(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記上塗樹脂バインダの上記硬化剤が、水酸基含有ポリエステル樹脂、並びにアミノ樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の塗装板。
基板上に、ポリエステル樹脂及び硬化剤を含有するプライマー樹脂バインダ、及び該プライマー樹脂バインダ100質量部に基づいて、酸化チタン顔料80〜250質量部を含有するプライマー塗料を塗装、焼付し、硬化膜厚が10〜20μmのプライマー層を形成する工程及び、
該プライマー層上に、ポリエステル樹脂及び硬化剤を含有する上塗樹脂バインダ100質量部に対し、酸化チタン顔料100〜250質量部、及び平均粒子径4〜9μmの有機ポリマー微粒子10〜30質量部を含有する上塗塗料を塗装、焼付し、硬化膜厚が20〜35μmの上塗塗膜層を形成する工程を有し、
上記プライマー層及び上記上塗塗膜層の2層を備える複層塗膜表面の、光の波長550nmにおける拡散反射率が85%以上である塗装板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態は、
図1から明らかなように、基板1上に、特定のプライマー層2及び特定の上塗塗膜層3の2層からなる複層塗膜4を有する塗装板10であって、上記2層からなる複層塗膜4表面は、光の波長550nmにおける拡散反射率が85%以上を得ることができる。本実施形態によれば、仕上り性、低光沢度、高拡散反射率及び密着性に優れる塗装板を提供できる。該塗装板を照明器具(例えば、LED)の反射板などに適用することにより、光源の発する光線を効率良く反射できる為、低消費電力の光源であっても十分な屋内照度を提供できる。以下、詳細に説明する。
【0015】
[基板]
基板は、従来から建材を形成するために用いられている材質であればよく、例えば、金属板、木板、ガラス板、プラスチック板などである。これらの中でも、強度や加工性等を考慮すると、基板は金属板であることが好ましい。この場合、塗装板は塗装金属板である。金属板は、特に限定されるものではないが、鋼板、ステンレス板、アルミニウム板、亜鉛板、銅板、またアルミニウム合金板などの、合金板等が挙げられ、さらに、これらの金属板上にめっき処理した金属板が挙げられる。
【0016】
この内、鋼板上にめっき処理した例として、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、亜鉛合金めっき鋼板(アルミニウム―亜鉛合金めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛−シリコン合金めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛―マグネシウム合金めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−シリコン合金めっき鋼板、亜鉛―マグネシウム合金めっき鋼板)、錫めっき鋼板、鉛めっき鋼板、クロムめっき鋼板等の各種めっき鋼板等が挙げられる。また、これら金属板に、化成処理を施したものも使用できる。化成処理としては、一般に公知の化成処理、例えば、塗布型クロメート処理、りん酸クロメート処理、電解クロメート処理、りん酸亜鉛処理、複合酸化膜処理や近年開発されている6価クロムを含まないクロメートフリー処理等を使用することができる。これらの金属板の中でも、アルミニウム合金板又はめっき鋼板が、仕上り性や軽量化の面から好ましい。
【0017】
[プライマー層]
プライマー層は、ポリエステル樹脂及び硬化剤を含有するプライマー樹脂バインダ、及び酸化チタン顔料を含有する。プライマー層は基板の表面に直接形成されている。
【0018】
[ポリエステル樹脂]
上記ポリエステル樹脂は、通常、多塩基酸成分及び多価アルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。上記多塩基酸成分としては、例えば、脂環族多塩基酸成分、脂肪族多塩基酸成分、芳香族多塩基酸成分等を使用することができる。
【0019】
上記脂環族多塩基酸成分としては、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。該脂環族多塩基酸成分としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;これら脂環族多価カルボン酸の無水物;これら脂環族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。脂環族多塩基酸成分は、単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0020】
脂環族多塩基酸成分としては、特に、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を好適に使用することができる。上記のうち、耐加水分解性の観点から、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を特に好適に使用することができる。
【0021】
上記脂肪族多塩基酸成分は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物であって、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;これら脂肪族多価カルボン酸の無水物;これら脂肪族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。脂肪族多塩基酸成分は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
上記脂肪族多塩基酸成分としては、炭素数4〜18のアルキレン鎖を有するジカルボン酸を使用することが好ましい。上記炭素数4〜18のアルキレン鎖を有するジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸等が挙げられ、なかでもアジピン酸を好適に使用することができる。
【0023】
上記芳香族多塩基酸成分としては、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物の低級アルキルエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;これら芳香族多価カルボン酸の無水物;これら芳香族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。芳香族多塩基酸成分は、単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0024】
前記多価アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。上記多価アルコール成分(a2)としては、例えば、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、芳香族ジオール及び3価以上の多価アルコール等を挙げることができる。
【0025】
上記脂環族ジオールは、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個の水酸基を有する化合物である。該脂環族ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0026】
上記脂肪族ジオールは、一般に、1分子中に2個の水酸基を有する脂肪族化合物である。該脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0027】
上記芳香族ジオールは、一般に、1分子中に2個の水酸基を有する芳香族化合物である。該芳香族ジオールとしては、例えば、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0028】
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシブチル)イソシアヌレート等のトリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレート等が挙げることができる。これらのうち、特に、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0029】
本実施形態に使用する水酸基含有ポリエステル樹脂の製造は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記多塩基酸成分(a1)を必須成分とする酸成分と多価アルコール成分とを窒素気流中、150〜250℃で5〜10時間反応させて、エステル化反応又はエステル交換反応を行なうことにより製造することができる。
【0030】
上記エステル化反応又はエステル交換反応では、上記酸成分及びアルコール成分を一度に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。また、はじめにカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を用いて、該カルボキシル基含有ポリエステル樹脂中のカルボキシル基の一部をエステル化してもよい。さらに、はじめに水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、酸無水物を反応させて、水酸基含有ポリエステル樹脂をハーフエステル化させてもよい。
【0031】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるために、触媒を用いてもよい。触媒としては、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の既知の触媒を使用することができる。
【0032】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂は、該樹脂の調製中、もしくはエステル化反応後又はエステル交換反応後に、脂肪酸、油脂、モノエポキシ化合物、モノアルコール化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0033】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等を挙げることができる。
【0034】
油脂としては、例えば、ヤシ油、綿実油、麻実油、米ぬか油、魚油、トール油、大豆油、アマニ油、桐油、ナタネ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、サフラワー油等が挙げられる。
【0035】
上記変性に用いられるポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した各有機ジイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビゥレット型付加物等を挙げることができる。これらは、単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0036】
さらに、プライマー層には、必要に応じて、体質顔料、着色顔料及びクロメート系又はクロメートフリー系の防錆顔料などの顔料成分、硬化触媒、顔料分散剤、表面調整剤、艶消し剤、有機溶剤など、波長550nmにおける拡散反射率85%以上を損なわない範囲内で、従来から公知の材料を含有することができる。
【0037】
ポリエステル樹脂の数平均分子量は、得られる塗膜の仕上り性、塗膜硬度、加工性の観点から、2,000〜30,000が好ましく、特に3,000〜25,000の範囲内の数平均分子量を有することが好適である。
【0038】
なお、本明細書における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した数平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。
【0039】
具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」「TSKgel G−3000HXL」「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
【0040】
ポリエステル樹脂の水酸基価は、得られる塗膜の密着性の点から10〜200mgKOH/g、特に60〜185mgKOH/gの範囲であることが好ましい。ポリエステル樹脂の酸価は、仕上り性の観点から30mgKOH/g以下、好ましくは1〜20mgKOH/gの範囲内が望ましい。
【0041】
[硬化剤]
硬化剤は、加熱によりポリエステル樹脂の水酸基と反応して、硬化させることができるものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂及びポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0042】
上記メラミン樹脂としては、メチロール化メラミンのメチロール基の一部又は全部を炭素数1〜8の1価アルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等で、エーテル化した部分エーテル化又はフルエーテル化メラミン樹脂が挙げられる。
【0043】
メラミン樹脂の市販品としては、例えばサイメル202、サイメル232、サイメル235、サイメル238、サイメル254、サイメル266、サイメル267、サイメル272、サイメル285、サイメル301、サイメル303、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370、サイメル701、サイメル703、サイメル1141(以上、ダイセル・オルネクス社製)、ユーバン20SE60(三井化学株式会社製)等が挙げられる。
【0044】
ベンゾグアナミン樹脂は、ベンゾグアナミンとアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化ベンゾグアナミン樹脂が挙げられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。また、このメチロール化ベンゾグアナミン樹脂を1種又は2種以上のアルコールによってエーテル化したものも上記ベンゾグアナミン樹脂に包含される。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等の1価アルコールが挙げられる。これらのうち、なかでもメチロール化ベンゾグアナミン樹脂のメチロール基の少なくとも一部を炭素数1〜4の1価アルコールでエーテル化してなるベンゾグアナミン樹脂が好適である。
【0045】
上記ベンゾグアナミン樹脂の具体例としては、例えば、マイコート102、マイコート105、マイコート106(以上、いずれも三井化学社製)、ニカラックSB−201、ニカラックSB−203、ニカラックSB−301、ニカラックSB−303、ニカラックSB−401(以上、いずれも三和ケミカル社製)などのメチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂;サイメル1123(ダイセル・オルネクス社製)などのメチルエーテルとエチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂;マイコート136(三井化学社製)、ニカラックSB−255、ニカラックSB−355、ニカラックBX−37、ニカラックBX−4000(以上、いずれも三和ケミカル社製)などのメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂;マイコート1128(三井化学社製)などのブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂などを挙げることができる。
【0046】
尿素樹脂は、尿素とホルムアルデヒドとの縮合反応で得られ、溶剤又は水に溶解又は分散できる。
【0047】
ポリイソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート及びシクロペンタンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;該ポリイソシアネートのビユーレットタイプ付加物、イソシアヌル環タイプ付加物;これらのポリイソシアネートと低分子量もしくは高分子量のポリオール化合物(例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなど)とをイソシアネート基過剰で反応させてなる遊離イソシアネート基含有プレポリマーなどを挙げることができる。
【0048】
さらに、ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート化合物の遊離イソシアネート基をフェノール化合物、オキシム化合物、活性メチレン化合物、ラクタム化合物、アルコール化合物、メルカプタン化合物、酸アミド系化合物、イミド系化合物、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、尿素系化合物、カルバミン酸系化合物、イミン系化合物などのブロック剤で封鎖したブロック化ポリイソシアネート化合物も使用することができる。
【0049】
また、プライマー樹脂バインダの硬化促進のため、必要に応じて硬化触媒を配合することができる。硬化剤がアミノ樹脂である場合の硬化触媒としては、例えば、強酸、強酸の中和物などが挙げられ、代表例として、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などの強度の酸であるスルホン酸化合物、これらのスルホン酸化合物のアミン中和物などを挙げることができる。
【0050】
硬化剤がブロック化ポリイソシアネート化合物である場合の硬化触媒としては、硬化剤であるブロック化ポリイソシアネート化合物のブロック剤の解離を促進する硬化触媒、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、2−エチルヘキサン酸鉛などの有機金属触媒などを挙げることができる。
【0051】
[酸化チタン顔料]
プライマー層には、酸化チタン顔料を含有する。該酸化チタン顔料は、その製造法、表面処理の有無又は種類等に特に制限はないが、できるだけ隠蔽性が高く、白色度の高いものが好ましく、中でも塩素法で作られたルチル型酸化チタンをアルミナ、シリカ、チタニア等で表面処理したものが好適である。
【0052】
市販品としては、例えば、Ti−Pure R706、Ti−Pure R960、Ti−Pure R902+(以上、デュポン社製、商品名、塩素法による酸化チタン顔料)、タイペークCR−50、タイペークCR−60、タイペークCR−95(以上、石原産業社製、商品名、塩素法による酸化チタン顔料)、CR−826(Tronox社製、商品名、塩素法による酸化チタン顔料)などが挙げられる。
【0053】
酸化チタン顔料の含有量は、プライマー樹脂バインダ100質量部に基づいて、酸化チタン顔料80〜250質量部、好ましくは120〜230質量部の範囲内が、仕上り性及び高拡散反射率の為に適している。また、乾燥膜厚としてプライマー層の膜厚が10〜20μm、好ましくは12〜18μmの範囲内にあることが、仕上り性と高拡散反射率の面から適している。また、プライマー層は、ワキの発生などのため1度で塗装できない場合には、2回以上に分けて塗装することも可能である。
【0054】
なおプライマー塗料には、塗装作業性を向上させるため、通常塗料で使用される、溶剤、レベリング剤、顔料分散剤及びワキ防止剤等が適宜使用できる。
【0055】
塗装方法としては、カーテン塗装、ロール塗装、浸漬塗装およびスプレー塗装などが可能であるが、コイルコーティングなどによってプレコート塗装する場合、その経済性からカーテン塗装法およびロール塗装法が推奨される。ロール塗装法を適用する場合には塗面の均一性を最良のものにするため3本ロールによるトップフィードもしくはボトムフィード方式が推奨されるが実用的には通常の2本ロールによるボトムフィード方式(いわゆるナチュラルリバース塗装、ナチュラル塗装)でもよい。
【0056】
硬化条件(焼付け条件)は、通常、素材到達最高温度(PMT)120〜260℃で15秒〜30分間程度である。コイルコーティングなどによって塗装するプレコート塗装分野においては、通常、素材到達最高温度160〜260℃で15〜90秒の範囲で行なわれる。
【0057】
[上塗塗膜層]
上塗塗膜層は光沢の少ない塗膜層であって、艶消し塗膜層であることが好ましい。このような上塗塗膜層が塗装板の最表面にあると像の映り込みが少なくなる。上塗塗膜層は、ポリエステル樹脂及び硬化剤を含有する上塗樹脂バインダ、並びに、酸化チタン顔料及び平均粒子径4〜9μmの有機ポリマー微粒子を含有する。上塗塗膜層はプライマー層の表面に直接形成されている。
【0058】
[上塗樹脂バインダ]
上記ポリエステル樹脂としては、プライマー層の説明欄に記載したのと同様のポリエステル樹脂を使用することができる。上記ポリエステル樹脂と組み合わせる硬化剤としては、前記プライマー層の説明欄に記載したのと同様のアミノ樹脂およびブロック化イソシアネート化合物が好適に用いられる。また、上塗樹脂バインダの硬化促進のため、必要に応じて、前記プライマー層の説明欄に記載したと同様の硬化触媒を配合することができる。
【0059】
[酸化チタン顔料]
上塗塗膜層には、酸化チタン顔料を含有する。酸化チタン顔料は、プライマー層と同様の酸化チタン顔料が使用できる。
【0060】
上塗塗膜層における酸化チタン顔料の含有量は、上塗樹脂バインダ成分100質量部に対し、100〜250質量部、好ましくは140〜190質量部の範囲内であることが、仕上り性、高拡散反射率及び密着性のバランスの点から適している。
【0061】
[有機ポリマー微粒子]
本実施形態における上塗塗膜層には、低光沢と高拡散反射率を目的として、有機ポリマー微粒子を含有する。有機ポリマー微粒子としては、例えば、尿素とアルデヒド成分との縮合反応により得られた樹脂を粉砕処理した尿素樹脂系の有機ポリマー微粒子、アクリル樹脂系の有機ポリマー微粒子が挙げられる。また、有機ポリマー微粒子は、中空の微粒子であってもよい。
【0062】
有機ポリマー微粒子は、平均粒子径4〜9μm、好ましくは5〜8μmの粒子径が適している。平均粒子径が4μm未満であると高拡散反射率を得られないことがあり、一方、平均粒子径が9μmを超えると仕上り性を損なうことがある。
【0063】
上記平均粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置(商品名「MT3300」、日機装社製)を使用し、レーザー回折散乱法により測定された体積基準粒度分布のメジアン径(d50)の値である。
【0064】
上記有機ポリマー微粒子の市販品としては、例えば、パーゴパックM3(ロンザジャパン社製、商品名)、GR−800(根上工業社製、商品名)、テクポリマーMBX−5、テクポリマーMBX−8(以上、積水化学社製、商品名)等が挙げられる。
【0065】
上塗塗膜層に配合される有機ポリマー微粒子は、上塗樹脂バインダ100質量部に対し、10〜30質量部、好ましくは11〜20質量部の範囲内が適している。
【0066】
また、上塗塗膜層の膜厚については、隠蔽性があり、且つムラなく均一に塗装できることが必要であることから、20〜35μm、好ましくは25〜33μmの範囲が適している。また、上塗塗膜層は、ワキの発生防止などを目的に2回以上に分けて塗装して上塗塗膜層を形成してもよい。
【0067】
なお上塗塗膜層には、必要に応じて通常塗料で使用される、シリカ等の艶消し剤、溶剤、レベリング剤、表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料分散剤、ワキ防止剤など、波長550nmにおける拡散反射率85%以上を損なわない範囲内で、従来から公知の材料を含有することができる。
【0068】
上塗塗膜層を得る塗装方法としては、カーテン塗装、ロール塗装、浸漬塗装およびスプレー塗装などが可能であるが、コイルコーティングなどによってプレコート塗装する場合、その経済性からカーテン塗装法およびロール塗装法が推奨される。ロール塗装法を適用する場合には塗面の均一性を最良のものにするため3本ロールによるトップフィードもしくはボトムフィード方式が推奨されるが実用的には通常の2本ロールによるボトムフィード方式(いわゆるナチュラルリバース塗装、ナチュラル塗装)でもよい。
【0069】
上塗塗料の硬化条件(焼付け条件)は、コイルコーティングなどによって塗装するプレコート塗装分野においては、通常、素材到達最高温度160〜260℃で15〜90秒の範囲で行なわれる。
【0070】
[複層塗膜]
上記のようにして得られたプライマー層及び上塗塗膜層の2層からなる複層塗膜を有する塗装板の60度鏡面光沢度は、5〜20%、好ましくは6〜15%の範囲内が、高拡散反射光を得る為に適している。上記2層からなる複層塗膜を有する塗装板は、光の波長550nmにおける拡散反射率が85%以上、好ましくは88%以上を得ることができる。
【0071】
上記拡散反射光は、鏡面反射(正反射)以外の角度に反射した光であって、入射光が様々な方向に反射される光であり、鏡面反射(正反射)光は、一方向からの光が別の一方向に反射される光のことを言う。
【0072】
本実施形態の塗装板である高拡散反射塗装金属板は、LEDライトなどの照明器具の反射板を提供するのに有用である。
【0073】
また実施形態の塗装板である高拡散反射塗装金属板は、金属製の各種建材(例えば、壁材、天井材、屋根材など)を提供するのに有用である。
【0074】
また本実施形態の塗装板である高拡散反射塗装金属板は、サンドイッチパネルの金属外皮を提供するのに有用である。すなわち、ロックウールなどの芯材の両表面に金属外皮を設けてサンドイッチパネルが形成されるが、芯材の片面に設けた金属外皮が上記高拡散反射塗装金属板から形成されていてもよいし、芯材の両面に設けた金属外皮が上記高拡散反射塗装金属板から形成されていてもよい。上記高拡散反射塗装金属板から形成された金属外皮は、建物の屋内又は屋外のいずれの表面を形成してもよい。
【0075】
上記高拡散反射塗装金属板により部屋の内装面が構成されていると、高拡散反射塗装金属板の高拡散反射性により、部屋の隅々にまで光が到達しやすくなり、部屋に暗部ができにくくなり、また部屋の内装面に人物や家具等の像の映り込むのを低減することができる。このように上記高拡散反射塗装金属板から形成される建材は、人が快適に活動することができる調光された空間を提供することが容易になる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものとする。
【0077】
[プライマー塗料の製造]
製造例1(プライマー塗料No.1の製造例)
バイロンGK−570(注1)を85部(固形分)、サイメル232S(注2)15部(固形分)、タイペークCR−95(注3)130部、サイロイド74(注4)1部、Nacure5225(注5)1部を加え、均一に撹拌し、有機溶剤(シクロヘキサノン/スワゾール1500(丸善石油化学社製、商品名、芳香族炭化水素系有機溶剤)=40/60(質量比)の混合溶剤)によって粘度120秒(フォードカップ#4、25℃)に調整して、プライマー塗料No.1を得た。
【0078】
製造例2(プライマー塗料No.2の製造例)
バイロンGK−570(注1)を85部(固形分)、サイメル232S(注2)15部(固形分)、タイペークCR−95(注3)180部、サイロイド74(注4)1部、Nacure5225(注5)1部を加え、均一に撹拌し、有機溶剤(シクロヘキサノン/スワゾール1500(丸善石油化学社製、商品名、芳香族炭化水素系有機溶剤)=40/60(質量比)の混合溶剤)によって粘度120秒(フォードカップ#4、25℃)に調整して、プライマー塗料No.2を得た。
【0079】
製造例3(プライマー塗料No.3の製造例)
バイロンGK−570(注1)を85部(固形分)、サイメル232S(注2)15部(固形分)、タイペークCR−95(注3)220部、サイロイド74(注4)1部、Nacure5225(注5)1部を加え、均一に撹拌し、有機溶剤(シクロヘキサノン/スワゾール1500(丸善石油化学社製、商品名、芳香族炭化水素系有機溶剤)=40/60(質量比)の混合溶剤)によって粘度120秒(フォードカップ#4、25℃)に調整して、プライマー塗料No.3を得た。
【0080】
製造例4(プライマー塗料No.4の製造例)
バイロンGK−570(注1)を85部(固形分)、デスモジュールBL−3175(注6)15部(固形分)、タイペークCR−95(注3)130部、サイロイド74(注4)1部、フォーメートTK−1(注7)1部を加え、均一に撹拌し、有機溶剤(シクロヘキサノン/スワゾール1500(丸善石油化学社製、商品名、芳香族炭化水素系有機溶剤)=40/60(質量比)の混合溶剤)によって粘度120秒(フォードカップ#4、25℃)に調整して、プライマー塗料No.4を得た。
【0081】
[上塗塗料の製造]
製造例5(上塗塗料No.1の製造)
バイロンGK−140(注8)を85部(固形分)、サイメル303(注9)15部(固形分)、タイペークCR−95(注3)150部、Nacure5225(注5)1部、PERGOPAK M−3(注10)18部を加え、均一に撹拌し、有機溶剤(シクロヘキサノン/スワゾール1500(丸善石油化学社製、商品名、芳香族炭化水素系の有機溶剤)=40/60(質量比)の混合溶剤)を加えて希釈、混合し、粘度140秒(フォードカップ#4、25℃)の上塗塗料No.1を得た。
【0082】
製造例6〜28(上塗塗料No.2〜No.24の製造)
表1〜表4に示す配合内容する以外は、製造例5と同様にして、上塗塗料No.2〜No.24を得た。
【0083】
[実施例1]
以下の工程1〜工程2に従って、塗装板(塗装金属板)No.1を得た。
【0084】
(工程1)
クロメートフリー化成処理をした0.35mmのGL材(アルミニウム−亜鉛−シリコン合金めっき鋼板である基板)に、ロールーコーターにてプライマー塗料No.1を乾燥膜厚16μmとなるように塗装し、素材最高到達温度210℃で45秒間焼付けた。
【0085】
(工程2)
工程1後のプライマー層の上に、ロールーコーターにて上塗り塗料No.1を乾燥膜厚25μmとなるように塗装し、素材最高到達温度220℃で55秒間焼付けた。
【0086】
[実施例2〜14]
表1〜表4に示す工程内容以外は、実施例1と同様にして、塗装板No.2〜No.14を得た。
【0087】
[実施例15]
以下の工程1〜工程2に従って、塗装板No.15を得た。
【0088】
(工程1)
クロメートフリー化成処理をした0.35mmのステンレス鋼板(SUS430)に、ロールーコーターにてプライマー塗料No.1を乾燥膜厚16μmとなるように塗装し、素材最高到達温度210℃で45秒間焼付けた。
【0089】
(工程2)
工程1後のプライマー層の上に、ロールーコーターにて上塗り塗料No.1を乾燥膜厚25μmとなるように塗装し、素材最高到達温度220℃で55秒間焼付けた。
【0090】
[実施例16〜20]
表3に示す工程内容以外は、実施例15と同様にして、塗装板No.16〜No.20を得た。
【0091】
[実施例21]
以下の工程1〜工程2に従って、塗装板No.21を得た。
【0092】
(工程1)
クロメートフリー化成処理をした0.35mmのアルミニウム合金板(3000系)に、ロールーコーターにてプライマー塗料No.1を乾燥膜厚16μmとなるように塗装し、素材最高到達温度210℃で45秒間焼付けた。
【0093】
(工程2)
工程1後のプライマー層の上に、ロールーコーターにて上塗り塗料No.1を乾燥膜厚25μmとなるように塗装し、素材最高到達温度220℃で55秒間焼付けた。
【0094】
[実施例22〜26]
表4に示す工程内容以外は、実施例21と同様にして、塗装板No.22〜No.26を得た。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
表1〜表4からわかるように、基板(金属板)上に、プライマー層及び該プライマー層上の上塗塗膜層の2層からなる複層塗膜を有する塗装板(塗装金属板)によって、光の波長550nmにおける拡散反射率が85%以上を達成できる。
【0100】
上記の効果は、プライマー層における、酸化チタン顔料を一定範囲の含有量とすること、プライマー層の膜厚を一定範囲とすること、並びに、上塗塗膜層における酸化チタン顔料を特定範囲の含有量とすること、平均粒子径4〜9μmの有機ポリマー微粒子を一定量含有すること、上塗塗膜層の膜厚を一定範囲とすること、の全てによって得られるものと考える。
【0101】
[比較例1〜23]
表5〜表7に示す工程内容とする以外は、実施例1と同様にして、塗装板No.27〜No.49を得た。
【0102】
【表5】
【0103】
【表6】
【0104】
【表7】
【0105】
表5〜表7からわかるように、塗膜中の有機ポリマー微粒子の配合量が上限又は下限から外れる塗装板(比較例1〜8)、塗膜中に有機ポリマー微粒子を含まずその他の成分を含有する塗装板(比較例9〜13)、上塗塗膜の膜厚が下限又は上限から外れる塗装板(比較例14〜15)、上塗塗膜のチタン白の含有量が下限又は上限から外れる塗装板(比較例16〜17)、及び素材がAL合金板やステンレス鋼板においても有機ポリマー微粒子の配合量が上限又は下限から外れる塗装板(比較例18〜21)、プライマー層の膜厚が下限又は上限から外れる塗装板(比較例22〜23)であるが、いずれの塗装板においても、仕上り性、60度鏡面光沢度、拡散反射率及び密着性の全てを満足することはできなかった。
【0106】
なお、表中等の明細書に記載された(注1)〜(注23)の詳細は以下の通りである。
【0107】
(注1)バイロンGK−570:東洋紡績(株)社製、ポリエステル樹脂、数平均分子量19,000、水酸基価6mgKOH/g
(注2)サイメル232S:ダイセル・オルネクス株式会社製、商品名、メチル/ブチル混合エーテル化メラミン樹脂
(注3)タイペークCR−95:石原産業株式会社製、商品名、チタン白
(注4)サイロイド74:グレース株式会社製、無定形シリカ微粉末
(注5)Nacure5225:キング・インダストリイズ社製、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン塩
(注6)デスモジュールBL−3175:住化バイエルウレタン社製、商品名、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型三量体のメチルエチルケトンオキシムブロック化ポリイソシアネート
(注7)フォーメートTK−1:大阪新薬社製、商品名、有機錫系触媒
(注8)バイロンGK−140:東洋紡績(株)社製、水酸基価10mgKOH/g、数平均分子量13,000、ポリエステル樹脂
(注9)サイメル303:ダイセル・オルネクス株式会社製、商品名、メチルエーテル化メラミン樹脂
(注10)PERGOPAK M−3:ロンザジャパン社製、商品名、尿素樹脂系の有機ポリマー微粒子(有機樹脂微粒子)、平均粒子径6μm
(注11)ラブコロール230MD:大日精化社製、商品名、アクリル樹脂系の有機ポリマー微粒子、平均粒子径8μm
(注12)GR−800:根上工業社製、商品名、アクリル樹脂系の有機ポリマー微粒子、平均粒子径6μm
(注13)テクポリマー MBX−5:積水化成品工業社製、アクリル樹脂系の有機ポリマー微粒子、平均粒径5μm
(注14)テクポリマー MBX−8:積水化成品工業社製、アクリル樹脂系の有機ポリマー微粒子、平均粒径8μm
(注15)GR−400:根上工業社製、商品名、アクリル樹脂系の有機ポリマー微粒子、平均粒子径18μm
(注16)AR−650M:東洋紡績社製、商品名、アクリル樹脂系の有機ポリマー微粒子、平均粒子径30μm
(注17)サイリシア445:富士シリシア社製、商品名、シリカ微粒子、平均粒子径6μm
(注18)サイリシア470:富士シリシア社製、商品名、シリカ微粒子、平均粒子径14μm
(注19)EMB−10:ポッターズ社製、商品名、ガラスビーズ、平均粒子径10μm
得られた複層塗膜について、下記の試験方法にて性能試験を行った。得られた結果を表1及び表2に併せて示す。
【0108】
(注20)仕上り性:
○は、塗面に、ハジキ、凹み、ブツなどの塗面異常や曇りが認められない。
△は、ハジキ、凹み、ブツなどの塗面異常が認められないが、塗面に曇りが認められる。
×は、塗面にハジキ、凹み、ブツなどの塗面異常が認められる。
【0109】
(注21)60度鏡面光沢度:複層塗膜の光沢の程度を、JIS K 5600−4−7(1999)の60度鏡面光沢度に従い、入射角と受光角とがそれぞれ60度のときの反射率を測定して、鏡面光沢度の基準面の光沢度を100としたときの百分率で表した。
【0110】
(注22)拡散反射率:ミノルタ社製CM−3700d(積分球使用、拡散照明8°方向受光)を用い、波長550nmでの反射率を、基準白色板を100とした時の百分率で表した。
【0111】
(注23)密着性:JIS K 5600−5−6(1999)碁盤目−テープ法に準じて、塗装板の塗膜面に素地に達するようにナイフを使用して約1mmの間隔で縦、横それぞれ平行に11本の切目を入れてゴバン目を形成し、その表面にセロハン(登録商標)粘着テープを貼着し、テープを急激に剥離した後のゴバン目塗面を下記基準にて評価した。
◎は、塗膜の剥離が全く認められない。
○は、ナイフ傷の角の塗膜の一部にわずかに剥離が認められる。
△は、100個のゴバン目のうち少なくとも全てが剥離したものが1〜20個である。
×は、100個のゴバン目のうち少なくとも全てが剥離したものが21個以上である。
【0112】
以上述べた本実施形態から明らかなように、第1の態様に係る塗装板(10)は、基板(1)と、基板(1)上に、プライマー層(2)及びプライマー層(2)上の上塗塗膜層(3)の2層を備える複層塗膜(4)とを有する塗装板(10)である。プライマー層(2)は、ポリエステル樹脂及び硬化剤を含有するプライマー樹脂バインダ、及び該プライマー樹脂バインダ100質量部に基づいて、酸化チタン顔料80〜250質量部を含有するものであり、且つプライマー層(2)の膜厚が10〜20μmである。上塗塗膜層(3)は、ポリエステル樹脂及び硬化剤を含有する上塗樹脂バインダ、並びに該上塗樹脂バインダ100質量部に対し、酸化チタン顔料100〜250質量部、及び平均粒子径4〜9μmの有機ポリマー微粒子10〜30質量部を含有するものであり、且つ上塗塗膜層(3)の膜厚が20〜35μmである。複層塗膜(4)表面の、光の波長550nmにおける拡散反射率が85%以上である。
【0113】
この場合、本実施形態の塗装板(10)は、仕上り性、低光沢度、高拡散反射率及び密着性に優れる。
【0114】
第2の態様に係る塗装板(10)は、第1の態様において、上記プライマー樹脂バインダの上記硬化剤が、アミノ樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0115】
この場合、本実施形態の塗装板(10)は、密着性に優れるという効果を奏する。
【0116】
第3の態様に係る塗装板(10)は、第1又は第2の態様において、上記上塗樹脂バインダの上記硬化剤が、水酸基含有ポリエステル樹脂、並びにアミノ樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0117】
この場合、本実施形態の塗装板(10)は、仕上り性に優れるという効果を奏する。
【0118】
第4の態様に係る塗装板(10)は、第1〜第3の態様において、複層塗膜(4)表面の60度鏡面光沢度が、5〜20%であることが好ましい。
【0119】
この場合、本実施形態の塗装板(10)は、拡散反射率に優れるという効果を奏する。
【0120】
第5の態様に係る塗装板(10)は、第1〜第4の態様において、基板(1)が、めっき鋼板、ステンレス鋼板及びアルミニウム合金板から選ばれる1種であることが好ましい。
【0121】
この場合、本実施形態の塗装板(10)は、仕上り性や軽量化を図れるという効果を奏する。
【0122】
第6の態様に係る塗装板(10)の製造方法は、基板(1)上に、ポリエステル樹脂及び硬化剤を含有するプライマー樹脂バインダ、及び該プライマー樹脂バインダ100質量部に基づいて、酸化チタン顔料80〜250質量部を含有するプライマー塗料を塗装、焼付し、硬化膜厚が10〜20μmのプライマー層(2)を形成する工程を有する。また、プライマー層(2)上に、ポリエステル樹脂及び硬化剤を含有する上塗樹脂バインダ100質量部に対し、酸化チタン顔料100〜250質量部、及び平均粒子径4〜9μmの有機ポリマー微粒子10〜30質量部を含有する上塗塗料を塗装、焼付し、硬化膜厚が20〜35μmの上塗塗膜層(3)を形成する工程を有する。プライマー層(2)及び上塗塗膜層(3)の2層を備える複層塗膜(4)表面の、光の波長550nmにおける拡散反射率が85%以上である。
【0123】
この場合、本実施形態の塗装板(10)の製造方法は、仕上り性、低光沢度、高拡散反射率及び密着性に優れる塗装板(10)を得ることができるという効果を奏する。