が第一液送ポンプ(5)で送られるラインである。第一窒素富化液送りラインL21は、配管と弁(不図示)で構成される。
【0035】
第一酸素富化ガス送りラインL3は、第二精留塔21のカラム中間部213から下部精留塔31の底部311へ第一酸素富化ガスを送るラインである。第一酸素富化ガス送りラインL3は、配管と弁(不図示)で構成される。
第一酸素富化液送りラインL4は、下部精留塔31の底部311から第二精留塔21のカラム中間部213へ第一酸素富化液を送るラインである。第一酸素富化液送りラインL4は、配管と弁(不図示)で構成される。
下部精留塔31の底部311は、第二精留塔21のカラム中間部213よりも高い位置であり、ポンプを用いずに第一酸素富化液をその高低差を利用して送る。
【0036】
第一アルゴン富化ガス送りラインL5は、下部精留塔31の塔頂部313から上部精留塔32の底部321へ第一アルゴン富化ガスが送られるラインである。第一アルゴン富化ガス送りラインL5は、配管と弁(不図示)で構成される。
第一アルゴン富化液送りラインL6は、上部精留塔32の底部321から下部精留塔31の塔頂部313へ第一アルゴン富化液が第二液送ポンプ6で送られるラインである。第一アルゴン富化液送りラインL6は、配管と弁(不図示)で構成される。
【0037】
実施形態3において、図2Aでは、第二精留塔(低圧塔)や原料空気を冷却するための主熱交換器、原料空気を圧縮する圧縮機、膨張タービンなどが省略されているが、不必要ということではない。本実施形態3においてもそれら構成要素も当然に空気分離装置1の構成要素の一部である。
【0038】
(実施形態4)
実施形態4の空気分離装置1を図2Bを用いて説明する。実施形態2と異なる構成について説明し、同じ構成については説明を省略または簡単にする。
粗アルゴン精留塔30は、第一コールドボックス10a内に配置され、第二凝縮器304をその塔頂部303内あるいはその上方に備える。なお、粗アルゴン精留塔30は、第一コールドボックス10aとは別のコールドボックス内に配置されていてもよい。
なお、実施形態4において、純アルゴン精留塔は必須であってもよく省略されていてもよい。
実施形態4では、粗アルゴン精留塔が分割されておらず、第一精留塔の上方にそのまま配置されているので、高さ方向のサイズが大きくなるが設置面積は小さくできる。
【図面の符号の説明】
【0039】
1 空気分離装置
11 第一精留塔
121、122 第一凝縮器
21 第二精留塔
30 粗アルゴン塔
31 下部精留塔
32 上部精留塔
【要約】
【課題】従来の空気分離装置と比較して製品製造効率を低下させることなく、設置面積を大きくすることなく、かつ低圧精留塔を分割することなく、高圧精留塔の頂部に設置される凝縮器に係る高さ分を低くすることができる、空気分離装置を提供する。
【解決手段】空気分離装置1は、その塔頂部113の上方から離された位置にある第一凝縮器121を備える第一精留塔11と、第一精留塔11よりも低圧の精留塔であって、第一精留塔11に隣接配置される第二精留塔21と、第一精留塔11の塔頂部113の上方に配置される、少なくとも粗アルゴン精留塔の一部または粗アルゴン精留塔の全部とを備える。
【選択図】図1A
図1A
図1B
図2A
図2B